1.エントリーとシナリオ概要
1.エントリーとシナリオ概要
【シナリオ概要】
【シナリオ概要】
刑務所からインペインと名乗る一人のヴィランが脱獄した。 それと同時期、あるヒーローの隣人が、青臭い相談を持ちかける。 罪の精算とはいかなるものか。正義とは何に宿るのか。 ヒーローよ、自分の信じる正義を貫け。
【事前情報】
【事前情報】
初期グリッド:3 リトライ:2 チャレンジ:2 クエリー:3
想定時間:3時間 推奨経験点:0点
【GMに要するルールブック】
【GMに要するルールブック】
・基本ルールブック(R1)
【エントリー】
【エントリー】
【PC1】
君は、君がかつて捕まえた大量殺人犯、ヴィラン『インペイン』が刑務所から脱獄したという報を聞く。 彼はかつてヒーローだったが、ある日を境に人々に絶望し、無辜の市民を殺戮。ヴィランへと変わってしまった。 かつて肩を並べた者として、これ以上彼に非道を働かせる訳にはいかない。君はインペインを追っている。【PC2】
市民として生活する君の自宅の隣に、テスター・スミスという男が引っ越してきた。 スミスは少し厳しい顔と雰囲気をした大柄な男だが、根は穏やかでやや小心者だ。君たちは良い隣人付き合いを続けてきた。 そんなある時、スミスがもじもじしながら君にこんなことを相談してきた。「なあ、えっと、笑わないでくれよ? あのさ、女の子って、何をもらったら喜ぶかな…?」 君は、スミスが先週から、表通りの花屋で働く少女のもとに足繁く通っていることを知っている。 君はこの微笑ましい相談に乗ってやることにした。【PC3】
夜道を歩いていた君は、いきなり背後から走ってきた少女に手を取られる。「やだ、ボブ! 久しぶり、元気だった? 私よ、覚えてる?」 君はそんな女の子に見覚えはない。しかし駆け寄ってきた彼女が一瞬、小さな声で口走った言葉を理解することはできた。「追われてるの、助けて…!」 視線だけを背後に向ければ、確かにフードを目深に被った不審な男が自分たちの後をつけている。 君は彼女を助けてやることにした。2.導入フェイズ
2.導入フェイズ
【イベント1:脱走】
登場キャラクター:PC1 場所:高層ビルの屋上
【状況1】
夜の街を睥睨する高層ビルの屋上。 セカンド・カラミティ事件を経て、世界が危機に瀕していても、街を行き来する車とネオンの光は変わらない。無辜の旧人類は多くが無関係の日々を生きている。 その屋上にインペインの姿がある。PC1は彼を屋上に追い詰めたのだ。「……よォ、久しぶりだなPC1。 元気にしてたか? はは、見ろよ。平和なもんだ、誰もこれから悲劇が起きなんて思っちゃいない。 この平和を守るために誰が必死こいてるのか分かってるんだか。虚しくなることはないか?」(PC1にロールで反論させても良い)【状況2】
しばし君と会話したのち、インペインは街を見下ろしながらポツリと呟く。「……彼女はそういうやつらに殺された。俺がヒーローなんかやってたから、俺のせいで」 PC1は事前にインペインの過去を知っていてもいいし知らなくてもいい。 インペインは自分自身に言い聞かせるように話を続ける。「奴らは自分のために彼女を売った。なら俺は、俺のために奴らを売る。それだけだ!」 インペインが叫んだ瞬間、見下ろしていた道路が突然爆発する。行き来していた車が爆発に巻き込まれ、地上から人々の悲鳴が上がり始める。さらに続けざま、PC1たちが立っていたビルも爆発する。 君は追い詰めたインペインから目を離してなどいなかった。インペインは何もしていないし、そもそも脱獄して間がないインペインにこれほど大規模の爆薬を用意できるはずがない。 つまりこの爆発を引き起こしている、裏で手引きをしている別の輩がいると言うことだ。 インペインは爆煙に飲まれながら虚ろに告げる。「俺が選んだことなんだ」 そうして、ビルの屋上から地上へと落下していく。君が手を伸ばしていたとしても、その指先が触れるより先に彼の体は落下し、君の背後で一際大きな爆発が起きる…。【エンドチェック】
□インペインとPC1が会話をした。□PC1がインペインの背後に何者かが存在することを悟った。【解説】
堕ちたヒーローにしてこのシナリオのメインヴィラン・インペインと、PC1のはじまりのシーン。GMは事前にインペインとPC1がかつてどのような関係であったか希望を聞いた上でこのシーンを演出すると良いだろう。旧知の仲であればPC1はインペインの過去をしっているかもしれないし、あるいはインペインのことをヴィランとしてしか見ていない間柄かもしれない。 PC1が事前にインペインの過去の詳細を知らないという設定にした場合、PC1は『深夜の取引現場』で初めて彼の過去のことを知ることになるはずだ。堕ちたヒーローに如何に接するかという点も、このシナリオのテーマの一つである。【イベント2:隣人】
登場キャラクター:PC2 場所:PC2の自宅周辺
スミスはこんなことを君に尋ねてきた。「女の子って、何をもらったら嬉しいと思う?」 さて、どう答えよう?
【状況1】
自宅でひとときの安らぎを甘受しているPC2の家のドアホンが鳴る。 出てみれば、贈答用の菓子袋を持った大柄な男がおどおどと立っていた。「あ、ああ、ええと、その、初めまして。 隣に引越してきた、テスター・スミスと言います。 よろしくお願いします」 引越しの挨拶として、スミスと名乗った男は君に袋を差し出した。【状況2】
あれから一ヶ月が経過し、PC2はスミスと良好な近所づきあいを続けている。 そんなある日、君は表通りの花屋で、従業員の若い少女とスミスが楽しそうにお喋りをしている姿を目撃する。何を話しているのかまでは分からなかったが、随分と楽しそうに見えた。 その翌日のことだ。PC2は自宅玄関の前で、菓子折りを抱え、迷うようにウロウロしているスミスを見つける。声をかければ、スミスは申し訳なさそうな顔をしながらこう切り出した。「すまない、その……相談に乗って欲しいことがあるんだ。 ええと、こういうことを訊ける人は、君しか思いつかなくて……」スミスはこんなことを君に尋ねてきた。「女の子って、何をもらったら嬉しいと思う?」 さて、どう答えよう?
