デッドライン・ポリス・ストーリー
━━手を挙げろ!
▼PDF販売
【PC1:警官殺し】
一人の刑事が殺された。容疑者は現役の弁護士だという。 そんなニュースが紙面を飾ったあくる日、君の元にダニーという若い刑事が現れた。「フランク・トッド殺人事件の調査に、アンタの力を貸してくれ」 それは昨日殺された刑事の名だ。【PC2:G6の裏口依頼】
君は懇意にしているG6のチェインから、『非公式』に事件の調査を依頼される。「今起きている刑事殺しの件、マットという弁護士が被疑者として逮捕された。 ……マット弁護士は、もしかしたら、ヒーローかもしれない」 チェインは君に願い出る。マットが本当にヒーローなのか調べてほしい、と。【PC3:死人との縁】
君は事件の調査の中、フランクという刑事と知り合った。 調査の中、フランク刑事は君を庇って負傷してしまう。 君たちの活躍によって事件は無事に解決したが……その日の夜、フランク刑事は死んだ。殺されたのだという。 自分を庇いさえしなければ、彼は死なずに済んだのだろうか? 自責か、後悔か。君は彼の死の真相を探ることにした。【イベント1:バスジャックと警官殺し】
【状況1】
君は今、大通りを走るバスに揺られている。 窓の外へ視線を向ければ、いつも通りの街並みが見える。視線を前へ向ければ、前の席では、若い男が難しい顔をしながら新聞を広げているのが見えた。 新聞の中で小さく報じられているのは、昨日発生したという、刑事が殺された殺人事件の報道だ。 犯人はすぐに逮捕されたという。ヴィランの暗躍が多いこのご時世、否、超人種が出現して以降、警察官の死は珍しい話でもない。 君の目的地であるバスターミナルは間も無く。 そんな時、バスの中に目出し帽を被った男達が入ってきた。「全員動くな! 騒いだら俺の酸でじわじわと溶かしてやろう!」「有り金をこの袋の中に詰めろ。グズグズすんな!」 強盗目的のバスジャック。 見た所、超人種ではあるようだが、君にとっては難しい相手ではなさそうだ。 さて、どうしよう?【状況2】
君は事件を解決し、望み通りのバスターミナルにたどりついた。 目的地へ向かおうとした君に、声がかけられる。「おい! そこのアンタ!」 振り返れば、先ほどバスの中で新聞を読んでいた男が立っていた。 男は息を切り、君へと駆け寄る。「アンタ、もしかして、ヒーローじゃねえか!?」「もしもそうなら頼みがある! 手伝ってくれ!」 男は鞄の中から警察手帳を取り出し、君へと示した。「俺はダニー。刑事だ」「フランク・トッド刑事の死について調べてる。……アンタの力を借りたい。このあと空いてないか?」 男あらため、ダニー刑事の手の中では、先ほどの新聞が強く握りしめられているのが目に入る。 フランクといえば、例の殺人事件の、被害者になった刑事の名前だ。【エンドチェック】
□ダニー刑事と知り合った□フランク刑事殺人事件のことを知った【解説】
●バスジャック PC1に格好良くバスジャックを撃退してもらうシーンを想定している。ここでの活躍から、ダニー刑事(新聞を読んでいる男)がPC1へ声をかけることになったのだと、プレイヤーが理解出来る流れが好ましい。【イベント2:G6の裏口依頼】
【状況1】
君は馴染みのチェインから、折り入って相談したいことがあると呼び出された。 呼び出されたのはG6。しかし正式な窓口ではなく、人気のない裏手だった。「いきなりこんなところに呼び出して悪いな。だが……あまり人の耳には入れたくない話なもんで」 チェインは君に切り出した。「フランク・トッド刑事の殺人事件について、アンタ、どれぐらい知ってる?」 君は事件のことを詳しく知っていてもいいし、あまり知らなくてもいい。【状況2】
事件のことを話し終え、チェインは君を呼び出した理由について告げた。「あのマット弁護士は、ヒーローかもしれない。……証拠は無い。今はまだ、な」「俺は役目柄、いろんなヒーローと接する機会がある。G6から距離を取ってるヒーローもいるが、チェインってのはスパイみたいなこともするからさ。望むと望まざるとに関わらず、情報が入ってくることも多い」「で、俺が疑ってるのはこいつだ」 チェインは一枚の写真を君に差し出す。そこには夜の屋根の上を走る、赤いヒーロースーツを着た、君の知らないヒーローが写されていた。チェインは説明を続ける。「ヒーロー『ヘルデーモン』。G6とは距離を取るタイプでね、詳細は不明。だが、盲目のミスティックってことだけは確かだ。誰かさんに似てるだろ?」「証拠は無い、だから正式には動けない。あるのは俺の勘だけ。……似てると思ったんだよ。ニュースの後ろ姿が、俺を助けてくれた、この人に」「人違いだったら、警察に任せる。だけど本当に彼がヒーローで、例の事件が……例えば、ヒーロー活動中の、何か理由のあるものだったら……可能な限りの手助けをしたいと思ってる。そういうのも、俺たちの役目の一つだ」「俺の方でも動いちゃみるが、警察で掴めてないものを、一介のチェインだけで掴めるとも思えなくてね。場合によっては一刻を争うだろうし……アンタの力を借りたい。頼めないか?」【エンドチェック】
□マット弁護士の調査を開始した【解説】
●馴染みのチェイン 少なくとも、非公式な依頼を個人的に相談される程度には、信頼されている相手。●殺人事件について ここでGMは「刑事フランク・トッド殺人事件」の情報をPLへ開示すること。その上で、PCの好きに知っている/いないの演出をさせると良いだろう。 また、PC2のエントリーの中で、シナリオ冒頭に記したヒーローと警察、転じて警察とG6の関係の複雑さについて、チェインの口から言及してもいいし、敢えて伏せていてもよい。このチェインの根拠のない『勘』を除けば、この件はヒーローもヴィランも関係ない、ただ超人種と旧世代の間で発生した、犯人が出頭済みの殺人事件でしかない。 このチェインは過去にヘルデーモンに窮地を救われたことがある。この調査依頼は、チェイン個人の好意と善意に基づくものでもある。【イベント3:死人との縁】
【状況1】
