オーバーヘヴン
━━ いま、君たちは選択を成す。
【PC1:ハービンジャーのヒーロー】
君はブラックジャケットを交えた鏡面世界災害対策本部の一員として、二つの世界を巡る議論の中にいる。 ブラックジャケット捜査官、ザ・ハートレスが問う。「PC2の技術を用いて、アリアドネの糸の力を他者へ移植することは可能だと思うかね?」 そんなある日、新しい世界線渡航者(テセウス)が現れた。【PC2:足を洗いたい闇医者】
君の診療所はすっかりBJ捜査官たちの溜まり場になっている。 彼らは護衛のためだと主張しているが…。 そんなある日、フォーカスライトから連絡が入る。 バスターバースの君が見つかったと彼は告げた。【PC3:テセウスの船】
倒され、捕らえられたリャナンシーは完全に発狂し人格を崩壊させた。 精神を退行させた彼女はプライムバースにて収容されている。 君は彼女の尋問を任されることとなった。 ある面会の日、彼女は君へ「コル・タウリが動いた」と告げる。 そして君の目の前で、巨大な赤い柱へと変わってしまった。【エントリー1:リャナンシーとの別れ】
【状況1】
「お待ちしておりました。さあ、こちらへ」 係員が君を先導する。アダマンチウム製の分厚い扉が音を立ててゆっくりと開いていく。 ここは南極大陸に造られた特殊な隔離施設。その中でもさらに地下へと進んだ最下層。君はそこに面会に訪れている、相手は……。「PC3の到着確認。第一から第五までの音響防壁、適切に動作しています」「リャナンシー、口部拘束帯解除します。3、2、1…」 厳重に拘束された女の口枷が解除されていく。リャナンシーと呼ばれた女は、目隠し越しに君を見て、無邪気な声をあげた。「PC3! PC3だ!」「今日はPC3とおしゃべりしてもいいの? うれしい!」 世界線渡航者(テセウス)、リャナンシー。彼女はプライムバースにて確保・収容された。そして同時に、その精神を崩壊させていた。 君は彼女から情報を引き出す役割を期待され、面会を依頼された。【状況2】
精神を退行させたリャナンシーの言葉は拙く、要領を得ない。それでも君はいくらかの情報を彼女の口から引き出すことに成功した。アリアドネの糸、彼女の望み、赤い鏡で造られた迷宮、マルチバースの世界、それを観察するコル・タウリなるもの…。 ひとしきりの話を終えたのち、リャナンシーは突然涙を流し始める。そして奇妙なことを口走り始めた。「PC3、あのね、わたしもうお別れなの」「コル・タウリが動いたわ。こんなことは初めて。だけどこうなってよくわかった、テセウスは彼のどれい。それぞれの望みがある以上、彼のめいれいには逆らえない」「ああ、くる、くる、テセウスが来る!」 ……彼女がそう告げた直後、リャナンシーの肉体から、凄まじいエネルギーが放出される! 数多の拘束を溶かし、薙ぎ払い、彼女の肉体から赤いエネルギーが放たれる。それは施設全域を巻き込んでいく! スタッフたちを救い、外へと逃れなければ!【状況3】
君は数多のスタッフを救い、施設外へと逃れることができた。 凄まじい音を立てて、南極大陸の大地が割れる。その中から、あまりにも巨大な、真っ赤な柱が──それはよく見れば、赤く細い糸が撚り集められたものだった──天へと、鏡合わせの世界の南極大陸へと聳えていた。【エンドチェック】
□リャナンシーの遺言を受け取った□リャナンシーが赤い柱になった【解説】
PC3がリャナンシーに対してどんな印象を抱いていたとしても、面談は依頼される。頼れるのはPC3しかいないのだ。 キャンペーンとしては、リャナンシーはここで死亡しているものとして扱っているが、GMはその方が面白くなりそうだと思うなら、コル・タウリが倒されたあとに彼女が蘇ることにしても良い。少なくとも以後、シナリオ内に彼女の出番はない。【エントリー2:新たなるテセウス!】
【状況1】
君の前には、鏡面世界災害対策本部の面々が集まっている。そして会議室の先には巨大なモニターが掲げられ、モニターの中にはもう一つの部屋があるかのように、黒衣の男たちが座っている。バスターバースの協力者、ブラックジャケットたちだ。 先のグレート・ワンの暴走を受け、プライムバースG6はバスターバースG6との提携を保留とした。反面、その裏で暗躍したブラックジャケット捜査官たちの功績は認められ、鏡面世界災害対策本部は内密にブラックジャケットとの連携を進めている。「双方にとって有意義な時間となることを祈るよ、プライムバースの諸君」 ハートレスと名乗った老年の男が音頭を取る。そこに総隊長であるマスター・フォーカスライトの姿は見えない。君の傍で、ヒーロー・ヒューマンサイドが複雑そうな顔で資料をめくっている。【状況2】
