レディ・イフ
レディ・イフ
━━ いま、君たちは試されている。
【PC1:ハービンジャーのヒーロー】
G6には「鏡面世界災害対策本部」が設置され、君はQEの対応に当たったヒーローとして、担当者のような位置に立たされている。 そんなG6へと連絡が入った。 相手は鏡合わせの向こうの世界、バスターバースのG6であると名乗る。 奇妙な牛骨の仮面の男の力により、世界各地に二つの世界を結ぶポータルが開かれていることを告げ、彼らは協力を持ちかける。 遠からず、元バスターバースのヒーロー、QEの身柄引き渡しが行われることとなった。【PC2:足を洗いたい闇医者】
ある日、君の診療所に黒いジャケットを着た粗野な超人種たちが現れた。 彼らは君の存在を確認すると、問答無用で銃口を突きつけて同行を求める。 あわや力づく、そう思われた時、君を救う人物がいた。「大丈夫か、立てるか!?」 それは新進気鋭のニューヒーロー、ヒューマンサイドだった。【PC3:テセウスの船】
ある日、君が目を覚ますと、君は見知らぬ家にいた。「おはよう。目を覚ましたのね、私のあなた」 キッチンから、金色の瞳に白い髪を持った女性が顔を覗かせる。 彼女は君のことを愛おしげに自らの恋人として扱う。 だが君は、こんな女のことは知らない…。【エントリー1:もうひとつのG6】
【状況1】
鏡合わせの二つの世界は、一定の距離を保ちながら停止し、安定した状態が続いている。今も各国が競って解明・解決・利用に向けて研究を続けているが、めぼしい成果は未だあがってはいない。 双方の世界間で、電波や分子・重力を含めた、あまねく物質の行き来が確認された事例は今の所ゼロだ。いつまた再接近が起きるのか、それともこのまま事態は自然消滅していくのか、それは誰にも分かっていない。 G6にも「鏡面世界災害対策本部(通称:鏡災対)」が置かれ、日本国政府と提携しながら、日々専門家が行き交っている。【状況2】
君たちがオフィスへと荷物を持ち込んだ時、パソコンやテレビのモニターの映像が乱れ始める。それはあっという間に乱れを増し、何らかの奇妙な電波が混線しているのだと分かった。鏡災対がにわかに騒がしくなる。 やがて、混線する映像の先から、ノイズ混じりの女性の声が聞こえてきた。『……ちら……こちら…6……こちらG6……』『こちらG6東京本部、聞こえていたら応答を願う。繰り返す、こちらG6東京本部』 プライムバースの世界のG6東京本部からはそんな通信は送っていない。【状況3】
グレート・ワンと名乗った声の主と意見を擦り合わせると、彼女は上空の、すなわちバスターバースのG6所属のヒーローであることが分かる。『改めて、なぜ我々が通信可能になったのかを説明しよう。君たちの頭の中に直接伝えることも可能だが、君たちにとってどちらが望ましいかな?』【エンドチェック】
□バスターバースとつながるポータルが生まれた□グレート・ワンと話をした□QEが引き渡されることになった。【解説】
PC1の導入シーンであり、同時に第二話および本キャンペーンの世界観を改めてプレイヤーへ伝えるシーンだ。 今この世界がどうなっているかや、第一話のあらすじや振り返りをここで行うのが良いだろう。 また、本キャンペーン独自の組織である「鏡面世界対策本部(鏡災対)」の説明を行うシーン。こちらはプラムバースの担当組織として、キャンペーン中継続的に登場する組織となる。シナリオ内ではヒューマンサイドを除き固有名を有したNPCが登場することはないが、GMやPLが望むなら任意の専用NPCを生やしてみても面白いだろう。【エントリー2:黒いコートの追跡者】
【状況1】
今日の業務もここまで、と終業の時間が迫りつつあったある日のこと。 君の診療所に、奇妙な来訪者が現れる。「よお。PC2ってのはアンタか?」 それは黒いコートを着た三人組だった。皆武装しており、超人種であると分かる。いかにも悪いことに手を染めてきたといった雰囲気の、粗野な男たちだ。 彼らは君へ銃口を向け、告げる。「あんたに恨みはないが、これも仕事でね。ウチのボスがお前に会いてえんだとよ、素直についてきてくれりゃ痛い目は見なくて済むぜ」 さて、どうしよう。【状況2】
