オペレーション・レッドドッグ


──レッドドッグ(red dog)とはカジノで行われるトランプゲームの一種である。最初に二枚のカードをディーラーが配った後、三枚目のカードの数字が最初の二枚のカードの数字の間に入っていればプレイヤーの勝ちとなり配当が行われる。なぜこの名前になったのか、なぜこのような単純なルールになったのかは分かっていない──

1.エントリーとシナリオ概要

【シナリオ概要】


 君たちは超人特殊部隊ネバーモアの下部組織、グラッジドッグスの構成員だ。 ……そして今、とんでもない秘密を抱えている。 そして、皆、思いは一つ──「ちくしょう、ハメられた!!!!!」

【事前情報】


 クエリー:1 チャレンジ:1 リーサル:1 バトル:3(+決戦) リトライ:6
※特殊ルール このシナリオでは、リトライを消費して行う休息で、エナジーと同様にカルマも回復して良いものとする。(リトライ一点につき1d6点のカルマ回復となる)
 想定時間:6〜7時間

【GMに要するルールブック】


・基本ルールブック(BJR)

【エントリー】

【共通エントリー】

 君たちは超人特殊部隊ネバーモアの下部組織、グラッジドッグスの構成員だ。 ……そして今、とんでもない秘密を抱えている。 そして、皆、思いは一つ──「ちくしょう、ハメられた!!!!!」

【PC1:計画立案者】

 君はグラッジドッグスを守る為、ネバーモアの交渉役・葬送法師の誘拐を提案した人物だ。 ちょっと交渉役を捕まえて、交渉条件を変更してもらうだけ。そんな完璧な計画。 しかし誘拐翌日、日本全土で大々的に放送されたのは、葬送法師暗殺の一報だった。

【PC2:誘拐実行犯】

 君はグラッジドッグスを守る為、ネバーモアの交渉役・葬送法師の誘拐を実行した人物だ。 下手にトラブルを起こして余計な面倒を抱える訳にはいかない。 君はスマートかつ適切、完璧に任務を遂行した。 しかし誘拐翌日、日本全土で大々的に放送されたのは、葬送法師暗殺の一報だった。

【PC3:人質管理人】

 君はネバーモアの交渉役・葬送法師を人質として管理している人物だ。 下手に死なれでもしたら人質の意味がない。 君は自分の役割の重要性を理解し、万全の体制で役目に備えている。 しかし誘拐翌日、日本全土で大々的に放送されたのは、葬送法師暗殺の一報だった。 は? 葬送法師なら隣でピンピンしてるが?

【共通エントリー2】

 一夜にして立場を逆転させられた君たち。 そんな君たちとシルベットに、葬送法師が『交渉』を持ちかけた。「この国にクーデターを起こしてみる気はございませんか」 ──権謀術数渦巻くこの舞台から、君たちは、生き残らねばならない。

■エントリーについて

 このシナリオの導入は、共通イベントの1つのみとなる。そのため、エントリー1〜3はPCの設定に合わせて重複したものを選んでも構わない。この三種のエントリーが用意されているのは、PC自身もこの作戦に同意し、加担した(シルベットのみの責任となるわけではない)という実感をPCおよびPLが共通認識として抱けるようにする為だ。

■道中でロストが発生したら?

 このシナリオは道中戦を中心に構成されたシナリオである為、道中でPCのロストが発生する可能性は十分ある。その場合GMは、・PLと相談し、その時点で違和感のない合流ができるキャラクターを新規で作成してもらう(事前配布経験点はロストPCと同数とするのがよい)・ロストしたPCは「戦闘不能」として扱い、以後のイベントでも継続して使用する。余韻終了後、そのPCはその戦いで受けた傷が原因で死亡等に至ったことにする(スパークの処理に関してはGMが自由にしてよい) などの対応をすると良いだろう。

2.導入フェイズ

【シナリオトレーラー】

 カードは配られる。 最大でもなく。最小でもなく。 狙うは間(はざま)。ごく僅かな隙間。見誤ったとき待つのは破滅。 シンプルなルール。生きるか死ぬか。 つまるところ、やることはそれだけ。
ブラックジャケットRPGキャンペーン『レイド・ゲーム・ジョーカー』第三話『オペレーション・レッドドッグ』
 ──正義が意味をなくした世界で、悪党たちの饗宴が始まる。

