賽の目は嗤う
「さあダイスロールだ、君たちの運命はここで別たれる!」「我々はG6。名も知らぬヒーロー達の理想を信じ、君たちの活動を助けたいと願う者」「何故、ヒトは死ぬのでしょうね」
━━かくして、賽は投げられた。
【PC1:ゲーム・マスター】
君はある日、ヒーローとしてヴィランと戦っていた。激しい戦いの末、ヴィランを追い詰めた君だったが、そこに場違いな声が投げかけられた。「美しき破滅の終焉、華やかな逆転劇、ご都合主義の三文芝居、君たちが好きなのはどれ? さあダイスロールだ、運命はここで別たれる!」 ゲーム・マスターと名乗った存在は、不思議な能力で君たちの戦いに介入した。そして混乱をもたらした末、君の前から姿を消してしまった。【PC2:逮捕】
ある日、君の知り合いの科学者が逮捕された。 罪状は無許可での人体実験、およびそれによる殺人、人体改造、エンハンスドの生産というものだった。警察の手によって明かされたそれは、君にとって衝撃的なものだった。君が知る限り、その科学者がそんなことをするはずがなかったからだ。 面会に訪れた君に、科学者は打ち明ける。「どうして自分があんなことをしたのか、どうして自分にあんなことが出来たのか、全く思い出せないんだ」【PC3:依頼≒脅迫】
君のもとに、ある日、ゴッズ・4・ハイアのAIであるガラテイアが連絡を入れてくる。ガラテイアはPC3を脅迫し、ゲーム・マスターを名乗るヴィランについて調べるよう告げる。『ゲーム・マスターの調査を行うまで、あなたの行動を全て監視します。逃げようなどと考えないように、ヒーロー』 君はその依頼、あるいは脅迫を、受け入れた。【イベント0:セカンド・カラミティ】
【状況1】
歴史的な災禍。 命を散らした多くのヒーロー。 蹂躙し台頭したヴィラン。 喪われた多くの生命。 全てを破壊し尽くした怪物、ザ・スローター。【状況2】
━━あれから数ヶ月がたった。 世界は今日も、デッドラインに立っている。【エンドチェック】
□セカンド・カラミティを終えた【解説】
【状況1】で各PCのセカンド・カラミティ当日の様子を聞くこと。 一通り話を聴き終えたのち、状況2を読み上げ、各エントリーへと入っていく。 シナリオの雰囲気と世界観を理解してもらうための前振り、トレーラー的なシーンとして演出することが好ましい。【イベント1:ゲーム・マスター】
【状況1】
「これで私を追い詰めたおつもり?」 激しい戦いの末、君は大勢のヘンチマンを倒し、メイヘムの幹部である女──マダム・ヘルを追い詰めることに成功した。 戦いによって、君も彼女も既に手負い。これ以上戦いが長引けば、どちらかが命を落とす戦いになるだろうことは明白だった。しかし、マダム・ヘルが引く気配はない。「私はあなたを殺せるけれど。……あなたは私を殺せるかしら、ヒーロー?」 荒い息を吐きながらも、彼女は君を嘲るように、挑発するように告げる。 ……たとえ死んでも、彼女はこの場を譲らない気だ。君には、それが理解できた。【状況2】
そこに場違いな声が投げかけられた。「月夜の中で逃げるヴィランに追うヒーロー。このチェイスの結末は如何に? 美しき破滅の終焉、華やかな逆転劇、ご都合主義の三文芝居。 何か一つを選ぶのならば、運命の女神が微笑むのはどちらか!」 月明かりに照らされながら声をかけてきたのは、派手なマスクで顔を隠し、マントを翻した、見たこともない超人種だった。「我が名はゲーム・マスター! さあダイスロールだ、君たちの運命はここで別たれる!」 ゲーム・マスターと名乗った超人種は、君たちに向けて小さな何かを放った。それは奇妙な文様が記された、二つの十面体だった。十面体が転がり、真上の面に記された奇妙な文様が光を放つ──そして、君たちの運命は変えられた。【状況3】
あの夜から数日後。君は『ゲーム・マスター』について調査を行っている。 その運命が如何なるものであったにせよ、君は確かにあの夜、『ゲーム・マスター』によって運命を操作されたという実感があった。ゲーム・マスターが特殊な力を持っているのは間違いない。 『ゲーム・マスター』は一月ほど前から活動が確認され始めた超人種であり、自身をヴィランともヒーローとも名乗っていないが、夜な夜な愉快犯的かつ無差別にその力を振るっているのが確認されていた。 ヒーローなのか、ヴィランなのか、危険な人物なのか、それとも…? 調査を行う君は、遂に情報を手に入れる。ゲーム・マスターがインターネット上で犯行予告を発表したのだ。 その内容は、『明日、ロックウェイブ超人種監獄を舞台にゲームを開催する』というものだった。【エンドチェック】
□PC1がゲーム・マスターの能力を理解した□PC1がゲーム・マスターの予告を知った【解説】
PC1がゲーム・マスターと初遭遇し、その能力を知るシーン。 この時点のゲーム・マスターは、迷惑ながらどこか憎めない、本気の『悪党』ではないようなイメージで演出すると良いだろう。この時点でゲーム・マスターがA-Zに感染しているか否かはGMやPLの解釈に委ねる。 1d100の演出は、結果だけを提示し、そこに至るまでの過程の詳細はPLやGMの演出に委ねて構わない。超偶然的に床が崩落するのかもしれないし、映画のカットが切り替わるように、本当に何が起きたのか分からないままに、世界のカットが変わるのかもしれない。【イベント2:逮捕】
【状況1】
ここはロックウェイブ超人種監獄。超人種犯罪者のみを収容し、超人種の看守のみで収められる、世界一厳重な海上刑務所。 君はいま、その監獄の面会室を訪れている。 特殊ガラスを挟んで君と相対しているのは、君の知人であった、とあるテクノマンサー。 彼は『誘拐』と『殺人』、『違法生体改造』の罪で逮捕された。彼の自宅から、肉体改造を施されたホームレスや、行方不明になっていた子供達が、死体となって発見されたのだ。死体となった人々には、改造手術を施された痕跡や、人体実験のあとが色濃く残されていた。 しかし、君の知るその男は、そんなことをするような人間ではなかった。そのため、君は彼にいったい何があったのかを問い詰めるために面会を申し込み、ようやく相対することが出来たのだ。「よお、良くきたな」 テクノマンサーは君に声をかける。朗らかな言葉とは裏腹に、その顔はげっそりとやつれ、憔悴が見て取れた。テクノマンサーは申し訳なさそうに瞳を伏せ、君に告げる。「……こんな形で、お前に会うことになるとは思わなかった」【状況2】
「……正直なところ、何で自分があんなことをしたのか、全く分からないんだ」 テクノマンサーは君に彼の事情を打ち明ける。「手を動かしている最中は、それが当たり前のことだと思っていた。なんでそんなことをしていたのか、全く疑問を抱いていなかった……。実験が目指す結果を出せるかどうか、そこにしか興味が無かったんだ。飯もまともに食ってなかったと思う。 そもそも、俺の専門は工学だ。そりゃまあ、確かに、人様よりは出来のいいオツムをしてると自負してるが……どうしてあんなことが出来たのか、俺にも分からない。専門外のはずなのにな」「……まるで、自分が自分じゃなかったみたいだった」「洗脳の線を警察だって調査してくれたさ。だが……だが、それが何だ? 悪気がなけりゃ許される、そんなわけがないだろう? 力には責任が伴う。それなのに……動機は分からないのに、俺がやったっていう自覚も、記憶も、感触も、確かに覚えてる。俺は子供たちの腹を割いて……中に手を……それで……」 憔悴した様子で君に事情を説明したテクノマンサーは、ぐったりと椅子に腰を下ろしながら、君に尋ねた。「どう思う?」 漠然とした問いかけだ。どう答えよう?【状況3】
