クローンズ・ソロウ
━━それに宿るは正義か、悪か。
【エントリー1】
君に警察から秘密裏に報告が入った。 内容は「君の死体が発見された」という驚くべきものだ。もちろん君は死んでなどいない。 しかし現場へ向かえば、そこには君と同じ顔・同じ肉体を持った死体があった。 何より奇妙なことに、その死体には脳が入っていないのだ!(この死体はPC1のクローン体だ。都合をつけやすいPCであることが望ましい)【エントリー2】
君は悪党を追い詰めた。ヴィランは敗北を認め、あとは警察へ引き渡すだけ。 そんな時、暗闇から現れた一人の男が君の目の前でヴィランを殺してしまった。 黒尽くめの男は「正義を執行しただけだ」と告げ、君の前から姿を消してしまう。 数日後、君はその人物がブラックマンと呼ばれるヴィジランテであることを知る。 さて、どうしたものだろう。【エントリー3】
君にファンレターが届く。送り主は闘病中の息子を持つ両親だった。 少年は君のファンで、重病により余命いくばくもないという。 手紙には、君へ少年に会ってほしいと綴られていた。 君はその願いに応じ、病室の扉をノックする。(※少年を自力で治療可能なPCはシナリオ進行の障害となるため避けた方が良い)【イベント1:脳のない死体】
【状況1】
君は警察からの通報を受け、とある路地を訪れている。「来たか。こっちだ」 出迎えた刑事が、君を現場へ案内する。 白いテントで覆われ、キープアウトのテープを超えた先。鑑識たちに囲まれて、連絡通りの代物が転がっていた。 全裸で息絶える、君と瓜二つの死体だ。【状況2】
「今朝、ゴミ出しに来た近隣住民が発見した。 死亡推定時刻は不明だが、少なくとも昨晩26時時点ではここには何も無かったそうだ。 何より気になるのは……おい、見せてやれ」 刑事の指示で、死体を調べていた検視官が君へとタブレットを渡す。 タブレットには、『死体のDNA・指紋などの情報が君と完全に一致している』、『外傷は一切ない』、そして『X線で調べた結果、頭蓋骨の中に脳が入って無い』という情報が記載されている。 検視官が報告する。「詳細は司法解剖を待つ必要がありますが、体内の臓器に関しても人体ではあり得ない不具合が生じている可能性が高いです。DNA情報についてなどを加味すると、おそらくはPC1さんのクローン体と考えられます」【状況3】
「曲がりなりにもヒーロー様のド級の個人情報だ。この件を公開するつもりはない」「問題は、これがどこから来たのかってことだが……脳が無い人間が、自分で移動できるもんかね?」 路地とはいえ、人も通る道だ。不法投棄には不似合いな場所である。 そこに俯けに倒れる亡骸の姿は、確かに、まるでどこかから逃げてきたかのようだった。【エンドチェック】
□奇妙な死体が見つかった【解説】
PC1が正体を隠して活動しているヒーローの場合、刑事は何らかの理由でPC1の素顔を知っており、秘密裏にPC1へと連絡を入れたことになる。その辺りの辻褄合わせは好きにして良い。 このクローン体は、PC1をコンマンズブローカーのもとまで誘導するために仕組まれたエースの罠だが、この時点はまるでクローンに自我が芽生えたかのように演出すると良いだろう。【イベント2:黒い男】
【状況1】
「うう……俺の負けだ。ちくしょう……」 君は悪党を追い詰めた。敗北を認めたヴィランを君は取り押さえ、あとは警察へと引き渡すだけ。 警察の現地到着を待っていると、突如として廃墟の物陰から毒ガスが投げつけられた! 咄嗟に距離を取ってことなきを得た君だったが、その目の前で……。「ぐわァ!!」 黒ずくめの男が、捕えられたヴィランの心臓へと大ぶりのナイフを突き立てた!【状況2】
ヴィランは絶命した。黒ずくめの男は君へ観察するような視線を向ける。「……ヒーローか。ならいい」「お前と争うつもりはない」「正義を執行したまでだ」 その目に迷いはない。 黒ずくめの男はそれだけ告げると、再びその場から姿を消してしまった。【状況3】
