吸血鬼伯爵すぐ死ぬ


━━ちん! ちんちんちんちん! ちちん!
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1.エントリーとシナリオ概要

【シナリオ概要】


 「アーガット・オン・ザ・ゲーム」の幹部、ドラキュラ伯爵が、ヒーローに助けを求めてきた。 何故か伯爵は少しの刺激ですぐ死んで砂になる、特殊体質になってしまったというのだ! 事件の裏側で交錯するフランケンシュタインの嘆きとモリアーティの策略! ヒーローよ、おポンチ出落ち空間に巻き込まれてもらうぞ!

【事前情報】


 チャレンジ:2 クエリー:3 初期グリッド:3 リトライ:2
 想定時間:3〜4時間 推奨経験点:お好きに

【GMに要するルールブック】


・基本ルールブック(R1)・学園マッドネス(R2)

【注意事項】

 このシナリオは「吸血鬼すぐ死ぬ」というギャグ漫画を元ネタにしたシナリオです。 元ネタの漫画を知らなくても楽しめると思いますが、アーガット・オン・ザ・ゲームをはじめとしたいくらかのヴィランのキャラクターが崩壊しているので、他のシナリオにはこのテンションを持ち込まず、コメディシナリオと割り切ってお楽しみ下さい。

【エントリー】

【PC1:吸血鬼伯爵すぐ死ぬ】

 ある日、君のもとにアーガット・オン・ザ・ゲームの幹部、ドラキュラ伯爵がやってきた。しかしドラキュラ伯爵の様子がどうにもおかしい。彼はぐずぐずと泣きながらあなたに助けを求めた。「助けてくれヒーロー! 何故かいきなりすぐ死ぬ身体になってしまった!」 自分の声に驚いた伯爵は、あなたの目の前で砂になった。※このエントリーのPCは「まったくしょーがないなー」みたいな感じでドラキュラ伯爵を助けてくれるPCであることが好ましい。

【PC2:フランケンシュタインの日記】

 君は最近、フランケンシュタイン博士が怪しい新薬を開発したという情報を手に入れた。調査を行った君は、アーガットの研究所で、フランケンシュタイン博士の日記を手に入れる。『28日 モルモットの数が足りなくて困る。そういえば伯爵が寝ている棺がアジトにあった。あれでいいや』『29日 モリアーティにしこたま叱られた。天才の私が何故こんな目に。あの吸血鬼が逃げ出したのが全部悪いので私は悪くない』 ……どうやらフランケンシュタインはドラキュラ伯爵を何かの実験体にしたらしい。※このエントリーのPCは「貴様、何が目的だ!?」みたいな感じでフランケンシュタイン博士の話を聞いてくれるPCであることが好ましい。

【PC3:うちのドラ知りませんか?】

 街をパトロールしていた君は、ある日、英語教師の王森亜継志(おうもりあつし)という男が、ペット探しの張り紙を貼っているところを見かける。ヒーローの姿を見ると、英語教師の男は涙ぐみながら、君にチラシを差し出してきた。「うちのドラ知りませんか?」 チラシには、蝙蝠とアルマジロを足して4:6で割ったような奇妙な生命体の写真が載っている。※このエントリーのPCは「この人どっかで見たことあるような…?」みたいな感じで英語教師の正体に気付かないでいてくれるPCであることが好ましい。

2.導入フェイズ

【イベント1:吸血鬼伯爵すぐ死ぬ】

 場所:どこでもいい 登場キャラクター:PC1

【状況1】

 ある日、君はヒーローとして活躍していた。戦いを終え、夜もふけた真夜中。君は不穏な気配を察して振り返る。夜の闇に溶けるように、月明かりを背にした男──アーガット・オン・ザ・ゲームのドラキュラ伯爵が立っていた。「そこ行くヒーローよ、少し良いかね」「ククク。何、長い話はしないさ。ただ少しこの私に君の力を──…」 その時、急に吹いてきた突風により、ドラキュラ伯爵の後頭部に空き缶が命中した。 伯爵はそのまま砂になって死んだ。

