対決!パイレーツ大海戦


━━真紅海賊団 vs サイレントサイエンス、勃発!

1.エントリーとシナリオ概要

【シナリオ概要】


 プライムバースに姿を現した真紅の海賊団。 世界各地で強奪を繰り返す彼らに対抗する為、協力を申し出たのはサイレントサイエンス!? だが彼らもまた海賊! 裏切りが裏切りを繰り返す、海賊どもの陰謀劇が幕を開ける! ヒーローよ! 平和を、宝を、勝利を、全てを! 奪い取れ!

【事前情報】


 クエリー:4 チャレンジ:3 初期グリット:5 リトライ:3
 想定時間:6〜7時間 推奨経験点:50点前後を想定。       より経験豊富なPCがいる場合、エネミーを随時強化すること。

【GMに要するルールブック】


・基本ルールブック(R1)・学園マッドネス(R2)・パワー・トゥ・ザ・ピープル(D1)・ファインド・ウィークネス(D2)

【エントリー】

【PC1:真紅海賊団の侵攻】

 君は世界に名高い零等星級ヒーローだ。 世界各地で謎の海賊団による襲撃が発生。「真紅海賊団(クリムゾン・バッカニアーズ)」と名乗る彼らは、時代遅れの帆船で、しかし世界中のどこにでも──文字通り陸の上であろうとも姿を現し、蹂躙と強奪の限りを尽くした。 かくして国連へと呼び出されたヒーローである君に、協力を申し出る者がいた。「地球の七割は海だ。そしてアタシたちは、その海を誰よりもよく知っている」 名乗り出たのは海賊国家サイレントサイエンス国家元首、ビアシャラ! 果たして、彼女たちを信じていいものか?

【PC2:青い海からの転校生】

 君は日本の超人種自治区・己護路島在住のヒーローだ。(麻神学園の生徒/己護路島に居住地を持つなど) 己護路島が有する超人種の学園、麻神学園ヒーロー科に転校生が入学してきた。 転校生の名はネムロン。 ヴィラン国家、サイレントサイエンスから来たという少年だった。

【PC3:奪われた赤い糸】

 君はコル・タウリの祝福を受け、アリアドネの糸を有するヒーローである。 運命を超える力を持つ君は、しかし今、傷つき倒れている。 君は敗北したのだ。 君を打ち負かした男──真紅海賊団の船長、キャプテン・クリムゾンは、君からアリアドネの糸を奪い取った。 君は何としても、君の力を取り戻さねばならない!

2.導入フェイズ

【エントリー0:彼こそが海賊】

登場:なし(マスターシーン)舞台:蹂躙されるドバイ

【描写】

 ドバイが燃えている。 立ち向かうガードマンはカットラスに貫かれ、逃げ惑う幼児はラッパ銃に頭を撃ち抜かれる。 命乞いをする富豪は生きたまま燃やされ、物陰で息を殺していた淑女は引き摺り出され何処かへと連れて行かれた。 空より迫った武装ヘリが散弾を浴びせる。 だがそれは船体に傷一つつけることはなく、反対に放たれた大砲の砲撃がヘリの土手っ腹をぶち抜いた。 爆炎が上がる。
 蹂躙、惨殺、そして略奪。 赤い帆船の海賊達は、強欲と残酷の限りを尽くす。
 一度、赤い光が瞬いた。それは街の中で、激しくぶつかり合ったらしかった。 けれどその光はやがて絶え、獰猛な金の瞳を持った髭面の男が勝鬨を上げる。それに応えるように、血塗れの船員たちが謳うように声を上げた。幾人も、幾人も、幾人も──…。
 地球上でも有数の、豪華絢爛な富豪都市に、動くものが誰もいなくなって、ようやく。 真紅の海賊団を乗せた、赤い帆船は動き出す。 真っ赤な、真っ赤な、血よりも真っ赤な帆が、黒煙が上がる都市を背に、風もないのにぴんと貼る。 船首で、船長が吠えた。「真紅海賊団(クリムゾン・バッカニアーズ)、出航だ!」 先ほど瞬いたものと似た、けれど別種の赤い光が船から放たれ──光が収まった時、そこにはもう、惨劇の跡しか残されてはいなかった。

 遥か遠方の深海から、それを見届ける者たちがいた。 UFOのように巨大なヘルメットを被った、筋骨隆々の男が理知的に言う。「……ダメだな。目視及び観測装置全てを用いたが、完全な観測不能。稚拙な結論になり業腹だが、あの『15世紀半ば頃の装備しか有していないと思しき帆船』は、『我々の知らない力で姿を消した』と言わざるを得ない」 背から機械のアームを生やした美女が考え込みながら言う。「あんたの目でもそう見えちゃうなら、お手上げね。仕方ない、ひとまずここは撤収して、本国に状況の報告を──」 潜水艦内にアラームが鳴り響く。赤く明滅する照明が、彼らに異常事態を告げる。 女が引き攣った笑みを浮かべ、計器へ視線を向ける。ヘルメットで隠れてはいたが、男も似たような表情を浮かべていた。「……さっき、何て言ったっけ?」「……撤回させてくれ。『我々の知らない力で地上から姿を消したが、数十秒後に、海底6000km地点に新たに姿を現した』」「はーい全速旋回! 撤収撤収ー!!」 サイレントサイエンス幹部、ザ・スペキュラーとミセス・トキシックは、尻尾を巻いて逃げ出した。
【エンドチェック】□真紅海賊団が暴れている□サイレントサイエンスはそれを観測している