後日、君はその黒ずくめの男の正体を知る。 男の名はブラックマン。正義と称して悪党を殺して回る、自称ヒーローのヴィジランテであった。 死んだヴィランは罪を犯した悪人であったが、同時に盲目の幼い娘を持つ追い詰められた父親でもあった。 娘は父の真実を知らぬまま、孤児院へと引き取られていった。 この顛末は果たして、正義と呼べるものであったのだろうか……。【エンドチェック】
□ブラックマンと出会い、その存在を知った【解説】
死んだヴィランは『超人種であることが露呈して職場を追われた、盲目の幼い娘を養っていた、金が必要だったシングルファザー』などの事情を持つ存在にすれば、PC2がブラックマンの正義を疑う理由に繋げやすい。【イベント3:病室からのファンレター】
【状況1】
君はいま、とある病院に来ている。君の元に、この病院に入院している少年の両親から手紙が届いたのだ。 少年は闘病中であり、臓器移植のドナーが見つからない限り余命わずかなのだという。 少年はヒーローである君の大ファンで、両親からの手紙には『面会に来て、息子を励ましてほしい』と綴られていた。 その願いに応じて、君はこの病院に来ている。【状況2】
「わあ! PC3だ! ほ、ほ、ほ、本物!? すごい!!」 面会に訪れた君に、少年は大はしゃぎだ。両親も涙ぐみながら喜ぶ少年の姿を見ている。 そんな少年に、さて君はどんな言葉をかけるかな?【状況3】
面会時間は終わり、疲れた少年は眠りに落ちた。 院外へと見送りながら、少年の両親は君へ感謝の言葉を向ける。「会いにきてくれてありがとう。あんなにはしゃぐ息子は久々に見ました」「適合するドナーさえ見つかれば、あの子は助かるはずなんです。……あの子が元気になる日が来ることを祈っています。今日は本当にありがとう」 君を見送る両親。【エンドチェック】
□少年と面会を行い、事情を知った□G6チェインからの依頼を受けた【解説】
少年がPC3のファンになった理由は自由に設定して良い。 問いかけのシーンはGMが質問を選んで演出を促しても良いし、PLに開示して自由にシーンを作ってもらっても良いだろう。 状況3後半のチェインからの依頼は、同時期にPC1とPC2にも齎されることとなる。次のシーンで合流となるため、PLが望むならそれぞれに依頼を持ち込まれたシーンを追加で作っても良いだろう。【チャレンジ1:対決! フランケンシュタイン】
【状況1】
G6からの連絡を受けて、君たち3人は顔を合わせることになる。 フランケンシュタインの秘密研究施設は、とある製薬工場を隠れ蓑としたその地下にあった。 目撃情報によれば、フランケンシュタイン本人がその中にいるという。 君たちはフランケンシュタイン博士を捕らえんと、製薬工場を急襲する。 工場内の警報装置が鳴り響き、ホログラムで隠された培養槽の中から大量のキメラ兵士が襲いかかる。 キメラ兵士が時間を稼ぐ間、地下へと続く道に分厚いシャッターが降り始めた。【状況2】
妨害を乗り越え、施設深部へと辿りつく君たち。 しかし予想外にも、そこではすでに、先客が戦いを繰り広げていた。 フランケンシュタイン博士と戦っているのは、先日PC2が出会った黒ずくめのヴィジランテ・ブラックマン! ブラックマンはフランケンシュタインを殺そうとしており、フランケンシュタインはそんなブラックマンを捕まえようとしているようだ。 君たちは双方の間へ割って入る。【状況3】
君たちはブラックマンとフランケンシュタインの双方を確保した。 フランケンシュタインはPCたちが現れたことに驚いている。「バカな、施設の隠蔽は完璧だったはず……あの詐欺師の仕業か、おのれ!」 フランケンシュタインは苛立たしげに黙りこくり、それ以上は口を開かない。【エンドチェック】