会議はつつがなく進む。 今、バスターバースとプライムバースはコル・タウリの干渉によって開かれた不特定多数のポータルによってのみ繋がっていること、そのポータルの総数を双方の世界ともに把握できてはいないこと、既に把握しかねる人数が双方の世界へ渡っているだろう予想、二つの世界は今でこそ安定しているが、いつ再接近が起きるか誰にも分からないこと……。 『双方の世界を再び完全に切り離し、当初の独立状態へと戻す』。鏡面世界災害対策本部とブラックジャケットの最終目的は一致していた。問題はその方法だった。発端はPC3の力の暴走によるものだ、だが同じ手順を辿ろうにも、偶発的要因が重なったそれを解析することは困難だ。 ハートレスが君たちへ尋ねた。「リャナンシーの身柄は諸君が確保していたな。PC3の能力開花を手伝ったというPC2の技術を用いて、彼女を使うことは? あるいは彼女の持つアリアドネの糸の力を、医学的に他者へと移植することは可能かな」 当たり前のように向けられるそれは人体実験の提案だ。君はその提案に何と答えるだろう?【状況3】
「ほっほっほ、冗談じゃよ。ふむ、報告通り、そちらの世界は未だヒーローがヒーロー足り得ているようだ、結構結構」 ハートレスは好々爺然として笑う。本当に冗談だったのだろうか。 そんな時、会議室を凄まじい揺れが襲う。それはモニター越しのバスターバースも同様だった。ブラックジャケットたちが一斉に警戒耐性に入り、ヒューマンサイドが周囲を伺う。 天井に、床に亀裂が走り、やがて揺れは治まっていく。地震か…? そう思われた時、鏡面世界災害対策本部・ブラックジャケット双方のオペレーターが、デバイスを見ながら悲鳴をあげた。「う、嘘だろ!? 超強力なエネルギー反応が、プライムバース・バスターバース双方に出現! このエネルギー反応、リャナンシーと同じ……間違いない、テセウスだ!」 スニークと呼ばれたオペレーターが素早く外部の映像を映し出す。 鏡合わせの世界同士を繋ぎ合わせるように、三本の巨大な赤い柱が生まれていた。【エンドチェック】
□三本の赤い柱が現れた【解説】
状況3は反対された場合のリアクションを想定している。しかしPCがそういうタイプでない場合は、ヒューマンサイドが反発し、状況3へ続くとすると良いだろう。【イベント3:もう一人の】
【状況1】
君の診療所は、今やすっかりと黒衣の捜査官たちの溜まり場になっている。リーダーを務めるレディ・レンズと名乗った少女だけは、申し訳なさそうに君の日々の業務を手伝っている。 名目上は、フォーセイクン・ファクトリーや、事情を知った他のヴィラン組織の襲撃に対する備えとして。だが実のところがどうなのかなど、君には分からない。 そんな君の心情を知ってか知らずか、今日もレディ・レンズの人怖じしない声が診療所内に響く。「ドクター、またお昼ご飯抜きましたね! これ差し入れです。ちゃんと食べてくださいね、お医者様は体が資本!」【状況2】
そんなある日、君の元にフォーカスライトから連絡が入る。ドローンが作り出したモニター越しに、フォーカスライトは君へ告げる。『こちらの世界の君が発見された』 そう言って示されたのは君と瓜二つの人物の姿の写真だ。『先日死亡届が提出されたことで存在が発覚した。フォーセイクン・ファクトリーとは縁のない、民間人だったようだ。先日のグレート・ワンが引き起こした街中の戦闘行為に巻き込まれて死亡している』『死亡届はまだ受理されていない。こちらで止めている。……君が成り代わりを望むなら、手続きも可能だが』 どうする、とフォーカスライトは感情の読めない目で君を見る。 全てを捨て、別の世界でのやり直しを君は望むだろうか?【状況3】
