赤えいの島



──この魚その身の丈三里に余れり  背に砂たまれば落さんと海上に浮べり  其時船人島なりと思ひ舟を寄すれば水底に沈めり  然る時は浪荒くして船これがために破らる  大海に多し──
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1.エントリーとシナリオ概要

【エントリー】

【共通エントリー】


 君たちは盤外視座の一員だ。 鍾馗の命を受け「赤えいの魚」の討伐へ赴く事になった。 同行する火霞羅州曰く、 その妖怪は彼ら火霞と因縁のある妖怪なのだという──。

【事前情報】


 クエリー:3 チャレンジ:1 リーサル:1 リトライ:2

【GM向け情報】


 導入、展開含めPC達が常に行動を共にしているタイプのシナリオの為、リーサル・チャレンジ・決戦の難易度を除けば人数に関しては調整が効くだろう(おそらく実際に対応可能な範囲は1〜4人だ) PC人数が想定数以上・以下の場合、GMは適宜、リーサル・チャレンジ・決戦の難易度を調整しながら回すことを推奨する(サポート用のNPCをつける/難易度を緩和する/上昇させる、など)
想定プレイ人数:2〜3人(GMの調整次第で1〜4人)プレイ時間:2〜3時間想定経験点:0点(超える場合は随時エネミーを強化すること)

【GMに要するルールブック】


・基本ルールブック(BJR)

2.導入フェイズ

【イベント(共通):赤えい退治】

登場:全員舞台:獄門街『荒夜髭神社』〜海上

【状況1】

 獄門街『荒夜髭神社』にて。 鍾馗の呼び出しを受け、今宵集ったのは、PC達と火霞羅州、黒不浄であった。
 皆の前に絵巻のコピーのようなものを示しながら、黒不浄が解説を読む。 いかにもな古い絵巻には、巨大なエイの絵が描かれていた。「『この魚その身の丈三里に余れり。背に砂たまれば落さんと海上に浮べり。其時船人島なりと思ひ舟を寄すれば水底に沈めり。然る時は浪荒くして船これがために破らる。大海に多し。』────天保12年の『絵本百物語』にはそのように」「類話としては、そのまま知らないうちに異国に辿り着いてしまうようなものもありますね。島だと思ったえいの背に乗った為、気付かぬうちに漂流していたという話ですよ。似たような巨大えいの話は天明5年の『三国通覧図説』でも、蝦夷の近海にいると記されている」
 表の世では民俗学者を務める人形は、そこまで説明すると顔を上げ、鍾馗へ尋ねた。「居ますか、これが」「居たし、出たのさ。いやはや、いつぶりかねえ」
 鍾馗曰く、こういうことであった。「実際のこのえいは、もうちと厄介だ。伝承じゃあただの巨大魚でしかねェが、こいつは長らく彷徨ったおかげかどうだか、神通力じみたものを備えている。 霧を自在に作り出して自身の姿を隠し、周囲に渦潮を作り出して獲物を狩る。船が巻き込まれればたちまち転覆し、人は水中にて赤えいに食われるか、波に流されその背へと漂着するかの二つに一つ。渦潮の関係で、島に一度辿り着いてしまえば、もう出ることは叶わないそうだ。 霧と大海に身を隠しながら、姿を現しては消え、また云十年の時を超えて姿を現す。 百年ほど前に確認された時点で、その背に時代に置いていかれたような集落が存在していたそうだ。今も人がいる可能性はあるだろうな」「これが日本海沖に出た。手の届かない大海に逃げられる前に、さっさと沈めにゃならん」
 その説明を受け、火霞羅州がずいと身を乗り出した。「その役目、この火霞羅州にお任せいただきたい」「ほお、いつになくやる気じゃねえか。だが、お前だけ行かせるのもなァ」 鍾馗はその申し出に、考えるように首を傾げ……。「じゃ、(PC)達。お前たちもコイツに同行しろ」「信じてねえ訳じゃねえのよ? でも、違う立場の奴がいた方が都合がいいだろ、色々とさ」 明らかに君たちを信じていない言葉だ。 羅州は文句を言いたげに君たちを睨みつけた。だが、文句は言わなかった。
----------------------------------------■【妖怪・赤えいの島】 赤えいの魚と呼ばれる怪異の一種。伝承ではただの巨大魚でしかないが、この妖怪は神通力を備えている。霧を自在に作り出して自身の姿を隠し、周囲に渦潮を作り出して獲物を狩る。船が巻き込まれればたちまち転覆し、人は水中にて赤えいに食われるか、波に流されその背へと漂着するかの二つに一つ。渦潮の関係で、島に一度辿り着いてしまえば、もう出ることは叶わないという。 霧と大海に阻まれ、姿を現しては消え、また云十年の時を超えて姿を現す。 百年ほど前の時点で、赤えいの背には時代に置いていかれたような集落が存在していたようだ。今も人がいる可能性はあるが、鍾馗は「まとめて沈めろ」と命じた。----------------------------------------