あれは、今から一週間前のこと。 君はあるエリアで多発していた、児童誘拐・人身売買事件について調査を行なっていた。 犯人が根城にしていた廃墟へと足を踏み入れた君だが、既に犯人の姿はない。そんな君に、不意に声がかけられる。「動くな。両手を頭の後ろにつけろ。……ここの奴らのお仲間か?」 こちらに銃を突きつけているのは、中年の男だった。彼は疑いの眼差しで君を見ている。どうやら君を、この事件の犯人グループの一派と疑っているようだ。 さて、どう疑いを晴らしたものか。 これが、君とフランク刑事のファースト・コンタクトだった。【状況2】
男は自分をフランクという刑事だと名乗る。かくして君はその後、フランク刑事と調査を共にした。 調査を重ねれば重ねるほど、君たちは犯人グループの陰惨な犯行と、被害者となった子供たちの残酷な現実を垣間見ることになる。 やがて君たちは犯人グループと対峙する。そして…。「危ない!」 犯人の一人が放った弾丸が、君めがけて放たれる。それは君一人でも対処出来るものだったかもしれない。しかし、君の体を強く引く手があった。 君の代わりに、その弾丸を受けた影があった。【状況3】
幸い、フランク刑事の傷は浅く済んだ。 そして君たちはその後、犯人グループを一斉検挙することに成功する。 パトカーに連行されていく犯人達を見届けながら、君はフランク刑事の独り言のような言葉を耳にした。「後ろでガキに薬打ってたやつ、いただろう。……前にも捕まえたことがある。捕まえて、ムショにぶち込んだ。その結果がこのザマだ」「……何もできやしねえ」 その眼差しには、どこか剣呑な色が滲んでいた。 そうして、君は彼と別れた。 それが、つい昨日の話だ。【状況4】
そして今。君はニュースの報道で、フランク刑事が死亡したという報を聞いている。テレビの中に映し出される男の写真は、紛れもなく昨日まで共にいた刑事の姿だ。 フランクは昨日の夜、殺されたのだという。犯人は既に逮捕されているが、動機は不明。このご時世、珍しくもない警察官の死の報道は、五分足らずで終わってしまった。 死は出会いとは無関係に、理不尽に訪れるもの。けれど、君の脳裏を、どうしても過ぎるものがある。 あの時、自分が庇われなければ、彼は死なずに済んだのではないか? それは自責か、後悔か、それとも異なる感情か。 君はフランク刑事の死の真相を調べることにした。【エンドチェック】
□フランクとの過去を回想した□フランク刑事殺人事件の調査を開始した【解説】
●犯人グループ こうした犯行グループは、この世界にはヴィラン組織云々にかかわらず山ほどいる。●残酷な現実 例えば誘拐された少女が惨たらしく殺されて、野良犬の餌にされて、一部の骨しか見つけられなかったとか。 GMとPLで、自由に残酷な事件をでっちあげよう。【チャレンジ1:マット・ウィルソンの秘密】
【状況1】
君は逮捕されたマット・ウィルソン弁護士の自宅へと向かう。マットの自宅は閑静な高級住宅街の中にひっそりと佇んでいる一軒家だ。 被疑者の自宅ということで、既に警察の調査の手は入ったあとらしい。入り口には見張りの警官が立っている。真っ向から事情を説明したところで、入れてもらえはしないだろう。 さて、どう侵入したものか。【状況2】
君はマット・ウィルソン弁護士の自宅へ潜入することに成功した。部屋部屋を調べる君は、やがて書斎にたどりつく。 室内は既に警察の調査の手が入った後らしく、テープによる仕切りや、鑑識の調査の跡が随所に残されていた。 まだ調べられるものは残っているだろうか? 警察には見つけられずとも、ヒーローとして特筆した能力を持ち、何よりヘルデーモンに関する情報を得ている君ならば、分かることもあるかもしれない。 君は改めて精神を研ぎ澄ます。【状況3】
室内を改めて探索してみると、本棚の一部の本だけが、ジャンルを問わず、アルファベット順に整えられていることがわかる。よくよく調べれば、厳重に隠されてはいるが、何らかの魔術によって隠匿されているらしかった。 試しに君がHELLDEMON(ヘルデーモン)の順に本を傾けてみると……本棚に魔法陣が灯り、魔術によって秘匿されていた隠し扉が展開されていく。 中に入れば、それはまさしく巧妙に隠されたヒーローの秘密基地だった。随所に、街で起きているヴィランたちの活動や、原因不明の事件の情報がまとめられている。クローゼットの中を見れば、写真で見たヘルデーモンのコスチュームが仕舞われていた。 君は確信する。マット・ウィルソン弁護士は、ヒーロー「ヘルデーモン」の正体なのだと。 しかし、そうならば、彼は何故殺人を犯したのだろう? ……その時、君の背後から、人の足音が聞こえてきた。【エンドチェック】
□ヒーロー“ヘルデーモン”の正体を知った□足音を聞いた【解説】
●HELLDEMON ヘルデーモン=マットという可能性を知らない者では辿りつけないということ。警察だけでは無理なのだ。●隠し扉の展開 魔法陣が光り、本棚が溶け落ちるように、あるいは霞のように存在がブレながら、その奥に存在しないはずの空間を作りだす。 正規の調査手段や、強力な超人種のいない警察では見つけられない部屋だということに、説得力を持たせられる演出をすると良い。●足音 PC1とダニー刑事のものだが、この時点で明かす必要はない。 PC2が現場を立ち去る前に、シーンを切り替える。立ち去るか残るかの選択は、次のシーンで行われる。【クエリー1:正義の違い】
【状況1:PC1視点】