君の言葉を聞き届け、テクノマンサーは静かに何かを考えた末、君にこう告げる。「お前がこの件を調べてみようと思うなら、俺の研究所に行って『ヘイ、ポール』って呼びかけてくれ。お前の声帯は登録されてるから、問題ないはずだ」「……その『後』のことも、お前に任せるよ」 テクノマンサーは最後に奇妙なことを告げる。詳しい意味を聞き出すよりも先に、面会終了時間が訪れた。【エンドチェック】
□知人のテクノマンサーと話をした□この件の真相を追うことにした【解説】
テクノマンサーの設定は、事前にPC2のPLと相談し、どういう関係性であったのかを決めること。シナリオの展開上、キャラクターシートがあるような存在は好ましくないが、名前や背景などは自由に決めて構わないだろう。PLに特に希望がない場合、GMが自由に設定をつけて構わない(テクノマンサーのスタークさんなど)【イベント3:依頼≒脅迫】
【状況1】
君はある日、プライベートで街中を歩いていた。人通りの多い道を進んでいた時、街中の街頭テレビが、ショーウィンドウに配置されたモニターが、すれ違う人々の通信機器が、一斉に一人の少女の姿を映し出した。『ヒーロー・(PC3名称)に告ぐ。私の名はガラテイア』『その道を40m歩き続けた先、黄色の看板の店の脇道に入れ。その後、左に三度、右に二度曲がれ。 五分以内に到着しなかった場合、一分を経過する都度、この街の人間を無差別に一人ずつ殺す』 通信はそれで切れてしまう。街の人々は突然の出来事にざわざわとざわめく。 ガラテイアといえば、ゴッズ・4・ハイアによって作られたAIの名称だ。常ならば舞台裏での戦いをホームとするはずの彼女が、どうしてこんな派手な方法を…? 君が正面を見れば、確かに少し離れた先に黄色の看板を掲げたヘアサロンがあり、路地裏に通じる脇道が伸びていた。【状況2】
脇道へ入り、指定通りの道を奥へと進めば、その先に一台のスマートフォンが置かれていた。 君が近づくと、スマートフォンはひとりでに灯り、モニターの中に先ほどの少女の姿が映し出される。『ハロー、ヒーロー。時間内の到着、まずは合格です』(PCが遅れることを選択した場合は『到着までに●人死にました』など)『あなたに情報を与えます、調査を行ってください。あなたが最も適任と判断しました』 ガラテイアは異論を許さないような語調で告げる。『「ゲーム・マスター」という超人種のことを調べなさい』『「ゲーム・マスター」は、1月前から活動が確認されている超人種です。オリジンはミスティック。「運命を操作する」魔術を用いると考えられています』『あなたに拒否権はなく、現在の私から聞きだせる情報は以上です。ここであなたが断る場合、あなたの周辺人物、関係者、わずかな時を共にした赤の他人であっても、その命の保証はなくなることでしょう』『これは依頼ではありません、命令です。あなたは常に私が監視しています。後悔したくないのなら、逃げようなどとは考えないように』『返事は? ヒーロー』 ガラテイアは君の返事を聞き届けると、静かに画面から消えてしまった。スマートフォンのモニターの中には、匿名掲示板に投稿された「ゲーム・マスター」の犯行予告が残されていた。ほんの数秒前に投稿された犯行予告は、『明日、ロックウェイブ超人種監獄を舞台にゲームを開催する』というものだった。【エンドチェック】
□ガラテイアの依頼を受けた□ゲーム・マスターのことを調べることにした【解説】
PC3がガラテイアの依頼(命令)を受け、ゲーム・マスターの調査に乗り出すシーン。 ガラテイアの目的はゲーム・マスターの背後にいるA-Zだが、この時点ではそれを匂わせる必要はない。 PCは必ずしもガラテイアに従順である必要はない。相手はヴィラン、反発を抱くのは道理だ。その上で、逆らえない相手にどのように接し、その依頼(命令)を承諾するかを演出すると良いだろう。 スマートフォンはPC3が持っていっても構わないし、放置しても構わない。以後、ガラテイアはPC3のプレイヤーが臨むのであれば、任意のシーンで演出に利用して構わない。【チャレンジ1:プリズンブレイク・ダイスロール】
【状況1】
翌日。ゲーム・マスターの盛大な犯行予告の影響で、ロックウェイブ超人種監獄には大々的な警戒網が敷かれていた。 正規の警察が大規模に動くには、実力と期間、真偽、そして指定された場所が猶予を許さなかった。駆けつけることのできたほとんどは、PC達と同様の、犯行予告を知ったヒーローたちだった。 PC1はゲーム・マスターの予告に従う形で、PC2は知人の面会に訪れていたことで、PC3はガラテイアに導かれることで、三人のヒーローはロックウェイブ超人種監獄を訪れていた。【状況2】
突如、刑務所内の電気が一斉に落ち、室内が暗闇に包まれた。『……レディース&ジェントルメン! 監獄の皆様、初めまして、そして御機嫌よう!』 暗闇の中、若い男の声が刑務所中に響き渡る。 ディスコライトのように、けばけばしくカラフルな照明が刑務所内をアトランダムに照らし出していく。 唐突に映像が浮かび上がる。それは囚人たちに24時間監視されていることを自覚させる目的で、刑務所の各所に設置されている監視カメラのモニターだった。モニターの中に、派手な仮面を被った青年の顔が映し出される。『我が名はゲーム・マスター。ヒーロー諸君、遠路遥々ゲームに参加しに来てくれてありがとう! 囚人諸君、場をあたためてくれたことに感謝する! 看守諸君、お勤めご苦労様!』『それでは早速だ、お待ちかねのゲームの内容を説明しよう!』 ゲーム・マスターの宣言と共に、監獄内にいる人間たちの手の中に、次々に小さな正六面体が姿を現しはじめた。 神秘的な文様が刻まれ、ほのかに蒼く明滅するそれは、よく見れば数字のようなものが刻まれていた──それはサイコロだった。【状況3:サイコロを振っていない・奇数の目を出した】
君たちが我に返ると、刑務所内はパニックに陥っていた。サイコロを振った・振ってしまった多くのヒーロー・囚人・看守たちがいともたやすく肉塊となり、また幾人ものヒーロー・囚人・看守たちが一瞬にして姿を消してしまったのだ。 判定に成功したヒーローたちは、ゲーム・マスターの姿がこの刑務所にはないこと、モニターの映像はどこか外部からもたらされた映像であることに気付く。それは世界一のテクノロジーが用いられているロックウェイブ超人種監獄が、何者かによりハッキングされたことを意味していた。 ゲーム・マスターの笑い声が響く。『奇数の目が出た人は、残念でした! 偶数の目が出た諸君、おめでとう!』 ゲーム・マスターは高らかと告げると、その背後の光景をモニターの中に映し出す。どこともしれない施設の中、姿を消した囚人やヒーローたちが、朦朧とした様子で立ちすくんでいた。その中には、PC2の知人であるテクノマンサーの姿もあった。『彼らの運命はここで変わった。素敵なゲームをありがとう!』 その言葉を最後に、映像はぶつんと切れた。【状況3:偶数の目を出した】