「面倒ですねえ、素直にさせてから持ち運んだ方が楽ですヨォ〜」 背後に控えていた一人が、おどけたように何かの術式を紡ぐ。 君の意識は朦朧とし、その場に膝をつく。 黒衣の男たちが何事かを話し合っているが、その声ももう、遠く聞こえない……。 あわや力づく、そう思われた時、君の前で男たちが一点を見つめて動揺する。戦いの音が遠くに響く。どれだけ経ったかまるで分からぬ頃合いで、君の腕を誰かが掴み、肩を貸した。「大丈夫か、立てるか!? 逃げるぞ!」 それは新進気鋭のニューヒーロー、ヒューマンサイドだった。【状況3】
君はヒューマンサイドと共に黒衣の追手を撒き、物陰に隠れる。 黒衣の追手たちは息を潜める君たちに気付かず、周囲を散策した後、互いに毒吐きながらどこかへ消えていく。「おい、ふざけんなよ。フォーカスライトにどう報告しろってんだ」「ありのままを言うしかないのでは? こっちの世界のヒーロー様は優秀ですこと」「マスターぜ〜ったい怒んじゃん、嫌だあ〜」 立ち去っていく黒衣の男たち。 君の傍、ヒューマンサイドが強く拳を握りしめていた。【エンドチェック】
□謎の黒衣の集団に襲われた□ヒューマンサイドに助けられた□マスター・フォーカスライトの名を聞いた【解説】
PC2のもとに、バスターバースからブラックジャケット捜査官が初めて姿を現すシーン。第一話の余韻フェイズとは少々矛盾したシーンになるため、キャンペーンとして回す場合は第一話の余韻フェイズの状況を調整する必要があるだろう。 ここで登場する三人のブラックジャケット捜査官は、その後もPC2の監視と護衛のためにモブとして登場することになる。シナリオ内では具体的な設定は定めない為、卓ごとに自由に設定を生やしてしまって良いだろう。もしPLやGMがブラックジャケットRPGを遊んでいるのであれば、そこで実際に使用しているPCをNPCとして登場させ、シーンのNPCの演出を任せてみるのも一つの手法だ。【イベント3:知らない女、知らない家庭】
【状況1】
清潔で柔らかなシーツの感触が君を包んでいる。遠くから子供のはしゃぐ声と、子供向けのテレビ番組の音。コトコトとキッチンで何かが作られている音、ふわりと漂う朝食の香り。「あなた。起きて、あなた。もう、お寝坊さんね」 優しい声が傍から聞こえ、誰かが優しく君の額を撫でる。 君は目を覚ました。 知らない家の中だった。 目の前では、穏やかに微笑む白い髪の女が、幸せそうに金の瞳を細めている。「おはよう。目を覚ましたのね、私のあなた」 知らない女だ。【状況2】
困惑する君の膝の上に、小さな影がひょいと飛び乗る。それは2〜3歳程度の幼い少年二人だった。「パパおねぼう!いけないんだ」「ご飯たべよ! 僕もうお腹ぺこぺこ」「もう、パパは疲れてるんだから、あんまり邪魔しちゃダメよ。先に食べてなさい」「「はあ〜い」」 寝室から子供たちが出ていく。女は君の顔を見て、不思議そうに尋ねる。「ねえ、どうしたの? 様子が変よ。悪い夢でも見ていたみたい」【状況3】
洗面台で顔を確認してみれば、君は今までの自認通りの見目をしている。誰かと精神が入れ替わった訳ではないようだ。日付を確認しても、君が認識している日付と地続きである。 しかし空を見上げれば青空が広がり、そこに鏡写しの世界は存在しない。 そんな世界の中で、君はごく平凡な一般家庭の父親として扱われている。子供たちは楽しそうに今日の予定を話ながら食事をし、妻である女は彼らの世話を焼きながら君に微笑みかけていた。「さあ、いただきましょう」「「いただきまーす!」」 これは、一体。【エンドチェック】
□いきなり家族ができている【解説】
