オペレーション・レッドドッグ
──レッドドッグ(red dog)とはカジノで行われるトランプゲームの一種である。最初に二枚のカードをディーラーが配った後、三枚目のカードの数字が最初の二枚のカードの数字の間に入っていればプレイヤーの勝ちとなり配当が行われる。なぜこの名前になったのか、なぜこのような単純なルールになったのかは分かっていない──
【共通エントリー】
君たちは超人特殊部隊ネバーモアの下部組織、グラッジドッグスの構成員だ。 ……そして今、とんでもない秘密を抱えている。 そして、皆、思いは一つ──「ちくしょう、ハメられた!!!!!」【PC1:計画立案者】
君はグラッジドッグスを守る為、ネバーモアの交渉役・葬送法師の誘拐を提案した人物だ。 ちょっと交渉役を捕まえて、交渉条件を変更してもらうだけ。そんな完璧な計画。 しかし誘拐翌日、日本全土で大々的に放送されたのは、葬送法師暗殺の一報だった。【PC2:誘拐実行犯】
君はグラッジドッグスを守る為、ネバーモアの交渉役・葬送法師の誘拐を実行した人物だ。 下手にトラブルを起こして余計な面倒を抱える訳にはいかない。 君はスマートかつ適切、完璧に任務を遂行した。 しかし誘拐翌日、日本全土で大々的に放送されたのは、葬送法師暗殺の一報だった。【PC3:人質管理人】
君はネバーモアの交渉役・葬送法師を人質として管理している人物だ。 下手に死なれでもしたら人質の意味がない。 君は自分の役割の重要性を理解し、万全の体制で役目に備えている。 しかし誘拐翌日、日本全土で大々的に放送されたのは、葬送法師暗殺の一報だった。 は? 葬送法師なら隣でピンピンしてるが?【共通エントリー2】
一夜にして立場を逆転させられた君たち。 そんな君たちとシルベットに、葬送法師が『交渉』を持ちかけた。「この国にクーデターを起こしてみる気はございませんか」 ──権謀術数渦巻くこの舞台から、君たちは、生き残らねばならない。■エントリーについて
このシナリオの導入は、共通イベントの1つのみとなる。そのため、エントリー1〜3はPCの設定に合わせて重複したものを選んでも構わない。この三種のエントリーが用意されているのは、PC自身もこの作戦に同意し、加担した(シルベットのみの責任となるわけではない)という実感をPCおよびPLが共通認識として抱けるようにする為だ。■道中でロストが発生したら?
このシナリオは道中戦を中心に構成されたシナリオである為、道中でPCのロストが発生する可能性は十分ある。その場合GMは、・PLと相談し、その時点で違和感のない合流ができるキャラクターを新規で作成してもらう(事前配布経験点はロストPCと同数とするのがよい)・ロストしたPCは「戦闘不能」として扱い、以後のイベントでも継続して使用する。余韻終了後、そのPCはその戦いで受けた傷が原因で死亡等に至ったことにする(スパークの処理に関してはGMが自由にしてよい) などの対応をすると良いだろう。【シナリオトレーラー】
【共通エントリー:ジャックポット】
【状況1】
それは盤上でもなく、盤外でもない。 盤上でありながら、決して表舞台ではない、舞台裏の演者たち。 ──グラッジドッグス、君たちがそれだ。【状況2】
「サテ……では改めて、交渉の席へと入りましょうか」「改めまして。ネバーモアが交渉役、葬送法師と申します」「一蓮托生となった今、あらためて皆様にご相談したい旨がございます──今となっては、そちらにとっても、決して悪い話ではないでしょう」 葬送法師はニヤリと笑い、切り出した。 当初から、それが目的だったのだと、君たちにも察せるだけの口ぶりだった。「この日本という国に、クーデターを起こしてみませんか?」【状況3】