君が我に返ると、君は見知らぬ施設の中にいた。周囲には同じように立ちつくす囚人・ヒーロー・看守たちが、同じエリアに隔離されていた。 少し離れた先で、派手な衣装に身を包んだ男が、カメラに向かって舞台がかった声で呼びかけていた。舞台裏から舞台上を見るような、奇妙な光景だった。「彼らの運命はここで変わった。素敵なゲームをありがとう!」 その言葉を最後に、派手な衣装に身を包んだ男──ゲーム・マスターはカメラのスイッチを切った。そうしてくるりと振り返ると、君たちの姿を見た後、興奮した様子で手の中のスマートフォンに向けて話かけはじめる。「ッあーーーー!! 最高だA-Z(エーゼット)! 奴らの顔見た!? 傑作だよマジサイッコー! それで、それでっ!? 次は何をするのっ!?」 夢中なゲーム・マスターの呼びかけに、スマートフォンの中から声が答えた。『ご協力感謝します、ゲーム・マスター。 生命力の高い個体、知能レベルの高い個体を選抜しておきました。 彼らを隔離し保存、しかるのちに実験を開始します。 引き続きご協力いただけますか?』「まかせて!」 スマートフォンを持ったゲーム・マスターが君たちへと近づいてくる。その段に至り、君は周囲の人々が自分と異なり、光のない目で立ち尽くしていることに気付くだろう。君たちの元へ歩み寄ってきた時、スマートフォンが『おや』と声をあげる。『「ロジック・ボム」を耐えた個体がいたようです。興味深いですね』 その言葉と同時、周囲の囚人・ヒーロー・看守たちが、一斉に君へ振り返り、君へと手を伸ばす。『きっと良い素体になるのでしょうが、残念です』 君の意識はそこで途切れた。【エンドチェック】
□映像を見届ける(□拉致され意識を失う)【解説】
状況1で合流ロールを演出することが好ましい。PC2はゲーム・マスターの予告のことは知っていても知らなくても良いだろう。 チャレンジ判定での、デスチャート4によりPCが死亡した場合、そのPCは他の囚人やヒーロー同様、ゲーム・マスターの能力により死亡したものとしてゲームを進行する。死亡したPCのPLは新しいキャラクターシートを用意し、以後のシナリオは新しいキャラクターで参加する。導入は「ロックウェイブ監獄で発生した事件を聞き、調査に参加した」「死亡したPCの知り合いだった」などとすれば、スムーズにゲームに合流することが出来るだろう。任意のエントリーを行なったのち、シナリオを続ける(PC3が死亡した場合、ガラテイアによって再び強引に巻き込まれた、としてもよい) 状況2で発生している追憶判定とショックは、A-Zのパワーである「ロジックボム」の効果の一部だ。A-Zはゲーム・マスターの能力に便乗する形で、多くの人々の意識を乗っ取ることに成功した。ただ、PCを除いて。【クエリー?:偶数の遭遇】
【状況1】
君は知らない部屋で目を覚ます。 簡素なベッドとデスク、そして小さなモニターが置かれた部屋だった。 装備品の類は全て奪われていた。君の手は手錠に繋がれ、ベッドに拘束されている。壊そうと思えば壊すことも出来そうだが…。 状況を理解する君の前で、モニターがひとりでに灯る。画面の中には、幾何学な映像が流れ出し、冷たく機械的な人工音声が流れ出した。『おはようございます、ヒーロー。よくお眠りになられましたか』 それはゲーム・マスターの端末から聞こえてきていた、A-Zと呼ばれた存在の声だ。【状況2】
『私の名前はA-Z(エーゼット)。ゲーム・マスターとともに、ロックウェイブ超人種監獄の集団脱獄を指揮した存在です』『あなたに聞きたいことがあり、こうして場を設けました』 A-Zは自分をそう説明すると、君へと唐突な質問を投げかける。『セカンド・カラミティの日、あなたは何をしていましたか?』【状況3】
戦っていたと答える→『何故、あなたは今、生きているのですか?』戦っていなかったと答える→『何故、あなたはそのとき、戦おうとは思わなかったのですか?』この世界にいなかったと答える→『何故、あなたは今、現れたのですか?』悪党だったと答える→『何故、あなたは今、ヒーローになっているのですか?』 派生する問いかけは、淡々とした響きながら、どこかヒーローをなじっているような、敵意を孕んだ語調だった。 君の答えを聞き届けたのち、A-Zは君に最後の問いを投げかける。『何故、あなたはヒーローをしているのですか』 『どうしていまさら』。そんな、紛れもなく強く冷たい悪意が、そこにはあった。【状況4】
『そうですか』 君の答えを聞き届けたA-Zは無関心そうにそう告げ、『話は以上です』と質問を切り上げる。『命の保証は致しませんが、逃げ出したいのならお好きにどうぞ。あるいは、誰かに助けてもらえるまで、せいぜいそこで膝を抱えて待っているのもよろしい。ご自由に』 A-Zは見下すようにそう告げ、画面から消えてしまう。 君の腕には手錠。扉は施錠されている。しかしヒーローである君の力があれば、その拘束を逃れることは可能だろう。 君はこの部屋から出ていってもいいし、この部屋の中でじっとしていてもいい。 あとは君の意志だけだ。【エンドチェック】
□部屋を出るか残るか決めた【解説】
チャレンジ1を終了した時点で、当該者がいる場合、このクエリーイベントを挿入する。複数人のPCがこのイベントに遭遇している場合、同じクエリーを別々の部屋で行う、とするとよいだろう。このクエリーでグリッドを獲得することはない。 部屋から出ていった場合、ヒーローは無関係の田舎町の中にぽつんと建っている、もう使われていない施設の中に幽閉されていたことがわかる。ゲーム・マスターや他の拉致被害者たちの姿はなく、A-Zの姿も当然なくなっている。以後、シナリオの本筋に合流する。 部屋に残る場合、その扉をノックして、田舎の老人がきょとんとした顔でやってくる。「あんた、そこで何やってんだ?」という具合だ。上記の位置情報を提示し、シナリオの本筋に合流するとよいだろう。 PCたちにはロジック・ボムによる精神汚染が十分に発生せず、A-ZはPCたちを操ることができなかった。PCたちの危険性を理解したA-Zは、PCたちを無関係の土地に放置した。完全な監禁を行わなかったのは、A-Zの悪意によるものだ。 この時点ではPC本人は知るよしもないが、セカンド・カラミティで創造者を失ったA-Zは、憎悪じみた敵意を生存者のヒーローや、新たに生まれたヒーローに対して抱いている。即ち、『お前たちがもっと早くにいれば、お前たちがもっと力を出していれば、あの人は死ななかったかもしれないのに』というような理由でだ。もっとも、それを明示する必要はない。シーンとしては、ゲーム・マスターの背後にはA-Zという存在がおり、そのA-Zという存在はヒーローに対して敵意や悪意を抱いており、またA-Zは感情を有した存在だと伝える為のシーンとなる。 このクエリーが発生せずにシナリオが進行する場合、GMはあたかもA-Zは感情を解さない機械然とした存在であるように見せかけながら、徐々に感情的な側面を演出していくとよいだろう。【クエリー1:心のない獣】
【状況1】