【共通エントリー:ジャックポット】

登場:PC全員舞台:廃墟のカジノ

【状況1】

 それは盤上でもなく、盤外でもない。 盤上でありながら、決して表舞台ではない、舞台裏の演者たち。 ──グラッジドッグス、君たちがそれだ。
 全ては、グラッジドッグスの元に齎された、ネバーモアと日本政府の会談の草稿にあった。 ネバーモアが日本政府に対し要求した内容は、己護路島・麻神学園への『防衛科』の設立。 憲法に抵触する可能性の高いその要求に対し、日本政府が返礼として求めたものは──グラッジドッグスの保有する『歪み石』の採掘権の徴収であった。 全ては当事者たるグラッジドッグスを抜きにして進められた話。 勿論、それを甘んじて受け入れるような君たちではない。
 策謀には策謀を以て迎撃すべし。 君たちは先手を打ち、交渉役の身柄の確保に成功した。 成功した、のだが。

 獄門街から遠く離れた、某県に存在するグラッジドッグスの隠しアジトにて。「我々に情報をリークした者が、今朝『不幸な自動車事故』で死亡したらしい……やられたな」 そう告げたシルベットが疲れた面持ちで溜息を吐く。 それは君たちにとっては、予想通りの、しかし最悪の答えだった。
 グラッジドッグスは今、人知れず窮地に立っている。 葬送法師なる人物が暗殺され、鍾馗なる者が指名手配を受けた。犯人を求め、ブラックジャケットやG6を巻き込みながら、いま、この国は蟻の巣を突いたような大騒ぎだ。 ……だがそこに、関係者によって意図的に伏せられたカードがあることを、他ならぬカード本人である君たちは知っている。
「こうなれば最早、一蓮托生というものですなァ」 笑みを孕んだ男の声。 視線が集まる先に、僧衣姿の一人の男が座っている。「どうぞ冥府まで、ご一緒しましょうぞ」 数多の銃口を向けられながら、臆す様子を一つもみせぬ男──それは、葬送法師のはずだ。少なくとも君たちは、そう思って、彼を誘拐したのだから。
 グラッジドッグスは、ネバーモア交渉役たる葬送法師を誘拐した。 当初はこれほどの大事になる予定はなかった。あくまで秘密裏に、最低限の恐喝で、内輪のこととして事態は収束するはずだった──しかし、そうはならなかった。君たちの行動は、誘導された末の罠だったのだ。 ネバーモアは、グラッジドッグスを完全に切り捨てた。 今更真相を打ち明けた所で、誰もそれを信じはしないだろう。否、日本政府とネバーモア、あるいはその間に立つ第三者によって、有意義に活用され、骨までしゃぶり尽くされるのがオチだ。 グラッジドッグスの命運は、いま、風前の灯火だった。

【状況2】

「サテ……では改めて、交渉の席へと入りましょうか」「改めまして。ネバーモアが交渉役、葬送法師と申します」「一蓮托生となった今、あらためて皆様にご相談したい旨がございます──今となっては、そちらにとっても、決して悪い話ではないでしょう」 葬送法師はニヤリと笑い、切り出した。 当初から、それが目的だったのだと、君たちにも察せるだけの口ぶりだった。「この日本という国に、クーデターを起こしてみませんか?」

