場所は伏す
場所は伏す
──どこかであったお話だそうです。
■共通エントリー
君たちは盤外視座に所属している。■エントリ-1「目潰しアパート」
君は集合住宅に住んでいる。 一ヶ月前、空き部屋だった隣室に若い女が越してきた。 人当たりもよく、トラブルなども起きそうになかった隣人が、 目を抉り出して自殺している様を、君は発見することになる。(隣の一軒家に越してくるなどでも可能)■エントリー2「座敷ヨリ」
君は気がつくと見知らぬ座敷にいた。 薄暗く肌寒い、見たことのない畳貼りの部屋だ。 半開きになった襖の先から、何かの囁き声が聞こえる。 どうやら何かに巻き込まれたらしい。 さて、困ったことになった。しかもどうやら、今、力が使えない。■エントリー3「禁足地への入島」
盤外視座に外部から依頼が齎された。 珍しいことだ。依頼者は宮内庁に勤めるミスティックであるという。 いつもとは違う荒れた社に呼び出された君は、鐘馗から話を聞かされる。 いわく、禁足地である抑廼嘸島(よくのぶじま)へと入島し、祓の儀式を行って欲しいというものであった。【エントリー1:目潰しアパート】
【状況1】
君はアパートに住んでいる。 ある日、君の隣の部屋に、人が入った。 引っ越してきたのは若い女だ。仮にAとする。「これからよろしくお願いします」 Aは人当たりよく君に挨拶してきた。【状況2】
それから一ヶ月後のことだった。 夜分に帰宅した君は、隣室の扉の前で俯きながらドアに額を押し付けているAの姿を目にする。 Aはドアに向かって何かをぶつぶつと呟いており、髪の毛で隠された顔からぼたぼたと何かが垂れているのが目に入る。 奇妙な風体のAは、そのまま扉に溶け込むように姿を消してしまった。 扉の前には赤黒いシミだけが残っている──血だ。 いつの間にか扉は半開きになっており、暗い部屋が垣間見える。 明らかにあのAは人ならざる姿だった。【状況3】
扉を抜けて部屋へと入る。 電気の消えた室内には物が散乱していた。 シンクにはヘドロのような汚れが溜まり、床には足の踏み場もないほどにゴミが散乱している。 足を進める。 部屋の中央に彼女はいた。 胎児のように体を抱えて丸くなりながら、微動だにせずそこにいた。 暗い部屋の中、爪先が何かを踏む。ぐちゃりという水っぽい嫌な感触がした。 視線を向ければ、目があった。 君が踏み潰したのは眼球だった。 Aは目を抉り抜き、絶命していた。【エンドチェック】
■隣人が目をえぐって自殺した□死体の第一発見者となった【解説】
盤外視座の構成員の多くは、表向きには一般人としての生活を送っている。PC1はそういったキャラクターを想定している。 常人であれば恐怖するような怪奇現象や変死を前にして、PC1がどのような反応を示すのかを楽しんでもらおう。 文面上はアパートのような集合住宅の隣の部屋としているが、PC1の設定次第では、隣に建てられた新築の一軒家だとか、ビルのテナントの下の階に入ってきた人、などにアレンジしても良いだろう。PC1が自然な交流を持つことが出来、かつ異変に気付けるのであれば、条件は満たされる。【エントリー2:座敷ヨリ】
【状況1】
ふと気づくと、君は見知らぬ座敷で座っていた。 湿気た埃っぽい匂いが鼻をつく。 寝過ぎた休日のように頭がぐらぐらと痛み、鼻の奥にツンとした不快感がある。 暗闇の中にずっといたことで目が慣れたのか、曖昧ながらも、どこに何があるのかは識別できた。四方を襖に囲まれた、灯りのない座敷だった。閉ざされた襖の内側に、二本の縄が寄り合わせられたものがぐるりと巡らされているのがわかる。 思い出せる最後の記憶は、君がいつも通りの生活を送っていたということだけだ。【状況2】
静寂の中で、誰かの囁く声が聞こえた。 暗闇に目を凝らせば、先ほどまでは閉まっていたはずの襖が、ほんの10センチ程度開いているのが目に入る。 より合わさった縄の先、僅かに開いた隙間。その奥には、ここ以上の更なる暗闇が広がっているように見える。 囁き声はその先から聞こえてくるようだ。 動くべきか、止まるべきか。思案していた君は、あることに気づいた。 確かめた訳ではない。しかし奇妙な確信が胸に湧く。 今、君は、戦う力を、魔を祓う力を──全て失っている。【状況3】