【状況2】

 そして今、君たちは船の上で作戦会議をしている。 同行者である火霞羅州が言う。「島の様相を知る前に沈めては、いざ何かあった時に大事。海中に逃げられでもしたらつまらない、確実に仕留められるよう根回しをする必要がある。まずは調査を入念に行うべきだ」 いつにない用心ぶりである。
 訊けば、火霞衆は三代続けてこの赤えいの討伐に失敗しているのだという。「因縁は三代前に縁を発する。いわば俺の曽祖父だな。当時三代前は、この島へ妖怪退治に赴いたものの、この魚を見逃したという。詳細は不明だが、島の女と恋仲になったからと言われている」「二代前、先々代は戦後の争乱の中で島への関与は叶わなかった。しかし先代、即ち俺の父はその島へ赴き、そしてこれもまた理由は不明ながら、その島を見逃しているのだ」「先祖の汚名濯ぐ時はいま。なればこそ鍾馗様へ名乗りを上げたのだ、俺の代で因縁断ち切ってくれん────」 羅州はそう意気込んだ。

【状況3】

 島へと到着する一行。 渦潮と霧で荒れる海を式神を渡り歩いて伝い、浜へと足を踏み入れる。 島は霧に覆われていたが、遠目に朱塗りの御殿のようなものが見えた。「ワッ」 そうして現れた君たちの様を見て、目を丸める者がいた。 まるで江戸時代の百姓めいた時代錯誤な襤褸の布を身にまとっているが、それは漁師のようだった。 漁師は島へと声を上げた。「島親様だ! 島親様がいらしたぞ!」 島民たちがぞろぞろとかけつけ、皆を拝みだす。 その中から、齢九十前後といった老人が一人顔を出し、羅州を見て嬉しそうに声をあげた。「おお、お父様。お久しぶりでございます!」「……は?」

【エンドチェック】

□赤えいの島に上陸した□島民と出会った□羅州が父親と呼ばれた

【解説】

 妖怪「赤えいの魚」に関する解説と、火霞一族との因縁、そして島における最初の疑問と対峙するシーンとなる。火霞羅州の口を借りて、「基本は調査から行う」というこのシナリオの流れを最初に説明する役割も兼ねている。 NPC同士のやりとりが多いが、GMは適宜PCのRPを促すなどして、作戦会議風景を作って楽しんでほしい(不要であればNPCのセリフは端折っても良い)。それぞれのPCが盤外視座においてどのようなキャラクターなのかを、ここでPL同士で理解できたようなら次のシーンへと進んでいく。 「赤えいの魚」に関しては本文に記載した通りの妖怪だが、実際にWikipediaなどで情報を確認することもできるため、GMが気になるなら調べてみてもいいだろう。

3.展開フェイズ

【クエリー1:歓待】

登場:全員舞台:赤えいの島・朱塗りの御殿

【状況1】

「ようこそおいで下さいました。以前のご来訪より早や三十年ばかし。私もすっかり老いたものではございますが、お父様はお変わりのない御様子、流石の一言でございます」 老人は羅州を自身の父と認識しているらしく、PC達を客人として歓待する。
 老人は自らを火霞の子であると名乗った。 曰く、以前に訪れた火霞とこの地の者との間に生まれたという子であると。 だが、それにしては──老人は火霞の血を引く男児としては、老いすぎていた。 羅州は何も言わない。言わないが、食い入るように翁を見定めているのは確かだった。