PC3がいきなりリャナンシーに拉致され、異世界で都合の良い家庭を持たされているシーン。PC3が女性であったり、性別を持たないキャラクターであったとしても、問答無用で配偶者扱いされる。リャナンシーはそういう女だ。 この世界はリャナンシーがPC3を拉致監禁するために生み出した、都合の良い異世界の一つ。ヒーローやヴィランという概念はなく、PC3の仲間のようなリャナンシーにとって都合の悪い存在も居ない世界だ。【クエリー1:痛みの肩代わり】
【状況1】
(※PCが反対した場合を想定した描写。賛成している場合は飛ばして状況2から進めること) プライムバースのG6は、バスターバースのG6の提案を呑んだ。近く、QEの身柄引き渡しが行われることが決まる。 君の意見は、それがいかなるものであったとしても、その決定に介入することを許されなかった。君がハービンジャーである故にだ。 取引の準備を進めながら、君と親しい鏡面世界災害対策本部のスタッフが毒づく。「いつもは何かあったらす〜ぐPC1さんに丸投げする癖に、こういう時に爪弾きにするとか、どうなのよ」「そのくせ当日の護衛だけは任せるんだろ? 都合がいいよな〜。QEの件だって、PC1がいなかったら解決できなかったかもしれないのにさ」「もういっそ、PC1さんがハービンジャー代表になればいいのに」 彼らの言葉に、さて、君は何と返すだろう。【状況2】
かくして、取引当日が訪れる。 ポータルの出入り口は、何の変哲もない住宅街の一角、アパートの空室の中にあった。 ロックウェイブ島から囚人として現場へ護送されてきたQEは、当初は取引相手をかつての自分の上司であったミスティック代表、エターナル・ウィドウであると思い込んでいた。しかし、グレート・ワンの名前を聞くと、彼の顔色が変わる。「お、おい、嘘だろ!? 聞いてねえぞ! 甘ちゃんのエターナル・ウィドウならともかく、あの女相手じゃ話が変わる!」「い、行きたくない! 殺されちまう! お前らは何も分かっちゃいない! いいか、あの女はな──…!!」 QEが何かを言いかけた直後、その頭部に光る縄が投げつけられ、QEの体から力が抜ける。彼はそれ以上なにも言うことができなくなった。 通信に映っていた女、グレート・ワンが姿を現す。 縄を投げつけてきたのは彼女だ。「犯罪者の、まして魔術師の言葉に耳を傾けるのは関心しないな」「初めまして、PC1。モニターぶりだね、お会いできて光栄だ」【状況3】
取引はつつがなく行われる。それこそ、君が口を挟む余地もない。 QEの身柄はバスターバースG6へと引き渡され、その返礼に複数の情報媒体にまとめられた研究データがプライムバースG6へと委ねられた。 あとは互いが別れるのみ。その段に至り、グレート・ワンは「最後に、PC1と話をしたい」と言って、君を対話の相手に指定した。 二つのG6の間で、君はグレート・ワンからの質問を受ける。「この世界にも、太母結界(グレート・マザー・バリア)はあるのだな」「エベレストでの君の戦いを、我々も我々の側のエベレストから見ていた。すぐ傍にありながら、文字通り鏡の向こうの世界……力を貸せないことを歯痒く思ったよ」「PC1。君はハービンジャーだと聞いた。私もそうだ。……この惑星のために痛みを肩代わりする理由が、君にはあるか?」【状況4】
「そうか。それが君の答えか」「……聞いたな、プライムバースのG6諸君。あまり英雄をないがしろにしてくれるな、貴重な友人を失うぞ」 グレート・ワンは皮肉げにプライムバースG6へと笑いかけ、QEの身柄を連れてその場を去る。君に肩入れしてくれたようだった。 いかにも、ヒーローらしく。 けれど今もなお、君を見るQEの眼差しには、恐怖と助けを求める色が色濃く残っていた。君の脳裏に、かつてPC3をQEに引き渡し、結果的に騙されたあの時のことが思い起こされる。 このまま行かせて、本当にいいのだろうか…?【エンドチェック】
□QEを引き渡し、グレート・ワンと対話した□ハービンジャーの立場は複雑だ□グリットを1点獲得した【解説】