『そうか。わかった』 君の返答にフォーカスライトはどこまでも淡々と答える。その時、モニターの向こうと君の世界、双方の世界で凄まじい揺れが起きる。レディ・レンズが君を守り、黒衣の捜査官たちが警戒体制に入った。 揺れはしばらくすると収まっていく。モニターの向こう、フォーカスライトがオペレーターへ状況を確認する。スニークの慌てた声が響く。『超強力なエネルギー反応が、プライムバース・バスターバース双方に出現! このエネルギー反応、リャナンシーと同じ……間違いない、テセウスだ!』 素早く外部の映像に繋がる。 鏡合わせの世界同士を繋ぎ合わせるように、三本の巨大な赤い柱が生まれていた。【エンドチェック】
□バスターバースのPC2は死んでいる□三本の赤い柱が現れた【解説】
バスターバースのPC2はどんな設定が良いかは、事前にPC2のプレイヤーに希望を聞いておくと良いだろう。このシーンでは死亡していると報告されるが、実際には生きている。【バトルチャレンジ1:二人目のテセウス】
【状況1】
世界に三本の赤い柱が現れた。 一本は南極大陸に。 もう一本はカリブ海に。 そしてもう一本は、日本のとある高校に。 その一本一本からはリャナンシーと同様の力が感じられ、PC3や南極の施設の者の証言からも、それがテセウスの侵攻である可能性は高いと考えられた。 君たちは緊急招集され、日本に生じた柱の対応を行うことになる。まずは作戦会議だ。【状況2】
巨大な赤い柱は、校舎からグラウンドに至るまで、広大な敷地全てを飲み込んで出現していた。住宅街の中に聳えるそれはあまりにも異様だ。 現地の光景をドローン越しにモニターしながら、チェインが話し出す。「赤い柱の中心部には、テセウスの反応が確認されました。そこにリャナンシーとは別のテセウスがいる可能性が高い」「あなたがたのチームは一度、リャナンシーとの戦闘に勝利しています。よって最も対象の『捕縛』成功率が高いチームと見做されています」「そう、勝利条件はテセウスの殺害でも、追放でもありません。彼らが我々を脅かすというのであれば、我々は彼らに抗う必要がある。そのために必要なのは、彼らを知ることです。 ブラックジャケットからこちらを預かりました。BJ捜査官たちの制御に用いられる、首輪型能力抑制装置です。これを用いて、テセウスの確保と収容を目指します」 チェインは無骨な首輪を差し出す。首に押し付ければ自動で作動するもののようだ。「対話による確保が可能であれば、それが最も好ましいでしょうが……リャナンシーのことを思うに、可能性は低いでしょう。まずは戦闘による目標の無力化、ないしは弱体化を試みてください」【状況3】
君たちは現地へ降り立つ。 高校を飲み込み、天へと聳え、二つの世界を結ぶ赤い柱。 その柱の奥に、守人めいて誰かが立っていた。赤い甲冑を身に纏った騎士は、君たちの姿を確認すると、赤いメモワールを懐へ仕舞い、剣を構えた。 ハービンジャーであるPC1は知っているかもしれない。その者は、数多の異世界を滅ぼした次元災厄・ラグナロク!【エンドチェック】
□チャレンジ判定を終えた□ラグナロクを確保した【解説】
ラグナロクをただ倒すだけではなく、その身柄を捕獲するためのミッション。 赤い柱が出現した高校はラグナロクにとって縁深い場所だが、詳細はこのシナリオ内で語ることはしない。ぜひ別の機会にD2掲載シナリオ「赤と白のメモワール」を遊んでみてほしい。【クエリー1:世界収集者】
【状況1】
君たちの活躍により、二人目のテセウス・ラグナロクは捕縛される。 戦いから一週間後。 G6・BJの必死の解析により、ラグナロクの持つ能力が明らかとなった。 ラグナロクの持つアリアドネの糸の形は、真紅のメモ帳。その能力は『世界の封印』。その中にはラグナロクによって収集された異世界が圧縮され、封じられていた。【状況2】
「ラグナロクのメモワールの力を巡って、こんな意見が出た。『ラグナロクのメモワールの力を使えば、バスターバースからプライムバースを守ることが出来るのではないか』と」 それはバスターバースをメモワールに封じ込める提案だった。だが、彼もそれを選択して良いのか、迷っているようだった。「ラグナロクに協力を依頼するか、不可能であればPC2の外科技術による能力移植を試みてみても良いだろう。……君はこの方法について、どう思う」 それはプライムバースのためにバスターバースを犠牲にする提案だ。 君はその提案に何と答える?【状況3】(反対された場合を想定)
