コード・オブ・クトゥルフ

ロサンゼルス決戦



──……その日、世界と人類は終焉を迎えた────アメリカが先走りやがった! 核ミサイルを発射だと!? 正気か!?────放射能を帯びて復活だとぉ!?────勇敢なる諸君らと共に戦えた事を誇りに思う────この世界が終わったら、俺たちどこに行くのかな────人類に希望あれ!──
 いま、世界の運命は君たちの手に委ねられる!
▼PDF販売

1.シナリオ概要

【はじめに】

 このシナリオの舞台は星辰が揃いクトゥルフが蘇った直後の世界となる。シナリオのコンセプトは『クトゥルフTRPGでハリウッド映画をやろう』であり、現代武器でクトゥルフと正面から殴りあう、ロールプレイに大きく比重を置いたシナリオ構成となっている。 PLはそれらしい行動をゲラゲラと笑いながら、PCはあくまで糞真面目にシリアスな顔で進行することを推奨する。シナリオのキーワードは「絶望と希望」だ。 技能初期値の変動、部下ルール(捨て駒キャットルール)の採用、特殊な世界観など、通常のCoCではあまり見られない要素が多く含まれるシナリオであるため注意。 KPがサプリメントの「クトゥルフホラーショー」を所有している場合は非常に参考になるだろう。
 ハンドアウト制を採用しており、プレイヤー4人を前提としている。 プレイ時間はボイスセッションで5〜6時間程。ロールプレイに比重を置いた作りになっている事、セッション前の世界観共有が大切なシナリオであることを、KPはPLとの共通認識として持っておくと良い。 推奨技能などはハンドアウトの項目に記載する。

【舞台】


・【世界観と今回予告】の項目を参照

【推奨技能とか】


・【探索者ハンドアウトと採用ルール】の項目を参照

【推定難易度】


KP:★★★★☆PL:★★★☆☆

【シナリオ背景(顛末まで)】

 1年前に海より現れ、瞬く間に世界中を滅亡の淵へと追い込んだ怪物クトゥルフ。その怪物と戦うため、人類は残った人々をかき集め義勇軍ゼータを設立し抵抗を続けていた。ゼータはクトゥルフ復活前より秘密裏に怪物と戦いを続けていた秘密抗神組織デルタグリーンという組織を前身としており、人類滅亡の危機を前に人々の前に姿を現した人類にとって最後の希望だった。 そして現在。探索者達は各々の動機からゼータへと志願し、戦いに身を投じている兵士達だ。最終決戦を目指し、対クトゥルフ用巨大戦艦エルピスに乗り込み、戦いの場へと赴かんとしていた探索者達は、その道中で艦長から「ゼータを信じてはならない」という言葉を受ける。 沈没する戦艦。打ち砕かれる希望。迷い込んだ海底。探索を進めていく中で、探索者達はゼータの正体は、デルタグリーンが人類の滅亡を望むダゴン秘密教団によって乗っ取られた組織である事を知る。クトゥルフが蘇った原因は、デルタグリーンがダゴン秘密教団に敗北したが故だったのだ。 真実を知るのは探索者達のみ、果たして探索者達はダゴン秘密教団の妨害を乗り越え、大いなるクトゥルフを打ち倒し、この絶望に満ちた世界から人類を、世界を救う事が出来るのだろうか? さあ、人類に希望あれ!

【世界観と今回予告】

◼︎【今回予告】

──……その日、世界と人類は終焉を迎えた────アメリカが先走りやがった! 核ミサイルを発射だと!? 正気か!?────放射能を帯びて復活だとぉ!?────勇敢なる諸君らと共に戦えた事を誇りに思う────この世界が終わったら、俺たちどこに行くのかな────人類に希望あれ!──
 いま、世界の運命は君たちの手に委ねられる!

◼︎【今回予告:世界観詳細編】

 世界は崩壊した。 今より1年前、突如として太平洋上に現れた正体不明の怪物は、周囲に解析不能の汚染物質を撒き散らし、太平洋沿岸の国に重篤なダメージを与えた。各国は厳戒態勢を取り、国連は緊急事態として怪物への攻撃を敢行。しかし怪物は攻撃のことごとくを無力化。反対に怪物により世界中に放たれた多量の落とし子により世界の75%は焦土と化し、1年間で人口の2/3は死に絶えた。 人類文明は崩壊を迎えつつあった。 多くの人間は人類という種の終焉を理解し、絶望し、発狂し、死を望んだ。 けれど、幾人かの人間たちはまだ諦めてはいなかった。そう、君たちのことだ。 君たちは今、怪物──コードネーム・クトゥルフに抵抗する為に発足された多国籍軍「ゼータ」の一員となり、北極を目指し北上するクトゥルフを追って超大型戦艦「エルピス」に乗船している。 北極は近い。君たちの決戦の時もまた近い。 玉虫色に汚れきった海を北上しながら、しかし奇妙なほど静かな夜。 時刻はマルサンマルマル(03:00)。 戦艦「エルピス」の第3ブリーフィングルームから、この物語は幕をあける。
※ギャグのように見えますが、事前のPL間の認識が非常に大事になるシナリオです。今回予告ほかで、PLのシナリオのテンション認識をきちんと統一する事が、円滑なセッション運営に於いて重要になるでしょう。※プレイヤーはゲラゲラと笑いながら、PCはいたって真剣にRPを行う事を推奨します。
+KPが望むのであれば、作中に登場する軍事関連の描写・用語・判定を、より専門性の高いものに変更しても構いません。

【探索者ハンドアウトと採用ルール】

◼︎【ハンドアウト】

 本シナリオはハンドアウト制を採用する。 探索者達はシナリオ内では軍人として扱われるが、世界の危機を前にして集った義勇兵であるとする為、職業は一般的なものを選んでも構わない。 このシナリオ内では、探索者達は全員適切な軍事的訓練を受け終えているものとし、全ての重火器技能の初期値を50%として扱う。
*シナリオ全体推奨技能:【目星】【聞き耳】【天文学】【ナビゲート】【機械修理】
◎ハンドアウト1(以下、当該PCをPC1と表記する) 君は第3部隊アルファチームの小隊長にして、第3部隊全体の隊長だ。 君は結婚を間近に控えていた恋人を怪物の攻撃によって失っている。 怪物は君の幸せを奪っていった憎い敵だ。殺さずにはいられない。推奨技能:【任意の銃火器技能】
◎ハンドアウト2(〃) 君は第3部隊ベータチームの小隊長だ。 君は元民間人であり、戦闘経験は薄い。 そんな君がここにいる理由は、1年前、怪物出現時に「人類に希望あれ」というメールを残し行方不明になった、米軍海兵隊所属だった友人ローリー・ワイルダーの行方を追う為だ。推奨技能:【信用】あるいは【説得】
◎ハンドアウト3(〃) 君は第3部隊ガンマチームの小隊長だ。 ガンマチームは医療班であり、構成員のほとんどが衛生兵だ。 君もかつてはどこかの医療機関に所属する人間であっただろう。 君はロサンゼルスの避難シェルターに愛する家族を残してきている。 家族のためにもこの戦いには負けられない。推奨技能:【医学】【精神分析】
◎ハンドアウト4(〃) 君は第3部隊デルタチームの小隊長だ。 君は実戦経験が薄い新人隊員であり、本来ならば隊長の地位に収まるはずもなかったが、このミッションの直前で発生した不慮の戦闘により、デルタチームの君以外の隊員は全滅した。 その後、デルタチームは再建され、唯一生き残った君は小隊長へと任命されることになったのだ。 君だけは知っている。過去の隊長が死の間際、君に言った「ゼータを信じるな」という言葉を。推奨技能:自由

