ベイビー・アザー:M
ベイビー・アザー:M
━━これは、もうひとつの胎児の夢の物語。
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【イベント1:ロックウェイブの疑惑】
【状況1】
ロックウェイブ島。それは、太平洋沖に作られた人工島。 ここは超人研究を専門とした研究を行うため、各国が資金を出し合って作られた、どこの国にも属さない島。地下深くには超人専用の刑務所があり、地上部には超人種の研究セクションが設けられている。隔離施設であり、研究機関でもある、ロックウェイブはそうした特異な空間だ。 君は今、その島を目指している最中。空を飛んでいるのかもしれない、海を渡っているのかもしれない、あるいは島から日に何度か出る定期船に乗り、島を目指しているのかもしれない。 君はあの島に、旧世代を超人種へと転じさせ、超人種の力をより強力なものに転じさせる力を持った違法薬物『ミュータジェン』が持ち込まれたという情報を得て、調査のために島へと向かっている。それは囚人の関係者が持ち込んだものか、あるいは……。【状況2】
「そのような事実はありませんねえ」 君の言葉を受け、研究セクションの責任者の一人だという、チャールズ研究長は不思議そうに首を傾げた。「そんな噂自体、初めて知りましたよ。誰が流したのやら……。しかし、事実だとすれば恐ろしい話です。調べて頂いて構いませんよ。とはいえこちらも仕事がありますので、あまり派手に動かれては困りますがね」 そうした君たちのやりとりを、入り口に立つ一人の看守が複雑そうに眺めていた。チャールズ研究長がそれに気付き、尋ねる。「君、どうかしたかい?」「……いえ……なんでもありません。失礼しました」 看守はそう言うと、その場を後にしてしまう。彼は何かを言いたかったのだろうか? 君は調査へ向かうことにした。さて、まずは……。【イベント1:状況3ー1】
【状況3ー1】
君は先ほどの看守を見つけた。彼は海の側で何かをしようとしていたらしかった。君が話しかけると、彼は驚き、口をつぐむ。うまく話を聞き出せると良いのだが。 …【交渉】+40%で判定を行う。【イベント1:状況3ー2】
【状況3ー2】
君は調査を行いながら、収容セクションにたむろしている囚人へ話を聞いてみることにした。非合法なネットワークならば、彼らの方がよほど詳しい。 しかし、君はヒーロー、相手は囚人。うまく話を聞き出せると良いのだが…。 …【交渉】+20%で判定。【イベント1:看守の話】
【イベント1:囚人の話】
【クエリー1:疑惑の正体】
【状況1】
調査の末、君は研究セクションの一部に、秘匿された施設があることを突き止める。 どうも、何らかの魔術的技術を用いて急造された、正式な書類には記載されていない空間のようだ。次元を歪めて作られたようなその空間は、本来のロックウェイブ島には不似合いな場所だ。 中へと向かった君は、その先で、チャールズ研究長の声を聞く。彼の前にあるのは、フォーセイクン・ファクトリーの幹部、ヴィラン・殺芽の姿! チャールズ研究長の姿が変わる。人間の皮がずるりと服を脱ぐように外れ、その中から全く違う人間が姿を現した。 姿を現した男は誇らしげに殺芽へ告げる。「どうです、素晴らしいでしょう? バスカ様の指導のもと、我がウィンターステイシスで開発した新技術です。いずれファクト全体で導入されるようになるでしょう」「悪趣味ですね」「そう仰らないでください。この計画を指示されたのはザ・ティーチャー様なのですよ? 長らく潜伏の時が続きましたが……ようやく次の動きに移れます」「あの方のご命令、ねえ……。まあ、よいでしょう。その言葉を盾にするというのであれば、致し方ありません。お前たちにも手を貸しましょう。……ですがそれは、先に鼠を仕留めてからです」 殺芽が君のいる場所へと振り返る。彼女は最初から、君の存在に気付いていたのだ。「さあ、出ておいでなさい。来る勇気がないのならば、こちらから行きましょう!」 君は殺芽の前に姿を現してもいいし、現さなくても良い。 しかし、逃げられはしなさそうだ。 さて、どうしよう?【状況2】
殺芽が哄笑を上げ、君へと襲い掛かる! 刃が振るわれる! うまく躱せ! …【運動】ー20%か【霊能】-20%で判定。【状況3】
「今の一撃で死ななかったことは褒めて差し上げましょう。肩慣らしには好都合」「ですが、次はどうでしょうね。その次は? さらにその次は?」「せいぜい足掻いてくださいよ、久々のヒーローとの戦いなのです。期待させてください」 刀を構えた殺芽が、君のもとへと歩み寄る。戦闘は避けられない……そう思われた次の瞬間、君の背後からパシュッという乾いた音が聞こえた。君の腕に小さな注射器が突き刺さり、薬液が君に注射される。君の体から驚くほど急激に、力が抜けていく。「なァにを遊んどるか殺芽! さっさと殺せ!」「貴様!」 霞む意識の中、君の視界に未来人バスカが映り込む。殺芽はバスカと何事か言い合っていたようだが、やがてつまらなさそうに君を見下ろし、刃を構え直した。「……はあ、なんとつまらない幕引き……残念です」 殺芽の刃が、君の首めがけて振り下ろされる…!ガギィン!