【状況2】

「実のところ、何故こんなことになったのか、私にもさっぱりわからんのだ…!」 砂から回復したドラキュラ伯爵は、めそめそと泣きながら君に説明した。 曰く、昨日の夜に目を覚ましてから、些細なショックで死んで砂になってしまうという異常事態が続いているということ。 砂になっても、しばらくすれば元の身体に戻れるのだが、肉体と精神が常以上に著しく弱体化してしまっているということ。その影響で、本来の力が殆ど出せなくなってしまったこと。そして常ならば華麗かつ簡単に出来る変身も、おかしな形になってしまうということ(実際に変身を頼むと蝙蝠とアルマジロを足して割ったような奇天烈な姿になってしまい、しばらく戻れない) そしてその姿を見たモリアーティにしこたま笑い倒され、心底腹に据えかねたということ…。「もともとアーガット・オン・ザ・ゲームに協力していたのは、奴が私の棺を大英博物館から盗んだからというだけに過ぎない! 面白そうだと思って協力してやっていたが、今の状況はぜんっっっぜん面白くない! もう嫌だ! アーガットなんて辞めてやる!」「こんな姿でこれからの吸血鬼生を送るなんて考えられない! 助けてくれヒーロー、ここに困っている一市民がいるぞ、さあ助けるがいい! ヒーローだろう! そーれヒーロー! ヒーロー!」「くっ、これほど頼み込んでもダメなのか…! では仕方ない、最後の手段だ! この小切手に好きな数字を書きたまえ! ドルでもポンドでも円でもいいぞ!」「えーんなんでもいいから助けてくれぇーーーーヒーローだろおーーーー!!??」 ……どんな理由でも構わないが、君はドラキュラ伯爵を助けることにした。

【エンドチェック】

□ドラキュラ伯爵を助けることにした

【イベント2:フランケンシュタインの日記】

 登場キャラクター:PC2 舞台:フランケンシュタイン博士の研究所

【状況1】

 君は今、アーガット・オン・ザ・ゲームの調査を行っている。そして調査の末、フランケンシュタイン博士が現在根城にしているという研究所をつきとめ、潜入している所だった。 自我なきホムンクルスたちが闊歩している研究所内を通り抜け、やがて君はフランケンシュタイン博士の私室と思しき部屋に辿り着き……デスクの上に、開きっぱなしになっている彼の研究日誌を見つけた。

【状況2】

 妙に汚い文字で走り書きされた研究日誌はほぼフランケンシュタイン博士の日記みたいな状態だった。『27日 研究は佳境。モリアーティの奴め、なんだ「なんか違うんだよね~」って! なにがどう違うんだ! バカ! 愚物! おかげでもう三日寝てない』『28日 ついに薬が完成した。あとは人体実験だけだ。しかし連日の実験の影響でモルモットの数が足りなくて困る。そういえば伯爵が寝ている棺がアジトにあった。むかつく、私は四日寝てない。あれでいいや』『29日(昨日だ!) 久々の安眠……と思ったら、モリアーティに叩き起こされ半端な状態での目覚め。モリアーティにしこたま叱られた。天才の私が何故こんな目にあわねばならんのだ。あの吸血鬼が逃げ出したのが全部悪いので天才の私は何も悪くない。眠い』 ……どうやらフランケンシュタインはドラキュラ伯爵を何かの実験体にしたらしい。

【状況3】

「……見てしまったようだな」 その時、君の背後からフランケンシュタイン博士の声が聞こえた!

【エンドチェック】

□フランケンシュタイン博士の日記を読んだ□ドラキュラ伯爵が何かの実験体にされたらしいと理解した□フランケンシュタイン博士に呼び止められた

【イベント3:うちのドラ知りませんか?】

 登場キャラクター:PC3 場所:住宅街

【状況1】

 君は今日もヒーローとして街をパトロールしている。幸いにしてこの近隣にヴィラン組織の暗躍の影は見られない。この日のパトロールは平和に終わりそうだった。 そんな時だ。君は住宅街のありとあらゆる電柱に、ありったけのチラシを貼っている中年男性の姿を見つける。男性は君に気づくと、目に涙を浮かべて近付いてきた。「私、麻神学園で英語教師をしております、王森亜継志(おうもりあつし)と申します……実はうちのペット?的なものが逃げ出してしまいまして、ぐすん」「うちのドラ知りませんか?」 男は君に一枚のチラシを差し出した。チラシには、蝙蝠とアルマジロを足して4:6で割ったような珍妙な生命体の写真が載っていた。

【状況2】

「ドラちゃんは、大英博物館……じゃなかった。 イギリスに生息しているめずらし~い生き物でしてねえ。群れからはぐれてしまったところを私が保護したことをきっかけに、ウチでペット?的なものとして飼っていたんです。 それがどうも、昨日同居人に寝てるところを悪戯されちゃったみたいでしてねえ。びっくりして逃げ出してしまったようなんですよ。この写真はウチを逃げ出す瞬間に慌てて撮影できたものなんです、可愛いでしょう? 人懐っこい良い子なんですよ、あのつぶらな瞳にじーっと見つめられたら誰だって言うこと聞いちゃいますね!」「今のドラちゃんは、なんていうかヒジョ~に雑魚……じゃなかった、ショボい……でもなくて、繊細! そう、繊細になっているんです! このまま見つからずにあの弱々しさを持て余すのかと思うと面白すぎて、じゃなくて心配で、見逃すわけにはいかない、じゃなくてすぐに助けに行ってあげなきゃ! って思うわけですよ、飼い主としては!」「そういうわけで、ヒーローさん! もしドラから始まる条件に当てはまりそうな子を見かけたら、是非教えてくださいね。ねっ、ね!」 そう言って、王森亜継志は君にチラシを押し付けた。