「……やはり。君ならばそう言ってくれると思ったよ」 重役はどこか安堵したように言うと、手にした書類を破り捨てた。「そうとも。我々は向こうに比べてあまりに弱いが、だからといって道を踏み外すわけにはいかない。鏡の向こうの我々を見て、改めて学ばされたよ」「我々は、彼らとは違う」 そして表情を引き締め、一堂へ重々しく告げた。「だが、『世界』はそうではあるまい。国にせよ、民にせよ、どちらの世界にせよ」「我々が最終手段を得たことは確かだ。このことは誰にも漏らさないように。特に、バスターバースの者たちには、尚更な」【エンドチェック】
□G6の提案に対して意見を述べた□グリットを1点得た【解説】
反対されなかった場合、G6のお偉いさんは思い詰めた顔で「すまない、少し……考えさせてくれ」と言って話を終わらせる。そして後日、改めて使わない選択をした旨をPC1へと伝え、「君の意見を無碍にしてしまい申し訳ない」と謝罪する。その後、状況3の後半の描写へ繋げると良いだろう。その場合、NPCが自己判断でPCの言動を否定することになるので、GMはPLが気分が悪くならないよういい感じにNPCを動かしてほしい。【クエリー2:怪物の救済】
【状況1】
ラグナロクの身柄は、一旦ロックウェイブ島最下層の収容区画に収められることとなった。 だがそれも一時的なものだ。いずれはもっと僻地へと搬送されることが予定されている。リャナンシーのことを思うに、この収容設備では不十分と判断されている為だ。 君はG6からの依頼を受け、ラグナロクの能力の解析を担っている。【状況2】
最初の戦い以来、ラグナロクは抵抗を示さなかった。 ある日、拘束されたラグナロクがPC3へ語りかけてきた。赤い甲冑の主が長く言葉を続けるのは珍しいことだった。「ドクター。PC3のアリアドネの糸の力を開花させたのはお前だと聞いた。確かか?」【状況3】
君の答えを聞き届けると、ラグナロクは「やはり、お前には伝えるべきだ」と、自分の知る情報を君へと打ち明ける。「私たちにこの力を与えた者の名はコル・タウリという。次元の観測者にして、鏡面迷宮に座すただ一人の存在だ」「あの男はこれまで、我々に見返りを望むことはなかった。心を持たない、あるいは理解出来ぬ精神を持った、ただそこにあるだけのシステムのようなものなのだと認識していた。だが……それは誤りだった」「あの男には明確な望みがある。そのために、無差別に力を与え、テセウスを利用しているにすぎない。コル・タウリとは、数多の世界を滅ぼすだけの力を、見境なく他者へと与え、可能性の希望で人を狂わせる怪物だ」【状況4】
君の答えを聞き届けると、ラグナロクはこれ以上話すことはないとでも言いたげに黙りこくってしまった。 ラグナロクとの対話を終え、施設を後にする君。 そんな時、仮眠明けの看守が君を見て、こんなことを言った。「あれ、PC2。まだいらしたんですか? さっきは随分と急いでいたようですが」 何のことだ?【エンドチェック】
□ラグナロクからの問いに答えた□PC2によく似た誰かがロックウェイブにいたことを知った□グリットを1点獲得した【解説】
鏡面迷宮に縛られているコル・タウリにとって、能動的にこの世界へ干渉することが難しい。そのため、テセウスたちを差し向けることで、PCたちに『この事件の元凶はコル・タウリだ』と強く認識させるよう仕向け、PCたちが自分のもとへと辿り着くよう誘導している。 コル・タウリの望みは鏡面迷宮からの解放だが、ラグナロクを始めとしたテセウスたちはそこまでは知らない。「いま、あの男は我々テセウスではなく、PC3の、そして君たちの輝きに期待を寄せている。そのために、私たちはこの世界へ差し向けられたのだ」【クエリー3:やりなおし】
【状況1】
君の自宅に来訪者が現れる。PC2だ。「急にすまないPC3。少し相談したいことがあるんだ、今いいか?」(口調はPC2の設定に合わせて随時変更すること) 君が同意すれば、不意を打たれる形で。抵抗すれば、力づくで。君は麻酔を注射され、眠りに落ち、どこかへと攫われる。【状況2】
