全部見せます!
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〜USO! あなたの知らない隣の世界〜
〜USO! あなたの知らない隣の世界〜
──運命に逆らえってな!(あるディレクターの発言より)
▼シナリオPDF
◼︎【導入】
時は2016年年末。探索者たちは、自分の所属する「だごん情報局」の一員として、年末の倉庫掃除に駆り出されている。その日は大型収録が重なっていたためか、その倉庫を掃除しているのは探索者たちのみである。 倉庫には昔の番組で使用したらしい制作小道具や、いつのものかも分からぬ古いHDCAMテープやVHSテープがため込まれている。それを処分するべきものかどうかを調べて分類するのがこの日の探索者たちの仕事だった。【幸運】で判定に成功すれば、ゴミの隙間から古い1000円札を見つけたりする。 そうして掃除をしていると、倉庫の片隅に、ボロボロの養生テープでぐるぐるに梱包された、30cm程度の何かを発見する。GMは探索者がその包みの中身を調べるよう誘導する。(「処分していいものか、処分してはいけない重要な物かどうかを確認する必要がある」「燃えるごみか燃えないゴミか分からない」「1000円挟まってるかもしれない」「これを調べないとシナリオが始まらない」など、理由はいくらでもつけられるだろう) 探索者がその包みを剥がすと、中から出てくるのは「人の手のような形をした石像」である。手のひらに口のようなものが掘られ、鋭い乱杭歯と長い舌が生々しく彫り込まれている。 探索者たちがその像を発見して間もないタイミングで、探索者たちは任意の体の部位に突然鋭い痛みを覚える。痛みを感じた部位を確認すれば、そこに歯型のような傷口ができていることがわかる。傷口は小さいが、ひどくじくじくと痛み、集中力を阻害させる。耐久力をマイナス1する。 この時点ではこれ以上おかしなことは発生しない探索者たちが望むならば、この石像をこの時点で処分しても構わないだろう。 探索者たちはその日、仕事が終わった後、各々のタイミングで以下のイベントのいずれかに遭遇する。遭遇するイベントは1人1つのみである。内容は重複はさせない方が面白いだろう。KPはクローズドダイスで決定しても良いし、プレイヤー自身にダイスを振らせてイベントを決定しても良い。■【不運表(1d6)】
① 職場からの帰り道。横断歩道の赤信号で止まっていた時、誰かに背中を突き飛ばされる。走ってきた車の急ブレーキが聞こえ、君は車にわずかに衝突する。幸いにブレーキが作用し、事故は軽微なもので済んだが、探索者は1点のダメージと1/1d3の正気度喪失が発生する。突き飛ばした「誰か」の正体は分からない。■【奇妙な夢】
そうした不運に見舞われた夜。眠りについた探索者たちは、一律で同じ夢を見る。背後から何かおぞましく邪悪なものが自分を追いかけてきて、それから必死に逃げている夢だ。夢の中、探索者たちは自分の手を見る。その手のひらがぱっくりと裂け、べろりと長い舌と鋭い牙を覗かせる。そしてその手は、夢の中の探索者を、ぱっくりと食べてしまった。 口のついた手のひら。それはまるで、倉庫整理で発見した、あの奇妙な石像のような…。 探索者は【POW15】とのPOW対抗ロールを行う。 失敗した場合、1d6の正気度を喪失するが、目覚めた時には、理由の分からぬ強い興奮と多幸感を覚えている。 成功した場合は、0/1d2の【正気度チェック】を行い、目覚めた時には、理由の分からぬ激しい恐怖を覚えている。 今後、探索者たちは夜毎にこの奇妙な夢を見続ける。探索者が「手」とのPOW対抗に1人成功するごとに、「手」のPOWは1下がる。反面、探索者が「手」とのPOW対抗に1人失敗するごとに、「手」のPOWが1上がる。 夢は日ごとにリアリティを増していき、POW対抗失敗ごとに見る夢が長くなっていく。POW対抗に失敗した探索者は、白金が過去に関わった犯罪行為の追体験をさせられる。それは岩淵常紋をはじめとした過去の番組スタッフたちを殺害する・自殺に追い込む夢がメインになるが、イゴーロナクらしい低俗な性犯罪を行っている夢を見ることもあるかもしれない。