ヴァーサス・パラサイト


━━あなたの悲鳴は誰にも聞こえない。
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1.エントリーとシナリオ概要

【シナリオ概要】


 南太平洋に浮かぶ島、シニロ島。他の地域と比べて特殊な生態系を持つその島で調査を行っていた、生態研究機構『ノストロモ』の職員たちから、ある日奇妙なSOS信号が送られてくる。 あるヒーローは職員たちの護衛の為、シニロ島へと向かい。 あるヒーローは記憶を失いながら、何処とも知れぬ森の中で目を覚まし。 あるヒーローは、異星人の奇妙な言葉を耳にして。 異なる立場のヒーローたちの運命の輪は交差し、やがてヒーロー達はこの宇宙に潜む、恐るべき脅威と相対する。 ヒーローよ、おまえの力はわたしのものだ。

【事前情報】


 リトライ:2 初期グリッド:4 チャレンジ:2 クエリー:3
 想定時間:3〜4時間 推奨経験点:20点前後

【GMに要するルールブック】


・基本ルールブック(R1)

【注意事項】

 元ネタになっているホラー映画「エイリアン」シリーズ相応の流血描写あり。推奨経験点は10点以上。足りない場合は事前に配布しても構わない。 戦闘の難易度が少々高めであること・シナリオ内にヴィランが登場しないことなどから、DLHに慣れていないプレイヤー・GMだけで回すのにはあまり適さないシナリオだろう。

【エントリー】

【PC1:南太平洋の島】

 君は今、生態研究機構『ノストロモ』の職員たちとともに、独自の生態系を持つ島『シニロ島』へ向かう船のなかにいる。依頼を受けた君は、彼らの護衛任務に当たっていたのだ。 『シニロ島』は数百人ほどの原住部族と、特殊な生態系を持った島。島にはもともと住み込み調査を行っている者達がいたのだが、三日前から、シニロ島のチームからはSOS信号が送られ続けている。そのため君が護衛に雇われたのだ。 しかし君はその信号に、うまく言葉で説明できない、奇妙な違和感を感じていた…。

【PC2:いきたい】

 君は目を覚ますと、見知らぬ森の中にいた。記憶が混濁としており、何故こんなところにいるのか、君には原因が分からない。ここは何処なのかと途方にくれた君が周囲を伺うと、森の彼方に現代的な建物が見えた。あそこに向かえば何か情報をつかめるかもしれない。君はその建物へと向かうことにした。 しかし、何故だろう。君は今、無性に、自分の体を大切にしたい気持ちに駆られている。こんな気持ちは生まれて初めてだ…。

【PC3:奇妙な異邦人】

 街のど真ん中に宇宙船が墜落し、現れたハービンジャーと現場の人類が交戦状態にあるという報告を受け取り、君は現地へ急行している。 君が現地に到着した時、多くの警官隊や軍人に囲まれ、二足歩行の異星人と思しきハービンジャーが交戦状態でそこにいた。異星人は君が到着すると同時、この星の言語を解析し、不気味な音声で告げる。『ワザわイ、来タる』『コの星、シぬ』 その言葉を最後に、異星人は意識を失ってしまった。 君はその言葉の意味を探ることにした。

2.導入フェイズ

【イベント1:南太平洋の島】

 登場キャラクター:PC1 舞台:太平洋を移動中の船上

【状況1】

 君は生態研究機構『ノストロモ』の依頼を受け、5人の職員の護衛のため、南太平洋上に存在する島、『シニロ島』を目指す船の中にいる。
 シニロ島は数百人ほどの原住部族と独自の生態系を持った島であるという。かつては平穏なただの島と見なされていたが、ファースト・カラミティが起きて以後、現地の人類以外の原住動物に超人種の特徴に類似する能力があることが確認されたことで、長らく調査・監視が行われていた島だという。 以前から『ノストロモ』の職員が現地住民の協力のもとで生態調査に当たっていた。しかし三日前から現地職員と連絡が取れなくなったことで、新たな人員を現地へ派遣することになった。君は彼らの道中の護衛を任されたのだ。
「とはいえ、確認されてるのは軽いサイキック能力を持った蛇とか、空を飛ぶ魚とか、そういうやつらです。それも人間に発現している能力に比べれば軽微なね。ヒーローさんなら一捻りですよ」「気になるのは、三日前からシニロ島チームから送られてきてる信号ですね。あれがなければ、あなたのお力を借りることもなかったと思うのですが…」
 ノストロモの職員はそう話しながら、現地から送られてきたというSOS信号の解析を続けている。音声ではなく、緊急時用のモールス信号によって送られてきたというそれは、一定の間隔を置きながら、今も送られ続けている。「ただの機材の故障であることを祈りますよ」 ノストロモの職員は君にそう告げ、快い態度をとる。道中は何の問題もなく進み、やがて晴天と海原の先に、シニロ島が見えてきた。
 しかし、のどかなその島と、繰り返されるSOS信号の音に、君の心は理由なくざわめいた。何か、はっきりと言葉にできない、いやな予感を感じたのだ。 それでも、島は近づいてくる。 君はもう逃げることはできない。

【エンドチェック】

□ノストロモの職員とともにシニロ島へ向かった

【解説】

 既に現場に向かっているので、職員達を残してヒーローだけで島に向かうというのは不可能だ。 職員達に帰る・残るよう告げたとしても、彼らは「島には貴重な生物がたくさんいますし、原住部族の方との信頼関係の問題もあります。ヒーローさんを信頼していないわけではありませんが、無責任にお任せするわけにはいきません」というような形で頑なに断られる。 実際、PC1に彼らを説得できるだけの明確な判断理由があるわけではない。この時点では。 生態研究機構『ノストロモ』は、様々な生物の生態を研究するための民間団体だ。世界各地に支部を持ち、新種生物の調査や研究を主として行っている。サイオンやハービンジャー、場合によってはエンハンスドの能力についても長年調査を行っている団体であり、G6とも正式に連携を取っている民間団体の一つ、という設定だ(イメージとしては研究機構を兼ねた動物愛護団体のようなものを想像すればいいだろう)。シナリオ開始時点で特に後ろ暗い評判や、ヒーロー達と対立するような噂は存在しない。