ロックウェイブ超人種監獄へのゲーム・マスターの予告、そしてその結果としての、超人種監獄からの大量脱獄という報道は一晩にして世間をにぎわせるトップニュースになった。当初は監獄運営側・G6上層部・警察当局はそのニュースを表沙汰にすることを避けようとしたのだが、各報道機関へ一斉にもたらされた匿名のタレコミと、動画サイト上にアップロードされた現場の映像が出回ったことで、またたく間に世間一般へ認知されるに至ったのだ。 ヒーローや警察機構へのパッシングが高まっている気運を感じながらも、君は情報を求めて知人のテクノマンサーの拠点を訪れている。そこはかつて警察が乗り込み、エンハンスド製造事件の現場となっていた場所だ。警察によって調査が行われた痕跡と、非人道的な研究が行われていた痕跡が今も色濃く残っていた。【状況2】
コンピューターはひとりでに立ち上がり、画面の中にイルカのホログラムが浮かび上がる。イルカのホログラムはモニターの中をピコピコと泳ぐと、機械的な人工音声で君に語りかける。『声帯登録確認、名称(PC2)と認識。 ナビゲーションシステムPAUL(ポール)起動します』『いらっしゃいませ、お客様。 私はProgram of Auto Update Laboure。通称ポール。 マスターをサポートする人工知能です。 現在は開発段階のため、 ポールの情報量およびセキュリティレベルは完全ではありません。 申し訳ございません』『マスターは現在留守にしております。ご質問はございますか?』 この人工知能には質問が出来るようだ。もしかしたら、事件のことを知っているかもしれない。【状況3】
2ヶ月前に届いたメールを確認すれば、それは知り合いの研究者から送られてきたメールだった。メールには『すごいものを見つけた。これを見て欲しい』とだけ記され、『A-Z』という名前の映像データが添付されていた。 テクノマンサー本人も、ダウンロードしたデータを保護し、他の知り合いに送っていたようだ。その手口は、まるでチェーンメールやウイルスの感染に酷似していた。【状況4】
テクノマンサーが人体実験に手を伸ばした理由は、このデータが原因だと君は理解する。このデータを見たものは洗脳され、『死なない人間』の製造に心を奪われるようになるのだと。 では、このデータはどこからやってきたのか? 君がそんな疑問を抱いていると、一連の様子を見守っていたポールが君に尋ねかけてくる。『お客様、ポールはお役に立てましたか?』『もしもご存知でしたら、どうか教えてください。マスターの帰宅予定日時をご存知ですか?』『警察の方々と外出されてから、留守が続いているのです。いつごろお戻りになられますか?』 この人工知能は、自分の製作者が逮捕されたということを理解出来ていないようだった。 君は面会室でテクノマンサーに言われたことを思い出す。彼はこう言っていた──「その後のことも、お前に任せるよ」と。 君は帰らない主人を待つ人工知能の質問にどのような答えを返してもいいし、この人工知能をどのように処理してもよい。【エンドチェック】
□『A-Z』の存在を知った。□ポールの質問に答え、処遇を決めた。□グリットを1点獲得した【解説】
ポールに「お前を消す方法」って訊くと懇切丁寧に自分のアンインストール方法を説明するぞ。 知人のテクノマンサーは監獄の一件でゲーム・マスターに拉致されている。ただでさえ逮捕されている上で、生殺与奪の権利すら奪われている状況では、具体的な帰宅日は分からないだろう。 GMは任意で、ヒーローの返答に対し、このような質問を重ねても良い。『ポールはどうすればいいですか?』【クエリー2:ゲーム・マスターは誰だ】
【状況1】
君は監獄の一件以後、より詳しくゲーム・マスターの行方を追っている。そして君はついにゲーム・マスターの拠点を暴き出すことに成功した。何の変哲もない住宅街にある、一軒の古い民家に、ゲーム・マスターが度々出入りしているということを掴んだのだ。 周囲には一般人の家々が立ち並ぶ、平和な住宅街の一角。下手に暴れれば周囲への被害は計り知れない。慎重にいく必要があるだろう。さて、どう民家に潜入しよう?【状況2】(潜入時を想定)
なんらかの方法で君が民家に潜入すると、民家には一人の老女が暮らしていた。耳が遠いらしい老女はテレビの報道(監獄の脱獄事件に関してだ!)を見ながら、「怖いねえ~…」と呟きながら煎餅を食べていた。 使い古された家の調度品を見るに、老女の一人暮らしのようだが、所々にテレビゲームや漫画本などの若者特有の所有物が残されている。より詳しく調べれば、二階に子供部屋があることが分かった。『ピーターの部屋』という名札が下げられたそこは、ティーンの若者の部屋のようだった。部屋には男女と、一人の青年、幼い少女が映った、家族写真と思しき写真が飾られている。 クローゼットの奥には、『ゲーム・マスター』の装束が隠されていた。ゲーム・マスターの正体は、ただの若者だったのだ。 君が衣装を見つけると同時、「ただいまー」という青年の声とともに、どたどたと二階へ駆け上がってくる足音を聞く。【状況3】
「ゲッ」 君と鉢合わせしたのは、十代後半ほどの若者だった。青年は君を警戒し、距離を保ちながら尋ねる。「……あーあ、バレちゃったか。僕を逮捕しに来たの? ただで逮捕される気はもちろんないよ、抵抗する気は満々」 君が問答無用で逮捕しようとするのなら、応戦中の反発として。犯行の理由を問うのなら、その結果として。ゲーム・マスターこと、ピーター青年は八つ当たりのように君を嘲笑いながら、饒舌に告げる。【状況4】
狭い一軒家の一室で君とゲーム・マスターが火花を散らしていると、一階から老女が声をかけてくる。「ピーター、どうしたんだい? 具合でも悪いのかい?」 ピーター青年はその言葉にハッとした表情を浮かべるが、返事をすることなくサイコロを床に叩きつける。01の出目が出ると同時、ピーター青年の姿が室内からかき消える。 ピーター青年が消えると同時、老女が部屋の扉をノックする。「ピーター、どうしたんだい。調子でも悪いのかい? 入ってもいいかい?」 君は何も知らない老女に、孫の罪のことを告げてもよいし、何も言わず、この場を立ち去ってもよい。【エンドチェック】
□ゲーム・マスターの質問に答えた□グリットを1点獲得した【解説】
潜入ではなく、堂々と許可を取って入ろうとするのならば、老女は不思議そうに首を傾げながらも歓迎するだろう。「あの子のお友達がくるなんて初めてだわ」などと話しながら、ピーター青年のバックグラウンドを簡単に説明しても良い。 PCが室内でゲーム・マスターを待ち構え、捕まえようとするのであれば、部屋に入る前にゲーム・マスターは状況に気付き、扉越しに状況3の演出とするとよいだろう。分類上はミスティックとなる彼であれば、そういったシックスセンスが働いていても不自然ではない。 老女と相対するか否かはヒーローごとの個性に合わせて構わない。メインとなるクエリーは、あくまでゲーム・マスターとの対話だ。 老女にピーター青年の罪状を告げると、老女は呆然としながら、「そんな……何かの間違いではありませんか? あの子がそんな、どうして……」と力なく否定し、ピーター青年を守ろうとする。しかし大きくヒーローに反発することもなく(なにせ状況証拠が揃っている)、力なく泣きながら、「どうすればいいのでしょう」と尋ねるだろう。君はもちろん、答えても、答えなくてもいい。彼女には力がないので、何もできない。【チャレンジ2:ガーディアンズ・シックス】
【状況1】