□ブラックマンを捕まえた□PC3がDr.エレジィのことを知り、会いに行くことにした。【解説】
状況1でPC同士の合流と自己紹介のタイミングを取ると良いだろう。このG6への目撃情報とは実際にはエースからの情報漏洩だが、この時点ではG6もその通報元を疑っていない。何食わぬ顔してサラッと流してしまおう。 PCたちの乱入はフランケンシュタインにとってもブラックマンにとっても予想外だ。 フランケンシュタインはいかにも怪しいが、PC1のクローン遺棄には関与していない。追及されれば「なぜ私がわざわざヒーローそのままのクローンを作らねばならんのだ、作るならより完璧な形に改良して見せる」と豪語するし「脳を持たないクローン体が独力で脱走? バカバカしい、できるはずがない」などの見解を述べる。【クエリー1:クローンズ・ソロウ】
【状況1】
警察へ引き渡されたブラックマンの聴取が行われる。 君たちは有事の際の対応のため、取調室の隣室へと通された。 マジックミラーの向こうで、ブラックマンはすんなりと聴取に応じていた。「フランケンシュタインを殺すため、情報を買った。 フランケンシュタインが俺のデータを求めていたらしい。しくじれば実験体になるとも聞かされていた。 フランケンシュタインも、俺が殺しにくることは聞かされていたようだ。迎撃され、戦闘になっていた。 そこにヒーローたちが現れた。お前たちもあの男に情報を売られたのか?」 あの男とは誰のことかと刑事に問われ、ブラックマンはすんなりとその人物の情報を吐く。「コンマンズブローカーと呼ばれている、仲介人の三下だ」【状況2】
一通りの取調べを終えたブラックマンが刑事へ告げる。「現地にいたヒーロー、PC2と話をしたい」 呼び出され、PC2は隣室の取調室へと足を向けた。 対峙する君へ、ブラックマンが淡々と問いかける。「俺は裁かれるのか」「ならばその間、死すべき悪党たちはどうなる」 ブラックマンは本気でそれが正しいことであると信じているようだ。【状況3】
君の答えを聞き、ブラックマンは自身の思考を吐露した。「何らかの研究施設から脱走する所から、俺の記憶は始まっている」「悪が憎い。正義を成したい。自分でも制御し難い感情が俺を動かす。だが、なぜ俺がそう感じるのか、その理由を俺は知らない」「ヒーロー。お前が正義を成さんとする、その理由は何だ」 ブラックマンは答えを求めるように、まっすぐに君を見ている。【状況4】
君は聴取を終え、取調室を出る。 そんな君に、警察の鑑識官が声をかけてきた。「ヒーローさんですね。ご確認頂きたいものがありまして」「ブラックマンのDNAデータなのですが、過去の犯罪記録の中に一致するものがあったんです。ただ……その人物というのが」 困惑した顔で鑑識官がデータを示す。 ブラックマンのDNAデータは、過去にザ・ティーチャーとして死亡した元ヒーロー、キャプテン・フォーカスライトと100%一致していた。【エンドチェック】
□ブラックマンからの問いに答えた□ブラックマンがキャプテン・フォーカスライトのクローン体であることを悟った□グリット1点を得た【解説】
マーケットの存在と、ブラックマンの正体をPCが知るシーン。 キャプテン・フォーカスライトはR1のリプレイ「マスク・オブ・ビースト」に登場するヒーローだ。ザ・ティーチャーの記憶の継承を受けたことでザ・ティーチャーとなり、戦いによって死亡している。PC2はその事実を知っていてもいいし、ここで知らされたことにしても良い。 キャプテン・フォーカスライトは成人男性であり、未成年のブラックマンとは年代的にも明らかに同一人物ではない。しかしDNA情報だけが、彼らの類似性を示す。 ブラックマン本人は自分が誰かのクローン人間であることには気付いていない。【クエリー2:Dr.エレジィの告解】
【状況1】