【イベント2:いきたい】

 登場キャラクター:PC2 舞台:どこかの森の中

【状況1】

 君は目を覚ますと、どこかの森の中で倒れていた。
 コスチュームはヒーローとしてのそれだ。しかし、君は何故こんなところで倒れているのか記憶がない。体に怪我はなく、周囲に人影はない。鬱蒼と茂った森が、よく晴れた青空を覆い隠さんばかりに広がっている。 気温と植物の傾向から、ここがどこかの密林ではないかと君は察せられる。空腹は感じない。痛みもない。ただ、何故こんなところにいるのかが分からない。
 君が周囲を散策してみれば、やがて木々の先に、大きな建物が見え始めた。密林には不似合いの、スタイリッシュな雰囲気をした、非常に近代的な建築物だ。 上層階に位置するガラス窓の奥で、何かが動いたのを君は見る。少なくともあそこに行けば誰かがいるようだ。ここがどこなのか話を聞くことが出来るかもしれない。そうすれば、何故自分がここで倒れていたのか、理由がはっきりするかもしれない。 君はその建物を目指し歩き出した。
──もしかしたら、君は空を飛ぶことが出来るヒーローだったかもしれない。──もしかしたら、君は特殊な機械を手足のように扱うことの出来るヒーローだったかもしれない。──もしかしたら、君は並外れた身体能力で、軽々と密林を飛び越えられるヒーローだったかもしれない。
 しかし、何故だろう。 少なくとも今、君はその発想を抱かなかった。『歩いて建物に向かおう』と、極めて普通に、ただそう考えていた。
 しかし、何故だろう。 君は今、無性に、自分の体を大切にしなければと感じている。 こんな気持ちは生まれて初めてだ。
 奇妙な違和感を抱きながらも、しかしそれが明確な疑問に至るより先に、君の体はその建物を目指し、一歩、一歩と歩みを進めていた。

【エンドチェック】

□PC2が建物へ向かうことにした

【解説】

 PC2本人は覚えていないが、PC2は既にパラサイトに感染している。PC2が奇妙な思考に囚われているのは、パラサイトがPC2の思考を操っているからだ。 PC2がいるのはシニロ島の内陸部・ノストロモ研究所付近だが、この時点でPC2がそれを知る術はない。

【イベント3:奇妙な異邦人】

 登場キャラクター:PC3 舞台:繁華街

【状況1】

 君は繁華街に所属不明の宇宙船が墜落し、ハービンジャーと思しき存在が暴れだしたという報告を受け、現地へと急行している。 君が現地に到着した時、そこには既に多くの警官隊が到着していた。倒壊した家屋の中央で、2mはあるだろう巨体を持った二足歩行型の生物が、武器を構えて警官隊と睨み合っていた。人類と類似しながらも、明らかに人類とは異なる特徴を有したその生物の頭部は、奇妙なメットで覆われてる。『警告する! 武器を捨てておとなしくしろ! 繰り返す、武器を捨てろ!』 警官隊はメガホンを使ってハービンジャーと思しき生物へ告げる。しかしハービンジャーと思しき生物は、手にした武器を構え、周囲への警戒を解く様子はない。 さて、どうしよう?

【状況2】

 君はそのハービンジャーになんらかのコンタクトを行ったかもしれない。話しかけたかもしれないし、問答無用で攻撃を行ったかもしれないし、あるいは、ただ見守っていただけかもしれない。 攻撃を行うならば、その抵抗の末に。交渉を行うのならば、その結果として。見守っていたのなら、やがて。ハービンジャーは周囲へ視線を走らせると、繁華街の看板と、警官隊のメガホンの音声を解析し、音声を切り張りして再生したようにいびつな声で、その場に集まった人間たちへ告げた。『ワザわイ、来タる』『コの星、シぬ』 その言葉を最後に、ハービンジャーはその場に膝をつき、意識を失ってしまう。 これは警告なのか。それとも脅迫? 君はハービンジャーの言葉の意味を探ることにした。

【エンドチェック】

□異星人の言葉を聞いた

【解説】

 この異星人は、パラサイトによって故郷を滅ぼされた異星人『ハンター』である。 彼は自分たちの星を滅ぼしたパラサイトを絶滅させたいと思っているが、彼自身もパラサイトに感染していることから、パラサイトに導かれるままに地球へとやってきてしまった。しかしかろうじて残っている自分の意思をふりしぼり、人類に警告を行った。 ハンターの発声機構は人類の言語を話すのに向いていない為、彼は頭部を覆うメットに備え付けられた翻訳機能を用いて会話を行う。

3.展開フェイズ

【クエリー1:捕食者】

 登場キャラクター:PC3 場所:生態研究機構『ノストロモ』研究所

【状況1】

 あのハービンジャーはその後、警官隊やヒーローの手によって、生態研究機構『ノストロモ』の研究所へと搬送された。その性質上、一般の病院に搬送するわけにはいかなかったのだ。そのため、G6とも協力体制にあり、現地近くに研究所を所有していた『ノストロモ』の研究所に搬送された。
 君は『ノストロモ』の研究所を訪れる。職員は快く君にハービンジャーの状態を説明した。「便宜上彼と呼びますが……彼の所持品を調べたところ、やはり人類よりもはるかに高度な文明をもつ生命体のようでした。念のため、武器類は隔離して調査を行っています。 彼自身の肉体も、ハービンジャーの類型通り、人類よりも発達した身体機能を有しているようです。反面、眼球は随分と退化しているらしく、恐らくは熱探知を始めとした各種体内センサーで周囲を認識するタイプの生命体と思われます。 保護時の状況と併せ、コミュニケーションが可能な知能を有していると考えられます。目を覚まし次第、彼とコンタクトを行う予定です。ヒーローさんの監視があるのは、こちらとしても願ったり叶ったりですね」
「ただ、少し気になる点が……」 気になる点について促せば、研究員は不思議そうにデータを見ながら君に告げる。「彼の体内から、複数の微小な生命反応が感知されたんです。完全な異種族ですので、妊娠しているという可能性もゼロではありませんが……?」 話をしながらハービンジャーが隔離されている一室を目指している時、研究所にけたたましいサイレンの音が鳴り始める。機械的なアナウンスがトラブルの発生と避難を促す中、奥からかけつけてきた職員が君を見て、すがりつく。
「あ、あなたヒーローですね!? 助けてください! あのハービンジャーが目を覚まして、手当たり次第に暴れ出したんです!」

【状況2】

 職員に示された部屋に君が駆けつけると、そこでは拘束具を破壊した例のハービンジャーが、自分に銃を突きつける研究員の首を絞め上げているところだった。ハービンジャーの仮面は外され、退化した眼と、口の中にもう一つの口があるという、醜い人外の素顔が顕になっていた。周囲には大勢の研究員たちが意識を失い倒れている。ハービンジャーは研究員から銃を奪い取ると、君に襲いかかってくる! PC3は【白兵】【射撃】【霊能】のいずれかで判定を行う。これはチャレンジ判定ではない為、失敗したとしてもリトライは消費しない。成功しても失敗しても【状況3】へ進む。

【状況3】

 ハービンジャーは君と交戦を行う中、隔離されていた自分の装備品を発見すると、素早くそれに駆け寄る。銃のような装備品を掴んだ時、ハービンジャーはそれを君に向けようとしたが、その腕を自分の逆の手で押さえ込み、震える手で銃口を自分の頭部へ向け、引き金を引こうとした。自殺する気だ! 君はここでハービンジャーの死を見届けてもよいし、その死を妨害してもよい。