「我々超人種は長きにわたる歴史の中で、己の国を求め続けてまいりました。かくして戦後ようやく、この日本という国に『自治区』という形で己の地を得るに至った。国防を担い、この国の盾となることを代償として」「しかし──それならば、この国を我々だけの地へと染め上げることを、誰が悪だといえましょう」「超人種により守られ、超人種による恩恵を数多受けながら、しかしこの国は多数決の国。等しき数の上では、我々は決して旧世代に勝てません」「それは実に、不平等な話ではありませんか」 ニヤニヤと笑いながら、葬送法師はそう告げる。それが彼自身の思想であるのか、それとも利権を腹に隠した建前であるのかは、その口ぶりからは察せられなかった。「それに……『超人種とは、歩く核兵器』」「力があるならば、それを有意義に使うべきだとは思いませんか」 葬送法師の言葉に、シルベットの肩がピクリと動く。 それは先代、レインドッグが口にしていた言葉だ。 落ち着き払いながらも、ギラギラとした不穏な情念を宿した眼差しで、葬送法師は皆へと告げた。「多くの死が生まれるでしょう。多くの悲劇が生まれるでしょう。血を、膿を、病を、憎悪を、恨みが恨みを呼びまた新たな死と悲劇を。数多の不浄を撒き散らしながら、この国は泥沼の惨状へと腐り至ることでしょう」「ですが……皆様、そうした戦争はお好きでしょう?」【エンドチェック】
□罠にハメられた□葬送法師の提案を聞いた【解説】
グラッジドッグスは立場上、多くの組織から狙われている立場だ。僅かな均衡が崩れれば、歪み石の利権を巡って、一斉に狙われる立場になり得る。そして今、その恐れていた事態に至ってしまった。 PCたちはシルベットが選んだ、信頼できる者で構成された少数精鋭でこの任務に当たっていた。グラッジドッグス内にも、この作戦のことを知るものは少なかったようだ。 PCの他に、幹部たちもこのアジトにいる。だが、バングだけは、留守を預かるという名目でこの任務と計画からは外されている(彼はネバーモアの監視者であると、シルベットは知っているため)。【クエリー1:力の使い方】
【状況1】
君たちはシルベットに呼び出され、別室で顔を合わせる。 そこには今、この隠しアジトにいる、グラッジドッグスのメンバーの姿があった。「集まってくれてありがとう。葬送法師は今、パパラギが監視している。パパラギにはこの話は既に通ししてある」「率直に言おう。──奴のクーデターの話、どう思う」【状況2】
めいめいの意見を聞き届け、シルベットは深い溜め息を吐きながら告げる。「今、我々は狩られる側となった」「無論、ただで狩られてやる気は毛頭ない。だが……それをお前たちに強要することもできない」「だから、お前たちが選んでくれ。今、ここを去れば、お前たちは無関係な第三者になれる」「あるいは……奴の言う、国盗りを皆が望むというのならば、それも良いだろう」 そう尋ねるシルベットの顔には、迷いの色が色濃くあった。 レインドッグが去ってから今まで、一度も見せたことがなかった色だ。 シルベットの言葉に、君たちは何と答えよう。 君たちの力を、何のために使うべきだろう?【エンドチェック】
□シルベットの言葉に答えた□成長点ボーナス1点を得た【解説】
グラッジドッグス全体の方針を決めるシーンだ。 基本的なシナリオラインとしては、『葬送法師の提案を断り、クーデターには加担しない』という方向でシナリオを作成している。だがPC全員が望むのであれば、GMは以後の流れを『ネバーモアのクーデターに加担する為、葬送法師の身柄を護送する』という方向に修正しても良い。その場合、バングとの戦いで、ネバーモアは最初からグラッジドッグスと協力する気などないということを明かし、目的が破綻。生き残るためにブラックジャケットを目指す……などとするのが良いだろう。 もっとも、そうした改変を行う場合、チャレンジ1の内容やNPCのリアクションをGMは適宜調整する必要がある。がんばってほしい。【チャレンジ1:オペレーション・レッドドッグ】
【状況1】
グラッジドッグスがグラッジドッグスとして生き残る為には、クーデターの提案に乗る訳にはいかない。しかしその我を貫けば、あっという間にグラッジドッグスは葬送法師暗殺計画の実行犯へと仕立て上げられるだろう。そしてそのまま、ネバーモアと日本政府によって、歪み石の採掘権も取り上げられてしまうに違いない。 難しい顔をしたシルベットが資料を開き、机上へと向かう。 生き残らねばならない。君たちはそのための作戦を練る。【判定1結果】