【エントリー1:真紅海賊団の侵攻】

登場:PC1舞台:アメリカ・国際連合本部ビル

【状況1】

 ドバイで起きたという侵略と強奪の映像が、ノイズと共に消えていく。 短い映像だったが、それは胸糞悪くなるような悲惨な光景だった。そこで暴れる真紅の海賊団の姿を、君は確かに目の当たりにするだろう。 君を呼び出した、国連長官の男が重々しく告げる。「現地に駐留していたスペシャルフォースの遺品から回収された映像だ」「敵仮想名称、真紅海賊団(クリムゾン・バッカニアーズ)。これまでどのヴィラン組織でも確認されておらず、同種の能力に関しても確認出来ていない。一旦、我々は彼らを敵性ハービンジャーと分類することにした。地獄兵団(アビス・スクアドロン)と同じ、強奪・侵略を目的として地球へとやってきた界賊(スペース・パイレーツ)──つまり、世界の敵だ」

【状況2】

「彼らはこれまでに、地球各地──陸の内外を問わず、どこにでも出没し、その都度地獄を作り出してきた」 モニターの中に、侵攻を受けた都市群が映し出される。ロシアのサンクトペテルブルク、トルコのイスタンブール、イギリスのバーミンガム、エジプトのカイロ、マレー諸島……世界各地、場所を問わないさまざまな地で、悲劇が生まれている。「君の評判は知っている。力を貸してほしい。もちろん、我々も協力は惜しみはしない。これは世界の問題だからな」 だが、君はその言葉に一抹の欺瞞があることを知っている。 この真紅海賊団の侵略は、一般には詳細が伏せられ、謎のヴィランによる襲撃としてしか報道されてはいないのだ。

【状況3】

「本件のバックアップだが、力を貸したいと名乗りを挙げた国があった。無論、他の国が非協力的という訳ではない、それは念入りに伝えておこうと思うが──」「うだうだ言い訳並べてんじゃないよ、みみっちい男だね」 入口の扉から、勇ましい女の声がする。視線を向ければ、そこに立っていたのは、サイレントサイエンス国家元首・ビアシャラだ!「確率の話サ。奴は地球のどこにでも姿を現す、そして地球の七割は海だ。アタシたちは、その海を誰よりもよく知っている」「世界の危機ってやつなんだ。アタシの個人的な事情は水に流してやるよ、ヒーロー。一緒に世界の敵ってやつを、やっつけてやろうじゃアないか」 ビアシャラはそう告げ、君に握手を求めて右手を差し出した。 しかしその眼差しは、ギラギラと煮えている。

【エンドチェック】

□真紅海賊団のことを知った□国連から依頼を受けた□SSと手を組むことになった

【解説】

 今回の案件の依頼人(後で裏切る)である国連との会話、協力者(後で裏切る)のビアシャラとの初顔合わせシーン。どちらも微妙に信用しきれないような立場として演出すると良いだろう。その上で、クリムゾンの暴虐は徹底的にやるとよい。
セリフ例)「彼らの恐ろしい点は、その能力の理屈と全貌が完全に不明な所にある。15世紀頃のものにしか見えない帆船と戦闘装備に、何故最新鋭の兵器が敵わないのか。何故、船の形をしていながら、陸地にすら姿を現すことが出来るのか……」共通敵といえる存在を前にしても、人が一丸になることは難しい。それが世界規模であれば尚のことだ「無用な混乱を避ける為だ。皆が皆、君のように覚悟を決められる訳ではない」

【エントリー2:青い海からの転校生】

登場:PC2舞台:己護路島

【状況1】

 日本の超人種自治区、人工島・己護路島。 超人種の楽園とも呼ばれるその自治区では、さまざまな国を出自に持つ、60万人もの超人種たちが生活を送っている。超人種が自由に生きていくにはまだまだ壁が多いというのが、世界の苦い実情だ。 その為、この島に多国籍な人々が出入りするのはそう珍しい話ではない。ないのだが…。 だが流石に、先日麻神学園に入学してきたという転校生のことは、島の随所で評判になっている。 転校生の名はネムロン。ヴィラン国家と悪評高い、サイレントサイエンスからの転校生だというのだ。

【状況2】

 ある日、君は己護路島内で道に迷っていた青い髪の少年を見つける。 貫頭衣にマントという装いは、彼が異国の地から来たことを見るものへと伝える。慣れない異国の地で、彼は困ったようにオロオロとしていた。 道案内を買って出た君に、少年は申し訳なさそうに頭を下げる。「麻神学園の校舎って、いっぱいあって分かんなくなっちゃって……ごめんなさい、ありがとう」「ぼくはネムロン。あなたは?」

【状況3】

 かくして君はネムロンと仲良くなった。 最初はどこか一線を引いている様子だったネムロンも徐々に、君に心を開いていき、少年らしい姿を見せるようになった。 そうしたある日、君は夕陽に照らされた海岸で、ネムロンにこんなことを打ち明けられた。「本当はね、話しちゃいけないことなんだ。だけど、君にだけは教えてあげる」「己護路島に眠っている秘密の宝物って、知ってる?」「ねえ、僕と君で、それを探しにいかないかい?」

【エンドチェック】

□ネムロンと親しくなった□ネムロンから己護路島の秘密の宝のことを聞いた

【解説】

 この宝とは、己護路島の設計者であり、SSの先代国家元首、ドクター・ドミニオン(ベクター・ドミネ)が下水道のどこかに隠したという、原子力潜水艦のことだ。(R2・85ページ参照) PC2は麻神学園の生徒でもいいし、そうでなくてもいい。麻神学園の生徒であるならば、ネムロンが転校してきた日のシーンを交えてみるのもいいだろう。

【エントリー3:奪われた赤い糸】

登場:PC3舞台:真紅海賊団の船

【状況1】

 君は悪夢を見ている。 君はドバイの地にて、キャプテン・クリムゾン率いる真紅海賊団に敗北した。囚われの身となり、そして──君の持つ力、アリアドネの糸を、奪われた。 その時の悪夢を、今、君は夢に見ている。