【エンドチェック】
□PC2がテスター・スミスと知り合いになった。□PC2がテスター・スミスの相談に応じ、贈り物を提案した。【解説】
PC2が隣人テスター・スミスと知り合い、彼の微笑ましい相談に乗るシーンとなる。 テスター・スミスの正体はフォーセイクン・ファクトリーの元構成員カプシドだが、この時点ではPC2がその真実を知る由はない。転じて、アリアとスミスの関係もここでは細かく伝える必要はない。尋ねられた場合、スミスに「大切な人なんだ」などと照れくさそうに笑わせてごまかしておけばいいだろう。 このイベントで、PC2に実際にスミスへ具体的な贈り物の提案をしてもらえば、このあとのシーンへつなげやすくなる。 贈り物はなんでもいいし、PC2が本気で親身になる必要も特にない。面倒な隣人を追い払うために適当に用意された答えでも、スミスは真剣に参考にし、勝手に納得して礼を言って去っていくからだ。 正体を明らかにしていないヒーローの場合は、この自宅とは数あるセーフハウスの中の一つに過ぎないかもしれない。【イベント3:救助】
登場キャラクター:PC3 場所:人気のない夜道
来てくれたらサービスするわ。あなた、好きな花はある?」 アリアはPC3に是非礼をさせて欲しいと、フラワー・セントラルの住所と電話番号を記した紙を手渡した。
【状況1】
PC3は人気のない夜道を進む。 パトロールの帰りだったのかもしれないし、個人的な用事を終えた帰り道かもしれない。 そんな君の背後から駆け寄る足音があった。振り返れば、君の手を誰かが掴んだ。「ボブじゃない! 久しぶり、元気だった?!」 手を掴んだのは赤毛の少女だった。少女は嬉しそうにPC3に語りかけてくる。 しかし君はボブではない(おそらく)し、彼女に見覚えもない。 困惑する君が何かを口にするよりも先に、少女は小声で囁いた。「お願い、話を合わせて。追われてるの、助けて…!」 少女の背後を見れば、少し離れた電柱の陰に隠れるように、フードを目深に被った男がこちらを伺っているのが目に入った。 君は彼女を助けてやることにした。さて、どう助けてあげるべきだろう?【状況2】
君はフードの男を追い払うことに(あるいはフードの男から逃げ切ることに)成功した。 君に助けられた少女は、キラキラと輝いた目で礼を言う。「ありがとう! まるでヒーローみたいだわ!」 PCはここで自らの正体を明かしてもいいし、明かさなくても良い。「私、アリア・ウィッチ。 最近夜道で視線を感じることが多かったんだけど、まさかストーカーだなんて……。 今でも信じられないわ。誰でも被害者になるって本当ね」「今日は助けてくれてありがとう。 そうだ、よければ今度お礼をさせて! 私、表通りの『フラワー・セントラル』って花屋で働いてるの。来てくれたらサービスするわ。あなた、好きな花はある?」 アリアはPC3に是非礼をさせて欲しいと、フラワー・セントラルの住所と電話番号を記した紙を手渡した。
【エンドチェック】
□PC3がアリア・ウィッチを助けた。□PC3がアリア・ウィッチの礼を受けることにした。【解説】
アリア・ウィッチが偶然PC3へ助けを求め、PC3と知り合うイベント。シーンタイミングは人気のない夜中とするのが好ましい。 このシーンでアリアを追いかけているフードの男の正体はインペインだが、その素顔や正体を示す前に、「状況1」の適切なタイミングでフードの男はその場から逃げていくため、このシーンで正体は明らかにはならないことに注意。 アリアの質問に、実際にPC3に好きな花を答えてもらえれば、その後のイベントに繋げやすいだろう。 PC3がヒーローとしての姿をすでに見せている場合は、「まるでヒーローみたいだわ!」のセリフを「さすがヒーローだわ!」などに変更する。3.展開フェイズ
3.展開フェイズ
【チャレンジ1:贈り物の襲撃】
登場キャラクター:PC1・2・3 場所:花屋『フラワー・セントラル』付近の広場
『フラワー・セントラル』のすぐ近くでも、隠されていた爆弾が爆発し、建物の一部が崩れ始める。 その光景を目撃したテスター・スミスは、「アリア!!」と悲鳴をあげ、店へと走りだす。 走りだすスミスの体が人間のものではなくなり、煙状の人型に変化しているのをPCたちは目にすることができる。 「フラワー・セントラル」のアリアは、老夫婦やPC3を助けようとしているが、そのとき自分の元へと走ってくる怪人の姿を目にする。しかし彼女は怪人の姿に怯えることなく、むしろ安堵したように、その怪人の名を呼ぶ。「カプシド!」
そんな二人に、インペインは冷徹に、対超人種用の強化銃を向け、容赦無く引き金を引いた。 その攻撃はスミスだけではなく、アリアをも巻き込むものになるだろう。このままでは二人が危ない。
PC1・2・3は以下の判定を行い、誰か一人がいずれかの判定に成功すれば彼らを守りきることができるが、一人のPCで複数の判定を試みることはできない(例:『PC1が判定①に挑戦、PC2とPC3が判定②に挑戦する』が可能)。要するに、1と2どちらかの判定は2人で挑むことも可能。
–––––––––––––––––判定①:<運動>or<生存>……アリア・スミスの二人を攻撃から守る。判定②:<白兵>or<射撃>or<霊能>……インペインに攻撃を行う。
失敗時:PCがこのチャレンジに成功しないまま展開フェイズを終了した場合、 決戦中にグリットを用いることができなくなる。–––––––––––––––––
判定に失敗した場合、スミスはアリアを庇って銃弾に倒れるが、死亡はしない。 ヒーローがアリアとスミスを助けた、助けようとした姿を見たインペインは鼻を鳴らして笑う。
「お笑いだな、ヒーローさんよ。誰彼構わず助けてると、本当に守りたいものを見逃すぜ」「いいことを教えてやろう。お前たちが助けたその男の本当の名は『カプシド』」「『フォーセイクン・ファクトリー』で、大勢の人間を、俺と同じように殺してまわったクソッタレのヴィラン野郎さ!」
このタイミングで警察や他のヒーローが現場に到着し、不利を悟ったインペインは素早く撤退する。周囲には惨劇の爪痕と、怪人としての姿を現したスミス改めカプシド、そしてそんな彼に寄り添うアリアの姿があった。
【状況1:PC2】
PC2はテスター・スミスの買い物に付き合い(あるいは付き合わされ、あるいは偶然出会い)彼と共に表通りの広場を歩いている。スミスはPC2に礼を言う。「本当にありがとう。この街のことは、まだ詳しく分からなくて、とにかく、すごく助かったよ」 話す最中も、スミスの視線はちらりと花屋『フラワー・セントラル』に向けられている。 彼はたっぷり悩むそぶりを見せた後、思い切ったようにPC2へ切り出す。「ええと、君には話しておいた方がいいかな。その、俺と彼女、つまりアリアは……」(このタイミングで「状況1:PC3」へ移る)【状況1:PC3】
