百鬼語り



──鬼を談ずれば、怪にいたると言えり
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1.エントリーとシナリオ概要

【エントリー】

【共通エントリー】


「鬼を談ずれば、怪にいたると言えり」 ある夏の日。真昼のG6支部に、百寄夜會の幹部「葬送法師」が姿を現した。「来る8月8日、■■寺にて百物語を開催致します」「残る席は狐憑き(テクノマンサー)、天狗(ハービンジャー)、陰陽師(ミスティック)、物の怪(サイオン)」「勇士(ヒーロー)の皆々様のご参列、何卒謹んでお待ち申し上げます」「……どなたもおいでになられぬ場合、眠れる災厄が目を覚ますとお心得下さいませ」──…かくして、ヒーロー達は招集される。

【特殊事前情報】


 このシナリオでは、クエリーでPCに怪談を話してもらいます。 そのため、PLは事前に、実在・創作を問わず、百物語で話すに相応しい話を用意した上でセッションに臨むと良いでしょう(必ずしも怖い話である必要はなく、不思議な話・奇妙な話などでも構わない)。 また、あまりにも百寄夜會や妖怪という存在に近しいPCはシナリオ進行上障害となる可能性がある為、避けることが好ましいでしょう。

【事前情報】


 リトライ:4 初期グリット:2(4人PC時) チャレンジ:1+特殊(実質5) クエリー:4 想定プレイ人数:2〜4人※PCが3人の時は4点、PCが2人の時は6点とし、 最終経験点が10点程度になるよう調整する。
 想定時間:3〜4時間 推奨経験点:0〜10点

【GM向け情報】

 エントリーで指定されたオリジンPC4人を想定したシナリオとなっていますが、エントリー時の指定オリジンの調整やクエリー数の調整により、それより少ない数でも、それより多い数でも参加することができるでしょう。

【GMに要するルールブック】


・基本ルールブック(R1)

2.導入フェイズ

【イベント(共通):百物語を始めよう】

舞台:■■寺登場キャラクター:全員

【状況1】

 或る良く晴れた夏の日のこと。 むせ返るような熱気の中、君たちはあぜ道を歩いている。 油蝉の合唱、入道雲の空、青々とした雑草の生い茂る畑、点在する人気のない民家。 廃村になって久しい集落の中を、君たちは進む。 そうして進んだ先──やがて前方に、荒れ果てた寺が見えてきた。 サテ、そもそもどうして、こんな場所を進んでいるのだったか。
 時は一週間前に遡る。 台風一過の良く晴れた日、然る真昼のG6支部の待合室に、一人の男が現れた。 ごくごく当然のような顔をしてそこに居た男に、職員たちは当初、その男が何者であるのか気付かなかった。アッとその正体に気付いたものが声を上げた時、男はにんまりと口を三日月に歪め、名を名乗ったという。「百寄夜會が一鬼、葬送法師と申します」「来る8月8日、■■寺にて百物語を開催致します」「残る席は狐憑き(テクノマンサー)、天狗(ハービンジャー)、陰陽師(ミスティック)、物の怪(サイオン)」「勇士(ヒーロー)の皆々様のご参列、何卒謹んでお待ち申し上げます」「……どなたもおいでになられぬ場合、眠れる災厄が目を覚ますとお心得下さいませ」 葬送法師はそう告げると一つ礼をし、瞬きの間に、忽然と姿を消してしまったということだ。 かくして君たちは招集され、荒れ寺へと向かっている。

【状況2】

「おや、こうも日の高い内においでになるとは、これはいささか予想外」 荒れ寺の中では葬送法師が掃き掃除をしていた。「丁度境内の掃除が済んだところ。暑かったでしょう、お上がりになってお待ちください。セッコ、お客人に飲み物を」「アイアイ!」 境内からひょっこりと顔を出したセッコたちが駆けていく。「百物語の始まりは、日が落ちてからと相場が決まってございます。それまでどうぞ、境内にてゆるりとご歓談を」「黄泉竈食(ヨモツヘグイ)にはなりませぬ、ご安心めされよ」

【状況2.5】(任意)

 夜までの時間を持て余す君たちの周りを、大量のセッコが取り囲んだ。「あーそびーましょ!」「あーそーぼー」 仕方ない、何につきあってやろうか。1.はないちもんめ2.かごめかごめ3.おにごっこ4.かくれんぼ5.だるまさんがころんだ6.ずいずいずっころばし

