狂言芝居人妖怪談
天狗。日本の民間信仰において伝承される神とも妖怪ともいわれる伝説上の存在。一般的に山伏の服装で赤ら顔で鼻が高く、翼があり空中を飛翔するとされる。元々、天狗という語は凶事を知らせる流星を意味するものだった。
【PC1:人の世に生きるもの】
君が目を覚ました時、そこは暗い洞窟だった。 側にPC2や御六の姿は無く、全身が酷く痛む。 そんな君に声をかけるものがあった。「目を覚ましたようですね。くたばり損ないめ、忌々しい」 それはかつて敵対した陰陽師、般若の面であった!【PC2:人ならざるもの】
君が目を覚ました時、そこは豪華な檻の中だった。 側にPC1や御六の姿は無く、力が酷く制限されている。 そんな君に声をかけるものがあった。「おお、目を覚ましたぞ! 早く叫ぶ様を見たい。焼きごてを持て!」 それは北森藩藩主・北森景政その人であった!【エントリー1:湿気た暗い洞窟にて】
【状況0】
夢を見ていた。 満天の星空に太陽が浮かぶ夢。 太陽が海へと落ちていく夢を。 視線の先にPC2がいて、君の体からは血が溢れていた。 己はそれを見ていた。 そんな夢を見ていた。【状況1】
痛い。 寒い。 PC1は自分の身を包む寒気と痛みで、夢現の中から意識を取り戻す。 徐々に覚醒していく薄らぼんやりとした意識の中、己の体が揺られている事が分かる。 側に熱を感じる。誰かに運ばれているのだろうか。「目を覚ましたようですね。くたばり損ないめ、忌々しい」 嫌味ったらしいその声に、君の意識は一気に覚醒した。 聞き覚えのある声だった。君の目の前で、君の体を抱えて運んでいるのは、かつて敵対した陰陽師・般若の面であった!【状況2】
般若の面に連れられ、君が連れてこられたのは、湿気た薄暗い洞窟の奥だった。 焚き火の痕跡があるそこは、誰かが野宿の為に使っていた場所のようだ。 般若の面は君の体を放り投げると、焚き火に火を灯す。一体何が起きているのか。 般若の面は小さく舌打ちをした後、しかし事の顛末を君へと教えた。【状況3】
「修験の御六は裏切り者が拐かしたようです。PC2は知りませんね。どこぞで海の藻屑にでもなったか、誰ぞに殺されてる頃合いじゃあないですか」「裏切り者の名は、火霞夜抄。本来ならば我々と共に、影法師討伐へ当たるはずだった陰陽師です」【エンドチェック】
□般若の面に助けられた□状況を知った【解説】
PC1が目を覚まし状況を理解するシーン。 前編の最後、海へと落ちたPC1は盤外視座の陰陽師・般若の面によって救出・拉致された。般若の面は蛇腹太夫殺しの下手人と同一人物である。般若の面はPCたちのことを心底恨んでいるが、首座・鍾馗の命令に従ってPC1に接触した。 盤外視座としても、夜抄のこのタイミングでの裏切りは少し困ったものである。密命をこなし、北森景政の暗殺と影法師の討伐を行わなければならない以上、裏切り者の始末に手を回す余裕がないのだ。 状況0はPC1が見る夢である。後半のチャレンジイベントのフラグのようなものだ。【エントリー2:絢爛な籠の中で】
【状況0】
夢を見ていた。 満天の星空に太陽が浮かぶ夢。 太陽が海へと落ちていく夢を。 視線の先にPC1の死体があった。君の手は赤い血に濡れていた。 己はそれを見ていた。 そんな夢を見ていた。【状況1】
甘い香り。 潮騒の音。 PC2は自分の身を包む奇妙な感覚で、夢現の中から意識を取り戻す。 徐々に覚醒していく薄らぼんやりとした意識の中、己の体がふわふわとした感覚に包まれていることが分かる。 地に足のつかないような、起きながらにして夢の中にいるような……。「おお、目を覚ましたぞ! 早く叫ぶ様を見たい。焼きごてを持て!」 子供のように浮かれた大人の声に、君の意識は一気に覚醒した。 聞き覚えのある声だった。眼前で手を打ちながら君を眺めているのは、北森藩藩主・北森景政その人だった!【状況2】
