アポカリプス 〜呪われし祝福〜


──今度の舞台はエジプトだッ!

1.エントリーとシナリオ概要

【シナリオ概要】


 G6へ齎された不愉快な依頼。カイロで起きる奇妙な事件。チクタクマンの遺言。 それらはヒーローたちをエジプトへと導く。それは英雄の意志なのか、それとも。 砂丘の果てで対峙する、神話に隠された歴史の真実とは? ヒーローよ、ロマンを追え!

【事前情報】


 クエリー:4 チャレンジ:2 初期グリット:3 リトライ:2
 想定時間:4時間(+PCのリビルドにどの程度時間を要するかによる) 推奨経験点:20点前後を想定。       より経験豊富なPCがいる場合、エネミーを随時強化すること。

【GMに要するルールブック】


・学園マッドネス(R2)

【エントリー】

【エントリー1:過ぎたる力】(※超人種限定)

 君はエジプトのカイロで頻発している事象について調査を行っている。 現地の超人種が突如強大な力を得て、力を制御できず暴走してしまうというものだ。 調査を行う君の前に、路地裏から奇妙な存在が語りかけてくる。「お前は私に選ばれた」 君は自らの力が沸き立ち、制御できないほど暴走するのを感じた。(このエントリーのPCは卓中で一時的に500点分の経験点を付与されます。PC1のみチャレンジ判定の難易度の上昇を伴いますが、決戦フェイズへの持ち込みも可能です。事前に点数の使い道を考えておくと良いでしょう。思いつかなかった場合、シナリオ推奨のプリセットを使用してみても良いでしょう)

【エントリー2:不愉快な依頼】

 君はG6に所属するヒーローだ。協力関係ではなく、はっきりと所属していることが望ましい。 そんな君に依頼が入る。相手はG6のスポンサー企業「カーターズ・カンパニー」の令嬢だった。 彼女は君に対し、不遜かつ居丈高に言い放つ。「ちょっとエジプトまで行って、発掘馬鹿のクソ親父を連れ戻してきて頂戴」

【エントリー3:チクタク大爆発】

 ある戦闘の最中、君の目の前でG6ヒーロー・チクタクマンが暴走した。 現場に居合わせた君は、偶然にもチクタクマンを取り押さえることになる。 機能停止の刹那、正気を取り戻したチクタクマンは君へ告げる。「PC2を助けるんだ! このままでは……!」 全てを言い終える前に、チクタクマンは爆発し、その機能を停止した。

【エントリーについて】

 PC1は卓中で500点分の経験点を与えられ、リビルドを行うことになる。 時間を短縮するのであれば、事前に500点分のキャラクターシートを作成しておいてもらうと話が早い。その場合、GMは「エントリー1」の「特殊処理」の内容をPC1のプレイヤーに共有しておくと良いだろう。

2.導入フェイズ

【エントリー1:過ぎたる力】

登場:PC1舞台:エジプト・カイロ

【状況1】

 降り注ぐ眩しい日差しに、どこまでも続く一面の砂原。 バザール市では商人たちの勇ましい声が響き、街には石造りのエキゾチックな家々が並ぶ。 ここはエジプトの首都、カイロ。君はこの街で調査を行っている。 この街を中心とした地域に住む超人種が、突如として強大な力を得て、周囲を巻き込んで暴走するという事件が多発しているのだ。

【状況2】

 調査で手に入る情報は苦いものばかり。 望まずして他人を傷つけてしまった超人種の悲哀、災害のような力に巻き込まれて成す術もなく被害を受ける人々。加害者、被害者共に救われない情報ばかりが君のもとに集まってくる。 人で賑わう大通りを抜ける際、君は背後から君へと語りかける嘲笑混じりの声を聞く。それは雑踏の中、雷のように君の耳に奇妙に届いた。『──きたれ』 振り返った先には──誰もいない。 ただ、暗がりに続く路地裏の入り口が広がっている。

【状況3】

 君は声の主を追い、路地裏へ足を踏み入れる。 入り組んだ路地は昼であっても薄暗く、人気は乏しい。表通りの喧騒が遠い世界のように感じられる。『賛美、栄光、知恵、感謝、ほまれ、力、勢いが、世々限りなく満ちておる』『休みの時は過ぎ、殺されんとする僕と兄弟の数は満ちた』『彼らは、もはや飢えることがなく、かわくこともない。太陽も炎暑も、彼らを侵すことはない』『書きしるせ。小羊の婚宴に招かれた者は、さいわいである』『なれど所詮──黙示録の全ては戯れよ』 姿無き声は君を誘うように現れては消え、消えては現れた。 物乞いの姿も消え、野良猫の姿も無くなった頃、君ははたと夢中になっていた自分に気づく。何かの術にかけられたように意識が朦朧とし、体の裡から高揚感が込み上げる。 すぐ耳元で誰かの声が嗤い、囁いた。『寿げ、恵まれし者。我は主と共におる』 君は自らの力が沸き立ち、暴走するのを感じた。制御ができない。だが表通りには人がいる! 君は最後の力を振り絞り、人気のない場所へ逃げ出そうとした。それが実ったか否かを──君は最後まで、覚えていることができなかった。