PC3は花屋『フラワー・セントラル』を訪れている。 アリアからの礼を受け取るためでもいいし、近くを通りかかったからでもいい。 アリアはPC3を見ると大喜びで歓迎する。「ああ、良かった、来てくれた! ちゃんと(PC3の好きな花)を用意して待ってたのよ」 フラワー・セントラルは老齢の夫婦が営む花屋だ。アリア以外に他の従業員はいない。 二階は居住スペースになっているらしく、階段を降りてきた老婆がアリアへ声をかける。「アリアちゃん、他に荷物はあるかい?」「やだ、メイおばさん。自分でやるわ、休んでていいのよ」「やだねえ。ずっと待ってた日だろう? 私だって嬉しいのさ」 そう言って老婆は笑いながら別の部屋へと行ってしまう。アリアは照れ臭そうにPC3へ事情を説明する。「すみません、いきなり。えっと、私、ここに住み込みで働いてたんですけど、近々引越しが決まって…」(このタイミングで「状況1:PC1」へ移る)【状況1:PC1】
PC1はインペインの足取りを追い、目撃情報の通報があった表通りの広場へとやってきている。 様々な店が立ち並び、多くの人々で平和に賑わう広間で、君はインペインを探す。 そうして君は、人混みを裂くように進んでいくフードの男──インペインを見つける。 インペインを捕まえるため、君が彼の元へと進んだとき、君はインペインの耳にイヤホンが付いていること、そして彼が『誰かに伝えるように』こんな言葉を口にしたのを耳にした。「こちらインペイン。『カプシド』を発見した」(このタイミングで「状況2」へ移る)【状況2】
次の瞬間、広場の噴水に仕掛けられていた爆弾が爆発する。 突然の爆発に人々は悲鳴をあげて逃げ惑い、その先々で別の爆弾が爆発を始める。 PC1はインペインへ攻撃を仕掛けてもいいし、逃げ惑う市民たちを助けてもいい。 PC2はテスター・スミスを守ってもいいし、逃げ惑う市民たちを助けてもいい。 PC3はフラワー・セントラルの人々を守ってもいいし、逃げ惑う市民たちを助けてもいい。『フラワー・セントラル』のすぐ近くでも、隠されていた爆弾が爆発し、建物の一部が崩れ始める。 その光景を目撃したテスター・スミスは、「アリア!!」と悲鳴をあげ、店へと走りだす。 走りだすスミスの体が人間のものではなくなり、煙状の人型に変化しているのをPCたちは目にすることができる。 「フラワー・セントラル」のアリアは、老夫婦やPC3を助けようとしているが、そのとき自分の元へと走ってくる怪人の姿を目にする。しかし彼女は怪人の姿に怯えることなく、むしろ安堵したように、その怪人の名を呼ぶ。「カプシド!」
そんな二人に、インペインは冷徹に、対超人種用の強化銃を向け、容赦無く引き金を引いた。 その攻撃はスミスだけではなく、アリアをも巻き込むものになるだろう。このままでは二人が危ない。
PC1・2・3は以下の判定を行い、誰か一人がいずれかの判定に成功すれば彼らを守りきることができるが、一人のPCで複数の判定を試みることはできない(例:『PC1が判定①に挑戦、PC2とPC3が判定②に挑戦する』が可能)。要するに、1と2どちらかの判定は2人で挑むことも可能。
–––––––––––––––––判定①:<運動>or<生存>……アリア・スミスの二人を攻撃から守る。判定②:<白兵>or<射撃>or<霊能>……インペインに攻撃を行う。
失敗時:PCがこのチャレンジに成功しないまま展開フェイズを終了した場合、 決戦中にグリットを用いることができなくなる。–––––––––––––––––
判定に失敗した場合、スミスはアリアを庇って銃弾に倒れるが、死亡はしない。 ヒーローがアリアとスミスを助けた、助けようとした姿を見たインペインは鼻を鳴らして笑う。
「お笑いだな、ヒーローさんよ。誰彼構わず助けてると、本当に守りたいものを見逃すぜ」「いいことを教えてやろう。お前たちが助けたその男の本当の名は『カプシド』」「『フォーセイクン・ファクトリー』で、大勢の人間を、俺と同じように殺してまわったクソッタレのヴィラン野郎さ!」
このタイミングで警察や他のヒーローが現場に到着し、不利を悟ったインペインは素早く撤退する。周囲には惨劇の爪痕と、怪人としての姿を現したスミス改めカプシド、そしてそんな彼に寄り添うアリアの姿があった。
【解説】
PCたちが合流し、テスター・スミスの過去を知るシーン。これまで仲睦まじく過ごしていた相手がヴィランだった、しかしそのヴィランには彼を慕う一般人の少女がいて、そのヴィランに銃を突きつけるのは堕ちたヒーロー、というシナリオの全体構図を示すイベントでもある。 状況1では、スミスは自分とアリアの関係、転じて自分の過去をPC2へ切り出そうとしている。残念ながらそれよりも早くイベントはすすむ。 このイベントの最中か終わりで、PC同士の合流ロールや自己紹介のタイミングを挟むと良いだろう。 カプシドとアリアに詳しい事情を聞こうとする場合は、【クエリーイベント1『罪の秤』】へ移る。【クエリー1:罪の秤】
メインキャラクター:PC3(他のPCが登場していてもいい) 場所:花屋『フラワー・セントラル』
「俺は、1カ月前まで、刑務所にいた。刑期を終えて、出所してきたんだ。 更にその前は、あのヴィランの言った通り、ファクトにいた。 生まれた時から、俺はこんなんで……親父もおふくろにも、いい思い出はない。 そんなとき、ティーチャーに拾われたんだ。嬉しかった。 ……いろいろと悪いことをしたよ。多分、俺が自覚してるより、ずっと」
「でも! 彼は私を助けてくれたの! その頃の私は、5歳ぐらいの小さな女の子。 お父さんとお母さんが怖くて仕方なかった、毎日が怖くて仕方なかった、何もできない弱い子供。 彼がいなかったら、私はきっとここまで生きていなかった!」
アリアはPC3へ自分の首元を見せる。そこには虐待の痕である醜い火傷痕が残されている。
長い話を終えて、アリアはヒーローへすがるように問う。「……あなたなら、彼を許してくれるよね?」
【状況1】
襲撃によって破壊された街は混乱しており、修復と救助活動が進められている。傷ついた花屋『フラワー・セントラル』を修復しながら、アリアとカプシドは自分たちのことをPCへ説明する。「俺は、1カ月前まで、刑務所にいた。刑期を終えて、出所してきたんだ。 更にその前は、あのヴィランの言った通り、ファクトにいた。 生まれた時から、俺はこんなんで……親父もおふくろにも、いい思い出はない。 そんなとき、ティーチャーに拾われたんだ。嬉しかった。 ……いろいろと悪いことをしたよ。多分、俺が自覚してるより、ずっと」
「でも! 彼は私を助けてくれたの! その頃の私は、5歳ぐらいの小さな女の子。 お父さんとお母さんが怖くて仕方なかった、毎日が怖くて仕方なかった、何もできない弱い子供。 彼がいなかったら、私はきっとここまで生きていなかった!」
アリアはPC3へ自分の首元を見せる。そこには虐待の痕である醜い火傷痕が残されている。
【状況2】
「カプシドはね、お父さんとお母さんを殺してくれたの。 それで……私を拾ってくれた。 短い間だったけど、楽しかった。生まれて初めて、『楽しい』って気持ちが分かった時だった。 私を拾ってから、彼は悩んでた。それで、ある日、私に言ったの。 『刑務所に行く』って。『人生をやり直したい』って。 だから私は彼が出てくるのをずっといい子で待ってたのよ。ようやく、また会えた……私の大切な人」長い話を終えて、アリアはヒーローへすがるように問う。「……あなたなら、彼を許してくれるよね?」
【エンドチェック】
□PCがアリアとカプシドの過去を知った□グリットを1点獲得した【解説】