【エンドチェック】

□謎の生命体「ドラ」の捜索願を受け取った

3.展開フェイズ

【クエリー1:睡眠不足六日目のドクター】

 登場キャラクター:PC2 舞台:研究所(エントリー2の続き)

【状況1】

 声に振り返ると、そこにはパジャマ姿のフランケンシュタイン博士が立っていた。「貴様も! 貴様も私の安眠を妨害するのか!  畜生! 寝させろ! 安眠妨害反対!」 いつになく著しくIQの下がったフランケンシュタイン博士は、聞いてもいないのに君にペラペラと情報をまくし立ててくる。「モリアーティの奴め、なーにが『不死身になれる薬とかあったらヒーローにボコボコにされても大丈夫じゃない? 助けてフラえも~ん! とりあえず明後日までにお願い☆』だ! なんだ不死身になれる薬って! そもそものコンセプトがふわっとしすぎなのだ! 挙げ句の果てに私が苦心して納期に間に合わせたというのに『な~んか違うんだよねえ、ロマンが足りないっていうかあ、ドキドキしないみたいな』『もっとこう、時代を先取りするような感じで』『今時飲み薬って古くな~い?』とかいう訳分からんふわっとした理由でリテイク出しやがって! しかも一度や二度ではない、これで6度目だぞ!? 馬鹿か!? 志ばかり高くて具体的な提案をしないクライアントなど滅べば良い! しかもリテイク反映版を出してみれば『やっぱり飲み薬の方が良くない?』って掌を返すなァーーーーーーーーッ『不死身になれる薬っていうか、やっぱり甦れる薬の方が』『滋養増強筋肉増幅ライフサニティ即回復とか嬉しいよね!もちろん副作用なしで!』とかコンセプトがブレッブレだ貴様ァーーーーーーーッ『ロゴの色をもっと目立たせたいなぁ。赤と緑のグラデーションなんてどう?』『バーーーン!!って感じにしよう!もちろん音なしで!』『薬の色がさあ、地味なんだよねえ。もっと見た目でもユーザーが「これを飲めば強くなれるんだ!」みたいな感じ出してもらわなきゃ』中身も決まってないのにデザインの話を持ち出すなァーーーーーーーーッッエクセル方眼でデザイン案を送ってくるな、しかもクッッソダサい!! よくひとに見せられるなそんなもん!! というかそもそも最初の納期も特に切迫した理由無く何となくで決めやがったな!? アーーーーーーふざけるなよもう私がアーガット・オン・ザ・ゲームを乗っ取り残業ゼロのホワイト組織に変えてくれるァーーーーーッ!!」 ……これ愚痴だ!

【状況2】

「かくなる上は問おう、ヒーロー! 定時上がりが基本、残業は月に多くても10時間、残業代も支払われ労災もきちんと落ちるホワイトヴィラン組織と! 24時間戦えてしまう残業労災何それ美味しいの全ては自己責任で明るく楽しいアットホームな職場のブラックヴィラン組織! どちらがこの世界の為になる!? ブラックヴィラン組織を蔓延らせては巡り巡って一般企業も『あっちもやってるんだし少しぐらいいいだろ』ってなるとは思わんか!? 貴様も24時間働く羽目になるぞ!? それでも良いのか!? そして重ねて問おう、ヒーロー! これほどに労務について考えているこの私と! 無茶振り無責任やりたい放題なモリアーティ! どちらの方がアーガット・オン・ザ・ゲームの首領としてふさわしいのかを!!! さあ!!!!! 選べ!!!!!! 選んで見せろ!!!!!!」 だいぶ頭がおポンチになっているフランケンシュタイン博士は、色濃いクマが残った目をぐるぐるさせながら、君の肩を掴んで叫ぶ。 君はこの問いに答えてもよいし、問答無用でぶん殴ってもいいし、彼にそっと布団をかぶせてやってもよい。