君が再び意識を取り戻した時、君は手術台に拘束されていた。頭上からかちゃかちゃと音がする。無人の廃病院の一角に君はいた。定期的な電子音が心音を告げる。麻酔で朦朧とする意識の中で自分の体を見下ろせば、君の腹部は開腹され、多くの臓器が剥き出しになっている。君は今、外科手術の真っ最中だ!「……麻酔が足りなかったのかな。じっとしていてくれ、すぐ終わる」 頭上からPC2の声と、かちゃかちゃという金属音がする。 廃墟の壁に残った割れた鏡の中で、君の頭が開かれ、脳がむき出しになっていた。【状況3】
「退屈だろうから、気晴らしでもしようか。もう分かってると思うけど、僕は君の知る僕じゃない。あっちの世界から渡ってきた僕だ」「こちらの世界のことは気にしてたからね。ポータルが開いてすぐに、こっちの様子を調べにきた。……ちょっとがっかりしたな。こっちの僕も、結局悪党だったから」 彼はバスターバースのPC2。プライムバースのPC2と成り代わることを望み、死体をでっちあげ、こちらの世界で情報収集を行なっていたという。「だけど、この世界の君と僕の関係を知って、君のことを知って……じゃあこうしようかなって思って」「君のアリアドネの糸は、他のテセウスとは違う。紛れもない人工物だ。残念ながらその資料はもう残ってないけれど……それなら完成品を調べるしかないと思ってね」「僕もね、本当はそれが欲しいのさ。スーパーパワーが欲しいわけじゃないよ、ただ……あの場所にいたくない。他の世界に行って、全てをやり直したい。君の僕も、同じことを思っているかもね」「ねえ、ヒーロー。僕を救うために、犠牲になってくれないか」「無事に済めば、ちゃんと全部戻してあげるから」 なんと答えよう?【エンドチェック】
□もう一人のPC2の問いに答えた□手術中だ□グリットを1点獲得した【解説】
バスターバースのPC2は、PC3と出会っていない。よって、プライムバースのPC2が得ているような、人工アリアドネの糸に関する知識はない。しかしPC2と同じだけの医療知識は持ち合わせている。そのため、PC3の体を調べることで、強引にその知識を得ている。 もう一人のPC2をGMが演出するシーンとなるので、GMはPC2のプレイヤーと相談しながら、口調やリアクションを調整すると良い。場合によってはシナリオ文そのものを公開し、バスターバースのPC2のロールプレイはPC2のプレイヤー自身に行ってもらうのも良いだろう。【クエリー4:仕組まれた喰らいあい】
【状況1】
PC3と連絡が取れない。 訝しむ君のもとに、鏡面世界災害対策本部のメンバーの慌てた声が届く。「大変です、PC1! G6の極秘情報が世界各地に漏洩しています! ラグナロクのアリアドネの糸に関して、その活用法に関してもです!」「何者かが内部から情報を持ち出したとしか…!」 詳しく調べれば、情報漏洩を行なったのはPC2であると判明する。これはどういうことなのか? G6は急ぎ、PC2捕縛へと乗り出す。【状況2】
ロックウェイブ島から戻ったPC2は、診療所の空気が重々しいものになっていることに気付く。BJ捜査官たちは殺気立ち、手元のデバイスを睨みつけていた。慌てた様子のレディ・レンズが出迎える。「ドクター! よかった! 大変なんです! G6がラグナロクについて調べていた秘匿情報が公開されて、でもこれがとんでもなくて…! な、何かの手違いですよね!?」 言葉を遮るように、診療所の外からパトカーのサイレンが響く。 見れば、いつの間にか診療所を取り囲むように、多くの警察車両と幾人かのヒーロー──中にはPC1の姿もある──がいる。「PC2に告ぐ! 武器を捨ててそこから出てきなさ──ぎゃあ!」 一発の銃声。腕を押さえて拡声器を取り落とす警察官。「結局てめえらも一皮剥きゃアこんなもんだよなァ! ただで切り捨てられてたまるかよ!」 診療所の窓から中指を立て、銃口に息を吹きかける荒くれ者のBJ捜査官。 状況は最悪だ。【状況3】
BJ捜査官と、プライムバースのG6。 それぞれの側に立ち、君たちは対峙する。 BJ捜査官はプライムバースのG6を信じておらず、今にも攻撃を行おうとしている。プライムバースのG6もまた、BJ捜査官を警戒し突入の準備を進めていた。 そんな中で、PC1はPC2に何を問うだろうか? PC2はPC1に何を告げるだろうか? あるいは君たちは、君たちの周囲の者たちに何を告げ、どう動くだろうか? 双方のやりとりがクエリーとなる。【エンドチェック】
□PC1とPC2が対話し、状況を理解した□グリットを1点獲得した【解説】