そしてPOW対抗に失敗した探索者は、目覚めるたびに、自分の抱いている多幸感と幸福が、夢の中の犯罪行為に対するものだと理解していくことになる。 これは、イゴーロナクの手を介して行われている、イゴーロナクの狂信者・白金 小峰の攻撃である。彼女はイゴーロナクの信者を増やすため、30年前に「だごん情報局」という会社へイゴーロナクの手の呪いをかけた。再び像が発見されたことで、その呪いが再開されたのだ。夢の中ではあくまで犯罪行為を追体験をするだけであり、白金小峰の姿が見えるわけではない。■翌朝 ─探索開始─
翌朝、探索者たちは「だごん情報局」へ出社し、各々の不運について情報を擦り合わせた上で、奇妙な像についての調査を開始するべきである。さもなくば探索者たちは毎晩奇妙な夢とそれによる正気度喪失が発生することになるのだ。 昨日の時点で像を処分・破壊していたとしても、像はいつの間にか「だごん情報局」に戻っている。 探索者たちが取り得る可能性のある行動と、それによって分かるだろう情報を以下に記載する。■像について調べる
像は石を彫りあげたもので、指先から土台まで約35cmある。重さは5kgほどで、縦20cm×横20cm×高さ5cmほどの土台の上に掘り出されている。 像自体は年季の入ったものに見える。詳しいことは専門職の鑑定に出すなどしなければわからないが、少なくとも、ここ1年2年の間に作られたものでは無さそうだ。 探索者たちが時間経過を厭わず、その像を専門職の鑑定に出す、あるいは探索者本人が何らかの専門的知識を持ち合わせており、その技能を用いて調査を行うのであれば、「像が作られたのは少なくとも30年以上前であること」「像の中に5cm×9cmほどの薄い何かが埋め込まれているらしいこと」がわかる。探索者が像の内容物について調べたいと思うのであれば、何らかの方法で像を破壊する必要があるだろう。像を破壊した場合、探索者たちは像の中から「だごん情報局 番組ディレクター 岩淵常紋」という名前が書かれた色あせた名刺を発見する。名刺に書かれている会社の住所や連絡先は現在と同じだ。■像が置かれていた倉庫周辺を調べる
像が置かれていた周辺には、大量の古い番組完パケ(完成番組)VHSが残されている。探索者たちが時間をかけてそれらに目を通し、確認していくのであれば、【目星】成功で1時間、失敗で3時間後に「全部見せます!〜USO! あなたの知らない隣の世界〜 #24」という30年前のオカルト番組に、この像が登場していることがわかる。■「全部見せます!〜USO! あなたの知らない隣の世界〜 #24」の内容
1980年代に制作された番組。全25回放送。複数の番組制作会社が制作を担当しており、第24回の制作はだごん放送局が担っていたようだ。 当時ブームとなっていた新興宗教やオカルト団体を取材するという番組で、詐欺師まがいのカルト団体から学生のオカルトサークルまで、様々な対象を取材し、その神通力を紹介する30分シリーズ番組の第24回放送。 その番組の一つに、M大学の法学部に通うS少女という人物が登場する。顔はモザイクで隠され、音声は機械音に加工されている。 彼女は大学でオカルトサークルを作り、そこで彼女の信仰する神への信者を募っているという紹介が行われている。その中で登場する偶像崇拝対象の像は、探索者たちが倉庫で発見した石像によく似た手の像だ。 番組の中、彼女は石像に祈りを捧げ始める。すると、カメラの背後から「うわあ!?」という番組スタッフの悲鳴が聞こえてカメラがブレる。慌てたようにスタッフへとカメラが向けられると、AD、音声、ディレクターが、自分の手や足を確認している。そこには何かに噛みつかれたような歯型の傷跡が残されている。探索者たちが倉庫で遭遇した現象と全く同じように。 番組内ではその後のやり取りについては多くは触れられず、恐怖を煽るナレーションによって締めくくられている。何も知らない者が見ただけならば、いかにも当時の番組らしい、やや過剰な演出程度にしか捉えられないだろう。しかし、同じ現象を体験している探索者たちであれば…。 0/1の【正気度チェック】を行う。■番組スタッフの連絡先を調べる