【エンドチェック】

□この状況に対応した□グリッドを1点獲得した

【解説】

 フランケンシュタイン博士は逮捕しても放っておいてもどちらでもいい。シナリオ上どちらでも特に不都合はない。

【チャレンジ1:吸血鬼すぐ吹っ飛ぶ】

 登場キャラクター:PC1・PC2・PC3 舞台:街中

【状況1】

「まずは私の体に何が起きているのかを調べなければなるまい。おいヒーロー、どこか調査機関に心当たりはないかね? 三食処女の生き血と遮光カーテン付き最高級棺ベッド完備のとこがいいな!」 ドラキュラ伯爵はめちゃくちゃなことを言いながらPC1のあとをついてくる。要求はさておき、彼の体に何か異常が起きているのは確かだろう。調査を行う必要があるのは間違いないか……。 そう考えていた君がふと顔を上げると、そこには既にドラキュラ伯爵の姿はなかった。「まさかこんなところでアーガット・オン・ザ・ゲームのドラキュラ伯爵が手に入るとは! なんというラッキー! 貴様は持ち帰ってサンプルにしてやろう!」(※口調や目的はキャラによって変更すること)「ウェエエエーーーン助けてえぇぇーーーー!?」 この一瞬でドラキュラ伯爵は(以下の表で1d6で決定)にとっ捕まっていた! 馬鹿野郎!
1:通りすがりのモブテクノマンサー2:通りすがりの未来人バスカ (基本ルールブックP191)3:通りすがりの蘇生請負人リアニメイター (基本ルールブックP203)4:通りすがりのザ・プロデューサー (基本ルールブックP197)5:彼氏探し中のココロスちゃん (学園マッドネスP120)6:PC1のプレイヤーが好きなヴィラン
–––––––––––––––––【チャレンジPC1:捕まった伯爵を助ける】<白兵> or <霊能> or <交渉> or <経済>
【失敗時の処理】 当該ヴィランが襲いかかってくる。当該ヴィランのパワーを1つPC1に使用する(1の場合はGMが任意でテクノマンサーの攻撃パワー内から決定する)–––––––––––––––––

【状況2】

 PC1がどうにか伯爵誘拐未遂を防いでいると、突然通りすがりのロードウォーリアと走り屋たちが峠目指してすぐそばの道路を突っ走っていった。それによって発生したいたずらな風が、当然砂になっていたドラキュラ伯爵を思いっきり夜空に吹き飛ばしていく。「上等じゃねーか!! コーナー2コも抜けりゃバックミラーから消してみせるぜ!!」「このバトルの結末はダブルクラッシュと行こうぜ!!」「行くぞォ必殺の…超…絶……ウルトラスーパーレイトブレーキン…!」「ウェエエエーーーン助けてえぇぇーーーー!?」 吹き飛ばされた伯爵の先にあるのは……にんにくマシマシMAX満員御礼入れ放題キャンペーン真っ最中のラーメン屋台! 古来より吸血鬼はニンニクに弱いと言われている! まして今の超雑魚モードなドラキュラ伯爵にとっては猛毒にも等しい! このまま突っ込めばドラキュラ伯爵は死んでしまうし、屋台でラーメンを食べようとしている罪のないサラリーマンのラーメンが砂でじゃりじゃりになってしまう! PC1は『状況1のヴィラン』の相手で手一杯だ! このままでは間に合わない…! 通りすがりの誰かーっ!! 助けてくれーっ!!–––––––––––––––––【チャレンジPC2:伯爵が突っ込むのを妨げる】<運動> or <知覚> or <隠密>
【失敗時の処理】 サラリーマンのラーメンがじゃりじゃりになる。サラリーマンがとても悲しそうな顔でPC2を見る。クレジットを5減らす(奢る)。–––––––––––––––––

【状況3】

「ちくしょーーーこんなところに居られるか! ここは蝙蝠に変身して安全な夜空へだっしゅブエーー変身できないんだったーーッ!!」 二度の窮地を無事脱した伯爵を三度の窮地が襲う! アルマジロと蝙蝠の融合体のような奇妙な生物に変身してしまったドラキュラ伯爵のそばを、ホラー映画鑑賞帰りの憑キ蜘蛛と朧傳々が本日公開されたホラー映画『魔改造ヴァンパイアvsキョンシーゾンビvsバイオクトゥルフ大魔獣頂上決戦2』について語り合いながら通り過ぎていく!「魔改造ヴァンパイアがバイオクトゥルフを庇って自爆するシーンは久々に胸が熱くなったわ」「キョンシーゾンビが実は生き別れの弟という前作の伏線回収が怨念的にグッときた。わかりみが深い」「分かる! からのまさか最後に魔改造ヴァンパイアが死」「ウェエエエエーーーーーンまだ見てないのにーーーー!!!!」 望まぬネタバレを耳にしてしまったドラキュラ伯爵はショックでそのまま砂になった。興奮してる百鬼夜會の幹部二名は目ざとくそれに気付くと、目を輝かせて彼を取り囲む!「ヤダ、その死に方『ヴァンキョンクトゥ2』のクライマックスそっくり! 同志!? コスプレ!?」「見ればなんとなく我らが同胞っぽい見た目と雰囲気! ちょっと朝までそこのマックで語り合おう!」「囲め囲め!」「逃がすな!」「ウェエエエーーーン助けてえぇぇーーーー!?」 PC1は『状況1のヴィラン』の相手で手一杯だしPC2はラーメン屋の親父に捕まって逃げられない! このままでは間に合わない…! 通りすがりの誰かーっ!! 助けてくれーっ!!–––––––––––––––––【チャレンジPC3:伯爵が攫われるのを助ける】<操縦> or <心理> or <作戦>
【失敗時の処理】一緒に連行されてクソ映画のネタバレ付き感想(前作からの解説付き)を長時間聞かされる。サニティを5減らす(精神的疲労)。–––––––––––––––––