【エンドチェック】

□力を得て、意識を失った□リビルドを行った

【解説】

 奇妙な声の正体はナイアーラトホテプだが、この時点で姿を現すことはない。声だけの、謎めいた怪しい存在として演出すると良いだろう。彼が話している内容は「ヨハネの黙示録」の引用や改変だが、雰囲気出しのフレーバー以上の意図はあまりない(後半のシーンでも似たようなことを言う) PC1は突如として沸いた力に飲み込まれて意識を失うことになるが、それによって周辺に大損害を引き起こしたことにしても良いし、必死に自分を制御して人気のない所へ逃れ意識を失ったことにしても良い。核に等しいとさえ言われる超人種の力が暴走すれば、近隣一帯はただでは済まないだろう。場合によってはこの日、カイロが地図から消える。

エントリー1:特殊処理

【特殊処理】

 PC1はこの時点で500点分の経験点を付与されます。初期ビルドの点数と合わせて合計500点になるイメージだと良いでしょう。 GMはこのタイミングでPLにリビルドの時間を与え、キャラクターシートの更新を促しましょう。反面、あまり長い時間、悩ませるのは好ましくありません。10〜15分程度が良いでしょう。シナリオ内で適宜点数を使用するという用法は避けた方が良いでしょう、どうしても思い付かない場合は全てライフに変換しましょう(最大ライフ+50点) 理想的な処理は、このエントリーを選んだPLに、事前に500点使用のキャラクターシートを作成しておいてもらうことです。その場合、GMはPC1のチャレンジ判定はこの点数に合わせられて難易度が上昇していることを伝えることを忘れないようにしましょう。 以下に、シナリオから推奨する経験点使用のプリセットを記載します。

【500点使用プリセット】

■セカンドオリジンをつける(+5点〜0点)■パワーを合計10個取得する(+70点)■各取得パワーの判定に命中補正をつける(+最大50点)■任意のエナジーの最大値を+20する(+100〜300点/現在値も変更して良い)■任意の能力値の値を+10する(+50〜150点)■残りの端数を全て任意の技能に追加する(推奨:運動、意志、経済)

【エントリー2:不愉快な依頼

登場:PC2舞台:帝国ホテル・スイートルーム

【状況1】

 君はG6所属のヒーローだ。セカンド・カラミティで主力戦力を失い、弱体化したG6を支える為、日夜任務に励んでいる。 そんな君はいつものようにG6に呼び出され、依頼の話を受ける。だがこの日、君が案内されたのは東京・帝国ホテルの最上級スイートルームだった。しかもそこには、普段は顔を見せない経営幹部らが勢揃いしている。 彼らにもてなされているのは、豪華なドレスに身を包んだ若い女性だ。彼女はつまらなさそうな顔で接待を受けていたが、君が姿を現すと、興味もなさそうに君を見た。「来たわね。そのツラをよく見せなさい。……ふん、まあいいわ」 傍の幹部が君へ耳打ちをする。彼女の名はエヴェリン・カーター。G6のスポンサー企業の令嬢であるという。

【状況2】

 彼女はどこまでも居丈高に、君へ依頼の内容を告げる。「ちょっとエジプトまで行って、発掘馬鹿のクソ親父を連れ戻してきて頂戴。金なら出すわ」「あの馬鹿、事業も放り捨てて四六時中道楽趣味に走ってばかり。ちょっと先祖が王家の谷を見つけたからって、自分もその恩恵にあやかろうだなんて、ホンットくだらない」 彼女の一族は、かつて王家の谷の発掘に成功した考古学者、ハワード・カーターに連なる血筋だという。「どうせ強いヒーローなんてみんなセカンド・カラミティで死んだんでしょ?」「アンタみたいな死に損ないでも使ってやろうって言ってんのよ」

【状況3】

 君が承諾を告げればその通りに、異なれば周囲の経営幹部が間に入る形で、君にはそのミッションが与えられる。 不遜、我儘、居丈高で傲慢。不愉快な依頼人だ。だが君は、部屋を出る際に彼女が零した小さな独り言を耳に入れることになる。「……私には大して時間がないのに、側にもいてくれやしない」 扉が閉まる刹那に見えた彼女は、どこか余裕を失っているように見えた。

【エンドチェック】

□不愉快な依頼を受けた□エヴェリンには何か事情がありそうだ

【解説】

 PC2が組織の都合によって不愉快なミッションを与えられるイベント。 PC2はG6に正式に所属していることもあり、実質拒否権はない。PC2本人が依頼を断ろうとしても、周囲の幹部たちが依頼人に胡麻を擦り、拒否させてくれないのだ。 依頼人であるエヴェリンは、自分の一族の女の寿命のことを知っている。父が自分を救う為に飛び回っているのだということも。だがそのせいで幼少期から父親と殆ど過ごしたことのない彼女は、すっかりひねくれた我儘お嬢様になってしまった。このことはPC2のクエリーで明かされることになる為、ここで彼女が打ち明けることはない。 自分の死期を悟り、せめて最期ぐらい共にいてほしいという気持ちから、PC2へ依頼を持ちかけることになる。
■エヴェリン・カーター ズヴォリン・カーターの娘。間も無く20歳となる。 エジプトの遺跡群、王家の谷の発掘に成功した考古学者、ハワード・カーターの血を引く一家の娘。 G6のスポンサー企業「カーターズ・カンパニー」社長の一人娘。とにかくセレブリティで何不自由ない生活を送っている我儘娘だが、何もかもに退屈しているような、鬱屈した様を見せる。 金髪碧眼の美女だが、いつも無愛想で不機嫌そうな顔をしている。