PCたちがカプシドとアリアの関係を具体的に知るシーンであり、『罪の償い』への考えを問われるシーンである。 カプシドがアリアを助けた最初の理由は気まぐれや同情だったかもしれない。しかしアリアが「助けられた」と感じたのは本当だし、現在のカプシドが人生を清算しようとしているのも本当だ。 反面、彼らの言葉はある種の『言い訳』でもある。法的には彼の罪は償われたとみなされているが、被害者が許せるかどうかは別問題だし、カプシド自身が過去に大勢の人々の人生を狂わせた事実も変わらない。しかし、法という明確な基準を十全に満たしたことも変わらない。 故に、ヒーローがカプシドを許す/許さない、どちらの選択をしてもそれは誤りではない。 ヒーローが許すと選択すれば、アリアは心底安堵し、涙を堪えながら何度も何度も礼を言うだろう。しかしカプシドの顔は晴れない。 ヒーローが許さないと選択すれば、アリアは反論しようとするが、カプシド自身がそれを遮り、どこか清々しい顔で「君は正しい」とPCを肯定し礼を言う。【クエリー2:深夜の取引現場】
メインキャラクター:PC1 場所:郊外の廃病院
「私は君を信用しているし、応援もしている。 だからこうして君の破壊活動を支援しているのだよ。 さあ、新しい玩具をあげよう。人手はこれで十分かな? もっと必要ならいくらでも言ってくれたまえ。何なら『例の薬』も少しは用意が……」
ティーチャーが指をパチンと鳴らすと、構成員が大量の兵器と爆薬を持ってやってくる。 インペインは武器を検め、おもむろにティーチャーへ発砲する。 ティーチャーは近くにいた構成員一人を盾にしてそれを避けた。
「十分ということだね! いや実に良い。 ヴィランもヒーローも民間人も、超人種も旧人類も皆まとめて許さないというその憎悪、その殺意! 私はそれを信じているよ。 ではこれらは『例の場所』に。我々は撤退しよう。 ……君の熱烈なファンが来ているようだから」
そう告げてティーチャーは兵器の山と共にその場から忽然と姿を消してしまう。 ティーチャーの指摘を受け、インペインはPC1の存在に気付き、声をかける。「いるのか、PC1」
インペインはPC1へ自分の事情を話す。説明を終えると、廃病院を見回し呟く。「かつて、この病院はヴィランの襲撃を受けた。 当時在籍していた職員と、大勢の患者が人質に取られた。 ……そこに、俺の妻もいた。あの子を産んで、まだ三日しか経ってなかった。 ヴィランどもは、ヒーローの妻がいることを知った。 なんで知ったんだろうな。病院関係者が命乞いに漏らしたのかもな。 ……ヴィランは他の人質たちへ言った。『ヒーローの妻をいたぶれば、お前たちは助けてやろう』。 ……俺は間に合わなかった。二人の死体が見つかったのは、それから三日後だった。 ひでえもんだったよ。……苦しかっただろうな」「だから殺した。その時のヴィランも、被害者面してたクソッタレどもも、全員殺した。 最高にすっきりしたぜ、でもまだ足りない。殺しても殺しても足りない。 ……だからファクトに手を貸した」
話を終え、インペインはPC1へ問いかける。「なあ。答えろよ、ヒーロー。こんな世界を守る価値がどこにある?」
【状況1】
PC1はインペインを追って郊外の廃病院へとやってくる。 インペインは何者かと取引をしているようだ。PC1は物陰に隠れてそのやりとりを伺う。 インペインの前に立っているのは、構成員を従えたファクトのボス、ザ・ティーチャーだった。「私は君を信用しているし、応援もしている。 だからこうして君の破壊活動を支援しているのだよ。 さあ、新しい玩具をあげよう。人手はこれで十分かな? もっと必要ならいくらでも言ってくれたまえ。何なら『例の薬』も少しは用意が……」
ティーチャーが指をパチンと鳴らすと、構成員が大量の兵器と爆薬を持ってやってくる。 インペインは武器を検め、おもむろにティーチャーへ発砲する。 ティーチャーは近くにいた構成員一人を盾にしてそれを避けた。
「十分ということだね! いや実に良い。 ヴィランもヒーローも民間人も、超人種も旧人類も皆まとめて許さないというその憎悪、その殺意! 私はそれを信じているよ。 ではこれらは『例の場所』に。我々は撤退しよう。 ……君の熱烈なファンが来ているようだから」
そう告げてティーチャーは兵器の山と共にその場から忽然と姿を消してしまう。 ティーチャーの指摘を受け、インペインはPC1の存在に気付き、声をかける。「いるのか、PC1」
【状況2】
「そうだ、俺の脱獄の手引きをしたのはファクトだ。 ……奴ら、『出してやる代わりに、カプシドという男を殺せ』ときた。 『やり方は好きにしろ』ともね。理由? 知るかよ」「だから俺は、とにかく大勢の人間を巻き込みながらカプシドを殺すことにした。 関係あろうがなかろうが関係ない。とにかく、誰も彼もを苦しめて殺す。 俺の目的はそっちだ。カプシド殺しはそのついでだよ」インペインはPC1へ自分の事情を話す。説明を終えると、廃病院を見回し呟く。「かつて、この病院はヴィランの襲撃を受けた。 当時在籍していた職員と、大勢の患者が人質に取られた。 ……そこに、俺の妻もいた。あの子を産んで、まだ三日しか経ってなかった。 ヴィランどもは、ヒーローの妻がいることを知った。 なんで知ったんだろうな。病院関係者が命乞いに漏らしたのかもな。 ……ヴィランは他の人質たちへ言った。『ヒーローの妻をいたぶれば、お前たちは助けてやろう』。 ……俺は間に合わなかった。二人の死体が見つかったのは、それから三日後だった。 ひでえもんだったよ。……苦しかっただろうな」「だから殺した。その時のヴィランも、被害者面してたクソッタレどもも、全員殺した。 最高にすっきりしたぜ、でもまだ足りない。殺しても殺しても足りない。 ……だからファクトに手を貸した」
話を終え、インペインはPC1へ問いかける。「なあ。答えろよ、ヒーロー。こんな世界を守る価値がどこにある?」
【エンドチェック】
□PCがインペインとファクトの繋がりを知った□グリットを1点獲得した【解説】
PCがインペインとファクトの関係、そしてインペインの過去を改めて知るシーンとなる。PC1が姿を現しても表さなくても、インペインは一方的に話と問いかけを行う。彼自身、答えを求めているからかもしれない。 イベントの後、インペインは演出としてPC1と戦うかもしれないが、最終的には再び姿を眩ましてしまう。【クエリー3:天秤の傾き】
メインキャラクター:PC2 場所:港町のコンテナ置き場
助ける方法は二つに一つだ。 一つは、インペインを攻撃し、カプシドを救出すること。そうすればカプシドがスイッチを押す理由はない。だが、インペインが予備のスイッチを隠し持っていないとも限らない。 もう一つは、コンテナに仕込まれた噴射機を破壊することだ。そうすれば確実に100人の民間人の命は救われる。しかし、それを行えば、カプシドはインペインに殺されるだろう。 ヒーローはどちらか一つの選択をこの場で必ず下す必要がある。 何よりPCの心を悩ます要素があるとすれば、それは『コンテナの中身がこの時点では確認できないこと』だろう…。
【状況1】
PC2の家のドアをノックする者がいる。それは息を切らしたアリアだった。彼女は取り乱しながら縋る。「助けて、カプシドが連れて行かれちゃったの!」 アリアと共に自宅へ帰ろうとしてたカプシドの前に謎の車が止まり、瞬く間に彼を誘拐してしまったのだという。「お金が必要なら払います、出来ることなら何でもします! だからお願い、彼を助けて…!」 元ヴィランという経歴がある以上、その誘拐は彼の自業自得かもしれない。 君の出した答えは…。【状況2】