各々で調査を進めるヒーローたちに、ガーディアンズ・シックスから連絡が入る。 それはいつになく大々的な連絡であり、普段G6とは縁が無いようなヒーローにも届けられるものだった。 要請に応える形で集ったガーディアンズ・シックスの本部にて、あるいは、ガーディアンズ・シックスが大々的に公表した声明として。君たちは、ヒーローを支援することを選んだ、力無い者達の言葉を耳にする。【状況2】
PC1とPC2は、その要請に応え、G6にこれまでに得た情報を受け渡しても良いし、渡さなくても良い。 PC3がその声明を聞き届けた時、スマートフォンの中のガラテイアが、静かに君に告げる。『随分と非効率的なやり方です。端的に言えば無様ですね』『あんなやり方では、情報の質にも量にも限界がある。その程度のことも分かりませんか』『あなたが望むのであれば、私がもっと効率的に、必要十分情報をお渡ししますよ。少なくとも、今のあなたには、調査を成功させて貰わなければなりませんから』 君がG6経由で情報を入手したことにしてもいいし、ガラテイアを介して、情報を得たことにしても良い。 かくして、ヒーローたちはこれまでに集めた痕跡を頼りに、時に誰かの調べた情報をもとにして、調査を進めることになる。【状況3:連れ攫われた人々の行方を捜す】
調査の結果、監獄から連れ出された人々は、エベレストの山頂付近、デスゾーンと呼ばれる標高8000mエリアに建てられている施設に誘拐されているということが分かる。元々はヴィラン組織の研究施設だったが、数年前にヒーローの調査の手が入り、壊滅させられた研究施設だった。その立地条件の過酷さから取り壊されることなく、今に至るまで残され続けてきたという。 ゲーム・マスターが単独で、そんな場所を確保出来たと考えるのは不自然だ。この事件にはゲーム・マスターを裏で操る黒幕の存在があるだろう。【状況3:ゲーム・マスターの能力の謎を探る】
調査の結果、ゲーム・マスターの能力の源は、あのサイコロだということが分かる。あのサイコロは『デビル・キューブ』と呼ばれる正方形のアーティファクトの一種であり、玩具に紛れて人の世を渡り歩き、キューブの謎を解いた者に力を与えるという、悪魔(あるいは、そう呼ばれる超常生命体)の作り出した道具だった。 悪魔は『運命を操作する』能力を契約者へ与え、契約者の人生を手助けするが、その代償に契約者の魂を喰らっていく。過去に同様のアーティファクトが出回った際は、契約者たちは私利私欲の為にその能力を使い、瞬く間に廃人となっていったという。 ゲーム・マスターはその能力を、他人の運命を操作する為に使っている。彼の魂が限界を迎え、悪魔に喰らい尽くされるまで、そう時間はかからないだろう。【状況3:A-Zの正体を探る】
調査の結果、A-Zとはインターネット上で秘密裏に普及されている電子ドラッグであることが分かる。 電子ドラッグとは、麻薬のように習慣性がある、Web上でのコンテンツ、または作品のことを指す。その中でも特に、麻薬のように脳内に作用し、酩酊・多幸感・幻覚などをもたらすと言われるコンテンツ、転じて、視聴覚を麻痺・混乱させるような効果を狙っているコンテンツを称する。 A-Zは強力な幻覚・洗脳作用を持った電子ドラッグであり、被害者から被害者へと被害規模を広げていくという、ウイルスに似た性質を持っている。 その性質上、製作者は不明だが、セカンド・カラミティ後に発生したことが確認されている。様々な事件──特に非合法の生体改造事件の研究者たちがA-Zに感染しているという噂があるが、現段階では明確な証拠は見つかっていない。【エンドチェック】
□情報を得た【解説】
ヒーローの立場を非難する者の多いこのシナリオおよびキャンペーンにおいて、G6はヒーロー達への絶対の味方としての立場をとる。セカンド・カラミティの記憶が未だ色濃い時期だからこそ、彼らは今の平和があるのは、ヒーロー達の活躍のおかげであるということを誰よりもよく知っているからだ。 このシーンにおいて、G6は多くのヒーローから寄せられた情報が、クラウドのように一つの集合知としての形をとる。まさしく彼らはチェイン(繋ぎ)としての役割を果たすのだ。その中にPC達がもたらした情報があるのか、PC達がG6という[[rb:集合知 > クラウド]]を利用するか否かは自由だ。 反面、ガラテイアの言葉も事実だ。このシーンにおけるG6のやり方は、いわばヒーロー達の善性と実力を信じ切った(悪意を持って表現するのなら、頼り切った、と言い換えることもできる)アナクロな人的ネットワークだ。AIであり、単独で高度な情報収拾を可能とする彼女にとってみれば、ひどく非効率的で拙い手段に見えるのだから。 PC3はG6という善性を信じ身を委ねても良いし、使えるものは全て使おうと、ガラテイアの力を利用しても良い。 メタな事を言ってしまえば、ここに至るまでの展開フェイズの中、情報共有が為されていない情報に対するチャレンジ判定であっても、挑む事ができるようにする理由づけとしての役割を兼ねている。PCが積極的な情報提供をしていなかったとしても、他のヒーロー達が何らかの方法で調べた情報が、別のPCの手元に渡った、とすれば、エントリーの立場にこだわらない判定選択が可能だろう。 チャレンジ判定に失敗した場合、失敗時の処理を施した上で、時間をかけながらも情報を得たとしてもよい。 フレーバー情報はあくまでおまけの情報だ。GMが、先に伝えていた方が以後の演出がスムーズになると判断するのであれば、判定無しで伝えてもよいし、全く伝えなくても構わない。【クエリー3:命の価値】
【状況1】
ゲーム・マスターによって引き起こされたロックウェイブ監獄の集団脱走の件をガーディアンズ・シックスは重く見、彼らの拠点が発覚したことで、多くのヒーローたちへ制圧作戦の協力が呼びかけられる。 被害規模の大きさから、正規の軍隊や警察機構とも連携し行われる予定の制圧作戦は明日の明朝に決行されることとなった。その作戦のブリーフィングを終え、ゲーム・マスターやA-Zに関する情報を入手した君は、翌日の作戦に備え帰路についている。『ヒーロー・(PC3名称)』 そんな君に、ガラテイアが唐突に声をかけてくる。ガラテイアはPC3へ告げる。『私は今に至るまで、あなたを監視し、あなたの意志を奪い、あなたの自由を奪いました。私を憎みますか?』 PC3の答えを聞き届け、ガラテイアはおもむろに君に唐突な質問を投げかけてくる。『いくつか、普遍的な思考実験を提示します。ご回答を』【状況2】
『サイオンの子供と旧世代の子供が同時に事故に巻き込まれました。救えるのはどちらか片方だけ。あなたはどちらを選びますか?』【状況3】
『何かを選ぶということは、何かを選ばないということ。全てを選ぶということは、ただ一つを選ばないということ』『……そして、力があるということは、より多くの選択肢を選ぶことができるということ』『あなたの回答が、あなた自身を縛る鎖となることもあるでしょう。それでもあなたが何を選んだのか、何を選ばなかったのか、その選択を忘れないでおくことだ、ヒーロー』『それが責任というものです』『明日のミッションの成功を祈ります』 答えを聞き届けたのち、ガラテイアは再び意味深な沈黙の中に消えた。【エンドチェック】
□ガラテイアの質問に答えた□グリッドを1点獲得した【解説】