PCたちがPCたちのまま生き残り、この局面を脱するにはどうすればいいのか? 君たちは生存戦略を練る。そして導き出した答えは、「葬送法師の身柄を、生きたまま、信頼できる機関へと引き渡し、その存在を証明する」というものだった。 葬送法師は生きている。 そのことを、日本へと知らしめねばならない。 問題は、どこの機関へ渡すかということだ。この世界において、信頼というものほど曖昧な商売道具は存在しない。どの組織も、自らの立場をより良くしようと、舌なめずりをしている。そうした世界に於いて、歪み石というカードを持つ君たちには、あまりにも敵が多すぎた。 君たちは考えた。そうして、最後の白羽の矢が立った組織、それは──超人警察機構ブラックジャケット。【状況2】
ブラックジャケットの本部があるのは、遠く離れた獄門街。 そこまで、葬送法師を輸送せねばならない。「用意できる限りの薬に、銃火器……ああ、それともちろん移動手段も要りますね。とはいえ目立つわけにもいきませんし……自動車の運転は得意ですか? 私はさっぱり」 パパラギが忙しなく走り回っている。 今、できる限りの武装を整えなければ。【状況3】
「もしブラックジャケットも信用できなかったらどーすりゃいいのかねえ」「その時はその時さ。獄門街に立てこもって、日本政府と戦争でもなんでもしてやるさ」「自棄っぱちだなァ〜。気が重いねェ、まったく」 リトルリンダとベイブ・ザ・エンジェルのそんな言葉が聞こえてくる。 そうした不安は、グラッジドッグスの中には未だ色濃く残っている。 今、君たちは狩る側の猟犬ではなくなった。狩られる側、逃れる側、狩人の手を逃れる為に知恵を絞る瀕死の獣。 だが、まだ死んではいない。 ここは一つ、仲間たちに発破の一つでもかけてやるとしよう。【状況4】
状況は整えられる。 向かうは獄門街。対峙する障害は不明。成功条件は『葬送法師の生存証明』。 数多の陣営の狭間を縫って、ただ一つの勝ち筋を狙う。 グラッジドッグスが生き残る為の生存戦略。 その作戦名は『オペレーション・レッドドッグ』と名付けられた。【エンドチェック】
□チャレンジ判定を終えた【解説】
出撃前の準備シーン。 いろいろと隊員たちとコミュニケーションをとるシーンを入れるとこのあとのシーンの悲壮感が増すのでおすすめ。【バトル1:壊滅! グラッジドッグス!】
【状況1】
火の手が上がっていた。 炎が、アジトを包み込んでいる。黒い煙が上がり、混乱の怒声が周囲に渦巻いている。 隊員たちが銃を撃つ。ライフルから放たれた弾丸は、しかし目標に着弾するよりも早く、奇妙な動きを見せる炎に灼かれて溶ける。 炎の先に鬼がいた。【道中戦闘】
■エネミー・鍾馗×1・火霞羅州×1・式神×3【エンドチェック】
□成長点ボーナス1点を得た□鍾馗の手から逃れ、出立した【解説】
鍾馗と羅州は葬送法師の命を狙って現れた。彼らにとってみれば、グラッジドッグスの兵士たちの犠牲は、いつも通り『人の世を救う為に必要な犠牲』だ。彼らは一切、手加減も躊躇もしない。 エナジーが尽きた時、羅州は基本的には撤退を選ぶ。鍾馗はどんな演出で倒されても構わないが、致命傷を受けたはずなのにリザレクションしてきた! とかの描写からの状況3に繋げるとだいぶ絶望感があって良いかもしれない。鍾馗は本シナリオにおいて、以後のイベントにも登場し、執拗にPCたちを追う存在となる。 また、このシナリオでは、リトライを使用して行う休息で、エナジーと同様にカルマを回復して良いとしている(リトライ1点につき1d6点のカルマ回復)。徐々にエナジーは削れていくが、カルマは他のシナリオよりも余裕を持って使うことができるだろう。GMはその事を忘れず、戦闘終了時にPLへ休息を行うか否かの確認をすると良い。【バトル2:生存戦略】
【状況1】
夕日に照らされる車内にて。 葬送法師と傷ついたシルベットを連れ、君たちは逃げる。一路、獄門街を目指して。 残してきた者達がどうなったのかは分からない。果たして無事でいるのか、それとも…。 治療を受け、ぐったりとしたシルベットは、警戒するように、しかしぼんやりと窓の外を眺めていた。 葬送法師は何も言わず、置物のようにそこに在るだけだ。 この空間の中、君たちはどんな会話をするだろう?【状況2】