◼︎【特殊ルール】

+【隊員ルール】 初期隊員数:各探索者につき10人 SAN0、HP0、能力値0化などの行動不能・死亡判定になった場合、隊員が代わりに犠牲になったものとする残機ルール。隊員一人を犠牲にすることで、その時点でのPCに対する判定を無効化する。 正気度判定時に隊員を消費する事で、発狂判定そのものをなかったことにし、精神分析の代わりとしても構わない。(PCではなく、隊員が発狂した・死亡したものとみなされる) サプリメントの「クトゥルフホラーショー」を所持している場合、詳細はそこに記載されている捨て駒キャットルールに準じる。 基本的に、部下達はPC達の指示を受けて行動するため、個別の行動や特殊な行動を取ることは出来ない。要するに残機が10個あると思っておけばいい。 部下はモブだが、プレイヤーが望むならば好きに名前をつけさせても面白いかもしれない。 各自、部下達との関係性はKPの許す限り、プレイヤーが自由に設定して構わない。

◼︎【おまけ:隊員死亡シチュエーション表(1d10)】

1:「この戦いが終わったら、俺、結婚するんです」2:「どうです、もう弱虫なんて言わせませんからね! ……あ、れ…?」3:「何か向こうから変な音が……確認してきます」4:「故郷に帰って、美味い飯を出す店を持つのが夢なんです」5:「おれ……役に立てました……? ははは、よかった……」6:「いやだ、いやだ死にたくない! 死にたくない、助けて隊長!!」7:「天に召します我らが父よ……どうか彼らをお守りください……!!」8:「妹が病気でして。俺が守ってやらないといけないんです」9:「すんません……賭けの負け金、払えなさそうです……」10:「あなたの部下になれて……俺は幸せでした……!」

2.シナリオ本編

【シーン1:北極海上への哨戒任務】

◼︎【カット1:ブリーフィングルームにて】

++++++++++++
AM 02:50戦艦エルピス第3ブリーフィングルーム
 丸い窓が北の壁にいくつか。ロッカーがたくさん。大型のテーブルが二つと、申し訳程度に置かれている資料棚。それが第3ブリーフィングルームにある人間以外のものの全てだ。 大型戦艦の一室といえども、ブリーフィングルームに40人近い人間が集まっていれば、否応なくその部屋は狭苦しく感じるだろう。 兵士達……すなわち君の部下達は、待機時間を各々の自由に過ごしている。 歓談する者、トランプで賭け事に興じる者、ブリーフィングルームの中に備えられた資料に目を通す者、窓の外を眺める者、様々だ。 君たちはこの兵士達を束ねる各班の隊長として、そして同じ第3部隊に所属する仲間として、三日前からこの戦艦に乗船している。 もうすぐ、哨戒の交代を告げる者が来る頃合いだろう。
++++++++++++
+【知識】【図書館】…多国籍軍「ゼータ」の成り立ちの経緯についての詳細。 元は「デルタグリーン」という、米国を中心に設立された、この世界に蔓延る怪異・魔術から世界を守る為の秘密抗神組織だった。けれど1年前の世界攻撃の際に組織は壊滅、生き残りが自らの存在を明かし、世界へ公開協力を持ちかけ、それに応えた勇気ある有志たちが集って生まれた奇跡の軍隊が今の「ゼータ」である。【アイデア】…すなわち、「ゼータ」は実戦経験に乏しい民間人も含まれた、まだ辛うじて健康である生き残りを寄せ集めたような集団だ、という悲観的な思考が脳裏をよぎる。
+【ギリシャ語】【知識】【アイデア】…「エルピス」とはギリシャ語で「希望」を意味する。まさにこの船は人類にとっての最後の希望なのだろう。
+【目星】…窓の外には緑色の月が浮かんでいる。海水の色は血のような真紅かと思えば、薄汚い金色にも姿を変える、どろどろとした玉蟲色だ。 真っ青な霧がうっすらと周囲を覆っている。 吐き気を催す悪夢のような光景はいつまで経っても見慣れる事はない。 SANチェック(0/1d3)
+【聞き耳】…任務に関する噂話。 基本的に4つのチームが協力して一つの任務に当たるよう組まれている。この船に乗っているチームは全200チーム。1チーム10人前後の班であり、乗組員は2000人程度だという。 「このクソデケェ戦艦を誰がどうやって動かしてるんだろうな」という雑談が、どこからか聞こえてくる。確かに、少なくともあなたは、船を動かすために躍起になるような任務を与えられた事はない…。(参考:戦艦大和の乗組員は3300人程度)
+【賭け事】【幸運】で適当に。金など持っていても意味がないが、遊ぶ事で気は紛れる。そのために遊んでいるのだ。 おそらくはこの部屋を使う皆がそうなのだろう。トランプはもうボロボロだ。
+発生イベント【腹一杯のドリトスを】「なあ、この戦いが終わったら、あんたは最初に何をしたい?」 そうあなたたちに話しかけてきたのは、アルファチームの隊員、マイケル・ハートマンだ。 好きにRPをして雰囲気を出そう。 マイケルは「俺はこの戦いが終わったらドリトスを吐くまで食べるんだ」と笑いながら言う。 【心理学】【アイデア】に成功することで彼自身そんな願いが叶うことは決してないのだと自覚していることがわかる。
 この導入のシーンで、KPはこのシナリオの世界観をPL達ときちんと共有すること。 世界は崩壊寸前であり、君たちはこの世界の最後の希望なのだ。 隊員やPC同士のRPなどで交流を深めておくと、この後の展開がやりやすいだろう。
「交代の時間だ。よろしく頼むぜ、◯◯チーム(1d4で任意のチームを決定)」 第二部隊のオメガチーム(編成外)のリーダー、レノックス・ストーンが扉を叩きながら伝達に来る。 君たちの今日の任務が始まる。

◼︎【カット2:海上哨戒任務】

++++++++++++
AM 03:05戦艦エルピス哨戒室
『こちら操舵室。どうにもこの辺は妙な浅瀬が続いてるらしい。見渡す限り島がねえってのに、意味不明な世界になっちまったもんだ。つまりこの船は只今よりよちよち歩きに入る。オーバー』 第一部隊隊長ブライアンの無線と共に、船が速度を落とし徐行態勢に入る。海中の様子はこの部屋では分からないが、どうやら浅瀬エリアに入ったらしい。 哨戒室は見張りの為、360度つなぎ目のない硝子窓がある丸い部屋だ。 さあ、任務に集中しなければ…。
++++++++++++
(この判定でファンブルが発生した場合、冒頭でドリトスを食べたがっていたアルファチームの隊員のマイケルが死ぬ)
 PC達は戦艦エルピスの哨戒室に入り、見張りを行う。哨戒室は対空レーダーや双眼鏡などが置かれたシンプルな部屋だ。緊急時に館内放送が流せるようマイクが備えられ、操舵室とは無線でつながっており、随時状況を確認することが出来る。 【目星】【聞き耳】で情報を出すことができる。
+【目星】…『海に対して』 狂った色の海は静かすぎるほど静かだ。おや? 何かが波間で動いた気がする…。【目星】に再度挑戦する事ができる。…『戦艦に対して』 離れた場で甲板を歩いていく人物をみる。あれはこの船の最高指揮官、スミス艦長だ。風に当たりに来たのだろうか。するとそこに背後から何者かが近づいていく。どこかの部隊の隊員か? その隊員はナイフを持ち、艦長へと襲いかかって甲板でもつれあっている! 君の見ている前で二人の人間は戦い、最終的に艦長が襲いかかってきた隊員を返り討ちにする事で勝利を収める。艦長は目撃者が誰もいない事を確認するように周囲をきょろきょろと見回したのち、殺した隊員を海の中へと投げ入れてしまった。+【聞き耳】…静かな漣の音だけが聞こえてくる。
+『海への【目星】2度目』 海の中で影が蠢いた気がした。あれは浅瀬の影だろうか? あなたは気付くだろう。“その影が動いているのだ”。 それは浅瀬などではなかった。船のすぐ下を、船と全く同じスピードで、一切の波を立てることなく、まるで海と同化しているかのようにして随伴していた、あまりにも巨大な存在だったのだ。 巨体は動き、双眼鏡の中にその姿の片鱗を見せる。空を貫くように聳え立つ、二本の巨大な触手。それは赤い霧を割くように、ゆっくりとゆっくりと、戦艦エルピスへと近づいて……違う、倒れてくるのだ!(SANチェック1d6/1d20)
 このイベントを経験したPC達は、即座に館内放送と操舵室への連絡を行うべきである。【DEX×5】に挑戦し、成功すれば即座に館内放送/操舵室への連絡を行い、全戦闘員に戦闘配置へ着くよう告げる事が間に合ったものとする。船は大きく揺れながらもクトゥルフの落とし子の触手を避け、【イベント:クトゥルフの落とし子との戦い】が発生する。 判定に失敗し、配置が間に合わなかった場合、戦艦エルピスはクトゥルフの落とし子からの先制攻撃を受けることによって一撃で機関部が大破。バッドステータス(攻撃1発分の耐久力減少)を受けた状態で【クトゥルフの落とし子との戦い】イベントへ突入する。