囁きが消えた。 ずるり、ずるりと、重いものが這うような音が、四方の襖から響き始める。 這うような音は、襖の外側を、ゆっくりと動いているようだ。 ずるり、ずるり、ずるり。 君は気づく。 このままいけば、あの隙間の先に、その「何か」が現れるかもしれないということに。 どう、動くべきか。【エンドチェック】
□座敷で目を覚ました□襖がちょっとだけ開いた■囁き声と這いずる音を聞いた【解説】
戦う力を失っている、というシチュエーションは、PC2の設定に応じてどのように気付けるかをアレンジすると良い。困ったらPL自身に考えてもらうのが都合がいい。 この音の正体は、クライマックスまで明らかにはならない。PC2が外を覗こうとする、この場に居残ろうとする、などの、行動方針を考えた時点で、実行に移す前に次のイベントへ進めてしまうと良いだろう。【エントリー3:禁足地への入島】
【状況1】
君は鐘馗に呼び出され、とある古寺へと足を運んだところだ。 『詳細は来たら話す』と、妙にノイズがかった式神の言葉が呼び出しだった。告げられた場所へと足を運んで見れば、朽ちかけた古寺にはひどく厳重な結界が張られている。 結界を抜け、寺へと足を踏み入れれば、カツコ様が祝詞を唱える声がどこかから朗々と響いている。あまりにも物々しい様子だった。「おゥ、来たか。ま、楽にしろや」 難しいことを言う。 本堂の床に腰を下ろした鐘馗が君を出迎えた。【状況2】
鐘馗は君を呼び出した理由について説明した。「外部からウチに依頼があった。珍しいこった。カツコ様の古い知り合いらしいぜ」「曰く、ある禁足地に向かい、そこで祓の儀をしてほしいそうだ。 入島を禁じられたその島に、不当に入りこんだ輩がいたらしくてな。 そいつらの尻拭いをする必要があるんだと」「……だがもちろん、わざわざおれたちにこんな話が持って来られたのにはワケがある」「依頼人は宮内庁。表向きにゃ存在しねえ、正道の皆々様からのご依頼よ。 最初はそちらさんの管轄だったんだがね、向かった奴が全員島で目玉抉り抜いておっ死んだんだと」「要は体よく厄ネタを押し付けられたってトコだな。だがその分、出るモンは出るぜ」 鐘馗はそう説明する。 君はなんと答えよう?(祓の儀式自体は君にも簡単にできるものだと思って構わない。陰陽師の基礎教養だ。多分)【状況3】
君の返事を聞き、鐘馗はそうかそうかと肩を揺らすと、君に顔を寄せて囁く。「そういうことなら、お前に見せなきゃならんもんがある」 鐘馗は立ち上がり、隣室に繋がる襖を開く。そこではカツコが一心不乱に祝詞を唱えており、その前ではPC2が横たえられていた。「この件を持ちかけられ、サテどいつに行かせようかと考えて、最初にこいつの面が頭ン中に過った。そん時に妙に嫌な予感がしてね。式神を差し向けてみりゃ、こいつが自宅でぶっ倒れてた。 調べてみたところ、俺が頭の中で、こいつを思い浮かべた直後に倒れたらしい。で、見てみりゃどうやら魂魄のうち、魂が抜けた状態だ。『連れて行かれた』らしい」 全く悪びれてなさそうな調子で鐘馗は言う。連想だけで実力ある陰陽師の意識を奪うことのできる怪異が、向かう先にはあるということだ。 だが君は既に一度承諾してしまった。そうでなくとも、これほどの怪異が相手であれば、この結界に入り込み話を聞いた時点で逃げ道は無いも同然だろう。それを見越したように、鐘馗は君の前に一枚の古地図を差し出した。日に焼けた古紙の中には、さる海域に浮かぶ島が描かれている。「お前が向かう先は抑廼嘸島(よくのぶじま)。二千年の間、人の立ち入りが禁じられ、この国に管理されてきた島さ」【状況4】
そして今。 君は船に揺られ、前方に迫る島を目にしている。 本土から遠く離れた絶海の孤島。 抑廼嘸島(よくのぶじま)はゆっくりと、君を招き入れようとしている。【エンドチェック】
■抑廼嘸島へ向かった□PC2のことを聞いた□宮内庁の陰陽師の話を聞いた【解説】
