シング・シング・シング!


━━Let's Sing!
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1.エントリーとシナリオ概要

【シナリオ概要】


 田舎街の音楽祭に、超人種と旧世代の混合マーチング・バンド『スイング・ヒューマンズ』が招かれた。『スイング・ヒューマンズ』は楽団員たちの卓越した技術と統率力で名を馳せる、国内有数の一流吹奏楽団。しかしそんな『スイング・ヒューマンズ』の楽団員たちが次々に失踪するという事件が相次ぎ、団長の超人種には不穏なウワサが立ち込め、その周囲には地獄兵団の影が…! 事件の真相に辿り着き、ヒーローたちよ、パレードを完遂させるのだ!

【事前情報】


 チャレンジ:2 クエリー:3 リトライ:1 初期グリッド:3
 想定時間:3〜4時間 推奨経験点:0点〜10点前後

【GMに要するルールブック】


・基本ルールブック(R1)・パワー・トゥ・ザ・ピープル(D1)

【エントリー】

【PC1】

 君はとある田舎町の市長に依頼され、マーチング・バンド『スイング・ヒューマンズ』の護衛をすることになった。彼らの周囲では、最近奇妙な事故や、楽団員の行方不明が相次いでいるという。 市長は『スイング・ヒューマンズ』に市の設立百周年音楽祭パレードを依頼していた。君は音楽祭の日までという約束で、彼らの護衛を引き受けることになった。

【PC2】

 君は偶然チケットを手に入れ、『スイング・ヒューマンズ』の公演へとやってきている。 公演は素晴らしいものだった。心地よい満足感を堪能していた君は、不審な人影を目撃し……次の瞬間、ステージに向かってシャンデリアが墜ちてきた! 今、咄嗟に動けるのは君だけだ!

【PC3】

 ヒーローとして活動する君に、ある日、匿名での通報が届く。通報の内容は、『スイング・ヒューマンズの楽団長はハービンジャーであり、楽団員を食らっている』というものだった。 この通報は事実なのだろうか? そして通報の主の正体は? 君は『スイング・ヒューマンズ』を調べてみることにした。

2.導入フェイズ

【イベント1:エル・クンバンチェロの下準備】

 舞台:A市市役所(音楽祭まであと7日) 登場キャラクター:PC1・A市市長

【状況1】

「おーーーねーーーがーーーいーーーすーーーまーーーすーーーだーーー!!」 君は依頼を受けて、A市の市役所に来ている。A市は都会の喧騒から離れた、周囲をのどかな山々に囲まれ、シャッター街が目につき、ご老人が井戸端会議をしている、文字通りの田舎町だった。 そんな町の、一目でオンボロとわかる市役所の中、市長の中年男性が地面に頭をこすりつけていた。つまり土下座だ。
「このままでは、このままでは、 記念すべぎ音楽祭が台無すになってすまいます! お礼ならきっっっっちり支払います、ヒーローさだげが頼りなんだ!!」
 土下座しながらおいおいと男泣きに泣き崩れる市長。 とりあえず、詳しい話を聞いてみる必要がありそうだ。

【状況2】

 市長曰く、一週間後の市の設立100周年記念音楽祭に、マーチング・バンド『スイング・ヒューマンズ』を招待し、パレードをしてもらう予定なのだという。 『スイング・ヒューマンズ』は、楽団員たちの卓越した技術と統率力で名を馳せるマーチング・バンド楽団。旧世代・超人種を問わない混合編成で構成され、国際的にも高い評価を得ている一流楽団だ。 しかし、ここしばらく楽団員の行方不明や、原因不明の事故が相次いでいるのだという。このまま被害が続けば、パレードは中止せざるを得ない。困った市長は、君にスイング・ヒューマンズの護衛を依頼したのだった。「お願いすます! お願いすます! 今回の音楽祭だげは、絶対さ絶対さ絶対さ絶対さ絶対さじぇーーーったいさ中止する訳にはいがねんだ! お代はあんまり出せねげど! 靴どが舐めればいいすか!? 三回回ってワンど鳴ぐ!? お願いすますだぁーーーーーーーー!!!」 君の足にすがりつきながら、市長は必死に君にお願いをして来る。君は致し方なしに、あるいは快く、その依頼を受けることにした。 ……それにしても、こんな田舎町が、どうして音楽祭などを開き、一流吹奏楽団などを招待できたのだろう?

【エンドチェック】

□PC1がA市市長の依頼を受けた

【解説】

 このエントリーの目的は、PC1に『スイング・ヒューマンズ』を調べる理由をつけることであり、同時にA市の音楽祭そのものに疑問を抱かせることである。 市長の台詞回しが田舎訛りのものなのは、PLへ市長そのものへの不信感を抱かせないようにする為である。GMはコミカルに市長のキャラクターを演出し、このシナリオの雰囲気をPLたちにわかりやすく認識させると良いだろう。