PC3はDr.エレジィの自宅を訪問した。「こんにちは、私がエレジィです。本日はどのようなご用件でしょう?」 君を出迎えたDr.エレジィは、事前に見ていた写真よりも疲れた顔をしていた。【状況2】
君の訪問理由や、君がヒーローであることを知ると、Dr.エレジィの顔色はますます悪くなり、動揺も深まっていく。 やがて、彼はついに罪悪感に耐えかね、君にこんなことを打ち明けた。「クローン臓器をその少年の医療に適応することは可能でしょう。……しかし、他ならぬ私にその資格がない」「他の研究者を紹介します。そしてどうか、私を逮捕して欲しい」 Dr.エレジィが言うには、以下の通りだ。【状況3】
「私は研究費用欲しさに、やってはならない行いに手を染めてしまいました。そして、何より……」 Dr.エレジィは君を奥の部屋へと案内する。 そこに大きな培養槽があり、それは内側から割れたように壊れていた。「ブローカーに引き渡したのとは別の、いわばプロトタイプ体がここにありました。体の構成要素はほとんど人間でしたから……近日、こっそり荼毘に伏すつもりでした」「しかし昨日、プロトタイプが消えていました」「まるで目を覚まし、ここから逃げてしまったようだ。そんなはずがないと分かっているのに……でも、もしそうなら、そんな奇跡がありえたなら! それじゃあ、私がこれまで進めてきた研究は、売り渡してしまった彼(彼女)は…っ!」 罪悪感に押しつぶされ、エレジィはその場で項垂れる。 研究者は震える声で君に懺悔した。「……私は道を間違えた。今の私に、その少年を救う資格など、ありはしない」 その告白に、君は何と返すだろう?【エンドチェック】
□Dr.エレジィから懺悔を受け、ブローカーとの取引のことを知った□エレジィをどうするかを決めた□グリット1点を得た【解説】
このシナリオに於いては、ヒトクローンの作成については、人格を持ったクローン人間の生成は違法だが、人格を持たない臓器単体のクローニングは罪ではないものとする。とはいえ倫理的に幾度も問題視されており、今も議論は絶えない問題であるとすれば、Dr.エレジィが研究費の捻出に苦しんだ理由づけになるだろう。 Dr.エレジィがコンマンズブローカーへ売ったクローン人間およびそのプロトタイプ(エントリー1の個体)は、骨格や外見情報はPC1本人だが、体内の臓器や脳は作られていない。人と同じ細胞で作られた人形のようなものだ。 当然、自我など芽生えるはずがないのだが、この不自然な状況と罪悪感故に、博士はプロトタイプが自我を持って逃げ出したのではないかと考えている。【クエリー3:完成品の行方】
【状況1】
コンマンズブローカーは歩くブラックマーケットとも呼ばれる闇商人。足取りを追うことは容易ではなかったが、ブラックマン、Dr.エレジィ、フランケンシュタインという複数の証言を足がかりに、君たちは次なるブローカーの取引がドバイで行われることを掴む。 ドバイへ飛んだ君たちは、取引が行われるという会員制の秘密クラブへと潜入することにした。【状況2】
最奥の個室で、ブローカーは取引の最中にあった。 護衛に囲まれ、ゴージャスなソファに腰を下ろす顧客の前にはガラスの棺。 悪趣味に飾り立てられその中で眠るのは……PC1の姿! 顧客は喜び、棺をうっとりと撫で回す。付き人がブローカーへ、大金と小さな弾丸を手渡した。 彼らのやりとりが聞こえてくる……。【状況3】
「ゲェーーッ何故ここにヒーローがーーーッ!?」 取り押さえられたブローカーは困惑しながら、往生際悪く君へ取引を持ちかける。「お待ちくださいヒーロー! 取引をしましょう!【状況4】
「マージン契約を……くっ、ご納得は頂けなさそうだ。分かりました、降参降参! 暴力はんたーい!」 ブローカーはようやく素直に縛についた。 騒がしいクラブから連行されながら、いくらか落ち着いたブローカーが溢した言葉がPC1の耳に届いた。【エンドチェック】
□コンマンズブローカーを捕まえた□コンマンズブローカーの問いに答えた□グリット1点を得た【解説】