「……私のせいだな……」 シルベットが小さく溢す。「この男から、クーデターの申し出があったとき……『それもいいかもしれない』などと、思ってしまった」「私はいつもそうだ。どこに導けばいいのかも分からない癖に、羊飼いを気取っている。 もっと良い判断が、出来たかもしれない……あるいは、そもそも、私がもっと気をつけていれば、こんな状況には……」「……父ならば、どうしたのだろう。レインドッグなら、こんな時、どんな選択を……」 独り言のように呟くシルベットの手は、悔しげに強く握り締められている。 君たちは彼女にどんな言葉を向けるだろうか?【状況3】
「フンッ!」 君たちの言葉を聞き届け、シルベットは気合を入れ直すように自分の顔を自分で殴り抜く。「すまん。弱気になっていたようだ。……こんなことでは、本当に隊長失格だな」「もう弱音は吐かない。我々はもうベットしてしまった。それならあとは、最後まで踊るしかない」 再び顔をあげたとき、彼女は弱気を捨て去り、いつも通りの二代目隊長としての姿を取り戻していた。 ……そんな君たちの車両の周囲を、無人のドローンや車両が囲み始める。 同時、機械的なアナウンスが周囲へと響き渡った!『ドーモ、近隣住民の皆様、ウォッチメイカーです! 大変お騒がせしております。急なことではありますが、公共事業の一環として、高速道路の修繕作業を行います。本件は日本政府から委託されたものであり、欺瞞が一切ない! 騒音でご迷惑をおかけ致しますが、近隣住民の皆様はいつも通りの生活をお送りください。皆様の安全と平和と快適を守る、ウォッチメイカー、ウォッチメイカーでお届けしました』 欺瞞! そのアナウンスを終え、背後から急速接近するのは……機械を模して作られた四つ足の獣と、キャタピラを猛烈回転させアスファルトを粉砕しながら猛進してくる戦車の姿! そしてその車両の上に飛び乗り、油断なく武装をする年端もいかぬ少女たち──ドールハウスのドールたちだ!【道中戦闘】
■エネミー・サイレン・ガントレット・ザ・キャノン×1・メタルJ×2【エンドチェック】
□成長点ボーナス1点を得た□ウォッチメイカー・ドールハウス連合包囲網を突破した【解説】
シルベットの言葉に、PCはどんな態度をとってもいい。優しい言葉を向けるのも、厳しい言葉を向けるのも自由だ(作者だったら殴ると思う)。体制を立て直す為のシーンとして活用しよう。 Dr.クラリックとクレセントヘッドは、口ではこんなことを言ってるが、趣味は全然合わない。お互いに「おぞましいほどに非効率的!」「悪趣味極まりない不細工どもだ」などと思っている。ただ、利害の一致で手を組んでいるにすぎないのだ。【バトル3:戦争屋の遠吠え】
【状況1】
獄門街が近く。 街の唯一の出入り口である獄門トンネルを使うわけにはいかない。当然、そこには警備が待ち構えており、今の君たちを見つけられればただでは済むまい。 だが、君たちは他ならぬグラッジドッグス。街をぐるりと囲む観音山脈は君たちの庭だ。 君たちは車を降り、濃い霧が立ち込める山へと入っていく。【道中戦闘】
■エネミー・バング(強化)・葬送法師(オリジナルデータ)・GD一般兵×2・ユニットリーダー×1■エリアタイプ:戦場の霧
このエリア内にいるキャラクターは、 「基本攻撃」および「属性:攻撃」のパワーの射程を−1する(最低0)。【エンドチェック】
□成長点ボーナス1点を得た□バングを倒し、葬送法師を再度確保した【解説】
PCがバングを殺さず解放しようとするのであれば、状況6のセリフを言い終えた後、葬送法師が落ちていた銃火器を用いて彼を殺害する。そしてその後、葬送法師はいけしゃあしゃあとPCたちへと投降する。すぐそばにいるのに、害することのできない黒幕としてヘイトを稼いでいくと良い(腕の2〜3本は折られてもいいと思う)。 バングのシナリオ上の役割は『ブラックジャケットにもすでにネバーモアの息がかかっていると伝えること』と『ネバーモアの上層部も何か異変が起きていること』を伝える二点にある。彼自身は、グラッジドッグスに対して悪感情を抱いている訳ではない。ただ、彼は所属組織が異なる、任務に忠実な軍人なのだ。■バトル3エネミー