+発生イベント【クトゥルフの落とし子との戦い】

 戦艦エルピスを用いた擬似戦闘となる。 この判定でファンブルが発生した場合、冒頭でドリトスを食べたがっていたアルファチームの隊員のマイケルが死ぬ。
+【クトゥルフの落とし子】STR70 CON90 SIZ180INT21 POW21 DEX11耐久力135 db:+12d6攻撃…触肢6d6 80% 攻撃回数1d4回…かぎ爪12d6 80% 攻撃回数1回装甲…10ポイントの皮と脂肪層/1Rに3耐久力を回復させる正気度喪失…1d6/1d20
+【戦艦:エルピス】装甲…20ポイントの物理装甲。耐久力…120攻撃方法…5インチ砲12d10 1R1回 耐久50これが四門(PCの人数分)あるものとする。基本成功率は50%。
+【戦闘ルール】 探索者達は哨戒室で船の目となり、敵の位置を的確に船へ指示する事で、攻撃成功率に補正がついていく。その上で、船の攻撃という体でPLがダイスを振り攻撃を行う。攻撃はPC達のDEX順に行う。 どのような補正になるかを以下に示す。また、KPは探索者達の自由な発想を認めても構わない。<砲><重機械操作>…戦艦の操作に関し適切且つ具体的な指示を下す事が出来た。基本成功率に加えて+1d20+20%の補正を得る。<ナビゲート>…砲手に敵の現在位置を適切にナビゲート指示を出来た。基本成功率に加えて+1d20+10%の補正を得る。<精神分析><信用>…砲手を落ち着かせ、狙いを定めるよう誘導できた。基本成功率に加えて+10%の補正を得る。<砲以外の重火器技能>…直感的に伝わる指示を出す事が出来た。基本成功率に加えて+10%の補正を得る。
※※※ クトゥルフの落とし子の耐久力を0にする、或いは戦艦の耐久力が追い詰められると(KPはこのタイミングを自由に設定して構わない。大切なのは『戦艦が沈む前』にこのイベントを起こすという事だ)、落とし子は海の中に潜り姿を隠してしまう。 張り詰めた緊張感が走る中、無線がつながった操舵室の向こうで、誰かが「大変だ!!」と駆け込み、絶望的な言葉を君たちへ向ける。
「アメリカが先走りやがった! 核ミサイルを“ここ”に発射する気だ!」

【シーン2:先走る大国、止まらぬ崩壊】

◼︎【カット1:迫る危機】


++++++++++++AM 03:30戦艦 エルピス哨戒室
『落ち着け、俺たちが切り捨てられたと決まったわけじゃない!』『哨戒室第3部隊! 聞こえるか、空を見てくれ!』『さっきの戦いでレーダーがイカれた、アナログに頼るしかない! そこから北極星は見えるか!?』『衛生にハッキングしてミサイルの着地座標を逸らす! 現在地の座標と敵の位置を教えてくれ!』 電算室・第六部隊の隊員達から悲鳴じみた指示が次々と君たちへ与えられる。矢継ぎ早に繰り出される指示の中、君は操舵室に繋がる無線から、第一部隊の隊員達のこんな言葉を拾い上げた。『艦長、どうしてこんなところに!?』
++++++++++++
(この判定でファンブルが発生した場合、冒頭でドリトスを食べたがっていたアルファチームの隊員のマイケルが死ぬ)
 探索者達が取れる行動の候補としては以下の通りだ。+【1:現在地の座標を割り出す】<ナビゲート><天文学>…ここは北極の近くだという事がわかる。
+【2:敵の現在地を割り出す】<目星><天文学><ナビゲート>…遠方にて、落とし子を回収し体内へと吸収する大いなるクトゥルフの姿を目撃してしまう。 SANチェック(1d10/1d100) SANを犠牲に驚異の洞察力を発揮した探索者は、クトゥルフの現在位置は核の影響範囲外であると理解する事が出来る。
+【3:操舵室へ移動する】 艦長と話をする事を望むPCがいる場合、操舵室への移動を勧めるといいだろう。無線は今、隊員同士のやりとりで一杯一杯だからだ。 船で働いていた君たちならば操舵室の場所も問題なく知っている。戦闘の余韻だけが残る今ならば、移動する事は容易だろう。
 1・2が達成される、或いはKPが適切と判断したタイミングでハッキングが成功。 核ミサイルは進路を変え、凄まじい轟音とともに、君たちの目の前でクトゥルフへと命中する。「やったか!?」 しかしクトゥルフは止まらない。放射能を帯びて復活する。「放射能を帯びて復活だとぉ!?」 この会話を耳にしたPCが居た場合、SANチェック1/1d10