バスターバースのPC2によって、内輪揉めを誘発されるシーン。 BJ捜査官たちは悪党である故に、プライムバースのことやG6のことをもともと信用していないし、当然のように状況次第で切り捨てられると思っている。それはバスターバースおよび、彼らの所属するブラックジャケットという組織がそうした場所だからに他ならない。そのため、やられる前にやれ、という思想に傾きやすい。 とはいえ、BJ捜査官たちをPLのPCをNPCにして運用している場合は、シナリオ通りの演出が難しいこともあるだろう。その時はやはりPLへとシーンの意図を説明し、PLと共に描写を作り上げて行くと良いだろう。【チャレンジ2:君の望むもの】
【状況1:PC1とPC2】
PC1とPC2はPC3の行方を探すことにした。だがそのためには、まずはこの仕組まれたG6とBJ捜査官の対立を収めねばならない。特に、G6はさておき、公開された情報にG6への不信感を募らせているBJ捜査官たちをだ。 力尽くは避けたい。 君の言葉が彼らに届けば良いのだが。【チャレンジ判定】
【状況2:PC3】
もう一人のPC2は、しばらく君の肉体を調べて回ったのち、「大体わかった」と言った。そして彼は君に告げる。「そういえば、言ってないことがあったね」「僕は君みたいなヒーローが嫌いだ」 それを最後に君の意識は落ちていく……取り返しのつかないほどの深みへ……。【チャレンジ判定】
【状況3】
PC1の言葉を、BJ捜査官たちは信じ、武器を収める。 かくして君たちはPC3の捜索に乗り出した。PC3はとある廃病院に連れ込まれていた。君たちが駆けつけた時、そこにもう一人のPC2の姿は無く、腹部や頭部が開かれたまま放置された無惨なPC3の姿があった。 意識はない。だが、かろうじてまだ息があった。 PC3を助けなければ。【チャレンジ判定】
【状況4】
懸命な救命措置の結果、PC3は一命を取り止め、目を覚ます。 PC3からの情報を共有し、君たちはもう一人のPC2が試みようとしていることを知る。 止めねばならない。 君たちは十分に知っている。 可能性の力は、人を狂わせる。【エンドチェック】
□チャレンジを終えた【解説】
バスターバースのPC2は人工アリアドネの糸、『テセウスの船』を再現しようとしている。最終的には自身が『テセウスの船』の力を得て、自分の望む世界に行きたいと考えている。その技術を確立するまでにどれだけの人間をトライ&エラーの犠牲にしようともバスターバースのPC2にとっては些事であり、その技術の確立のためならば無責任に『テセウスの船』の力をばら撒こうとするだろう。ラグナロクの言った「コル・タウリになり得る」という可能性が実現してしまうのだ。【マスターシーン:技術は神を凌駕し得るか】
【描写】
六人の人影があった。「……お集まり頂き感謝する。二つの世界指折りの、天才たちの力を借りられて光栄だ」 音頭を取るのはもう一人のPC2。それに失笑が返された。「心にも無いことを言うのはやめてもらおう、腹が捩れそうだ」 暗闇の中、五人の男たちの姿が浮かび上がる。【エンドチェック】
□悪い奴らが手を組んだ【解説】
決戦フェイズのエネミー紹介兼、バスターバースのPC2が取り返しのつかない悪事をしていることをPLへ改めて示すマスターシーン。さまざまな組織の科学者・研究者系キャラクターが悉く集まっていると思って欲しい。 未来人バスカだけはあまり本件に関わりたいと思っていないので、第一話以降は本筋に関わってくることはない。よって、このシーンにも登場しない。【チャレンジ3:誰と共に】
【状況1】
もう一人のPC2は消えた。 彼が各地へと放った、『ラグナロクの持つメモワールの力』に関する情報は、G6へ多数の問い合わせとなって襲い掛かる。それはもう一人のPC2が、ヒーローの足止めのために放った社会的攻撃だ。 G6や鏡面世界災害対策本部はその対策に追われ、もう一人のPC2捜索に力を注ぐ事ができずにいる。「世の中への対応は私たちがやります。皆さんはどうか彼の捜索を!」 いま、動けるのは君たちだけだ。 ……と、思われたのだが。【チャレンジ判定】
【状況2】