■バング(ネバーモアの監視役)
【エナジー】ライフ80 サニティ70 クレジット65
【能力値・技能値】
能力値・技能値:101ページ通り移動適性:101ページ通り【パワー】
■杭打ち機(強化)属性:攻撃・装備 判定:白兵150% タイミング:行動射程:0 目標:1体 代償:ターン10効果:目標は〈運動〉で判定を行う。 この判定に失敗したキャラクターは4d6点のダメージを受ける。──パイルバンカーともいう。■葬送法師(ネバーモアの交渉役)
【エナジー】ライフ25 サニティ30 クレジット40
【能力値・技能値】
【肉体】66【精神】60 霊能80%、知覚80%【環境】10 作戦60%、隠密30% 交渉150%【移動適性】地上、飛行
【パワー】
■影追い属性:強化・移動 判定:なし タイミング:行動射程:なし 目標:自身 代償:ターン2効果:君は隠密状態となる。──男はどろりと溶けるように影へと消えた。【リーサル:獣たちに銃弾の雨が降る】
【状況1】
バングを下した君たちは、観音山脈を駆ける。 時刻は間もなく夜明けを迎えんとしていた。 間もなくグラッジドッグスの拠点たる倉庫街へと辿り着くと思われた時、葬送法師が弾かれたように空を見た。「……ああ、まずい」 視線の先。観音山脈の頂、尾根の上。 朝日の逆光に照らし出されながら。 一人の鬼が、立っている。「────走れッ!!!」 シルベットの号令が響く!【エンドチェック】
□観音山脈を超えた【解説】
最後に助けに来たのはレインドッグだ。彼は以後、鍾馗を相手取り、その場に留まる。 PCの設定によってはレインドッグと面識があるかもしれないし、ないかもしれない。 シルベットは目を見開き、何かを言おうとするが、今はグラッジドッグスの隊長としての役目を優先する。 ドラマチックに演出しながら、最後の決戦へと向かおう。【決戦:ババを引いたのは誰だ】
【状況1】
君たちは無事、グラッジドッグスの縄張りである倉庫街へと戻ってきた。 事情を知らぬ他の隊員たちが、困惑したように声をかけてくる。「どうしたんだ、一体何が?」 しかしそれに応えるよりも早く、事態は目まぐるしく動く。 建物の周囲が俄に騒がしくなり──…「開けろ! ブラックジャケットだ!!」 次の瞬間、扉が蹴り開けられる! その先にいたのは、黒衣を翻す捜査官の姿!!【状況2】
俄に殺気立つグラッジドッグスへ、シルベットの鋭い声が飛ぶ。「武器を下ろせ! 絶対に撃つな!」 その指示に、ブラックジャケット・グラッジドッグスの双方に困惑が生じる。 緊張に満ちた空間の中、君たちは歩み出るシルベットが小さく囁いた声を聞いた。「何かあったら──後は頼むぞ」【状況3】
ここまでなのか? 君たちは互いに潰しあって、最後に笑うのは姿を見せない黒幕なのか? 散っていったパパラギたちの言葉が脳裏を過ぎる。 ──グラッジドッグスを、頼みましたよ。 敵対したバングの遠吠えが、遠く聞こえる。 ──死ぬんじゃねえぞ、クソ犬ども! シルベットの最期の言葉が、君たちの耳をよぎった。 ──後は、頼むぞ。【戦闘情報】
【エネミー】
・デッドエンド・スニーク・第一話のPC1・PC2・PC3・BJオペレーター×1(戦闘に参加することはなく、パワーの目標になることもないが、フォーカスライト・シルベットをエリア4とエリア1に配置する)【エリア配置】
エリア4:スニーク、BJオペレータ×1、(フォーカスライト) エリア3:デッドエンド、第一話のPC1・PC2・PC3 エリア2orエリア1:PC エリア1:(シルベット)【勝敗条件】
勝利条件:フォーカスライト・シルベット両名の蘇生(※詳細後述) or 二人が死亡する前に敵を全滅する(※詳細後述)敗北条件:PCの全滅【備考】
・エネミーである第一話のPC1〜3は第一話のステータスをそのまま使用する。逆境に入ることはない。・第三話のPC三人はアクション「生きろ!」が使用可能となる。■勝利条件について