【状況2】

 目を覚ませば、そこは薄暗く、じめっとした、濃い潮の匂いのする檻の中だった。貨物と共に積み込まれた檻の鉄格子はフジツボと錆に覆われているが、今の君の力ではびくともしなかった。 ここは真紅海賊団の船、その船底にある檻である。 足音が響き、海賊帽を被った長髪の男が、林檎を食べながら姿を現した。獰猛な顔をしたその男こそが、キャプテン・クリムゾンだ。「よーお、御同類。気分はどうだい?」

【状況3】

 君はクリムゾンとその部下によって、甲板まで連れ出される。周囲は地平線まで続く青い海が広がっていた。陸地は全く……いいや、違う。木も草も生えていない、満潮になってしまえば沈んでしまうだろう小さな砂の島が、数十メートル先に確認できるのみだった。 船縁には一枚の板が突き出すように貼られている。PC3は部下たちに追いやられながら、その先へと歩かされる。 足元に広がっているのは深い深い海だ。鮫と思しき巨大な魚影が遊泳しているのも目に入る。 海賊たちはニヤニヤと笑って君を追いやる。その中から、クリムゾンが歩み出た。「俺たちの流儀だ。慈悲をやろう、飢えてじわじわ死ぬのは苦しいからなァ」 クリムゾンは笑いながら、君の足元に古臭い短銃を転がす。中には一発だけ弾が込められていた。「で、最後に言い残すことはあるかい?」 その背後には赤い帆がマストに張られ、悠々と翻っている。

【状況4】

 かくして、君を置き去りに真紅海賊団は姿を消した。 命からがら小島へと辿り着いた君だったが、助けに通りかかるような船もなく、君自身の力も残されてはいない。 絶望的だ。だが、諦めるわけにはいかない。 君はなんとしても、自らの力を取り戻す為の覚悟を固めた。

【エンドチェック】

□キャプテン・クリムゾンにアリアドネの糸を奪われた□小島に置き去りにされた□アリアドネの糸を取り戻す覚悟を固めた

【解説】

 PC3のアリアドネの糸が何に宿っているかに応じて、奪われ方は調整しよう。目玉を引き抜かれても良いし、力だけを奪われたことにしてもよい。 このアリアドネの糸は、シナリオ中盤で取り戻すことができる。永続的に奪われるわけではないという事は、事前にPLに伝えておけば、ストレスが少なく済むだろう。

3.展開フェイズ

【クエリー1:敵か味方か】

登場:PC1舞台:国連所有のドック

【状況1】

 ビアシャラとサイレントサイエンスの科学者たちが、国連所有のドックで自国の艦(ふね)の調整を進めている。他国の関係者は、それを興味深げに、しかしどこか畏怖を帯びた目で見つめていた。
 そんな様子を、君は上階から見下ろしている。君の前では、G6から派遣されてきたという職員が、険しい顔を浮かべていた。 国連はサイレントサイエンスの協力を承認した。海をよく知る彼らと共に、君は真紅海賊団の対策へと当たることになった。 だが、それに強い反発を示す組織があった。珍しくも、それはG6であった。「我々は、彼らとあなたの協力に反対です」 チェインはドックを見下ろしながら、苦い顔で言い放った。

【状況2】

「サイレントサイエンスは、先代国家元首であるドクター・ドミニオン治世下の頃から不安定な組織ではありました。しかし、ビアシャラに代替わりして以降、その性質は更に過激なものになったと言っていい」 G6職員が示すデータの中には、新生SSがこれまでに引き起こしてきたさまざまな事件や、ヒーローとの戦いの様子が残されている。「恨みというのは強い原動力です。ビアシャラがヒーローを易々と許すはずがありません、我々はそれをよく知っている」「国連にとって、ヒーローとは、いえ、超人種とは都合の良い消耗品の武器でしかない。あなたが背後からビアシャラに刺されようと、目先の脅威がなくなるのであれば、彼らにとっては問題にならない。だから反対なのです」「……我々は、『あなた』が心配だ」 オフレコでしか話せないだろう懸念を君に打ち明けるG6職員。 その言葉に、君は何と答えよう?

【状況3】

「しかし…!」 G6職員が追い縋ろうとした時、ドックにアラームが響く。それと同時、G6職員の持つ端末にも情報が入った。確認したG6職員は、苦々しげに顔を伏せ、呻くように言った。「日本の己護路島に真紅海賊団が出現しました。……時間がありません。ただちに現地へ向かってください、ヒーロー…!」『ヒーロー! 出航だ、艦(ふね)に乗りな!』 ビアシャラの勇ましい声がアナウンスに混ざる。 人々の中にどんな煩悶があろうとも、世界はそれを待ってはくれない。

【エンドチェック】

□G6職員の言葉に答えた□グリットを1点獲得した

【解説】

 G6は国家に縛られない国際組織である故に、ヒーローの味方としての立場を保てる。反面、組織間抗争における立場はまだまだ弱い。このシーンはヒーローにビアシャラや国連がおいおい裏切る可能性があることを示唆するシーンでもある。

【チャレンジ1:パイレーツ・オブ・ラビリンス】

登場:PC全員舞台:己護路島

【状況1:PC2】

 君はネムロンと共に、己護路島の宝物を探している。 それは水中のどこかにあるはずだとネムロンは君に言い、君の手を取って海へと潜った。少年が水中で指笛を吹けば、イルカが君たちのもとへと集まり、君は彼らと共にひとときの海底探索を楽しんだ。 人工島である己護路島は、巨大な船である。海底へと垂れる柱のように巨大な碇のもと、君は海面を見上げた。己護路島の底面に、何かにつながるハッチのようなものがあった。 しかし、次の瞬間、イルカたちが怯えたように君たちから逃げていく。 何事かと海の先を見れば──赤い帆を有した帆船が、信じられない速度で、深海から己護路島へと迫っていた!