【状況4-A:妨害した場合】

 君に妨害され、ハービンジャーの自殺は未遂に終わる。 ハービンジャーは自分の死を止めた君を呆然と見やっているが、やがて君の思考の中に、直接彼の事情を送り込み始める。はっきりとした言葉ではない、映像を伴った説明を、君は彼から瞬間的に送り込まれる。
----------- 曰く、彼らは遠い宇宙にある惑星に住んでいた戦闘種族であった。文化としての戦闘を重んじ、強い者との生死のやりとりに悦びを見出し、より強い生命体を探すための侵略行為を良しとし、強者の首をトロフィーとし、それに伴う高度な文明を築いてきた種族だ。その性質を地球上の言語に当てはめるなら、『狩人(ハンター)』と言い表せるだろう。 しかし、彼らは急速に滅びた。ある無人の惑星を調査した際に、そこで奇妙な生命体に『感染』したからだった。大気に紛れた微粒子は、それ一つ一つが意思を持つ生命体であり、他の生物に寄生し、その生体機能を奪い取ることで進化していく存在だった。 その『寄生体(パラサイト)』は瞬く間にハンターの星を飲み込み、ハンターを支配下へと置いた。パラサイトに寄生された生き物は、その体だけではなく、意識までもをパラサイトにとって都合のよいものに操作されてしまった。 彼は母星の全てを破壊する、最後の爆弾を起動させた存在だった(映像は核爆弾に似ていた)。それによって彼の星はパラサイト共々滅びたが、彼もまたパラサイトに寄生されていた。 パラサイトに寄生されたことにより、彼は宇宙に分布するパラサイトの存在を認識出来るようになった。彼は体内のパラサイトに導かれるままに地球へとやってきてしまった。しかしかろうじて残っている自分の意思をふりしぼり、人類に警告を行った。-----------
 思念による説明を終えたハービンジャー・ハンターの腹部で、何かが蠢くようにぐねぐねと動き回る様子を君は見る。説明を終えると、ハンターは、この星の言語を解析し終えたらしく、流暢な言語で告げた。『強き戦士よ(状況2の判定に失敗している場合、「か弱き生命よ」に変化)、伝えるべきことは伝えた。あとは私の船を調べろ。 私を死なせてくれ。それが望まれぬのならば、いま、ここで私を殺してくれ。 私が死ねば、私の中のパラサイトは死ぬはずだ。 どうか、私がまだ私であるうちに、誇りある戦士でいられるうちに!』 君はこのハービンジャーを殺してもいいし、自死を見届けてもいいし、死ぬことを許さなくてもいい。

【状況4-B:妨害しなかった場合・自死を認めた場合】

 君がハービンジャーの死を見届けることを選ぶならば(あるいは、結果的にそうなるとしたならば)ハービンジャーは自らの武器を頭部に当て、音を切り貼りしたような歪な言葉で最後に君に告げる。『強キ戦士よ(状況2の判定に失敗している場合、「か弱き生命よ」に変化)、感謝スる』『災イの真実は私ノ船に』『わタしは最後マデ、誇りある戦士でいたカッた』 そう言い残すと、ハービンジャーは自分の頭部を自分の銃器で破壊し、死に至ろうとする。しかしその瞬間、PC3の背後からハービンジャーめがけて麻酔銃が発射され、すんでのところでハービンジャーは意識を失う。彼が気絶した直後、彼の腹部から何かが飛び出そうとするようにぐねぐねと動き回るものがあったが、それもやがて動かなくなった。 麻酔銃を撃ったのはノストロモの職員であった。彼らは青い顔をしながら、「何かがこの星に起きようとしているのなら、情報を持っている彼をここで失うわけにはいきません」とし、ハンターの保護を願い出る。

【状況5】

 ハンターの宇宙船はノストロモが回収し、同じ研究所で解析を行っている。 状況4でハンターから事情を聞いて、あるいは示唆を受けて、ハンターの宇宙船を調査するのであれば、ノストロモの職員たちは快くそれを受け入れるだろう。 宇宙船にはハンターが残したパラサイトに関するデータが残っている。PC3がハンターの事情を知らない場合、ここで改めて説明してもよいだろう。 宇宙船では、地球上でパラサイトが存在しているエリアが特定されている。 データ曰く、『シニロ島』全域がパラサイトによって感染汚染を受けていることを君は知ることになる。

【エンドチェック】

□ハンターの事情を知った□シニロ島が寄生生物パラサイトに汚染されていることを知った□グリッドを1点獲得した

【解説】

 侵略生命体である彼らの母星が滅んだのはある種の自業自得ではあるが、ハンター自身はそれを当然の価値観として生きてきている為、人類の倫理観とは根本的な齟齬がある。パラサイトとの生存競争に敗北した自分達が滅びを迎えるのは当然のことだと認識しているが、自分達を滅ぼしたパラサイトという存在への敵愾心は抱いている。 ハンターの身柄は基本的にノストロモの研究所に預けられる。PC3がハンターをこの時点で殺そうとするのであれば、ノストロモの職員達が多少強引にでもそれを止めるだろう。表向きは救命活動の為、寄生体に関する調査の為などだが、実態はこの時点でノストロモの職員達に寄生しているパラサイトが、有益な戦闘力をみずみず失わせないようにしているのだ。 PC3が現地に同行させたいと考えるのであれば、シニロ島へ同行させても構わない(同行しているとしても、チャレンジ2にはスムーズに繋げられるはずだ)。同行させた上で殺そうとするのであれば、パラサイトに操られたハンターが抵抗し、シニロ島ではぐれてしまうとすればよい。 ハンターが市街地や研究所で暴れたのは、彼の中に寄生するパラサイトが指示したものであり、同時に彼自身が混乱していたことで、拘束されることを良しとできなかったせいでもある。 地球上に存在するパラサイトは、ハンターが地球へ持ち込んだものではない。何故地球にパラサイトが存在しているのかは、この時点では不明なままだ。

【クエリー2:Alien】

 登場キャラクター:PC2 舞台:謎の施設

【状況1】

 君は無事に森を抜け、垣間見えた建物へとやってくる。流線的なデザインが特徴的な建築物に人の気配はなく、建物は誰もいないかのように静まり返っている。 人影が見えた上層階へ向かううち、君はこの施設が研究所であるらしいことを知る。研究室と思しき部屋はもぬけの空だった。どうやらこのエリアの生態研究を行っていたらしく、調査記録を見る限り、このエリアは『シニロ島』という南太平洋の島であるようだ。 君はこんな島に来た記憶はない。何故自分はこんなところで倒れていたのだろうか? やがて、君は血の匂いを感じ取る。匂いのもとへ向かったとき、君は同じフロアに折り重なるようにして倒れている大勢の人々の姿を見た。 人々は二種類に分かれていた。一つは、傷一つ負わず、懇々と眠り続けている人々。もう一つは、目を見開き、腹部に内側から食い破られたような巨大な穴が開いた状態で、既に絶命している人々…。

【状況2】

『開けて! 誰か! 開けて!』 この研究所を訪れて初めて、君は生きた人間の声を聞く。声のもとへ向かえば、君は強化ガラスで出来た扉越しに(それはまるで滅菌室のようだった)、女性が助けを求めている姿を目にする。女性は泣きじゃくり、錯乱しながらも必死に強化ガラスを叩き、君に助けを求めてくる。『助けて、やだ、死にたくない、やだ、でてくる、やだ、痛い、死にたくない、開けて! 開けて! 開げでえええええ!!!』 女性の腹部は異様な形に蠢いている。まるでその中に何かがいるかのように。 君は彼女の求めに応じて扉を開けてやってもいいし、開けずに様子を見届けてもいい。さあ、どうする?