PC1はダニー刑事に連れられ、マット弁護士の自宅へ向かっている。 マット弁護士の自宅には見張りの警官が立っている。彼らはダニーを見ると不思議そうに言った。「ダニーじゃないか、謹慎は解けたのか?」「警部補に噛み付いたんだって? バカだな、でもよくやった」 ダニーの取りなしによって、君は訝しげな眼差しを受けながらも、問題なく家の中へと入ることができる。玄関の扉を開けながら、ダニーは君へ説明する。「確かに現場には弁護士の指紋が残されてたし、あの弁護士がミスティックだってのも確かだ。そもそも超人種犯罪は物的証拠が残りにくい。状況証拠や本人の証言が優先されがちだ。まして、今回は自首だしな」「それでも、疑問が残る。ホシは金銭トラブルが理由だったと証言しちゃいるが、奴らにこれまで面識があったとは確認されてない。それに弁護士先生が金銭的に困窮してたってのも妙な話さ。それでも、上はさっさと起訴する気満々でね。……噛み付いたんで謹慎中だよ、バカだろ?」「……分かっちゃいるさ。このご時世、警察にそんな小さな違和感を探ってる暇なんざねえってことぐらい。俺が動いてる理由が、警察官としての正義感からなんかじゃない……個人的なものだってこともな」 ダニー刑事は奇妙に言葉を濁しながら、開き直ったようにあっけらかんと言った。「ぶっちゃけりゃ職権乱用だ。軽蔑するか?」 玄関の扉は開く。 君たちは奥へと進んでいく。【状況2:PC2視点】
君は、いま君のいる、隠し部屋のある部屋に誰かが近づいてくるのを察知する。 警察関係者だろうか? ……もしそうだとすれば、マット弁護士がヒーローだった証拠の詰まった、この部屋を見せるべきだろうか? それとも、今はまだ隠しておくべきか? 君自身は姿を晒すべきだろうか? それとも、立ち去るべきだろうか? 君の前には数多の選択肢がある。どの選択を為すにせよ、今ならば、どれもまだ間に合うはずだ。 君は何を選ぶ、ヒーロー? 君の出した答えは…。【状況3−1:PC1とPC2が遭遇した】
ダニー刑事と共にPC1がマットの自宅へとやってきた時、そこにはPC2の姿があった。「誰だ!? そこで何してる!」 ダニー刑事が驚きの声をあげ、身構える。PC1から見れば、PC2は容疑者の自宅にいた不審な人物だ。さて、どう声をかけよう? PC2からすれば、PC1はどうにも警察官には見えない人物だ。そしておそらく、この状況を不審がられている。さて、どう声をかけよう?【状況3−2:PC1とPC2が遭遇しなかった】
PC1はダニー刑事と共にマットの自宅へとやってきた。そこにPC2の姿はもうない。「ここが被疑者のマット・ウィルソンの自宅で、警察の調査が入った時には…」 ダニー刑事は君に部屋のことを説明していく。そうしている中で、君はふと、部屋に誰かがいた痕跡が残されていることに気付く。君たちが来る直前まで、この部屋には誰かがいたらしい。 君はより詳しい調査を行い、マットの隠し部屋を見つけたことにしてもいい。あるいは、敢えて、見つけられなかったということにしてもいい。【エンドチェック】
□PC1とPC2が遭遇した(ニアミスした)□グリットを1点獲得した【解説】
●でもよくやった ダニー刑事の人柄と、同僚との関係を端的に示すためのやりとりだ。●金銭トラブル もちろん嘘だ。●「職権乱用だ」 このセリフは後半のクエリーの伏線となる。PCの印象に残るように、けれどここではあまり重くならないように、さらりと言っておくのがよい。●合流しても良いし、しなくてもいい PC1とPC2がニアミスし、マットの隠し部屋に二人のヒーローが異なる形で接近するクエリー。 その時、ヒーローたちは何を選ぶだろうか。何が起きているか分からないこの状況で、全てを詳らかに明らかにするだろうか? それとも敢えて警戒し、詳細は伏せたまま動くだろうか? PC1とPC2にとっては、お互いが何者であるのかすら分からない状況だ。 PC1とPC2はここで合流を果たしてもいいし、果たさなくてもいい。状況描写にはあまりこだわらず、プレイヤー同士で相談してもらいながら、シーンを演出していくと良いだろう。【クエリー2:秩序為す人々】
【状況1】
君は「刑事フランク・トッド殺人事件」を調査した。 容疑者の名前、死因、現場の状況……調査の甲斐あって、君のもとにもいくらかの情報が手に入る。しかし、浮上する情報は、いずれもがマット弁護士を犯人とするものばかりだ。一抹の不自然さすら抱くほどに。 君は察するだろう、この事件は何らかの情報統制を受けているのだ。 これは、ただの殺人事件ではない。 より詳しい情報を集めなければならない。現時点で、最も情報が集められている場所──君は、警察署への潜入を画策する。 さあ、どう忍び込もうか。【状況2】
君はセキュリティを抜け、証拠保管庫に潜入する。経費削減の為か、保管庫に明かりはなく、中へと入り込んでしまえば人の気配もなかった。 フランク刑事が担当していた案件の資料は、ひとまとめになって保管されていた。彼が担当していた事件の書類も、完全な引き継ぎが終わっていないのか、まとまって残されている。しかしその書類には、既にいくらか、第三者の手が加えられた痕跡が残されていた。 かくして君は情報を得る。フランク刑事が死の直前まで担当していた事件は、『スラッシャー』と呼ばれる連続殺人犯に関する調査だったようだ。調査担当の刑事はフランク・トッド、そしてダニー・ウルフの2名。君がより詳しく資料へと目を通そうとした、その時だ。「動くな」 君の後頭部に、冷たい銃口が突きつけられた。【状況3】
視線を向ければ、そこには上等なスーツを着た年配の女が立っていた。彼女が君に向けているのは、警察の制式装備品である対超人種銃だ。「武器を捨ててその場に膝をつきなさい」「警備システムに違和感があったから見に来てみれば、警察署で泥棒とはいい度胸じゃない。舐めてくれるわね。不法侵入および窃盗未遂の現行犯で逮捕する。どこの組織の者?」 女は油断なく君を見据え、警戒心に満ちた声で問う。そして、君が手にしている書類を目にし、断定するように厳しい口調で告げた。「……本当にヒーローってのは勝手な生き物」「その書類はお前達にとって意味のあるものじゃないわ。その手を離し、目にした全てを忘れなさい」「お前たちが本当に『正しいことをしている』という保証がどこにある?」 君はこの場から自力で離脱するより他にない。幸い、相手は一人だ。君の身体能力があれば、どんな形であっても逃げ出せる。 さて、どうする?【エンドチェック】
□情報を得た□警察署から逃げ出した□グリットを1点獲得した【解説】