フォーカスライトおよびシルベットには【致命ポイント:2点】が付与されている。 この【致命ポイント】は、後述のアクション「生きろ!」以外で回復できない(「生きろ!」はアクションでありパワーではない) この【致命ポイント】は、ラウンド終了時に1点増加する。 【致命ポイント】が5点になったタイミングで、フォーカスライト・シルベットは[死亡]する。 【致命ポイント】が0点になったタイミングで、フォーカスライト・シルベットは蘇生する。以降、ポイントが加算されることはない。■第一話のPC1~PC3について
このエネミーは第一話のPC1~PC3と同じステータスを使用する。第一話を終えたタイミングで、GMによるキャラクターシートの回収やデータの保存などをしておくと良いだろう。 このエネミーは、著しい相性の不利などがない限りは、基本的に同じPLのPCを目標とする。 逆境状態に入ることはなく、それぞれのエナジーが0以下になった時点で「戦闘不能」となる。 パワーは基本的にそのPCが所持したパワーの効果をそのまま使用する。カルマを所持してはいないが、BJRにおけるカルマを消費するパワーは基本的に回数に制限があるパワーのため、そのまま使用して構わないものとする。 相性等の問題で、ゲームにならないほどバランスの偏りが著しい場合、GMは好きなように調整を入れて構わない。■PC追加アクション
【レイドチャレンジ:レイド・ゲーム・ジョーカー】
【状況1】
フォーカスライトとシルベットの蘇生の結果。あるいは君たちが暴動を鎮圧した結果。 戦いは終わり、双方の間に再び均衡が戻ってくる。 二人を撃った両陣営の捜査官や隊員は、潜入工作をになっていたネバーモアの構成員であることも明らかとなるだろう。 両陣営の『和解』を以て、状況は幕を引く。 それを忌々しげに睨みつける人物がいた──葬送法師だ。「は、は、はははははは!」「……ここまでやられたのは、正直、予想外でしたよ」「悪党どもの分際で、和平を以て事を終えるとは…!」 ギラギラとした、未だ宿る不穏な情念──憎悪の眼差しを以て場を見据える男に、君たちは何を告げるだろうか?【状況2】
「────まだだ」「まだ、終わらせんぞォ!」 轟音が迸り、凄まじい揺れが大地を襲った。 それは君たちが預かり知らぬことだったが、その日、日本の民らは見た。富士の山が火を吹き、東京をマグニチュード9クラスの直下型地震が襲う。地震は地震を誘発し、中部、近畿、九州、数多の地域で大地震が観測され、活火山という活火山が火を噴いた。 海辺の民は見る。はるか彼方、まるで壁のようにそびえた水の壁が、土地へと迫らんとしていることを。九州・沖縄を中心として、観測されていなかったカテゴリー5を超える猛烈な台風が突如として地域と海を襲った。北海道や東北地方、日本海沿岸地帯では季節外れの吹雪が襲い、それは地震と合わさり数多の雪崩と化していく! だが、それでも──それほどの『予測・観測不能な』『未曾有の大天災』に晒され、おぞましいほどの数の人間が死のうとも、それは、それでも、『まだ小さかった』のだ。その男が目論んだ規模には、決して決して届かなかったのだ! 葬送法師が吠えた。 最早人の言葉を保たぬ、脳裏に直接叩きつけるような呪詛の声。 その次の瞬間、葬送法師の体が爆ぜた! いいや、それは錯覚だ。葬送法師の体が、内側から爆ぜるように膨らんだのだ! 咆哮と共に、その身が巨大化していく。倉庫街を蹴散らし、水晶の塔をも超え、観音山脈の頂よりも遥かに高い凄まじい巨体が、天の頂きに座す太陽を覆い隠す! その様はあまりにも巨大だった。獄門街を一踏みで蹂躙することも不可能ではないだろう圧倒的巨躯。それは遠く離れた東京、九州、果ては北海道に至るまで、天をつき太陽を隠す不気味な人影として目撃されたほど。 太陽が消える。日本全土へと影が落ちる。 それは、最早明瞭な人の形をとどめてはいなかった。どろどろと濁った、名状し難い、確かに不浄であると感じる『何か』が、煮凝りのようにより集まったものだった。その巨体が天を覆い、日の光を食むように遮る。そうして日本へと落ちた影の中にあるものが、瞬く間に腐り果てていくのだ! 木が、土が、建物が、腐り、朽ち、果てていく。悪臭と共に蛆が沸き、百足、蜚蠊、蜘蛛、数多の毒虫たちが湧き上がる。草木は萎び、建物はひび割れ、土は腐り、山が死ぬ。 それはさながら神話に語られる天を支える巨人が如しか、はたまた国引き神話に語られる国津神が一柱か。おぞましき、形を保たぬ不定形のダイダラボッチは、日本の全てを影へと染め上げながら、声にならぬ呪詛の中、ただ憎悪を叫ぶ!【レイドチャレンジ】