【状況4】

 激闘を繰り広げ、数多のヴィランとラーメン屋の親父を退けた君たちは、無事に合流に成功する。 度重なる死の恐怖に心をすり減らしたドラキュラ伯爵は、アルマジロと蝙蝠の融合体のような姿でPC1の頭にしがみつき、世を憂う眼差しで夜空を見上げていた。 極めて自然かつ運命的な遭遇を果たしたヒーローたちは、各々の立場と情報を改めて認識することになるだろう。

【エンドチェック】

□お互いの情報を共有した

【解説】

 PC同士の合流と情報共有ロールを行ったのち、次のシーンへ移る。

【クエリー2:王森亜継志の正体は】

 登場キャラクター:PC3(PC2とPC1も登場していてよい) 舞台:街中(任意)

【状況1】

 PC3は、PC1の頭にくっついている謎生物が、王森亜継志氏の探していた『ドラちゃん』ではないかという可能性に思い至る。 しかし、もしそうならば、王森亜継志氏の正体は……まさか、アーガット・オン・ザ・ゲームの首領、犯罪王ジェームズ・モリアーティだというのだろうか!? 君は王森亜継志氏の正体に勘付いてもいいし、あくまで勘付かなくてもいい。

【状況2】

「ふっふっふ、ついに真相にたどり着いたようだねPC3くん…!」 可能性に思い至るPC3のもとに、英語教師・王森亜継志が現れる。王森亜継志はバッサァ!とマントを翻すと、次の瞬間、犯罪王ジェームズ・モリアーティその人へと姿を変える!
「君の体にこっそりと映像送信機能付きの発信機を着けさせてもらっていたのさ! おかげでさっきのドラキュラ伯爵のおもしろ映像がご覧のハイビジョン画質で上映可能!」「おまえなんか嫌いだーーーー!!!」
 なんと王森亜継志の正体はジェームズ・モリアーティだったのだ! モリアーティは馴れ馴れしくPC3と肩を組むと、ぴーぴー喚くドラキュラ伯爵を無視して嬉々とした様子で君に写真を見せ始める。
「『うわあドラキュラ伯爵ってアーガットのイケメン担当だと思ってたのにこんなダサい一面があったんだ。チョーショック。今日からモリアーティに推し変しよ』ってうら若き婦女子たちに言わせてやる計画は絶賛進行中だ。ちなみにこれが昨日からの48時間で撮影できたドラキュラ伯爵面白珍百景の中から選んだ選りすぐりの面白写真3種類なんだけど、君はどれが一番面白いと思う?」「お前なんか嫌いだーーーー!!!」
 モリアーティは君に三枚の写真を差し出した。
①トイレのウォシュレットにびっくりして砂になってそのまま便器に流されそうになっているドラキュラ伯爵の写真②野犬に日傘を取られそうになって綱引き状態でガチ泣きしているドラキュラ伯爵の写真③ホットワイン(血)を作ろうとして薄いカクテルガラスに入れた血を電子レンジに突っ込んだ末、グラスを割ってしまって説明書を片手に呆然としている写真
「さあ、君が選ぶのはDOCCHI!」「お前なんか嫌いだあああああーー!!!」
 君はこの三枚の写真から一番面白いと思うものを選んでもいいし、問答無用でモリアーティをパンチしてもいいし、もっと面白い写真を撮ろうとしてもいい。

【エンドチェック】

□この状況に対応した□グリッドを1点獲得した

【クエリー3:犯罪王の奸計】

 登場キャラクター:PC1(PC2とPC3も登場していてよい) 舞台:街中(任意)