●どこの組織のもの? PCをヴィランだと思っているが、すぐに考えを改め、ヒーローであると看破する。あるいは、PCが自分から名乗るなら、それに便乗しても良い。PCがヒーローだと知っても、彼女の頑なな態度は変わらない。「ヴィラン、ヒーロー。カテゴライズは勝手だけど。それを理由に法の線引きを覆そうものなら、それこそ欺瞞以外の何になるのかしら」●正しさの保証 この時点のPCは知るべくもないが、これはエレクトラ警部補本人の自問でもある。●エレクトラ警部補 エレクトラ警部補は、スラッシャー事件およびフランク殺人事件の担当警察官。フクロウのサイオンだが、戦闘能力がヒーロー達ほど高いわけではない。 彼女がヒーローに対して敵意を向けているのは、フランク殺人事件の真相およびスラッシャーの正体を部外者に知られないようにする為の警戒であり、同時、フランク刑事がスラッシャーとして活動していたことに対する落胆からくる、八つ当たりめいた敵意だ。 そして同時に、彼女はここに来る前に、マット弁護士と裁判の方向性について話を着け終えたところだった。すなわち、ヒーロー・ヘルデーモンを守るための行為ともいえる。 要は虫の居所が心底悪いタイミングだったということだが、PCにとってはこの時点では知りようのない話。エレクトラ警部補が、嫌味で裏のある警官に見えるよう演出してしまえば良いだろう。 エレクトラがこの証拠品保管庫に来たのは偶然だ。マットとの話を終え、一人で事件のことを考えられる場所を求めて、彼女はこの証拠品保管庫へ辿り着いた。フランクの書類を確認していた人物も彼女だ。【クエリー3:ヒーロー“ヘルデーモン”】
【状況1】
マット・ウィルソン弁護士がヒーロー『ヘルデーモン』であったという証拠を掴んだ君は、マット弁護士に真実を問い詰める為、留置所の面会室を訪れる。 留置所近辺をうろつくマスコミ関係者によって多少時間を食わされたが、マット弁護士との面会は無事に叶った。分厚いガラス越しに、マット弁護士が君と相対する。 さて、どう切り出そうか。【状況2】
ヘルデーモンの件を問われ、証拠が揃っていることを明かされるのであれば、マット弁護士は観念したようにそれを認める。そして君に告げた。「私は確かに、ヒーローとして活動していた」「法を守るべき立場にいながら、それを侵し続けていた。何故か? ……知ってしまったからだ。法には限界がある。弁護士では、警察では、裁判では、裁ききれない『悪』がいる。守りきれない『正義』があるということを。ヒーローという、何かに縛られているのではない、ただ己の信じるもののみに殉じる者でなければ、救えないものがあるということを」「それは妥協だと思うかい?」 マットは感情の読めない声で君に問う。「ただ正義を貫きたいのなら、警察にでも、軍人にでも、弁護士にでも、検事にでも、裁判官にでも、なりたいものになればいい。……君は何故、『ヒーロー』を選んだ?」【状況3】
君の答えを聞き届け、マットは「そうか」と静かに告げ、重苦しい沈黙の後に口を開いた。「……ヒーローであったとしても、それは法を侵して良い理由にはならない。法は正義ではなく、秩序だ。異なる人々が同じ空間で生きて行く中で、守らなければならないルールだ。私は人を殺した。だから私は法の裁きを受ける。フランク刑事を殺したのは、間違いなく私だ」「……けれど、私がフランク刑事を殺したことと、私がヒーローであったことは関係ない。私がヒーロー活動をしていたことを知れば、メディアは意気揚々と『ヒーロー』という偶像を責め立てるだろう。許されぬ罪を犯しこそしたが、それは私の本意ではない」「だから……どうか、私がヒーローだったということを、公開しないでほしい。私の罪は、弁護士マット・ウィルソンが全て持っていく」「……あの部屋のものは全て、焼き払ってくれないか」 マット弁護士はそう言うと、「頼む」と君に頭を下げる。彼はこれ以上、この件について口を開く気はないようだ。 君はどうする、ヒーロー?【エンドチェック】
□マットの言葉に答えた□グリットを1点獲得した【解説】
●焼き払ってくれないか ここでPCがマットの願いを肯定する発言をするのなら、それはチャレンジ3のやりとりに利用できる。GMはそれとなく、メモなどに残しておくとよい(難しければ無理にやる必要はない)【チャレンジ2:法の女神は目が見えぬ】
【状況1】
連続殺人鬼『スラッシャー』。 それは、セカンド・カラミティ後に姿を現すようになったヴィラン──正しくは、ヴィジランテ(自警団)。あるいは、クライムファイター(犯罪者退治人)。 警察の資料上は連続殺人鬼とされてはいるが、被害者はいずれもが犯罪組織に関係を持つ犯罪者、ないしはヴィランであり、民間人に被害が出ているわけではない。けれど既に、スラッシャーは両手では足りない人数の人間を殺している。 君たちであれば、その在り方を取る者達が、一部でどう呼ばれているかを知っている。 即ち──『殺しを厭わないヒーロー』、と。【状況2】
ヒーロー『ヘルデーモン』の正体、マット・ウィルソン。連続殺人鬼『スラッシャー』を追っていた刑事、フランク・トッド。果たしてあの日、その二人の間に何があったのか? ヒーロー達は調査を続け、フランク刑事殺人事件の現場である、セント・エルモ港の側に佇む、ポートマリア教会を訪れた。 人気のない真夜中。生々しい蛍光色を発するKEEP OUTのテープで区切られた区画で、三人のヒーローは顔を合わせることになる。【状況3】
殺人現場である教会は人払いがされているのか、ひっそりと静まり返っている。現場検証は既に終わっているらしく、警察の姿はない。 暗い礼拝堂の中にいるのは君たちだけだ。 ここから、何を得られるだろうか。【状況4】
調査の結果、いくつかの情報を得ることが出来た。 この教会は、いくつかの犯罪組織に場を提供することで利益を獲得しており、昨日もここでフォーセイクン・ファクトリーの何らかの違法取引があったということ。 教会内には、高度な魔術的能力によって隠蔽が施されているものの、随所に戦闘の痕跡が残されているということ。それは複数人の人間による戦闘が行われたと察せるだけのものであり、恐らくこの隠蔽を施したのはミスティック・ヘルデーモンであろうということ。 更に、判定3に成功すると、PC1の衣服に、ひっそりと隠しカメラ付きの盗聴器がしかけられていることが分かる。PC1にこんなものをつけることができるほど、行動を共にしていた人物といえば……。 PC達が盗聴器に気付くと、PC1の通信機器にメールが入る。送信者はダニー・ウルフ刑事。 文面には、『埠頭で待つ』とだけ記されていた。【エンドチェック】