【エントリー3:チクタク大爆発

登場:PC3舞台:戦場

【状況1】

 それはとあるヴィランとの戦闘の最中だった。君と共に戦っていたG6ヒーロー、チクタクマンが突如として黒い煙を吐き、暴走を始める。 チクタクマンの放つ最新鋭兵器はヴィランのみならず、周囲の建物やヒーロー、民間人すらも巻き込んで大暴れを繰り広げる。彼を止めなければ!

【状況2】

 君はチクタクマンを取り押さえることに成功した。互いにひどい損傷を受け、疲弊している。しかし勝ったのは君だ。 チクタクマンの発声システムが異音とノイズを放つ。それはやがてひび割れたような悲鳴となり、ほんの一瞬だけ、常のチクタクマンの声色を取り戻し叫ぶ。「PC2を助けるんだ! このままでは…!」 全てを言い終える前に、チクタクマンはカッと内側から光を放ち爆発する。 そして完全にその機能を停止してしまった。

【状況3】

 突然のチクタクマンの暴走、そしてその場には居合わせなかったPC2という存在、PC2を救えという最後の言葉……君は調査の果てに、PC2がG6所属のヒーローであることを突き止める。そしてPC2は既に依頼を受け、エジプト・ルクソールへと旅立ってしまった後だった。 君はPC2の後を追い、エジプトへ旅立つ。

【エンドチェック】□チクタクマンが暴走し、言葉を残し、爆発した□エジプトへ旅立った

【解説】

 プレイヤーが望むのであれば、状況1の前に、チクタクマンと共に戦いに出撃するシーンを演出してみても良いだろう。その場合、チクタクマンはいかにも正義のヒーロー然としたカッコいいロールを行うと良い。 チクタクマンはナイアーラトホテプの戯れによって操られ、暴走し、そして不都合な情報を口に出す前に処分されてしまった。あるいはここで言葉を区切った方が面白そうだという理由かもしれない。機能停止したチクタクマンが修繕されるまでには時間を要する。 邪悪なファラオの企みを知ったチクタクマンは、精一杯の抗いとしてPC3へPC2のことを託した。

3.展開フェイズ

【クエリー1:ズヴォリン・カーターとの出会い】

登場:PC3舞台:エジプト・ルクソール空港

【状況1】

 君はエジプトのルクソールへやってきた。王家の谷が存在する、発掘で有名な都市だ。PC2はここに到着しているはずなのだが、さてどこにいるだろうか。 調査を開始しようとする君の耳に、陽気な男と穏やかな女の声が飛び込んでくる。「いやあ、まさかこんな所までご足労頂けるとは!お会いできて光栄です、麗しのレディ・スカーレット」「こちらこそお会い出来て光栄です、ミスター・カーター。近場で仕事の機会があったので、是非ご挨拶をと。発掘の方は順調でして?」「順調、快調、絶好調!近々スポンサー様にも大発見をお伝えできる事でしょう!」 ……どうやら、考古学者とそのスポンサーの会話のようだ。 しかし君が気になったのは、会話に夢中になっている男性の尻ポケットから、少年が財布を盗もうとしていることの方だ。 会話が弾む二人はまだ気付いていない。 さて、どうしよう?

【状況2】

「いやあ、助かりました! 危うく折角の発掘資金がパァになるところ!」「ワタクシ、古代の魅力にズヴォッとハマった、ズヴォリン・カーターと申します。神話を歴史の舞台に立たせる夢を見て早幾年、どうぞお見知りおきを!」 そういうと、ズヴォリンは名刺を差し出してくる。そこにはカーターズ・カンパニーの代表という肩書きがあった。それはPC2が探しに来るであろう人物だ。 ズヴォリン氏はまだPC2のことを知らず、会ってもいないという。「人手と物資の調達ついでにスポンサーへと挨拶に来たのですが、こんな素敵な出会いがあろうとは」「そうだ! もしよろしければあなた、我々の用心棒になりませんか?」「最近はこの辺りの治安も怪しくて。先日もカイロの方で大きな事故があったとか。あなたのような強い方が同行してくだされば、作業も順調に進むと思うのです! いわばこれはラーのお導き!」 ぐいぐい来るズヴォリン氏。同行してPC2を待ち受けるのも、敢えて断り物陰から彼らを見張るのも手だ。 君はその申し出にどう答える?