グレート・ワンについて、QEはバスターバースにいた頃の悪評を知っている。しかしそれを打ち明けるより先に、グレート・ワンによって口を塞がれてしまう。その態度にPC1が疑心を抱く。そんなシーンを想定している。 『誰かのために犠牲になることを受け入れられるか?』というクエリーの答えがヒーローらしいものであればあるほど、グレート・ワンはPC1と理解し合うことは不可能であると認識する。 連行されるQEに対し、PCが実際に行動を起こせるかは、次のチャレンジ判定に委ねられる。【クエリー2:可能性の世界】
【状況1】
君はヒーロー・ヒューマンサイドに連れられ路地裏からG6支部を目指して移動している。君の護送のためだ。 ヒューマンサイドは、自分の知る情報を君に共有する。「最近、このあたりで黒い服の妙な男たちがウロウロしてるって話があって、パトロールしてたんだ。新手のヴィランかと思って」「あんたのところに行く前にも何人かと接触したんだが、腕利きばっかりでなかなか捕まえられなくてね。ただ……あいつらはおそらく、『あそこ』から来てる」 ヒューマンサイドは上空を指差す。そこには鏡写しの異世界がある。「多分、この辺りのどこかに、あいつらが行き来するための出入り口があるんだ。それさえ抑えられれば……とは思ってるんだけどな」【状況2】
彼らがPC2を狙っている理由をヒューマンサイドは知らない。おそらく先日のQEの一件と関連があるのではと予想を立てている程度だ。PC3の身柄も保護したかったのだが、PC3はここ数日行方が分からなくなっているのだという。「気付くのが遅くなってすまん」とヒューマンサイドは謝罪する。【エンドチェック】
□ヒューマンサイドからの問いかけに答えた□グリットを1点得た【解説】
ヒューマンサイドから、黒衣のヴィランたちがバスターバースから来ていることを明かされるシーン。 PC2はヒューマンサイドとプライムバースのフォーカスライトのことを知っていてもいいし、知らなくてもいい。PCが知らない場合、ここでヒューマンサイドの口から詳細を打ち明けさせてもいいだろう。【クエリー3:What If.】
【状況1】
それは紛れもなく幸せな家庭だった。だが、君の知らない家庭だった。 これ以上、ここに留まっているわけにはいかない。君は家を去ることにした。 家から出ようとする君に、妻である白い髪の女が声をかけてくる。「あなた、どこに行くの? ……また私を置いていくの」 女の金の瞳が紅い光を帯びる。不可思議な力が満ちていく。君はその力を知っている! 『アリアドネの糸』! 君は自らの力を用いて、彼女の力に抗う…!【状況2】
両者の力は拮抗し、相殺され弾ける。その衝撃で、周囲の世界が、鏡が割れるようにひび割れ分裂した。鏡の中には数多の君たちの姿が映し出されている。知らない結婚、知らない出会い、知らない恋、知らない誰かの幸福の物語。 それは君の望みではない。君の前に立ちはだかる女の望みだ。「ここまでやっても、あなたは思い出してくれないの?」「ねえ、私よ。リャナンシーよ。あんなに一緒だったじゃない、あんなに愛しあったじゃない! 私たちは幸せになるはずだったのよ、私たちはあれを手に入れるはずだったの!」「あなたともう一度会うために、私はあの男に与えられたこの力を使ってここまできた。そしてようやくあなたに会えたのよ」「ねえ、PC3。行かないで。ずっとここにいて。もう一度やりなおしましょう?」 赤く輝く瞳を歪ませ、女は君にすがる。だが彼女が本当にすがっているのは君にではない。数多の世界線のどこかにいた、君ではない君にだ。 彼女の目は最早正気とは言い難かった。 世界線の『IF(もしも)』に狂った女、リャナンシー。 君は彼女に何と言葉を向けようか。【状況3】
「……そう。だめなの。これでもまだ、ダメなのね…!」 周囲の世界が刺々しく変形し、君へ鋭い先端を向ける。数多の棘の檻が、君の脱出を拒むように、幾重にも幾重にも君を取り囲む。 愛に狂った女の声が君へ向けられる。「あなたは私のもの。ようやく見つけた私のあなた。コル・タウリになんて渡さない」「あの怪物はあなたに関心を持ってしまった。あなたにたどり着くためなら、あの怪物はきっと何だってするでしょう。祝福という名の試練に晒され、あなたの運命は弄ばれ消費される。許さない、そんなこと許さないわ!」「あなたは必ず私が守るの、大事に大事に仕舞っておくの、誰にも渡したりしない。愛しているわ、私のあなた」 最早彼女に言葉は通じない。 ここから逃れるには、彼女を倒す以外──道はない。【エンドチェック】