PC2はカプシドの足取りを追い、不審な車が港町の使われていないコンテナに向かったことを掴む。 ヒーローが現場に到着すると、そこにはコンテナを前にして立ち尽くすカプシドと、カプシドの傍に立つインペイン、そしてその前に『中の見えないコンテナ』が置かれている。「なんだ、来たのかヒーロー。おたくもしつこいね……まったく良いタイミングだ。ちょうど、取引を持ちかけていた所でね」 インペインはヒーローたちを制しながら、カプシドへ銃を突きつけながら告げる。カプシドの目の前には何かのスイッチが置かれている。「死にたくないなら簡単だ。そのスイッチを押せばいい。そうすれば顔も名前も知らない赤の他人約100人が詰まったコンテナの中に、お前が過去に作った薬が充満するが、お前は無傷で家に帰れる。 簡単だろ? お前だってよくやってたはずだ。 それが嫌なら、お前はここで死ぬ。俺が殺す。さあ、カウントダウンだ。5、4、3……」助ける方法は二つに一つだ。 一つは、インペインを攻撃し、カプシドを救出すること。そうすればカプシドがスイッチを押す理由はない。だが、インペインが予備のスイッチを隠し持っていないとも限らない。 もう一つは、コンテナに仕込まれた噴射機を破壊することだ。そうすれば確実に100人の民間人の命は救われる。しかし、それを行えば、カプシドはインペインに殺されるだろう。 ヒーローはどちらか一つの選択をこの場で必ず下す必要がある。 何よりPCの心を悩ます要素があるとすれば、それは『コンテナの中身がこの時点では確認できないこと』だろう…。
【状況3−1(カプシドを救出した場合)】
「状況2」でカプシドの救出を選択した場合、インペインは予想どおり予備のスイッチを押し、コンテナの中から人々の絶叫が聞こえ始める。インペインはヒーローとカプシドを見、嘲笑するように鼻で笑うとその場を去ってしまう。 100人の民間人達は、急ぎ救出を行えば、奇形と成り果てながらも命だけは永らえさせる。しかし彼らは皆、体の形がおぞましく変形し、エンハンスドとなってしまっている。それはカプシドの毒がもたらした副作用だった。【状況3−2(民間人を救出した場合)】
「状況2」で民間人の救出を選択した場合、インペインはつまらなさそうにカプシドへ引き金を引く。撃たれる刹那、カプシドはPC達へ感謝するように笑う。その次の瞬間、カプシドはインペインの凶弾に倒れる。 カプシドを殺したインペインは、カプシドの亡骸を回収し、その場を去っていく。 助けられた民間人はヒーローを讃え感謝する。【エンドチェック】
□PCがカプシドか民間人のどちらかを救出した□グリッドを1点獲得した【解説】
カプシドと民間人、どちらの救出を優先するかというクエリーイベントだ。どちらを選んでも誤りではなく、そこに正解は存在しない。 「状況3−1」に至った場合、カプシド自身が自分の能力を使って解毒剤を作り出そうと努めてもよい。だがその行動の提案はPC側からさせるべきであり、PC側からの提案がない限りはカプシドはひたすら謝罪と懺悔、動揺を繰り返す心の弱い存在であるべきだ。主人公はあくまでPC達である。この状況の民間人達は法治すれば全員死亡する。 「状況3−2」に至った場合、実際にはカプシドは死亡しておらず、虫の息だがギリギリで生きている。インペインがカプシドを回収したのはそのためだ。だが、プレイヤーたちにはこの時点でカプシドが死亡したように見せかけるとよい。 民間人100人の中に、【チャレンジイベント1『贈り物の襲撃』】で登場した『フラワーセントラル』の老夫婦などを交えてみてもよいだろう。この描写そのものではエンハンスド化を少々おぞましいものとして描写するといい。エンハンスド化への解釈も、PCの演出に利用しやすい要素だ。 「状況1」の時点でPC2が救出を断るのであれば、「状況2」以降はインペインを追ってきたPC1のシーンにするなどすれば都合がつけやすいだろう。【イベント:伸ばされた手】
登場キャラクター:PC3など 場所:人気のない道
しかし通り過ぎた直後(あるいはPCがアリアに話しかけようとするならば、その直前に)、突然走ってきたバンがアリアとPCの間に停止。車から出てきた覆面で顔を隠した男達が瞬く間にアリアを誘拐してしまう。 PC達がアリアを助けようとするならば、男達は数を頼りにPC達を妨害。その隙にアリアは誘拐されてしまう。
アリアはPCへ助けを求めるように手を伸ばすが、しかし何かを言うより先に車に押し込められ、車は発進してしまう。 妨害してきた男達をヒーローが捕らえるのであれば、男達は即座に自害し死亡する。覆面を外せばそこには少年じみた若々しい顔がある。アリアを誘拐したのはフォーセイクン・ファクトリーの『少年隊』ではないかと、PC達は思い至ることができる。
【状況1】
PCは人気のない夜道を進んでいる。 君の進む道の反対車線側の歩道を、泣き晴らした目をしたアリアが歩いてくる。 アリアはPCの姿を見ると、目をこすり、礼儀正しく小さく会釈をして通り過ぎていく。しかし通り過ぎた直後(あるいはPCがアリアに話しかけようとするならば、その直前に)、突然走ってきたバンがアリアとPCの間に停止。車から出てきた覆面で顔を隠した男達が瞬く間にアリアを誘拐してしまう。 PC達がアリアを助けようとするならば、男達は数を頼りにPC達を妨害。その隙にアリアは誘拐されてしまう。
アリアはPCへ助けを求めるように手を伸ばすが、しかし何かを言うより先に車に押し込められ、車は発進してしまう。 妨害してきた男達をヒーローが捕らえるのであれば、男達は即座に自害し死亡する。覆面を外せばそこには少年じみた若々しい顔がある。アリアを誘拐したのはフォーセイクン・ファクトリーの『少年隊』ではないかと、PC達は思い至ることができる。
【解説】
このシーンはクエリーでもチャレンジでもない、マスターシーンとPCの演出のみで構成されるイベントである。 PC同士が『天秤は揺れる』のイベントに居合わせる理由を補うためのイベントとなっている。演出はエントリー『救助』をなぞるような演出にすると良いだろう。また、『罪の秤』でのヒーローの返答次第で、アリアがどの程度ヒーロー達へ自発的に助けを求めるかを調整すると、この後のイベント『天秤は揺れる』に繋げやすくなるはずだ。 走り去ったバンは「フラワー・セントラル」の方角へ向かっていく。あとを追いかけるなどすれば、『天秤は揺れる』イベントへ至る。【チャレンジ2:天秤は揺れる】
登場キャラクター:PC1・PC2・PC3 場所:花屋「フラワー・セントラル」前広場
ティーチャーがそう言うと、構成員がアリアの前にスイッチを置く。 ティーチャーは見せびらかすように薬品の入った注射器をアリアへと示す。
「やあ、アリア君といったかな? 久々のダディとの再会は楽しかったかい? それともボーイフレンドだったかな? ま、それはいいんだ。 彼は昔、その力を使って実に我々の役に立ってくれた、とても良い子だった。 この『薬』もその一つ。旧人類を超人種へ変え、超人種の力をより強大なものに変える夢の薬……我々の未来を担う少年隊の教育にも、大いに役立ってくれた素晴らしい薬だ。再現性がないのが心底惜しい、忌々しいセカンド・カラミティで随分と在庫が減ってしまったものだから!」