【シーン3:決死の突撃】

◼︎【カット1:総司令官の言伝】


++++++++++++AM 03:50戦艦エルピス
「勇敢なる諸君らと共に戦えた事を誇りに思う」 操舵室に辿り着いたPC達は、第一部隊達へ語りかける艦長の声を聞く。 威厳に満ちた声音が、重々しく絶望を告げていた。「先の戦いにより、エルピスは動力部を著しく損傷。帰国する為のエネルギーを失った。 マルヨンマルマルより、当艦は最後の希望を賭けてコードネーム・クトゥルフに突撃攻撃を行う。核さえ無効化する怪物だ、恐らく効果は無いだろう。……だが、ただ嬲り殺しを待つよりはマシだと私は思う。 ──人類に希望あれ」
++++++++++++
+艦内放送(艦長の声)への【心理学】 艦長が既に希望を失っている事を察する。しかしその声には何らかの覚悟が感じられる。クトゥルフへの決死の攻撃を行う故の覚悟だろうか? 詳しい事は声だけでは分からない。(KP情報:艦長の目的はクトゥルフへの攻撃と同時に、乗船していた総数不明のダゴン教団の関係者を壊滅させる事である。彼はすでに正気を完全に失っている)
+艦長と話をする 艦長は操舵室で、舵を握る第一部隊の隊長と話をしている。君たちが話しかければ会話には応じるが、残るか去るかの二択を迫るばかりである。 思惑について尋ねても詳しい事は話さないが、仮に探索者達が哨戒室で見た殺人の事を話すのであれば、重々しく諦めたような声で「ゼータを信じてはならない。ここはもうデルタグリーンではないのだから」と答えるだろう。 彼は落ち窪んだ目で、自分に言い聞かせるように早口且つ小声で繰り返し繰り返し繰り返し呟き続ける。「誰も信じてはならない、君も、君の部下も、誰も…」
<心理学><精神分析>…彼は狂気じみた諦観と疑心暗鬼に陥っているように思えるが、人間性を犠牲にするほど強烈な強迫観念じみた義務感を抱いているようにも感じる。<信用><説得><精神分析>…艦長は探索者達の言葉にわずかに心を動かされ「……私は司令官失格だな」と以下の情報をこぼす。
「クトゥルフは現れたのではない……蘇ったのだのだ。蘇らせた者がいるのだ」「エルピスには、最初から帰りのエネルギーは積まれていない。騙し騙しの運行も、最早限界だろう。何故なら……ああ、私は、なんという事を……いいや、最早悔むまい。この船は棺桶だ。棺桶なのだ…」「異界の敵との長く破滅的な戦いに人類が敗北するようなことがあろうとも、人類の存在と苦闘の物語が無駄に語られたことにはなるまい」「……救命艇が最下部にある。君達が本当に、まだ希望を捨てていないのならば、今は逃げなさい。それが希望になるかは、私にはもう、わからないが……」
 艦長からの発言で具体的な情報を出すべきではない。ほのめかすに留めるべきである。 探索者達が食い下がるようならば、その場にいる第一部隊の半数が突如離反し、同部隊の隊員を殺害し探索者たちへ銃を向ける。探索者たちの部下達も、<幸運>判定を行い、失敗した場合は1d4人の部下が離反する。離反した部下達は深きものとしての姿を現し、PC達へ銃を向ける。正気度チェック(0/1d6) 館長はPC達を突き飛ばし、ここは自分に任せて逃げるよう探索者達へと告げる。ほかにも、クトゥルフからの攻撃が始まり船が激しく揺れ、そのままそこに残っていては隊員諸共にロストするだろう事を伝えると良い。そうなればバッドエンドでセッション終了だ。
 艦長は自らの責任と目的の為、決して降りる事はしない。探索者達が物理行使に出ようとするならば、そんな事をしている場合かと叱責する。また館内放送で他の兵士達を助けようとするのであれば何が何でも、探索者達と対立してでも止めようとするだろう(彼はダゴン教団の内通者に情報が漏洩することを何より恐れている)。艦長が生存するような展開は望ましくない。
 探索者たちは救命艇へ逃げる事になる。操舵室で離反イベントが発生していない場合、ここで探索者は道中で<幸運>判定ほかを行う。失敗した場合、1d4人の部下が深きものであり、正体を現して海に飛び込み姿を晦まし居なくなる。正気度チェックを行い、描写は以下に準じる。 成功した場合、幸いにも君たちの部隊に裏切りものは居なかった。代わりに救命艇までの道中、探索者たちは隊員達の幾人かが海へと飛び込んでいる様を見るだろう。探索者達がそれをよく観察する事を望むならば、【目星】でそれが半魚人のような姿をした醜悪な人間達が笑いながら汚れた海へと飛び込んでいるのだと分かる。海の中で半魚人たちは泳げない人間達をあざ笑っているのだとも。 正気度チェック(0/1d6)を行う。
 探索者達が救命艇へ乗り込んだところで、クトゥルフの攻撃判定をエルピスへ行う。
+【大いなるクトゥルフ】STR140 CON110 SIZ210INT42 POW42 DEX21耐久力160 db:+21d6攻撃…触肢11d6 100% 攻撃回数1回…かぎ爪1d6+21d6 100% 攻撃回数1回装甲…21ポイントの超次元筋肉/1Rに6耐久力を回復させる正気度喪失…1d10/1d100

◼︎【カット2:海上・遠のく意識】

 クトゥルフの攻撃により、PC達は救命艇ごと海へと跳ね飛ばされる事になる。しかし幸いに、その衝撃のおかげで船の近くに落下する事はなく、水中から救命艇を襲う深きもの達に襲われる事も無かった。 凄まじい波が発生し、救命艇は船から遠ざけられていく。その波の奥、君たちは先ほどの怪物よりも遥かに大きな怪物の姿を見るだろう。 <幸運>判定を行い、失敗した場合、探索者は大いなるクトゥルフの姿を目の当たりにする。正気度チェック。(1d10/1d100) 成功した場合はクトゥルフの姿を見る事はない。しかし、その怪物へと全砲門を解放し、凄まじい砲撃と共にぶつかっていく戦艦エルピスの末期を見る。エルピスは巨大な怪物へとぶつかり、そして凄まじい爆発を上げ、海中で嘲笑っていた周囲の深きもの達を巻き添えにしながら探索者達の目の前で沈没していく。人類の最期の希望と謳われた巨大戦艦の最期の姿に、君は湧き上がる絶望から逃げる事は出来ないだろう。 正気度チェック(1d3/1d6)(これらの判定でファンブルが発生した場合、冒頭でドリトスを食べたがっていたアルファチームの隊員のマイケルが死ぬ) 凄まじい熱波がPCたちを襲い、意識が遠のいていく…。

【シーン4:希望と絶望】

◼︎【カット1:海上・仲間達と】


++++++++++++?? ??:??救命艇 内部
 満点の星空が夜空に瞬いている。 その中で一際輝く赤い星、あれは火星だろうか。あんな所に星があっただろうか? 星は不気味な輝きを放ち並んでいる、しかしどこか引き込まれる……。 頬をぴちゃぴちゃと冷たい水が打つ。潮風が頬を撫でた。「良かった、お目覚めですか」 傍で声がした。部下の声だ……。
++++++++++++
 探索者達は海の上を彷徨う救命艇の上で目を覚ます。周囲には探索者達の元に残留した部下達がいる。武器や所持品は持っていて構わない。 周囲は全面海に囲まれている。現在位置を調べたり、周囲をよくよく観察しようとする場合は以下の技能判定を行う。
+【現在地の座標を割り出す】<ナビゲート><天文学>…太平洋のど真ん中だ。 少なくとも、北極からは大分離れている。 おそらくはニュージーランド・南米大陸・南極大陸の中間付近だろうと察する。太平洋到達不能極に程近い絶海の海域だ。絶望的な状況を理解し、正気度チェックを行う。(正気度チェック:1/1d6) 仮に精密機器などを用いて現在位置を調べようとする場合、上記の情報に加え、南緯47度9分 西経126度43分である事が分かるだろう。いずれにせよ、現状の装備での脱出が難しい絶海だ。
+【周囲を調べる】<目星>…離れた場に岩礁じみた陸地がある事に気づく。島と呼んでいいのかも迷う程度の小さな陸地だ。 上陸する事も可能そうだが…。 探索者達が目星を全て外した場合、以下の戦闘などを行わせている間に、部下の誰かが陸地を発見したということにしてもいいだろう。
 探索者達が陸地に気づいたタイミングで、海から深きもの6体が追いかけてくる。(シーン3で裏切り者がいた場合、彼らが追いかけてきたとしてもいい) 探索者達は戦闘を行って殲滅してもいいし、<操縦【船舶】><機械修理><DEX*5>に三回成功する事で陸地まで逃げても構わない。判定に成功した場合、深きものは追いかけるのを止め、海へと消えていく。
+深きもの(同ステータスが6体)STR14 CON11 SIZ17INT13 POW11 DEX11耐久力14 db+1d4鉤爪25% 1d6+dbハンティング・スピア(貫通あり) 25% 1d6+db装甲:1ポイントの皮膚装甲正気度喪失0/1d6(船で目撃しているのでここは割愛しても構わない)