【状況1:PC1】

 ビアシャラと共に君が己護路島へと辿り着いた時、すでに真紅海賊団による己護路島襲撃は始まっていた。 だが、伊達に世界最大の超人種自治区なわけではない。麻神学園の生徒たちの活躍もあり、ギリギリの所で戦力は均衡していた。今から駆けつければ、彼らを退けることが出来るかもしれない!「サイレントサイエンス、敵船後方に浮上開始! 横っ面につけんじゃねえぞ、蜂の巣にされるからな! 奴らの前方海面に足場を同時展開! ヒーロー様を送り込んでやれ!」「アイアイサー!」「PC1ィ! 挟み撃ちだ、支度しな!」

【状況2:己護路島】

 己護路島沖に姿を現した真紅海賊団は、島へと激しい艦砲射撃を繰り出し、揚陸しようとする。しかし己護路島の超人種たちの手により、なかなかうまくはいかない。 そうしている間に、海中から浮上したサイレントサイエンスとPC1が彼らの行方を阻んだ。 キャプテン・クリムゾンは高笑いして言い放った。「イイじゃねェか、殺し甲斐がある! 虎の子のコイツの試し撃ちが出来そうだぜ、野郎ども!」 そうして彼が取り出したのは──PC3のアリアドネの糸! その力が行使され、理不尽にも戦場は、真紅海賊団有利に状況を変えていく…!

【状況2:PC3】

 クリムゾンたちに捨て置かれてから、どれだけの時が経っただろうか。太陽と月が幾度か空へ上がっては消えるのを、君は何もない小島で呆然と眺めていることしか出来なかった。 疲労と空腹は限界を迎えつつあった。ここで、何もできず、自分は散るしかないのだろうか…? 極限の精神状態へと陥った時──意識の深層で、君は、君の力の片鱗を感じとった。どこかで、君の力が、誰かに使われ始めたのだ。誰になど言うまでもない。だが、君と糸の繋がりは、まだ完全に途絶えてはいなかったらしい。 君は意識を集中させ、糸の力を探る。それはさながら、迷宮に張り巡らされた、か細い糸を辿るように。
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【チャレンジ判定】

 この判定は各々のPCが決められた判定を行う必要がある。【PC1・PC2判定】:真紅海賊団と戦え!…任意のパワーの判定【PC3判定】:糸の力を辿り、糸の元へ向かえ!…〈霊能〉-10%
失敗時:時間がかかってしまう。次のチャレンジ判定でグリットが使用できなくなる。――――――――

【状況3】

 判定に全て成功すれば、PC3は混乱の最中の己護路島へとワープすることになる。 PC1とPC2、新生SSたちが、真紅海賊団といままさに戦っている、その海戦のど真ん中に放り出されることになるのだ。 PC1とPC2が判定に成功することで、状況はかろうじて均衡を保つことができる。だがそれでも、依然戦いは泥沼のままに続く。 そうした戦いの中で、PC2は、戦うビアシャラの姿を見つめていたネムロンが、覚悟を決めたように海へと飛び込むのを目にする。 無謀な行為だ。君はネムロンの後を追うことにした。

【エンドチェック】

□PCたちが己護路島に集まった□サイレントサイエンスvs真紅海賊団が始まった□PC2がネムロンのあとを追った

【解説】

 クリムゾンとの戦闘シーンその1。 PC2は己護路島の超人種の一人として陸地で戦うのかもしれないし、他のヒーローたちと同じくクリムゾンの船の上へとくるのかもしれない。演出は自由にやって良い。

【クエリー2:誰でもないものの艦】

登場:PC2舞台:己護路島地下下水道

【状況1】

 ネムロンはPC2と共に見つけた、己護路島下部のハッチから、その中へと入り込んだ。君もまたその中へと潜り込む。 ハッチを抜ければ、いかなる技術か、中の空間に水は入り込んではこなかった。君が立ち入ると同時、暗い通路に明かりが灯る。離れた場所を光が移動しているのが見える。ネムロンはこの先へと向かったらしい。 外では、真紅海賊団との戦いの音が遠く響いていた。

【状況2】

 ネムロンの後を追えば、やがて巨大な地下空間へと辿り着いた。 それはあまりにも巨大なドックだった。そしてハッチの中には、巨大な、原子力潜水艦が鎮座している!「やっと見つけた……本当にあった!」 息を切らしたネムロンが、感極まったように声を上げる。 彼はドックの中の青い光を背に、君へ振り返って言った。「この原子力潜水艦は、サイレントサイエンスの先代国家元首、ドクター・ドミニオンが、己護路島建設時にこっそりと隠してた艦。その名を『ノーチラス』!」

【状況3】

 三十年近く、下手をすればそれ以上昔に作られたはずのノーチラスは、しかし現代でも十二分に通用する性能を誇っていた。それは君たち二人だけでも、この船を十分動かすことが出来るほどにだ。 操縦桿を前に、ネムロンは、深い色を湛えた青い目を君に向け、尋ねた。「ねえ、PC2。大切なものを守りたい時に、君は手段を選ぶのかい?」「僕はもう選ばない」「──いっしょに行こう。僕らの世界を、守るんだ!」 その問いに、君の答えは…。

【エンドチェック】

□潜水艦ノーチラスを発見した□ネムロンの問いに答えた□グリットを1点獲得した

【解説】

 己護路島の宝と呼ばれる、原子力潜水艦ノーチラス号をPC2が発見するシーン。PCの協力を得られれば、ネムロンは喜んでPC2とともにノーチラス号に乗り込み出撃していく。PC2の協力を得られなければ、残念そうにしながら、自分だけでノーチラス号を出撃させてしまう。

【クエリー3:糸にかける望み】

登場:PC3舞台:戦闘中・真紅海賊団船上

【状況1】

 君たちと真紅海賊団の戦いは続く。 砲撃、爆音、号令、怒声。さまざまな戦場の音が渦巻くその空間の中で、君はついに、キャプテン・クリムゾンと対峙した。「生きてやがったか、PC3! 悪運の強いやつだぜ!」 君の姿を見、クリムゾンは凶悪な笑みを浮かべる。そして手にした『PC3のアリアドネの糸』を見せつけるように掲げた。「ヒャーハハハ! こいつを取り戻しに来たんだろう? だが残念、こいつはもう俺様のモンだ! 一度負けた上に! 糸の力無しで! どうやって俺様に勝とうってンだ、エエッ?」