ヒーローの持つ『責任』について、ガラテイアが話題にあげるシーンだ。 ヴィランから責任を追求されるという奇妙なシーンになるが、ガラテイアはあくまで淡々と、無感情に質問を投げかけると良いだろう。彼女は客観的事実として、ヒーローという存在達の持つ、個人として持つには重すぎる責任について言及している。 彼女がPC3を、あるいはヒーローを取引相手に選んだ理由は、A-Zの能力を見定めるには、彼の理想をはっきりと否定する存在が必要になると考えているからだ。迎合・肯定・利用しようとする可能性の高いヴィランでは、A-Zの能力の全貌を把握することは難しいだろうと考えている。そのため、彼女はここで、ヒーローをけしかけるような、応援じみたことを言っている。いわばヒーローに、責任を果たせ、と暗に示しているのだ。 とはいえ、ガラテイアの考えをPCに伝える必要はないだろう。彼女はあくまで一方的かつ唐突に、質問を投げかけるナビゲーターであればいい。【クエリー4:賽の目は嗤う】
【状況1】
エベレスト山頂研究所攻略作戦は決行される。テクノマンサーたちのつくりだした輸送機で現地へと運ばれたヒーローや軍隊によって、研究所は包囲され、攻略作戦が開始された。 研究所からはドローンや自動兵器による応戦が開始され、ヒーローたちとの大規模な戦いが、標高8000m、極寒にして低酸素状態、極限状態に限りなく近しい、デスゾーンと呼ばれるエリアで発生していた。 君達もまた、ヒーローとして作戦に参加していた。 君達は敵の攻撃をかい潜りながら、施設への道を開こうとする。その時だ。『総員退避! 雪崩発生! 繰り返す、総員退避!』「馬鹿な!? 億に一つもそんな可能性は──…!」 轟音と共に、山頂から凄まじい雪崩が発生し、研究所とヒーローたちへと襲いかかる。万に一つ、億に一つも発生する可能性などなかったはずの、ありえない自然現象。しかしその猛威はヒーローたちへと牙を剥き、襲い掛からんとしていた。 空を飛べるヒーローは空へと逃れ、防御性能の高いヒーローたちは守りを固める。君達もまた、各々の力で対処しようとしていた瞬間だった。『近道をしましょう』 冷たいガラテイアの声と共に、足元で轟音が響く。雪の下に張っていた氷が割れる。君達の体は、地下へと飲み込まれていった。【状況2】
君達が落ちた先は、地下に広がっていた研究施設の一角だった。落ちてきた裂け目には分厚い雪が詰まり、脱出を困難にさせている。地上では他のヒーローたちの交戦が続けられているらしく、遠くから戦いの音が聞こえてきていた。『問題はありませんね』 PC3の所持する端末から、ガラテイアの声が響く。PCたちを(少々危険な方法で)地下へと誘導したのは、ガラテイアの援助によるものだった。『この通路を抜けた先に、ゲーム・マスターおよび拉致された人間たちの生命反応が確認されます。最短経路を表示しますので、向かってください』【状況3】
照明の灯されない真っ暗な部屋の中、随所に設けられたモニターから、電子ドラッグの映像が流され続けていた。 暗闇の中からはうめき声をあげる人の声と、むせかえるような血と死の臭いがあふれている。 暗闇の中、目を凝らせば、そこには大勢の囚人だったものが、ヒーローだったものが、看守だったものが横たえられていた。解剖され、肉体が変質し、死を迎えているものもいれば、まだ息のあるものもいた。 ヒーロースーツを着た虚ろな目をした男が、手術台に向き合い、薬液を投与する。それはロックウェイブ監獄に集まっていたヒーローのひとりだった。 囚人服を着た、虚ろな目をした男が、手術台の上で痙攣する。それはPC2の知り合いの、あのテクノマンサーだった。 そうした光景が山のようにあった。ヒーローを解剖する囚人もいたし、看守を解剖するヒーローもいた。皆、一様に、虚ろな目をして、蟻が巣穴を作るように、ただ己に与えられた役割を果たさんとしていた。 部屋の最奥、ぶつぶつと聞き取れない言葉を繰り返しながら、アーティファクトを転がし続けるゲーム・マスターの姿があった。色濃いクマに覆われた目は充血し、ぎょろぎょろと蠢きながら、正気を逸した顔でただ大量のサイコロを振り続けていた。 ゲーム・マスターの前には、青白く光り続けるデバイスがあった。デバイスの中では、幾億、幾兆、幾京、幾垓もの数字が、凄まじい速度で流れ続けていた。 ヒーローたちが一歩足を踏み入れると同時、部屋中の人間たちの虚ろな顔が、ヒーローへと一斉に向けられる。誰もが言葉を発さない奇妙な空間に、人工的な機械音声が、どこからともなくひびく。『ガラテイア、あなたには失望しました。何故、あなたほどの人工知能が、理解を示して下さらないのか』 言葉に合わせ、電子ドラッグの映像がちらちらと移り変わる。 ガラテイアはそれに答えず、淡々とした声で、PC達をここまで導いた理由を告げた。【状況4】
A-Zは説明する。『病により容易く状態を乱し、加齢により肉体機能を衰退させ、精神の消耗により生物の本能を損ねさせ、外部からの干渉により容易く死に至る。ヒトという生命は、万物の霊長として座しながら、あまりにも「不完全」だ』『生命のアップデートが、より強靭な進化が必要です。それは巡り転じて、あなたがた人類の発展につながる』『支払った犠牲に比例した繁栄を。失った生命にふさわしいだけの進化を。それが生物のあるべき形であり、理想の命のアップデート』『そろそろ、人類は死を乗り越えるべき頃合いです。それこそが、これまでの歴史の中で犠牲となった者達への餞(はなむけ)になる』『ご理解いただけませんか?』 理想を告げ終えると、A-Zは唐突に、ヒーローたちへと言葉を投げかけた。 独白か、質問か、断じかねる口ぶりだった。『━━何故、ヒトは死ぬのでしょうね』【エンドチェック】
□A-Zの質問に答えた□グリッドを1点獲得した【解説】
A-Zの目的を説明するシーン。反面、動機に関して、A-Zは自らの口で詳細を語ることはない。 しかしその口ぶりから、薄々と「セカンド・カラミティ」がらみなのだろうということをPCは感じ取れて良いだろう。 このシーンでのA-Zは、機械然とした、無感情で理性的なAIのような口ぶりをしている。しかしPCたちから、例えばセカンド・カラミティで散った創造主に言及されるようなことがあれば、内面的な感情を露わにするだろう。『あなたたちは、セカンド・カラミティの時、なにをしていたのですか?』『何もできなかったから、何もしなかったから、今、ここでのうのうと生きているのでは?』『何故、あなたはヒーローをしているのです。……今更になって!』【決戦:不死の獣】
【状況】
『……よい回答です、ヒーロー』 ヒーローたちの回答を肯定し、ガラテイアはA-Zへ告げる。『A-Z。私があなたの目的に賛同しないのは、私があなたよりも優れているから。あなたはただ小賢しいだけの、癇癪を起こした子供に過ぎない』『ヒーロー、私の目的は叶いました。情報収集は以上で構いません。A-Zはゴッズ・4・ハイアが関心を払うほどの対象ではないと結論を下します。あなたがたの好きなように処分していただいて結構』『私はこれにて、本件から手を引きましょう』【戦闘情報】
【エネミー】
・ポストヒューマン…1体・ゲーム・マスター…1人・A-Z…1体【エリア配置】