君たちは障害を乗り越え、もう一人のPC2の隠しアジトへと乗り込む。 多くの敵を撃ち倒し、君たちはついに最新部へと辿り着いた。 すでに実験は始まっており、室内には胸糞悪くなるような、無残な光景が広がっていた。 六人の科学者が君達へ振り返る。 その中心に、もう一人のPC2の姿があった。【エンドチェック】
□辿り着いた【解説】
ブラックジャケット捜査官たちとの関係性が回復するシーンだ。PCたちがBJ捜査官のことを信用しなかったとしても、レディ・レンズは「だったら勝手に手伝わせていただきます!」と強引に協力する。反論しようとするBJ捜査官たちの顔には平手打ちが炸裂する。レディ・レンズは善良な人物であり、本心からPCたちに協力したいと思っている。【決戦:アイム・ドリーミング・ホーム】
【状況1】
「ふむ、完全に包囲されているな。道を拓いて撤収するよりなさそうだ」「ヤッダァ。だから早く撤収しましょって言ったのにィん!」「良い所だったんだ、仕方なかろう。いや惜しい、あの衝撃さえ無ければ安定していたものを……」「ちょうど良い、あの個体は確保しておこう。サンプルは手元に置いておきたい」 現れた君たちに、悪の科学者たちはめいめいに好き勝手なことを言う。 その中央で、もう一人のPC2が冷たい目で君達を見つめる。【状況2】
外が騒がしくなる。轟音と共に、科学者たちの増援がなだれ込んでくる。改造人間、蒸気兵士、キメラたち……凄まじい物量だ。「チッ、行け! ここは俺たちが食い止める!」 BJ捜査官たちが雑魚を請け負う。 殿に留まったレディ・レンズがPCへと告げた。「ブラックジャケット、これよりヒーロー三名を援護します!」【戦闘情報】
【エネミー】
・もう一人のPC2・クレセントヘッド・蘇生請負人リアニメイター・フランケンシュタイン博士・イヴ・タンギー博士・ザ・プロデューサー【エリア配置】
エリア4:もう一人のPC2/クレセントヘッドエリア3:蘇生請負人リアニメイター/フランケンシュタイン博士/イヴ・タンギー博士/ザ・プロデューサーエリア2 or エリア1:PC隠密エリア:レディ・レンズ【勝敗条件】
勝利条件:敵の全滅敗北条件:PCの全滅【備考】
・「もう一人のPC2」のステータス(エナジー・所持パワーなど)はPCと同一のものとする。もしあまりにも相性的に難しいとGMが考えるのであれば、成長点を持たない『虐殺司令』を持ったハイライズとして任意にステータスを設定すること。・「もう一人のPC2」は逆境・臨死に入ることはない。パワーの代償としてカルマやグリットが設定されている場合、5回まで使用可能なものとする。・ブラックジャケットの援護として、レディ・レンズを隠密エリアに配置する。彼女はPCにとって利益となる行動を行う。彼女の所持パワーは全てサポートパワーだ。GMはPLにレディ・レンズのパワーを全て公開し、PLに彼女の行動を決定させること。・フランケンシュタイン博士が「モンスター誕生」で作り出すヘンチマンは、ウォッチメイカーの「ガードロボット(P117)」とする。【解説】
エネミーのステータスとしては、クレセントヘッドがボス、それ以外が幹部級となる。PLがBJRに不慣れであれば、GMは事前にその内容を伝えておいても良いだろう。 R1、R2、BJR、PC2のキャラクターシートと、データの参照先が非常に煩雑になる。GMは事前にエネミーのパワーを書き出しておくなどし、処理の簡略化に努めると良いだろう。【各PCの結末(一例)】
【PC2の結末】
戦いは終わり、悪党たちは捕えられた。 バスターバースから来たヴィランの身柄はブラックジャケットが、それ以外はG6が引き取り、それぞれの収容場所へと連行することになる。 PC2の前には、倒れて意識を失ったもう一人のPC2の姿がある。 君はもう一人の自分に引導を渡しても良いし、ブラックジャケットに委ねても良い。 君はどうする?【PC1の結末】
後日、PC1にハートレス軍曹が声をかけてくる。手には菓子折りと紅茶の茶葉を持っていた。「今回はウチの連中が早合点して迷惑をかけたようじゃのぉ。イヤ大変申し訳なかった」「実のところ、ワシ自身、君たちに驚かされることは多い。だがそれは決して、君たちの世界が悪いのではない。我々の世界が希望を失いすぎているのだろう」「この先、きっと、二つの世界の溝はより深くなっていくだろう。ワシ個人としては、せめて我々だけでも、同じ志の下にいたいと思っておる」「……君はどうかな」 ハートレスの問いかけに、君は何と答えるだろう?【PC3の結末】