「だから、彼をまた誘いに来たんだ。せっかくだし、君からも口添えしてくれないかな? 私たちと共に来れば、例の怖い怖いヒーローくずれからだって、後ろ指を指してくる世間の眼差しからだって、我々が君たちを守ってあげよう。 もし君が私たちと一緒に来てくれるなら、景気付けに、そのスイッチを、他ならぬ君の手で押してくれたまえ」
「……それとも、こう言い換えた方がいいかな。 『カプシドには今、ファクトのスナイパーが銃口を向けている』。 賢い君ならこの意味が分かるね?」
アリアに渡されたスイッチは、インペインが使用していたものと同じものだということが、ヒーローたちには一目で分かるだろう。彼女がスイッチを押せば、街のどこかに設置された噴射機から、無差別に薬品が街の人々を襲うのだろうということも。 ティーチャーは演技かかった仕草で、その場のヒーローへ、そして動画を見ている民間人たちへと宣言する。
「さあ選択の時だ、余計な口出しが大好きなヒーロー諸君。 そして画面の向こうの民間人の皆様、よく見ていたまえ、痛感したまえ。 自分の身は自分で守るしかないのだと。 君たちを守る正義という天秤が、いかに身勝手で偏ったものなのかということを!」
ヒーローたちはここでチャレンジ判定を行う。 PCたちがこのチャレンジを達成するには、合計3回のチャレンジ判定に成功する必要がある。
–––––––––––––––––判定①:<心理><作戦><交渉>のいずれか-10% アリアを説得し、彼女が『スイッチ』を押さないよう止める。 失敗した場合、アリアはスイッチを押し、アリアのそばに設置されていた噴出器から発射された薬品が彼女の姿を変質させる。クライマックスでのエネミー1体が『アリア・ウィッチ』に変化する。
判定②:<白兵><射撃><霊能>のいずれかの-10% カプシドへ狙いを定めるスナイパーを探し出し、即座に攻撃する。 成功すればカプシドを狙う射手は狙撃に失敗する。失敗した場合、カプシドはスナイパーによってアンプルを狙撃され、凶暴化する。クライマックスでのエネミー1体が『カプシド』に変化する。
判定③:<意志> 中継の視聴者へ呼びかけ、ティーチャーの言葉に惑わされないよう訴える。 成功した場合、中継にはヒーローを応援するコメントと、アリア救出のために有志が動きだすコメントが溢れる。
失敗時:判定①、②の失敗時は対応するデメリットを適応する。 判定③の判定失敗時はインペインが『薬』を自分に対して投与する。(決戦フェイズエネミーのステータスが変化する)。–––––––––––––––––
「つまらん! まったくもってつまらん! 最低最悪の三文芝居だ、こんな陳腐なシナリオで客が満足するものか! ええ、そうだろう、なあ、インペイン! お前だって腹に据えかねているはずだ、『どうして俺の時はこうならなかったのか』とね!」 インペインは物陰から一連の出来事を見守っている。カプシド・アリアの両名が変質しようとしまいと、インペインはPCたちの前に姿を現し攻撃を開始し、決戦フェイズへと突入する。 インペインは手に『薬』の入った注射器を持っている。PCたちが判定③に失敗すれば、彼は躊躇なくその薬品を自分へ投与する。より大勢の人間を殺すために。 反面、PCたちが判定③に成功していれば、インペインはわずかな逡巡の後、手にした注射器を投げ捨て、自分の武器だけでPCたちへと襲いかかってくるだろう。それはこのシナリオの中、彼が初めて見せる、ヒーローへの『敬意』だ。
【状況1】
PC達が花屋『フラワー・セントラル』へと戻ってくると広場には一切の人気がなくなっている。「良い答えだったよ、ヒーロー!」 空虚な拍手の音とともに、『フラワー・セントラル』から構成員を従えたザ・ティーチャーが出現する。 彼の目の前にはアリアが捕らえられており、また『天秤の傾き』でカプシドを救出していない場合は、その近くに瀕死のカプシドがいる。「手前勝手な正義とやらにふさわしい、美しい見殺しだった! お見事と言わざるをえない」 ティーチャーはそう告げ、手をパチンと鳴らす。 すると広場の空一面に、ホログラムによって映し出された現在の広場の中継映像が映し出される。 動画サイトの生放送画面であるそこには、偶然その放送を見たであろう、民間人たちの困惑のコメントが流れている。【状況2】
「だが私は貪欲でね。面白いショーはもっと見ていたくなるんだ。 どうせならよりセンセーショナルに、より派手に! なので、リテイクだ。是非もう一度同じことをやってくれたまえ」ティーチャーがそう言うと、構成員がアリアの前にスイッチを置く。 ティーチャーは見せびらかすように薬品の入った注射器をアリアへと示す。
「やあ、アリア君といったかな? 久々のダディとの再会は楽しかったかい? それともボーイフレンドだったかな? ま、それはいいんだ。 彼は昔、その力を使って実に我々の役に立ってくれた、とても良い子だった。 この『薬』もその一つ。旧人類を超人種へ変え、超人種の力をより強大なものに変える夢の薬……我々の未来を担う少年隊の教育にも、大いに役立ってくれた素晴らしい薬だ。再現性がないのが心底惜しい、忌々しいセカンド・カラミティで随分と在庫が減ってしまったものだから!」
「だから、彼をまた誘いに来たんだ。せっかくだし、君からも口添えしてくれないかな? 私たちと共に来れば、例の怖い怖いヒーローくずれからだって、後ろ指を指してくる世間の眼差しからだって、我々が君たちを守ってあげよう。 もし君が私たちと一緒に来てくれるなら、景気付けに、そのスイッチを、他ならぬ君の手で押してくれたまえ」
「……それとも、こう言い換えた方がいいかな。 『カプシドには今、ファクトのスナイパーが銃口を向けている』。 賢い君ならこの意味が分かるね?」
アリアに渡されたスイッチは、インペインが使用していたものと同じものだということが、ヒーローたちには一目で分かるだろう。彼女がスイッチを押せば、街のどこかに設置された噴射機から、無差別に薬品が街の人々を襲うのだろうということも。 ティーチャーは演技かかった仕草で、その場のヒーローへ、そして動画を見ている民間人たちへと宣言する。
「さあ選択の時だ、余計な口出しが大好きなヒーロー諸君。 そして画面の向こうの民間人の皆様、よく見ていたまえ、痛感したまえ。 自分の身は自分で守るしかないのだと。 君たちを守る正義という天秤が、いかに身勝手で偏ったものなのかということを!」
ヒーローたちはここでチャレンジ判定を行う。 PCたちがこのチャレンジを達成するには、合計3回のチャレンジ判定に成功する必要がある。
–––––––––––––––––判定①:<心理><作戦><交渉>のいずれか-10% アリアを説得し、彼女が『スイッチ』を押さないよう止める。 失敗した場合、アリアはスイッチを押し、アリアのそばに設置されていた噴出器から発射された薬品が彼女の姿を変質させる。クライマックスでのエネミー1体が『アリア・ウィッチ』に変化する。
判定②:<白兵><射撃><霊能>のいずれかの-10% カプシドへ狙いを定めるスナイパーを探し出し、即座に攻撃する。 成功すればカプシドを狙う射手は狙撃に失敗する。失敗した場合、カプシドはスナイパーによってアンプルを狙撃され、凶暴化する。クライマックスでのエネミー1体が『カプシド』に変化する。