【エンドチェック】
□意識を失った□グリットを1点獲得した【解説】
●ウィンターステイシス 未来人バスカ率いる、フォーセイクン・ファクトリーの第二派閥。戦闘に秀でたホットステンチ、少年隊育成と膨大な規模が特徴のデラックスデザイアと違い、滅多に表に出てくることのない謎に包まれた組織だ。科学者然とした構成員が多いが、それもまた、彼らの一側面に過ぎず、別派閥の者達にすら不気味がられる、正体不明の集団だ。●新技術 『疑似餌の矜持』にて、バランサー・フォーのメンバーの一人、ブルーに対して用いられていた技術。生きていた人間の生皮を特殊加工し被り、指紋・声帯・生体反応の全てを当人のものとする。●死亡したら? 「死亡」した場合、君は意識を失い、全てが終わったあとで目を覚ます。余韻フェイズへ行くこと。→【余韻フェイズ2】●つまらなさそうに せっかく活きの良い現役ヒーローと再戦できると思ったのに、出来なかったので、がっかり。●リセット 未来人バスカのパワーの一つ。対象の判定を1度だけ振り直させる。多分インペインはここで100Fを出した。【クエリー2:大脱走】
【状況1】
君が目をさますと、そこはどこかの薄暗い倉庫の中だった。腕を引っ張られる感覚に視線を向ければ、先ほどの囚人、インペインが自分の腕の手錠を針金で外そうとしているのが目に入る。しかし上手くいかないらしく、インペインは舌打ちをする。そこに、暗闇から声がかけられた。「やめておけ。それ以上鍵穴が歪めば腕を切り落とすしかなくなるぞ。……さて、目覚めたようだな、ヒーロー」 尊大な声のもとへと視線を向ければ、そこには埃っぽい倉庫には不似合いの黄金のテックアーマーを身につけた男がいた。君はその男が何者なのかを知っている。超人国家サイレントサイエンスの元・国家元首にして、現在はロックウェイブ島に投獄されている囚人、ドクター・ドミニオン!「目を覚まして早々だが、この島の状況を伝えてやる。心して聞くが良い」 ドクター・ドミニオンは尊大に、島の現状を話し始めた。【状況2】
「さて、ヒーロー。ここで一つ選択肢だ」 ドクター・ドミニオンは言う。「我々は自分の力を取り戻したい。だがそのためには、ウィンターステイシスが邪魔だ。貴様はこの島を救いたい。そのためには、ウィンターステイシスの排除が必要だ。……手を組む余地があるように、余には思えるがな。ん?」 ドクター・ドミニオンは尊大に踏ん反り返りながら、君とインペインが繋がれた手錠を指差して言った。「それとも文字通り、ここで『手を切る』かね、ヒーロー?」 じろり、とインペインが、君を睨みつける。用が無ければ、今すぐにでもその手を切り落としてやろうと考えていることが分かる視線だ。 ヴィランたちの視線を受け、君は……。【エンドチェック】
□ドミニオンの誘いを了承した□グリットを1点獲得した【解説】
●ドクター・ドミニオン 超巨大海中要塞デュカリオンそのものを国土とする、潜水艦国家『サイレントサイエンス』の元国家元首。鎧を身にまとった科学者。 過去に引き起こした事件によって逮捕され、ロックウェイブ島へ収監されていた。何故か部下からの信頼は厚い。 詳細は基本ルールブック217ページ『サイレントサイエンス』参照。あるいはDLH体験版シナリオ『強襲!ロックウェイブ島』を遊ぶのだ。●釈放された 殺芽はすでにロックウェイブ島にはいない。今の君では後を追うことは困難だろう。 時系列としては、ちょうど「胎児は進化の夢を見る」の最後のチャレンジイベント〜決戦フェイズの舞台裏に当たる。●力を発揮できない そのため、このシナリオではパワーを用いることができない。