【状況2】

 一行は朱塗りの御殿へと案内され、そこで歓待を受ける。「粗末なものではございますが、お食事をご用意させていただきました。 どうぞお召し上がり、旅の疲れを癒してくださいませ」 一行の前に食事が載った膳が運ばれる。 中には一体如何なる材料で作られているのか見当のつかぬ、初めて見る食材が含まれていた。白い団子のようなそれの見目は練り物に近い。 傍らで、火霞羅州が小声で言った。「食うなよ。黄泉竈食(ヨモツヘグイ)の逸話ぐらい知っているだろう」 羅州は手を付けるつもりはないようだ。 君たちはどうしようか。

【エンドチェック】

□歓待を受けた□食事を食べた/食べなかった□成長点ボーナスを1点獲得した

【解説】

 実際の島に上陸し、島の人々の歓待を受けるシーンだ。 島民たちは皆、時代錯誤なボロボロの服を着ている(江戸時代の百姓のようなイメージだ)。多くの場合和装だろう盤外視座のPC達であれば、奇妙にその空間に馴染むことになるかもしれない。 島は基本的に貧しそうだが、飢えている様子はない。 島民たちは外界から隔絶された独特な文化を持っており、PC達と会話こそできるが、言語の置き換えや独自の用語を交えて会話を行うため、はっきりとした情報を不自然なく会話から得ることは難しそうだと感じる。 PC達が聴取を行うのであれば、ひとまずは以下のことが分かるだろう。
・翁は名を「佐吉」と名乗る。母親につけられた名のようだ。・島親様というのは火霞羅州のことを指している。・島民たち及び翁は羅州のことを90年前・30年前に訪れた島親様と同一人物であると認識している・90年ほど前に島に訪れた火霞の一族の者により、この島に何らかの「恵み」が齎され、島民たちはそれをとても感謝している。朱塗りの御殿を建てたのも90年前の火霞のものらしい。・30年前にも島親様は島を訪れ、島民たちの様子を見て回ったのち、島を去っていった・島民たちが食べているこの練り物のような食べ物は「赤えい様の恵み」というらしい。具体的に何なのかはこの時点ではわからない。
 実力のある陰陽師であるPCがこの練り物を食べても即座に影響は出ることはない。魚っぽい味の何かだと感じるだけだ。

【クエリー2:発破】

登場:全員舞台:赤えいの島・朱塗りの御殿/夜

【状況1】

 思わぬ歓待を受けたその夜のこと。 島翁の是非にという願いを受け、一行は朱塗りの御殿へと泊まることになった。 島が寝静まっていく中、火霞羅州は難しい顔をしながら海を眺めていた。「……思わぬ状況に、正直驚いている」「あの翁は真実、火霞の男児だと思うか?」「誰かが成り代わり、名を騙っている可能性もあるが……そうする理由が分からん」「先代がこの島を見逃した理由は然もありなん、まさにあの翁が所以であろう。 三代前の子とするならば、先代の時点で齢は六十前後だ」「情が沸いた……というよりも、可能性を感じたのだろうな」

【状況2】

「俺も少し混乱している」「つまらん話をさせてくれ。その後、盛大に嘲笑って欲しい」「以前、読みふけった本があってな」「何、そうむつかしいものではない。趣味の一つというやつだ。 中身も、そう大したものではない。いわゆる物語本でな。 何の気なしに手に取ったが、これがなかなか面白い」「ヒキが良いのだ。次へ、次へ、その先を見たくなるような終わりを迎える。 自然、頁をめくる手が進む。 あれよあれよと読み進み、ひとしきりの既刊を読み終えてしまった。 そうして自然、思った。続きはいつ出るものかと」「……ものを作るには時間がかかるものだ。概ね二年に一つ本が出る作者だった。 そしてあとがきにはこう記されていた────残すところあと五巻、とな」「思いのほか、がっくりときた」「本は早々に処分し、もうすっかり忘れたものと思っていたが……あの翁と話をしながら、そのことを思い出した」「その本だけではない。思えばそうして見限ってきたものが、数多くありはしなかったかと────未練よな」
「嗤え、道化。それでも誉れ高き火霞の長かと檄を飛ばせ」「それにカチンと腹でも立てれば、この憑き物も落ちるだろうよ」 サテ、何と声をかけたものだろう。

【エンドチェック】

□火霞羅州と話をした□成長点ボーナスを1点獲得した

【解説】

 羅州の迷いを聞き、それに対しPC達がどのように応じるかというクエリーとなる。 羅州本人も自分の迷いが愚かなものであるという自認を持っているため、自分の迷いを断ち切るためにも、PC達から発破をかけられることを望んでいる。