【状況1】

「さーて、冗談はここまでにして、そろそろ本題に入るとしよう」 正体を現したモリアーティは、余裕たっぷりにヒーロー達へ、特にPC1へと告げる。「そろそろ、そのドラキュラくんを返してもらってもいいかな?」「彼はもともとウチの子だしね。それに、享楽主義者な節があるから、今回の事も喉元過ぎれば熱さなんて忘れてくれるさ。体が元に戻ればぜーんぶ元通り。フランケンシュタイン君曰く、三日ぐらいしたら自然と戻るらしいから、しおらしい姿なんて一時的なものだよ」「ああ、勘違いしないでね? 彼がいなくても、私は別に困らない。これは君たちの為を思っての提案だ。後ろから首筋をガブリとされたくはないだろう? 私としても、そんな形で君たちの寝首をかくことになるのは、美学に反するから嫌なんだ」 モリアーティはゆっくりと言い聞かせるようにヒーロー達へ告げる。それを聞き、PC1の背後に隠れていたドラキュラ伯爵は、震えながら君の顔を覗き込んだ。「う、うう、ヒーロー、私を引き渡すのか…? そんなことしないよな、なっ!? ………な?」 ドラキュラ伯爵の目が妖しく光る。君の意識にガツンと衝撃が走り、思考に霞がかかったように呆然とし、口が意図しないままに言葉を紡ごうと…………した瞬間だった!
「……ぶえーーーーッッッッ!!??」(スナァ)「ププーーーーーッッwwwwwwwwばーーーーーーーっかwwwwww自分のパワーの代償に耐えられなくなってやがるでやんのwwwwwwwうぇwwwwwwwwうぇwwwwwwww」
 次の瞬間、ドラキュラ伯爵の体が突然砂になった! そこで君は我に返り理解する、ドラキュラ伯爵は君に『魅了の凝視(学園マッドネスP114。代償はサニティ4)』を使おうとしたのだ! しかし自身の肉体と精神があまりにも雑魚すぎて自身のパワーに耐えられず自壊したらしい。 伯爵の行動をありったけ爆笑し、モリアーティはPC1へ勝ち誇ったように告げる。
「だがこれで分かっただろうヒーローくん! 結局彼は都合が悪くなれば自分の力で人間を言いなりにさせようとする生物なのだよ! 君たちとは相容れない怪物、正真正銘の悪党だ! 手元に置くのは危険だぞ! さあ、お互いの為にも、彼を返してもらおうか!」

【エンドチェック】

□この状況に対応した□グリッドを1点獲得した

【解説】

 ヒーローが伯爵を引き渡そうとする場合、伯爵は「イヤだーー!!アーガットになんて帰りたくないー!!」と叫んでPC1にしがみついて抵抗してはすぐ砂になるという行動を繰り返す。その様子を見たモリアーティが面白がって、「あくまで彼を渡す気はないようだネ!」とわざと勝手に話を進めてしまい、チャレンジ2に続く。

【チャレンジ2:フランケンシュタインは静かに眠りたい】

 登場キャラクター:全員 舞台:街中(任意)

【状況1】

「悲しいなあ、我々は分かり合うことが出来ないようだ。ならば仕方ない、プランB!」「レディース&ジェントルメン! ヒーロー諸君、そしてこの街の皆々様! 犯罪王が華麗に今宵の犯行を予告致しましょう! 本日の獲物は『ドラキュラ伯爵』!  この犯罪王モリアーティが、百戦錬磨のスーパーヒーロー達の手から、クソ雑魚吸血鬼と化した同胞を華麗に盗み出してみせようじゃあありませんか!」「カモンッ、ヴィクター!」
 夜空に響くモリアーティの高らかな言葉と共に、指がパチン!と鳴らされる。その瞬間、大地が激しく揺れ動き、街のガーディアンズ・シックス支部ビルが変形を始める! やがてそこに姿を現したのは、二足歩行型の巨大ロボット! ビルの中では大勢の無辜の人々が悲鳴をあげている。街の人々が驚愕と恐怖の悲鳴をあげる。その様子を見ながら、モリアーティが高らかと笑う!「あれこそはロボット・オブ・グレートガーディアンズ! 我らが天才フランケンシュタイン博士が一晩で仕上げてくれました! いやー変形ロボって男の子のロマンだよネ! でもやっぱり私的にカラーリングは赤と緑の方が……んん?」
 次の瞬間、ロボット・オブ・グレートガーディアンズはモリアーティめがけてありったけのビームを目から発射した。

【状況2】

「ブェーーーー!? 待ってヴィクター!? どういうこと!? 聞いてないよこれ!? 台本通りにやってよねえちょっとー!!??」『ワタシ オマエ コロス ホワイト ソシキ ツクル』「疲労で我を忘れている!!!」 モリアーティに散々こき使われたフランケンシュタイン博士は、作り上げた巨大ロボと共に暴走を始め、周囲の被害を顧みずにモリアーティへ大規模な攻撃を始める。モリアーティがどうなろうと知ったことではないが、このままでは街の人々が危ない! 対処に向かおうとしたヒーローたちに、ドラキュラ伯爵が身を乗り出して告げる。「ヒーロー、私を使え! 私の体を、あのロボットのコアに投げつけるんだ!」「知っての通り、私は死んだらすぐに砂になる! うまくコアに詰まればあのロボットを無力化させられるかもしれん! 何、気にするな、どうせ今の私はすぐに復活する!」「……さっきは……アーガットに戻りたくないばかりに、お前達を裏切るような真似をしてしまった。この状況は私の心の弱さが招いたものだ。今度こそ、お前達の力になりたい!」「やれーっ、ヒーローっ!」
–––––––––––––––––【チャレンジ判定】判定1:街の人々を誘導する…<生存> or <心理> or <作戦>判定2:G6支部ビル内の人々を救助する…<運動> or <追憶> or <隠密>判定3:ドラキュラ伯爵をコアにぶん投げる…<射撃> or <霊能> or <科学>
【失敗時の処理】決戦フェイズでグリッドが使用できなくなる。–––––––––––––––––