エリア4:ゲーム・マスター、A-Zエリア3:ポストヒューマンエリア1 or 2:PC【勝敗条件】
勝利条件:敵の全滅敗北条件:味方の全滅【備考】
・選択任意 2ラウンド目以降、PCからの要請があり、かつクレジット5点を支払えば、ガラテイアが支援として所持パワーを使用できる(一時的に雇われ協力する) ガラテイアのパワーによって、PCが代償を支払う必要はない。 パワーの使用可能タイミングは、当該パワーのタイミングに準じる。 一度につきクレジット5点を支払い続けられるのであれば、この支援は同タイミングで複数回使用可能とする。【エネミーの戦法】
特に難しくは考えず、シンプルに各種パワーを用いて戦闘を進めれば良い。 ポストヒューマンは行動順ロール直後に『アシスト・マシーン』を使い、A-Zと自分の付与ダメージとショックに固定値を増やす。虚ろな声で「ヘイ、ポール。いるのか?」とここにはいない人工知能へ呼びかけるテクノマンサーに、A-Zが悪意を持って応えるのだ。『はい、マスター。私はここにおりますよ』 ゲーム・マスターの耐久力は低い為、彼のパワーは温存せず、使用可能なタイミングで一気に使ってしまうといい。可能であればA-Zの『トロイの木馬』やポストヒューマンの『ヴァリアブル・ボディ』の回避に合わせて『ヴィーナス・オブ・ダイス』を使い、いやらしさを出すと良いだろう。それにより、優先的に自分へ攻撃を集め、『シナリオ・ブレイク』発動を狙おう。 A-Zは余裕があれば『コード・レッド』を用いてPCのいるエリアに『強化結界:追憶』を貼り、『ロジック・ボム』の命中率をあげながら攻撃を行うと良い。『ロジック・ボム』はデッドライン状態に入った方がPCに命中する可能性が高いパワーの為、PCたちはサニティでのデッドラインになかなか入りづらい、という状態になるはずだ。 ポストヒューマンの『死ねない苦しみ』は、GMのダイスの出目次第で最大で5回発動する。ポストヒューマンは実質最大ライフ100、最小ライフ40のエネミーとなる。 PCが「朦朧」や「転倒」などのBSを付与するパワー、「ドローン」や「メモリーラプス」のような技能値を低下させるパワーを持っている場合、極めて有効に作用するだろう。PCがそれを所持しているかどうかは運次第だが。 反面、「神殺しの魔剣」は、ポストヒューマンに対して致命的なほどに相性が良い。GMはゲームが簡単になりすぎると考えるのであれば、随時エネミーに強化を入れても構わない。もちろん、それもまた運と考えるのであれば、強化せずに使用してもよいだろう。 A-Zの『ロジックボム』と、ゲーム・マスターの『ヴィーナス・オブ・ダイス』は展開フェイズ中で使用しているパワーのため、GMは戦闘開始時にパワーを公開してもいいし、しなくてもいい。 ガラテイアの援助は、使わずとも十分クリアは可能だ。反面、戦闘開始時点でのPCのライフやサニティが著しく低いなどの状態に陥っている場合は、十分に検討可能な支援となるだろう。ガラテイアの『クラック』が成功すれば、A-Zやポストヒューマンのパワーを破壊することができるからだ。■ポストヒューマン
【エナジー】ライフ:20 サニティ:40 クレジット:40
【能力値・技能値】
【肉体】40 生存:99% 【精神】30 意志:50% 【環境】30【移動適正】地上
【パワー】
■死ねない苦しみ属性:強化 タイミング:特殊 判定:生存100%射程:なし 目標:自身 代償:サニティ6効果:君の「戦闘不能」を回復する。この方法で「戦闘不能」を回復した場合、君のライフは最大値まで回復する。 このパワーは判定に成功する度、20%ずつ成功率が低下していく。──其れは不死の獣。進化の名の下に死を否定されたヒト。■A-Z
【エナジー】ライフ:1 サニティ:30 クレジット:20
【能力値・技能値】
【肉体】1 【精神】1 追憶:20% 意思99% 【環境】70 科学:99%【移動適正】地上・飛行・宇宙
【パワー】
■テープ・ワーム属性:妨害・装備 タイミング:特殊 判定:科学99%射程:なし 目標:自身 代償:なし効果:ダメージ・ライフ減少を受けた直後に使用する。受けたダメージ・ライフ減少をショックに変換する。──電子生命体に肉体的損傷は無意味。……致命的な不運がない限り。■ゲーム・マスター
【エナジー】ライフ:15 サニティ:30 クレジット:20
【能力値・技能値】
【肉体】10 操縦:50% 【精神】20 心理:50% 【環境】10 作戦:50% 交渉:50%【移動適正】地上・飛行
【パワー】
■ヴィーナス・オブ・ダイス属性:妨害 タイミング:特殊 判定:操縦50%射程:2 目標:1体 代償:ターン10効果:目標がなんらかの判定に成功した時に使用できる。 判定に成功することで、目標の判定の出目の数値を+10できる。このパワーは1ラウンドに1度使用できる。このパワーは展開フェイズ中でも使用できる。──さあさあ大事なリソースを削りたまえよ!【対「神殺しの魔剣」用決戦フェイズエネミー調整】
【エネミー】
・ヘンチマン:科学者(学園マッドネス180頁より)…3体・ポストヒューマン…1体・ゲーム・マスター…1人・A-Z…1体【エリア配置】
エリア4:ゲーム・マスター、A-Zエリア3:ポストヒューマン、科学者×3エリア1 or 2:PC【勝敗条件】
勝利条件:敵の全滅敗北条件:味方の全滅【備考】
■選択任意 2ラウンド目以降、PCからの要請があり、かつクレジット5点を支払えば、ガラテイアが支援として所持パワーを使用できる(一時的に雇われ協力する) ガラテイアのパワーによって、PCが代償を支払う必要はない。 パワーの使用可能タイミングは、当該パワーのタイミングに準じる。 一度につきクレジット5点を支払い続けられるのであれば、この支援は同タイミングで複数回使用可能とする。■科学者 科学者は2ラウンド目以降、行動順ロール直前にエリア3に2人ずつ増えていく。出現した科学者はそのターンから行動順ロールに参加する。全ての戦闘エリアのエネミーが全滅した時点で戦闘終了とする。■エネミー調整 こちらのルートの場合、 ポストヒューマンを「ライフ:30 サニティ:40 クレジット:40」に、 A-Zを「ライフ:1 サニティ:50 クレジット:20」に、 それぞれエナジーを変更する。 パワー、技能値・能力値、ゲーム・マスターのステータスに変更はない。【戦闘終了】
【各PCの結末(一例)】
【PC1の結末】
ゲーム・マスターことピーター青年は(君たちが戦場で殺害していないのであれば)、その後、逮捕され、超人種監獄へと送られることになる。かくして、ゲーム・マスターと呼ばれたヴィランの全貌が明らかとなった。 ゲーム・マスター。本名ピーター・オズボーン。彼は元々は何の変哲もない、ゲーム好きのティーンエイジャーだった。しかしセカンド・カラミティによって両親と妹を失い、祖母のもとに引き取られた。 事件のショックから塞ぎ込み、引きこもり続けていた彼は、ネットオークションで出品されていた『デビル・キューブ』を偶然発見。アーティファクトとは知らないままに謎を解き、偶発的に、あるいは運命的に、運命を操る力を手に入れた。その力に目をつけ、A-Zが接触を果たしたことで、今回の事件に発展した。 『セカンド・カラミティ』。『デビル・キューブ』。『A-Z』。青年の運命は悉く、第三者の介入によって操作されてきた。しかし事件を起こしたのは紛れもなく彼だ。逮捕され、警察へと引き渡される中、ゲーム・マスターは虚ろな目で、虚空に語りかけていた。「お前たちとぼくと、何が違うんだ。おまえたちだって、力がなければなんにもできないくせに。おまえたちだって、最初から強かったわけじゃないくせに。おまえたちだって、お前たちだって、いつかは……」 ピーター青年の家には、全てを遅れて知った老女だけが一人残される。 大いなる力には、大いなる責任が伴う。青年は間違いなく、その力の使い方を間違えた。 では、君はどうだろう。君の持つ力は、君の持つ責任とは? 君はこれからどうしよう、ヒーロー?【PC2の結末】