判定③:<意志> 中継の視聴者へ呼びかけ、ティーチャーの言葉に惑わされないよう訴える。 成功した場合、中継にはヒーローを応援するコメントと、アリア救出のために有志が動きだすコメントが溢れる。
失敗時:判定①、②の失敗時は対応するデメリットを適応する。 判定③の判定失敗時はインペインが『薬』を自分に対して投与する。(決戦フェイズエネミーのステータスが変化する)。–––––––––––––––––
【解説】
ザ・ティーチャーの最終目的が明らかになり、ヒーローがより厳しい選択を迫られるシーンだ。 しかしザ・ティーチャーは一つ失敗をしている。ヒーローたちはすでに一度『天秤の傾き』イベントを経験しており、苦い思いを味わっている。同じ道を辿らせることが出来ると思っているのはティーチャーの慢心だ。そのため、こちらのイベントではチャレンジ判定を試み、成功すれば『双方の救出』という選択が可能になっている。もちろん、失敗すれば双方とも失うことになる危険な橋ではあるが。 ザ・ティーチャーの目的は、「カプシドの確保による『薬』の再生産」と「ヒーローの欺瞞を民衆に見せつけることによる嫌がらせ」だ。このどちらか一つでも達成できればそれで良いと考えている。そのため、双方の目論見が挫かれれば……すなわち、カプシドとアリアの二人が助かり、民間人たちがヒーローを信じたままであれば……激しい怒りを見せるだろう。「つまらん! まったくもってつまらん! 最低最悪の三文芝居だ、こんな陳腐なシナリオで客が満足するものか! ええ、そうだろう、なあ、インペイン! お前だって腹に据えかねているはずだ、『どうして俺の時はこうならなかったのか』とね!」 インペインは物陰から一連の出来事を見守っている。カプシド・アリアの両名が変質しようとしまいと、インペインはPCたちの前に姿を現し攻撃を開始し、決戦フェイズへと突入する。 インペインは手に『薬』の入った注射器を持っている。PCたちが判定③に失敗すれば、彼は躊躇なくその薬品を自分へ投与する。より大勢の人間を殺すために。 反面、PCたちが判定③に成功していれば、インペインはわずかな逡巡の後、手にした注射器を投げ捨て、自分の武器だけでPCたちへと襲いかかってくるだろう。それはこのシナリオの中、彼が初めて見せる、ヒーローへの『敬意』だ。
4.決戦フェイズ
4.決戦フェイズ
【決戦:天秤の結末】
登場キャラクター:全員 場所:『天秤は揺れる』と同様
「つまらん! まったくもってつまらん! 最低最悪の三文芝居だ。こんな陳腐なシナリオで客が満足するものか! ええ、そうだろう、なあ、インペイン! お前だって腹に据えかねているはずだ、『どうして俺の時はこうならなかったのか』とね!」
ティーチャーの怒りの吠え声と同時、ヒーローたちの居場所が何者かに狙撃される。 その攻撃に紛れ、ティーチャーはその場から逃げ出す。
「そうだ、殺せ! お前の憎悪は本物だ。お前は見捨てられた側の人間だ。 他ならぬ旧人類! 他ならぬ堕ちたヒーロー! 他ならぬお前の手で、奴らの息の根を止めて幕を引け!」
ティーチャーが戦線を離脱すると同時、インペインが姿を現わす。 彼は相変わらずの憎悪を灯した瞳で、PC達へと武器を向けた…!
【状況】
※以下の描写は『天秤は揺れる』のチャレンジ判定を全て成功している前提での描写となる。 いずれかに失敗している場合は、ティーチャーのセリフ変更や、アリアやカプシドの変化シーン、 インペインが自身へ投薬を行うシーンを挟むなどして適宜調節すること。「つまらん! まったくもってつまらん! 最低最悪の三文芝居だ。こんな陳腐なシナリオで客が満足するものか! ええ、そうだろう、なあ、インペイン! お前だって腹に据えかねているはずだ、『どうして俺の時はこうならなかったのか』とね!」
ティーチャーの怒りの吠え声と同時、ヒーローたちの居場所が何者かに狙撃される。 その攻撃に紛れ、ティーチャーはその場から逃げ出す。
「そうだ、殺せ! お前の憎悪は本物だ。お前は見捨てられた側の人間だ。 他ならぬ旧人類! 他ならぬ堕ちたヒーロー! 他ならぬお前の手で、奴らの息の根を止めて幕を引け!」
ティーチャーが戦線を離脱すると同時、インペインが姿を現わす。 彼は相変わらずの憎悪を灯した瞳で、PC達へと武器を向けた…!
【戦闘情報】
【エネミー】
・インペイン×1・ヴィランメンバー×3【エリア配置】
エリア4:なしエリア3:ヴィランメンバー×2エリア2:インペインエリア1:ヴィランメンバー×1【勝敗条件】
勝利条件:敵の全滅敗北条件:味方の全滅【備考】
・チャレンジ2に失敗している場合、エリア3のヴィランメンバーを都度「アリア・ウィッチ」「カプシド」に変更する。・チャレンジ2に失敗している場合、インペインのステータスは「インペイン(エンハンスド)」を使用する。成功している場合、「インペイン(ジャスティカ)」を使用する。【エネミー一覧】
■インペイン(ジャスティカ)
【エナジー】ライフ70 サニティ50 クレジット50
【能力値】肉体:30 精神:20 環境:25【技能値】白兵80% 射撃80% 運動35%意志50% 知覚60%作戦40% 隠密60%『無限の憎悪』属性:強化 判定:- タイミング:永続射程:- 目標:自身 代償:なし効果:与える全てのダメージとショックに、[ラウンド数-1]×2点を追加する。──憎悪はいつまでも累積する。
『皆殺し』属性:攻撃・装備 判定:- タイミング:行動射程:2 目標:1エリア 代償:ターン10効果:目標は運動-10%で判定を行う。 この判定に失敗したキャラクターは4d6のダメージを受ける。 このパワーは1シナリオに1度使用できる。──仕込み爆弾。ヴィランもヒーローもお構いなし。
『ハンドウェポン』属性:攻撃・装備 判定:- タイミング:行動射程:1 目標:1体 代償:ターン6効果:目標は運動-10%で判定を行う。この判定に失敗したキャラクターは2d6+2のダメージを受ける。──殺すためなら手段は問わない。
『粉骨砕身』属性:強化 判定:- タイミング:特殊射程:- 目標:自身 代償:ライフ2効果:判定の直後に使用出来る。行った判定の成功率を+10%する。──ジャスティカの力。かつて彼がヒーローだった証。
──────────────────────────────────
■インペイン(エンハンスド)
【エナジー】ライフ70 サニティ70 クレジット50
【能力値】肉体:40 精神:35 環境:10【技能値】白兵70% 射撃70% 運動40%意志50% 知覚60%作戦40% 隠密40%『無限の憎悪』属性:強化 判定:- タイミング:永続射程:- 目標:自身 代償:なし効果:与える全てのダメージとショックに、[ラウンド数-1]×2点を追加する。──憎悪はいつまでも累積する。
『皆殺し』属性:攻撃・装備 判定:- タイミング:行動射程:2 目標:1エリア 代償:ターン10効果:目標は運動-10%で判定を行う。この判定に失敗したキャラクターは4d6のダメージを受ける。このパワーは1シナリオに1度使用できる。──仕込み爆弾。ヴィランもヒーローもお構いなし。