君は城の一室と思しき豪華な部屋の中にある、籠の中に囚われていた。 目の前には北森景政と、無表情の家臣たち、そして北森景政の側に侍る、顔を隠した僧侶の姿がある。「これは本物の妖なのであろう? 腕を落としたら生えてくるのか? 首を刎ねれば首だけで動くというのはまことか? 気になる! 見てみたい!」 北森景政は成人した体とは不似合いに、無垢な子供のように目を輝かせ、相反した残虐な言葉を口にする。やがて彼の元に、真っ赤に焼けた焼きごてが運ばれてくるにつれ、それが言葉だけの嗜好でないことは明らかであった。 無論、されるがままの君ではない。人間など君の力があれば容易く捻じ伏せられる。 そのはずだった。 力が出なかった。否、力を振るおうとする端から、檻にかけられた奇妙な術が、君の力を奪うのだ。 北森景政の後ろで、影法師のように控えた僧侶が低く笑う気配があった。あの男が奇妙な術をかけ、君の力を奪っているのだ。それは明らかに、人ならざるものの力だった。【エンドチェック】
□人間に捕まえられた□影法師に気づいた【解説】
PC2が目を覚まし、北森景政をはじめとした人間たちに捕まえられているシーン。 北森景政は妖怪・影法師(前編での願人坊主)によって残虐嗜好を植え付けられており、PC2が本物の妖怪であることを知って、妖怪を拷問するとどんな悲鳴をあげるのかが気になってしまった。そのため、PC2を捕らえ、嬲りものにする(あるいは影法師によって促された結果かもしれない)。 他の北森藩の侍たちは、本物の妖怪であるPC2を傷つけることで、恐ろしい災いが藩に降りかかるのではないかと怯えているが、藩主に逆らうほどの勇気も持てず、ただ怯えるばかりで役に立たない。 この導入シーンと、次のクエリー1の間で、PC2は北森景政から拷問を受けることになる。だが実際にどんな拷問を受けるのかはプレイヤーに考えてもらうと良いだろう。どこまでOKでどこまでNGなのかのラインは人によって異なるものだ。この拷問によってPC2がステータス上の不利を被ることはない。【クエリー1:影法師の手招き】
【状況1】
君は北森景政にさんざ甚振られた。 彼は妖怪である君の身を傷つけることを悦び、愉しんでいた。 周囲の人間たちは痛ましげな顔はすれども、それを止めることをせず、ただ見ていただけだった。【状況2】
弄び疲れたのか、やがて北森景政は部屋から姿を消し、部屋から人は消えた。 君の目の前には、顔を隠した謎の僧侶が佇んでいる。「哀れなものですな」 僧侶が君へと言葉を向けた。それは君にも聞き覚えのある声だった。 江戸の町で、PC1と話をしていた、あの奇妙な願人坊主の声だ。【状況3】
「人というものは、果たしてどこまで残酷になれるのか。時折興味深くなります」「幼少の頃より寝物語を囁き続けた結果、景政様は立派な人でなしに育ってくださった。火霞の当代も、僅かに情報を横流し、いくらかの言の葉を囁いてやれば、面白いほどあっさりと堕ちた」「人を狂わせるのは楽しゅうございますねえ、PC2様」 本心から愉快でたまらないと言いたげな声で、影法師はそんなことを言った。【状況4】
「ああ、おいたわしや。我々は捕食者。……餌からそのような仕打ちを受けることは、耐え難い屈辱でございましょうに」「助けて差し上げましょうか」「当一座への感想でも聞かせてくだされば」「演目・七人みさき。ご堪能いただけましたか」 影法師は囁き、邪悪に嗤う。【エンドチェック】