【エンドチェック】

□シチュエーションに対応した□グリットを一点得た

【解説】

 PC3がPC2に先んじてズヴォリン・カーターと出会うシーン。PC2の到着が遅れている理由は「カイロで起きた原因不明の大きな事故の影響で着陸が見送られている」などとするとPC1の状況と併せて都合がつけやすいだろう。理由自体は何でも良い。 状況2ではズヴォリンがPC3に用心棒を依頼するが、PC3の設定や行動次第で適宜やりやすいよう調整しよう。場合によっては、ここで先んじてクエリー3の「石板に残された神話」の話をしてみてもよいだろう。 レディ・スカーレットとはこのイベントで別れる。一見帰路についたとみせかけて、彼女はナイアーラトホテプのしもべとして、発掘隊の状況や超人種の暴走を人知れず監視している。
■ズヴォリン・カーター エジプトの遺跡群、王家の谷の発掘に成功した考古学者、ハワード・カーターの血を引く一家の長。G6のスポンサー企業「カーターズ・カンパニー」社長であり、世界各地を飛び回る発掘家。 陽気でぐいぐい来る、朗らかで無邪気なおじさん。 彼が発掘に固執する理由は、表向きには好奇心やロマンの為とされている。事実、そういった側面があることも偽りではない。だが表向きには明かさないもう一つの理由として、娘にかけられた『ファラオの呪い』を解く鍵を探し続けているという側面もある。

【チャレンジ1:砂漠の戦い】

登場:PC全員舞台:発掘ポイント

【状況1】

 ズヴォリン一行が発掘を行なっているのは、既存の遺跡群からも人里からも遠く離れた郊外だった。PC3が発掘隊と共に発掘ポイントを訪れた時(あるいはPC3が監視する発掘隊が発掘ポイントにたどり着いた時)、そこに先駆者が居た。PC1だ。しかし様子が明らかにおかしい。
 PC1は朦朧とする意識の中、必死に人を巻き込まないようここまで辿り着いた。しかし不運にもそこに発掘隊が到着してしまう。駄目だ、力が抑えきれない…!
 そして時を同じくして、ルクソール空港にPC2が到着する。ズヴォリン・カーター氏の発掘ポイントへ向かおうとした君は、そこから不気味な揺れや異様な気配、凄まじい戦闘音が響いているのを感じる。現地で何かが起きている!急がねば!

【チャレンジ判定】

■PC1判定:自分の力を制御しよう……〈一番技能値が高い技能〉−70%PC2判定:現地へ急行しよう……〈操縦〉or〈霊能〉PC3判定:PC1に応戦し、発掘隊を守ろう……〈任意の戦闘技能〉−20%失敗時:判定に失敗したPCは2d6点のダメージを受ける。リトライを消費する必要はない。

【状況2】

 PC2は交戦の最中に駆けつけることができる。PC3と合流し、援護をすることになる。 PC3は、PC1が自分の意志で暴れているわけではないということがわかるだろう。それどころか、PC1も必死に己の力に抗おうとしているのだ。 PC1は駆けつけた彼らがヒーローであることに気づく。そして彼らの活躍により自身が誰も傷つけずに済んだことを悟ると同時、君は力尽き、意識を失う形で暴走を止める。気絶するのだ。

【状況3】

 意識を失ったPC1、突然現れたPC2、荒れ果てた発掘現場。 混乱する現場に轟音が響く。戦闘の影響で地盤が陥落し、地下に続く巨大な門が顕になった。「アワ、アワワ、え、ええと、と、とりあえず、ひとつずつ対処していくぞ諸君! まずはベースキャンプの修復を!」 ズヴォリンが慌てて指示を出す。即座に飛び込むほど現実が見えていない訳ではないらしいが、諦める気はなさそうだ。

【エンドチェック】

□PCたちが合流した□地下遺跡が姿を現した

【解説】

 PC同士の合流シーン、かつPC1の状況をPC2/3が知るシーン。 PC1がどのような暴走を見せるのか、それをPC2/3がどのように抑え込むのか、是非ド派手に大暴れしてもらおう。

クエリー2:発掘の理由

登場:PC2舞台:発掘隊ベースキャンプ外れ

【状況1】

 意識を失ったPC1が目覚めるのを待つ間、ベースキャンプの修復が進んでいく。 その隙を見計らい、PC2はズヴォリンと接触した。 自分を連れ戻しに来たのだとわかれば、ズヴォリン氏は難色を示す。そして他の発掘隊員がいない場所へ、君を連れ出した。

【状況2】

 ズヴォリンは渋々といった様子で、この発掘のもう一つの目的を告げる。「カーター一族には、とある呪いがかかっているのです……笑わないで下さい、真面目な! 話! ホント!」「私の一族と関係を持った女は、若くして異様な死を迎えるのです。皆、末期はミイラのように干からび、砂になって消える。祖母は30だったと聞いています。母は28で私を産んですぐに。姉も、妹も、そしてエレーネ……我が妻にして、あの子の母もまた。あの子が幼い頃に、30を迎えず逝きました」「妻はミスティックでした。彼女は死の間際、私に言ったのです。これはファラオの呪いだと、黄金のファラオが黄泉の国から契約を果たしにくる、過去の血の負債を取り立てに来ているのだと!」「その言葉を頼りにここまで来ました。先祖も私と同じことを願ったのではないかと……そうも思いました」「エヴェリンは間も無く20になります。成人後どれだけ生きられるのか私にはわからない。だから少しでも早く、手がかりを掴みたい」「しかしあの子にしてみれば、余命幾許もない自らのそばに居てくれない薄情な父と謗られても仕方がないのかも」 カーター一族にかけられた呪いと、それに翻弄される親子。君は彼らに何と声をかけようか?