□リャナンシーと対峙し、彼女をフッた□コル・タウリはPC3を狙っているらしい□グリットを1点得た【解説】
PC3がリャナンシーを拒絶するシーン。 リャナンシーは哀れな女じみた言動を行うが、その愛情は一方的なもので、PC3本人を慮ったものではない。彼女は狂っており、まともな説得や理屈は通用しない。 PC3がリャナンシーを倒せるかどうかは、次のチャレンジ判定に委ねられる。【チャレンジ1:世界の狭間で】
【状況1】
PC1はQEの引き渡しを完了するものの、QEの必死な視線の意図が気に掛かる。 PC2は無事、ヒューマンサイドに救われた。マスター・フォーカスライト率いる黒衣の存在を知り、その存在に関する情報を集める。 PC3はここではないどこかの世界で、愛に狂った女・リャナンシーの束縛を逃れんとしていた。【チャレンジ判定】
■PC1の結果
君からの疑問を、グレート・ワンはのらりくらりと躱す。安全のため、魔術師は危険、それらしい物言いをしてこそいたが、彼女は一向にQE本人の口から事情を説明させようとはしない。「お、おい。PC1、失礼だぞ!」 周囲の視線が君に冷たいものになっていく。だがその問答の中、必死に力を振り絞ったQEが抗い、自分の口を封じていた魔術具を取り除く。そして叫んだ。「お前らバカか! 俺がいたようなG6だぞ!? お前らみてえなイイコちゃんな訳がねえだろうが!!」「この女は自分の故郷に帰るためなら手段を選ばねえクソビッチとして有名だ! お前ら丸ごと利用されるぞ!!!!」 君はQEの叫びを聞いたグレート・ワンが、ひどく冷たい目をしたのを見た。 咄嗟に動こうとした君の前に、不可視のバリアが貼られる。君の攻撃はそれに封じられ、グレート・ワンはQEの身柄を掴んだまま、赤いポータルの先──バスターバースへ姿を消した。 それと同時、ポータルが閉ざされる。周囲のスタッフがどよめく。「なにっ、ポータルは開閉が出来ないんじゃなかったのか!?」 どうやら本当に、彼女は『手段を選ばない人物』らしい。■PC2の結果
君は情報収集の果てに、黒衣の男たちの詳細な情報を知る。 彼らの名は超人警察機構ブラックジャケット。マスター・フォーカスライトという人物が設立した、『囚人を用いて治安維持を行う』警察機構の一つ。 何故そんなものを作らねばならなかったのか? そんな君のもとに、一つのドローンが接触してくる。ドローンはホログラムの映像を映し出し、その中に…。『私を探しているようだな』 その男は君が探していたブラックジャケット総隊長、マスター・フォーカスライトの姿が!■PC3の結果
「ああ……行かないで……コル・タウリが、あなた……を……」 君はリャナンシーを下し、彼女に束縛された世界から逃げ出すことが出来た。 君はようやくプライムバースへと帰還することが出来る。だが、帰ってきても尚、何か大いなる存在が君を見つめているような、奇妙な感覚がつきまとっていた。 この世界で今、何かが起きている。自分に関わる何かが。 君はかつての仲間のもとへ向かうことにした。彼らはどこにいるだろう?【状況2】
PC1、PC2、PC3の三名は合流し、各々の情報を共有する。 グレート・ワンは何を企んでいるのか? 本当にQEを救出するべきなのか? ブラックジャケット・フォーカスライトの情報を信用しても良いのか? コル・タウリがPC3を狙っているというのはどういうことなのか? 数多の疑問と困惑があった。 そんなとき、君たちは天に現れた『それ』を見た。【エンドチェック】
□それぞれのチャレンジをクリアした□PCたちが合流し、情報を共有した□天に現れた『それ』を見た【エンドチェック】