番組のエンドロールには制作スタッフとして「ディレクター:岩淵 常紋」「カメラマン:吹上 旧」「音声:杉並 環七」の記載がある。 彼らについて調べようとするのであれば、だごん情報局の古い保険名簿を探したり、市役所などで調べる必要があるだろう。現代ではプライバシーに関わる情報は取り扱いが厳しいため、【信用】や【言いくるめ】によって市役所職員や総務担当、当時のことを知る役員を丸め込んだり、【図書館】で会社の古い資料を勝手にあさったりする必要があるかもしれない。会社で情報を調べれば、番組が制作されてから彼らが退職するまでの短期間に、非常に多くの労災がおりている事がわかる。呪いを受けたスタッフたちは様々な不運な事故に襲われ続けていたのだ。 他には、【コンピューター】などを使って番組スタッフや番組そのものの噂を調べようとすれば、オカルト掲示板のオカルト番組語りスレなどで、当時のスタッフは全員死亡したらしいなどという情報や、「ディレクター・岩淵常紋」の妻子が強盗殺人事件などで死亡しているらしいという古いニュース記事を発見できるかもしれない。 市役所などでスタッフ三人の連絡先について調べた場合、彼らは三人とも約30年前に死亡していることがわかる。警察署や図書館などでより詳しく彼らの死について調べるならば、彼らの死は自殺や事故死であることがわかる。岩淵常紋の家族に関する情報もここで改めて判明するかもしれない。 だごん情報局内部で情報を調べるのであれば、過去の番組の保険記録を確認することで、上記の情報の他に、番組のスタッフクレジットには記載されていないが、当時「千駄ヶ谷雑司」という18歳の青年が、アルバイトのADとして現場に同行していたということがわかる。彼について調べれば、彼だけは今も生きているということや、連絡先なども分かるだろう。 探索者たちが三人の番組スタッフのことにのみ意識が向き、番組内に映っていたADについて気づいていないようならば、【アイデア】や【知識】で、「現場にはADらしき青年も写っていたこと(音声、ディレクター、カメラマン、ADで、現場には最低でも4人の人間がいたこと)」「スタッフクレジットにはADの名前が記載されないことも多い」といった情報を思い出させ、「千駄ヶ谷 雑司」の情報へ誘導すると良いだろう。■少女Sについて調べる
千駄ヶ谷雑司に接触する前に少女Sについて調べようとするのであれば、方法は二つある。一つはだごん情報局内の古い記録を探り、取材対象であった少女Sの個人情報を調べること(これは手っ取り早いが、外部の人間且つ古い記録ということで、調査に用いる技能にマイナス補正をつけるなど、やや難易度が高くなる)。もう一つは番組内に映っているM大学の外観から、その大学がどこかを特定し、大学側から情報を探ることだ(これは遠回りだが、難易度自体は難しくはないだろう)。 それぞれの方法で調査を行えば、大学は美須賀大学(みすかだいがく)、少女Sの本名は白金小峰(しらがね・こみね)だということが分かる。名前が判明した時点で、【知識1/2】【法律】などの技能で、それが現在も国会議員として活躍する政治家の名前だと思い出すことができるだろう。思い出せずとも、名前さえわかれば、彼女が現在は政治家となっているということは調べればすぐに分かる。■千駄ヶ谷 雑司に接触する
千駄ヶ谷 雑司に接触する場合、彼は都内の高級マンションに住んでいる。セキュリティもしっかりしており、千駄ヶ谷雑司自身が自宅から滅多に出てこないこともあって、彼に会うには電話で連絡を取るほかない。 電話でアポイントメントをとるのなら、彼は「……何かおかしなことでもあったんですか?」と詳細を聞きたがるだろう。「面白半分の取材なら会いたくありません」とも。彼は探索者たちが会いたがる理由が、探索者たち自身がイゴーロナクの手の呪いに悩まされているからだと分からないかぎり、頑なに過去のことを話したがらず、取材にも応じたがらない。「みなさん亡くなりました。ひどい死に方をされました」「思い出したくありません。