【状況3-A:扉を開けた】

 扉を開かれると、女性は心底安堵した顔を浮かべて部屋から転がりでてくる。しかしすぐに腹を押さえてその場にうずくまり、悲鳴をあげながら痙攣し始める。女性の腹は限界まで膨れ上がる。彼女は自分の腹を見、君の顔を見ると、絶望しきった声で君に告げた。『親、親を探して! みんな死んじゃう──』
 次の瞬間、シャボン玉が弾けるように女の腹が割れた。裂けた女性の腹から鮮血が吹き上がり、その中から赤黒い影が姿を見せる。ぬらぬらと鮮血に濡れる人影は、人間と同じ形をした肉塊だった。目も、鼻も、口もない、のっぺりとした立体感のあるシルエットに、血と脂がぬらぬらと光っている。 肉塊は君のもとに近づいてきた。君は戦闘態勢に入ろうとしたかもしれない。しかし、君は武器を、力を構えることができなかった。戦わなければならないと思う意志とは裏腹に、君の体が言うことを利かないのだ!
 血塗れの肉塊は君のもとに近づくと、ゆっくりと君の腹に手を添え、いたわるように優しく撫でた。そして次の瞬間、君の目の前で幾千幾億もの粒子となって爆ぜ、溶けるようにその場から消えてしまった。

【状況3-B:扉を開けなかった】

『開けて、やだ、死にたくない、やだ、うまれる、うまれ、痛い、痛い痛い痛いいたいやああああああああ!!』 女性は狂ったように扉を叩き続けている。しかし強化ガラスの扉は、その視認性の良さとは裏腹に、女性一人の力で壊せるものでは決してなかった。
 やがて女性は腹を押さえてその場にうずくまり、悲鳴をあげながら痙攣し始める。女性の腹は限界まで膨れ上がる。彼女は自分の腹を見、君の顔を見ると、絶望しきった声で君に告げた。『親、親を探して! みんな死んじゃう──』 次の瞬間、シャボン玉が弾けるように女の腹が割れた。裂けた女性の腹から鮮血が吹き上がり、その中から赤黒い影が姿を見せる。ぬらぬらと鮮血に濡れる人影は、人間と同じ形をしていた。目も、鼻も、口もない、のっぺりとした立体感のあるシルエットに、血と脂がぬらぬらと光っている。 肉塊はゆっくりと振り返り、ガラス越しに、君のもとに近づいてきた。君は戦闘態勢に入ろうとしたかもしれない。しかし、君は武器を、力を構えることができなかった。戦わなければならないと思う意志とは裏腹に、君の体が言うことを聞かないのだ!
 血塗れの肉塊はガラス扉の前に近づくと、ゆっくりとガラス越しに君の腹を示し、いたわるように撫でるような動きをした。そして次の瞬間、君の目の前で幾千幾億もの粒子となって爆ぜ、溶けるようにその場から消えてしまった。

【エンドチェック】

□PC2が女性の末期を見届けた□グリッドを1点獲得した

【解説】

 衝撃的な光景と、助けを求める人物、そしてその人物の中に宿る『何か』をPC2が目にするシーンだ。 クエリーとしては、女性の助けに応じて扉を開けるか明けないか、という点になるだろう。PC2はヒーローとしての使命感として女性を助けようとドアを明けてもいいし、冷静に状況を顧みて様子を見てもいいし、あるいはあまりにも突然の出来事に、ただ呆然としていたとしてもいい。 シナリオ上の役割としては、PC2およびPC2のプレイヤーが、自分の身に将来的に何が起きるかを薄々察するシーンとしての役割を持つ。

【チャレンジ1:シニロ島】

 登場キャラクター:PC1・PC2・PC3 舞台:シニロ島

【状況1】

 三人のヒーローたちは、各々異なる立場、異なる方法で、シニロ島へと訪れている。 PC1はSOS信号を受け、非戦闘員たちを護衛するために海を渡って。 PC2は原因は不明ながら、シニロ島で目を覚ましたことで。 PC3はシニロ島で起きている異変を察し、島へと向かっていた。 時、場所、タイミングを別にして、3人のヒーローたちはシニロ島へと足を踏み入れる。そして、それぞれ異なる試練を迎えようとしていた。
–––––––––––––––––『チャレンジ判定について』 このチャレンジ判定は、それぞれのPCごとに固定のチャレンジが設けられている。 支援を適応することは可能とする。別の場所、別の時間であったとしても、誰かが起こした行動がバタフライエフェクトのように結果的に影響を及ぼす可能性はゼロではないからだ。–––––––––––––––––

【PC1のチャレンジ判定】

 PC1は『ノストロモ』の職員たちと共に、シニロ島の原住部族たちの集落にある港へと上陸する。 しかしすぐに異常を察せられるだろう。集落に奇妙なほど人気がないのだ。 家々では日用品が散乱し、桟橋には放置された釣竿が軋んでいる。それはまるで、日常の最中に重大な何かが起きた痕のようだった。「これは一体…?」「何があったんだ? 集落の人たちはどこに?」「おーい、誰かいないのか、おーい!」 職員たちは集落の住民を探して調査を始める。君も彼らを手伝う必要がありそうだ。–––––––––––––––––判定:<心理> or <隠密>……村の調査を行う
失敗時:PC1のチャレンジ2の判定内容が変化する。–––––––––––––––––

【PC2のチャレンジ判定】

 PC2は研究所内を彷徨い、この研究所で何が起きたのかを改めて調べている。女性の残した『親』という言葉が何を示しているのかも。 君は改めて研究資料を調べる。 調べている最中、君の腹のなかで、ずるりと何かが蠢いたような感触が確かにあった。–––––––––––––––––判定:<追憶> or <科学>……研究所の資料を調べる
失敗時:「BS:憔悴4」を受ける。–––––––––––––––––

【PC3のチャレンジ判定】

 君はなんらかの方法で、急ぎシニロ島へと向かっている。 ハンターの記録によれば、シニロ島の汚染源は島の地下にあるという海底洞窟のようだ。海中を調べる必要があるだろう。–––––––––––––––––判定:<操縦> or <知覚>……海底洞窟を調査する
失敗時:PC3のチャレンジ2の内容が変化する。–––––––––––––––––

【状況2:PC1】

 君は村を調査したことで、村人たちが向かったと思しき場所を特定する。そして君はその衝撃的な光景を目にすることになった。 それはこの島の原住民族と思しき人々が、森の奥に隠された祭壇のようなものの前で、全員死亡しているという光景だった。集落の人々は老若男女を問わず、子供すらも、腹を内側から食い破られたような傷を負い、苦悶の表情で絶命していた。 彼らが集まった祭壇には、古代文字とレリーフが彫り込まれていた。極めて古い時代に作られたと思しき祭壇から読み取れることは、古代に空から巨大な燃える石が島へと降り注ぎ、その石により島の生命が繁栄したということだった。