【状況3】

「我々超人種は長きにわたる歴史の中で、己の国を求め続けてまいりました。かくして戦後ようやく、この日本という国に『自治区』という形で己の地を得るに至った。国防を担い、この国の盾となることを代償として」「しかし──それならば、この国を我々だけの地へと染め上げることを、誰が悪だといえましょう」「超人種により守られ、超人種による恩恵を数多受けながら、しかしこの国は多数決の国。等しき数の上では、我々は決して旧世代に勝てません」「それは実に、不平等な話ではありませんか」 ニヤニヤと笑いながら、葬送法師はそう告げる。それが彼自身の思想であるのか、それとも利権を腹に隠した建前であるのかは、その口ぶりからは察せられなかった。「それに……『超人種とは、歩く核兵器』」「力があるならば、それを有意義に使うべきだとは思いませんか」 葬送法師の言葉に、シルベットの肩がピクリと動く。 それは先代、レインドッグが口にしていた言葉だ。 落ち着き払いながらも、ギラギラとした不穏な情念を宿した眼差しで、葬送法師は皆へと告げた。「多くの死が生まれるでしょう。多くの悲劇が生まれるでしょう。血を、膿を、病を、憎悪を、恨みが恨みを呼びまた新たな死と悲劇を。数多の不浄を撒き散らしながら、この国は泥沼の惨状へと腐り至ることでしょう」「ですが……皆様、そうした戦争はお好きでしょう?」
 シルベットが生唾を飲む音を君たちは耳にする。 彼女は葬送法師へ、「考える時間が欲しい」とだけ告げ、部屋を辞した。 去り際に、君たちへ「ついてきてくれ」と耳打ちしながら。

【エンドチェック】

□罠にハメられた□葬送法師の提案を聞いた

【解説】

 グラッジドッグスは立場上、多くの組織から狙われている立場だ。僅かな均衡が崩れれば、歪み石の利権を巡って、一斉に狙われる立場になり得る。そして今、その恐れていた事態に至ってしまった。 PCたちはシルベットが選んだ、信頼できる者で構成された少数精鋭でこの任務に当たっていた。グラッジドッグス内にも、この作戦のことを知るものは少なかったようだ。 PCの他に、幹部たちもこのアジトにいる。だが、バングだけは、留守を預かるという名目でこの任務と計画からは外されている(彼はネバーモアの監視者であると、シルベットは知っているため)。

3.展開フェイズ

【クエリー1:力の使い方】

場所:隠しアジト、別室登場:PC全員

【状況1】

 君たちはシルベットに呼び出され、別室で顔を合わせる。 そこには今、この隠しアジトにいる、グラッジドッグスのメンバーの姿があった。「集まってくれてありがとう。葬送法師は今、パパラギが監視している。パパラギにはこの話は既に通ししてある」「率直に言おう。──奴のクーデターの話、どう思う」
 リトルリンダが苛立たしげに吐き捨てる。「従う理由なんてないさ。いいように使い捨てにされるのがオチさね」 ベイブ・ザ・エンジェルが腕を組み意見を述べる。「だが、そうなると、この状況をどうするかが重要になる」

【状況2】

 めいめいの意見を聞き届け、シルベットは深い溜め息を吐きながら告げる。「今、我々は狩られる側となった」「無論、ただで狩られてやる気は毛頭ない。だが……それをお前たちに強要することもできない」「だから、お前たちが選んでくれ。今、ここを去れば、お前たちは無関係な第三者になれる」「あるいは……奴の言う、国盗りを皆が望むというのならば、それも良いだろう」 そう尋ねるシルベットの顔には、迷いの色が色濃くあった。 レインドッグが去ってから今まで、一度も見せたことがなかった色だ。 シルベットの言葉に、君たちは何と答えよう。 君たちの力を、何のために使うべきだろう?

【エンドチェック】

□シルベットの言葉に答えた□成長点ボーナス1点を得た

【解説】

 グラッジドッグス全体の方針を決めるシーンだ。 基本的なシナリオラインとしては、『葬送法師の提案を断り、クーデターには加担しない』という方向でシナリオを作成している。だがPC全員が望むのであれば、GMは以後の流れを『ネバーモアのクーデターに加担する為、葬送法師の身柄を護送する』という方向に修正しても良い。その場合、バングとの戦いで、ネバーモアは最初からグラッジドッグスと協力する気などないということを明かし、目的が破綻。生き残るためにブラックジャケットを目指す……などとするのが良いだろう。 もっとも、そうした改変を行う場合、チャレンジ1の内容やNPCのリアクションをGMは適宜調整する必要がある。がんばってほしい。