取材はお断りします」 探索者たち自身がイゴーロナクの呪いに悩まされているのだということを知ると、彼は露骨に狼狽した素振りを見せ、「そんな、捨てたのに、ちゃんと捨てたのに!!」などと錯乱したのち、呆然と「分かりました。……僕の知ることをお話しします。お手数ですが、家まで来ていただいてもいいですか? 入り口のロックの暗証番号は1969です。……足が不自由でして、あまり外出したくないんです」と、探索者たちを自宅へ招くだろう。千駄ヶ谷雑司の自宅へ向かった場合、イベント「千駄ヶ谷雑司の自殺」が発生する。 電話連絡を行わず、千駄ヶ谷雑司の自宅へ向かう場合、自宅前でこうした問答を行わせても良いだろう。■白金 小峰に接触する
白金小峰は政治事務所を運営している。適切な手段でアポイントメントを取るのであれば、事務所はそれを断らず、適当な時間に事務所で会う約束をスムーズに取り付ける事ができる。白金事務所は永田町の一等地にある。 KP情報としては、白金小峰の事務所はいわば狂信者の巣窟であり、このシナリオにおけるクライマックスの舞台である危険な場所だ。白金事務所へ向かう時点で、探索者たちはある程度の情報を集め終えていた方が良い。「千駄ヶ谷雑司の自殺」イベントを通過している事を推奨する。 「千駄ヶ谷雑司の自殺」イベントは、通過していれば探索者たちがイゴーロナクへの公的な対処方法(白金小峰の罪状を社会的に追求し、彼女を逮捕させることで、イゴーロナクが彼女を司祭としてはもう使えないと見限る)を思い至りやすくなり、警察との協力もしやすくなることから、非戦闘員ばかりであるスタッフたちがイゴーロナクと直接戦闘を行うのを避けやすくなる。自殺イベントを通過していない場合、これに直接思い至るか(CoCというゲームへの現在の一般的なイメージ上、これはやや難易度が高いだろう)、イゴーロナクや白金小峰を物理的に殺害しなければならなくなる為、社会的・物理的に難易度が高くなる、というものだ。 白金小峰を殺傷する場合、よほどうまくやらない限り、探索者たちよりも社会的地位を持った彼女を攻撃したことで、探索者たちは警察に逮捕されることになる。イゴーロナクの呪いからは解放されるかもしれないが、それが解決と言えるかは…。自殺イベントを通過させておいて損はしないはずだ。 白金事務所を訪問することで発生するイベントに関しては「白金事務所訪問」の項目に記載する。■【千駄ヶ谷の自殺】
千駄ヶ谷雑司の住居は一等地の高級マンション、その高層階だ。ワンフロア全てが個人の住居になっているような高級住宅である。セキュリティも厳重であり、中へ入るには暗証番号を入力する必要がある。 千駄ヶ谷雑司の自宅玄関は大きな磨りガラスがはめられている。探索者たちがエレベーターを降り、玄関の前へと立った時【目星】か【聞き耳】を行う。■ 【遺書の文面】
■【警察の情報】
千駄ヶ谷は白金とつながりがあり、白金には婦女誘拐・殺人や不倫・姦通などの黒い噂がある。警察でも調査を行っていたが、千駄ヶ谷がこのような不審死をした。これは白金による口封じではないかと警察は睨んでいるが、明確な証拠が存在しない以上、事故か自殺として処理する以外にはない…。 よくよく耳を傾ければ、そんな話を警察官たちがしているのを聞こえるかもしれない。 探索者達が警察に協力を仰ぐ、あるいは警察へある程度情報をリークするのであれば、警察は「公的な証拠がない以上、自分たちから大々的に動く事はできない」という立場をとる。反面、「決定的な証拠があればすぐにでも捜査が可能だ」とも。 また、白金事務所訪問の意図などを伝えれば、「明確に手を貸す事は出来ないが、当日、事務所近くにいつもよりも多めの人員をパトロールへ回す事は出来る。近くで大きな音でも鳴れば、すぐにでも誰かが向かうだろう」というような返答となる。警察にも立場がある以上、はっきりとイエスと伝えることこそ出来ないが、これは言外に協力すると言っているのだ。■【スキャンダルポイント目安】