これはPCも、ドクター・ドミニオンも、インペインも同様だ(実際には一人でデッドラインシナリオだからという都合だが、作中ではそういう事情だ)。●マトリクスはジャスティカに効くのか? 結論から言えば効く。 原理は不明ながら、超人種と戦うために鍛え上げられた力が失われる、あるいは著しく減退すると考えると良い。一説によれば、大母結界は超人種にも旧世代にも等しく影響を及ぼしているという。それと関係があるのか否かは、やはり不明だ。先天的に存在した力が失われること、努力によって得た力が失われること、どちらが心理的焦燥を煽るかは個々人次第といえる。●「力を取り戻したい」ドミニオン(クックック、あわよくば脱獄を狙っているというのは今は黙っておくとしよう!)●「この島を救いたい」ドミニオン(と、思ってないタイプだったらどうしてくれようか。まあ余の交渉術があればどうにでもなるであろう)【チャレンジ1:激闘! ロックウェイブ島】
【状況1】
「良いぞ、よくぞ言った! 褒めてつかわす!」「…………」 君の選択を、ドクター・ドミニオンは膝を打って喜ぶ。そして懐から壊れかけの通信機を取り出すと、胸を張った。「まずは作戦を説明しよう」 ドミニオンの計画によれば、こうだ。【激闘! ロックウェイブ島/チャレンジリスト】
■【出目5以下:ドミニオンの策略】
調査の支援を行なっているドクター・ドミニオンが、その裏で怪しい動きをしている。何を企んでいるのかは分かりきっているが、それで後手に回るのも面白くない。先んじて、釘を刺しておくとしよう。…【作戦】+20%で判定■【出目6:マトリクスの中和剤】
人質として連行されていく科学者たちの姿が見える。どうやらウィンターステイシスに従わなかった者達らしい。「ぐぬぬ、どこかで見覚えのある光景ではないか。なんという人材の無駄遣い!」 ドミニオンが歯噛みする。その意味はさておき、彼らを救助すれば有益な情報を得ることもできるだろう。…【白兵】+10%か【心理】+10%で判定■【出目7:二人三脚】
『止まれ! 反応がある、何かが仕掛けられているぞ』 ある廊下に差し掛かった時、ドミニオンの鋭い一喝が無線から齎される。君の隣で、インペインが眉を潜め、落ちていた警棒を廊下へと放り込んだ。警棒が地面へ触れた直後、天井から床までを隙間なく覆う、細やかな格子状のレーザーが廊下の区間を挟み込むように往復していった。警棒はバラバラになった。■【出目8:インペインの暴走】
「見つけたぞ、例のヒーローだ!」「囲い込め! バスカ様の元へ行かせるな!」 ウィンターステイシスの構成員たちに発見され、交戦へと発展する。君はマトリクスにより著しく弱体化した状態での戦闘を余儀なくされる。それは、君と手錠で繋がれたインペインも同様だ。 構成員と戦う中、隣のインペインが、ぽつりと呟いた。「……邪魔だな」 次の瞬間、インペインが君めがけて襲いかかってきた!「お前から殺すか?」 インペインが君を見る眼差しには、ギラギラとした理不尽な憎悪が宿り始めている。インペインとウィンターステイシスの構成員の双方へうまく応戦しろ!…【白兵】-10%か【霊能】-10%で判定を行う。判定に失敗で1d6+2点のダメージを受ける。成功した場合、グリットを2点獲得する。【出目9:ウィンターステイシスの目的】
未来人バスカ率いるフォーセイクン・ファクトリー第二派閥『ウィンターステイシス』。あまり前線に立たない彼らであるが、このロックウェイブ島の襲撃は彼らが主に行っているもののようだ。 島を制圧したウィンターステイシスは、研究セクションを主に牛耳っているらしい。つまり、そこに彼らの目的があるということだ。うまく隙をつき、研究内容を調べられれば良いのだが……。…【科学】+10%で判定を行う。【エンドチェック】