全陣営共通のリソースとして、5点のカルマを場に配置する。このカルマは誰のものでもないものとして扱う。各PCのカルマをこのチャレンジで使用することはできない。 各陣営ごとに、それぞれ1度ずつ定められた判定を行う。技能値・判定値は代表して判定を行うキャラクターのものを使用すること。 判定に失敗した場合、判定を行ったキャラクターの、任意のエナジーが3d6点失われる。その上で再度判定を試みる。 全ての判定に成功した場合、葬送法師の身柄は抑え込まれ、ハッピーエンドとなる。 判定に失敗し続け、どこか一陣営が全滅し、判定を行えなくなった場合、バッドエンドとなる。日本列島は一夜にして、海の底に沈むのだ。【解説】
葬送法師の最期の悪あがき、最後のチャレンジイベントだ。今までの鬱憤を思いっきり晴らそう。 これは変則的に、キャンペーンに登場した全てのPCが登場するイベントとなる。 判定を誰が振るかはPL同士の相談の上で行って構わないが、せっかくの最後だ。極力、PLは誰かが一人一回ずつサイコロを振れるようにすることが望ましいだろう。 演出は自由にして良い。盤外視座の陰陽師たちは遥か遠方から術式を紡ぐのかもしれないし、謎の地下鉄によって獄門街に到着できるかもしれない。グラッジドッグスの兵士たちはありったけの武器弾薬で応戦するのかもしれないし、歪み石を使って何かをするのかもしれない。ブラックジャケットの捜査官たちは……さて、どうしようね? まあ、どうにかしてくれ。 全ての判定が成功すれば、葬送法師は封じられ、これまで通りの人の形を保った状態で獄門街へと落ちてくる。そうなればあとは、どの組織がどう裁くかは、PLとGMが望むようにすればよい。(シナリオ上の描写としては、グラッジドッグスと盤外視座が争っている間にブラックジャケットが捕らえた、という顛末を想定しているが、必ずしもそれに沿う必要はないだろう)【余韻について】
【SIDE:グラッジドッグス】
【状況】
葬送法師は倒れ、抵抗する力を失い、ブラックジャケットによって捕らえられた。 グラッジドッグスとブラックジャケットの間の取引も無事締結され、君たちは表向きは、本件には何の関与もしていないということになった。 そして──。 観音山脈の麓に、小さな墓碑が建てられた。そこにかけられたドッグタグに刻まれた名前を、君たちはよく知っている。 彼らは死んだ。けれど、グラッジドッグスは生き残った。「……これから、忙しくなるな」 墓碑に酒を注ぎながら、シルベットが呟く。彼女は君たちへと振り返り、毒気の抜けたような笑みを向けた。「また、アンタ達をこき使うことになりそうだ。頼られてくれるかい。……それとも今度こそ、愛想つかれちまったかね」【SIDE:盤外視座】
【状況】
葬送法師は倒れ、抵抗する力を失い、ブラックジャケットによって捕らえられた。 つまり、君たちは仕留め損なった。「あーあ。仕方ねぇ、折を見て獄中の奴を仕留めよう」 だが、鍾馗はまだ諦めてはいないようだ。 焼け跡となった荒夜髭神社の能舞台にて、君たちは今再び集う。(「カツコ様を失ったのは痛手だが、お前たちだけでも生き残ってよかったよ、ホント」 or 「カツコ様も落ち着いたらそのうちひょっこり戻ってくるだろう」)【SIDE:ブラックジャケット】
【状況】
【SIDE:ネバーモア】
【状況】
【成長点】
【グラッジドッグスPC成長点】
基本成長点:5点成長点ボーナス:最大4点追加ボーナス:1点―――――――――――――――合計:10点(最大)【キャンペーン最終リザルト】
ブラックジャケットPC:8点盤外視座PC:8点グラッジドッグスPC:10点―――――――――――――――キャラクター作成時に配布した30点は、このキャンペーンクリア後、任意のキャラクターに対して再配分して構わない。【キャンペーンの背景】
【Q&A】