『ハンドウェポン』属性:攻撃・装備 判定:- タイミング:行動射程:1 目標:1体 代償:ターン6効果:目標は運動-10%で判定を行う。この判定に失敗したキャラクターは2d6+2のダメージを受ける。──殺すためなら手段は問わない。
『憤怒の巨人』属性:強化 判定:-タイミング:特殊 射程:-目標:自身 代償:サニティ2効果:行動順ロールの直後に使用できる。イベント終了時まで、受けるダメージに-2、与えるダメージに+2の修正を得る。──エンハンスドの力。彼が最早変わってしまった証。
──────────────────────────────────
■カプシド
【エナジー】ライフ20 サニティ15 クレジット10
【能力値】肉体:20 精神:20 環境:15【技能値】運動35% 生存40% 白兵50%霊能50% 科学60%『毒ガス』属性:攻撃 判定:科学(60%)タイミング:行動 射程:1目標:1エリア 代償:ターン10効果:目標(自身除く)は生存+10%の判定を行う。この判定に失敗したキャラクターは、1d6+4点のダメージと毒2(P177)を受ける。──生まれながらに持っていた力
『凶暴化』属性:強化 判定:-タイミング:行動 射程:-目標:自身 代償:ターン2効果:このラウンドの間、与えるダメージに+2の修正を得る。このパワーは1ラウンドに1回まで使用できる。──自身の作り出した薬による自家中毒
『支配領域』属性:妨害 判定:白兵タイミング:特殊 射程:0目標:1体 代償:ライフ1効果:目標が自分のいるエリアから別エリアに移動する直前に使用できる。目標は運動-20%、もしくは操縦の判定を行う。この判定に失敗したキャラクターは移動に失敗する。──姿なき煙から逃げることは困難だ
──────────────────────────────────
■アリア・ウィッチ
【エナジー】ライフ20 サニティ20 クレジット20
【能力値】肉体:20 精神:40 環境:15【技能値】運動30% 生存40%霊能70% 心理60%科学50%『囁き』属性:攻撃 判定:心理60%タイミング:行動 射程:1目標:1体 代償:ターン10効果:目標は意志-10%の判定を行う。この判定に失敗した目標は3d6点のショックを受ける。──少女は虚ろに繰り返す。「つれていかないで」
『依存献身』属性:強化 判定:-タイミング:行動 射程:-目標:自身 代償:ターン2効果:このラウンドの間、与えるショックに+2の修正を得る。このパワーは1ラウンドに1回まで使用できる。──守るためなら何でもしよう。……誰をだったっけ?
『断罪の瞳』属性:攻撃 判定:心理+20%タイミング:行動 射程:-目標:1体 代償:ターン20効果:目標は追憶の判定を行う。判定に失敗したキャラクターは4d6のダメージを受ける。このパワーは戦闘の第一ラウンドには使用できない。──助けられなかった虚ろな目が、虚ろなままに君を見つめる。
5.余韻フェイズ
5.余韻フェイズ
【各PCの結末(一例)】
【PC1の結末】
戦いを終え、インペインは無力化される。 意志を挫かれた彼は、救出されたアリア、カプシドの姿を眺めながら、疲れ果てたように自分の口腔内に銃口を向け、引き金を引こうとする。 君は彼の行動を見届けてもいいし、それを止めてもいい。 止めるならば、インペインは力無く尋ねるだろう。「……殺しても、殺しても、一時気が晴れることはあっても、満足する事はない。 俺は誰も許せない。旧人類も、超人種も、ヒーローも、ヴィランも、民間人も、俺自身も。 刑に服したとしても、俺はきっと変わらない。 俺は一生、俺が憎む相手を苦しめ続けるだろう。 それなら、ここで処分した方が話が早い。 ──…違うのか?」
さあ、どうする?
【PC2の結末】
カプシド改めテスター・スミスが、PC2の家を訪れる。 手には以前、PC2が贈り物として勧めたものが持たれている。 カプシドはアリアと共に引っ越すことになったと伝える。 これまで罪悪感から関わることを避けていたG6に正式に相談し、自分の能力を医学的な見地で役立たせられないか考えていると明かす。「これ、世話になったから、贈り物にいいって言われたし……もしかして、おかしかったか?」 さあ、どうする?【PC3の結末】
戦いが終わってしばらくしたある日、ヒーローとして活動を続ける君に手紙が届く。 手紙にはアリアからの礼と近況が綴られている。G6スタッフとしての活動、カプシドとの生活、友人ができたこと、彼女がまた花屋で働き始めたことなどだ。 手紙には押し花が添えられている。PC3が好きだと答えた花だ。花にはメッセージカードが添えられている。『親愛なる私たちのヒーローへ、感謝を込めて』6.NPC情報
6.NPC情報
【NPC情報一覧】
■インペイン(スコット・キャッスル)
絶望した元ヒーロー。40歳程のジャスティカ。 数年前、セカンド・カラミティ事件の発生前。ヴィラン組織による病院襲撃事件が発生、出産間もなかったインペインの妻と娘が巻き込まれる。 人質の中にヒーローの妻子がいることを知ったヴィラン組織は、ヒーローの妻子をいたぶれば、いたぶった人間は助けてやろうと人質達へ提案。その結果、彼の妻子は無辜の人々によって暴行され、ヴィラン組織に誘拐された末、散々な乱暴を受けた末に惨たらしく死亡した。 インペインはヴィランを殺し、絶望の末に生還者や関係者を殺し尽くした末、PC1の手によって確保、投獄された。■ 立ち絵■カプシド(テスター・スミス)
フォーセイクン・ファクトリーの元構成員。30歳程度。 約13年前までヴィラン『カプシド』として活動していた生まれながらのサイオン。 その身体能力の影響で家族に愛されずに育ち、ティーチャーに拾われファクトへ所属する。その生活の中、虐待されていた少女・アリアと出会ったことで改心の道へ進む。自ら警察へ出頭し、刑に服し、模範囚として一月前に出所した。刑務所に服役していたため、セカンド・カラミティ事件のことを多くは知らない。 出所に伴い、以後は自身の改心のきっかけとなった少女、アリアと共に生活しようとしている。一般社会の常識に疎く、やや世間知らずで、自分の罪に負い目があることから臆病でおどおどした性格になっている。 サイオンとしての彼の姿は、任意の薬品を体内で製造し、無差別にまき散らす意志持つ煙状の怪物。普段はその姿を人間の形にとどめ、人に紛れて生活を送っている。イメージモチーフは中東の怪物『ジン』だ。■アリア・ウィッチ
5歳のころにカプシドに助けられた少女。現在18歳。 カプシドが刑に服し、出所してくるのを待っていた。現在は花屋に住み込みで勤めている。 しっかりした真面目な少女だが、内面では自分を助けてくれたカプシドへ強い恩と依存心を抱いている。カプシドが世間的にはたやすく受け入れられない過去の持ち主であることは理解しているが、彼女自身は彼を助け守る為ならば何でもする気持ちでいる。たとえ自分の命を捨てることになったとしても後悔はない。 カプシドとの関係は親子とも恋人とも取れる曖昧でプラトニックなもの。どちらかといえば、子供同士が傷を舐めあいながら支え合っているような関係だ。 GMは必ずしも彼女を可愛い少女として演じる必要はない。ヴィラン、ヒーロー、いずれの価値観に属してもおかしくはない、善良だが少し危うい人物として動かしてみると良いだろう。