□影法師の言葉に答えた□グリットを獲得した【解説】
PC2が黒幕・影法師と檻越しに対峙し、その性質を知るシーン。 影法師は北森景政を幼少期から操り、立派な傀儡へと育てあげた。長きを生きる妖怪にとって、人の一生に付き合うことなど手遊びのようなものなのだ。 影法師と北森景政の関係は、PC2とPC1の関係と対立するようなものをイメージしている。お前も所詮同じだと嘯く邪悪な影に、PC2はなんと答えるだろうか?【クエリー2:行きずりの仲】
【状況1】
「師匠はあなたに利用価値があると考えているようです。裏切り者のせいで、我々も手が足りているわけではありませんし。使い走りにでもしたいのでしょうね」「裏切り者の始末を、あなたに」 般若の面はそう言うと、君の前に【任意の能面】を差し出す。【状況2】
君がPC2のことを話題に上げれば、般若の面は面白くないといった声音で君へ尋ねる。「あんたにとってPC2ってなんなんです?」「ただの行きずり、その程度の仲なんじゃあないんですか」「修験の御六を助ける手助けをしてやる代わりにPC2を殺せと言ったら、どう答えるのか興味が沸いてきましたね」 般若の面は、嘲笑いながら吐き捨てた。【エンドチェック】
□般若の面の問いに答えた□グリットを1点獲得した【解説】
般若の面からPC1へ向けられるクエリー。 作中での描写の通り、般若の面と盤外視座はPC1を利用して、裏切り者である火霞夜抄の処理を任せようとしている。任せるといっても、実質拒否権のない脅迫である。 PC1がこの場で逃げ出す・抵抗を示すのであれば、般若の面はPC1のことを殺さない程度に甚振り、強引に承諾させようとするだろう(もっとも、PC1が必ず同意しなければならないわけではない)。後に合流するカツコ様がいれば都合よく回復もできるので、盤外視座という組織が手段を選ばない恐ろしい存在であることを、改めてPC1が理解できるような目に合わせてしまうと良いだろう。PLと相談しながらシーンを作っていこう。【チャレンジ1:北森藩の妖怪騒動】
【状況1:PC1】
「あんまりいじめてるんじゃあないよ」 洞窟の入り口から老婆の声がした。 振り返れば、そこには処刑されたはずの老女・カツコの姿がある。「あの程度でわしが死ぬと思うたかえ、心外な」【状況1:PC2】
影法師は姿を消した。天守閣から見える満天の空には、尾を引く箒星が映る。 檻に貼られた結界は強固なものだ。 だが、ここで耐えていたところで、なぶりものにされ殺されるのがオチ。 何としてでも、この場から逃げ出さねばなるまい。【状況2】
PC1は陰陽師たちの隙をつき、PC2は檻の結界を強引に破壊して、その場を逃げ出した。 PC2が強引に檻と結界を破壊したことで、北森藩は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなった。何も知らぬ領民たちは、妖怪が現れたと恐れ慄き騒ぎ立てる。 その騒ぎは、陰陽師達のもとを逃げ出したPC1の元へも届くだろう。 君たちはどのように合流を果たすだろうか?【エンドチェック】
□チャレンジ判定を終えた□合流した【解説】
PC1とPC2が、それぞれの敵対者の手から逃れ、合流するシーン。 PC2の脱出シーンは、いかにも妖怪の怒りに触れたシーンのように派手に演出してもらうと整合性が取れる。反面、それが難しいキャラクターの場合は、PC2の脱出に気づいた北森藩の侍たちが、妖怪の報復を恐れて必要以上に騒ぎ立て、話を大きくしてしまうとすると良い。【マスターシーン:火霞夜抄は考える】
【エンドチェック】