□出目9のチャレンジ判定を終えた。【解説】
●通信機 脱獄計画の為、ドミニオンがこっそりくすねていたもの。残念ながら脱獄計画を実行に移す前に、こんな形で出番が来てしまった。「脱獄は囚人の夢である」●ドミニオンは超人種? 詳しいオリジンは不明だが、そうだ。このシナリオにおいてはテクノマンサーとして扱う。●イベント数 一度目は1d6+1、二度目は1d6+2、三度目は1d6+3……ということ。挑んでいないイベントが存在しない場合、イベント数を+1してもう一度ダイスを振ること。●事件に巻き込まれて〜中和剤 これは『胎児は進化の夢をみる』のPC2のことを指している。マトリクスの中和剤は開発された後だが、開発されて間がない為、ロックウェイブ島には搬入されていない(表向きには、マトリクスは開発者のトニー・ピム博士しか製法を知らない薬品のはずだからだ)【クエリー3:過去・未来・現在】
【状況1】
君たちは調査を進め、遂に未来人バスカの居場所を特定することに成功した。 バスカはウィンターステイシスのメンバーと共に、島の最上階に位置する管制塔にいるらしい。周囲を海に囲まれたロックウェイブ島に於いて、船舶の管理を一手に担っていた施設だ。 君たちは管制塔を目指し、人気のない通路を進む。ウィンターステイシスの手によって電源が落とされたのか、廊下に明かりはなく、奇妙に薄暗い道が続いていた。 ……この通路はこんなにも長い通路だっただろうか? 君がふと、そんな疑問を抱いた瞬間だった。【状況2】
『アーッハッハッハッハッハッハ!』 どこからともなく、高笑いが響き始める。それと同時に、通路の照明が次々に灯っていく。否、そこは既に通路ではなくなっていた。通路の天井と壁と床が雑巾を絞るようにねじれていき、だまし絵のように入り組んでいく。窓の外にはロックウェイブ島ではない、今ではない、どこかの光景が映し出されていた。 それは誰かの帰りを待つ花屋の少女、ヒーローグッズに目を輝かせる地味な少年、一心不乱に机へ向かう老いた研究者、軌道エレベーターの中で戦う誰か、セカンド・カラミティのあの日……窓の外に映し出される光景は、陽炎のように揺らめきながら、まばたきの間に形を変えていく。『勘の良い奴め、両方秤の皿に乗せてやろうと思ったのになァ。殊勝な心がけじゃあないか殺人鬼、一度脱獄して情でも湧いたか?』 どこかから、幾重にも重なるように、未来人バスカの声が聞こえてくる。その姿は見えない。バスカは嘲りながら何処かへ皮肉の言葉を送り、改めて君へと語りかける。『が、まァ、コレはコレで悪くない。むしろ、より愉快な皮肉になった』『「次元の狭間」へようこそ、ヒーロー。お前に“リセット”のチャンスをやろう』 窓の外に、やがて二つの光景が映し出される。バスカが言った。『お前の前にあるそれは、二つの「過去」だ』【解説】
●腕だけを残し切断面から覗くぬらぬらとした肉質と、そこから溢れ出した真っ赤な血がグロテスクだ。【クエリー3:状況3ー1…ドミニオンの過去】
【クエリー3:状況3ー2:インペインの過去】
【クエリー3:状況4】
【チャレンジ2:リセット】
【状況1】
『ハハハ! ハハハハ! アァーーーーーハァーーーーーーハッハッハッハッハッハ!【状況2】