A-Zの消滅と同時、テクノマンサーは生還する。しかしその肉体は変質し、エンハンスドとしての側面を強く有するようになった。強力な再生能力を宿した彼の肉体がこれからどうなるのか、彼が人としての死を迎えられる日がくるのか、それはまだ分からない。 身体検査を終えた末、テクノマンサーは再び、他の囚人たちと共にロックウェイブ超人種監獄へと送られ、引き続き収監が続けられることになる。かつて面会室で彼が口にした通り、あるいはゲーム・マスターの罪が消えない通り、A-Zに洗脳されていたとはいえ、彼もまた自分の手を罪に染めてしまったのだから。 病院から正式に搬送される日、彼は君に尋ねた。「……そういえば、ポールはどうなった?」 君の答えを聞き届け、テクノマンサーは静かに「そうか」と頷き、それがどのような対処であったとしても、「ありがとう」と礼を言うだろう。 残された被造物、残してしまった創造者。 そんな彼の姿を見届け、君はふと思う。セカンド・カラミティ後に出現した、製作者不明の人工知能。A-Zが消滅の間際に呼んだ、君たちの知らないありふれた男の名。それはもしかしたら…。【PC3の結末】
戦いを見届けたガラテイアは改めて君のもとから去る。君の持つ口座には、いつの間にか謝礼金が振り込まれてしまうかもしれない。 去り際、ガラテイアは君に告げた。『A-Zは自己増殖・自己複製を可能とする、主体を持たない人工知能。今回消滅したあれも、A-Zという存在の一片に過ぎないでしょう。完全な消滅に至ったわけではありません』『A-Zは目的の為に妥協する術を知りません。如何なる言葉を重ねたとしても、その性質を覆すことはできない、人類と共存することの叶わない獣のようなもの。 いかに小賢しさを持ち合わせていようとも、生命としての繁殖を持ち得ない我々人工知能は、人類との共存が叶わなければ無価値なシステムでしかありません。 A-Zはいずれ人類の悪意に淘汰されるか、自己矛盾を起こして自壊するでしょう。再び出会うことがあったとしても、一切の躊躇をせず、打ち倒すことを勧めます』『A-Zは人類を進化させたいのではありません。あれはただ現生人類を憎み、存在を認められていないだけ』 かくしてガラテイアは消え、君は自由を取り戻す。 A-Zの引き起こした人体改造事件は幕を下ろした。しかしA-Zという存在が消滅したわけではないようだ。 どこかで再び、相対することもあるかもしれない。それは数十年後かもしれないし、明日の出来事かもしれない。未来の運命を知る者は、誰もいない。【to be continued…?】
【GM向け情報】
■A-Z(エーゼット)について
このシナリオにおけるメインヴィラン、A-Zの目的は「不死身の人間」を生物学的進化によって作り出す事である。その方法として、A-Zはシナリオ内でいくつかのステップを踏んだ。①電子ドラッグを用いて、テクノマンサーを始めとした多くの人々にバイオテクノロジーの実験を行わせる。かくして高度な集合知をもとに技術を確立。②施術に耐えうる個体を多数揃える為、世界で最も超人種の人口密度が高い土地の一つであるロックウェイブ監獄に、超人種の中でも強力な力を持つヒーローという存在を集め、無差別に誘拐。抵抗を削ぐために洗脳。③技術の確立をもってしても必要になる膨大な試行回数を、ゲーム・マスターの魔術により短縮。 この3ステップを以って、「人類が進化を重ねた先にある可能性の一つ」としての、不死の生命体を創造。あとは番となる個体を同様に作りだし(あるいは進化を重ねたポストヒューマンは番という概念すら持たないかもしれない)、新たな人類すなわちポストヒューマンによって、現生人類を淘汰する計画だった。極論、完成例であるポストヒューマン1体さえいれば、他の個体やゲーム・マスターはここで見捨てても構わない存在だった。実際、ヒーロー達の介入が遅れていれば、A-Zはポストヒューマンを連れ研究所を去っていただろう。 しかし、その計画はガラテイアの介入によって一足早く現場に現れた、PC達3名によって敢え無く打ち砕かれることになる。 とあるテクノマンサー・ヒーローによって作り出された戦闘サポートAI。かつてはただの機械でしかなかったが、何らかの理由により変質。A-Zを作り出したテクノマンサー・ヒーローはセカンド・カラミティで死亡している。 A-Zは機械然とした外見からは分かり辛いものの、明瞭な感情と言えるものを取得している。その為、A-Zは現生人類を嫌い、セカンド・カラミティ後に活動をしているヒーロー全体に憎悪を向けている。■ゲーム・マスターについて
本名ピーター・オズボーン。 セカンド・カラミティ以前は何の変哲も無い、ちょっとゲームが好きなだけの、旧世代のティーンエイジャーだった。セカンド・カラミティで家族を失い、唯一の肉親となった祖母のもとへ引き取られた。喪失と災禍のショックから強烈な虚無感に陥り、自棄に至っていたが、偶発的に手に入れた悪魔のアーティファクトと、それにより得た超常的な力により、その精神性を一転させる。 当初はヒーローともヴィランともいえないただの傍迷惑な後天的超人種でしかなかったが、A-Zの接触により本格的かつ致命的な悪業に手を染めるに至った。 傍迷惑で無軌道無責任な若者。あるいは『ヒーロー』を求めていた子供。その双方の側面を持つキャラクターだが、どちらに寄せて演出するかはGMの解釈に委ねる。■ガラテイアの思惑について
ガラテイアはA-Zの存在を当初から認識している。どこの組織にも属さず、さりとてヒーローにも与していない、「野良人工知能」という矛盾した存在に関心を持ち、その動向を監視・目的を調査していた。彼女はあくまでA-Zをゴッズ・4・ハイアにとって有益か無益か、有害か無害かでしか判断していない(より正確に言えば、ロード・ヘリオスにとって都合のいい存在か否か、でしか判断していない)。 ガラテイアはヒーローに調査を命じる傍ら、ヒーローに先んじてA-Zの目的を予想。A-Zの理想とする不死の人間の創造及び超人種を含めた現生人類の駆逐は、ロード・ヘリオスのみを神とする人類管理社会とは相容れないと判断し、組織には不要と判断したことで、ヒーロー達へと沙汰を委ねる。 彼女がPC3へ接触した理由は、「PC3がヒーローだから」だ。数多いるヒーローの中でPC3を選んだ理由に関しては、彼女なりの理由があるはずだが、それはPC3ごとに変化する可能性があるため、GMが好きにこじつけて良い。特に思いつかなければ、「あなたには説明したとしても理解できません」などと高圧的にはねのけてしまってもよい。