□御六は夜抄が誘拐している□夜抄の動機をPLが理解した【解説】
マスターシーンで、このシナリオのボスである火霞夜抄の動機が語られるシーン。目的としては、クライマックスまで出番のない火霞夜抄本人の人となりを説明しておくこと・作中で説明しきれないNPCの動機をPLに公開すること、にある。 描写が長いので、PLを退屈させないために、GMは見せ方を工夫する必要があるだろう。 必要無いと判断するのであれば、バッサリとこのシーンをカットし、最後のクエリーイベントで夜抄自身の口から一息に彼の動機を語らせるなどしても良い。それもよくあるシナリオの形だ。【チャレンジ2:霊峰のマヨヒガへと】
【状況1】
合流を果たした君たちは、互いの情報を共有する。 そして、御六を連れ去ったのが火霞夜抄である以上、やはり彼を追う必要があるという結論に達する。 彼らはどこへ消えたのか? 僅かな痕跡から、君たちは足取りを辿る。【状況2】
残された痕跡や目撃情報を辿り、推測を経て、君たちはついに夜抄が向かったと思しき場所を特定する。 それは修験者たちによる山岳信仰の霊峰とされる『早池峰山(はやちねさん)』。その山中に打ち捨てられた隠れ里の残骸であった。 かつてデンデラ野(姥捨の地)として使われていたその地は、常に色濃い霧と険しい山々に覆われ、百年以上の長きに渡り、隠れ里めいて放置され続けているという。 君たちはその隠れ里を目指し、遠野一の霊峰へと足を踏み入れることになる。【状況3】
深い深い山の奥深くにて。 君たちが隠れ里を探り当てれば、時刻はすっかり夕暮れを迎えていた。 勾配を利用して建てられた隠れ里の廃墟には、確かに人の気配がある。 君たちの襲来を予期してか、はたまた君たち以外の追跡者を危惧してか、落とし穴や吊天井、魔術的なトラップなど、隠れ里中に様々な罠がしかけられていた。 罠を躱し、夜抄のもとへ向かえ!【状況4】
君たちは仕掛けられた数々の罠を乗り越えながら、先へと進む。 人の気配は、隠れ里の頂、星見台めいた岩場へと続いていた。霧と雲に覆われたその先へと向かう道中、君たちは、葛に放り込まれて粗雑に捨てられたいくらかの死体群を見る。 腐敗が進むその亡骸は、衣服などを確認するに、陰陽師と思しき者と、野良百姓と思しき者の亡骸群であるらしかった。 比較的新しい遺体を検分すれば、どちらも頭を抑え、目を苦悶に見開いていることが分かる。陰陽師と思しき者の目鼻立ちには、どこか火霞夜抄と似た面立ちがあった。 夜抄はここで何をしていたのだろうか? 君たちは歩みを進める。【エンドチェック】
□マヨヒガに辿り着いた□死体を目にした□先へ進んだ【解説】
PC1とPC2が霞夜抄の後を追うチャレンジイベント。 状況3の死体は、夜抄がこの隠れ里で行っていた、精神転移の術の実験の代償である。声聞師と野良百姓の精神を交換し、うまくいく場合・いかない場合を実験していた。その過程で、夜抄自身の弟を含む多くの人が命を落としている。 火霞夜抄は悲劇的な動機の持ち主であり、真面目な性格の人物ではあるが、すでに取り返しのつかない行為に手を染めている。【クエリー3:星辰の下で】
【状況1】
隠れ里の星見台は、自然の侵略と時の経過により崩落し、岩場の先に満天の星空を覗かせていた。 澄み渡った星空の先に、尾を引く箒星が見える。 その下に、鴉天狗の能面をかけた、一人の男が立っていた。 男──火霞夜抄の前では、目を布で覆われ、猿轡を噛まされ、磔にされた御六が呻き声を上げている。 駆け寄ろうとする君たちの前、ひとりでに炎が立ち登り、灼熱の壁となってそれを遮った。【状況2】