3ポイント以下…都市伝説のダイイングメッセージ程度。5ポイント以上…法的な影響力を持った証拠品として成立する。8ポイント以上…全国ニュースレベルのトップ視聴率を取れる。15ポイント以上…歴史に残る世紀の映像だが、本当にこれを放送するのか?■事務所内部(地図データ)
◆一階玄関:気になるものはない■戦闘処理
道中で警察に協力を仰いでいるのであれば、1d4+1ラウンド後に異常を察した警察が到着する。道中で警察の協力を仰いでいない場合、誰か一人が脱出してから1d4+1ラウンド後に警察が到着する(脱出した一人が助けを求めたというような形だ)。 戦闘の勝利条件は「探索者全員の事務所からの脱出」か「警察が到着するまで全滅しない」である。 戦闘ラウンド中、【100-スキャンダルポイント×10】%の判定に成功する事で、事務所の職員と白金の手をかいくぐり事務所を脱出する事が出来る。これは戦闘ラウンドの行動を消費したとみなされる。 また、戦闘ラウンド内で、この判定以外の能動的な技能に成功する度に、脱出成功率が10%ずつ上昇していく。探索者が一人脱出するたびに、警察が到着するまでのラウンドが1減少する。 脱出した探索者の行動はシナリオ内では指定しない。脱出成功した探索者はその場から逃げ出してもいいし、中に残された他の探索者を助ける為に動いても構わない。提案次第で様々な行動が取れるだろう。 また、この戦闘中の光景を【芸術:番組制作】などによって記録に残す・撮影するといった行動をとった場合、即座にスキャンダルポイントが+5される。映像としては素晴らしい出来になるが、中に残った探索者たちが脱出するのは更に難しくなるだろう。■エネミーステータス
■「イゴーロナクの司祭」白金小峰STR10 CON10 SIZ10 DEX10POW13 INT8 EDU21 APP20 SAN0【隠蔽工作】…スキャンダルポイント×2% ……判定に成功することでスキャンダルポイントが1下がる。【<魅惑>の呪文】…POW対抗(詳細は基本ルールブック288頁参照) 探索者にPOW対抗をしかけ、成功した場合、探索者を即座に魅惑状態にすることが出来る。魅惑された探索者は彼女の命令に逆らえず、意志と裏腹に彼女の命令に従うようになってしまう。 魅惑状態になった探索者へ彼女が下す命令は「地下へ向かえ」である。探索者は2ラウンド後に地下へ到着し、そこでイゴーロナクの攻撃を受けることになる。 INTが8以上の探索者であれば、自分の手番でPOW対抗を挑むことができる。そのPOW対抗で勝利すれば、再度白金から魅惑の呪文をかけられるまで体の自由を取り戻すことになる。【設定と行動】 彼女は日常生活の中でこそ非常に知的な言動を見せるが、長年の信仰によりイゴーロナクに身も心も捧げ続けた事で、もともとは非常に高かったはずのINT(自発的に考える力)を著しく低下させている。彼女のINTが異様に低いのはその為だ。 彼女は探索者全員に【<魅惑>の呪文】をかけるよう動く。本来であれば一人にしか効果を及ぼさない呪文だが、イゴーロナクの司祭として長年を過ごしてきた彼女は、その呪文を複数人にかけることが可能になっている。残留探索者が全員魅惑された場合は、【隠蔽工作】の技能で判定を行い、探索者たちが貯めたスキャンダルポイントを下げようとするだろう。【エンディングとクリア報酬】
■クリア報酬
・スキャンダルポイント点と同じだけのSAN回復・スキャンダルポイント点と同じだけの信用成長・イゴーロナクと遭遇して生還した 1d8のSAN回復■想定されるバッドエンド
このシナリオで想定されるバッドエンドは二つある。 一つは、探索者たちが白金事務所から脱出することが出来ず、全員がイゴーロナクの手にかかりHPが0になってしまった場合だ。この場合、探索者たちは全員死亡し、警察が到着する頃には全ての隠蔽工作が終わってしまっている事から、真実が公になることはない。白金はその後も暗躍を続けるというものだ。 もう一つは、千駄ヶ谷雑司のパソコンのハードディスクの復元データや、白金事務所の地下再奥にある古書「グラーキの黙示録第12巻」の中を目撃、あるいは撮影することを選び、「イゴーロナク」の名を目にしてしまった場合だ。