【イベント2:ファントム・オブ・ジ…?】

 舞台:舞台公演会場(音楽祭まであと6日) 登場キャラクター:PC2・『スイング・ヒューマンズ』

【状況1】

 君はなんらかの理由でチケットを手に入れ(個人的に興味を持って購入したのかもしれないし、誰かに誘われたのかもしれないし、譲り受けたのかもしれない)マーチング・バンド『スイング・ヒューマンズ』の公演へとやって来ている。 公演会場は都内にある超高級ホテル。吹き抜けになったホールで、上層階からは『スイング・ヒューマンズ』の一糸乱れぬ隊列を、下層階では迫力ある演奏を間近で楽しめるという触れ込みだった。 演奏は静かに幕を開け、最初の一曲目『アルヴァマー序曲』が勇ましく演奏を終える。その一曲目で、彼らの演奏とパフォーマンスがいかに優れたものなのかは、君にもよくよく理解できた。会場は心地よい満足感に包まれながら拍手を送る。先頭に立つドラムメジャー(指揮者)がくるりと観衆へ振り返り、奇妙な仮面をつけた顔をコトリと傾け挨拶を始める。「皆様〜、本日は〜当楽団の公演へとご足労くださり〜、 誠にありがとうございました〜。 素晴らしい一夜を〜お約束し〜ま〜す〜。 それでは〜二曲目の演奏に参りま〜しょ〜」 そう言ってドラムメジャーが客席に背を向け、演奏者たちへと向き直った、その時だった。 君は偶然、最上階を人影が駆けていく姿を目撃する。ホテルのスタッフだろうか? そう思った次の瞬間! 演奏の一音がかき鳴ると同時、客席天井のシャンデリアが、舞台に向かって落ちてきた! 今、咄嗟に動けるのは君だけだ!

【状況2】

 君の活動のおかげで、スイング・ヒューマンズの楽団員も、観客たちも、大きな怪我を負うことはなかった。 しかし警察の出入りや即座の避難誘導が始まり、公演自体は中止となってしまう。「あ〜! あなたは〜!」「あ〜〜〜〜り〜〜〜〜が〜〜〜〜と〜〜〜〜う〜〜〜〜ご〜〜〜〜ざ〜〜〜〜い〜〜〜〜ま〜〜〜〜し〜〜〜〜た〜〜〜〜!!」 君のもとに、救助された楽団の指揮者が駆け寄って来た。指揮者は奇妙な仮面を被ったまま、君にペコペコと頭を下げる。
「わたくし〜! 当楽団の楽長を務めております〜! ジマーと申します〜!」「あなたがいらっしゃらなければ〜! 楽団員たちも私もぺちゃんこでした〜! 本当に〜! 本当にありがとうございます〜!!」「それにしても〜、せっかくの公演が台無しです〜、申し訳ないです〜」「料金をお返しするのは勿論ですが〜、お詫びの追加公演にご招待しますので〜、ぜ〜ひ〜ど〜う〜ぞ〜!」
 ジマーと名乗った楽団長は、そう言って、君に手書きで作られた(慌てて作ったのだと一目でわかる)追加公演のチケットを手渡した。

【エンドチェック】

□PC2が追加公演チケットを受け取った。

【解説】

 実際のトラブルがどのようなものかということと、スイング・ヒューマンズのパフォーマンスが実際に優れているということを説明するシーン。落下するシャンデリアへの対処の推奨は、『シャンデリアを別の場所に移す』『落下地点に割り込み支える』『落下する場所にいる人を救出する』『シャンデリアを危険がないほどに破壊する』などだ。そのヒーローらしい方法で救出演出をしてもらうといいだろう。 ジマーの台詞回しは、彼が不審な人物ではあるが、どこか間の抜けた印象を持たせる為のものだ。GMが面倒・不要と思うのであれば、自由に改変して構わない。

【イベント3:■■■からの最後の手紙】

 舞台:PC3がいそうな公共の場(音楽祭まであと5日) 登場キャラクター:PC3

【状況1】

 ヒーローとして活動を続ける君は、ある日、A市という田舎町で行われる音楽祭のポスターを見かける。著名なマーチング・バンドを招いて行われるのだというそれに、君は果たして興味を惹かれたか、否か。 そんな時だ。君の通信端末に、匿名での通報が届いた。 メールで送られて来た通報の内容は、『「スイング・ヒューマンズ」の楽団長、ジマーは人を食うハービンジャーだ。彼はすでに大勢の楽団員を人知れず食らっている。助けてくれ』 と言うものだった。メールには、楽団長と思しき、仮面をつけた指揮者の写真が添付されている。 『スイング・ヒューマンズ』といえば、まさにこのポスターに書かれているマーチング・バンドの名前ではないか! このタイミングは偶然か、それとも…? メールアドレスは捨てアカウントのもので、通報者の名前も記載されていない。 さて、何を信用するべきだろう? 君は少々の違和感とともに、ひとまず『スイング・ヒューマンズ』を調査してみることにした。

【エンドチェック】

□PC3が『スイング・ヒューマンズ』の調査を行うことにした。

【解説】

 エントリー時点では、『スイング・ヒューマンズ』に対してPC1は「疑問を抱きつつも肯定的な立場」、PC2は「肯定的な立場」、PC3は「疑問を抱きつつも否定的な立場」になりやすいように設定している(もちろんPCの傾向によっていくらでも変わるだろう)。PC3のエントリーは、「スイング・ヒューマンズ」の楽団長の怪しさを改めてPLに説明するシーンとしての役割がある。 このメールの送信者はジェットサムである。シャンデリアの件から『ダムダムエネルギー』の方針に不信感を抱いていた彼は、意図的にヒーローを介入させることにより、自分たちが手を引きやすい流れを作ろうとしている。その対象にPC3が選ばれたのは偶然かもしれないし、なんらかの因縁によるものかもしれない。

3.展開フェイズ

【チャレンジ1:オーメンズ・オブ・ヒーロー】

 舞台:追加公演会会場(音楽祭まであと4日) 登場キャラクター:PC1・PC2・PC3

【状況1】

 PC2は『スイング・ヒューマンズ』の追加公演に訪れている。追加公演は主に前回の公演に来ていた人を対象としたもので、以前の公演のチケットを見せれば無料で鑑賞できるという体制だった。しかし、事件の影響か、公演会場を訪れている客の数は、以前に比べれば明らかに乏しい。 PC1とPC3もまた、調査のためにこの公演会場を訪れていた。もうすぐ開演、そう思われた時、会場内にアナウンスが流れる。「皆様、本日は『スイング・ヒューマンズ』の追加公演にお越し頂き、誠にありがとうございます。 少々トラブルがあり、準備が遅れております。開演まで、もうしばらくお待ちください」 周囲の客たちが落ち着かない様子でざわめき始める。不満の声が密やかに上がる。「なに? また中断なの?」「まじかよ。来るんじゃなかったなあ」「こういうのどうかと思うわ」 よくよく目や耳を凝らせば、ステージ袖を楽団員と思しきスタッフが走り回っており、なにやら慌ただしい雰囲気がある。どうやら舞台裏でトラブルが起きているようだ。