【状況2:PC2】

 君は研究所を改めて詳しく調査したことで、職員の研究日誌を発見する。そこに記されていたのは以下の情報だった。
–––––––––––––––––・三日前、職員たちは島に未調査の洞窟を発見する。調査のため、何人かの研究員が洞窟内へ向かったが、めぼしい発見はなかった。しかしその夜、洞窟に向かった研究員たちが一斉に体調を崩し、体内から次々にあの化け物を生み出していった。おそらくは空気感染だろう(震える文字でパラサイトと走り書きされている。以後の記録はこの寄生体をパラサイトと称している)
・その後、パラサイトたちは次々に職員たちに感染し、犠牲を出していった。感染した人間と感染していない人間は、状態が進行しない限り、外見上は区別ができない。しかし感染した人間はパラサイトにとって都合の良い行動を無自覚にとってしまうようだ。
・寄生された人間は、一定時間後、体内からパラサイトを出産する。正確には、十分に成長したパラサイトの成体が、人間の体内を食い破る。パラサイトの感染進行度には個体差があり、旧世代よりも超人種の方が感染しにくく、出産までの期間が長引く傾向にある。しかしより強靭な生命体から出産されたパラサイトは比例して強力なパラサイトとなる。(ジョンの末期はひどかった、という記載が残されている。職員にサイオンがいたのかもしれない)
・パラサイトに感情はなく、彼らは生物の本能に従い、繁殖と進化を目的として寄生を繰り返す。しかし、パラサイトは最初に発見された時よりも確実に、そして恐ろしい速度で知能をつけてきている。人間に寄生することで進化しているのだ。
・最初の異常が発見された時から、本土に緊急連絡と救助要請を行った。明日にもヒーローが来てくれるはずだ。(『それまでどうにか耐えなければ……私が私であるうちに……』という記載が掠れた文字で残されているが、研究日誌の傍らには、腹に大穴の開いた男性の死体が横たわっていた)–––––––––––––––––
 これらの記録を読み、君は思い出す。君はこの記録に見覚えがあるのだ。 君は2日前の時点でSOS信号をキャッチし、救助のためにこの島を訪れ、これらの資料を見た──そして地下洞窟へ向かった。その地下洞窟の奥で、海へと突き落とされたのだ。共に救助に来たはずの、5人のノストロモの職員たちによって。

【状況2:PC3】

 君はなんらかの方法で海底の調査を行った。特殊な機械を使ったのかもしれないし、君自身がダイビングして調査を行ったのかもしれない。 君が水中を調べると、確かに海底洞窟があることを発見する。しかし洞窟の中へと入ってしばらく進むと、中には不自然なまでに多くの生物──鮫であったり、魚であったり、果ては鯨であったり!──が寄り集まり、壁となり、まるで守るように道を固めているのが分かった。海洋生物たちは君の接近に気付くと、怒涛の勢いで、勢いよく君に襲いかかってきた。 洞窟の生物は軒並みパラサイトに汚染されていた。狭い海底洞窟の中を、一人で突破するのは困難だった。下手をすれば君自身が感染する危険もある。
 君は襲いかかってくる多数の海洋生物たちから逃れ、海底洞窟を離れていく。その時、君は洞窟の奥に奇妙に脈動する『何か』がいることに気付いた。しかしそれ以上をこの場で観測することは出来なかった。 幸いに、洞窟は島の内部に向かって伸びていた。おそらくは島の中に別の入り口となる地下洞窟があるだろうと君は察する。そちらからの方が人間にとっては攻略しやすいだろうとも。
 洞窟から離れていきながら、君はふと察する。洞窟の豊富な生命に比べ、シニロ島周辺の海洋に、生物の姿が全く確認できないのだ。皆パラサイトに感染してしまったのだろうか? ……では、それはこの海のどこまで? そんな嫌な予感が君の脳裏に過ぎった。

【エンドチェック】

□各PCが調査結果の情報を知った

【解説】

 チャレンジ判定に失敗してしまった場合は、失敗時のデメリットを受けた上で、【状況2】の情報を出すと良い。調査に手間取ってしまった、とすれば都合がいいだろう。時間がかかればかかるだけ、PCにとって不利な状況になるシナリオだからだ。 PC1とPC3がチャレンジ判定に失敗したまま進行するのであれば、チャレンジ2の判定内容がPC2と同じものに変化する。調査に手間取った結果、PC1とPC3も、自覚のないままにパラサイトに感染してしまうのである。

【クエリー3:喚ぶ声】

 登場キャラクター:PC1 舞台:シニロ島

【状況1】

 PC1は職員の案内に従い、研究所を訪れる。そこでPC1は改めて、研究所の惨劇を目にすることになる。原住民たちと同様に腹に大穴を開けて死んでいる人々や、こんこんと眠り続けている人々。何かが起きたのは明らかだ。君は研究員たちと共に、研究所内を調査した。そうして改めて、パラサイトと呼ばれる脅威のことを知った。 そんな時だ。君の通信端末に、G6から連絡が入った。『(ヒーローネーム)さん! 良かった、ようやく繋がった! ご無事ですか!』『側にノストロモの職員はいますか!? 彼らからすぐに離れてください!』 通信手の奥からは、戦闘が行われているような激しい音・悲鳴・怒声が聞こえてくる。何かが起きているらしいと否応なしに察せられるだろう。

【状況2】

 通信手は時間が惜しいと言わんばかりに、早口で君にまくし立てる。『本土で活動を行っていたノストロモの職員たちが、次々に奇妙な生命体を体内から放出し始め、街が大混乱に陥っています! 彼らは全員、すでにパラサイトに感染していたんです! こちらでは他のヒーローたちが対応に当たっていますが、あなたもすぐに職員たちから離れて──!!』 通信はひときわ大きな破壊音のあと、ノイズとともに途切れてしまう。 その時、君の後ろから「うわあーッ!」という職員の悲鳴が聞こえてきた。

【状況3】

 君が駆けつければ、そこでは4人のノストロモの職員たちが、床に空いた穴を覗き込み、声をかけている。「と、突然床が崩落して…! どうして? 老朽化はしてないはずなのに!」「おい、大丈夫か、おーい!!」 地面に開いた穴は、そのまま地下深くに繋がっていた──それは洞窟のように見えた。中からは潮の臭いがする──暗闇の中からは、もう一人の職員の錯乱した悲鳴が聞こえてきた。「たっ、助けて! 助けてくれ! 化け物が! 化け物がいる! なんだこいつら! く、来るな、来るんじゃない、助けてくれえー!!」 地上の四人の職員たちは困ったように顔を見合わせ、すがるようにヒーローへ、君へ、視線を向ける。「どうしよう、どうしましょう、どうしたら!」「ヒーローさん、助けてください!」「お願いします、彼を助けてあげて!」 ……君はどうする、ヒーロー?