この場合、白金の末路は変わらず、スタッフたちは一時白金の呪いから解放されるが、番組が完成し、公開されたあとで(場合によってはその番組にはイゴーロナクの名が映り込んでいるかもしれない)、探索者たちは再びイゴーロナクによる悪夢と恐怖に苛まれる。心身ともに衰弱しきった探索者たちは、やがて夢の中で怪物から二つの選択肢を迫られる。「この場で死ぬか、イゴーロナクの司祭となって永遠の従属を誓うか」だ。いずれの選択を選ぶかは探索者の自由だが、いずれの選択肢を選んだとしてもその探索者はロストとなる。また、事件後その映像を見てイゴーロナクの名を目にした者、例えば探索者たちに協力した警察官や、放送された番組を見た多くの人々、番組製作を手伝った他のスタッフたちも同様の被害にあい、多くの人間が犠牲になるだろう。最後に笑うのはイゴーロナクただ一人というわけである。【各種用語・NPC設定】
【だごん情報局】
創設40年を迎えた映像制作会社。オカルト系番組を主に制作している。20年ほど前まではオカルトブームに便乗し繁盛していたが、最近はネット上を主にマニア向けのコアな番組を細々と制作するにとどまる。【全部見せます!〜USO! あなたの知らない隣の世界〜】
30年前にだごん情報局が制作を担当したオカルト番組。 1980年代にブームとなっていた新興宗教やオカルト団体を取材するという番組で、詐欺師まがいのカルト団体から学生のオカルトサークルまで、様々な対象を取材したシリーズ。 白金 小峰は当時19歳の美須賀大学の法学部に通う大学生。オカルトサークルの主催を務め、テレビクルーの取材に応じていた。番組内では彼女の神通力として奇妙な現象が紹介されている。その中にはスタッフが突然怪我を負うというものもあった。 番組内では本名は伏せられ、M大学の少女Sとして紹介されている。【「イゴーロナクの司祭」白金 小峰(しらがねこみね)】
30年前、大学生時代にイゴーロナクの召喚に成功し、イゴーロナクの司祭となった女。 現在は49歳を迎えるが、とても実年齢通りとは思えないほど若々しく精力的で、魅力的な見目をした女性。本の虫で、大学時代にグラーキの黙示録12巻を古本屋で見つけてしまい、イゴーロナクの司祭となった。 現在は政治事務所を立ち上げ、国会議員の一人として、主に女性の社会進出や権利を取り扱った政治活動を行っている大御所政治家だ。その活動の中にイゴーロナクの司祭としての能力がどれだけ関わっているかは…。無関係ではない、という言葉で茶を濁しておこう。【「元AD」千駄ヶ谷 雑司(せんだがやぞうじ)】
30年前、18歳でADのアルバイトをしていた青年。現在48歳。イゴーロナクの呪いにより、両足が膝下からない。 「イゴーロナクの手」の呪いに耐え切り、イゴーロナクの勧誘に屈して司祭の一人となった、当時の番組スタッフ唯一の生き残り。それは狂信からではなく、イゴーロナクそのものに対する恐怖心からの恭順だった。白金小峰の事務所に所属し、彼女に連なるイゴーロナクの狂信者として多くの悪事に協力していたが、探索者たちの接触により正気をわずかに取り戻し、己のこれまでの行動を悔い、探索者たちへの遺書を残して自室で自殺する。【「元ディレクター」岩淵 常紋(いわぶちじょうもん)】
30年前、だごん情報局の番組ディレクターを務めていた男。当時48歳。享年49歳。シナリオ開始時点ですでに死亡している。 「全部見せます!〜USO! あなたの知らない隣の世界〜」の担当ディレクターであり、白金小峰の取材を行った人物であり、取材後イゴーロナクの手の呪いに耐え切れず、最初に発狂し自殺した人物。 妻帯者であり、娘もいたが、彼の妻と子供は彼の死の直前に、不幸でおぞましい事故・事件に巻き込まれ(それは暴行強盗や性犯罪であったかもしれない)、全員が無残な形で死亡している。事件の犯人は現在も特定されていない。【「元カメラマン」吹上 旧(ふきあげきゅう)】
【「元音声エンジニア」杉並 環七(すぎなみかんしち)】
30年前、だごん情報局の技術スタッフを務めていた人々。シナリオ開始時点ですでに死亡している人物。「全部見せます!〜あなたの知らない隣の世界〜」の担当だった。