【状況3】

 PC2が、ズヴォリンに発掘を続けることを促すのであれば、ズヴォリンはPC1が目覚めるまでは念のためにPC2にもこの地に留まって欲しいと申し出る。PC3と合流し、チクタクマンの遺言について話を促しても良いだろう。 ズヴォリンへ帰ることを促すのであれば、せめて遺跡の内部を一目見てから、明日の便で帰ることをズヴォリンは約束する。

【エンドチェック】

□カーター一族の呪いの話を聞いた□PC2が発掘現場に留まった。□グリットを1点獲得した。

【解説】

 カーター一族にかけられたファラオの呪いに関する詳細が判明するシーン。 ズヴォリンは、やろうと思えば部下に発掘を丸投げすることもできる。それをしないのは彼自身の好奇心と責任感が故にだ。彼は自分の家の都合に発掘隊の他のメンバーを巻き込んでいることや、好奇心故に現場に足を向けて家庭が疎かになっていること、双方に対し罪悪感を抱いている。それ故に、この話題はPC2以外にはあまりしたがらないだろう。 だが罪悪感を抱いている故に、PC2がどちらかに後押しするのであれば、彼は納得しその通りに動く。

クエリー3:祝福と呪い

登場:PC1舞台:夜のベースキャンプ・テント内

【状況1】

 PC1が目を覚ますと、そこは夜のベースキャンプテントだった。 君の目覚めは他のヒーロー二人や発掘隊にすぐに伝えられ、発掘チームとヒーローたちはPC1のもとへと集まる。そこでPC1のこの後の処遇について意見を交わすことになるだろう。 PC1の奇妙な力はいまだに残り続けており、PC1に力をもたらした存在は謎のままだ。

【状況2】

 そんな中、手帳を見ていたズヴォリンが、何かを考えるように呟く。「ふむ、やはり、これは……失礼、よろしいですかな?」 ズヴォリンはPC1から与えられた超人種暴走事件の情報と、自分達の発掘調査の記録を皆へ見せる。別地点で超人種の暴走が起きた日、この地で発掘隊は必ず、発掘に於ける大きな発見を成し遂げていた(それは発掘ポイントの特定や、地層や化石の発見といったものだ)。「そして今回発見されたあの遺跡ですが、外部から見る限りでは造りは墳墓や集落ではなく神殿のように見えました。しかしこの地域は当時の立地状況を顧みても郊外。何故当時の人々はこのような場所に神殿を造ったのか? それは、我々がここを調べる理由となった、この碑文に文言が記されています」 ズヴォリンが写真を取り出す。そこには古い石板にヒエログリフが記されている。「王家の墓を発見した我が先祖、ハワード・カーターの記録に残されていたものです」

【状況3】

「この石板には神話が刻まれています。 『無貌なる影神、ドゥアトより至り。無貌なる影神、ファラオの治世を見、これを良しとされた。無貌なる影神、地へ祝福を贈り、ドゥアトへと去る。なれどこの祝福、人の器に余り。ラーの光は遮られ、ナイルの水は滞った。 ファラオ、無貌なる影神に謝意を示すために、ゲブとヌトの背後に回りドゥアトへの神殿を造る。無貌なる影神はこれを良しとされ、地から祝福は消ゆ』 ……要は、冥界から現れた神が人に祝福を与えたが、人はその力を扱いきれず、その神へ返したという逸話です。この『ドゥアトへの神殿』というのがこの辺りにあるのでは、と目星をつけて調査を行っていたのです」 ズヴォリンは真面目な顔でPC1を見る。「似ているとは思いませんか? 偶然の一致、しかし偶然がこうも降り重なれば、運命を疑いたくもなる……」「あの遺跡に、あなたをもとに戻す手がかりがあるかもしれない。それが祝福にせよ、呪いにせよ」

【エンドチェック】

□神話の話を聞き、意見を述べた□グリットを1点獲得した。

【解説】

 PC1にかけられた呪いの内容について情報が出てくるシーン。PC2とPC3の情報共有がまだなら、このタイミングでPC同士の情報共有も行ってしまうと都合が良いだろう。 ズヴォリンは自分の一族の呪いのこともあり、PC1への呪いについても大真面目に受け止め、ファラオの呪いである可能性が高いと思っている。一見すれば荒唐無稽な発言にも見えるが、彼にとっては紛れもなく、大きな可能性の一つなのだ。ズヴォリンはPC1に同情している。
【簡易用語解説】・ドゥアト=エジプト神話における冥界のこと。地上から姿を消した神々が住むとされた。エジプト神話の中でも様々な捉え方をされ、統一された解釈が無かったのか、現存するテキスト内でも互いに矛盾することがある。・ゲブとヌト=天空と大地を支え合っているとされた神。ドゥアトはその地下にあると考えられた。

チャレンジ2:挑め! 進め! 地下遺跡!