【クエリー3:漂着】

登場:PC全員舞台:赤えいの島・翌朝

【状況1】

 翌朝のことだ。 島に漂流物が上がった。 島の者たちと共に確認すれば、それは近隣を通った三人の船乗りであるらしかった。 渦潮に巻き込まれたか、船が転覆し、島へと辿り着いたのだろう。 どこか野卑た雰囲気を持つ男達だった。海賊か、密猟者の類であったか、いずれにせよ何らかの悪党であったのだろう。「赤えいさまのお恵みじゃ、お恵みじゃ」 島民たちはそう歓び、拘束した船乗りを島の中へと連れていく。

【状況2】

 翁は一人目の男に尋ねた。「島のものになるか?」「何ワケの分からないことを言ってるんだ、さっさと俺たちを解放しやがれ!」「では、お前は赤えい様のものだ」 そう答えた男を島の衆がわらわらと取り囲み、殺し、バラバラの肉片にしてしまった。 島の衆は男の肉片を持ち、どこかへと去っていった。
 翁は二人目の男に尋ねた。「島のものになるか?」「ひぃっ、なります、なりますから命だけは!」 そう答えた男に、翁はにこにことしながら団子を渡した。夕飯に出た練り物に似ている。「よう答えてくれた、さあそれをお食べ────」 食べた男の目がトロンと虚ろになった。 よだれを垂らし、空笑いをするさまは、傍目にも明らかにまともではない。
 翁は三人目の男に尋ねた。「島のものになるか?」「ひっ…!」 男は目を泳がせ、村の者とは雰囲気が違う君たちへ目を留め叫んだ。「あ、あんたたち! 頼む助けて、助けてくれぇ!」

【エンドチェック】

□漁師たちの行く末を見届けた□成長点ボーナスを1点獲得した

【解説】

 島の奇妙な文化と接することになるシーン。 PC達がこのような扱いを受けなかったのは、島民たちから「島親様のお連れの方」=「島にとっての客人である」という認識を受けたためだ。半面、この密猟者たちは「漂流してきたもの」=「赤えい様の恵み」という認識となるため、このような扱いを受けている。 「赤えい様のもの」と言われ、バラバラにされた肉片の後を追うのであれば、彼らがそれを海に撒いている光景を目にする。同時に渦潮が収まり、大量の血肉の臭いにつられて多くの魚影が島の周辺に集まりだす。そして再び渦潮が起き、その魚影をまとめて水中へと引きずり込んでいってしまう様を見る。寄せ餌にされているのだと認識できて良いだろう。 島民たちの指す「赤えい様の恵み」は広い意味を持つ。赤えいの身そのものや、漂流物、新たな島民として招き入れ得る漂流者など、海および赤えいから齎される島にとって益となるものは皆、彼らにとっては「赤えい様の恵み」となる。そうして島へともたらされたにも関わらず、島のものにならないのであれば、赤えい様にお返しする必要がある、という理屈だ。 PC達が三人目を救出しようとするのであれば、島民たちは「島親様のお知り合いの方でしたか」と納得し、あっさりと三人目を開放する。特に動かないのであれば、三人目は島のものか赤えい様のものか、どちらかのものになるだろう。

【チャレンジ1:調査】

登場:PC全員舞台:赤えいの島

【状況1】

 この島にはやはり奇妙な点が多くある。 君たちは調査を開始した。
–––––––––––––––––■判定1:団子について調べる…知覚■判定2:翁について調べる…隠密 or 霊能-20%
□失敗時:チャレンジ・ペナルティ・チャートを使用–––––––––––––––––

【状況2】

《判定1:結果》 島には畑があり、そこでいくらかの野菜や、稗や粟といったものも栽培されているらしかった。 しかしその畑の中の一つに、見慣れないものがあった。畑に空いた大穴だ。 大穴はぶよぶよとしたものでおおわれており、ひどく生臭い。 島民たちはこの穴を掘削し、とれたもの──白くてぶよぶよした何か──を赤えい様の恵みと呼び、団子の材料にしていた。 そう、それは外ならぬ、巨大な赤えいの魚の身であったのだ!
《判定2:結果》 何故翁は火霞の男児でありながらあれほどに長くを生きていられるのか? それは、翁という人間が『既に死んでいるから』だった。 翁は既に死んでいた。否、島民の半数以上が既に一度死んだ者だった。 彼らはえいの身を長年食み続け、少しずつその体をえいに浸食されていた。死した後もそれは変わらず、活動を終えた彼らの脳に、筋肉に信号を送り、朽ち行く体に代謝を齎しているのは、えいから齎された妖気によるものだ。 彼らは皆、獲物を引き込む為の疑似餌であり、円滑な生活を送るための共生体であり、いざという時の非常食なのである。 文字通り、彼らは「島のもの」になったのだ。