【状況2】

「ケッ、糸に選ばれただけのことはあるってことか。だったらテメェだって分かってンだろうがよォ!」 キャプテン・クリムゾンは凶悪に吠え、君へと攻撃を仕掛けながら問う。「俺たちは選ばれた! ならその力を何に使う? 決まってる! 『自由』だ!」「俺たちは誰にも縛られない。永遠の自由、永遠の航海、永遠の浪漫、永遠の夢! それが俺たちが手に入れたもの! 俺たちは何でもできる!」「お前はどうだ、いい子ちゃん。お前はこの糸に何を望んだ? 言ってみな、俺たちゃ大して変わりゃしねえんだぜ!」 君の眼前に曲刀を突きつけ、吠えるクリムゾン。 君は何のために糸の力を求めたのだろうか、何のために糸の力を使うだろうか? クリムゾンの背後では、真紅の帆が、真っ青な空の下で悠々と翻っている。

【エンドチェック】

□クリムゾンの問いに答えた□グリットを1点獲得した

【解説】

 強大すぎるアリアドネの糸の力をPCは何のために使うのか? 世界線渡航者(テセウス)としての資質を得たPCが常に対峙することになる王道のクエリーだ。ビシッと決めてもらおう。

【チャレンジ2:対決!パイレーツ大海戦】

登場:PC全員舞台:己護路島海上

【状況1】

 PC3がクリムゾンの問いに答えた直後だった。 海面が揺れ、水面を爆ぜさせながら、姿を現す鯨の如き巨体! 突如として海中から急浮上したのは潜水艦! 表面に刻まれる名は『ノーチラス』!「なんだ!? 新手か!? 次から次へとメンドクセェなァ!」 クリムゾンが苛立たしげに吠える。真紅海賊団の船は辛うじて直撃を免れはしたが、体勢を立て直すために動きが鈍っている。「今だ!」 ビアシャラの掛け声と共に、サイレントサイエンスの潜水艦から多数の魚雷が発射される。それは真紅海賊団の船の船底へと着弾し、赤い船が軋みをあげ、船員たちがバランスを崩す! 今がチャンスだ!
――――――――

【チャレンジ判定】

判定1:真紅海賊団に攻勢をしかけよう!…〈白兵〉-20% or 〈射撃〉-20% or 〈霊能〉-20%(PC2が行う場合、〈射撃〉+30%での判定とする)判定2:クリムゾンを取り押さえろ!…〈白兵〉-20% or 〈射撃〉-20% or 〈霊能〉-20%――――――――

【状況2】

「……は? 俺が? 無敵の真紅海賊団(クリムゾン・バッカニアーズ)が、押されてる…? ……ッ、ンな訳あるかァアア゛ア゛!!!!!!」「おい! クソ糸! 何してやがる!! もっとだ!!! もっと力を寄越せ!!!! 見てンだろォが寄越せっつってンだろクソ牛野郎ォ゛オ゛ア゛!!!!!!!!!!!」 押さえ込まれたクリムゾンが絶叫をあげる! その怒号に応えたのか、あるいはただ翻弄して嘲笑っているだけなのか、真紅の帆船が更なる光を放つ! だが、その時──事態が動いた!

【マスターシーン】

「頃合いだ。──仕掛けるぞ、野郎ども!」「わっかりやしたァ!! 姉御!!」「艦長と呼びな!」 ビアシャラが眼帯を引き剥がす。その下から顕となった邪眼が光を放つ! 空がかき曇る。どす黒い暗雲に包まれた己護路島海上に大粒の雨と風が吹き荒れる。瞬く間にそれは嵐へと規模を変えていく! 同時、海がとぐろを巻く。始まりは小さな流れでしかなかったそれは、驚くべき速度で、己護路島全土を飲み込むほどの大渦へと形を変えた! その波の流れは真紅海賊団の船を、己護路島そのものを、激しく揺らす! だが、それだけではなかった!「トキシック! スペキュラー!」『『アイ・アイ・サー!』』 海底にてその大渦の発生を確認していた、別働隊の二名が声をあげる。『それでは皆さん!』『ご唱和ください!』『せーっの!』『ポチッとなー!!』 スイッチが押された!
「「サイレントサイエンスの科学力はァアアアア世界一ィイイイイ!!!!!!!!!!!!」」
 真紅海賊団の船、その真下の海から、巨大な触手が姿を現す──違う、それは、ヒトデの足だ! 海中から姿を現したのは、真紅海賊団の船を遥かに超える巨躯を持った、巨大なスタデンジャーだ!!! 巨大なヒトデ状の生物兵器は、真紅海賊団の船へとしがみつく! 船が軋みを上げて崩れていく! 船員たちが砲撃を、銃を、銛を放つ! 効いてはいた、確かに! しかしそれでも、そのスタデンジャーは巨大が過ぎた! 耳を覆いたくなるほどの船の軋み。キャプテン・クリムゾンの悲痛な叫び。実際のところ、それはほんの僅かな時間だったのだ。巨大スタデンジャーの腕が、赤い帆がたなびくマストをへし折った!! クリムゾンの船が大破する。真紅海賊団、キャプテン・クリムゾン、そしてヒーローたちの体は大渦が荒れ狂う海原へと放り出される…!!「アリアドネの糸、確保しました!」「あとは奴らを消すだけだ。ネムロンを呼び戻せ」「わっかりやしたァ!! 姉御!!」「艦長と呼びな!!」