PC1のクエリー回答を受ければ、ブローカーは「残念、分かりあえそうにない」と言葉を収める。彼はヒーローとは全く異なる価値観と倫理観で動いている、根っからの悪党だ。 PC1のクエリーに入るまでが迂遠だが、ドバイのセレブ御用達秘密クラブへの潜入や戦いを自由に演出して楽しんでもらうことを目的としている。PLとGMで楽しくシーンを作っていこう。【チャレンジ2:“最悪”は誰だ】
【状況1】
君たちがドバイにて捕らえたコンマンズブローカーは、そのまま空路でロックウェイブ島へと搬送されることになった。 海の上を移動中の輸送機内にて。拘束されたコンマンズブローカーが、徐に君達へと語りかける。「……ここまで色々考えてたんですけど、口を開いても?」「PC1さんが私の元にたどり着いたきっかけは、何故か路上で倒れていた肉人形のせい」「PC2さんが私の元にたどり着いたきっかけは、私がブラックマンをフランケンシュタインへ送り込んだタイミングで、G6がフランケンシュタインの拠点を何故か丁度よく見つけ出したから」「PC3さんが私の元にたどり着いたきっかけは、Dr.エレジィの自宅から何故か逃げ出したプロトタイプのせい」「ねえ、ヒーロー。……これ本当に、私を捕まえたらぜんぶ一件落着ですか?」 その瞬間、輸送機のエンジンが爆発! エマージェンシー音が響き渡り、ノイズ混じりの機長の通信が機内に響き渡る!『エンジンに何らかの細工がされていたようです! すぐに墜落します! 至急後方のハッチからパラシュートで離脱してください!』「……ワタクシほんとに何もしてませんからね!」 拘束されたブローカーが潔白を主張!【状況2】
君たちが輸送機後方のハッチへ移動した、その時! 突如、君たちの位置とブローカーの立ち位置を寸断するように、輸送機が真っ二つに割れた! 君たちが乗った輸送機の後ろ半分は瞬く間に、遥か下方の海へと落ちていく。 遅れて輸送機の前半分が落ちていくが……そこから一台のハングライダーが、逆さ吊りにしたブローカーを連れて飛び去っていった! 君たちの体はそのまま、壊れた機体諸共に、海のど真ん中へと放り込まれる!【状況3】
海から上がった君たちは、かろうじて近くの陸地へと辿り着くことができた。 しかし、その頃にはハングライダーの男とブローカーは消えている。 この一連も全てコンマンズブローカーの策略なのか? 奴らはどこに消えたのか? 追わねばなるまい。しかし、あのハングライダーの男は一体…?【状況4】
君たちは無事に救助される。 それと同時。君たちはブラックマンが収容所から忽然と姿を消したという報告を受けることになるだろう。【マスターシーン】
ハングライダーに吊り下げられたコンマンズブローカーがうんざりとため息を吐き、操舵手に声をかける。「……ハァ〜……全部あなたの仕業で?」「ははは、これで君も逃げられなくなっただろう? ブラックマンの方にも根回しはしておいたから、じきに追いついてくるだろう」 ハングライダーを駆る男がニヤリと笑った。「さあ、ブローカー。怪物になろう。怪物を作ろう。そして世界に平和を!」【エンドチェック】
□エースの存在を知った□ブローカーとブラックマンが消えた□チャレンジを終えた【解説】
第三の男、ヴィラン・エースの存在が明るみに出るシーン。エースはパイロットに扮していることを想定している。 ここでは飛行能力を持つヒーローも、破壊された輸送機の瓦礫に巻き込まれて墜落することとなる。巻き込まれた他のスタッフたちもいたかもしれないので、その救助を優先したことにしてもよい。納得のいく墜落の理由を作ろう。【チャレンジ3:クローン・スローター計画】
【状況1】
ブローカーとブラックマンが消えて一ヶ月が経った。 調査を行えば、君はセカンド・カラミティ後のエースが多くのヴィランと交流を持ち、多くの悪事の裏側で暗躍していたことを知る。コンマンズブローカーもまた、彼と繋がりを持つ人物であることも分かるだろう。何故ヒーローであった男が今は悪事を働いているのだろうか?【状況2】