【エンドチェック】

□チャレンジを終えた

【解説】

 本格的に島の調査を行い、島の真相を知るチャレンジ。 島民たちの生死に関しては、イメージは自由に持って構わないが、要は腐っていないゾンビのようなものと考えてもらえればいいだろう。

【リーサル1:沈没】

登場:全員舞台:赤えいの島

【状況1】

「……そうか。呪いを克服したわけでは────なかったのだな」 真相を知った火霞羅州がどのような思いでそう言ったのかは、烏天狗の面に阻まれ分からない。 火霞羅州は淡々と続けた。その時にはもう、いつも通りの姿だった。「情報収集は十分だろう。こちらもえいを逃さぬための結界を張り終えたと、先ほど火霞衆より一報を受けた」「仕込みは十分だ。島を沈めるぞ」
–––––––––––––––––【リーサル判定】■判定:任意の戦闘技能(えいの身を食べたPCは-10%)■成功数:合計5回(PC間で分割して判定を行う)
□失敗時:失敗した回数×10%分、決戦時に全ての技能に対しマイナス補正が発生する。–––––––––––––––––

【状況2】

 羅州の放つ炎が朱塗りの御殿を炎上させていく。 PC達に激しい攻撃を加えられ、島が激しく揺れ動く。えいが暴れているのだ。 霧の濃度が増し、渦潮の轟音が増す。 その中に、遠くから、声聞師達の唸るような声が聞こえてくる。 嵐のような島の中、気付けば島民たちが君たちの周囲を囲んでいる。 皆、不自然に友好的な笑みを顔に貼り付け、手にはあの団子を持っていた。「赤えい様のお恵みを、どうぞお食べくだされ────」「現は辛うございます。ここは蓬莱、ここは竜宮────」「どうぞお忘れくださいませ。ずっとここに居てくださいませ」「島のものになりなされ」

【エンドチェック】

□リーサルを終えた

【解説】

 島に対し、本格的な攻撃を行うためのリーサル判定。 クエリー1で赤えいの身を食べていたPCは、攻撃を加えようとすると、島を惜しむような奇妙な心地に駆られ、腕が鈍ってしまう。

4.決戦フェイズ

【決戦:赤えいの島…戦闘情報】

【エネミー】

・赤えいの魚×1・島翁『佐吉』×1・島の衆×3

【エリア配置】

エリア4:赤えいエリア3:島翁、島の衆×3
エリア1かエリア2:PC

【勝敗条件】

勝利条件:赤えいの魚の討伐敗北条件:味方の全滅

【備考】

・戦闘開始時に火霞羅州の『強化符』の効果をPCに対して適応する。(判定は必要ない)

【戦闘について】

 ボスである「赤えいの魚」は最初に攻撃を行った後は、自身のいるエリアを「霧霞」によって暗闇エリアを展開したり、PCのいるエリアを「身じろぎ」で水中エリアにすることに主なターンを割くのが良いだろう。PC達が水中エリアに入り次第、「渦潮」を使って朦朧の付与を狙い、攻撃の成功率を徹底的に下げてしまうのがよい。カルマの消費を狙っていこう。 性質上、序盤に赤えいの「憔悴6」か島翁の「毒4」を入れられれば、PC達をぐっと追いつめられるだろう。 半面、こうした戦法のエネミーは、TRPGに於いてあまりウケが良くない。そのため、エネミーのライフは全体的に低めに設定した。カルマをうまく使えば、十分に勝てる戦いになるはずだ。

■赤えいの魚

【エナジー】ライフ55 サニティ60 クレジット40

(PC二人の場合はライフ45)