【状況3】

「うおおおおおおおおおおおお!!!」 ヒーロー達の誘導により、周囲から民間人達は無事避難を完了する。そしてロボット・オブ・グレートガーディアンズのコアめがけてぶん投げられた伯爵は、そのままコアの中で砂と化す! ロボット・オブ・グレートガーディアンズが唐突に動きを止める。そして次の瞬間、カッと眩い閃光に包まれると同時──…凄まじい勢いで、爆発した!「そんな、まさか、ヒーロー如きの為に身を犠牲にしたっていうのかね伯爵!?」 モリアーティが驚きの声をあげる。辺りには砕け散ったロボット・オブ・グレートガーディアンズ(元G6支部ビル)の瓦礫と、砂と化したドラキュラ伯爵の姿があった…。

【状況4】

「……フ。負けたよ、伯爵。君がまさかそこまでヒーロー達のことを思っていたとはね。どうやら、決意はいつになく固いようだ。……寂しくなるな」 モリアーティはどこかもの寂しげにそう言うと、PC1をはじめとしたヒーローにしんみりと告げる。「ヒーロー君たち、彼を頼むよ。私には君たちの言う正義だの愛だのはさっぱり分からないが……友人がそれを選ぶのなら、袂を別つだけの度量は持ち合わせているつもりだ」「モリアーティ……」 復活したドラキュラ伯爵は驚いた顔でモリアーティを見る。モリアーティは照れくさそうに笑うと、君たちに背を向けた……。
「……なーんてしおらしく撤退すると思ったか馬鹿めーーー!!!!」「ギャーーーーーーー!!!???」
 と、思ったら次の瞬間モリアーティはドラキュラ伯爵に目潰しを決めた。 ドラキュラ伯爵はそのまま砂になった。
「確かに多少想定外のことは起こったが! だがしかし! この程度でへこたれるようでは犯罪王の名折れ! この状況からでも大逆転の一手を打ってみせるのが犯罪界のナポレオン・モリアーティという男! 私の悪の人脈を舐めてはいけないぞヒーロー諸君。ところでさっきまで、この街には誰が居たでしょーーーーーうか!?」「……そうッ! 原因不明の爆発に巻き込まれたら、話も聞かずに盛大に逆ギレしてとりあえずヒーローに報復しようとする、とびっきりの悪党(ヴィラン)どもが何故か山ほどいたはずだ。こんな風にね!」 モリアーティは意識を失っていたフランケンシュタイン博士の頭を蹴っ飛ばして叩き起こしながら、拡声器を取り出すと、町中に響く大声で叫んだ。
「ヴィランのみなさーーーん! 今の爆発はこのヒーロー達のせいでーす!! やっちゃってくださーーーい!!!」「寝させろぉ…!」

【エンドチェック】

□どうにかした

【解説】

ヴィクター=ヴィクター・フランケンシュタイン。フランケンシュタイン博士のファーストネーム。美学はどうしたモリアーティ!=身内に向ける態度と対外的な態度って違うよね!

4.決戦フェイズ

【戦闘情報】

【エネミー】

・ジェームズ・モリアーティ(学園マッドネスP113)・フランケンシュタイン博士:エリア4(初期状態で『BS:疲労』状態)(学園マッドネスP114)・朧傳々:エリア3(基本ルールブックP208)・憑キ蜘蛛:エリア3(基本ルールブックP209)・ロードウォーリア:エリア3(基本ルールブックP214)・チャレンジイベント1の状況1で使用したヴィラン(※):エリア3

【エリア配置】

■PC初期配置 エリア1・エリア2 エリア2:ドラキュラ伯爵■エネミー初期配置 エリア4:モリアーティ/フランケンシュタイン博士 エリア3:朧傳々/憑キ蜘蛛/ロードウォーリア/チャレンジ1のヴィラン