【状況2】

 混乱している舞台裏は、簡単に入り込むことが出来た。舞台裏では、『スイング・ヒューマンズ』の団員たちが、楽団長ジマーと慌ただしく相談する声が聞こえて来る。「裏に血痕が……その側にこんなものが……!」「ラインハルトのスカーフじゃないか!」「落ち着け、今いないのは誰と誰だ? 点呼は済んだか?」「トランペットのラインハルト、木琴のリー、シンバルのタナカがいなくなってます」「三人もか……」「でも、また公演を中止するわけには…!」「どうしましょう、団長!」「う〜〜〜〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜〜〜…」 超人種・旧世代・国籍年齢を問わない楽団員たちに詰め寄られ、仮面の男、楽団長のジマーは困ったように首を捻り、しかしがっくりと脱力した。「仕方〜ないです〜……公演は〜中止にして〜……警察に通報しましょう〜……お客さんには私から謝ってきます〜から〜、あなたたちは舞台裏から出〜な〜い〜よ〜う〜に〜……おやあ?」 ジマーと楽団員たちはヒーローの存在に同時に気づき、コソコソと一同に集まると何かを相談し始める。(「いけそう?」「いやさすがに」「でもそれしか」「頼むだけでも」「せーので一気にいこう」「それだわ」「せーのっ」)……そして一斉にヒーロー三人の元に駆け寄ると、勢いよく肩を掴んだ!
「「「「ヒーローさん!! 楽器演奏できますか!!!!!?????」」」」
–––––––––––––––––判定①:<心理> or <知覚> or <隠密>……行方不明の団員を探す×2判定②:<操縦>+20%……楽団に混ざり演奏する
失敗時:次のチャレンジイベントでグリッドを使えなくなる。–––––––––––––––––

【状況3-A:演奏をしているヒーロー】

 状況に流されて、あるいは快く引き受けて、君は『スイング・ヒューマンズ』と演奏を共にすることになった。 観客への挨拶を終えたジマーが振り返り、館内が静寂に包まれる……ジマーが指揮棒を振り下ろした、その瞬間だった。 君は自分の体の内側から、ふつふつと力が湧き上がるのを感じる。手を、指を、次にどう動かせばいいのかがスムーズに理解できる。他の楽団員たちの息遣いがよりリアルに感じられ、力強い一体感を得る。今の状況下であれば都合がいいが、明らかに普通ではない状態だ。これは一体…? その奇妙な力は、君が演奏を終えるまで続いた。 演奏を終え、団長のジマーは興奮覚めやらぬ客席へと向き直るとぺこりとお辞儀し、挨拶を始める。その挨拶の中で、彼は一週間後に控えたA市の音楽祭の宣伝をした。
「近々〜我々は〜A市の音楽祭で記念パレードを行います〜。 自然豊かで素敵な街なので〜、ぜ〜ひ〜ど〜う〜ぞ〜!」

【状況3-B:行方不明者を探すヒーロー】

 君たちは現場に残された痕跡を辿り、行方不明になった三人の楽団員を探す。 いなくなって間がないというのであれば、そう遠くまでは行っていないはず。捜索を続ける君たちは、会場の側の駐車場に、奇妙なトラックが停車していることに気づいた。トラックの側には3人の男たちがいる──二流ヴィラン『ザ・ウィークメン』の、ジェットサム、オニオンヘッド、ラック・リムーバー!ジェ「殺してねえだろうな」オ「当ったり前だろ! ちゃんとチームのポリシーは守るぜ、俺は!」ジェ「気をつけてくれよ、今回のクライアントは大ハズレだ。あのシャンデリア、どぉーにもキナくせぇ。手は打ったが……さて間に合うか」ラ「うーん、あの仮面の楽団長、どこかで見たことがあるような、うーん」 三人の男たちは一仕事終えたような風情でトラックを発進させようとしている。その荷台からは、『スイング・ヒューマンズ』の楽団員の衣装がちらりと垣間見え…! 今なら間に合う、トラックを止めろ!

【状況4】

「うわっヒーローだ、思ってたより早ェ! 手ェ出すなズラかれ!」「あー!! 思い出した!! あの仮面の男!! 200年前に見たぞワシは!!」「ジイさん逃げるぞ!!」「ワシは見たぞーっ!!!」 君たちに見つけられたことで、ザ・ウィークメンの三人はトラックを捨ててその場から逃げ出してしまう。逃げ足だけは早い彼らは、君たちの追跡を撒き、すぐにその場から消えてしまうだろう。 トラックの中には、気絶した三人の楽団員たちが捕まっている。軽い怪我こそ負っているが、命に別状はない。そして先ほどのザ・ウィークメンたちの会話から察するに、どうも、この件は裏で手を引いている何者かがいるようだ…。