抑廼嘸島(よくのぶじま) 女性禁制の島(PC3が女性である場合、盤外視座の者であるが故にこれを無視することになる)。立ち入るには自身を入念に清めた上で立ち入らねばならない(これも多分無視することになる)。 島にあるものは何も持ち出してはいけないと言われている。 二千年前の大和朝廷樹立時代から禁足地として秘密裏に祀られ続けてきた。 何を祀っているのかは定かではない。名を語られぬ神であることは確かだ。【チャレンジ1:目を合わせてはいけない】
【状況1:PC1】
警察を呼び、到着を待つ。 物が散乱した部屋の中央にはAの死体。 不気味な空間で待つ間、君は室内に違和感を覚えた。 ──『誰かに見られている』。 そんな気がしてならないのだ。この感覚は、一体どこから?【状況1:PC2】
異音はゆっくりと、しかし確かに、隙間に向かって近づいている。 このままでは覗き込まれるのも時間の問題だ。 今の君に戦う力はない。何故かは分からないが、『それがわかる』。 覗き込まれる前に駆け出して隙間の外へと逃げるか、この場に留まり耐えるか。 君に残された選択肢は二つだ。【状況1:PC3】
抑廼嘸島(よくのぶじま)に到着した君。 島には確かに、不躾に上がり込んだ者たちの痕跡が数多く残されていた。踏み荒らされた草木や、捨てられたペットボトルゴミ、岩に残されたスプレー痕や生捕用の罠……痕跡を見るに、どうやら島に生息する生き物を不法に求めて訪れたらしい。人の手から切り離された環境には、独自の生態系が宿る。 それらの痕跡は海から続き、島の中央にある池へと続いていた。池へと足を向ければ、そこには大勢の人間の死体があった。皆、狩衣などの装束を身に纏い、眼球を抉り出し絶命している。全滅したという宮内庁の陰陽師たちだろうか。 君はここで祓の儀式を行わなければならない。 さて、何事も起きなければ良いのだが。【チャレンジ判定】
PC1:視線の出所を探る……〈隠密〉判定に「成功」するか、〈知覚〉+10%の判定に「失敗」する。PC2:隙間から逃れるのであれば〈運動〉-20%の判定に「成功」する必要がある/部屋に留まるのであれば〈知覚+10%〉判定に「失敗」する必要がある。PC3:祓の儀式を行う……〈霊能〉判定に成功する。失敗時:目が合う。サニティを10点失う。何と目があったかは覚えられない。状況を進める。【状況2:PC1】
君は視線の出所に気付く。 荒れた部屋の一角に収まっていた、小さなガラスドームのアクセサリーだ。 1センチ幅程度の小さなそれは、金色のアクセサリチェーンと繋げられたペンダントのように見える。 中にはキラキラと光るフレークが揺れている。ぱっと見は小さなスノードームのようだった。 君は一瞬、それと「目が合った」気がした。しかし、その中に何かが見えることはなかった。 だが、君の陰陽師としての勘が言っている。この事件には、必ずこれが関わっている。 君は警察が到着する前に、それを拾い上げ、ポケットへと収めた。【状況2:PC2】
部屋から脱したのであれば、二本の縄を超えた瞬間に。部屋に留まったのであれば、室内へと入ってきた異音が唐突に消えたことで。 君はふと気付くと、日本庭園のような場所に立っていた。 遠くには赤い鳥居が見え、霧がかったその先には、朧げながら建物があるように見える。足元には一面、真っ白な砂利が敷き詰められていた。 そんな時、周囲から、パチパチという拍手のような音が聞こえてきた。【状況2:PC3】
君は一通りの祓の儀式を終えた。 だが、祓えたような感覚は微塵も湧かない。周囲には変わらず、不穏で淀んだ空気が漂っているような気がした。 そんな時、君は変化に気付く。池の中央に、誰かが立っている。 PC2だ。 しかしPC2は濁った池の水面に立っており、君に反応を示すこともない。 体から抜け出したという魂だろうか。だが、何故このタイミングで? 君はPC2の魂を連れて帰ることにした。【エンドチェック】
□PC1がガラスドームアクセサリーを拾った□PC2が庭園のような場所についた□PC3がPC2の魂を連れて帰った【解説】