登場:PC全員舞台:地下遺跡

【状況1】

 翌朝、ヒーローと発掘隊は地下遺跡へと乗り込む。 重い石の扉を開けば、地下へと続く長い階段が広がっていた。

【チャレンジ判定】

 PCは一人1回ずつ1d6を振り、出た出目に応じたイベントと判定を行う。 そのイベントの判定は、そのイベントのダイスを振ったPCしか担当することができない。 同じイベントが発生した場合、振り直してもよい。
【ランダムイベント(1d6)】1:狭い路地だ。通り抜けようとした時、壁から大量の吹き矢が飛び出してきた!…〈作戦〉2:脇道のない細い階段だ。背後から轟音がし、振り返れば……道いっぱいの巨大な大岩が転がってきた!…〈運動〉3:入ってきた部屋の扉が閉まる。小さな何かが大量にカサカサと羽音を立てる。足元に古い人骨が転がっている。ここは人喰いスカラベの巣穴だ!…〈生存〉4:おかしい。何度進んでも同じ場所に戻ってきてしまう。ここには何らかの魔術がかけられているようだ。生きる巨大迷宮を抜けろ!…〈霊能〉5:落とし穴だ。底には大量の鋭い槍が天を向いている。この先にも同じものがあるかもしれない、警戒して進まなくては。…〈知覚〉6:スフィンクスの像だ。顔の部分が削り取られている。像はひとりでに動き出し、君たちへ謎掛けを行う。答えなければ先に進めなさそうだ。…〈交渉〉
失敗時:2d6点のライフを失う。リトライを消費する必要はない。

【状況2】

 障害を乗り越え、君たちはついに遺跡の最深部へと辿り着く。 黒曜石のような黒光りする石で作られた奇妙な空間だった。その空間は神秘的で、何千年もの間閉ざされていたというのに、砂や埃が堆積した様子もなかった。滑らかな床に、壁に、君たちの姿が反射して映り込むほどだ。 何も無い空間に立っているような、宇宙空間に放り出されたような奇妙な場所だった。 その最奥の壁に膨大な量の碑文が刻まれていた。巨大な壁一面に彫り込まれている見たこともない古代文字を見て、ズヴォリンが驚きの声を上げる。「な、何!? どういうことだ? 読める、読めるぞ、おかしい、この碑文の文字が私には読める!」 その異変はズヴォリンだけではなかった。 PC1にも、その見たこともない古代文字が読み解けた。

状況3

 黒い碑文には、カーターの残した石碑に記された神話の、別の伝承が記されていた。 曰く。 ドゥアトより来た無貌の影神は、さらなる祝福と繁栄を求めた当時のファラオが召喚の儀式を行ったということ。 影神はその求めに応じ、王と民に祝福を授けたが、その力は人の身には過ぎたものであったということ。 ファラオは自らの行いを悔い、神殿を建て、この玄室に籠り影神へ祝福の返上を求めた。影神は機嫌を損ね、ファラオへ試練を課した。それは自らの血を以って、自らの力のみで、ひとときも休むことなく、この部屋一面に自らの罪禍を書き記すことであった(壁面にはファラオが犯したと自認する様々な罪が記されていた)。 だがファラオが幾度自らの罪を書き記せど、影神はそれに満足することはなかった。困り果てたファラオに呆れた影神は、代わりの試練を与えた。ファラオの妻と娘を生贄に捧げることを求めた。ファラオはそれを承諾し、地上から祝福は去り、神と王は玄室を去った──。

【状況

 神話を読み解いたズヴォリンが震えた声で告げる。「お、お、お、おそらく、こ、こ、こ、このファラオは、自らの妻と娘だけを生贄とするつもりで承諾をしたのでしょう。し、し、し、しかし、神の本当の望みは違った。子々孫々に至るまで……そしてその呪いは私のもとへ!」「で、で、で、では、わ、私が、この碑文の禊を完遂すれば、娘は自由になれるのか!? 書けば、書けばいいんだな!?」 血走った目をしたズヴォリンが空間を見回して言う。だが部屋は膨大だ。この部屋全てに血文字を、休むことなく書き続ければ、ズヴォリンは死んでしまうだろう。何より、過去のファラオがそれを試み、そして一度失敗しているのだ。
 同じく碑文を読み解いたPC1は、そこには古代の王が行った召喚の儀式の内容が記されていることを悟る。これをもう一度試みて、影神本人と交渉を行う事は出来ないだろうか? いいや、やるしかないのだ。

【チャレンジ判定:PC1】

■判定:無貌の影神の招来を行う……〈霊能〉-50%/あるいは〈任意の技能〉-60%失敗時:成功するまで次のイベントに進むことができない。リトライを減らし、再度挑戦すること。

【エンドチェック】

□遺跡の最深部へ辿り着いた□神を召喚する儀式を行った

解説

 地下遺跡を探索する調査チャレンジ。 クエリー2でズヴォリンが帰ることを選択していた場合、中の様子を見に行ったら出口が閉まってしまった、などとして同行させると良いだろう。

【クエリー4:無貌の影神】

登場:PC全員舞台:地下遺跡最深部・玄室

【状況1】

 召喚の儀式は成功する。 黒い玄室の壁に赤黒い光が駆け抜け……それが消えていく。 静寂に満ちた空間に、PC1の声が響く。PC1の意志に関わらず、その口はPC1ならざるものの言葉を、PC1の声で紡ぐ。『異なる言葉を話しながら、今再び一つとならんとする者。天へ至らんと塔を建て、シェムを地へ堕とされて尚、いま再び我が御許に手伸ばす者。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せし者。汝の名を我に示せ』 召喚は成功した。影神はPC1の内から、皆と対峙している。 さて、この状況で君たちは、影神へどんな交渉を持ち掛けようか?