◼︎【カット2:見知らぬ遺跡】

++++++++++++?? ??:??謎の小島 地上
 岩礁のような土地だった。草木の一本も生えていない、不毛の大地だった。 足元を見下ろせば、濁った海の中にごつごつとした岩が並んでいる。それが嘆く人の顔のように見えるのは、今の心が映し出す幻だろうか? 島を見回す。あなたとあなたの部下達を以ってすれば、数十分もあれば全ての土地を歩き切ってしまえるような、小さな小さな、小さな小島だ……。
++++++++++++
 探索者たちが島を探索すると【目星】…岩肌に、引っ掻いて描かれた矢印のようなものを見つける。(これはルルイエで深きものとなり果てさまよう元デルタグリー隊員、ローリー・ワイルダーが書いたものである)【聞き耳】…どこかから、吹き抜けるような風の音がすることに気づく。【アイデア】…足元の岩肌を流れる海水がある一点に流れていくように感じる。 といったことがわかる。 これらの情報をもとに、しばらく周囲を探索すれば、地下へと続く洞窟を見つける事が出来るだろう。
 長く暗い洞窟を降りると、やがて巨大な地下空洞へと至る。奇妙で魔術的、オカルティックな紋様に包まれ、異常極まりない非ユークリッド幾何学的な外形を持つ多くの建造物からなっている地底都市遺跡だった。探索者達は知るべくもないが、そこはまさに海底都市ルルイエその地に他ならない。 ルルイエに人気はない。KPはPC1の探索者に、ハンドアウトにある死亡した恋人の幻影を見せる。ドラマチックな演出にすると盛り上がるかもしれない。この幻影はPC1以外の人物には(部下を含め)見えない。 適当なタイミングで、KPはPC1に【POW×4】を、あるいは他者からの【精神分析】を、あるいはKPの認めるなんらかの制止技能を振らせる。 その判定に失敗した場合、PC1は12mのクレパスに落とされそうになる。落下ダメージは4d6。恋人の姿はPC1の見た幻覚だったのだと明示する。(PC1:正気度チェック1/1d6+1)
 クレパス付近を探索すると、落ちている弾の尽きたコルト M4 カービンを発見する。探索者たちはそれが海兵隊の制式採用銃であることに思い至る事が出来るだろう。また、壊れたスマートフォンを見つける事も出来るだろう。PC2は【アイデア】でそれが行方不明の友人・ローリーのものとよく似ている気がする。 このあたりで【目星】…少し離れた洞窟の片隅からこちらを見ている一体の深きものがいる事に気づく。【聞き耳】…足音が聞こえる事に気づく。音の位置を確認すれば、目星と同じ情報を得る。 深きものは敵意を示す様子はない。どこか呆然とした様子で探索者達を見つめている。【精神分析】【心理学】【アイデア】で、その様子が先ほどまでのPC1の様子によく似ているように思うだろう。 近づく、あるいは【聞き耳】を行う事で、その深きものが以下の言葉を呟いている事がわかる。
「ああ……またか……はは……お笑いだな……なんで(PC2名称)が兵士なんだよ……ひでえ幻だな……あいつは平和に暮らしてるべきなんだ……こんなところにいるもんか……」
 近づいて声を聞く、深きもののつけているドッグタグを確認することで、彼が海兵隊員にして、かつてのデルタグリーンの唯一の生存者、PC2の友人であったローリー・ワイルダーの変わり果てた姿であることが分かる。 人間の変わり果てた姿にSANチェックを行う。通常1/1d6、PC2は1/1d10。
 <信用><説得>に成功する事で事情を聞きだせる。<心理学>で彼は探索者達を幻影だと思っているということが分かる。 ローリーはルルイエを彷徨う中で、この土地が幻覚をもたらす場所であることを理解しているため、探索者達のことを幻覚だと思い込んでいる。敵意を示す事はないだろう。
+【ローリーから聞きだせる事情】 これまでの歴史の中で、デルタグリーンという組織は既にルルイエを発見していた。しかし人類文明への脅威からその存在を秘匿し、外界にばれないよう隠匿し続けていた。 そうする中、地球に侵略してきた異星の生命との戦闘の中で、封印の道具を手に入れた。それがグレード・オールド・ワンにも十分に通用するものである事が分かり、クトゥルフの眠りをより深いものとするために使用が決定した。 しかしそれは罠だったのだ。デルタグリーンにはすでにクトゥルフを信仰し復活を望むダゴン秘密教団の息のかかった者が多数入り込んでいた。結果、彼らはデルタグリーンを秘密裏に操り、ついにはこの世界にクトゥルフを復活させてしまった。 その戦いの中で自分は幸運にも(あるいは不運にも)生き残り、ずっとここを彷徨っていた。ここにあるものを漁って食べながら救援を待っていたとき、ある日、水面に映る自らの姿が忌むべき怪物へと変貌していることに気づいてしまった。 本来のデルタグリーンの関係者はほとんどがその戦いで死に絶え、残った関係者も閑職に追いやられ人類の敗北を前に臍を噛んでいるだろう事は間違いない…。ゼータとはダゴン秘密教団に乗っとられたデルタグリーンの姿だったのだ!
 ルルイエにはデルタグリーンがクトゥルフ相手に使おうとしていたミ=ゴの封じ込め棒が20本用意されている。 また、探索者たちが武器の備えに不安を抱いているのであれば、現場にはデルタグリーンの兵士たちが残した様々な武器が落ちているということにしても良い。中には宇宙人の電気銃などといった特殊なオーパーツもあるかもしれない。KPが自由に采配すれば良いだろう。
 以上のことを説明したのち、ローリーはふと「あっ」と何かを思いついたような声を上げる。「いや、なんでもない、なんでもないんだ…」と誤魔化そうとするが、彼を問い詰めるのであれば、言い辛そうに、ローリーは探索者達へ自らの『汚れた血液』も何らかの武器、あるいは保険として使えるかもしれない事を告げる。曰く、それを輸血すれば、探索者は深きものへと転じ、人間よりも強固な体を得る事が出来る。それはこの戦いに関しては有利だろう、しかしそれは人間として生きる道を諦める事であるとローリーは告げる。 もしそれを望むのならば、ローリーは「約束してくれ」と探索者達へ言う。「この戦いが終わったら、二度と人間の世界とは交わらないと」…。
+【封じ込め棒】…出典「キーパーズコンパニオン」109頁 ミ=ゴにより作られたアーティファクトの一つ。宇宙を旅するミ=ゴが自身の武器の効かない原生生物を相手取る為に作り出した道具。 プラスチックのような黒い柱状の装置は、五角形をしたミ=ゴの封じ込めフィールドを発生させる。棒同士を五角形で描くように配置することで、これらの柱はグレート・オールド・ワンですら封印することが可能なほどの力場を発生させる。 この場には20本の封じ込め棒が存在し、大いなるクトゥルフを完全に封印するにはこれら20本全てを使用する必要がある。以下便宜上「封印棒」と記載する。 その際の処理に関しては最終決戦にて後述する。
+【汚れた血液】…出典「キーパーズコンパニオン」108頁 深きものの血液を人間の血液に輸血することで、人間の体を深きものとしての体に変質させることが出来る。これは輸血を受けた者に重い精神的ストレスをもたらし、最初の輸血時には1/1d10+1のSANチェックを行う。 この輸血を受けることによって得られる恩恵は、部下が全滅したのち、自身のHPやSANもまた0になったとき、1度だけ深きものとしての生命を得て蘇生することが可能だということである。ただし変化は不可逆的なものであり、一度深きものへと転じた人物は二度と人間に戻ることはできない。 実益というよりも、主にRPを盛り上げる為に役立てると良いだろう。
 ローリーはこれらの武器を示し探索者へ戦いを願う。人類を諦めないでくれと探索者達を必死にけしかける。そしてルルイエにて覚えた呪文「門の創造」を用いて、探索者たちをアメリカへと送り返すだろう。 もしもローリーに、何故この呪文を覚えていたのに帰ろうとしなかったのかという類の疑問を投げかけるのであれば、彼はその時にはすでに自らの変質が始まっており、戻れる状態ではなかったのだと答える。その考えは現在も変わっていない。 彼は芯からデルタグリーンに忠実な人間であり、人類と神話生物は決して手を取り合って共存する事は出来ないし、するべきではないと考えている。義務の為に自らの人間性を犠牲にする事を厭わない人間だ。 そのため、自らが外の世界へ姿を見せる事も拒み、武器提供以上の事はしたがらないだろう。「怪物は英雄になるべきじゃないんだ。でも、お前達は違うだろう?」 ローリーは探索者たちを送り返すことはするが、共に着いて来ることはない。
 ローリーが呪文によって作り出した奇妙な門を通り抜ける際、背筋に怖気が走るような恐怖を感じ、【正気度チェック0/1d6】を行い、次のシーンへ至る。 探索者達が登場時点でローリーを殺害してしまった場合、これらの情報は壁に爪で書かれたローリーの日記という形にして出すといいだろう。門の魔術も同様の手段で探索者達に覚えさせてしまえばいい。ただし、取り返しのつかない真実を知ってしまった探索者(特にPC2)には、相応のSANチェックをさせて然るべきだろうが…。