□チャレンジ判定に成功した□ダニー刑事からの連絡を受け取った【解説】
●殺しを厭わないヒーロー この是非に関してはPL間でも意見が別れる可能性がある。逆に、PCがまさにそういうタイプのキャラクターである可能性もある。GMは極力フラットに処理することが好ましい。このシナリオのテーマの一つでもある。●三人のヒーローは顔を合わせる 好きな合流ロールをしよう。この時点で、PCたちはそれぞれが得てきた情報が、共通点を持ちつつもそれぞれ違う情報を得ているはずだ。 動機はさておき、目的が同じであることを理解し次第、状況3へ。●メール アドレスを教えた覚えがなくても、一方的に送りつけられる。ダニー刑事はPC1のことをすでに調べ終えている。【クエリー4:ダニー・ウルフの目的】
【状況1】
「よう、言いたいことがあるなら聞くぜ」 君が教会の近くにあるセント・エルモ埠頭を訪れれば、そこではダニー刑事が煙草をふかしながら待っていた。 彼は煙草の火を足で踏み消すと、PC1から視線を逸らさず、真っ向から告げる。「最初に言おう。俺がお前に接触したのは、偶然じゃない。計算の上でだ。……バスジャックが起きたのは予想外だったが、あれのおかげで不信感が消えたんで、結果オーライ。あれが起きてなくても、適当なタイミングを見計らってお前に接触するつもりでいた。……ヒーロー、(PC1名称)」【状況2】
ダニー刑事は君に、彼の目的を話す。「俺は、生前のフランク・トッド刑事と組んで、連続殺人犯スラッシャーの件を調べてた。結論から言えば、俺はスラッシャーの正体は、フランク刑事じゃねえかって疑ってた。もう随分と長いことな。 証拠がなかった。それもある。信じたくなかった。それも確かだ。だが、それ以上に、俺はこうも思ってた。『フランクがスラッシャーだとしたら、それは、仕方のない話だ』。納得してたんだよ、スラッシャーのやり方に。……共感すらしてた」「捕まえても、捕まえても、犯罪者は減らない。超人犯罪は日進月歩で進み、やっとの思いで捕まえた悪党は、証拠不十分、買収による不起訴、挙句ようやくムショに放り込んでも看守をブチ殺して脱獄。まっとうな人間であればあるほど、頭がおかしくならぁな。 だが、その結果……あの人は死んだ。それで俺はようやく、自分が見て見ぬ振りをしてただけのクソ野郎だったってことに気付いたのさ」「……だから俺は、もう見て見ぬ振りはしねえ。どんな真実だろうと、全てを世に示す。警察官が殺人鬼だろうと、被疑者の弁護士様がヒーローだろうと、知ったこっちゃねえ。同情の余地があろうとなかろうと、構うもんか。その為なら、『どんな手だって使ってやる』」 ダニー刑事の目はギラギラと怒りの感情に燃えている。義憤、怒り、後悔……そういうものに満ちた、警察官らしからぬ感情的な目だ。PC3であれば、それはかつてフランク刑事が浮かべていた、剣呑な眼差しに似ていると感じるだろう。 ダニー刑事はPC1を見据え、自嘲するような笑みを浮かべながら、以前君に言ったのと同じ問いを投げかけた。「要はアンタを利用してたのさ。おかげで、ずいぶんと色々なことが分かったよ、感謝するぜ」「……おうとも、職権乱用だ。軽蔑するか?」【エンドチェック】
□ダニー刑事の質問に答えた□グリットを1点獲得した【解説】
●法律 プライムバースにおいて、超人種を裁くための正当な法律は未だ確立していない。超人刑務所と称されるロックウェイブ島も、実際のところは体の良い隔離・実験施設というのが実情だ。●職権乱用 ダニー刑事の目的と価値観を伝え、それに伴う危険性を示すシーン。 全てを白日のもとに晒す、それは確かに理想的な正義感だ。しかし今のダニー刑事の心理状態の全てを肯定しても良いものなのか? この正義感の暴走は、スラッシャーと何が違うのか? それは誰の為の行為なのか、「警察官」がそれを行なって良いのか、それは本当に正義なのか? etc... PCはダニー刑事の行いを肯定してもいいし、否定してもいい。【チャレンジ3:デッドライン・ポリス・ストーリー】
【状況1】
PC1とダニー刑事が向き合っている時、PC2のスマートフォンに電話が入る。電話の主は、君に今回の依頼を持ってきたG6のチェインだ。 しかし、君が電話に出ても、誰の声も聞こえてこない。何かが呻くような音と、環境音、遠くで誰かが話をしているような音が微かに聞こえてくるだけだ。『……今夜……予定通り……』『待て』 そんな声が聞こえてくると同時、環境音が強くなる。誰かが呻く声の後、チェインのスマートフォンのはずのその番号から、嘲るような低い笑い声と共に、男の声が聞こえてきた。【状況2】
デラックスマンとの通信は一方的に切断される。この広い街の中、チェインがどこにいるのか探し当てるには、今のままでは明らかに情報が乏しい。 PC1の前で、PC2とデラックスマンのやりとりを耳にしていたダニー刑事は、すぐさま自身のスマートフォンを取り出す。彼が電話をかけようとしているのは警察署。応援を要請しようとするのだ。 コール音が繋がる刹那、PC1とダニー刑事の視線が交錯する。 ……警察の手を借りれば、広範囲の捜索を組織的に行うことが出来、チェインの身柄の早期発見に繋がるだろう。しかし同時に、一線級のヴィランと、一介の警察組織とでは、戦力に絶望的な開きがある。 彼らを巻き込めば、被害を増やすことにも繋がるかもしれない。何より、今のダニー刑事を、君は信用できるだろうか? PC1はこの一瞬で決断しなければならない。即ち、彼ら警察の手を借りるか、借りないかを。【結果】