それぞれのシチュエーションで進行するチャレンジイベントだ。 擬似的なPC2とPC3の邂逅シーンともなるが、ここでははっきりと交流を持つことは難しい。【クエリー1:神域問答】
【状況1】
周囲を見やれば、そこには大勢の人の姿があった。 体格も性別もバラバラに思えたが、皆、白装束に、目も鼻も口もないつるりとした白面をつけ、手の甲を激しく打ち合わせている。 顔と面の隙間からは赤い液体が溢れ、ぼたぼたと地面へ垂れている。 複数人の声が依り合わさったような歪な音が君へと向けられた。「神(じん)」「妖(よう)」「違(い)」「何(か)」「人(じん)」「獣(じゅう)」「違(い)」「何(か)」 問われている。人ならざるものに。 答えを誤れば、その時君はどうなってしまうのか。 だが正しい答えなど、君にわかるはずもない。 さて──どう答えよう。【状況2】
その答えが正しかったのか、誤りだったのか。 白面たちは君を見た。 そしてゆっくりと自らの面へと手をかけ、それを外そうとする。 目を合わせてはいけない。 そう思うのに、体は金縛りにあったようにピクリとも動かない。「仕舞いだよ」 不意に嗄れた声が耳元で聞こえた。 それと同時、君の両目は皺枯れた老婆の手に覆われ、何も見えなくなった。【状況3】
ぱちりと目を覚ました。 寝過ぎた休日のように頭がぐらぐらと痛み、鼻の奥にツンとした不快感がある。 周囲から線香のような香りが漂ってきた。君は今、布団の中にいた。 ひょい、と覗き込む影があった。カツコ様だ。「起きたかい。PC3に感謝するんだね」 どうやら君は助けられたらしい。【エンドチェック】
□問いに答えた。□神域を脱した□成長点ボーナス1点を得た【解説】
音声だけで読むと意味わからんことになるクエリー。 オフセであれば紙面に書き出して示す、オンセであれば文面をチャットに表示するなどして対応してほしい。 尋ねている内容はシンプルだ。「神と妖の違い、人と獣の違いは何か?」である。 PC2とPC3の本格的な邂逅シーンにもなる。合流ロールを楽しんでもらうと良いだろう。 手の甲を打ち鳴らす拍手は、裏拍手と呼ばれる死者が行うといわれる拍手だ。呪いにも転じると言われ、少なくとも縁起のいいものではない。【クエリー2:盤外ということ】
【状況1】
君が連れ戻したPC2は目を覚ましたらしい。 鐘馗が呼び出したPC1も、遠からずここへとやってくるだろう。 君からの報告を受け、鐘馗は一連の件をこうまとめた。「つまり、入っちゃならねェ場所へと足を踏み入れた阿呆どもが、何も持ち出しちゃいけねェ島から好き勝手にブツを持ち出した結果、ものの見事に祟られ、それを媒介に封じられた荒御魂が目覚めたって訳だ。阿呆のバーゲンセールだなこりゃあ」【状況2】
「ま、俺たちのやることは変わらん。探して、殺せ。それだけよ」「ナア、PC3よ、神殺しは恐ろしいか?」「それとも、阿呆どもの尻拭いは馬鹿らしいか」 君の心を見透かすように鐘馗は尋ねる。 試されている。君はそれを悟るだろう。【状況3】
「神を封ずるには二通りのやり方がある」「一つは祀り、荒ぶりを鎮めること。二つは殺すこと」「まっとうな陰陽師なら、祀り鎮めることも出来ようさ。宮内庁の奴らがやろうとしたようにな。だが──俺たちは違う」「盤上から逸れ、正道から溢れ落ち、己の内に矛盾を内包しながらも魔との対峙を選んだ者。それが盤外だ」「迷うな、殺せ。俺たちにはそれ以外の選択肢はねえ。一時でも迷えば──つけこまれるぜ」 それは忠告か、警告か。 能面に阻まれ真意は分からない。 だが少なくとも、今回の件は、『そういうもの』なのだと、君は改めて認識することになるだろう。【エンドチェック】
□鐘馗と話をした□神を殺さねばならない□成長点ボーナス1点を得た【解説】