【チャレンジ1:オペレーション・レッドドッグ】

舞台:隠しアジトのカジノ廃墟登場:PC全員

【状況1】

 グラッジドッグスがグラッジドッグスとして生き残る為には、クーデターの提案に乗る訳にはいかない。しかしその我を貫けば、あっという間にグラッジドッグスは葬送法師暗殺計画の実行犯へと仕立て上げられるだろう。そしてそのまま、ネバーモアと日本政府によって、歪み石の採掘権も取り上げられてしまうに違いない。 難しい顔をしたシルベットが資料を開き、机上へと向かう。 生き残らねばならない。君たちはそのための作戦を練る。
---------------■【チャレンジ判定】※全員で判定を行い、誰か一人が成功すれば良い。【判定1】 生き残る為の作戦を考えよう!……〈作戦〉【失敗時】 次の戦闘でチャレンジ・ペナルティ・チャートの効果を適用させる。(進行に不都合な効果は無視して良い)---------------

【判定1結果】

 PCたちがPCたちのまま生き残り、この局面を脱するにはどうすればいいのか? 君たちは生存戦略を練る。そして導き出した答えは、「葬送法師の身柄を、生きたまま、信頼できる機関へと引き渡し、その存在を証明する」というものだった。 葬送法師は生きている。 そのことを、日本へと知らしめねばならない。 問題は、どこの機関へ渡すかということだ。この世界において、信頼というものほど曖昧な商売道具は存在しない。どの組織も、自らの立場をより良くしようと、舌なめずりをしている。そうした世界に於いて、歪み石というカードを持つ君たちには、あまりにも敵が多すぎた。 君たちは考えた。そうして、最後の白羽の矢が立った組織、それは──超人警察機構ブラックジャケット。

【状況2】

 ブラックジャケットの本部があるのは、遠く離れた獄門街。 そこまで、葬送法師を輸送せねばならない。「用意できる限りの薬に、銃火器……ああ、それともちろん移動手段も要りますね。とはいえ目立つわけにもいきませんし……自動車の運転は得意ですか? 私はさっぱり」 パパラギが忙しなく走り回っている。 今、できる限りの武装を整えなければ。
---------------■【チャレンジ判定】※全員で判定を行い、誰か一人が成功すれば良い。【判定2】 出撃準備を整えよう!……〈経済〉or〈操縦〉【失敗時】 次の戦闘でチャレンジ・ペナルティ・チャートの効果を適用させる。(進行に不都合な効果は無視して良い)---------------

【状況3】

「もしブラックジャケットも信用できなかったらどーすりゃいいのかねえ」「その時はその時さ。獄門街に立てこもって、日本政府と戦争でもなんでもしてやるさ」「自棄っぱちだなァ〜。気が重いねェ、まったく」 リトルリンダとベイブ・ザ・エンジェルのそんな言葉が聞こえてくる。 そうした不安は、グラッジドッグスの中には未だ色濃く残っている。 今、君たちは狩る側の猟犬ではなくなった。狩られる側、逃れる側、狩人の手を逃れる為に知恵を絞る瀕死の獣。 だが、まだ死んではいない。 ここは一つ、仲間たちに発破の一つでもかけてやるとしよう。
---------------■【チャレンジ判定】※全員で判定を行い、誰か一人が成功すれば良い。【判定3】 味方を鼓舞しよう!……〈交渉〉or〈意志〉【失敗時】 次の戦闘でチャレンジ・ペナルティ・チャートの効果を適用させる。(進行に不都合な効果は無視して良い)---------------

【状況4】

 状況は整えられる。 向かうは獄門街。対峙する障害は不明。成功条件は『葬送法師の生存証明』。 数多の陣営の狭間を縫って、ただ一つの勝ち筋を狙う。 グラッジドッグスが生き残る為の生存戦略。 その作戦名は『オペレーション・レッドドッグ』と名付けられた。