【状況3】

 PC2は、ノーチラスの中から、海面上の大惨事を見ていた。海中では、赤い帆を奪い取ったスタデンジャーが、別の潜水艦と共に深海へと逃げていくのがわかる。「PC2さん、ごめんね!」 その言葉と共に、ネムロンがノーチラスの操縦桿にトライデントを突き立て破壊する。少年は最後に幼く愛らしい笑顔を君へと向け──外部へと繋がるハッチを開けた! 開いたハッチから、ノーチラス内部へと水が流れ込む! それだけではない、ノーチラスの内外では激しいエラー音が発生し、潜水艦内の原子炉が過剰に駆動していることを、たった一人のクルーへと知らせる! このままでは、エネルギーの過剰生産に耐え兼ね、ノーチラスは大爆発するだろう。原始力エネルギーを積んだ船が爆発すれば、それは己護路島をも巻き込んだ大惨事になってしまう! このノーチラスの危機は、海中へと放り出されたPC1・PC3の目にも認識できるだろう。時間がない、動けるのは君たちだけだ!
――――――――【チャレンジ判定】判定3:ノーチラスの爆発を止めよう…〈科学〉――――――――

【状況4】

 君たちの活躍のおかげで、ノーチラス号は爆発せずにかろうじて持ち堪えた。 しかしその間に、サイレントサイエンスはキャプテン・クリムゾンの赤い糸を奪い、深海のどこかへと姿を消してしまった。 荒れ狂っていた海は静寂を取り戻し、皮肉なほど青い空が君たちを見下ろしている。「あんまりだ……ひでえ、ひでえよ、こんなのってねえよ……! ちょっと殺したり奪ったりしただけじゃねえかよ…! あんまりだぁ……!!!」 力を失い、船を失ったキャプテン・クリムゾンの、情けない泣き声がおいおいと響く。 サイレントサイレンスは裏切り、新たなる力を得て、君たちの元を去った。

【エンドチェック】

□サイレントサイエンスが裏切った□クリムゾンの身柄を確保した□クリムゾンの赤い糸は、サイレントサイエンスの手に渡った。

【解説】

トキシック「ほーっほっほっほ私たちの手にかかればこれぐらい朝飯前のお昼ご飯三杯目よー!!」スペキュラー「わーはっはっは三日間寝ずに頑張った甲斐があるというものー! ドミニオン陛下見てますかー!?」 サイレントサイエンスの真の目的(己護路島への攻撃および真紅海賊団からのアリアドネの糸の奪取)が明かされ、形成が逆転するシーン。ネムロンも一緒に気持ちよく裏切ろう。 PC3のアリアドネの糸は、このイベントでクリムゾンの手から取り戻すことができる。反対に、クリムゾンはアリアドネの糸の加護を失う。

【クエリー4:裏切り裏切られ】

登場:PC全員舞台:一週間後・G6

【状況1】

 己護路島沖での戦いと、その決着。サイレントサイエンスが深海へと消えてから、一週間が経った。 キャプテン・クリムゾンは身柄を捕縛され、拘禁されている。いずれロックウェイブ島へと搬送されることになるだろう。糸と船の力を失った彼は、船員ともども気力を失い、すっかり抵抗の意志をなくしていた。 君たちもまた、この一週間の間に療養を行い、情報を交換した。今は協力し、サイレントサイエンスの行方を追っている。だが、その足取りは未だ掴めずにいた。

【状況2】

 そんな時、G6の職員が君たちの前に姿を現す。それはPC1がかつて会ったチェインだ。「ヒーローの皆さんに、残念なお知らせをしなければなりません」「未だ公表されてはいないことですが、国連でキャプテン・クリムゾンを取引を行い、対サイレントサイエンス戦の協力者にさせようという案が出ました」「PC3さんが、ご自身の力の痕跡を辿って己護路島に姿を現したのと同じことを、キャプテン・クリムゾンにもさせようという案のようです。……くそッ」 チェインは悔しそうに机に拳を叩きつける。 「すみません」と謝罪をし、彼は君たちへ視線を向けた。「今なら、まだ間に合います。同意するのも、抵抗するのも。……判断は、皆さんに……お委ねします」

【状況3:国連に反発する場合】

 君たちの反対意見を受け、国連長官の男は言う。「サイレントサイエンスという危険国家が力を得てしまった以上、コトは国際問題となる。政治のことは我々に任せてもらいたいものだがね」「わかった、わかった。この案は一旦保留にしよう」 立ち去り際、男が小さく「サイレントサイエンスにみすみす裏をかかれた分際で、偉そうに…」と毒づくのが耳に入る。 どう動いても良い。君たちは彼らの犬ではないのだ。

【状況3:クリムゾンと協力する場合】

 協力を求めるため、クリムゾンのもとへと足を運べば……暗い牢獄の中、気狂いのように調子外れの鼻歌をうたう男の姿が目に入る。意気消沈し、すっかりと落ちぶれた、キャプテン・クリムゾンだ。「なんだよ。いまさら俺に何の用だ? 殴るか? 殺すか? ケツは勘弁してくれ」「俺ァ負けた、負けた負けた負けた! 船も沈んじまったしよーゥ。なァーにがアリアドネの糸だ、負けちまったじゃねーか。はーあ、もうだめだ……おしまいだ……」 すっかり悲観的になっているようだ。さて、どう話を切り出そう? 君たちから話を聞けば、クリムゾンは元気を取り戻し、調子良く作戦に同意する。

【エンドチェック】

□国連に反発した/クリムゾンと協力した□グリットを1点獲得した

【解説】

 世界の外側から来た脅威と、地球の内側にある脅威とでは、対処の仕方が変わる。それに振り回される市民にとってはたまったものではないのだが。 PCたちがどちらの選択を選ぶかはもちろん自由にして良い。危険を覚悟の上で一時的な共闘関係を得るのも、周囲への危険を鑑みて暴走する者を止めるのも、どちらも英雄的行為には違いない。

【チャレンジ3:深海の魔物】

登場:PC全員舞台:海

【状況1:自力で探す場合】

 君たちは国連の協力を退け、自力でサイレントサイエンスの捜索に手を尽くすことにした。 この一週間の間、君たちだってただ見守っていたわけではない。すでに調査は始めているし、少しずつ情報は手に入っている。これはこの一週間、君たちが何をしていたかの判定と言い換えてもいい。 各々の傷も癒えた。さらにはPC3というアリアドネの糸の適合者もいる。世界の支援が期待できない今、君たちは君たちの万全を尽くし、サイレントサイエンスを探す。君たち自身の強い意志で!