【エンドチェック】

□ヒーローたちが、この事件を手引きする何者かの存在を知った

【解説】

 PCたちが事件の裏で何か手を引いている存在がいると察するシーンであり、ジマーになんらかの能力があると察するシーン。 ジェットサムが言っている「手は打った」は、エントリー3でPC3にメールを送ったことを言っている。ラック・リムーバーはファースト・カラミティ以前の記憶を持っている不老不死の仙人の為、過去にジマーを見た記憶があるのだが、あいにく彼の言葉はボケ老人の言葉と(本人にすら)思われがちな為、周囲はあまりまともに取り合わない。このシーンではPCと詳しい話をさせる前に、ザ・ウィークメンのトリオは退場させてしまう事が好ましい。 チャレンジ判定に失敗した場合は失敗時のデメリットを適応した上で、誘拐された楽団員を助けるのに時間がかかってしまった、としてシーンを進行してもよい。

【リトライがマイナスになった時】

 チャレンジ1時点でリトライがマイナスになってしまったのであれば、ヒーローたちは調査も虚しく、スイング・ヒューマンズ、ジマー、A市の真実を知ることなく、祭り当日を迎える。何者かによる狙撃、それによるジマーの素顔の露呈、突如現れた地獄兵団の登場、大パニックとなったお祭り会場で決戦フェイズに突入することになるのだ。スイング・ヒューマンズによる援護は受けられないかもしれないし、或いはそれでも彼らは演奏を行うかもしれない。 辛い戦いを乗り越えた後、ヒーロー達は遅れて真実を知ることになるだろう。

【クエリー1:アルセナールは山の上】

 舞台:田舎町A市(音楽祭まであと3日) 登場キャラクター:PC1(他PCがいてもいい)

【状況1】

 『スイング・ヒューマンズ』楽団員誘拐未遂事件を受け、PC1は改めてA市の状況について調べている。さて、どのように調べよう?

【状況2】

 調査の結果分かったことは、A市は一見山に囲まれたのどかな田舎町に見えるが、山の上流にエネルギー企業『ダムダムエネルギー』の水力発電基地があり、最近ではA市周辺にもダム開発計画の話が浮上しているということだった。 A市の周辺の土地を企業『ダムダムエネルギー』は強引に買収し、町の住民たちにも立ち退き要求を出しているが、住民たちはこれに反発。開発計画は膠着状態が続いているのだという。 そんな状況であるならば、尚の事、音楽祭の開催や一流楽団を招く余裕があるのは不可解だ。君は市長を問い詰めてみることにした。

【状況3】

「そんな…! 話違うでねが!」「待ってぐだせ! その件にづいではこぢらでも対処すて、ああっ、待って、待っ…!!」 君が市長のもとを訪れた時、市長はどこかと電話をしているようだった。しかしどうもやり取りはうまくいかなかったらしく、電話を切られた市長はがっくりと肩を落とし、その場に崩れ落ちてしまう。「終わった……この町は、終わった……!!」 市長はヒーローの存在に気付くと、ワンワンと泣きながら事情を説明し始める。
「この町は少す前がら『ダムダムエネルギー』でいう企業がらダム開発計画のオファーを受げでだんだ。だが、市民の反発もあって、それを断ってた。んだげんと、過疎っちまってるこの町で、それを断り続げるごどは難すい……」
「んだら、『ダムダムエネルギー』の方から提案すてぎだんだ。この町を残す価値を提示でぎれば、ダム開発計画は一度見直してくれるって。具体的には、町の観光資源を提示す、十分な集客が出来るんだら、ていうものだった。んだげんとこだな辺鄙な町にほだなものがあるはずがねえべ」
「ほだな時、声をがげでぐれだのが『スイング・ヒューマンズ』だった。団長さはこの町の出身者らすくて、『スイング・ヒューマンズ』の協力を得で、音楽祭は大体的さ行う予定で、『ダムダムエネルギー』の提示すてぎだ集客数も期待でぎるものになりそうだったんだ」
「んだげんと、ほだな話決まってがら、『スイング・ヒューマンズ』の周りで不穏な事件起ごり始めだ。そすてさっきの電話で、『ダムダムエネルギー』が、ほだな危険な集団を使うべどするのであれば、以前の提案は反故にするど……」
「ヒーローさ……すまねえ……やっぱりお礼は払えそうにねえ……。 でもせめて最後のお祭りはちゃんとやりてえ……ご、護衛の仕事、続けてもらえねえかなぁ!?」 市長はすっかりと諦め、意気消沈しながらも、すがるように君に問う。 その問いに、そして追い詰められたこの町の状況に、君はヒーローとしてなんと答えよう?

【エンドチェック】

□ヒーローが市の状況を知った□グリッドを一点獲得した

【解説】

 PC1が、A市の状況を正確に理解するシーン。ある程度PCの善意を想定したクエリーになっているが、仮にPC1がそういうタイプではないとGMが判断するのであれば、クエリーの内容を変更してしまっても構わない。もちろん、あまり善意的ではないPC1に対し、善意を期待するようなクエリーを投げかけ、相手の信念を答えてもらう、とするのも決して悪いことではない。

【クエリー2:デッドライン・タンゴ】

 舞台:PC3が居そうな場所(百周年祭まであと2日) 登場キャラクター:PC3

【状況1】

 ある日、君の前に『ザ・ウィークメン』の構成員の一人、ジェットサムが現れた。「やあ、暇か? おっと、タンマタンマ、戦う気はないんだ。チコーっと話を聞いてくれや」「シャンデリアの建てつけについて相談したいことがあるんだよ」 ジェットサムはニヤニヤと意味深に笑いながら、君にそう持ちかけてくる。ヴィランの話を聞いてやる義理はないが、どうしたものか。