各地の研究施設や魔術団体を摘発して回る君たちは、その中で時折、君たちよりも先に現れていた何者かの手によって施設が破壊・研究員が殺害されている現場を目にするだろう。現場に残された傷跡は、収容所から姿を消したブラックマンの太刀筋を思わせた。 各地の研究施設や魔術団体を摘発して回りながら、君たちは遂にブローカーの、そしてエースの居所を掴む。 君たちは彼らが身を潜めているという、スコットランドの農場に向かった。【エンドチェック】
□クローン・スローター計画のことを知った□ブラックマンの行動を知った□エースの居場所を突き止めた【解説】
捕まったヴィラン曰く。「ブローカーのやつは今、そろばんが叩けなくなってるのさ。なりふり構わず、そこいら中に声をかけてる。あんなのは商売でも何でもねえな、ヤキが回ったもんだ」【クエリー4:全員悪人】
【状況1】
人里離れた場所に位置する農場は長閑で、悪の陰謀などとは無縁そうな場所だった。放牧された羊たちがのんびりと草を食んでいるのが目に入る。 君たちは農場の一角にある、石造りの家の中へと突入する。【状況2】
君たちが家の中に突入すると、そこにはのんびりとくつろぎながらチェス盤をいじるエースと、対面に座るブローカー、立ちすくむブラックマンの姿があった。ブローカーの首には奇妙な首輪のようなものが付いている。「おや、今日は客人が多い日だ」 チェスの駒から手を離し、君たちを歓迎するのはエースだ。「何のもてなしも出来ない場所ですまないね。どうぞ、くつろいでほしい。ちょうど今、ブラックマンとは話がついたところだ」【状況3:クエリー対象…PC3】
エースは一同を見回すと、徐にPC3へ語りかける。「時にPC3、君は禁酒法のことは知っているかな」「第一次世界大戦の頃、アメリカではアルコール飲料を一律禁止する禁酒法が制定された。しかし、平時に戻れば密売が横行し、多くのギャングの資金源となり、社会情勢は悪化した」「結局、アメリカは禁酒法を改定せざるを得なかった。アルコールという人体に害があるものを、害あるものと認識しながら、けれど世の平和の為には必要なものであると認めざるを得なかったのさ」「公には認められないが、確実に需要がある……君なら思い当たるものがあるんじゃないかな」 エースが言っているのはクローン臓器のことを指しているのだとPC3は察せられて良い。【状況4:クエリー対象…PC2】
エースの問いの最中も、ブラックマンは静かにそこに佇むばかりだった。しかし彼の意識はPC2へ向けられているようだ。 エースとPC3の問答を聞き届け、ブラックマンはPC2へ静かに口を開いた。「……こいつらの思想に賛同しているわけではない」「いずれこいつらも、俺自身も消える。だが、世に数多の悪が蔓延る今は、まだその時ではない」「正義を成したいという気持ちは変わらない。だが、俺もまた人を殺した。今の社会は俺を正義と認めはしないだろう」「それでも、止められない。止まる気もない。如何に空虚でも、俺にはそれしかない。ならば俺は、俺が正しいと信じた道を進もう」 対峙するブラックマンの意志は変わらないようだ。 コンバットナイフを構えながら、最後にブラックマンは尋ねた。「お前は俺を哀れむか、それとも嘲るか?」【状況5:クエリー対象…PC1】