君が目をさますと、そこはどこかの薄暗い倉庫の中だった。腕を引っ張られる感覚に視線を向ければ、先ほどの囚人、インペインが自分の腕の手錠を針金で外そうとしているのが目に入る。しかし上手くいかないらしく、インペインは舌打ちをする。そこに、暗闇から声がかけられた。「やめておけ。それ以上鍵穴が歪めば腕を切り落とすしかなくなるぞ。……さて、目覚めたようだな、ヒーロー」 尊大な声のもとへと視線を向ければ、そこには埃っぽい倉庫には不似合いの黄金のテックアーマーを身につけた男がいた。君はその男が何者なのかを知っている。超人国家サイレントサイエンスの元・国家元首にして、現在はロックウェイブ島に投獄されている囚人、ドクター・ドミニオン!「目を覚まして早々だが、この島の状況を伝えてやる。心して聞くが良……な、なんだ、その顔は。まるでもう話が分かっているような顔ではないか」 「過去」は変えられない。変えられるのは「未来」だけ。……はたして本当にそうだろうか? 一人では抗えない。「あのタイミング」では無理だった。……では、「今」なら? これはチャンスだ、ヒーロー。 君の時間はやり直されている。【エンドチェック】
□チャレンジ判定を終えた。【解説】
●ドミニオンの無線 チャレンジイベント1『激闘! ロックウェイブ島』でドミニオンが使おうとしていたものと同一のもの。【クエリー4:ヒトは進化の夢を見た】
【状況1】
かくして、君はドクター・ドミニオンを守りながら、再びロックウェイブ島を攻略する。 マトリクスで著しく弱体化しているとはいえ、既に一度戦い抜いた島だ。どこで何が起きるのか理解している君がいれば、ウィンターステイシスの構成員たちの裏を掻くことは容易だった。 外部との通信に使える機材を探して戦う君たちは、その過程で囚われていた人質たちを解放することに成功する。その中には、君がこの島に来た時、物言いたげな顔をしていた看守の姿があった。彼は君の話を聞くと、覚悟を決めたように、懐から通信機を取り出す。「……通信機なら、持ってます。ウィンターステイシスに占拠される直前に、偶然、こっそり持ち出してたんです。俺がやった時は通じませんでしたが……でも、本当に出来るんですか? だって彼は今、マトリクスを打たれて……」「誰にものを言っている?」 ドクター・ドミニオンが看守の言葉を遮ると、彼の手から通信機をひったくり、尊大に告げる。「『一から何かを成せ』と言われたならば、確かに今の余はポンコツも良いところだろうよ。だがな、『もうあるものを使う』だけならば、話は変わる」「『凡人』にも『超人』にも等しく扱えてこそ『科学(サイエンス)』の真骨頂! そして余は偉大なりし『サイレントサイエンス』の国家元首、ドクター・ドミニオンなるぞ!」「当然! 出来るように! しているに! 決まっているだろうが、愚か者!」【状況2】
『我が民よ、耳を傾けよ! これは『サイレントサイエンス』元・国家元首、ドクター・ドミニオンの勅令である!』 通信は繋がる。 超人科学国家『サイレントサイエンス』、その国そのものである超巨大海中要塞デュカリオン中に、ドクター・ドミニオンの声が響く。 失われて久しかった国家の英雄の声に、民たちは驚き、顔をあげ、一様に耳を傾けた。『サイレントサイエンスの国土に毒を撒き、土壌を汚染する鼠が紛れこんだ! 警戒態勢Sを命じる! これは訓練ではない 繰り返す、これは訓練ではない! ミセス・トキシックはスタデンジャーを用いて民の避難誘導を! ザ・スペキュラーは自慢の目で賊を探知、ネムロンは捕獲隊の指揮に当たれ!』 サイレントサイエンスの幹部たち──ミセス・トキシックが、ザ・スペキュラーが、ネムロンが、驚愕の表情でその声を聞いていた。しかし彼らは即座に行動へと移る。不信による初動の遅れはなかった。それこそが、先代となった男の、国内における影響力を物語っていた。 潜水艦の操舵室で、その声を聞く女がいた。眼帯の女は、ぎりりと歯を噛み締めると、先代国家元首の声が流れるスピーカーへ、何事か叫んだ。しかしそれは、一方的な通信を送るだけのドクター・ドミニオンに届きはしなかった。 厳重な探知妨害を施された、特殊回線の繋がる時間は短い。必要事項の伝達でその時間は全て費やされる。最後に、ドクター・ドミニオンは告げた。『ビアシャラ』 スピーカーへ声を荒げていた眼帯の女が、息を呑んだ。『後は任せた』 通信は途絶えた。【状況3】