【状況3】

 かくして時は経ち、夜は更け。 君たちは百の蝋燭に囲まれた本堂の内に集う。「古式ゆかしく青行灯を用意しても良かったが、重要なことはこうして集い、百の怪を語ること。形式は簡易のものと致しましたが、ご寛恕召されよ」 葬送法師は集った面々をぐるりと見まわしサテと問うた。「誰から始めましょうや」 さあ、百物語を始めよう。

【解説】

 百物語に入る前の解説パート。さりげなく舞台となる(そして後半の展開に関わってくる)廃村の情報を出すと良い。夏らしい描写をたくさん入れると雰囲気が出るだろう。 セッコたちとのプチサイドトラックを適応するかはGMの任意だ。序盤で無邪気な子供のようなセッコと戯れさせた後、決戦でその時の遊びを利用した演出をするとちょっとホラーっぽくなるかもしれない。 この時点でヒーロー達が葬送法師に敵対するような行動をとるのであれば、葬送法師はニタニタと笑いながら、「では、災厄の件は何も語らず散ると致しましょう」などと宣い、のらりくらりと躱してしまう。最終的に百物語をする。

3.展開フェイズ

【クエリー&チャレンジ1:或狐憑之談】

舞台:本堂登場キャラクター:全員(語り手:テクノマンサー)

【状況1】

 百個の蝋燭が灯された暗い部屋の中、君は最初に口火を切った。 ゆらゆらと影がゆらめき、君の口上が参加者たちに見守られる。 葬送法師は何のためにこんな催しを開いたのか? 疑問は抱けども、今は語るより他はなく。──これは、とあるテクノマンサーが語った話だ。
–––––––––––––––––『チャレンジ判定』 語り終了後、全員で『意志』の判定を行う。 失敗時のデメリットはこの時点では非公開とする。–––––––––––––––––

【状況2】

「しからば、一つ」 葬送法師が蝋燭を吹き消す。「……シテ、次は誰かな?」

【エンドチェック】

◻︎PCが怪談を話した◻︎チャレンジ判定を行った◻︎グリットを1点獲得した

【解説】

 百物語パートだ。ここからはPL主導でストーリーが展開される為、GMは描写を最小限にとどめる程度でよい。 担当PCの怪談が終わったら、他のPCやNPCで感想を言い合うなどすると楽しいだろう。 便宜上、シナリオ上ではテクノマンサー→ハービンジャー→ミスティック→サイオンという流れにしているが、GM側で状況1の描写を多少調整すれば、順番は誰からでも構わないだろう。

【クエリー&チャレンジ2:或天狗之談】

舞台:本堂登場キャラクター:全員(語り手:ハービンジャー)

【状況1】

 百個あった蝋燭が、一つ話を終える度、一つ、また一つと消されていく。 蝋燭が一つ消える都度、部屋を取り囲む影が増す。 それを尻目に、君は口を開く。さてこの世界の住人に、君の語る話が理解できるか否か…。──これは、とあるハービンジャーが語った話だ。
–––––––––––––––––『チャレンジ判定』 語り終了後、全員で『意志-10%』の判定を行う。 失敗時のデメリットはこの時点では非公開とする。–––––––––––––––––

【状況2】

「しからば、一つ」 葬送法師が蝋燭を吹き消す。「……シテ、次は誰かな?」

【エンドチェック】

◻︎PCが怪談を話した◻︎チャレンジ判定を行った◻︎グリットを1点獲得した

【クエリー&チャレンジ3:或陰陽師之談】

舞台:本堂登場キャラクター:全員(語り手:ミスティック)

【状況1】

 パタパタと、子供の足音が君のすぐ側を駆けていく気がする。 視界の端から、じっと君を見る女のような影がある気がする。 君には常人に見えざるものも見えて久しい。 先人の語りが終わる。 君に手番が回る。──これは、とあるミスティックが語った話だ。
–––––––––––––––––『チャレンジ判定』 語り終了後、全員で『意志-20%』の判定を行う。 失敗時のデメリットはこの時点では非公開とする。–––––––––––––––––

【状況2】

「しからば、一つ」 葬送法師が蝋燭を吹き消す。「……シテ、次は誰かな?」

【エンドチェック】

◻︎PCが怪談を話した◻︎チャレンジ判定を行った◻︎グリットを1点獲得した

【クエリー&チャレンジ4:或物怪之談】

舞台:本堂登場キャラクター:全員(語り手:サイオン)

【状況1】

 一人一人、代わる代わる。 存外に話というものは保つもので、少ない人数でありながら、多数の怪談が紡がれていく。 やがて、幾度目かの君の番が訪れる。 ……我々はこれほどに、怪談への造詣が深い者達だっただろうか? 一抹の疑問が脳裏を過ぎるのを自覚しながらも、君は口を開く。──これは、とあるサイオンが語った話だ。
–––––––––––––––––『チャレンジ判定』 語り終了後、全員で『意志-30%』の判定を行う。 失敗時のデメリットはこの時点では非公開とする。–––––––––––––––––