【チャレンジ判定】

『判定:自力でサイレントサイエンスを探そう』判定1:地球上で異常が起きているエリアはないだろうか?…〈作戦〉-20%判定2:アリアドネの糸の力の反応はないだろうか?…〈霊能〉判定3:彼らがいるのは海底のどこかだ。水中戦になるだろう。今のうちにノーチラスを修復しよう。…〈科学〉(成功時:PCは全員「移動適正:水中」を有しているという扱いで決戦フェイズを開始する)(失敗時:成功時のメリットを得られず、PC全員は決戦1ラウンド目をターンカウンタ10から開始する)


【状況1:キャプテン・クリムゾンと協力している場合】

 君たちはキャプテン・クリムゾンと協力し、彼に糸を辿らせることにした。だがこの男、てんで集中力がない。すぐに別のことに気を取られ、船員達と馬鹿騒ぎをし、ここぞとばかりにラム酒を要求する始末。 君たちの手で、この男を集中させねばならない。

【チャレンジ判定】

『判定:キャプテン・クリムゾンに糸の力を辿らせよう』①PC達は1人1回ずつ、任意の技能で「キャプテン・クリムゾン」に集中させるための判定を行う。判定に成功する都度、「キャプテン・クリムゾン」の霊能の値に+10%の補正が発生する(最大+30%)②その後、キャプテン・クリムゾンは〈霊能〉で判定を行う。PCは支援を行なっても良いし、他人に使用できる支援パワーがあるのであれば適応しても構わない。キャプテン・クリムゾンの〈霊能〉の値は初期時点で30%である。③キャプテン・クリムゾンの〈霊能〉判定が失敗した場合、グリットを使用した振り直しや成功率の上昇を宣言しても良い。効果はPCのルールに準ずる。キャプテン・クリムゾンの〈霊能〉判定が成功した時、このチャレンジ判定は成功となる。(成功時:PCは全員「移動適正:水中」を有しているという扱いで決戦フェイズを開始する)(失敗時:決戦1ラウンド目を、サイレントサイエンスのキャラクターはターンカウンタ1/それ以外はターンカウンタ10から開始する)


【状況2】

 君たちはサイレントサイエンスの居場所をついに突き止める。 それは海底の奥深く、人類未踏の地である更に深部、地球の内側ともいうべき地下空洞内に、多数の異常エネルギー反応があることが分かる。 クリムゾンの協力を得ているのであれば、その力を借りる形で。そうでないのであれば、修復されたノーチラス号と、PC3のアリアドネの糸の力を使うことで、君たちはそこを目指して出航することになる。 目指すは深海の魔物が息を潜める、地球の空洞だ。

【エンドチェック】

□地球の空洞を目指して出発した

【解説】

 クエリー4でPCが選んだ内容によってチャレンジ判定の内容が変化するチャレンジ。PCたちの反撃を活躍をたっぷり楽しんでもらうと良いだろう。自力で探す場合は麻神学園の生徒や己護路島の超人種の力を借りることもできるかもしれない。

4.決戦フェイズ

【決戦フェイズ:敵は海賊】

登場:PC全員舞台:地球の空洞

【状況1】

 君たちは数多の障害を乗り越え、ついに地球の空洞へと辿り着く。 一切の光が届かない最深部、上も下もない、宇宙と見紛う真っ黒なその空間で、大きな何かが蠢いていた。ぎょろりと赤い巨大な目が君たちを見下ろす。それは、あの時の巨大スタデンジャー! 海底にビアシャラの笑い声が響いた。『遂に来たね、ヒーロー。だが遅い、遅すぎだ! 大方国連のジジイどもに足を引っ張られたんだろうね、同情するよ』『おかげさまでアタシたちは、ちゃあんと準備を進められた』 深海地下空洞に、赤い光を宿した潜水艦が浮かび上がる。 一隻、二隻、三隻……いや、そんなものではない! 凄まじい量の大艦隊が、君たちをぐるりと包囲している! それだけではない、その潜水艦一隻一隻が、赤い光を宿しているのだ! 真紅海賊団の船のように! サイレントサイエンスの大艦隊の中から、ビアシャラが姿を現した。深海六千メートルを超える海中であるというのに、潜水服もつけず、生身ひとつでだ。その体にも、赤い光が灯っている。「幻想(ドリーム)と魔法(マジック)の理を技術(テクノ)にて再現し、才人だけが持つ特異な力を、万人が持つ平凡へと引き上げてこその科学(サイエンス)!」「この祝福(ギフト)は、ありがたくアタシ達全員でいただくよ。さあ、ここでくたばりな、ヒーロー!」

【状況2:クリムゾンと協力していない場合】

 大空洞内に赤い光が走った。その光の中から、赤い光を灯した帆船が姿を現す。マストは──ない。それどころか、船自体、あの時までのものではない! 地球上の、ただの船だ。しかしそれを操るのは、赤い光を身に宿した真紅海賊団!「見つけたぞクソアマァ! 偉そうなジジイたちのおかげでピーンときたぜ。PC3に出来たんだ、俺に出来ねえわけがねえ! こんな大事なことを忘れちまうとは、俺もうだつがあがったもんだ! だがそいつもここまでよ!」「テメェは勘違いしてるようだがよ、アリアドネの糸の力が宿るのは、マストでも、帆でも、船でもねえ! 俺たちだ! 俺たち真紅海賊団(クリムゾン・バッカニアーズ)こそが祝福されたんだ! 船なんざ使えりゃ何でもいいんだよォ!」 野卑た海賊たちの邪悪な哄笑が響く。船首で剣の切先を向け、キャプテン・クリムゾンが号令を放つ。「女は犯せ! 野郎は殺せ! ガキは残せよ、高く売れる相手を知ってる! さあ野郎ども! 全てだ! 全てを奪え! 全てを燃やせ! 全て俺たちのものだ! 俺たちゃ自由だ、それを許された!!」