判定1に成功することで、チェインは武装集団の手によって、WAVE社の屋上に磔にされていることがわかる。 判定2に成功することで、デラックスマンはWAVEから遠く離れた、ある裁判所にいることが分かる。それは間も無く、マット・ウィルソン弁護士の裁判が行われる予定の裁判所だ。 チェイン救助は警察が行い、デラックスマンへの対処をヒーローたちが担うことになる。【状況3】
夜の裁判所の屋上にて。「お前たち、何者だ! 止まりなさい、止まらないと撃……」 銃を構えた警備員の頭部が吹き飛び、あっけなく絶命する。躊躇なく引き金を引いたのは、武装したデラックス・デザイアの構成員。夜の裁判所は音もなく、いとも容易く制圧される。 それと同じタイミングで、空を飛ぶWAVEの宣伝用飛行艇のモニターが緊急ニュースを報道し始めた。夜空に映し出されるのは、WAVEの屋上に磔にされているチェイン、その元へ向かおうとしている警官隊、チェインの周りで武器を構える『まるでヒーローのような覆面をした』武装集団。【状況4】
姿を現したヒーロー達を見て、デラックスマンは笑う。「ふうん、『彼ら』と仲直り出来たのか? それは残念」「しかし、それならば尚更、あちらに行かなくていいのかな。警察程度にどうこう出来るような、ヤワな部隊は向けていないのだがね」「あのテープの中身が気になる? ……それなら、ちょうどここにコピーがある。聞かせてあげよう」 いつの間にか、デラックスマンの手の中には、チェインの口に押し込まれているのと同じテープがある。再生ボタンが押されれば、そこから流れてくるのは、留置所でのマット弁護士とPC3の会話だ。【エンドチェック】
□ヒーローが真実を知った【解説】
●悲鳴 デラックスマンがわざわざ電話を続けたのは、ヒーローに対する嫌がらせ、チェインというスパイからヒーロー側がどの程度自分たちの動きを把握しているかを確認する為のもの、そして自分がこのあと起こそうとしている『本当の目的』からヒーローの目を逸らさせる為のものだ。チェインはそのことを伝えようとしたが、伝えきる前に拷問によって口を塞がれてしまった(彼は電話の向こうで舌を切られ、口内の歯を全て切断されている)。●幹部への対処 警察ではデラックスマンに勝てない。●Q.他のヒーローは? 相対しているのがヒーローに扮した者達のため、迂闊に手を出せずにいる。また、そもそもセカンド・カラミティ以後、ヒーローの絶対数は少ない。いま、どうにか出来るのはPC達だけなのだ。●テープの中身 テープの中身についてヒーローが言及しなかった場合、ヒーローを煽る目的で見せつける。どうせここまで来ればヒーローが立ち去ることはなく、自分と戦うとわかりきっているからだ。それならたっぷりバカにしてやろうと思っているのだ。●マスターシーンが発生 ザ・ティーチャーがどこにいるかが分岐する。●何故わざわざ説明を? 理由はいくつかある。1.その方がヒーローが悔しがる顔が見れて愉快なので2.善意の人々が善意が故に空回った結果であるこの顛末は、ヴィランにとってはたまらなく面白い話だから3.時間稼ぎ。ヒーローの援護が遅れれば遅れるほど、警官隊達の状況は悪化することを、デラックスマンは冷徹に理解している。「話の間に何人死んだかな?」【マスターシーン:狗から狼へ】
【描写】
WAVE屋上にて、警察による人質救出作戦は続く。 銃声によって衝突の始まった現場は、大きく混乱していた。倒れる者の数は、覆面達よりも、警官達の方が遥かに多い。 そこにダニー・ウルフ刑事の姿もあった。引き金を引いてしまった手を呆然と見下ろしながら、撃ち抜いてしまったものを見つめながら、ただそこにいた。 ダニー刑事の前に、エレクトラ警部補が立ちふさがった。エレクトラ警部補はダニー刑事に向け、何かを呟いた。──その直後、エレクトラ警部補の体が倒れた。 ダニー刑事の手から、拳銃がするりと落ちる。 ダニー・ウルフは、混乱する現場から姿を消した。【エンドチェック】
□ダニー・ウルフが消えた【解説】
以後、決戦フェイズへ突入する。このマスターシーンが発生した場合、チャレンジ判定失敗時のエネミーを使用する事。【決戦:悪意の継承……戦闘情報(チャレンジ成功時)】
【エネミー】
・デラックスマン(強化済み)・ヴィランメンバー×5・セキュリティガード×5【エリア配置】
■PC初期配置 エリア1・エリア2■NPC初期配置 エリア4:デラックスマン ヘンチマンはGMが自由に配置してよい。【勝敗条件】
勝利条件:敵の全滅敗北条件:ヒーロー全員の死亡・絶望【備考】
・デラックスマンが「ブラックメール」を4回成功(攻撃判定に成功すれば良い)する前に倒せなかった場合、PCは全員「汚名」を受ける。・この戦闘では、スパーク時の攻撃パワーの目標を「自身」に変更しても良い。・このルートのデラックスマンは、本人のパワーとザ・ティーチャーのパワーの双方を使用できるものとし、エナジーと能力値はザ・ティーチャーのものを使用する。また、「記憶の継承」の効果を以下のものに変更する。【GM向け補足】
●デラックスマンの状態 ……ザ・ティーチャーの記憶と、デラックスマンの自我の双方が共存している状態にある。とはいえ、ティーチャーの記憶がここにしかないという保証はどこにもない。●攻撃判定に成功 ……要は『作戦75%』の判定に成功した回数で判断するということ。ヒーローにとって、あまりにもこの状況が不利であるが故に、社会的な影響力がよりヴィランにとって都合よく働いてしまう、まさに瀬戸際なのだと解釈してほしい。●スパークの目標を自身に ……つまり自害だ。フランク刑事/スラッシャーには出来なかった選択である。【戦闘情報(チャレンジ失敗時)】
【エネミー】
・デラックスマン(通常ステータス)・ヴィランメンバー×4・セキュリティガード×4【エリア配置】
■PC初期配置 エリア1・エリア2■NPC初期配置 エリア4:デラックスマン ヘンチマンはGMが自由に配置してよい。【勝敗条件】
勝利条件:敵の全滅敗北条件:ヒーロー全員の死亡・絶望【備考】