【エンドチェック】

□チャレンジ判定を終えた

【解説】

 出撃前の準備シーン。 いろいろと隊員たちとコミュニケーションをとるシーンを入れるとこのあとのシーンの悲壮感が増すのでおすすめ。

【バトル1:壊滅! グラッジドッグス!】

舞台:隠しアジトのカジノ廃墟登場:PC全員

【状況1】

 火の手が上がっていた。 炎が、アジトを包み込んでいる。黒い煙が上がり、混乱の怒声が周囲に渦巻いている。 隊員たちが銃を撃つ。ライフルから放たれた弾丸は、しかし目標に着弾するよりも早く、奇妙な動きを見せる炎に灼かれて溶ける。 炎の先に鬼がいた。
 否、それは鬼ではないだろう。おそらくは。確かではなかったが。 鬼の面を掛けた男が一人、炎の先に立っている。 男の足元には、多くの亡骸が転がる── 一太刀のもとに葬られた、グラッジドッグスの兵士たち。
 間もなく獄門街へと出立、そうした頃合いに、その男は一人でふらりと現れた。 そうして、瞬く間に虐殺を始めた。アジトを守る兵士たちを、一人、一人、迷いのない太刀筋で斬り捨て、奇妙な術で精神を灼いた。まるでもののついでのように、一切の躊躇なく。 そうしていくらかの時も隔たず、グラッジドッグスは壊滅の危機にあった。
【状況2】「奴を連れてここを出るぞ! 急げ!」 シルベットの指示が飛ぶ。君たちは急ぎ、葬送法師を連れ、この場を脱しようとする。 葬送法師は襲撃者に対し、知っていることでもあるのか、「おや、もう気取られましたか。それなりに苦労したのですがねえ」と困ったように肩をすくめながら従った。「あれと真っ向からぶつかっては死ぬのは拙僧にございます。どうぞどうぞ、お助けくだされ」
 脱出を──そうして車に乗り込もうとする君たち。 直後、悲鳴が上がる。振り返れば、シルベットの全身が炎に包まれていた。 炎はまるで生き物のように蠢き、周囲へと燃え移る。 シルベットが苦悶の声をあげてその場に倒れた。
「鍾馗様、援護いたします」「おゥ、全員殺すぞ」 男の背後から、鴉天狗の面をつけた大柄な人物が姿を現す。鴉天狗は鬼の面を指し、鍾馗と呼んだ。 炎と血に塗れながら、鍾馗と呼ばれた鬼が、君たちの前に立ちはだかる。
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【道中戦闘】

■エネミー・鍾馗×1・火霞羅州×1・式神×3
■勝敗条件 勝利条件:鍾馗・羅州の撃破 敗北条件:PCの全滅
■エリア配置 エリア3:鍾馗、羅州、式神×3 エリア1〜2:PC
■備考 とくになし。
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【戦闘解説】 それぞれの持つパワーをシンプルに駆使していくと良い。 火霞羅州は攻撃を行うよりも、『弱体符』や『強化符』を駆使した味方の支援をメインに動くと良いだろう。 鍾馗はこの戦場の最大のアタッカーだ。主に『穢れ祓い』を用いてPCのクレジットを狙っていくと良い(多くの場合、グラッジドッグスのPCのライフや肉体の能力値は高いことが想定される為)。全員が逆境に入ったら『妖魔折伏』だ。全力で殺しにいけ。 式神はシンプルに『怪力』で攻撃を行う。ライフは低いが、火力は高い。油断すると痛い目を見ることになるだろう。
【状況3】 鍾馗との戦いの果て、君たちは隙を突き、葬送法師と傷ついたシルベットを連れて戦場を離脱する。 車に飛び乗る君たち。しかし君たちを逃さないと言わんばかりに、炎の先から鍾馗の術式が襲いかかる。「危ない!」 それを迎え撃つものがあった。パパラギの魔術だ。 傷ついたパパラギが、迫り来る鍾馗と君たちの間に立つ。 視線の先、リトルリンダとベイブ・ザ・エンジェルが鍾馗へと組みつく様が見えた。「奴は我々が食い止めます! 構わず行って!」「大丈夫、後で追いつきます! さあ、早く!」 パパラギに突き飛ばされるように、君たちは用意した車両に放り込まれる。 炎に包まれながら、旅立つ君たちへとパパラギが叫んだ。「……グラッジドッグスを、頼みましたよ……!」