夜抄は振り返らぬままに、口を開いた。「南蛮から来たという、女術師から聞いた話だ」「星辰揃いし時のみに成せるという御業。人の体はそのままに、その意識と意識とを取り替える、西洋由来の禁呪法」「──己というものは、何処に宿るものであろうな」【エンドチェック】
□火霞夜抄の願いを断った□グリットを1点獲得した【解説】
火霞夜抄の口から真っ直ぐに目的が告げられるクエリー。堂々とした命乞いである。 火霞夜抄の動機は、いわゆる「可哀想な殺戮者」「心優しいモンスター」などと言われる、古典的なTRPGで起きうる問題に抵触しやすい。GMは適宜「火霞夜抄は御六本人からの同意は得ていないこと」や「道中の死体は彼が作り出したものであること」などを伝え、必要以上に対決のハードルが上がり過ぎないようにしよう。 また、PCによっては、夜抄に改心を迫るよう交渉する者/妖怪としての能力で彼の問題を解決することを持ちかける者もいるかもしれない。それに対しては、GMは少なくともこの時点では、拒絶して決戦フェイズへなだれ込むべきである。「その都合のいい話を信じてやれるほど、おれはお前たちのことを知らんのだ」「もっと早くお前たちと出会えていれば、また違った結末もあったかもしれんな」 などの言い回しをするとヒロイックさが増すのでオススメ。【決戦:天狗の御燈】
【状況1】
君たちの言葉を聞き、夜抄がどんな顔をしたか──それは鴉天狗の能面に阻まれて分かることはなく。 ただ彼は、静かな声で、「そうか」と言って首を上げただけだった。「穏便に願うことが叶わぬのであれば、このあとおれが、何をするかもよく分かろう」【解説】
溝出(みぞいだし)とは妖怪の一種。葛篭に死体を入れて粗末に捨てた死体が蘇ったというような怪異譚である。夜抄は自身が殺した百姓や声聞師たちの死体をそのように扱い、溝出へと転じるよう意図的に仕向けた。それは完全に盤外の陰陽師としては道を踏み外した行いであり、すでに取り返しがつかない領域に至っている証左である。【戦闘情報】
【エネミー】
・火霞夜抄・声聞師ゾンビ×2・人魂×2【エリア配置】
■PC初期配置 エリア1・エリア2■エネミー初期配置 エリア4:火霞夜抄 エリア3:声聞師ゾンビ×2 エリア2:人魂×2【勝敗条件】
勝利条件:火霞夜抄の撃破敗北条件:PCの全滅【備考】
・決戦終了後に発生するクエリーのグリットは、先行して獲得したことにしてもよい。・エリア3を「エリアタイプ:天火(ダメージゾーン2)」として扱う。・3ラウンド以内に決着がつかない場合、御六と夜抄の精神交換が完了する。・戦闘には一部BJRのルールを追加する(BS)■ボス:火霞夜抄
【エナジー】ライフ:90 サニティ:70 クレジット:50
【能力値・技能値】
【肉体】45 白兵85% 運動80% 【精神】35 霊能50% 意志65% 【環境】25 作戦70% 隠密50% 経済40%【移動適正】地上
【パワー】
■生を燃やし尽くせども属性:攻撃 判定:なし タイミング:行動射程:3 目標:2体 代償:ターン10 効果:目標は〈意志〉の判定を行う。この判定に失敗したキャラクターは1d6点のダメージ及び[延焼8]を受ける。──努力により培われた焔。けれどそれは完成には遠く及ばず。■ヘンチマン:声聞師ゾンビ
【エナジー】ライフ:5 サニティ:10 クレジット:5
【能力値・技能値】
能力値・移動適正・エナジーはBJR『声聞師』参照。【パワー】
■呪詛属性:妨害 判定:霊能35% タイミング:行動射程:1 目標:1体 代償:ターン10 効果:このイベントの間、目標が行う全ての判定に-10%の修正を与える。 この効果は三回まで累積する。──敵に呪を投げかける。【クエリー4:同じ船の上】