◼︎【カット3:帰りつく場所】

++++++++++++
?? ??:??アメリカ マサチューセッツ州 アーカム
 気付けばそこは荒廃した大地だった。倒壊した家屋、破壊された街。そこかしこで火の手が上がり、紫色の空には灰色の煙が登っていく。その悲劇的な光景は、見渡す限り、地平線までずっと続いているように思われた。 「ようこそアーカムへ」と陽気に書かれた街の看板が軋む音を立て、自重に耐えかねて倒壊する。君はそれがアメリカのマサチューセッツ州にある街だという事を知っている。 どこか遠くから、ノイズ混じりのラジオの音声が聞こえてくる。『……ロサンゼルスへ上陸した怪物は街に壊滅的なダメージを与え……現地では避難シェルターが……進行方向はワシントンと見られ……ゼータが対応を……市民の皆さんは至急避難して……』 ラジオの音声は荒れたノイズの中に消えていく。
++++++++++++
 探索者たちが街を探索すると、幾人かの街の生存者を見つける事が出来る。探索者たちが事情を尋ねれば、生存者達は探索者達が海で遭難していた間にアメリカで何が起きたかを説明してくれるだろう。 昨晩から海から現れるクトゥルフの落とし子の活動が活発化し、各地で暴れ始めた。更に本体と思しき怪物がロサンゼルス沖に出現し、アメリカ本土を襲撃しているというのである。 【アイデア】で、探索者達はそれが核攻撃を受けた大いなるクトゥルフによる報復行動だと察するだろう。大いなるクトゥルフはいともたやすくアメリカの主要都市と、残された人類を葬り去ろうとしているのだと。
 探索者達が街の生存者達へ封印棒のことなどを告げれば、生存者達は軍へ連絡できる電話があると探索者達を街外れの役場跡地へと誘導する。この際、【心理学】に成功することで、彼らがひどく緊張しているようだという事がわかる。 KP情報として、生存者達はすでにインスマスより来たるダゴン秘密教団の魔術師たちの干渉を受けており、服の下に爆発物を抱えている。 探索者たちを役場跡地へ誘導すると、生存者たちは探索者たちから離れ、「や、約束通り連れてきたぞ! これを外してくれ!」と服の下の爆発物を露わにするだろう。その声に応えるように、建物の物陰からローブをまとった三匹の深きものが出現する。更にその深きものは、同じように爆弾を体に付けられたゼータ軍人を生きた盾として連れている。それはシナリオ冒頭で君たちに任務の交代時間を告げに来た、第二部隊オメガチームのリーダー、レノックス・ストーンである。 この衝撃的な光景と、人類からの裏切りに直面した探索者たちは【正気度チェック1/1d4】。 彼らはにたにたと不気味に笑いながら「よくやった、愚かな人類よ。世界の終焉と共に絶望の中で死ぬが良い」と嗄れた声で言い、生存者達へ支配の呪文を発する。この呪文は演出上、対抗ロールを必要とせず、必ず成功する。 人間爆弾にされた民間人と、魔術を用いることのできる3体の深きものとの戦闘になる。
+人間爆弾:民間人(同ステータスが4人)STR10 CON12 SIZ12INT10 POW3 DEX7耐久力12 db+0命令に従う:99% ※この効果は5ターン目から発生する(5ターン目までは抗う)爆弾特攻:60% 5d6(ダイナマイトのダメージとして扱う)
 民間人たちは5ターンの間は支配の呪文に抗い、行動を起こさない。「死にたくない」などと泣き叫びながら必死に抗うだけである。その間に【機械修理】【電気修理】【化学】【組み付き】【DEX×4】のいずれか(あるいはKPの指定する任意の技能)に成功することで、1つ成功するごとに1人の民間人を解放する事が出来る。 逆に、民間人たちを解放せず、重火器などを用いて遠方から攻撃する場合、【幸運】に成功する事でダメージの1/2を攻撃担当の2体の深きもののどちらかへと与える事が出来る。この選択を取った場合、その民間人は必ず死亡する。 5ターンが経過した場合、民間人たちは自分のターンで【爆弾特攻】により探索者達へ攻撃を行う。攻撃が外れた場合も爆発する為、成功の有無に関わらず、民間人達は1度の攻撃で必ず死亡する。
+術者の盾/ゼータ軍人:レノックス・ストーンSTR14 CON14 SIZ14INT12 POW11 DEX14APP 10 EDU10耐久力14 db+1d4命令に従う:99% ※この効果は5ターン目から発生する(5ターン目までは抗う)爆弾特攻:70% 5d6(ダイナマイトのダメージとして扱う)
 基本的な処理は民間人と同じだが、彼は必ず呪文を使う1体の深きものの近くに盾として配置されている。彼は他の民間人と違い、積極的に自分を撃つよう探索者へ声をかける。彼は世界の平和の為に命を捨てる覚悟のある軍人である。「俺を撃て! 第3部隊、俺ごとこのクソどもを殺すんだ!」 彼を撃った場合の処理も民間人と同様とし、またその対象は呪文の行使者の深きもの1体とする。 レノックスが生きている限り、呪文を行使する深きものはレノックスの陰に隠れ、彼を盾とする為、レノックスを生かした状態で呪文の行使者に攻撃を加えようとするのであれば、すべての攻撃技能の成功率を1/2として判定する。 彼は戦艦エルピスから部下と共に脱出し、漂流の末に運良くアーカムへと辿り着く事が出来たが、そこで探索者達同様に民間人の裏切りに遭い、深きもの達に捕らえられていた。レノックスの部下はすでに全滅している。
+深きもの(同ステータスが4体)STR14 CON11 SIZ17INT13 POW11 DEX11耐久力14 db+1d4回避:30%鉤爪50% 1d6+dbハンティング・スピア(貫通あり) 50% 1d6+db装甲:1ポイントの皮膚装甲呪文:支配(基本ルールブック259頁参照)※本来支配を行える対象は1人のみだが、クトゥルフの復活した世界が深きもの達へ力を与えている為、複数人の同時支配が可能となっている(ということにする)※呪文を発動しているのは1体。残り3体は攻撃を行う。呪文を使う1体は攻撃に参加しない。呪文を使う1体が死亡した場合、支配の呪文の対象となっていた民間人たちはすべて解放される。正気度喪失:0/1d6(これまでにも幾度か目撃しているのでここは割愛しても構わない)