【エンドチェック】

□成長点ボーナス1点を得た□鍾馗の手から逃れ、出立した

【解説】

 鍾馗と羅州は葬送法師の命を狙って現れた。彼らにとってみれば、グラッジドッグスの兵士たちの犠牲は、いつも通り『人の世を救う為に必要な犠牲』だ。彼らは一切、手加減も躊躇もしない。 エナジーが尽きた時、羅州は基本的には撤退を選ぶ。鍾馗はどんな演出で倒されても構わないが、致命傷を受けたはずなのにリザレクションしてきた! とかの描写からの状況3に繋げるとだいぶ絶望感があって良いかもしれない。鍾馗は本シナリオにおいて、以後のイベントにも登場し、執拗にPCたちを追う存在となる。 また、このシナリオでは、リトライを使用して行う休息で、エナジーと同様にカルマを回復して良いとしている(リトライ1点につき1d6点のカルマ回復)。徐々にエナジーは削れていくが、カルマは他のシナリオよりも余裕を持って使うことができるだろう。GMはその事を忘れず、戦闘終了時にPLへ休息を行うか否かの確認をすると良い。

【バトル2:生存戦略】

舞台:高速道路・夕方登場:PC全員

【状況1】

 夕日に照らされる車内にて。 葬送法師と傷ついたシルベットを連れ、君たちは逃げる。一路、獄門街を目指して。 残してきた者達がどうなったのかは分からない。果たして無事でいるのか、それとも…。 治療を受け、ぐったりとしたシルベットは、警戒するように、しかしぼんやりと窓の外を眺めていた。 葬送法師は何も言わず、置物のようにそこに在るだけだ。 この空間の中、君たちはどんな会話をするだろう?

【状況2】

「……私のせいだな……」 シルベットが小さく溢す。「この男から、クーデターの申し出があったとき……『それもいいかもしれない』などと、思ってしまった」「私はいつもそうだ。どこに導けばいいのかも分からない癖に、羊飼いを気取っている。 もっと良い判断が、出来たかもしれない……あるいは、そもそも、私がもっと気をつけていれば、こんな状況には……」「……父ならば、どうしたのだろう。レインドッグなら、こんな時、どんな選択を……」 独り言のように呟くシルベットの手は、悔しげに強く握り締められている。 君たちは彼女にどんな言葉を向けるだろうか?

【状況3】

「フンッ!」 君たちの言葉を聞き届け、シルベットは気合を入れ直すように自分の顔を自分で殴り抜く。「すまん。弱気になっていたようだ。……こんなことでは、本当に隊長失格だな」「もう弱音は吐かない。我々はもうベットしてしまった。それならあとは、最後まで踊るしかない」 再び顔をあげたとき、彼女は弱気を捨て去り、いつも通りの二代目隊長としての姿を取り戻していた。 ……そんな君たちの車両の周囲を、無人のドローンや車両が囲み始める。 同時、機械的なアナウンスが周囲へと響き渡った!『ドーモ、近隣住民の皆様、ウォッチメイカーです! 大変お騒がせしております。急なことではありますが、公共事業の一環として、高速道路の修繕作業を行います。本件は日本政府から委託されたものであり、欺瞞が一切ない! 騒音でご迷惑をおかけ致しますが、近隣住民の皆様はいつも通りの生活をお送りください。皆様の安全と平和と快適を守る、ウォッチメイカー、ウォッチメイカーでお届けしました』 欺瞞! そのアナウンスを終え、背後から急速接近するのは……機械を模して作られた四つ足の獣と、キャタピラを猛烈回転させアスファルトを粉砕しながら猛進してくる戦車の姿! そしてその車両の上に飛び乗り、油断なく武装をする年端もいかぬ少女たち──ドールハウスのドールたちだ!