【エンドチェック】

□PC1が決断した□グリッドを1点獲得した

【解説】

 助けを求める近くの救助対象と、救助対象から離れろと告げる遠方の扶助組織、君はどちらを選択するだろう? どちらを選んだとしても、それは決して誤りではない。 この時、PC2は同じ施設の別の階にいる。PC2の体内のパラサイトが、PC1のいるエリアに極力近づけさせまいと無意識に遠ざけさせているのだ。もしかしたらクエリー2で死亡した女性の亡骸を、PC1もまた目にするかもしれない。 しかしこれだけの大きな物音が聞こえれば、次のシーンではPC2も現場に駆けつけることができるだろう。 PC1が洞窟に入ることを選択するのなら、入る直前で次のシーンに進む。入らないことを選ぶのであれば、職員にそれを告げる、あるいは何らかの行動を起こしたタイミングで次のシーンに移ると良い。

【チャレンジ2:ヴァーサス・パラサイト】

 登場キャラクター:PC1・2・3・ハンター 舞台:シニロ島深部

【状況1】

 PC1が地下へ向かおうとする、あるいは職員たちから離れようとする時、物音を聞きつけたPC2・洞窟を探して調査を行っていたPC3が現場に合流する。 PC2はその場にいる4人のノストロモの職員、そして洞窟の中から聞こえてくる職員の声が、自分を海に突き落とした職員と同じ者達だということに気付くだろう。 ヒーローたちは自由に情報共有を行って良い。その間にも、4人の職員たちは3人のヒーローたちへにじり寄る。「あんたらヒーローなんだろ、頼むよ。下に行ってくれ」「どうしたんだ? 俺たちが信じられないのか? なんでそんな目で俺たちを見るんだ?」「もう嫌、もう嫌よ、家に帰りたい、何が起きているの?」

【状況2】

 その瞬間、君たちのいる研究室のフロアに、一機の宇宙船が突っ込んでくる。崩落し、燃え上がる研究所の中、宇宙船から姿を現れたのは、ハービンジャー・ハンターの姿。しかしPC3であれば、彼の動きが研究所で見た時と異なり、極めてぎこちなく、不自然なものであると気付くだろう。まるで相反する二つの意思が、一つの肉体の支配権を奪い合っているように。 ハンターはいびつな動きでヒーローたちへ武器を向け、攻撃を始める。しかし同時、ハンターは君たちへ告げる。
『私に構うな! 地下へ向かい、パラサイトの『親』を殺せ!』『この星のパラサイトは私の星のパラサイトとは違う。何らかの力により弱体化している! 統率を取るための頭脳、群れを司る女王、集合体のコアがいるはずだ! それを殺せ!』『そうすれば既に巣を離れたパラサイト達も一斉に死ぬはずだ! 私がここに引き寄せられたのがその証、ここは奴らにとっての急所だ!』
 ハンターの言う「何らかの力」とは、太母結界のことではないか? とPC達には察せられて良い。太母結界はハービンジャーの力を抑制する効果を持った、この星に張られた結界。パラサイトが宇宙からきた生命体、広義のハービンジャーであるとするのなら、彼らの力が他の惑星に比べて弱体化している可能性は高いだろう。 ハンターの言葉を受けると、職員達は唐突に、かつ不自然にヒーローたちを引きとめようとする。「だめ! やめて、そんな危険なことをしてはいけない!」「あの化け物は何なんだ!? 助けてくれヒーロー、行かないで!」
 そしてその瞬間、PC2もまた他のヒーローたちを引き止めなくてはならないという強い意識に襲われる。そしてその意識がより一層強くなった時。 PC2の腹のなかで、ひときわ大きく、『何か』が蠢き、腹を食い破る気配がした。
–––––––––––––––––■PC1のチャレンジ判定□職員たちを振り払い、地下へ向かう:<運動>-10% or <意志>-10%*失敗時の処理:孤立を受けた状態で決戦フェイズに突入する。*特殊処理:PC1がチャレンジ1に失敗している場合、 このチャレンジ判定はPC2と同じものに変化する。
■PC2のチャレンジ判定□パラサイトの出産に耐え、地下へ向かう:<生存>で判定を行う。成功時、ライフのデスチャート4を振る。失敗時、ライフのデスチャート7を振る。その後、PCのライフを0とする。*失敗時の処理:「死亡」「気絶」「瀕死」「硬直」などの状態異常・戦闘不能が発生した場合、決戦フェイズでPC2の所持パワーのうち一つを使用不可とする。どのパワーを封印するかはGMが自由に決めてよい。*特殊処理:PC2が「死亡」「気絶」「瀕死」「硬直」した場合、上記処理を施したのち、PC2は辛うじて蘇生してよい。
■PC3のチャレンジ判定□ハンターの攻撃をかいくぐり、地下へ向かう:<白兵>-20% or <射撃>-20% or <霊能>-20%*失敗時の処理:狼狽を受けた状態で決戦フェイズに突入する。*特殊処理:PC3がチャレンジ1に失敗している場合、このチャレンジ判定はPC2と同じものに変化する。–––––––––––––––––

【状況3】

 PC2がチャレンジ判定を終えると、PC2の腹を食い破ってエネミー「パラサイト・(PC2)」が出現する。親の危機を察して、予定より早いタイミングで外へと現れたパラサイトは、研究所で見たものよりもやや小ぶりだった。しかし瞬く間に大気中から数多の粒子を取り込み、それは研究所でPC2が見たのと同じ、目も鼻も口もない、シルエットだけが人間を模したような、ぬらぬらと血と脂で光る肉の塊へと強引に進化を遂げ、ゆっくりとヒーロー達へと近づいてきた。 PC2は出産により重症を負うが、辛うじてその肉体は死を免れる。 すべてのPCたちがチャレンジ判定に成功するのであれば、君たちは追っ手を振り払い、地下へ向かうことが出来る。

【状況4】

 君達が洞窟の中へと突入すると、光の届かない洞窟の中には、無数の言葉なき生命体が蠢く気配、濃密な血の臭いが充満していた。闇の中で何かが蠢き、足元は海水に濡れている。透明度の低い濁った水中で、何かが脈動しているのが見えた。目を凝らせばそれは、一つの隕石に取り憑き、ひとかたまりにより集まった、幾億幾兆もの微粒子の集合体だったのだ。それは生物の臓器のように脈動を繰り返しながら、その動きに併せ、海中に、そして大気中に、彼らと同じ微粒子を噴出し続けていた。その様はまるで生物の親が、自らの子を産み落としている姿に酷似していた。 これが『親』だ、と君達が察すると同時、周囲の闇が蠢く。びちゃり、ぐしゃり、と湿った音を立てながら、人間と同じ形をしたパラサイトの成体たちが現れる。 更に洞窟の入り口から滑り落ちるようにして、パラサイトに体を操られたハンターが落ちてくる。ハンターはヒーロー達の目の前でぎくしゃくとした動きで立ち上がると、PC3を見て告げる。『今度こそ、殺してくれ』 その瞬間、ハンターの腹が裂け、そこからハンターと同じ形をしたパラサイトが生み出される。それは呻き声を上げ痙攣するハンターを海中へ蹴り落とすと、スムーズな動きでハンターを模した武器を君たちへ向けた。 決戦フェイズに突入する。