・デラックスマンが「ブラックメール」を4回成功(攻撃判定に成功すれば良い)する前に倒せなかった場合、PCは全員「汚名」を受ける。・この戦闘では、スパーク時の攻撃パワーの目標を「自身」に変更しても良い。・デラックスマンが倒された時、同じエリアに「ザ・ティーチャー」を追加する。ティーチャーのステータスは通常データのものを使用する。・ザ・ティーチャーの「記憶の継承」の効果を変更する(変更内容は「記憶の継承(改)」と同じ)【ボスデータ(チャレンジ判定成功時)】
■デラックスマン(強化)
【エナジー】ザ・ティーチャーの値を使用する
【能力値・技能値】ザ・ティーチャーの値を使用する。
【移動適正】デラックスマンのものを使用する。
【パワー】
『デラックスビーム』 デラックスマンの所持する同名パワーと同じ効果とする。【エネミーの戦法】
【ヴィランの目的と誤算】
■フォーセイクン・ファクトリーの目的
このシナリオの中で、ファクトには目的が大きく分けて二つある。デラックスマンの目的と、ザ・ティーチャーの目的だ。 デラックスマンの目的は、この好機を活かして警察とヒーローの権威を失墜させること、そして自分の上司の件に対するちょっとした意趣返し。 ザ・ティーチャーの目的は、より強力な肉体の確保(≒ヒーローの肉体の確保)だ。 ザ・ティーチャーの記憶と意識は(チャレンジ判定に全て成功した場合)、デラックスマンの中にある。それ故に、彼らは今、複数の目的を同時に叶える為に行動を起こしている。デラックスマンの意識と、ザ・ティーチャーの意識が、一つの肉体に同居しているような形だ。 ただし、チャレンジイベント3の判定3に失敗した場合、この前提はちょっと変わる。ティーチャーの意識は既にデラックスマンの中から脱し、より強力な肉体を求めて、いくらかの人間の間を行き交っている。そして最終的にエレクトラ警部補を経て、ダニー刑事の中に宿り、最終的にはPC達の前に現れるという形になる。■デラックスマンの誤算
最も賢しらに行動するのであれば、ファクトはここまで派手に動く必要はない。状況は完璧に整っているのだから、落ち着いてヒーローと警察の対立を煽りながら、タイミングを見て決定的な証拠を無辜の市民の投書のような形でマスコミなり裁判所なりに放り込めば事足りてしまう。 それなのに、彼らがこの選択を取ったのは、一つに彼らがヒーローの無様と破滅を嗤うヴィランだからであり、二つに、名もなきチェインの抗いがあったからだ。 チェインがヒーローに連絡を入れずにひっそりと死んでいれば、デラックス・デザイアはもっと静かに、陰湿に、確実な手段を選んだだろう。しかしチェインがヒーローに連絡を入れたことで、その選択をしている余裕がなくなった。 そして、その名無しのチェインがチェインとしての役目を果たしたのは、過去に、ひとりのヒーローに救われた記憶があったから。 すべてのバトンを渡された先、そこから先の未来を掴むには、PC達の力こそが必要だ。【戦闘が終了したら】
【描写】
ヒーローとの戦いにより、デラックスマンはその場に倒れる。戦いの中で、あのテープもまた破壊されていた。 デラックスマンはヒーロー達を見上げながら、皮肉げに告げる。「……それで? 君たちは私を殺すのかね」 ヒーロー達が殺害を選ぶのであれば、デラックスマンは嘲笑いながら死ぬだろう。 捕らえることを選ぶのであれば、その寸前で、援軍に現れたデラックス・デザイアの部隊によってデラックスマンは救出され、その場から逃げ出してしまう。【各PCの結末(一例)】
【PC1の結末】
君はその後、君の日常に帰ってきた。 テレビの中では、先日のWAVE社屋上で起きた事件の真相について報道されている。一部の構成員が警察によって生きて逮捕されたことで、彼らの正体がヒーローではなく、ファクトの構成員であったことが明らかになったからだ。 そんな君の前に、ダニー刑事が現れる。彼は随所に負傷の跡が見えるが、どこか憑き物が落ちたような、吹っ切れたような顔をしていた。「誰かさんを利用しようとした汚職警官の現場復帰が決まったんでね、2~3発ぶん殴られてやろうと思って来た。今なら暴行罪は不適応にしてやるよ」 ダニー刑事はそう言って君を見る。殴るなら殴れといった顔だ。さて、どうする? 君の言葉を受けた後、ダニー刑事は仕切り直すように咳払いをする。 そして、開き直ったようにニヤリと笑った。「……で、改めて、手段は選ばないことにした」「ちょいと誰かさんの手を貸して欲しい話があるんだが、情報漏洩に乗っちゃくれねえかい?」 まったく、厄介な知り合いが出来てしまったらしい。【PC2の結末】
あの後、チェインは警察に無事救助され、病院へと搬送された。一命は取り留め、現在は入院中だ。 君は留置所で、改めてマット弁護士から、フランク・トッド刑事殺人事件の全ての真相を語られる。「スラッシャーは、殺してくれとも、死にたくないとも言わなかった。あるいは彼ほどの精神力があれば、もしかしたら、耐えられたのかもしれない。……けれど、私はあの時、彼と目が合った。そして、決断し、実行してしまった」「彼をティーチャーにしたくなかったのか、敵を増やしたくなかっただけなのか、良い機会だと思ってしまったのか……今でも答えは出ない。だから、私にはもう、ヒーローを続ける資格はないんだ」「自分の信念に背いてしまった時が、そのヒーローが死ぬ時だ。どうか君が、私の二の舞にならない事を祈る」 マット弁護士はそう語り終える。間も無く面会時間も終了だ。面会室からの立ち去り際、彼は最後の気がかりを吐き出すように君に尋ねた。「……G6の、あのチェインは無事かい?」 君がチェインの無事を告げれば、マットは改めて安堵の表情を浮かべ、君へ礼を告げて去っていく。【PC3の結末】