【状況2】

「しからば、一つ」 葬送法師が蝋燭を吹き消す。「……シテ、次は誰かな?」

【エンドチェック】

◻︎PCが怪談を話した◻︎チャレンジ判定を行った◻︎グリットを1点獲得した

【チャレンジ5:或法師之談】

舞台:本堂登場キャラクター:全員

【状況1】

 怪談は語られ、蝋燭は吹き消される。 幾度目かの繰り返しの末、気付けば残りの蝋燭は最後の一本となっていた。「之にて九十九話、残すは一話となりました。最後の怪談は、主催である儂の口からお話ししましょう」「最後の怪談の前に、前座を一つ。……サテ、皆々様。『妖怪』とは、ソモ、何でありましょうや」

【状況2】

 君たちの答えを聞き届け、葬送法師は笑う。「結構、結構。 それら全てが正しい。 今でこそ、こうして形を持ちこそしておりますが、妖怪とはそも、ヒトの想像によって生み出されたもの。 故、ぬしらヒトがそう定義するのであれば、それもまた妖怪のあるべき形の一つでしょうや」「ヒトが想像を巡らせる時とはどんな時でしょうか。 恐ろしい時? それは確かだ。しかし全てではない。 想像を巡らせる時、それは即ち、『分からない時』でございます。 真実が何なのか、答えは何なのか、扉の先には何があるのか、今見えたような気がしたものは何だったのか? 『分からないもの』に相対した時、ヒトは想像を巡らせ、その『分からないもの』に答えを、名を与えようとする。 それこそが妖怪の本質でございます」「之より語りますは、或る妖怪の物語」「古い古い昔、今や忘れ去られた遠い日に、この日の本の國に生まれ、忘れられていった、妖怪の物語にございます」

【状況3】

■【テクノマンサー】 気付けば、狭い屋敷の中にいた。 明かりはなく、外からはゆらゆらと朱い夕陽が差し込んでいる。 襖は開かず、窓には格子。ここは座敷牢だ。 君ではない誰かの悲しみが、君の中に生じる。 記憶の中で誰かが囁く。「神童だ」「将来が楽しみ」「よくできた子」「……できすぎている」「気味が悪い」「雨が降るのをぴたりと言い当てた」「都から来たお医者様を言い負かしたとか」「馬の死骸をじっと見つめていたわ」「まるで心が読めるかのように先の言葉を言い当てて……」「普通ではない」「理解できない」「きっとあの子には、狐が憑いているのだ」 襖が開く。 姿を現した男が君の父だと、君は知っている。「きっとこれで良くなる、今度こそ!」 興奮した男が、君の口に粉末を流しこむ。 それが薬にはならないのだと──知っているのは、君しかいない。
■【ハービンジャー】 気付けば、見知らぬ竹林にいた。 真っ青な空。清涼な空気。鮮やかな緑。 右を見ても、左を見ても、そこにあるのは見知らぬ景色。 君を知る者は誰もなく、君の知る者も誰もいない。 君ではない誰かの寂しさが、君の中に生じる。──心細い。──怖い。──ここはどこ。──誰か。──助けて。 四辻を行く誰かを見た。 助けを求めた。声をかけた。 言葉は通じず、悲鳴があがる。逃げ惑う。それを追う。 誰かが叫んだ。「天狗だ! 天狗が出た!!」 ……火薬の匂いを最後に感じた。
■【ミスティック】 気付けば、見知らぬ刑場にいた。 両腕と両足は固く縛られ、体は磔に。左右には槍を持った男達が侍る。 前に進み出た男が、手にした巻物を読み上げる。──罪状は詐取、騙り、詭計。 君ではない誰かの怒りが、君の中に生じる。 刑場に集った聴衆が石を投げる。「ぺてん師め!」「大ボラ吹き!」「恥を知れ!」「地獄に落ちろ!」──嘘など誰が吐くものか。お前達が理解できなかっただけだろう!── 君の眼前で、槍が交差する。 見聞が終わり、刑の執行が言い渡される。 胸中に満ちるは苦悶、憎悪、失望……そして堪えようのない怒り。
■【サイオン】 気付けば、見知らぬ社にいた。 腕には枷。口には轡。足には──魚の尾。 眼前では、多くの人間たちが、掌を擦り合わせ、一心不乱に祈りを捧げている。「──様、──様、どうぞ我らにお恵みをお与え下さい」「不老の体を」「不死の命を」「人魚の恵みを!」 君ではない誰かの恐怖が、君の中に生じる。──そんな力は自分にはない。──ただ、形が違っただけ。生まれた時から、違う形をしていただけ。──ただそれだけだった、それだけだったのだ! 研ぎの終わった出刃包丁が、君の体に添えられる。 欲に満ちた無知の目が君という供物へと注がれ、千々に裂かんと舌なめずりをしている……。
–––––––––––––––––『チャレンジ判定』■抗う…… 任意の技能-10%【失敗時】決戦フェイズを『恐怖ポイント1』がついた状態で始める。【成功時】グリットを2点回復する。(補足:過去の人々の状況に、君の意識がリンクしている。抗い脱出するのは、過去の人々の状況だ。彼らは君と同じ自身の能力を使い、その場を脱し、逃げ出すことになる)–––––––––––––––––