【状況2:クリムゾンと協力している場合】

「……あァ、なあんだ。そうか、クックック……そりゃそうだよなアッ!」 サイレントサイエンスの姿を見たキャプテン・クリムゾンがクツクツと肩を揺らして笑い始める。それは間もなく大爆笑へと変わっていった。 それと同時、真紅海賊団か、サイレントサイエンスではなく、『君たち』を見た。「あのクソアマのおかげでピーンときたぜ。PC3に出来たんだ、俺に出来ねえわけがねえ! こんな大事なことを忘れちまうとは、俺もうだつがあがったもんだ! だがそいつもここまでよ!」「アリアドネの糸の力が宿るのは、マストでも、帆でも、船でもねえ! 俺たちだ! 俺たち真紅海賊団(クリムゾン・バッカニアーズ)こそが祝福されたんだ! 船なんざ使えりゃ何でもいいんだよォ!」 野卑た海賊たちの邪悪な哄笑が響く。それを合図にしたように、君たちの乗る船が赤い光を放ち始める! マストはない。帆もない。地球上の、ただの船だ。しかしそれに乗るのは、赤い光を身に宿した真紅海賊団なのだ! 剣の切先を向け、キャプテン・クリムゾンが号令を放つ。「女は犯せ! 野郎は殺せ! ガキは残せよ、高く売れる相手を知ってる! さあ野郎ども! 全てだ! 全てを奪え! 全てを燃やせ! 全て俺たちのものだ! 俺たちゃ自由だ、それを許された!!」

【状況3】

「錨を上げろ!」「旗を掲げろ!」「真紅海賊団(クリムゾン・バッカニアーズ)!!」「サイレントサイエンス!!」「「出航だァーーー!!!!」」 敵は海賊! 誰もが海賊! 誰も彼もが裏切り者だ! 誰も彼もが皆、敵だ! だからこそやるべきことは簡単だ! 勝て! ヒーロー!!

【戦闘情報】

■サイレントサイエンス陣営(D1『サイレントサイエンス』参照)

・ビアシャラ・ザ・スペキュラー・ミセス・トキシック・ネムロン・でっかいスタデンジャー×1

■真紅海賊団陣営(D2『鏡面迷宮』参照)

・キャプテン・クリムゾン・真紅海賊団×4

【勝敗条件】

■勝利条件:敵の全滅■敗北条件:PCの全滅

【エリア配置】

エリア4:真紅海賊団陣営エリア3:サイレントサイエンス陣営エリア1or2:PC

【備考】

・でっかいスタデンジャーはエナジーを二倍として扱う。・サイレントサイエンス、真紅海賊団、ヒーローの三つ巴の戦いとなる。サイレントサイエンスと真紅海賊団は、射程が届く範囲で、それぞれの敵対陣営相手にランダムで攻撃を行う。・PCとエネミーには以下の特殊アクションが追加される。

【特殊アクション追加】

□『偽・アリアドネの糸』

属性:強化 判定:- タイミング:永続射程:- 目標:自身 代償:なし効果:サイレントサイエンス所属のキャラクター全員が使用できるアクション。   君の行動順ロールを常に1とする。

□『真・アリアドネの糸』

属性:強化 判定:- タイミング:永続射程:- 目標:1体 代償:なし効果:真紅海賊団のキャラクター及びPC3が使用できるアクション。   いずれかのキャラクターがロストした時、あるいは戦闘不能になった時、それを取り消すことが出来る。   このとき、減少したエナジーは全て最大値まで回復し、BSやデスチャートによるデメリットを受けていた場合、これらを全て回復する(臨死状態は継続して構わない)   このアクションはシナリオにつき1度まで使用できる。

【要するに】

 真紅海賊団のキャラクター、PC3はそれぞれ、シナリオの中で1度だけ、目標のエナジーに効果を適応できる。

【エネミーの戦法について】

 戦場エリアに残っているキャラクターの数が、SS陣営=真紅海賊団の場合、両陣営はヒーロー陣営を含めた相手からランダムに目標陣営を決定する。 SS陣営>真紅海賊団の場合、真紅海賊団はSS陣営を、SS陣営はヒーロー陣営のキャラを目標とする。 SS陣営<真紅海賊団の場合、真紅海賊団はヒーロー陣営を、SS陣営は真紅海賊団を目標に攻撃を行う。 戦場エリアに残っている両陣営の合計キャラクター数が3人以下になった時、エネミーの攻撃目標はヒーロー陣営に固定される。
 真紅海賊団員のパワー【ヨーホー】は最大で8点までのダメージの固定値を生やせる。どの程度のバフをつけるかは、ヒーロー陣営のライフの数を見ながら調整すると良い。4点程度の固定値をつけるのが、SS陣営に攻撃する時・ヒーロー陣営に攻撃する時、それぞれで最もバランスを取れるだろう。反面、ヒーローの運動の値が高いなどで、攻撃がなかなか当たらない時などは、8点を積みきりプレッシャーをかけていくと良い。

5.余韻フェイズ

【シナリオの結末(一例)】

・好きにやってよい。 国連長官は失脚するかもしれないし、ノーチラス号はPCのものになるかもしれない。

■成長点

初期グリット:5点クエリーグリット:4点リマークグリット:3点--------------------------------------合計:12点