高まる緊張感の中で、PC1のデバイスにメッセージが入る。『取引を』 端的なメッセージは、ここまで一度も口を開いていないコンマンズブローカーからだった。視線を向ければ、ちらりと君を振り返ったブローカーが、トントンと自分の首輪を指で突く。それは小型の爆弾であるようだ。『外してくだされば、私は手を引きます。後の二人はご自由に』『私はビジネスがしたいだけ、正義も悪も興味はありません。クローン・スローターは悪くない商品ですが、この売り方は最悪だ』『この状況で戦う相手が減るのは、そちらにとっても悪い話ではないのでは?』 いけしゃあしゃあと言ってのけるブローカー。しかし君の反応が悪いと察したのか、彼は言い方を変える。『言い方を変えましょう』『助けてくれませんか、ヒーロー』 この男が口先だけの、信用に足らぬ存在であると、君はすでに知っている。 君は今、何を選ぶだろうか?【エンドチェック】
□ヴィランの問いに答えた□グリット3点を得た【解説】
人々の心を一致団結させるために悪となる、必要悪を肯定するエースの思想に関するクエリーだ。 こうした問いを投げかけてはいるが、エース自身、策を弄して悪行に手を染めることを楽しみつつある。「君より悪い人間がたまたまこの世界に居たから、君はヒーローと名乗れているのかもしれないぜ」【決戦:世界を一つに】
(【状況0】(クエリー4でPCがブローカーを助ける選択をした場合)
PCがブローカーの求めに応じて彼の首輪を外すのであれば、エースはそれを遮ることなく見届け満足そうに笑う。「やはり、僕の思った通り。人と人とが手を取り合うには、共通の敵が必要というわけだ」「構わないさ。彼が手を引いたとしても、計画はもう止まらない」 解放されたブローカーは勢いよく壁際まで逃げ出して叫ぶ。「いやあ助かった! そしてごめんなさ〜い! さっきお呼びした先生はもう到着しちゃったみたいなんですよ! でもこれ以上は、私もうホンットーに何もしません! ので! ネッ! ヒーロー頑張れ〜!!」【状況1】
「我々は分かりあうべきではない、それでいい」 パチン! と指を鳴らし、君たちの答えに満足するようにエースは立ち上がる。 家の周囲で羊たちの鳴き声がにわかに騒がしくなる。不定形の物質が蠢く音と振動、建物が軋む音が響く。「悪党らしく、答え合わせといこう。 ブローカーの人脈を駆使して、あの日をもう一度引き起こすことにした。 すでに情報は十分に流布した。あとはトーナメント戦だ。 多くの組織が、どこよりも強いザ・スローターを手にする為に、今もまさに切磋琢磨している。 競い合い、潰し合い、淘汰され、最後に残ったものが世界の敵になるだろう。 その暁には、人々の心は一つになる――セカンド・カラミティで見た、あの美しい景色のように」 過去の光景を思い浮かべたのだろう、エースは心底楽しそうに微笑んだ。「ヒーロー。ぜひ、立ち向かってくれたまえ。より良い世界へ至るためには、それが必要だ」 轟音と共に家が崩れる! 顕になった牧場に、蠢く怪物の姿があった。おお、忘れようもないその姿は…!【戦闘情報】
【エネミー】
・コンマンズブローカー・エース・ブラックマン・チャレンジ2と3で失敗した回数分+1体のクローン・スローター(最低1体、最大4体)【エリア配置】
■PC初期配置 エリア1・エリア2■NPC初期配置 エリア4:コンマンズブローカー、エース、(ザ・イミテイター or ザ・ティーチャー) エリア3:ブラックマン、クローン・スローター【勝敗条件】
勝利条件:エネミーの全滅(クエリー4で交渉に応じた場合、コンマンズブローカー以外のエネミーの全滅)敗北条件:PCの全滅【PL向け備考】
・クエリー4でPCがコンマンズブローカーを解放する選択をした場合、コンマンズブローカーは1ラウンド目の「コネクション」以降はパワーを使用せず、自身のターンを得ても隠密判定を行う(盤上には配置されているので、倒すこともできる)【GM向け備考】
【共通】・1ラウンド目に「コネクション」で呼び出す相手は、エリア上にいる「クローン・スローター」の数が2体以下なら「ザ・イミテイター」、3体以上(またはPCがパワー「神殺しの魔剣」を所持している場合)なら「ザ・ティーチャー」とする。交渉が成立していたとしても、1ラウンド目の「コネクション」だけは使用する。イミテイター「スローター、また喚ぶの? ……じゃあ、手伝ってあげる」ティーチャー「この私を差し置いて最悪を論ずるのは早計ではないかな、諸君」■クローン・スローター