【状況4】 包囲されたグラッジドッグスの車両を、上空のドローンが撮影する。「彼らとの提携は素晴らしいものでした、このような事態になったことが残念です。御社との提携はこれが初ですが、お互いにとって良いビジネスになることを祈りますよ」「ええ、それは私も同じ気持ちです。ネバーモアは実に良い仕事を持ってきてくれました……採掘権についての交渉は、この件にカタがついてから」「ええ、ええ、もちろんです。今回はお互いの商品のプレゼンテーションといこうではありませんか!」 遠方にてその様子を見下ろし、ウォッチメイカーの獄門街支社長クレセントヘッドと、ドールハウスオーナー、Dr.クラリックは、腹の底を隠して朗らかに笑った。 戦いは高速道路上、この包囲網を突破せよ!
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【道中戦闘】

■エネミー・サイレン・ガントレット・ザ・キャノン×1・メタルJ×2
■勝敗条件 勝利条件:『ウォッチメイカー・ドールハウス連合』の全滅 敗北条件:PCの全滅
■エリア配置 エリア4:ザ・キャノン エリア3:メタルJ×2 エリア2:ガントレット、サイレン エリア1:PC
■備考・各ラウンド開始時、シルベットの「狩りの時間だよ!!」をPCに対して使用する(判定を行う)・全てのエリアを「エリアタイプ:不整地」として扱う。・3ラウンド目終了時、キャラクターが最も多いエリアに『鍾馗』を追加する。
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【戦闘解説】 ガントレットは『影化』と『スナイプ』を使って、エリア4と隠密エリアを行き来しながら攻撃を行う。この時、隠密状態の解除は移動とは看做さず、不整地の効果は適応外とする(PCが隠密状態になる場合も同条件とする) 『挺身』によるカバーは、同組織所属のサイレンに対して使用すると良いだろう。GMが時間稼ぎを目指そうとするのであれば、無理に庇わずとも良い。 サイレンは『バッドエンドシンフォニー』『吹き矢』『ハニートラップ』を駆使してPCへと攻撃をしかけていこう。ただし、彼女はガントレットと違い『吹き矢』の射程が短い。一度隠密エリアに入り、エリア4に行ってしまうと、接近するのに大きくターンを消費することになる。基本的には『バッドエンドシンフォニー』でサニティを狙うか、『ハニートラップ』で既に大きく消費している可能性の高いクレジットを狙おう。 ザ・キャノンは『とにかく硬い追加装甲の装着』を最初に行い、あとはPCが接近してくるまでは『命中率低いけど連発できる大砲』を使って攻撃していこう。PCが近づいてきたら『付け替え可能なドリル』だ。キャノンの装甲は厚く、ライフは高い。第三ラウンド以内にキャノンを削り切れるか否かが、鍾馗が戦場に姿を表すかどうかの分水嶺となるだろう。 メタルJはパワーを順当に使用していけば良い。が、不整地の効果で『駆ける』の代償にターンが+10されることを忘れないようにしよう。おそらく、この戦場エリアの影響を最も受けるエネミーになるはずだ。運良く『噛む』『のしかかる』で[転倒]を付与できた場合、[転倒]が付与されたPCはアクションでの戦場移動・接敵・離脱が行えなくなることに注意。時間稼ぎに大きく貢献できるだろう。 鍾馗が戦場エリアに到着した場合、逆境に入っていないPCがいれば、容赦無く『穢れ祓い』か『奇種覆滅』をぶっ放そう。もっとも全員逆境に入っているのであれば、取れる手段は『妖魔折伏』のみだ。意外とどうにかなるのだが、そのあたりは黙っておけばよい。 鍾馗の撃破は戦闘終了条件には含まれない。ウォッチメイカー、ドールハウス所属のキャラクターが戦場エリアから消えたら、そのまま戦闘終了とする。PCたちは鬼殺しの襲撃から、再び逃げ果せることが出来るだろう。 このことはPCに事前に伝えておく方が良いだろう。

【エンドチェック】

□成長点ボーナス1点を得た□ウォッチメイカー・ドールハウス連合包囲網を突破した

【解説】

 シルベットの言葉に、PCはどんな態度をとってもいい。優しい言葉を向けるのも、厳しい言葉を向けるのも自由だ(作者だったら殴ると思う)。体制を立て直す為のシーンとして活用しよう。 Dr.クラリックとクレセントヘッドは、口ではこんなことを言ってるが、趣味は全然合わない。お互いに「おぞましいほどに非効率的!」「悪趣味極まりない不細工どもだ」などと思っている。ただ、利害の一致で手を組んでいるにすぎないのだ。