【状況2】

「話を聞いてくれて助かるぜ」 ジェットサムは君にこんなことを言い出した。
「単刀直入に言うんだが、実は今の仕事先と揉めててね。 俺たちは殺しはしねえってポリシーの下で悪党やってんだが、 やっこさんそのルールに今になってケチをつけてきやがった」
「シャンデリアの一件は俺たちじゃねえぜ。 別口で雇われてる誰かが居たのか、本人たちが先走ったのかは知らねえが、 迷惑な話だよ。困ったら俺たちに罪をなすりつけようって魂胆がミエミエだ」
「最近じゃ、ヤベー相手とも連絡を取り始めたらしい。 宇宙から来たオトモダチさ、身の程知らずってのは怖いねえ。 巻き添え食らうのは御免だよ」
「そういう訳で、俺たちゃさっさとこの件から手を引きたい。 が、弱小ヴィランの世渡りにゃ色々難しい問題があってね。 手を引くにもそれなりの理由が必要だ。 つまり──お前さんにうまい情報をくれてやるから、 きっちり先方をぶちのめしてくれないか? その間に、俺たちはさっさとズラかる。な、Win-Winだろ?」
「俺はアンタを信用してるからこの取引を持って来たんだ。 警察に直接タレ込むよりも、アンタみたいなヒーローに伝えた方が 確実だと思ったから、さ」
 ジェットサムは君に取引を持ちかけた。はっきりとは口にしていないが、情報を対価にザ・ウィークメンを見逃せ、と言っているのだ。 さて、どうしよう?

【状況3:取引に応じた】

「愛してるぜヒーロー!」 ジェットサムは喜ぶと、君に小さなデータデバイスを投げ渡した。「そこには今、俺たちを雇ってる組織『ダムダムエネルギー』の、これまでやらかしてきた違法行為の情報が、きっちり半分だけ入ってる。無事に俺たちが手を引ければ、あんたに残りの半分を渡そう。奴らが検挙されて、再起不能になるだけの情報をな」「それと、おまけだ。俺は最後の仕事として、例の音楽祭で、『スイング・ヒューマンズ』の団長の狙撃を依頼されてる。最初は殺せっつー話だったんだが、丁重な審議を重ねた結果、公衆の面前でヤツの仮面をカチ割るっつー方向に落ち着いた」「でも、ま、人生何が起きるかわかんねえし? うまくいかねえこともあるかもしれねえよなあ?」「つーワケで、ま、あとはよろしく頼むわヒーロー」 ジェットサムは陽気にそう言うと、さっさとその場を立ち去ってしまった。

【状況3:話を聞かなかった/取引を断った】

「参ったねドーモ。ま、いいさ。それなら『こっち流』にやらせてもらう」 ジェットサムは肩を竦めながら銃を抜き、戦闘態勢に入ると、おもむろに君にこんなことを言い出した。「俺は最後の仕事として、例の音楽祭で、『スイング・ヒューマンズ』の団長の狙撃を依頼されてる。最初は殺せっつー話だったんだが、丁重な審議を重ねた結果、公衆の面前でヤツの仮面をカチ割るっつー方向に落ち着いた」「……でも、人生何が起きるかわかんねえし? うまくいかねえこともあるかもしれねえよなあ?」「上手くやれるといいねえ、ヒーロー」 ジェットサムは意味深にそう言うと、君といくらか戦った末に、素早くその場を逃げ出してしまった。

【エンドチェック】

□ヒーローがジェットサムと話をし、狙撃の件を知った□グリッドを一点獲得した

【解説】

 ジェットサムから取引を持ちかけられるシーン。シャンデリアの件に関してはPC3当人は知らないことだが、PLは理解している情報ではある為、ジェットサムから一方的に告げられる意味深な言葉としてごり押してしまっても問題はない。 舞台に関しては、あまり人目につかない裏通りや、雰囲気の良いバーなどを想定して書いているが、PC3の傾向に合わせて、都合の良い舞台を調節すると良いだろう。敢えて人通りの多い公園などで取引話をしていても、それはそれでサマになる。

【クエリー3:コパカバーナの昔日】

 舞台:田舎町A市(音楽祭まであと1日) 登場キャラクター:PC2(他PCがいてもいい)

【状況1】

 以前の誘拐未遂事件の際、ザ・ウィークメンのメンバーの一人、ラック・リムーバーは、『スイング・ヒューマンズ』の団長、ジマーを指して奇妙なことを言っていた。あの男を二百年前にも見た、と。更にジマーは、演奏に携わる者に力を与える能力を持っているらしい。 君は真相を確かめるため、ジマーについて調べていた。するとある日の夜、ジマーが音楽祭の打ち合わせを終えた後、こっそりと一人でA市の外れへと向かう姿を見た。君はジマーを追跡する。

【状況2】

 ジマーは人目を避けるようにコソコソとシャッター街を抜け、山の麓にひっそりと佇む廃墟へと入っていく。君が廃墟の中に耳をそば立てれば、中からはジマーの話し声が聞こえてきた。「……ようやくここまで……長かった……」「……ぜーんぶあなたたちのおかげ……」「……全て……うまく……計画……」 ジマーの声は、まるで誰かと話しているような調子だ。しかし相手の声は聞こえない。しばらくすると話し声は止み、ひそやかなトランペットの演奏が夜空に響き始めた。 君は突入してジマーを取り押さえてもいいし、こっそりと中の様子を伺ってもいいし、彼が出てくるのを待っていてもいい。さて、どうしよう?