【能力値・技能値】

 【肉体】60 生存:70% 操縦:70% 【精神】20 知覚:50% 霊能:75% 【環境】10

【移動適正】地上・水中・暗闇


【パワー】

■霧霞属性:強化 タイミング:行動 判定:霊能75%目標:1エリア 射程:0 代償:ターン5効果:目標のエリアに「エリアタイプ:暗闇」を追加する。──一寸先も見えぬほどの深い霧に覆われる。
■身じろぎ属性:強化 タイミング:行動 判定:霊能75%目標:1エリア 射程:3 代償:ターン5効果:目標のエリアに「エリアタイプ:水中」を追加する。──水を喚ぶにはそれだけでよい。
■渦潮属性:強化 タイミング:行動 判定:なし目標:3体 射程:3 代償:ターン20効果:目標は〈運動〉+20%で判定を行う。失敗で目標に「BS:朦朧」を付与する。このパワーは「エリアタイプ:水中」にいるキャラクターのみを目標に出来る。──ひとたび放り込まれれば天地無用。
■えい毒属性:強化 タイミング:永続 判定:なし目標:自身 射程:なし 代償:なし効果:君は「移動適性:暗闇」と「毒無効」を得る。──毒持つ生物に毒は効かぬ。
■赤えいの恵み属性:強化 タイミング:行動 判定:なし目標:3体 射程:3 代償:ターン10効果:目標は〈意志〉-20%で判定を行う。 この判定に失敗したキャラクターは1d6+2点のショックと「憔悴6」を受ける。──身心を縛る妖物の毒。

■島翁「佐吉」

【エナジー】ライフ25 サニティ20 クレジット20


【能力値・技能値】

 【肉体】赤えいの魚と同じ値とする 【精神】赤えいの魚と同じ値とする 【環境】赤えいの魚と同じ値とする

【移動適正】地上・水中


【パワー】

■えい毒符属性:攻撃・装備 タイミング:行動 判定:操縦70%射程:1 目標:1体 代償:ターン10効果:目標は〈生存〉-10%で判定を行う。失敗で1d6+2点のダメージと「毒4」を受ける。──赤えいの尾より作られた毒針。
■弱体符属性:攻撃・装備 タイミング:行動 判定:霊能75%射程:2 目標:1体 代償:ターン10効果:目標は〈意志〉+10%で判定を行う。 この判定に失敗したキャラクターは「束縛」「幻惑」「大凶」を受ける。──相手を弱体化させる火霞の術。

■島の衆

【エナジー】ライフ3 サニティ1 クレジット3


【能力値・技能値】

 【肉体】声聞師と同じ値とする 【精神】声聞師と同じ値とする 【環境】声聞師と同じ値とする

【移動適正】地上・水中


【パワー】

■お祈り属性:強化 タイミング:行動 判定:操縦25%目標:1体 射程:1 代償:ターン10効果:目標の全ての判定の成功率を-10%する。この効果は3回まで累積する。──赤えい様、赤えい様、どうぞ我らをお護りください。

5.余韻フェイズ

【シナリオの結末(一例)】

登場:全員舞台:海上〜獄門街『荒夜髭神社』

【状況1】

 君たちはえいを無事討伐し、島を沈めた。 船に回収され、本土へと戻る。 戻ってきた君たちの報告を受けながら、鍾馗はあっけらかんとした口ぶりで言った。「な、羅州だけで行かなくてよかったろ」 全く、どこまで知っていたのやら。
 報告を聞き届け、不思議そうに黒不浄が口を挟んだ。「しかし、火霞一族の三代前だったか。その人物はどうしてまた、そんな島の女と子を残したのだろうな」「さあな。それこそ本当に情でも沸いたか、あるいはあの妖怪の性質を知り、呪い避けに利用できないか試したといったところではないか」 無関心そうに羅州が答えた。今となっては真相は定かではない。
 カタリと首を傾げた黒不浄が、ああ、と思いついたように手を打った。「そういえば、えいは傾城魚(けいせいぎょ)とも言ってな。人間の女性と同一視されることも多い魚だ。というのも──」 黒不浄が蘊蓄を披露する。 場が凍りつく。 黒不浄が首を傾げる。 火霞羅州がわなわなと震えた。「黒不浄、貴様ァーッ!!」「な、何故ーッ!?」
【赤えいの島/了】

【成長点】

シナリオ基本成長点…5点成長点ボーナス…3点--------------------------------------合計:8点