【エンドチェック】

◻︎チャレンジ判定を行った

【解説】

 シナリオ舞台となっている集落には、かつて小さな超人種たちの自治区、村があった。戦後の発展の中で廃村となっていった村の起源を遡れば、それはファースト・カラミティより以前、最初の超人種が確認されるよりも以前からこの世界に生きていた当時の超人種たちの隠れ里だった。 現在よりもさらに超人種への理解がなく、「超人種」という言葉すら存在していなかった頃、彼らは日本において「妖怪」とされた。人の世で生きることが出来なかった彼らは、人の世から逃れ、自分たちだけの村を作った。それがこの廃村の成り立ちだ。 ファースト・カラミティにより、そのなりたちの歴史は忘れ去られた。かつて「妖怪」とされた人々の中に、今日で超人種とされた人々がいたということも、推論以上の根拠は持つことなく歴史の彼方に消滅した。 葬送法師がこの集落のことについて、どの程度知っているかは定かではない。しかし彼は戦後、超人種自治区確保のために動いた過去を持つ。もしかしたら何か知っていたのかもしれないし、彼もまた忘れているのかもしれない。
 チャレンジ判定に成功した場合、この時点で消費しているグリットを2点分回復してよい。消費しているグリットが存在しなければ影響はない。また、これにより回復したグリットは経験点には加算されない(総経験点10点に変化はない)。

4.決戦フェイズ

【決戦:百鬼語り】

舞台:本堂登場キャラクター:全員

【状況】

 ふと気づくと、荒れ寺の本堂にいた。 百本あった蝋燭は全てが消え、本堂内は暗い闇に包まれている。「人は忘れた」 暗闇の中、葬送法師の声がする。あぐらをかいていた人型が、膨らむように巨大化していく。「人より生じ、人より名付けられ、そして人に忘れられたもの」「今日にて語られる、テクノマンサーは狐憑きであり最早狐憑きではなく、ハービンジャーは天狗であり最早天狗ではなく、ミスティックは陰陽師であり最早陰陽師ではなく、サイオンは物の怪であり最早物の怪ではない」「故に我らは恨むのだ、故に我らは祟るのだ。理不尽こそが怪異の本質なればこそ!」
 巨大化した葬送法師によって破壊された荒れ寺の天井から月の光が差し込む。ぼんやりと、君たちと同じ数の人魂が浮かび上がる。 人魂の青白い焔の中、ぼんやりと浮かび上がるのは、死人のように虚ろな君たちの顔。あるいは君たちによく似た誰かの顔。 あれだけ幼気な仕草を見せていたセッコたちは、無表情で、君をじっと見上げていた。 月を覆い隠さんばかりの巨体となった葬送法師が吠える。「我が名は百寄夜會が一鬼、葬送法師! 歴史の彼方へ葬られ、忘れ去られた我らが恨み。とくと味わい、鬼と語れ!」「それすら出来ぬというならば、貴様も怪へと至るが良い」

【戦闘情報】

【エネミー】(PC四人時)

・葬送法師(強化)・セッコ(強化)・人魂×4

【エリア配置】

エリア4:セッコエリア3:葬送法師、人魂×4
エリア1かエリア2:PC

【勝敗条件】

勝利条件:エネミーの全滅敗北条件:味方の全滅

【備考】

・チャレンジ1〜4(クエリーと併設のもの)の判定に失敗しているPCは、行動順ロールを1d10+失敗したチャレンジ数で判定しなければならない。

『GM向け情報』(PL4人時)