【状況3】

(突入を想定した描写。状況2でPCが突入しない場合は適宜描写を変更して調節すること)「な〜〜〜〜に〜〜〜〜ご〜〜〜〜と〜〜〜〜!?」 君が中に突入すると、廃墟の中にはジマーしかいない。ジマーの前には古い写真が飾られていた。この廃墟のかつての姿らしいそこには、楽器を持った男女の姿が写されている。 写真を見るジマーは仮面を外していた。その仮面の下にあった顔は、薄紫色の皮膚に赤い髪、特徴的な目鼻立ち。それは地獄兵団として悪名高い、ジオット人の顔だ!
「キャ〜〜〜〜〜〜見〜〜〜〜な〜〜〜〜い〜〜〜〜で〜〜〜〜! ……ああ〜……見られて……しまいました〜……。 ……言い訳しても、大丈夫ですか〜?」
「私〜、多分ジオット人なんですけど〜、どうも故郷の記憶がないのです〜。 お医者様が言うには〜、おそらくどこかで浴びた宇宙線が原因らしく〜。 その影響なのか〜、ジオット人の本来の寿命なのかは分からないのですが〜、 もう随分長生きなのです〜」
「私が初めて地球に来たのは〜、今から二百年は前のことになります〜。 ここの山の中に落ちて〜、当時のこの町の人に助けてもらったんです〜。 当時はまだ〜、ファースト・カラミティの前でしたし〜、 地獄兵団も地球には来てませんでしたので〜、 私が何者なのか、誰も分からなかったんですね〜」
「当時〜、ここには酒場がありました〜。 今ではすっかり寂れていますが〜、 私に音楽を教えてくれたのはこの町の人たちなのです〜。 私には故郷の記憶はありませんし〜、結局思い出せてもいないので〜、 私にとってのふるさとはこの町なのです〜。 だから〜町がダムの底に沈むのは嫌で〜音楽祭の話を持ちかけたのです〜」
「まあ〜、その頃の人はみんな先に死んじゃってますし〜、 ファースト・カラミティがあって〜 この町は私のこと忘れちゃいましたけどね〜」
 自分の話を終え、ジマーはヒーローへ問いかける。「私の正体は〜公開しても〜構いません〜。ですがどうか〜それは〜音楽祭が無事に終わってからに〜してもらえないでしょうか〜。今回の音楽祭は〜ど〜しても成功させたいのです〜」 君の答えは…。

【エンドチェック】

□ヒーローがジマーの過去を知った□グリッドを一点獲得した

【解説】

 PC2がジマーの過去を知るシーン。状況3は突入を想定した状況で書いているが、PC2が突入せず、こっそりと中を覗くのであれば、トランペットを演奏している関係で仮面を外していたとすればいい。出てくるのを待つ、とするのであれば、ジマー本人が油断して、仮面を外したまま出てきたということにすれば良い。素顔がジオット人であることをPLおよびPCが知れば、自然な流れで詰問を誘導できるだろう。

【チャレンジ2:シング・シング・シング!】

 舞台:A市(音楽祭当日) 登場キャラクター:全員

【状況1】

 音楽祭当日は快晴に恵まれた。 シャッターの目立っていた商店街は、その日は町の人々が総出で店を開け、屋台を並べた。 往来ではどこでも自由な演奏が許可され、噂を聞いてやってきたアマチュア音楽家や音楽ファンたちが気ままにセッションやライブを行っている。 パレード参加者であるスイング・ヒューマンズの楽団員たちも、パレードの時間までは自由行動が許可され、他の音楽家たちに混ざりながらセッションを行っている。若いギタリストの横で着物を着た老人が三味線をかき鳴らし、それに合わせて楽団員のホルンの音色が響く。町ぐるみの小規模な祭りだからこそ見られる自由な組み合わせの数々に、来訪者たちも喜び、SNSでも積極的に話題に取り上げられ、評判は上々だった。「あ〜! ヒ〜ロ〜さ〜ん〜」 周囲を見回っている、あるいは祭りを堪能している君たちに、ジマーが陽気に声をかけてきた。「これ〜持って〜ください〜ちょうど三人ぐらい〜足りなくて〜」「大丈夫大丈夫〜楽しいのが大事です〜」「とりあえず〜まずは音出しましょ〜」 ジマーの口車に乗せられ、あるいは快く応じながら、ヒーローたちは往来のど真ん中で突発セッションを行うことになってしまった。楽器はいくつか候補があるようで、好きなものを選べるらしい。周囲では現役ヒーローの参加を見た観客たちが興味深げな視線を送っているし、共演者たちも興奮した眼差しを向けている。今更逃げ出すことは出来なさそうだ。
「大丈夫です~私がリードしますよぉ~せ〜の!」 ここまで来たなら仕方ない。何をどんな風に演奏しようか?
–––––––––––––––––【判定】※チャレンジ判定ではない・楽器を演奏する:自由な技能(補正+20%)
 判定に成功したPCは、【状況2】のチャレンジ判定でプラス20%の補正を獲得する。失敗した場合、プラス補正は獲得しない。 これはチャレンジ判定ではないため、失敗したとしてもリトライを消費することはない。この判定は全員が行う(全員が何らかの楽器を演奏する)。
 演奏する楽器は自由に選択して構わない。ギター、ドラム、トランペット、サックス、タンバリン、トライアングル、カスタネット、マラカス、リコーダーなどなど、プレイヤーはヒーローが演奏していたら面白そうだと思う楽器を自由に選んで構わない。君のヒーローはノリノリで演奏をやりきるだろうか? それとも不慣れな演奏に必死についていくだろうか? 判定に用いる技能と併せ、どのような演奏を行ったのかという演出を併せて行うと良いだろう。–––––––––––––––––