PCたちがそれぞれの窮地を脱し、情報を持って合流するシーン。 PC1はグレート・ワンの本性を理解し、PC2はマスター・フォーカスライトからバスターバースで起きている正確な状況を知る。PC3はリャナンシーの手から逃れると同時、コル・タウリがPC3を狙っているという情報を得る。 PC同士の合流シーンを満足まで行った後、マスターシーンへと続く。【マスターシーン:『もしかしたら』が女を狂わせた】
【状況1】
「ポータルγ(ガンマ)、β(ベータ)、Δ(デルタ)、ε(シグマ)を続けて閉鎖しろ。貴重な資源だが仕方ない、目的は十分果たされた」 ポータルを抜けたグレート・ワンが素早く周囲へ指示を出す。指示に応じた異形の住人が頷き、地球のものならざる技術を用いて、近隣に開いたポータルを閉めていく。 グレート・ワンはQEの身柄を掴むと、足に力を込め、天へと飛び上がる。彼女たちは上空へと飛びあがり、そのまま成層圏を、大気圏を抜けていく。断熱圧縮による炎をものともせずに、彼女は身一つで、瞬く間に宇宙空間へと辿り着いた。 宇宙空間にて。彼女の前にはバスターバースの地球があった。そして振り返れば、鏡合わせのように、プライムバースの地球がある。物理法則も宇宙の法則も無視したメチャクチャな力の干渉が二つの世界を結びつけている。【状況2】
地上にて。 バスターバースの地球に住む人々も、プライムバースの地球に住む人々も、天に現れたそれを見た。 それは、地上の人々からは、鏡合わせの世界のちょうど中間に姿を現したように見えた。地球を抱きしめるようにして姿を現したあまりにも巨大なグレート・ワンの姿。太母結界の縛りを解き放たれた彼女は、地球外にて、その真の力を取り戻していた。 女は告げる。だがそれはちっぽけな地球の住人へと向けられた言葉ではなかった。【エンドチェック】
□上空に巨大なグレート・ワンの姿が現れた。□グレート・ワンはPC3をダシにコル・タウリを脅迫している【解説】
グレート・ワンは大母結界の外にQEを連れ出し、強化された『共感者』としての能力で記憶を読み取ることで、QEの知るコル・タウリとPC3の情報を認識した。 キャンペーンとしては、QEはここで死亡したものとして扱っている。GMはその方が面白くなると思うなら、首だけの状態で生きていたなどとしても良い。少なくとも以後、シナリオ内に彼の出番はない。【チャレンジ2:世界線を超えて】
【状況1】
PCたちもまた、プライムバースの地球上から、グレート・ワンの脅迫を聞いていた。そして君たちは、彼女の言葉の意味を正しく理解し得た数少ない者たちの一人でもあった。「お、おい、あの女、なにを言ってるんだ?」「プライムバースを破壊するって? なんでえ???」 動揺する人々の声が、君たちの背を押す。今、事態の収束にあたれるのは君たちしかいない。だが、どうやって? グレート・ワンはいま、バスターバースにいる。プライムバースからでは、彼女に干渉することは出来ない。バスターバースに渡る方法を探さなければならない。 バスターバースに渡ったとしても、グレート・ワンの身は太母結界の外にある。彼女と対等に戦うには、その身を太母結界の中へ、地球上へと引き摺り込まなければならない。 何より、コル・タウリはそれまで待ってくれるだろうか? もし、コル・タウリが自らの望みのために、グレート・ワンの望みに応えてしまえば……彼女と同じ手を選ぶ悪党が、他に生まれてこない保障はない。プライムバースは以後、常に脅迫材料とされ続ける。 君たちに何ができる? いいや、君たちにしか、出来ないことがあるはずだ!【チャレンジ判定】
【状況2】
PC3が時間を稼ぎ、その隙にPC2はBJ捜査官たちが使っていたポータルを発見する。路地裏の廃材置き場に打ち捨てられている、壊れた時代遅れの電話ボックス。その扉がバスターバースへと繋がるポータルに変わっていた。 君たちがポータルを抜ければ、目の前に広がったのは……。【チャレンジ判定】
【エンドチェック】
□バスターバースへ渡った□グレート・ワンを地球へ引きずり堕とした【解説】