【状況1】
君たちは火霞夜抄を倒した。「……やはり……こんなもの、よ、な……」 夜抄は最後の一撃を受ける刹那、物寂しげな、どこか分かっていたと言いたげな言葉を漏らし──崖の下へと落ち、消えていった。【状況2】
自意識を取り戻した御六は、ようやく周囲の状況を把握する。「あっしは確か、夜抄の旦那に……ああいや、あいつは……」「こりゃア、一体……何が……全部、お二人が?」 夜抄との戦いや、これまでのことを知れば、御六は顔色を青褪めさせる。「なんてことを…!」「何を敵に回したか、分かってるんですか!? 奴らは手段を選ばない。話し合いでどうにかなるような手合いじゃねえ! あんたも! あんたの家族も! 誰も彼もが危険に晒される! もう二度とお天道様の下歩めねえかもしれねえんだぞ!? 何でそんなことを!」 掴みかからんばかりの勢いで語気を荒げる御六。 しかし彼はすぐに、ハッとした様子で答えに辿り着き──項垂れた。「……ああ」「……俺の、せいか」【エンドチェック】
□御六に喝を入れた□グリットを1点獲得した□使用済みのグリットを2点回復した【解説】
PCたちが御六と合流し、彼の本心を聞くシーン。転じて、うじうじしている御六に喝を入れるシーン。 御六は蛇腹太夫を助けられなかったことを悔い、恩人であるPCたちを同じ目に合わせてしまうのではないかということを恐れ、怯えている。「(各PCに向けた御六の本心を伝えよう)」のところでは、これまでの関係性をもとに、GMが考え御六のセリフを自由に考えてほしい。【チャレンジ3:狂言芝居人妖怪談】
【状況1】
「一つ、確認させてくだせえ」「PC1は、陰陽師どもの仲間になる気はない。PC2は、あのクソ坊主に手を貸す気はない。二人とも、二人の儘、生きてここから脱したい。……そう考えてると思って、いいんですね?」 PCたちの意志を確認し、御六は言う。「あっしだって、むざむざ殺されるのは御免ですよ」「あっしら『三人』が、まるごと生きて帰る為、この八方塞がりの状態を如何にかする必要があります」「しくじりゃ諸共死ぬでしょう。ですが今は、誰かを差し出せば生きて帰れるような状態じゃあ、なくなっちまった」【解説】
このシナリオ最後のイベントとなるこのイベントでは、多数のマスターシーン、それもNPCたちの一人称視点でのマスターシーンが発生する。 これらの描写の意図としては、いわゆる「一人称の語り手は嘘をつかない 」ということにある。どんなに腹に一物を持った人物であっても、このマスターシーンの中で語られる一人称視点の描写は全て本心であり、嘘偽りのない感情となっている。PLがそれらを客観情報として認識できることで、PCたちによる『そのNPCを騙す』RPに説得力を持たせることを目的としている。 反面、これらの描写は、いわゆる「吟遊」と呼ばれる状況に陥りやすい手法でもある。GMはPLを退屈させないよう十二分に配慮した上で、このシーンを作り上げていくと良い。また、不要と判断するのであれば、各NPCの概要のみを情報としてPLに伝え、シーンを作ってもらうなどしても良いだろう。【→チャレンジ3:狂言芝居人妖怪談】
【状況マスターシーン1:夜抄】
舞台:朽ちた星見台・隠れ里登場:火霞夜抄【状況マスターシーン2:般若の面】
舞台:北森城登場:般若の面【状況マスターシーン3:影法師】
舞台:北森城の近く登場:影法師【状況2:PC視点】
舞台:回想シーン登場:PC1、PC2、御六【状況3】