【状況2】

『余る祝福に矮小なる身を灼かれ、果たせぬ誓約に足掻き慈悲を乞う……似合いよな』
『何が不満か? 半数の血を捧げながらも、半数の血は地へ残る。そのようにしてやった。 今日に至るまで、数多の戦、病、災厄を退け、汝らの血は紡がれた。 何が不満か? 支配に足る力を、望みに届く力を、一人在るに足る力を授けた。そのようにしてやった。 目を伏せ、受け入れ、身を委ねよ。寿げ、恵まれし者』
『全ては我が祝福よ。 我に捧げよ、捧げた後はまた増やせ。 新たな情に心を捧げ、新たな命に傷を忘れよ。 産めよ、増やせよ、地に満ちよ。そして再び我に捧げよ。 ──天の下にあるすべてのものはわたしのものだ』
 影神はカーター一族の呪いとズヴォリンの抗いを嘲笑い、交渉に応じる様子はない。 その口ぶりと、PC1や他の超人種の身に起きている事件を思えば、他のPCたちにもこの神の性質が分かるだろう。邪悪な神だ。この神は恵みの祝福をもたらしているのではない、祝福という名目で与えられる呪いに翻弄される、人の抗いを嗤っているだけなのだ。 交渉は決裂した。君たちは今や神に捧げられる羊ではない。 傲慢なる邪神に、君たちの意志を示そう。

【エンドチェック】

□邪神と対峙し、意志を示した□グリットを1点獲得した

【解説】

 暗黒のファラオが現れ、PCたちと対峙するシーン。 ナイアーラトホテプの言葉には聖書の引用が多数含まれているが、これは彼が既存の宗教の内容を嘲笑い、文字通り冒涜しているためだ。人類が築いてきた文明や宗教を嗤い、自身のことを何も知らぬ人類にわかりやすいよう利用しているだけだ。彼の言葉の語尾には全部(笑)がついてると思ってほしい。 別にナイアーラトホテプは本気で人類を祝福しようなどとは微塵も思ってはいない。当初に告げた言葉の通り、「黙示録の全ては戯れ」なのだ。

4.決戦フェイズ

【決戦:アポカリプス】

登場:PC全員舞台:地下遺跡最深部・玄室

【状況1】

 君たちの言葉を聞き、無貌の影神──否、邪神は嗤う。『傲慢、不遜、驕傲。よかろう。やはり時は満ちた。来れ、我が騎士』
 それと同時、PC1は凄まじい吐き気を覚える。その口から黒い汚泥のようなものが、ごぼりごぼりと吐き出されていく。 入口から炎の鞭がPC3を襲う。振り返ればそこには仮面をつけた赤い髪の女がいた。PC2の目の前に、影からずるりと姿を現した異形の少女が(古代の装束を身につけた褐色の男性が)立ちはだかる。 PC1が吐き出した黒い汚泥から、男の、女の、子供の、老人の、数多の存在が混ざりあった声がする。
『賛美、栄光、知恵、感謝、ほまれ、力、勢いが、世々限りなく満ちておる』『休みの時は過ぎ、殺されんとする僕と兄弟の数は満ちた』『彼らは、もはや飢えることがなく、かわくこともない。太陽も炎暑も、彼らを侵すことはない』『書きしるせ。小羊の婚宴に招かれた者は、さいわいである』『時は近づき、そして来た』
 声は厳かに黙示録の訪を告げた。 汚泥は一度PC1と同じ姿を型作り、それを引き裂きながら顔のないファラオの姿が造形された。 赤い女が、黒い少女が(褐色の男が)、それに恭しく首を垂れる。それと同時、地下の玄室に凄まじい轟音が響き、遺跡が崩落を始める! 急いで遺跡を脱出しなければ!

【状況2】

 地上へ逃れた君たちは、天が赤黒く変色し、渦を巻いているのを見る。離れた場所で凄まじい力が暴れているのを感じる。それはPC1が理性を失い、暴れていた時の状況によく似ている。あれと同じことが、いま、各地で起き始めたのだ! はるか高みの天の頂に立ち、地上を睥睨する暗黒のファラオは、嘲笑と共に厳かに告げた。
『傲れや、人よ。黙示録の時は今なり』
 だが、所詮──この終焉は邪神の戯れ。 受け入れてやる道理はない。 神に抗い、自由を勝ち取れ、英雄よ!