君はその後、ヒーローとしての日常に戻った。 いつも通り街をパトロールしていた君の目の前で、ひったくりが発生する。被害者は腕を三角巾で吊った年配の女性だ。 君がひったくり犯から荷物を取り返し、女性へと返せば、その女性が警察署の証拠品保管庫で目にした女性警官であると分かる。今日は非番なのか私服姿であり、荷物の中には墓参り用と思しき白い花があった。 女性もまた、君があの日、証拠品保管庫にいたヒーローだと気づく。しかし詰問することはなく、静かに目を背けた。「聞かん坊だった部下の墓参りに行くところです。……私に出来ることは、これぐらいしかありません」 警察へ引き渡されていくひったくり犯の姿を見送りながら、女性はぽつりと君へ問いかけた。「……今日は非番です。だからこれは、ただの独り言」「真実を明かすべきだったと、思いますか?」「私たちは『正義の味方』ではありません。あくまで、『秩序の番人』でしかなく、そう在ることが求められる、『ただの人』の集まり。時にヒーローの障害となり、その足を引っ張るでしょう」「……だからこそ、あなた達の存在が、この世界には必要だ」 君の返事を聞き届けた後、女性は切り替えるように深く息を吐く。 そしてわざとらしい冷たい声で告げた。「あなた達は、自分が為すべきと感じたことを為せばいい。あなた達の『正義』が、『秩序』の道を踏み誤った時、それを見張るのが我々警察の役目です」「ひったくり現行犯逮捕へのご協力、感謝します。ありがとうございました」【シナリオ経験点】
・初期グリット3点・クエリーグリット4点・リマークグリット3点(想定)------------------------------ =合計経験点:10点【NPC情報】
■フランク・トッド刑事(45)
殺人課の刑事。無愛想で寡黙だが、正義感の強い男。あるいは、正義感の強すぎた男。 長年刑事として務めるが、警察だけでは救えないもの、法で裁ききれない悪人の多さに長年鬱屈した思いを抱き続けていた。セカンド・カラミティでの膨大な喪失、その後の悪党達の増加を契機として、ヴィジランテとしての活動を始める。当初は再犯者を中心とした殺人行為であったが、やがて再犯の有無を問わず、悪事に手を染めている犯罪者であれば、その事情の如何を問わず殺す殺人鬼となっていった。スラッシャーという呼び名は、被害者を執拗に滅多刺しにするその手口から、警察関係者によって名付けられた。一方で、実際に被害にあった被害者からは、悪党を本当の意味で裁いてくれるヒーローだ、という声もあった。 ヒーロー・ヘルデーモンとは以前から何度か事件現場で顔を合わせており、犯罪者の処分に関する方針の違いから対立こそしていたが、同時に奇妙な信頼関係を築いてもいた。 事件の夜は、ヘルデーモンと共にフォーセイクン・ファクトリーによる違法薬物取引現場を押さえ、ザ・ティーチャーの殺害に成功。しかし同時に放たれたティーチャーの「記憶の継承」により自我を奪われんとする時、ヘルデーモンの手により殺された。 ジャスティカ。■立ち絵■マット・ウィルソン弁護士(36)
若くして個人事務所を経営する盲目の弁護士。幼少期に目の治療の為に受けたガンマ線療法の際に事故が発生。九死に一生を経た末、ミスティックとして覚醒するに至った。 困っている人々の助けになりたいと弁護士になるが、やがて真の悪党に証拠不十分で逃げられてしまう。法の限界を思い知った彼は、ヒーロー・ヘルデーモンとなり、悪党達を追い始めた。 ヒーローとして活動はしていたが、弁護士という法を守るべき立場にありながら、法を破り悪と戦う矛盾への負い目から、G6などの組織と連携を取ることはなかった。 悪人もまた平等に裁きを受けるべきであるという考えは変わらなかったことから、悪人の殺害を良しとするスラッシャーとは対立していた。一方で、改心しない悪や脱獄が繰り返される現状に絶望したスラッシャーの考えに一定の理解は示し、奇妙な信頼関係を築いてもいた。 事件の夜は、スラッシャーと共にフォーセイクン・ファクトリーの違法薬物取引現場に居合わせていたが、スラッシャーがザ・ティーチャーを殺害。それと同時、ザ・ティーチャーが行なった「記憶の継承」の効果を、ミスティックであったヘルデーモンは正確に理解することが出来た。スラッシャーだけではその力に抗うことは出来ないだろうという事も、自分の力では記憶の継承そのものを妨害することは出来ないだろうということも。 スラッシャーのやり方に賛同は出来なかったが、しかし、彼が誰より悪人を憎んでいたことを、ヘルデーモンは知っていた。 かくして、ヒーロー・ヘルデーモンは、ヒーロー・スラッシャーを殺害するに至った。■立ち絵■ダニー・ウルフ刑事(30)
フランク・トッド刑事とコンビを組んで連続殺人鬼スラッシャーを追っていた刑事。粗野な口調と独断専行が目立つ無鉄砲な男。 調査を進める中で、フランク刑事こそがスラッシャーの正体なのではないかと疑っていた。しかし彼自身感じていた『警察官としての限界』と、先輩であるフランク個人への尊敬の念から、『見て見ぬ振り』に近い状態になっていた。その結果発生したフランク刑事の死を深く悔い、それがどのような結末であったとしても、全てを明らかにするべきだという立場を取る。その方針の違いから、スラッシャーの正体を公開しないよう動いていたエレクトラ警部補と衝突し、謹慎処分を受けた。 それでも諦めきれなかったダニーは、ヒーローへ接触することを思いつき、実行に移す。それが警察官という領分を大いに越えた個人的な行為であることを、心内では自覚しながら。 旧世代。ヒーローやヴィランとは、身体能力が大いに異なる一般人。■立ち絵■エレクトラ・マーティン警部補(55)
間も無く還暦を迎えようとしている女性警部補。フランク刑事、ダニー刑事の上司。フランク殺人事件の担当責任者に当たる。 過去にヒーロー・ヘルデーモンに救われたことがあり、その関係でマットの正体に勘付いていた。調査の中で、フランク刑事がスラッシャーであったこと、一連の事件の裏にフォーセイクン・ファクトリーの関与があることにも気付いていたが、その先で「フランク・トッドを殺したのはマット・ウィルソンである」という事実は揺らがないことを悟り、ヘルデーモン、スラッシャー、フォーセイクン・ファクトリーのことは全て伏せる方針を定めた。それらはヴィランにとっての利益にしかならないと考え、『公共の平和』の為、全てを伏せ、カバーストーリーを作り上げることを選んだのだ。 梟の能力を持つサイオン。ヒーローやヴィランとは、身体能力が大いに異なる一般人。■立ち絵