【エナジー】ライフ20 サニティ15 クレジット15
【能力値・技能値】
【肉体】50 (生存10%) 【精神】50 【環境】50【移動適正】地上、飛行、水中、宇宙
【パワー】
【特殊イベント:迷える正義】
『描写/クエリー4:交渉不成立時』
戦いの最中、(ティーチャーかイミテイター)の放った攻撃の流れ弾がコンマンズブローカーを掠める。その拍子に、彼の首に付いていた奇妙な首輪が壊れて外れた! その瞬間、ブローカーは迷わず戦場を離脱しようとする。逃げるつもりだ! その前に回り込む黒い影があった。ブラックマンは手にしたナイフをブローカーへと振り下ろす! 悲鳴が上がり、血が流れ、一発の銃声が響く。 崩れ落ちるブローカーの前で、ナイフを弾き飛ばされたブラックマンは、陰鬱な視線を戦場の全てへ向ける。その指先に光が集まり始めた。『描写/クエリー4:交渉成立時』
頃合いを見計らったブローカーが迷わず戦場を離脱しようとする。 その前に回り込む黒い影があった。ブラックマンだ。ブラックマンは手にしたナイフをブローカーへと振り下ろす! 悲鳴が上がり、血が流れ、一発の銃声が響く。 崩れ落ちるブローカーの前で、ナイフを弾き飛ばされたブラックマンは、陰鬱な視線を戦場の全てへ向ける。その指先に光が集まり始めた。【シナリオの結末(一例)】
【PC1】
君は無事に悪党たちを捕えることができた。しかし後日、獄中からコンマンズブローカーが忽然と姿を消したことを知る。奴の人脈は獄中にまで及んでいたということだ。今回とは異なる形で、いずれまた対峙することもあるだろう。(PC1がクエリーや決戦でコンマンズブローカーを助ける選択をしていた場合、返礼のように後日口座に入金があるだろう。分かり合えない男だ。) 残されたのは脳のない君の亡骸。 それは意志があったわけではなく、エースがブローカーを利用するために君たちを誘導したに過ぎなかった。君はこの事実に安堵するだろうか、それとも落胆するだろうか。「処分するなら協力しよう。まあ荼毘に伏す感じになるとは思うが……どうする?」 後処理を担う刑事が君に尋ねた。どうしよう?【PC2】
首謀者たちは捕えられたが、一度流布されたクローン・スローターにまつわる情報を無かったことにするのは難しい。君は今日も世界各地を飛び回り、多くのヴィランを捕えて回っている。 そうした日々の中で、君はブラックマンの面会に訪れた。 刑務所の面会室に現れたブラックマンは、素顔を紙袋で覆い隠している。「忙しくしているようだな。お前の正義を変わらず執行できているのなら、それでいい」 いくらかの雑談を終えた後、ブラックマンが君へと問いかけた。「刑務所に送られてきた囚人が、俺の顔を見てある男の名を口にした。……フォーカスライトとは何者だ?」 ブラックマンは自分がクローン人間であることも、その元になった人物のことも知らない。 君はブラックマンにそれらの情報を打ち明けても良いし、何も言わずにいても良いだろう。さて、どうする?【PC3】
君の言葉に動かされたDr.エレジィの働きにより、少年のクローン臓器移植は認可され、手術は行われた。 結果は──見事、成功だ。 術後の経過も良好。少年は回復し、今日は彼の退院日。君の元には是非来てほしいと、両親から礼の手紙が綴られている。君は足を向けるだろうか、それとも見守るに留めるだろうか?(PCがクローン臓器に否定的な立場であれば、適合するドナーが見つかったことにしてもよい)【シナリオ成長点】
初期グリット:4クエリーグリット:6(4+2)リマークグリット:3--------------------------------------------------=合計:13点