「何故、助けた」 視線の先、ドクター・ドミニオンがサイレントサイエンスとの通信を終える。その様子を眺めながら、君と手錠で繋がれたままのインペインは、唐突に問いかけた。「サイレントサイエンスは、お前たちにとってはヴィランのはずだ。ここで消せた方が効率が良いとは考えなかったのか」「奴らは変わらない。悪党を英雄と仰ぎ、盲目的に肯定してきた、自称無辜の市民様だ。少しも罪が無いとでも?」 問いかけるインペインの声は平易であり、彼の感情を読み取ることは出来ない。憎悪も殺意も、そこからは感じられない。けれど、彼の腕が答えを求めるように、君とつながる手錠を荒々しく引いた。ジャラリと金属の擦れる音が鳴った。──それなら、ここで処分した方が話が早い。──…違うのか? ふと、君の脳裏に、「過去」の世界でインペインが三人のヒーローへと告げた問いが呼び起こされる。 インペインが、小さな声で呟いた。問いというよりも、それは独白だった。「……生きている価値があるとでも?」【エンドチェック】
□サイレントサイエンスを救った□インペインの問いに答えた□グリットを1点獲得した【解説】
●ミセス・トキシック/ザ・スペキュラー/ネムロン 『パワー・トゥ・ザ・ピープル(D1)』より。ドミニオン無き新生サイレントサイエンスを預かる幹部たちであり、ドミニオン統治下のサイレントサイエンスを知るものたちだ。スタデンジャーは彼らによって開発された生物兵器の名称。●ビアシャラ 『パワー・トゥ・ザ・ピープル(D1)』より。ドクター・ドミニオンの娘と目される人物。実際に血縁関係があるのか否かは不明。ドミニオンの跡を継ぎ、新生サイレントサイエンスのトップとなった女性。 ただ一人のカリスマによって国家運営の全てを賄っていたドミニオンの独裁法治に対し、ビアシャラは国民一人一人を重用するスタイルの法治をとった。それにより科学国家は海賊国家へと形を変えたが、それでも存続を可能とした。 ビアシャラはドミニオンに対し複雑な感情を抱いている。それは同属嫌悪であり、こじらせたファザーコンプレックスのようだ、とも称される。【決戦:ベイビー・アザー:M】
【状況:決戦突入前】
『やあ殺芽、久しぶり。 我らがザ・ティーチャーから、遂に君に慈悲をかけてやれとお達しがきてね。 先ほどそちらに我々の友を一人派遣した。 小賢しく頭でっかちな男だが、君をそこから連れ出す役目ぐらいは果たせるだろう。 また君に会えたら、是非プレゼントしたいものがある。 これがあれば、君はもっともっと素敵になれるだろう……』【戦闘の処理】
■未来人バスカ:「リセット!」
君の攻撃判定が偶数の出目で成功していた場合、一度だけその判定を振り直させる。 この効果はグリットを使用して成功した判定には適応できない。■インペイン:「援護支援」
君の攻撃判定に対し、主要ルール「支援」の効果を適応する。この支援は何度でも使用出来る。 また君がダメージを受けた時、そのダメージを1d6点軽減する。■未来人バスカ:「精神爆弾」
攻撃判定に5回成功したタイミングで発生する。 君は【意志】で判定を行う。この判定に失敗した場合、1d6点(最低3点)のショックを受ける。【余韻フェイズ1:決戦フェイズに勝利した】
【余韻フェイズ2:
シナリオを完走できなかった or 決戦フェイズで敗北した】
【戦闘イベント:I'm Inpain.】
▼戦闘に勝利した
▼戦闘に敗北した(死亡/絶望した)