【状況2】

 そうこうしている間に祭りは進み、やがて音楽祭の目玉である『スイング・ヒューマンズ』のパレードの時間が迫る。 その頃には、インターネット上での評判を耳にしてか、『スイング・ヒューマンズ』の演奏を目的としてか、大勢の観客が集まっていた。人々は観客席でカメラを向け、耳を傾けながら、一様に期待に満ちた眼差しを向けている。 楽団員たちはパレード用の衣装に身を包み、大通りに整列する。誰の発案か、楽団員たちの制服は、ヒーローたちそれぞれのイメージカラーを用いたトリコロールカラーで仕立てられていた。
 総勢百人の楽団員たちが、各々の楽器を手に、置物のようにぴたりと静止する。時間が止まったような静寂の後、最前線でドラムメジャー(指揮者)を務めるジマーが鋭いホイッスルを吹き鳴らした。 軽快なドラムが一定のリズムを刻み始める。単調ですらある長い前奏が観客たちを興奮で焦らしていく。一人、また一人と観客たちが手拍子を打ち鳴らし始める。 トランペットのメロディーがドラムと手拍子のリズムに伴う。一つ、また一つと楽器の数が増え、すべての楽器が参戦すると同時、ジマーは手にしたバトンを空へと放り投げ、くるりと前方へ振り返る。快晴の空をくるくると回転したバトンは、そのままジマーの手の中に納まった。 同時、一層強いホイッスルの音が山間にこだまし、百人を超える人間たちが、一つの生命のように動き始める!
 ──その瞬間、ヒーローたちは見た。時空が裂けるように青空に現れた赤い亀裂と、その奥からやってくる地獄の獄卒めいた兵士たちの姿を。そして観客に紛れ、街のどこかからジマーを狙うジェットサムの冷たい殺気を! パレードの邪魔をさせるな!
–––––––––––––––––【チャレンジ判定】判定1:ジェットサムのジマーへの狙撃を止める…<知覚>-10%判定2:地獄兵団の突撃から楽団を守る…<白兵>-10%判定3:観客席がパニックにならないよう誘導する…<作戦>-10%
【失敗時】判定1:2d6点のスティグマを受ける。判定2:2d6点のダメージを受ける。判定3:2d6点のショックを受ける。–––––––––––––––––
 君たちが見事にすべてのチャレンジに成功し、ジマーを守り、楽団員を守り、観客席を守ったのであれば、会場は祭りの興奮のまま、突然現れた地獄兵団の姿をスリルある演出として誤認し歓声に包まれる。「あっれえ!? 俺たちの戦争の観客がこんなにいるぜえ!?」「ヨッシャ! じゃあいつもより多めに殺すか! 俺を見ろ!!」 地獄兵団たちは奇妙なシチュエーションに首を傾げつつも、細かいことは考えず、目の前をちょろちょろするヒーローと、その周囲にいる楽団員たちをひとまず先に殺そうと襲い掛かってくる。 『スイング・ヒューマンズ』たちはヴィランの襲撃に恐怖を感じつつも、皆、一糸乱れぬ演奏を続けるだろう。ヒーローたちが自分たちを守ってくれると信じて。
 決戦の舞台はパレードの最中! ヒーローよ、祭りの興奮を守り抜き、悪党どもにはご退場いただきつつ、演奏を途切れさせることなくパレードを完遂させるのだ!
【狙撃失敗の一コマ】「ああ、外れた外れた! 残念だなあ!ったく、俺の腕は本当に錆びついてやがる!ま、これで義理は果たした。仕事終わり! こっからはオフ! おーい兄ちゃん、ビールくれビール!」 観客席のとある中年男性はわざとらしくそう言うと、以後、ヒーロー達への追撃も手助けもせず、舞台裏での観戦に徹することにした。

【エンドチェック】

□パレードが始まった

【解説】

 祭りを成功させる為のチャレンジ判定にして、ヒーロー達に愉快に楽器の演奏を行ってもらうシーン。チャレンジ判定が全て成功すれば、祭りの熱気により、観客達は事態をそうシリアスに捉える事はない。 チャレンジ判定に失敗してしまった場合は、失敗時の効果を適応した上で、決戦フェイズに突入する。観客達はパニックになるかもしれないし、ヒーロー達だけが傷つくに留まり、人々は事態に気付かないかもしれない。

4.決戦フェイズ

【戦闘情報】

【エネミー】

・ザ・チャンピオン・ミュージシャン・ロードウォリア・スタンダートベアラー・ピットマン

【エリア配置】

■PC初期配置 エリア1・エリア2■エネミー初期配置 エリア4:ザ・チャンピオン、ミュージシャン エリア3:ロードウォリア、スタンダートベアラー、ピットマン

【勝敗条件】

勝利条件:敵の全滅敗北条件:味方の全滅

【備考】

・エリア2・3を『強化結界:運動』『強化結界:生存』として扱う。・行動順ロール直後のタイミングで『スイング・ヒューマンズ音響効果表(1d6)』を振り、出た目の効果をそのラウンドのあいだ戦場にいる全てのキャラクターに適応する。

【エネミーの戦法】

 GMがヴィランを動かす上で留意しなければならない情報はあまりない。唯一気をつけた方が良い点は、ミュージシャンが『強化結界:運動』の効果を受けてしまう場合、バンジーを高確率で成功させてしまう為、ミュージシャンはエリア4からあまり動かさない方が良いだろう。 演出としては、一糸乱れぬ演奏を続ける『スイング・ヒューマンズ』を守り、間を縫いながら、まるでパレードの演目のようにヒーローたちはヴィランと戦うことになる。折角の特別なシチュエーションを生かすような演出を考えてみると面白いかもしれない。

【スイング・ヒューマンズ音響効果表】

【スイング・ヒューマンズ音響効果表(1d6)】

  1. ドラムロール! どんどんテンポが早くなる! ターンカウンターを-3する。

  2. サックスのソロ! メロディアス! 行動順ロールを振り直す。

  3. クラリネットの優美な演奏! 心が落ち着く! 全てのパワーの代償が半分になる。

  4. パーカッションが盛り上げる! テンションが上がる! 全てのパワーの射程が1伸びる。

  5. フラッグ隊ゾーン! よく見るとスタンダードベアラーが混ざっている! 与えるダメージの値が1d6上昇、受けるダメージの値が3減少。

  6. 地獄兵団のミュージシャンが飛び込み演奏をしかけてきた! トランペッターが負けじと対抗! 突発セッション対決だ! 全員【意志】判定を行い、失敗で回避判定・攻撃判定に-10%。成功で回避判定・攻撃判定に+10%。