PCたちがブラックジャケットと正式に遭遇し、初めての協力体制を敷くことになるシーン。以後、ブラックジャケットは基本的にはPCたちの味方となる。【クエリー4:割れた鏡の向こう側】
【状況1】(PC1へのクエリー)
PC1はグレート・ワンを地上へと引き戻すことが出来る。 君たちは空中でめちゃくちゃに揉みあい、そしてブラックジャケット本部が置かれた市街地へと墜落した。 周囲一帯に衝撃波が走り、建物が崩壊し山が崩れる。巨大なクレーターの中央で、PC1はグレート・ワンと対峙する。 遠巻きに、ブラックジャケット捜査官たちが、マスター・フォーカスライトが、PC3が、PC2が駆けつけてくるのが目に入る。 グレート・ワンは当初の面影はもはや見る影もなく、憎しみに染まった目で、眼前のPC1を睨みつけた。「……ああ。あの答えを聞いた時から、お前とは分かりあえないと思っていたさ…!」 溜まりに溜まった鬱憤が爆発したように、グレート・ワンと呼ばれたハービンジャーは吠えた。【状況2】(PC2・3へのクエリー)
PC1とグレート・ワンとの対話を、PC2とPC3もまた、BJ捜査官たちと共に聞いていた。 やりとりを耳にし、マスター・フォーカスライトは静かに眼鏡の位置を正す。そして背後のBJ捜査官たちへ冷たく告げた。「目標を敵性ハービンジャーと断定。仮想固体名称、グレート・ワン。 ヒーロー様に溜まった憂さを精々晴らしてこい。 目的は迅速な無力化だ、『殺して構わん』。──行け!」 BJ捜査官たちが動き出す。 フォーカスライトは君たちを見て告げる。「あとは我々が引き継ぐ。あれはこの世界の問題だ、君たちが干渉する必要はない」 その言葉に、君たちはどう答えよう?【エンドチェック】
□グレート・ワンの問いに答えた□マスター・フォーカスライトの言葉に答えた□グリットを1点獲得した【解説】
グレート・ワンの本心が吐露され、PC1へと向けられるシーン。 PC1は立場としてはグレート・ワンに近い立場になることを想定している。その上で、PC1はヒーローでいることに疲れたハービンジャーの言葉に何と返すか? これがクエリーだ。 状況2では、この状況を見守るPC2とPC3に向けて、フォーカスライトから向けられるクエリーとなる。ブラックジャケットは味方ではあるが、その価値観はヒーローとしてのものではない。【決戦:アイ・ウォント・ホーム】
【状況1】
グレート・ワンは彼女の持つ力を全て使って、BJ捜査官たちへと立ち向かう。だが、太母結界の内に囚われた彼女の力では、彼らを凌駕することは出来なかった。 あとはBJ捜査官たちの手で十分にカタがつく。……そう思われた時、状況が変わった。「そこにいたのね、私のあなた」 狂女の声がPC3の背後から響く。赤く歪んだ空間の中から、白い髪の女──リャナンシーが姿を現した! リャナンシーの、聴く者の意識を狂わせる声が周囲へと放たれる。巻き添えを食らったBJ捜査官たちが絶叫をあげてのたうつ。彼らに構わず、リャナンシーはただPC3へと手を伸ばす…!【状況2】
PC3に拒まれ、リャナンシーは泣き叫ぶ。「どうして? どうして? どうして? どうして? どうして?」「帰りましょう、私たちの家に。私たちの幸せに。帰りましょう、ねえ、ねえ、ねえ、帰ろう、帰ってよ、帰ってきてよお!」 その悲痛な声音は周囲に精神攻撃となって響き続ける。だがそんなリャナンシーの声がぴたりと止まる。彼女は周囲を見回し、そして、離れた場で膝を着くグレート・ワンへ視線を定めた。「……手伝ってくれるの?」 リャナンシーの姿がかき消え、次の瞬間、グレート・ワンの傍らへと現れる。「……分かってくれるのね?」 グレート・ワンは何も言わない。だが、リャナンシーは、確かに返事を受け取ったように微笑んだ。彼女の頭の中に響く、優しい共感者の声に、心の傷を癒されながら。「……ありがとう。それなら私も、あなたを手伝ってあげる」 リャナンシーは笑顔を浮かべ、自分の目へ指を突っ込む。そして自身の眼球を抉り出し、グレート・ワンへと渡した。金色をしていたリャナンシーの瞳は、異様な力を帯びた赤い色へと変わっている。 グレート・ワンはリャナンシーの眼球を受け取り、それを握りつぶす。グレート・ワンの肉体に一瞬赤い光が走り、次の瞬間、凄まじい衝撃が市街地を襲った。 君たちは真っ赤な光の中で、グレート・ワンの肉体が、宇宙空間に在ったときのように巨大化していくのを目の当たりにする。リャナンシーは片目を失いながらも微笑み、まっすぐにPC3を見た。「さあ、家に帰りましょう」【戦闘情報】