陰陽師たちと影法師、人と妖が遂に衝突する。 カツコの妖術が、般若の面の毒が影法師へと放たれ、影法師は影へ闇へと逃れながらそれを翻弄する。 その中には君たちの姿もあった。人と妖に分かれて、絆は分かたれ、互いを憎み合うようになった、そう見えるPC1とPC2の姿が。 だが、実際はそうではない。そうではないのだと君たちは知っている。 目と目を交えれば、それだけで互いが同じ思いの上にあるのだと理解できる。 芝居は演じられる。ここが大一番、大見得を切る時は今だ!【状況4】
潜り込むまでの作戦を伝え、次に御六はその間の自分の動きと役割について君たちへ説明した。「あっしはその間、別行動を。細々とした仕込みをしてきます。 なあに、死ぬ気はありやせん。むしろ、仕上げはお二人にも手伝ってもらわにゃアならん」【状況マスターシーン4:夜抄】
舞台:北森藩城下町登場:火霞夜抄【状況マスターシーン5:最期】
舞台:北森藩登場:般若の面【エンドチェック】
□チャレンジを終えた□北森藩から逃げた【余韻:疑いは暗中の人影】
【状況1】
北森藩の天狗星騒ぎは、ちょうどPCたちと共にきた江戸からの使者がいたことで、大きな騒動となった。 城下にて旅の修験者が声高に告げた。空から降りたった天狗星は天守を貫き、暴君・北森景政の心臓を貫いたと。それを聞き民たちは噂した。これは血に狂った暴君に天が裁きを下したのだとも、都から招いた霊験確かな陰陽師の呪いなのだとも。 土地へと降り注ぐ度重なる不幸に重ね、御前試合に招かれていた多くの霊能者たちが、口々に同じ見立てを成したことも、影響したのであろう。 無論、幕府がそれを正式なものとして記録したわけではない。ないが──。 藩主・北森景政の不審な死に伴って北森藩は改易され、盛岡藩預かりとなった。 そこに幾人の思惑が絡み合っていたかはさておき。 そういうことになるのだった。【状況2】
東廻海運船にて、遠く離れていく北森藩を眺めながら、御六は君たちにこんなことを話した。「あっしは遠野の水呑百姓の倅でしてね」「物も分からねえ赤子の時に捨てりゃよかったものを、労力を惜しんだか、情でも沸いたかは知りませんが、ガキの時分に口減らしの為に山ン中に捨てられたんですよ。飢饉か、凶作か、貧乏人にゃ珍しいことじゃありません」「そのままくたばるはずだったんですが、鴉天狗に拾われた」「べらぼうに口が立ち、神通力を使いこなす、身の丈二尺はあるかと思われる大男でしたよ。その天狗は、くたばるはずだったガキに、生きる術を教えた。そのうちいくつかは、結局身につきゃしませんでしたが」「如何せんガキの頃の記憶ですから、実際はそう長い間のことじゃあなかったとは思いますがね。……そりゃあ、楽しかった」「天狗は名を名乗らず、素性を明かさず。そしてある日、そのままふっつりとどこかへ消えちまった。それっきりです」【状況3】
「なあ、PC1さん。PC2さん。真面目に聞きたい。……あんたたちは江戸についたら、これからどうしたい?」「あっしはご覧の通りの風来坊です。好き好んで面倒ごとを背負って歩いてる。ろくな死に方しねえでしょう。だから、正直なことを言えば、他人に深入りしたくない。人が死ぬってことは悲しいことだ。苦しいことだ。辛いことだ。それを背負う勇気も、背負わせる意気地も、あっしにゃありません。……誤魔化すことしか、出来やしねえ」「(それぞれのPCに合わせた御六のコメントを向けよう)」「……だが──お二人といると、楽しくて、面白くって」【解説】
帰りの船の上で御六の過去を語られ、全ての謎が明らかとなるシーン。終わり方はPCたちと御六の関係性に合わせて適宜調節しよう(別れた方が綺麗に終わる場合もあるだろう)。 江戸に帰ってからなど、満足いくまで余韻を演出しよう。