(※【スイング・ヒューマンズ音響効果表(1d6)】の効果はラウンド終了時まで続き、ヒーロー・ヴィラン双方に適応する)

5.余韻フェイズ

【各PCの結末(一例)】

【PC1の結末】

 祭りの翌日、君は改めてA市の市長から礼を告げられる。曰く、大手広告代理店の社長がSNSで音楽祭の評判を聞き、是非提携して来年以降も続けていこうと話を持ちかけてきたのだという。「ヒーローさたちのおかげで、この町は生まれ変われたンだ。 来年も是非! 是非来て下せえ! 次もきっと、楽しいお祭りにしてみせますんで!」 市長は希望に満ちた目で君にそう言うと、何度も何度も頭を下げて、何度も何度も握手して、何度も何度も礼を言った。

【PC2の結末】

 君は音楽祭のあと、改めてジマーから、個人的に礼を言われる。音楽祭で自分達を守ってくれたヒーロー達のおかげで、音楽祭が素晴らしい形で終わりを迎えたからだ。「わたし〜! 地球に来れて良かったなあ〜!」 ジマーは感激しながらそう告げる。そして思い立ったように、おそらくは長らく秘めていたのであろう悩みを、改めてヒーローに相談した。「わたし……記憶が戻っても、地球の人たちのこと〜……好きなままでいられますかねえ〜…?」 さて、どう答えよう?

【PC3の結末】

 君はジェットサムから残りのデータの半分を受け取り、あるいは君自身の実力で、『ダムダムエネルギー』の悪行を暴くことに成功する。君の活躍によって全てが明らかになったダムダムエネルギーには正式な捜査の手が入ることになり、各地で行われていたダム建設計画は白紙に戻された。 そのどさくさに紛れ、ザ・ウィークメン達は逃げ果せたようだ。抜け目のない彼らが次に君の前に姿を表す時は、今回とは違った形での対決になるだろう。 そうして君は君の生活に戻っていく。さあ、今日は何をしようか?

6.NPC情報

【NPC情報一覧】

【スイング・ヒューマンズ】

 国内でも有数のマーチング・バンド楽団。百名を超える楽団員を持つ大規模な楽団であり、旧世代・超人種・国籍・人種・年齢を問わない混合編成で構成された楽団。30年ほど前から活動を続けている大御所楽団であり、一流の呼び声も名高い。楽団員個々の優れた演奏技術と、楽団全体の一糸乱れぬパフォーマンスが評判で、チケットは発売後すぐに完売することも多々。 楽団員たちはジマーの面接によって選ばれた者たちばかり。評価は『音楽が好きかどうか』。団長であるジマーの能力については薄々気付いているが、正体までは知らない者がほとんど。団長と楽団員の仲は良好なものだ。

【楽団長ジマー】

 『スイング・ヒューマンズ』の楽団長。頭部を覆面で覆い、長袖に手袋と全身の露出が一切ない、見た目だけなら極めて不審な男。陽気で音楽好きなひょうきん者だが、真面目なのかふざけているのか分からない口調と相まり、見る者に不信感を抱かせがち。 その正体は、200年以上前に当時のA市に落ちてきた宇宙人。なんらかの宇宙線の影響により、故郷と過去の記憶を完全に喪失して地球へとやってきた。当時のA市の人々に救われ、交流し、音楽を学んだ。人ならざる者ゆえの長寿による友との別れと、ファースト・カラミティによりA市から自分の記憶が失われたことを期に都会へ。紆余曲折の末、30年前に『スイング・ヒューマンズ』を立ち上げた。現代の種別としてはハービンジャーに当たる。別に人間は食べない。 故郷の記憶がない為、本人にも確証は持てていないが、その素顔は『地獄兵団』として悪名高いジオット人の特徴に極めて類似している。当人の持つ能力もミュージシャンの力に近いもの。しかし彼自身は戦闘行為に対する関心は低く、自分がジオット人かもしれない可能性を恐れている。立ち絵(全身) / 立ち絵(バストアップ)

【A市の市長】

 これといった産業のない小さな田舎町、A市の現市長。頭はバーコード、体は小太りないかにもなおじさん。田舎訛りが強い。一週間後に控えた音楽祭の為、ヒーローにゲストである『スイング・ヒューマンズ』の護衛を依頼する。 故郷を愛しており、ダム開発計画には反対の立場だが、町の経済状況故に『ダムダムエネルギー』の要望に強く反対し続けることが難しい立場に立っている。起死回生を賭け、音楽祭に全てを賭けようとするが…。 音楽祭の提案と声をかけてくれた『スイング・ヒューマンズ』に大きな恩を抱きつつも、何故彼らが自分たちのような田舎町を手助けしてくれるのか疑問に思っている。

【ダムダムエネルギー】

 エネルギー開発会社。主に水力発電を手がけており、地方都市などを買収してはダム建設を続けている。近年上場目覚ましい大手企業の一つだが、その急激な成長の裏で、商売の為に悪どい手段に手を出していた。 A市の土地を買収しダム建設を行おうとするが、予想外の『スイング・ヒューマンズ』の手助けを邪魔に思い、『スイング・ヒューマンズ』への妨害行為を繰り返していた。しかしヒーローの介入により、妨害が難しくなったことで、ついに強硬策を選択。あろうことか地獄兵団へ(なんらかの手段をもって)情報を流し、人的被害を出してでも音楽祭を台無しにしようとしていた。