 戦闘が終了した場合、レノックスが生きていれば彼の所持品の無線で、レノックスが死亡していた場合は彼の遺留品の無線で救援を求める事が出来る。 連絡を受けた通信手は絶望しきっており、探索者たちにも投げやりで懐疑的な態度を取る。【信用】【説得】に成功することで、通信手に世界に希望が残されていることを信用させることが出来る。 判定に成功しても失敗しても、連絡を受け、迎えのヘリがやってくる。探索者は各々1d5人ずつ部下を補填する。レノックスが生きていた場合、彼も探索者たちの部下として加わる。(探索者たちの人数状況に応じてKPは補填する部下の人数は調整して構わない)
 判定の成否は補填される部下の士気に影響する。成功していれば希望に満ちた顔で君たちの部下となり、失敗していれば消沈した状態で君たちの部下となるだろう。 反論RPなどはPLの望むように自由にさせればいい。
+発生イベント【戦意高揚】<【信用】失敗時>「クトゥルフはロサンゼルスを侵攻中です。ここで敗北すれば、人類に未来はありません。……せめて戦いましょう、最後まで」 補填される部下達は皆、戦意を失ってこそいないが、ぐったりとしており覇気は乏しい。また、民間人からの裏切りに意気消沈した部下達もまた戦意を失っている。「……この世界が終わったら、俺たちどこへ行くのかな」 ぽつりと、君の部下の誰かが呟いた。 KPはプレイヤーにRPを求め、ドラマチックに場を盛り上げると良いかもしれない。
※信用判定に成功している場合は、補填される部下・新しい部下共にやる気に満ちているという描写にすると良い。

【シーン5:ロサンゼルス決戦】

◼︎【カット1:コード・オブ・クトゥルフ】


++++++++++++
AM 04:00アメリカ カリフォルニア州 ロサンゼルス
 ……その日、世界と人類は終焉を迎えた。 ロサンゼルスの街は壊滅状態だった。ありとあらゆる建物が破壊され、ありとあらゆる人々が死んでいた。避難シェルターも、民間人も、軍人も、何もかもが関係なかった。 数多の死体が積み重なり、数多の正気を失った人々の嗚咽と絶叫が力なく響く。 ロサンゼルスの街は壊滅状態にあった。 その日、世界と人類は終焉を迎えた。
 ──かに、思われた。
++++++++++++
 探索者達がヘリで現場に駆けつける頃には、街の八割は壊滅状態にあり、避難シェルターを含めたありとあらゆる施設が破壊された絶望的な有様である。軍人・民間人を問わず大勢の死体が積み重なり、街は数多の正気を失った人々で埋め尽くされている。 クトゥルフの姿はあまりにも巨大なため、探すまでもなく発見できる。大いなるクトゥルフと街の惨状を改めて目撃した探索者達は、以前に正気度チェックを行っていたとしても、改めて正気度チェックを行う。世界の終わりを感じさせる絶望的な光景は、幾度恐怖を乗り越えようとも探索者の正気を削ってあまりある。【正気度チェック1d10/1d100】
 しかし人類は諦めていなかった。現地では未だクトゥルフに抗い、武器を持ち執着じみた戦いを続ける兵士達が残ってた。「人類に希望あれ!」 だが彼らは指揮系統を失っており、クトゥルフへも有効な攻撃を与えられていない。話はすでに伝わっていたのか、彼らは探索者達の姿を見て、希望に縋るような目で言うだろう。「隊長、ご指示を!」
 探索者達は任意の武器を補充できる。KPは以下の武器や基本ルールブック71頁の「爆発物・重火器・その他」周辺を中心に、探索者達へ部下を与えるように。このシナリオ内では全ての重火器技能の基本成功率を50%としているため、初期成功率が1%の武器などもそれに準じる。 以下に推奨される武器のデータを記載する。
+【推奨される武器】120mm戦車砲…15d6/4m 攻撃回数1R中1回 装弾数個別 故障ナンバー00LAW…8d6/1m 攻撃回数1R1回 装弾数1 故障ナンバー98迫撃砲…6d6/6m 攻撃回数1R2回 装弾数個別 故障ナンバー00野砲…10d6/2m 攻撃回数4R1回 装弾数個別 故障ナンバー99プラスチック爆弾…【電気・機械修理】4d6/3m 攻撃回数1R1回 使い捨て 故障ナンバー99クレイモア地雷…【幸運】6d6+6 攻撃回数1R1回 使い捨て 故障ナンバー99
 ここから最終決戦が始まる。 戦闘は通常通りの処理で行う。クトゥルフの行動は下部のエネミー項目参照。 戦闘時の特殊な判定として、そのラウンドで攻撃判定を行い、成功した探索者は、ラウンドが終わるごとにそれぞれ1d3本の封印棒を設置したものとみなしダイスを振る。これは攻撃成功による効果とみなす為、攻撃判定に失敗する、攻撃以外の行動を取った場合は封印棒の設置は出来ない。 設置に成功した封印棒の数×5%ずつ、クトゥルフを封印出来る可能性が上昇するとみなす。20本全て設置が完了した場合100%となるが、探索者全員分の部下の人数が合計20人以下になると、封印棒を守る人数が足りなくなり、封印棒の数も減っていく。 探索者は再び封印棒を設置するか、その時点の%で諦めて振るか、何れかの行動を選択する。封印棒の魔術的効果により、クトゥルフの封印のダイスを振るチャンスは、パーティ全体で1度きりとする。 また、1ラウンド目開始時点で、以下に記載した「避難シェルターの惨劇」イベントを発生させる。
+【大いなるクトゥルフ】STR140 CON110 SIZ210INT42 POW42 DEX21耐久力160 db:+21d6攻撃…触肢11d6 100% 攻撃回数1回…かぎ爪1d6+21d6 100% 攻撃回数1回装甲…21ポイントの超次元筋肉/1Rに6耐久力を回復させる正気度喪失…1d10/1d100
※【戦闘時の行動】 クトゥルフは1ラウンドで1d3人の部下を必ず殺害する。攻撃回数、攻撃成功率、装甲は上記及び基本ルールブックに準じる。ただし超次元筋肉の装甲には、それを上回る火力を出せる重火器は効力を発揮するものとする。 クトゥルフが物理的に探索者と重火器に敗北した場合、クトゥルフは1d10ラウンド後に復活するが、その間に封印棒の設置が間に合ったものとみなし、戦闘終了・シナリオクリアとみなす。
+発生イベント【避難シェルターの惨劇】 1ラウンド目開始時点で発生するイベント。 PC3の家族がいるはずの避難シェルターはクトゥルフの攻撃で壊滅状態にある。周囲には大量の死体が転がっている。PC3の家族は無事だろうか? それはわからない。 しかし、この絶望的な状況は、PC3の心に堪え難い恐怖を与えていく…。【PC3:SANチェック1/1d6】「お母さん! おかあさあああん!」「逃げなさい! 逃げて! お母さんのいうこと聞いてよぉ!!」 そんなPC3の耳に、小さな子供たちと女の泣き声が聞こえてくる。どこかに逃げ遅れた家族がいるようだ。 【目星】【聞き耳】で逃げ遅れた家族(幼い姉妹と母親の3人)を発見する事が出来る。母親は瓦礫に足を挟まれ動けなくなっている。姉妹は母親を助けようとしているようだが、幼い彼女達の力では母親を助けることは到底できない。 彼女達の姿を発見すれば、探索者が力を貸すことが可能だろう。親子の姿を発見したのち、【精神分析】に成功する事で子供を、【STR×5】【医学】に成功する事で母親をそれぞれ救出出来る。しかしそれらの行動(それは探す為の【目星】【聞き耳】を含めてである)は戦闘ラウンド中の行動とみなされ、1度の行動を取るごとに1ラウンドを消費したものとし、また戦闘行動ではないので封印棒の設置は出来なかったものとみなす。 この行動はPC3が望むならば他PCと協力して行っても構わない。 部下に指示を出して別々の行動を起こさせる許可をKPは与えるべきではない(PC達は部下への指示を出すという行動を消費したとみなす)。
 状況は切迫している。本当に、彼女達を助けている余裕が、今の君にあるのだろうか…?「隊長! ご指示を!」 部下は君の選択を待っている。
*母子を救出できなかった場合…目星・聞き耳に失敗しているor挑戦していない場合は母子が死亡する様を目にしない為、正気度喪失はない。 目星・聞き耳に成功し、一度母子の姿を確認している場合は攻撃に巻き込まれ死亡する母子の姿を目撃してしまう。【正気度チェック1/1d6】
*救出できた場合 子供達は兵隊達に声援を送り、母親とともに逃げる。その際にかけられる声援に、救出に参加した探索者は全員、1d10のSAN値が即座に回復する(シナリオ成功報酬のような扱いである)。「兵隊さんありがとう! ……大丈夫だよね、世界は、助かるんだよね!?」 カッコいいRPを返してもらおう
*バッドエンドになってしまった場合 PCたちが部下を含めて全滅をしてしまえばそれはバッドエンドになるだろう。世界は崩壊し、人類は滅亡。クトゥルフの支配する新たな世界がそこに生じるだけの話だ。 しかし、例えば、封印棒を20本設置し終えたにもかかわらず、判定で100が出てしまうなどで惜しくも敗北し、ただ全滅させるのも忍びないとKPが判断するのであれば、「探索者たちはクトゥルフの攻撃により死亡したが、末期、彼らの部下たちが封印棒の発動に成功する様を見る」などのような救いを与えても構わない。KPの自由に演出をすれば良いだろう。