【エンドチェック】

□地下へ向かった

【解説】

 パラサイト・(PC2)を出産後のPC2は、意識の縛りから解放される。 PC3がハンターの宇宙船を使ってシニロ島に向かっているなどしている場合、ハンターは地球の戦闘機などを鹵獲し、シニロ島へやってくる。人間よりもはるかに優れた文明を持っていた彼であれば、地球上の機械を操作することは容易い。 PC2はライフが0の状態で決戦フェイズに突入することになるが、この時点でリトライが残っている場合、休息によるライフ回復はもちろん適応して構わない。

4.決戦フェイズ

【戦闘情報】

【エネミー】

・パラサイト・マザー×1・パラサイト・ハンター×1・パラサイト・(PC2名称)×1・パラサイト・ウォーリア×5

【エリア配置】

■PC初期配置 エリア1・エリア2■エネミー初期配置 エリア4:パラサイト・マザー、パラサイト・ハンター エリア3:パラサイト・(PC2)、パラサイト・ウォーリア×5

【勝敗条件】

勝利条件:パラサイト・マザーの撃破敗北条件:味方の全滅

【備考】

・エリア3を「エリアタイプ:暗闇」。エリア4を「エリアタイプ:水中」として扱う。・4ラウンド目突入時点でハンター(本体)は死亡する。・パラサイト・マザー撃破後は、パラサイトと名のつくエネミーは全て自動消滅する。

【難易度調節について】

 ヒーローが三人とも30点以上の経験値を所有している場合は、エリア2を『暗闇』として扱う。この時、暗闇の効果は累積しないものとする。 ヒーローの経験点が著しく高い場合は累積するものとしても構わない。

【エネミーの戦法】

 クイーンは行動順ロールの前後で『エッグ』と『フェイスハガー』を必ず使用する。『フェイスハガー』に成功し、場にパラサイト・ウォーリアーが居ない場合、その後のターン行動では『チェストバスター』を積極的に使用すると良い。 場にパラサイト・ウォーリアーが残っているのであれば『ビッグチャップ』を使用しウォーリアを支援する。『ゼノモーフ』は各種攻撃に交えてGMの好きなタイミングで適宜使用すると良い。 パラサイト・ハンターは『熱探知』と『透明化』を必ず使用する。このパワーはクレジットの消費が激しいため、4ラウンド以上戦闘が続く場合はパラサイト・ハンターはクレジットが0となり戦闘不能となる。基本的には『透明化』を使い隠密エリアへ移動、その後『三点照準』で攻撃したのちにエリア4へ移動を繰り返すことになるだろう。ハンターは移動適正:水中を所持していないため、各パワーの判定に-20%の補正が発生する他、『透明化』以外の方法でエリア移動を行おうとする場合20ターンかかることに留意。ハンターがエリア4で倒れた場合、『二重顎』の効果がエリア3・4にいるキャラクター・エネミーにランダムで発生する。 パラサイト・ウォーリアは基本的にはエリア3から『ニューボーン』を行う。PCのいるエリアに新たに発生したウォーリアや、エリア3に接近戦に長けたPCが侵入してきた場合は、『ドッグ』を用いてみてもいいだろう。『ドッグ』は素の数値で判定する場合は成功率が低いパワーだが、クイーンからの『ビッグチャップ』の支援を受けていれば十分実用に足る強力なパワーになるはずだ。 パラサイト・PC2に関しては、基本的にはあまり深く考えず、実際のPC2が取る戦法をそのまま模倣すれば良い。そのキャラクターの最も有効な使い方を知っているのは、得てしてプレイヤー自身だ。

【エネミー情報】

■パラサイト・マザー

【エナジー】ライフ:100 サニティ:50 クレジット:50

【移動適正】地上・水中・暗闇※パラサイト・マザーは能動的なエリア移動を行わない。【能力値】肉体:10 精神:60 環境:80【技能値】運動:20% 生存:100%知覚:100% 意志:70%作戦:80% 隠密:50%
『エッグ』属性:攻撃 判定:- タイミング:特殊射程3 目標:1体 代償:ライフ2効果:行動順ロール直前に使用する。目標のPCは『運動』で判定を行う。判定に失敗した場合、目標のPCと同じエリアに『パラサイト・ウォーリア』を1体追加する。──母胎は繁栄を求め子を産み続ける
『フェイスハガー』属性:攻撃 判定:作戦80% タイミング:特殊射程3 目標:3体 代償:サニティ5効果:行動順ロール直後に使用する。目標のPCは『運動+10』で判定を行う。判定に失敗した場合、目標のPCは『BS:束縛』を受ける。──母胎を守るため、蛇のような怪物が飛びかかり、君の動きを阻害する。
『チェストバスター』属性:攻撃 判定:- タイミング:行動射程3 目標:1体 代償:ターン20効果:『フェイスハガー』により『束縛』を受けているPCを目標とする。目標となったPCは『生存+10』で判定を行う。失敗した場合、3d6のダメージを受け、同じエリアに『パラサイト・ウォーリア』を1体追加する。追加された『パラサイト・ウォーリア』は次の行動順ロールから戦闘に参加する。その後、ダメージを受けたPCの束縛は解除される。  このパワーは1ラウンドに1回まで使用できる。──君の肉体を引き裂いて、未成熟の雛が飛び出す。
『ビッグチャップ』属性:攻撃 作戦:80% タイミング:行動射程3 目標:4体 代償:ターン10効果:『パラサイト・ウォーリア』のみを目標とする。判定に成功することで、『パラサイト・ウォーリア』のすべての能力値に+10%の補正を与える。この効果は3回まで累積する。──蟻のように、蜂のように、群れは女王を得て強くなる。
『ゼノモーフ』属性:攻撃 作戦:- タイミング:行動射程3 目標:2体 代償:ターン10効果:目標のPCは『知覚』で判定を行う。失敗した場合、1d6のダメージと『BS:狼狽』を受ける。──未成熟の雛たちが、暗闇から君に襲いかかる。

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■パラサイト・ハンター

【エナジー】ライフ:30 サニティ:20 クレジット:40

【移動適正】地上・暗闇【能力値】肉体:50 精神:20 環境:30【技能値】白兵:70% 射撃:70%知覚:40%隠密:70%
『熱探知』属性:妨害・装備 判定:知覚40% タイミング:特殊射程2 目標:1体 代償:クレジット4効果:行動順ロール直前に行う。目標のPCは『隠密』で判定を行う。  失敗した場合、『パラサイト・ハンター』のパワーの目標になった際の回避判定に-10%の補正が発生する。この効果はイベント終了時まで続く。──高精度の赤外線センサー。
『透明化』属性:攻撃・装備 判定:射撃70% タイミング:特殊射程1 目標:1体 代償:クレジット5効果:ターン開始時に使用できる。 判定に成功した場合、君は『隠密』状態となる。──高精度の光学迷彩
『三点照準』属性:攻撃・装備 判定:射撃70% タイミング:行動射程1 目標:1体 代償:ターン10効果:目標は『運動』で判定を行う。失敗した場合、2d6点のダメージを受ける。──三角を描くような三つのレーザーサイト。
『二重顎』属性:攻撃 判定:白兵70% タイミング:行動射程1 目標:1体 代償:ターン20効果:『パラサイト・ハンター』のいずれかのエナジーが0になった時に使用する。射程内にいるキャラクターを敵味方問わずランダムに目標とする。目標は『運動』で判定を行い、失敗した場合4d6点のダメージを受ける。その後、『パラサイト・ハンター』は死亡する。──鋼のマスクの奥から、隠された顎が飛び出し敵を砕く、最期の一撃。