 葬送法師は全てのエナジーを2倍にし、攻撃パワーである「頭突き」を判定無しで自動成功するパワーとして扱う。 セッコのライフは30として扱う。パワーには特に手を加える必要はない。 人魂のデータはR1記載の同名のヘンチマンを使用する。

『難易度調整』

 PCが二人の場合、葬送法師・セッコのエナジーはルールブック記載のもの通りとし、人魂を2体に減らす。パワーは強化したものを使う。 PCが三人の場合、葬送法師のライフを45とし、『頭突き』は強化したものを使う。セッコはルールブック通りのステータスとする。 PCの経験点が豊富だったり、相性が著しく悪い時は、セッコのステータスをルールブック通りとし、数を増やすとよい。その場合はエリア1も狙えるよう、初期配置場所をエリア3とエリア4の混成とすると良いだろう。

『敗北した場合』

 君は現実から忘れられ、妖怪になる。

【エネミーの戦法】

 セッコはエリア4から「つぶて」で攻撃を行う。エリア1のPCを狙いたい時は、エリア3に侵入しながら攻撃を行うといいだろう。人魂たちの攻撃でヒーローのサニティが減っていったら、エリア3へ移動し「とりかえっこ」でライフとサニティを逆転させてしまえばよい。「不思議な話術」は味方にも命中するパワーであることに気をつけること。 葬送法師は味方を「闇の手」で常に守りながら、「頭突き」で随時ヒーロー達を狙っていくと良い。エリア3にいれば、エリア1にも攻撃が届く。ヒーローの移動に合わせて「影追い」を使ってみてもいいだろう。「闇の手」は同タイミングでは1体までしか使えないことに注意。 人魂はエリア3にいるキャラクターを随時「恨めしや」で攻撃する。エリア4にいるキャラクターを狙うため、エリア2に侵入するのも手だ。

5.余韻フェイズ

【シナリオの結末(一例)】

舞台:本堂登場キャラクター:全員

【状況1】

「サテ。これにて九十九話、出揃いまして」 ハタと気付く。 一本の蝋燭が揺れていた。 本堂は変わらずそこにあり、戦闘の痕跡はどこにもない。 周囲ではパタパタとセッコが走り回り、葬送法師が行灯に明かりを灯した。「名を与えれば形為し、忘れ去るなら祟って呪う。人の世の慣例に倣い、九十九で止め朝を待つのが好い塩梅でしょう」「……ハテ、どうされた? 狐か狸にでも、摘ままれたような顔をしておいでだ」

 君たちから百話目のことや、その後の戦闘のことを聞けば、葬送法師は面白そうにフムと考える所作をする。「……かつて、この地には小さな超人種達の自治区がありました。戦後の発展の流れと共に村民が減り、廃村となるに至りましたが──この村の始まりが如何なるものであったのか、歴史はファースト・カラミティの彼方に消え、村の成り立ちを知るものは誰もいなかった」「ぬしらの元に現れたのであれば、何かを求めていたのだろうなあ。覚えていて欲しかったのか、助けて欲しかったのか……はたまた成り代わろうとしていたか」「これ以上は名を与えるべきではありますまい。くわばら、くわばら」

【状況2】

 かくして、君たちはG6へと戻り、件の顛末を報告したのだが。 職員たちは皆一様に、きょとんと首を傾げ、声を揃えて言うのだった。「そんな依頼、出してませんけど……?」
 その後いくら探せども、君たちが百話を語り、一夜を明かしたあの集落と荒れ寺は、忽然と姿を消し影も形もなくなっていた。そんなものは最初から存在しなかったとでもいいたげに。 あの百話目の真相は何だったのか。 彼の地に眠る何かの恨みが形為されたものだったのか、百寄夜會の企てであったのか、或いは夏の夜の熱気が見せた幻覚だったのか。
 鬼を談ずれば、怪にいたると言えり。 では果たして、鬼とは一体何だったのか? 全ては想像を巡らせるより他にはない。 そんな、或る暑い夏の出来事であった。


【解説】

 葬送法師が本当に覚えていないのか、ただすっとぼけているだけなのかは不明だ。転じて、決戦で戦った彼らが本当の葬送法師達であるのか、葬送法師達の姿を模して現れた別の何かであるのかもまた不明だ。 葬送法師が百物語を開いた理由は、忘れ去られた、かつて妖怪と呼ばれた人々への鎮魂の為である。百物語という恐怖を人に与えることで、忘れられた妖怪達への供物としたのだ。反面、本当に祟り神と化した怨霊を顕現させる必要もないと考えている。安らかに眠っているのであれば、わざわざ叩き起こすこともないだろうと考えているからだ。少なくとも、この夏の日に於いては。