盤外視座は盤外視座なので人類に仇なす者と判断したのであれば神様だって殺さなきゃいけない。たとえ非が人類側にあろうともだ。まっとうに話し合って、上手い落とし所を見つけて、怒りを鎮めてもらう……そういうやり方を、そもそも選ばなかった者達の集まりであるからだ。 だが、その考えに、PCが完全に殉じる必要はない。肯定するのも、否定するもの、迷うのも、迷わないのも、自由にして良い。それが盤外視座のキャラクターをRPする際の醍醐味だ。 その上で、今回は殺すことで解決がつくタイプのシナリオですよ、とPLへと示す意図もあるクエリーである。【チャレンジ2:おまじない】
【状況1】
PC1は鐘馗に呼びだされ、PC2・PC3と合流する。 どうやら君の隣人と、隣人の部屋で発見されたガラスドームは、抑廼嘸島(よくのぶじま)の一連の件に関連しているようだ。 かくして君たちは調査に乗り出した。【状況2】
君たちはおまじない屋の実店舗へと足を向ける。 マンションの一室を使用して作られた事務所は、入り口の扉が半開きになっていた。無人の事務所の中はひどく荒れており、まるで何かの襲撃を受けた後のような有り様であった。 窓の外からは光が差し込んでいるはずなのに、室内はひどく薄暗い。真新しいはずの部屋の中からは、強い錆と埃、潮の臭いがした。床板が腐ったような感覚とともに沈み、天井からはぽたりぽたりと雨漏りがしている。上にも下にも、まだ他の部屋があるにも関わらずだ。 部屋の中には郵送用のダンボールが三箱積まれていた。一つだけガムテープが開かれている──否、おそらくは、届いた箱の開封中に『何か』が起きて逃げ出した、そんな雰囲気があった。 上層に貼られた伝票には「割れ物注意」のハンコと「アクセサリー類」の文字が見える。 この異様な室内に於いて、もっとも異常な気配を漂わせているのは、間違いなくそのダンボールだった。【状況3】
判定3に成功したPC1は、箱の中にあったものと『目が合った』。そして次の瞬間、箱の中へと引きずり込まれてしまう。他の二人の視点からは、箱から生えた幾本もの腕が、そのPCを箱の中へと引き摺り込んだように見えた。 かくしてPC1は姿を消す。残された二人は、消えたPC1の行方を辿る必要があるだろう。【エンドチェック】
□ガラスドームの出所が判明した□謎のダンボールの中へ消えた□消えたPCを探しに向かった【解説】
事件の経緯を探るためのチャレンジイベント。 抑廼嘸島(よくのぶじま)に侵入した違法な生体販売業者が、島から生き物を回収。それを『おまじない屋』をはじめとした各店舗へと売り払い、そこからさらに加工品が市民へと出回っている。今や、呪いは各地へ拡散されているのだ。 判定3にPC1のみが挑めるのは、PC1だけがAを通じて『喚ばれて』いるからである。【クエリー3:場所は伏す】
【状況1】
気がつくと君はどこかの建物の中にいた。 窓は全て閉鎖されているらしく、隙間から僅かに光が差し込んでくるばかりだ。そして何より、ひどく臭い。 生臭かった。獣臭かった。糞臭かった。肉が腐った臭いがした。死臭がした。──生物の匂いだ。「私、悪いことした?」 声がした。 女の声を無理矢理に繋ぎ合わせたような声だった。【エンドチェック】
□問に答えた□成長点ボーナス1点を得た【解説】
島から持ち出された神の祟り、違法飼育と販売のために殺された生き物たちの呪い、その呪いによって訳もわからぬまま死亡した被害者たちの恨み……そういったものが一つになって、この怪物が生まれた。 故に、それらはPC1へと問う。「何も悪いことをしていないのに、悪いことをしたのは奴ら(人間)なのに、そうして自分が死ななければならないのか?」と。 会話が成り立つわけではない、死者の一方的な恨言。その言葉に、PC1はどう答えるか? これがクエリーである。【決戦:場所は伏す】
【状況】(チャレンジイベントに成功している場合を想定)