【戦闘情報】

【戦闘情報】

・ナイアーラトホテプ・赤の女王・黒扇公主(ネクロポリス・ナイツソースブックをGMが所持している場合、黒扇公主の代わりに『ネフレン=カ』を使用しても良い。アナザーパワー二種も適応すること)・ヘンチマン:トゥームトルーパー×3・ヘンチマン:防衛委員×2・ヘンチマン:門番×1

【エリア配置】

エリア4:ナイアーラトホテプ/黒扇公主(ネフレン=カ)エリア3:赤の女王/トゥームトルーパー×3/門番×1/防衛委員×2エリア1or2:PC

【勝敗条件】

勝利条件:エネミーの全滅敗北条件:PCの全滅

【備考】

・ナイアーラトホテプの【数多の仮面】でコピーできる対象にPC1(強化済み)を指定して良いものとする(デッドライン状態にはならず、代償としてリトライ・グリットを使用するパワーは利用できないものとする。またあくまでエネミーである関係上、エナジーが0以下となった場合は「戦闘不能」となるので、「死亡」を回復する類のパワーも使用できない)・PC1に以下のパワーが適応されるものとする。・エネミーのエナジーに変更は加えない。・黒扇公主の「膨らんだ女」は「射程:3」として扱う(エラッタが出た場合はそれに準じる)

【PC1追加パワー】

・これは実質的なタイムリミットを示すパワーである。 PC1のパワースロットに関係なく、このパワーはPC1のパワーとして追加される。
■黙示録の獣属性:弱体 判定:なし タイミング:永続射程:なし 目標:自身 代償:なし効果:ラウンド開始時に必ず使用する。 PC1は2d6を振る。出た出目を『侵食値』として加算する。 この侵食値が合計22点以上となった時、 PC1は即座に『混乱ポイント「21-[侵食値の現在値]」点』を受ける。 このパワーはパワーによって回避することができない。──その身を捧げよ。お前は私に選ばれた。

【戦法について】

 ナイアーラトホテプは早い段階で『数多の仮面』を使用してPC1の能力をコピーしてしまおう。PC用パワーの大半は回避判定を持たない。パワーの相性にもよるが、強化が入っているPC1はさておき、PC2やPC3にとっては十分な脅威となるはずだ。 幹部とヘンチマンは各々のパワーを使って攻撃や妨害を行っていこう。特に「赤の女王」は、回避判定を要求しない高ダメージパワーが揃っている。PC1のエナジーが非常に高い場合などは、彼女を序盤のメインアタッカーとして運用すると良い。その間にナイアーラトホテプは『数多の仮面』を用いて状況を整えよう(70%を外したら諦めよう。そんな日もある)

.余韻フェイズ

【シナリオの結末(一例)】

 邪悪なる神は消え、その臣下もまた消えた。 PC1は自らに与えられていた過剰な力が消えるのを感じる。それを見ていたズヴォリンも、本能的に自らの一族の呪いが消えたことを感じるだろう。 発見された遺跡は戦いの中で崩落して消えてしまう。かくして神話は今再び、歴史の闇へと葬られた。(PC1に与えた経験点500点を回収すること)

【PC1】

 戦いの舞台となったエジプトの街はひどい損傷を受けた。あるいはその損傷の中には、君がもたらしたものもあったかもしれない。だがその記録は、神が戯れにもたらした災害に紛れ、君自身以外には追及されることはない。 君の眼前では、エジプトの人々が、街の復興に当たっているのが見える。神に祈り祝福を乞うのではなく、人自身の技術と力で以って。 君にはもう、あの過ぎた力はない。街の修復のために君に出来ることがあるのか、それを成す必要があるのかすら定かではない。 君はこれから何をしようか?

【PC2】

 ズヴォリンを連れて日本へ戻れば、ニュースでエジプトの惨事を聞いていたらしいエヴェリンが、泣き腫らした顔で父に飛びつき抱きしめる。彼女はありったけの罵詈雑言を父へ吐き、君へ心からの感謝と謝罪を述べるだろう。「ごめんなさい。私、あなたにすごく酷いことを言ったわ」「あなたは本物のヒーローだった。パパを無事に連れ帰ってくれてありがとう」 我儘なお嬢様も、これで少しは良い人間になれば良いのだが。 君にはその可能性は、結構高いんじゃないかなと思えた。

【PC3】

 修復を受けたチクタクマンが再起動する。だが彼は自分が暴走する前の記憶を全て失っており、君へPC2のことを託したこともすっかり忘れてしまっていた。「私が君にそれを頼んだ理由は分からない。だが、状況を聞くに……もしかしたら私は、何かに抗っていたのかもしれないな」「であれば、君は以前の私の望みを叶えてくれたのだろう。ありがとう。どうかこれからも、共に戦ってくれると嬉しい」 チクタクマンは感謝を述べ、君に頭を下げる。 その右目が光を反射し、ぎらりと光っていた。 神は本当に消えたのだろうか。 いいや、消えたはずだ。少なくとも、今は。

【獲得経験点】

・初期グリット:3点・クエリーグリット:4点・リマークグリット:想定3点------------------------------------------合計:10点