戦いはひと段落を迎えた。しかしこれがひとときの膠着に過ぎないことを君はすでに思い知っている。 アリアドネの糸、それは呪いか祝福か。可能性の力は人を狂わせる。 二つの世界には未だ、三本の赤い柱がそびえ、二つの世界を結びつけている。 テセウスたちは誰も彼もが皆、口を揃えて同じことを言う。 コル・タウリはPC3を狙っている。己の望みのためならばどんな手段をも取るだろう、と。 ……二つの世界を守る為に、本当に戦わねばならない存在がいるのだと、今の君には理解できる。 ──決戦の時は、近い。【シナリオ成長点】
初期グリット:3クエリーグリット:4リマークグリット:3--------------------------------------------------=合計:10点【to be continued…?】
【エンドチェック】
□キャプテン・クリムゾンが記憶の継承を受け、ザ・ティーチャーとなった□バスターバースのデラックスマンが記憶の継承を受け、プライムバースのファクトがバスターバースの情報を得た□最終話へ続く■鏡面世界災害対策本部
通称「鏡災対」。 プライムバースのG6に臨時で設置された部署。 鏡合わせの二つの世界に関して、各国が競って解明・解決・利用に向けて研究を続けている中で、災害対応に重きを置いて活動している。 多くの専門家や国の橋渡しになるなどの役割を持っているが、所属ヒーロー自体は乏しく、PC1が代表ヒーローとして扱われている。 第二話での出来事を機に、バスターバースのG6ではなく、ブラックジャケットと協力体制を敷くことになった。■テセウスの船
世界渡航の力「アリアドネの糸」の力を人工的に再現するプロジェクトで生み出された、人工アリアドネの糸の保有者の名称。 計画自体は既に頓挫・遺棄されており、PC3はその計画の不完全なプロトタイプであった。 PC2の施術によって、PC3は完全な『テセウスの船』としての力を有するに至った。■ヒューマンサイド
R1リプレイ「マスク・オブ・ビースト」より。 プライムバースのG6所属ヒーロー。本名、峰神ジン。 世間的にも「マスク・オブ・ビースト」の事件を、ザ・ティーチャーを倒し解決した新進気鋭のニューヒーローとして知られている。 PCたちもそれらの情報は知っていて構わないだろう。 ヒーロー:キャプテン・フォーカスライトの元部下であり、『記憶の継承』を受けてザ・ティーチャーとなった彼の死を見届けた人物。■リャナンシー
コル・タウリによってアリアドネの糸を渡された世界渡航者(テセウス)の一人。 元の世界で失った恋人を取り戻すことを目的としている。アリアドネの糸の力は瞳に宿る。 PC3を失った恋人と同一視し、コル・タウリの手に渡さないよう独占しようとしていたが、第二話にてPCたちに敗北したことで、プライムバースのG6によって収容された。 現在は精神退行を起こしている。■マスター・フォーカスライト
バスターバースにて、犯罪者を用いて犯罪へ対処する特殊部隊『超人警察機構ブラックジャケット』の総隊長を務める人物。 冷徹非情な不屈の意志を持つ男。女性アレルギーを持ち、女性の半径5メートル以内に近寄ると蕁麻疹が出る。 悪を滅ぼすためであれば罪に手を染めることを厭わず、悪人の命をものの数ともしていないサイコパス。 かつてはヒーローとして名を馳せ、バスターバースで発生しようとしていたセカンド・カラミティを事前に食い止めた人物でもある。 その戦いの中で、部下である峰神ジンを失ったことが、彼が今の考えを持つに至った理由ではないかと噂されている。■ハートレス軍曹
ブラックジャケットの構成員。マスター・フォーカスライトの右腕。 政治慣れした好々爺であり、フォーカスライトと共に両世界の均衡を保つために動いている。 各国の言語に精通しており、その中でも特に得意なのは肉体言語。■レディ・レンズ
ブラックジャケットの構成員。ブラックジャケットの中では珍しい善良な少女。 他の捜査官たちと共に、PC2の護衛としてPC2の拠点へと送り込まれる。 荒くれものの捜査官たちを抑え、鏡対災とのやり取りをするなど、緩衝材として立ち回っている。 顔立ちがレディ・マリスにそっくり。