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■パラサイト・(PC2名称)

※エナジーはPC2の各エナジーを2倍した数値とする。 能力値はPC2と同じ値を使用する。
※PC2の所有する初期パワーを所有する。 経験点による命中補正が付いている場合はこれを計算に入れない。 また、回避判定のないすべての攻撃パワーに<運動-10>の回避を追加する。 エネミー化にあたり、取得パワーの詳細に齟齬が生じる場合、 GMが自由に調整を行ってよい。
※集中・支援を行うことは出来ず、臨死状態になることもない。 いずれかのエナジーが0となった場合、このエネミーは死亡する。
※このエネミーの移動適正はPC2のステータスに従う。

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■パラサイト・ウォーリア

【エナジー】ライフ10 サニティ10 クレジット10

【移動適正】地上・暗闇【能力値】肉体:10 精神:10 環境:10【技能値】白兵:30% 運動:30% 生存:70%作戦:10% 隠密:30%
『ニューボーン』属性:攻撃 判定なし タイミング:行動射程1 目標:1体 代償:ターン12効果:目標は『運動』-10%で判定を行う。失敗した場合、1d6+2点のダメージを受ける。この際、5点以上のダメージを受けたキャラクターは、このパワーを使用したキャラクターと同じエリアに移動する。──兵卒は敵を襲い、暗闇へと引き摺り込む。
『ドッグ』属性:攻撃 判定:作戦10% タイミング:行動射程0 目標:特殊 代償:ターン10効果:射程内から目標を二人決定し、目標1の所有する『タイミング:行動』のパワーを目標2に対して使用する。使用するパワーに回避判定がない場合、『運動』-10%の回避判定を追加する。このとき、使用するパワーの代償と射程は『ドッグ』の代償と射程に置き換わる。※パワーの使用に判定以外の条件が存在する場合、使用にはその条件が満たされている必要がある。※『ドッグ』で使用されるパワーに使用回数が設定されている場合、それを消費しないものとする。──その瞬間、肉体の支配権が奪われる。
※『ドッグ』について例)例えば、1ラウンドに1度しか使用できないパワーの場合、『ドッグ』の判定に成功しさえすれば、ウォーリアはそのパワーを1ラウンド内に何度でも使用できる。また、ウォーリアがパワーの効果を使用したとしても、ヒーローの使用回数を消費したという扱いにはならない(ヒーローは通常通り、1ラウンドに1度だけそのパワーを使用できる) しかし『このパワーは3ラウンド目から使用できる』や『飛行状態の時のみ宣言できる』などのパワーは、パワーの使用条件をウォーリア自身が満たしていない限り、使用することは出来ない。

5.余韻フェイズ

シナリオ全体の結末(一例)】

【シナリオ全体の結末】

 戦いの後、無事G6と連絡が繋がる。本土で暴れていたパラサイトも、『親』が死亡すると同時に消滅が確認されたという。君たちもまた、生存者と共にシニロ島から生還する事が出来るだろう。 『ノストロモ』の職員達も、致命傷を負っていない者たちは一命を取り留めた。精神的に大きな傷を負った者たちも数多くいたが、少なくとも、彼らは明日を迎えることが出来るのだ。『ノストロモ』は活動停止・解体となり、今後は本格的な調査の手が入ることになる。 いくつかのヴィラン組織が、パラサイトを軍事利用できないかと画策しているという噂も見聞きされるが、幸いにその研究が功を奏したという報告は、今のところ上がっていない。 君たちに命を救われたハンターは、しばらくの滞在の後、地球を去ることを選ぶ。彼の故郷は滅んだが、この宇宙には未だパラサイトの脅威が残っている。パラサイトの根絶を目指し、彼は宇宙を旅するつもりだと告げる。『強き戦士たちよ、お前たちに感謝を。私もまた、お前たちに恥じぬ戦いを誓おう』『無事パラサイトに勝利した暁には、再びこの星へと戻り、お前たちの首をトロフィーにするとしよう。それまでせいぜい、お前たちも誰かにその首を奪われないことだ』『……冗談だ。もちろん』 かくして、君たちは無事にこの星に平和を取り戻す。

【ハンターが死亡している場合】

 PCたちがハンターの死を見届け、埋葬するなどしてエンディングとすると良いだろう。 ハンターの宇宙船は地球に残され、G6や地球上の組織保管のものとなる。システム上での処理は発生しないが、PCが望むならばヒーローたちに譲ってしまっても構わない。

6.シナリオ情報

【パラサイトについて】

 改めて、このシナリオにおけるパラサイトの設定を整理し記しておく。GMは参考にしても良いし、都合よく改変しても構わない。
 はるか太古の昔、パラサイトは隕石に付着した状態でシニロ島へと落ち、周囲の生態系に影響を及ぼした。島の原住部族たちはパラサイトを危険視し、極力近寄らぬよう秘し続けてきた。しかしその風習は時の流れとファースト・カラミティによる歴史改変と共に形骸化していく。 シナリオ開始から三日前、ノストロモの職員が偶発的に地下洞窟を発見。生態調査の為、調査員が洞窟へ降りる。それにより人類(特に超人種)に感染したパラサイトは爆発的な進化を遂げ、瞬く間にノストロモの職員と原住民族、島の周辺生物に寄生。その意識を乗っ取る。 その翌日(シナリオ開始の二日前)、救助に訪れたPC2と外部のノストロモの職員に寄生。ノストロモの職員を操作し、PC2を地下洞窟へ突き落とす(ヒーローであるPC2には、その時点での通常の感染ではうまく感染できなかった)。 また、その状態で外部の職員を本土へと戻し、本土にも感染を拡大。PC2(ヒーロー)の強力な身体能力に興味を持ったパラサイトはその後、職員を操作しPC1を島へと呼び込む。同時期、ハンターもまたパラサイトに操られて地球へ向かい、墜落。シナリオ本編に続く。
 シナリオ開始時点で、パラサイトは本土でノストロモの職員ほか不特定多数の生命体に感染済みである(最初に人類に感染してから僅か三日でのことだ)。チャレンジ2他でノストロモの職員たちがヒーローに助けを求める・妨害を行っている時、彼らには自分たちがあやつられているという自覚はなく、PC2の事も記憶しているか微妙なところだろう。 ハンターの惑星を滅ぼしたパラサイトは「マザー」という致命的な弱点を持っていなかった(その為、滅ぼすには星ごと壊滅させるしかなかった)。地球のパラサイトに「マザー」という司令塔兼弱点が存在するのは、太母結界によりパラサイトが弱体化している為である。