PC2とPC3は無事に戦いが始まる前にPC1のもとへと駆けつけることができる。 眼前には、数多の人間、獣、魚、虫、さまざまな生き物の死体が無理によりあわされ、細長く束ねられたような化生の姿があった。 ぱちぱちぱち、とどこかから拍手のような音がする。視線だけで確認すれば、工場の四隅に、白い能面をつけた死装束達の姿がある。彼らはそこに立ち、己の手の甲を激しく打ち合わせていた。 どこかから、その戦いを見つめる視線を感じる。誰かが見ている。この状況を作り出した、人ならざる何かが。 だが、それがどうした? 君たちは今更、それに恐怖するような者達か? 否! 君たちは盤外視座。こうした化生を屠ることこそ、君たちの役目なれば! いざ、能面を携え、邪を祓え!【戦闘情報】
【エネミー】
・触れてはならぬもの×1・白面たち×3・目線×1【エリア配置】
■PC初期配置 エリア1・エリア2■NPC初期配置 エリア4:白面たち×3、目線×1 エリア3:触れてはならぬもの×1【勝敗条件】
勝利条件:目線以外のエネミーの全滅敗北条件:PCの全滅■ヘンチマン:白面のもの
【エナジー】ライフ:5 サニティ:5 クレジット:5
【能力値・技能値】
【肉体】10【精神】10 霊能70%【環境】20【移動適正】地上・水中
【パワー】
■何も悪いことしてないのに!属性:妨害 タイミング:特殊 判定:霊能70%射程:なし 目標:自身 代償:なし効果:君がスティグマを受けた時に使用できる。 そのスティグマを3点軽減する。──現世との縁に執着する死者の恨み。■幹部:目線
【エナジー】ライフ:-(無効) サニティ:-(無効) クレジット:25
【能力値・技能値】
【肉体】0【精神】0【環境】0【移動適正】地上・飛行・宇宙・水中・暗闇
【パワー】
■居ない属性:特殊 タイミング:永続 判定:なし射程:なし 目標:自身 代償:なし効果:君はクレジット以外のエナジーを持たず、 ライフとサニティに対する攻撃は全て無効となる。──それはいない、だがどこかにいる。■ボス:触れてはならぬもの
【エナジー】ライフ:80 サニティ:200 クレジット:60
【能力値・技能値】
【肉体】40【精神】50 知覚200%【環境】20【移動適正】地上・水中・宇宙
【パワー】
■みつけた属性:妨害 タイミング:特殊 判定:知覚200%射程:1 目標:1エリア 代償:サニティ50効果:行動順ロール直後に使用できる。 目標のエリアにエリアタイプ「ショックゾーン:4」を追加する。 君はこのエリアタイプの影響を受けない。──それに見つかると正気が削れ、土地は呪われる。【余韻】
【PC1】
戦いを終え、報酬を受け取り、君は無事に自宅へと帰ってきた。 隣の部屋は空室となった。明瞭な事故物件だ、新たに人が入ってくるのは果たしていつになることやら。 自分もこの住処に住み続けるべきだろうか? そんな時、君は背後から誰かに見られている気がした。目のない女に。死んだはずのAに。 振り返れば、そこには誰もいない。 だが、マンションの廊下に、一粒の白い砂粒が落ちているのが目に入った。 それはまるで、海に面した砂浜の、砂の一粒のような…。【PC2】
戦いは終わった。あの化生は一体何だったのか、抑廼嘸島(よくのぶじま)に眠っていたものは一体何だったのか。「知らん方がいいものなんて、この世にゃごまんとあるからねェ。考えない方がいいよゥ。お前さんは今回、あちら側に寄りすぎたしねェ」「気ィ抜くと、また連れてかれちまうよゥ。お前さんはあの島に持ち込まれたのか、あの島から持ち出されたのか、サテどっちだろうねェ」「考えない方がいいよゥ。えんがちょ、えんがちょ」 カツコ様はそんな不吉なことをこぼしながら、のんびりと茶を啜った。【PC3】
戦いは終わった。だが、この件はこれで全て解決したわけではないという。 戻った君に一連の件を説明しながら鍾馗はこう説明する。「今回殺したのは、あくまで本体の一片だ。あの飾りがどこまで売られたのか、他に持ち出されたものがどれだけあるのか……島から持ち出された全てに、あの視線が向けられてると考えるべきだろうな」 それらを全て殺さねばならないのだ。 全く、気が遠くなるような話である。「ブラックジャケットでも巻き込むかァ」 鍾馗は面倒くさそうにそう言った。【シナリオ経験点】
基本成長点…5点成長点ボーナス…3点-----------------------------=合計:8点