【エネミー】
・グレート・ワン(強化)・リャナンシー・浮遊する目玉×1【エリア配置】
エリア4:グレート・ワン(強化)エリア3:浮遊する目玉×1、リャナンシーエリア2 or エリア1:PC【勝敗条件】
勝利条件:敵の全滅敗北条件:味方の全滅【備考】
・グレート・ワンに強化パワー「縮小化解除(R1)」を追加する。【各PCの結末(一例)】
【PC1の結末】
グレート・ワンをどうするか決める。 グレート・ワンの処理も好きにして良い。【PC2の結末】
フォーカスライトからPC2への言葉をハートレスが伝言。「ポータルは開けたままにしておく。 君が英雄の輝きに耐えられなくなった時、裏社会に堕ちるぐらいなら、こちらに来い。 我々は手段を選ばない」【PC3の結末】
リャナンシーが捕まる リャナンシーはどんな状態でも赤い光に包まれて発狂し、その場で情報を得ることが難しくなる。 ブラックジャケットとの交渉の末、彼女の身柄はプライムバースで預かることとなる。【シナリオ成長点】
初期グリット:3クエリーグリット:4リマークグリット:3--------------------------------------------------=合計:10点■鏡面世界災害対策本部
通称「鏡災対」。 プライムバースのG6に臨時で設置された部署。 鏡合わせの二つの世界に関して、各国が競って解明・解決・利用に向けて研究を続けている中で、災害対応に重きを置いて活動している。 多くの専門家や国の橋渡しになるなどの役割を持っているが、所属ヒーロー自体は乏しく、PC1が代表ヒーローとして扱われている。■テセウスの船
世界渡航の力「アリアドネの糸」の力を人工的に再現するプロジェクトで生み出された、人工アリアドネの糸の保有者の名称。 計画自体は既に頓挫・遺棄されており、PC3はその計画の不完全なプロトタイプであった。 PC2の施術によって、PC3は完全な『テセウスの船』としての力を有するに至った。■ヒューマンサイド
R1掲載リプレイ「マスク・オブ・ビースト」より登場。 プライムバースのG6所属ヒーロー。本名、峰神ジン。 本キャンペーンでは、世間的にも「マスク・オブ・ビースト」の事件を、ザ・ティーチャーを倒し解決した新進気鋭のニューヒーローとして知られている。PCたちもそれらの情報は知っていて構わないだろう。 ヒーロー:キャプテン・フォーカスライトの元部下。『記憶の継承』を受けてザ・ティーチャーとなった、プライムバースのフォーカスライトの死を見届けた人物。■クエスチョン・エクスクラメーション
異世界からやってきた頼りになるハービンジャーヒーロー。 ……を、演じていたバスターバースのミスティックヒーロー。 バスターバースにて、人工アリアドネの糸『テセウスの船』計画の実験体であるPC3を殺害した際、抵抗を受けてプライムバースへと転移させられた。 ヒーロー活動をしても儲けにならないプライムバースを厭い、故郷へ帰ろうとプライムバースのPC3へ目をつける。 その結果、二つの世界が鏡合わせの形で引き合わされることとなった。 現在はプライムバースのロックウェイブ島に収容されている。■コル・タウリ
鏡面迷宮の主人。世界線を渡る力「アリアドネの糸」を気まぐれに人へ与え、世界渡航者(テセウス)と呼ばれる存在を生み出している。 その目的は不明だが、この世界線に生まれた、自らが関与しない形で世界線渡航の力を得たPC3に関心を持ち始める。