【勝敗条件】

勝利条件:朧傳々以外のエネミーの全滅敗北条件:味方の全滅

【備考】

・『憑キ蜘蛛』『ロードウォーリア』『チャレンジイベント1の状況1で使用したヴィラン』は全てのエナジーを15として扱う。パワーは通常通りのものを使用する。・『ジェームズ・モリアーティ』『フランケンシュタイン博士』『朧傳々』は通常通りのステータスを使用する。・『チャレンジイベント1の状況1で使用したヴィラン』が『通りすがりのテクノマンサー』の場合、GMは任意のヘンチマンを選択し、当該キャラクターとして使用する。
・ドラキュラ伯爵は全てのエナジーを1として扱う(その為、エナジー消費パワーである『魅了の凝視』と『精神を蝕む牙』は使用することができない。使用した場合、不発のまま死ぬ)。 また全ての能力値・技能値を5%として扱う。ドラキュラ伯爵は行動順ロールに参加し、生きている限りはPCの味方として行動を行う(が、基本的に役に立たないだろう) ドラキュラ伯爵が生きている場合、攻撃パワーの射程が届くエネミーは必ずドラキュラ伯爵を攻撃しなければならない。エネミーの攻撃を受けて死亡したドラキュラ伯爵は、次のラウンドの行動順ロール時に同じエリアに復活する(つまり、最初に動くエネミーの攻撃を、運が良ければ一度だけ肩代わりする)
・フランケンシュタイン博士のパワー『モンスター誕生』で増やすヘンチマンは『ヴィランメンバー(基本ルールブック)』を推奨する。
・朧傳々は所有パワーの関係上、エナジーを減らすのに特殊な過程が必要になる可能性が高く、このシナリオではそれが『ドラキュラ伯爵を優先的に狙う』という条件と合わさって必要以上に戦闘が冗長になってしまう可能性がある。その為、朧傳々以外のヴィランが倒され次第、戦闘を終了させてしまうことを推奨する(朧傳々は冷静になり、憑キ蜘蛛を連れて帰る)
・この戦闘での『死亡』『絶望』は『戦闘不能』として扱う(つまり戦闘終了次第回復する)『戦闘不能』に陥ったPCはこのシナリオの経験点を獲得できず、代わりに『弱点:すぐ死ぬ吸血鬼』か『弱点:IQの下がった科学者』か『弱点:ブラック企業経営者』のいずれかを獲得する。 『汚名』は適応されるが、シナリオ終了後解除される。『スパーク』は適応して構わない。
・GMやPLが元ネタの漫画について詳しい知識を持っている場合は、エネミーの名称を以下の通りに変更しても良い(データ上の変更はない)モリアーティ→ヴィラン・スティグマおじさんフランケンシュタイン博士→ヴィラン・カイゾニウム(『モンスター誕生』で発生するヘンチマンの名称は『コカイゾニウム』とする)朧傳々→ヴィラン・下半身顔面憑キ蜘蛛→ヴィラン・クソ映画大好きロードウォーリア→ヴィラン・スピード違反チャレンジイベント1のヴィラン→通りすがりの新横市民

5.余韻フェイズ

各PC結末(一例)】

【PC1の結末】

 君の活躍のおかげで、ドラキュラ伯爵は無事に守られた。伯爵は感銘を受けたように君に礼を言い、心を入れ替えてこれからはヒーローとして活動すると約束し胸を張る。 しかし、その三日後。G6から連絡が届く。三日ほど見習いヒーローとして活躍していたドラキュラ伯爵が、書置きを残して姿を消したというものだった。書置きにはこうあった。『飽きたのでヴィランに戻ります。楽しかったです。ドラキュラ』 結局モリアーティの言う通り、享楽主義者は享楽主義者だった。君は書置きに呆れながら、次に出会った時は容赦すまいと心に決めるのだった。

【PC2の結末】

 ある日、君が戦いを終え、くたくたに疲れ果てながら自宅に帰ると、枕を抱えたヴィクター・フランケンシュタイン博士が玄関前に立っていた。 以前よりも更に濃くなったクマをごしごしと擦りながら、フランケンシュタイン博士は君に言う。「モリアーティの奴、今度は『なるはや』でロボット・オブ・グレートガーディアンズ・マーク2を作れと言い出しやがった! 奴にはほとほと愛想が尽きた! もーーーーーーー嫌だ! アーガットなんて辞めてやる! 私を逮捕してくれ、刑務所の方がまだ安眠できる!」 ……どうやら、まだまだ君は眠れないようだ。

【PC3の結末】

 君は今日もパトロールに精を出していた。そうして以前も通りかかった住宅街に差し掛かった時……以前同様、電柱にチラシを貼りまくっている王森亜継志ことモリアーティの姿を見つける。「や、やっほー、元気?」「て、てへ? いやね? 私も結構苦労してるんだよ? 火星人くんはいま喘息でダウンしてるし、クロウリーくんは徘徊癖があるっていうか……」 モリアーティは気まずそうに口笛を吹きながら、君にチラシを差し出した。「………………………………………………………………うちのヴィクター君知りません?」 2〜3発ブン殴っても許されるだろう。多分。