◼︎【カット2:エンドロール】


++++++++++++
AM 06:00アメリカ カリフォルニア州 ロサンゼルス
 君たちの指示のもと、数多の火線が、爆撃が、コードネーム・クトゥルフの巨体へと命中する。 その攻撃の多くは怪物の体を傷つけただろうか? それとも無力だっただろうか? だが、それは無駄ではなかった。人類の総攻撃は無意味ではなかった。君たちの持つ無線が、部下たちの声を告げる。『総員、配置完了しました』『いつでもいけます!』 誰かの指示のもと、クトゥルフを囲むように配置された20本のアーティファクトが光を放つ。朝日のような光は怪物の体を包み込み、不可視の力場を発生させ、その動きを止める。 まばゆい光に視界が眩む。その光が収束した時、そこには脈動する肉塊が佇んでいた。
 通信が入る。各地で暴れていたというクトゥルフの落とし子が一斉に消滅したという。 通信が入る。各地で活動をしていた半魚人のような怪物たちが、悲鳴をあげながら海へと逃げていったという。 誰かが空を見た。不気味に揃っていた星がまたたき、そして、少しだけ位置を変えた気がした。
 東の空から朝日が昇ってくる。 世界と人類は終焉を迎えていない。 後にコード・オブ・クトゥルフと呼ばれることになる戦いはここに収束する。
 君たちは世界を救った。
++++++++++++
 勝利条件はクトゥルフを倒し、封印する事である。クトゥルフが封印されれば各地で暴れていた落とし子達は一斉に消滅し、ダゴン秘密教団の者達の勢力も弱体化する。封印されたクトゥルフはその後、ゼータに残っていたデルタグリーンの元隊員達の尽力により、再び海の奥深くへと封印される事になるだろう。 無事勝利した暁には、KPはその時点のテンションにふさわしいエンディングを迎えさせるべきである。ハッピーエンドが望ましいが、演出はプレイヤーと相談して行うことを推奨する。やりたいことをやらせる。 推奨としては、PC3の家族と再会する、ローリーと別れを告げる、シナリオ冒頭の発生イベント【腹一杯のドリトスを】での宣言を実行させる、デルタグリーンに正式に所属し戦いを続ける、などである。

【クリア報酬】

・世界を救った:1d100(※その時のPCのSAN値を見て、KPは適切と思う数字を随時設定する)

3.NPC情報

【NPC一覧】

◎クラーク・アシュトン・スミス艦長 デルタグリーン将校

「勇敢なる諸君らと共に戦えた事を誇りに思う」STR14 CON15 SIZ17INT18 POW12 DEX16APP14 EDU21 SAN0 探索者達が最初に乗っているゼータの戦艦エルピスの艦長。 デルタグリーン時代からの将校だが、ダゴン秘密教団との戦いに敗北し、滅亡する世界を前に正気を失う。せめてゼータ内に入り込んだダゴン秘密教団のメンバーを一人でも多く道ずれにせんと、クトゥルフへのエルピス特攻作戦を立案し指揮した。彼は狂っていた。

◎マイケル・ハートマン 死亡フラグを立てる部下

「なあ、この戦いが終わったら、あんたは最初に何をしたい?」(ステータス:なし(部下ルールに従う)) 探索者の部下の一人。アルファチームの隊員。ドリトスをこよなく愛する調子のいい小心者。アーカム出身。特殊な設定は特にない。ファンブルが起きると死ぬ。 プレイヤーが部下の名前や設定をきちんと考えているようだったら割愛しても問題ない。(名前の元ネタ:ロサンゼルス決戦&フルメタルジャケット)

◎ローリー・ワイルダー 変わり果てた元デルタグリーン隊員

「……ひでえ幻だな……あいつは平和に暮らしてるべきなんだ……こんなところに、いるもんか……」STR14 CON11 SIZ17INT13 POW11 DEX11APP3 EDU10 SAN5耐久力14 db+1d4 HO2の探索者の友人であった元海兵隊員。少々短気で乱暴者だったが、情感豊かで責任感と愛国心の強い人物だった。 実際にはデルタグリーンの元隊員であり、1年前のクトゥルフ封印作戦にも参加していた。作戦は失敗し、仲間は全滅。クトゥルフは蘇り、一人ルルイエに取り残されていた。ルルイエへたどり着いた探索者達へ全ての真実を告げる役回り。 ルルイエを彷徨う中で、深きものへと完全に肉体が転じている。もはや人間には戻れないと理解しているが、それでも人類世界の平和を心から望んでいる。(名前の元ネタ:パシフィック・リム&インディペンデンス・デイ)

◎レノックス・ストーン 美味しいところを持っていく仲間

「よろしく頼むぜ、アルファチーム」STR14 CON14 SIZ14INT12 POW11 DEX14APP10 EDU10 SAN55耐久力14 db+1d4 探索者達とは別の部隊である第2部隊オメガチームのリーダー。 明朗闊達な好男子であり、軍人らしい軍人。最近子供が生まれたばかり。 冒頭で探索者達に任務交代の時間を告げるだけの人物かと思いきや、終盤で民間人の裏切りにより深きもの達に捕らえられ、肉盾として探索者達の前に現れる事になる。(名前の元ネタ:トランスフォーマー&バトルシップ)