【バトル3:戦争屋の遠吠え】

登場:PC全員舞台:観音山脈

【状況1】

 獄門街が近く。 街の唯一の出入り口である獄門トンネルを使うわけにはいかない。当然、そこには警備が待ち構えており、今の君たちを見つけられればただでは済むまい。 だが、君たちは他ならぬグラッジドッグス。街をぐるりと囲む観音山脈は君たちの庭だ。 君たちは車を降り、濃い霧が立ち込める山へと入っていく。
【状況2】「おーい、お前たち、おーい」 濃霧の先から声が聞こえる。グラッジドッグスの兵士、バングの声だ。「パパラギたちから連絡を受けてきた! いるのか! いたら返事をしてくれ!」 君たちがそれに答えようとするのを、シルベットが制する。彼女は厳しい声で告げた。「総員、武器を持て。奴は──」 直後、置き物めいて無抵抗で付き従っていた葬送法師が動く! それはするりと君たちの包囲網を抜け──影の中へと姿を消した!
【状況3】「……おい、羊飼いは消しておく筈じゃなかったのか?」「鬼に歯向かう健気な飼い犬たちがおりましてな。いやはや、残念」 霧の中からバングが姿を現す。 その影の中から、するりと葬送法師が姿を現した。 その様と会話は、まるきり、彼らが同陣営の存在であることを示していた。 葬送法師は、いつだって君達の元から逃げ出すことができたのだ。それをしなかったのは、このチャンスが来ることを知っていたからか。 シルベットが吐き捨てる。「バングはネバーモアから派遣されていた監視役だ。だから今回の任務については何も言わずにいたのだがな……」
【状況4】「そういうことだ」 バングは言葉少なにそう告げ、君たちへと腕の釘打ち機の銃口を向ける。「ブラックジャケットを頼っても無駄だ。あそこにももう、ネバーモアの息はかかってる」「だが、同じ釜の飯を食った仲。最後のチャンスをお前たちへやろう」「俺も、お前たちも、結局はただの戦争屋だ。武器だ。力だ。戦いがある場所でしか生きられないクソッタレどもだ。その相手がよその国相手になろうと、この国相手になろうと、一体なんの違いがある?」「ネバーモアも、どうもおかしなことになってるみたいだがよ。……上には俺が取り次いでやる。やることは、今も、これからも、何も変わらねえ」「──ネバーモアに降れ、グラッジドッグス」
【状況5】「我々は尾を振るばかりの飼い犬ではない。我々は猟犬、我々はグラッジドッグス、我々は悪意の獣」「狩りをするのは、我々だ!」「武器を持て! 目的は葬送法師の鹵獲および観音山脈の踏破! 邪魔するものは排除しろ!」「さあ、狩りの時間だ!」 シルベットの啖呵と、それに応じて武器を構えたPCたちに、バングが目を細め懐かしむように呟いた。「どいつもこいつも……あの馬鹿野郎と似た様な目をしてやがる」 けれどその郷愁は、釘打ち機が轟音を立てると同時、跡形もなくかき消える。「良いぜ、来な! ありったけの武器を持ってかかってこい!」「“ザ・パイルバンカー”、バング! お前たちを殲滅する力の名だ!!」
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【道中戦闘】

■エネミー・バング(強化)・葬送法師(オリジナルデータ)・GD一般兵×2・ユニットリーダー×1
■勝敗条件 勝利条件:葬送法師を除くエネミーの全滅 敗北条件:PCの全滅
■エリア配置 エリア4: エリア3:ユニットリーダー、GD一般兵×2、バング エリア2orエリア1:PC 隠密エリア:葬送法師
■備考・各ラウンド開始時、シルベットの「狩りの時間だよ!!」をPCに対して使用する(判定不要)・全てのエリアに「エリアタイプ:戦場の霧」を適応する(詳細後述)・バングは以下のステータスとし、パワーを以下の形に変更する。・葬送法師は以下のステータスとし、以下のパワーを使用する。
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■エリアタイプ:戦場の霧

 このエリア内にいるキャラクターは、 「基本攻撃」および「属性:攻撃」のパワーの射程を−1する(最低0)。
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【戦闘解説】 バングは『猪突猛進(強化)』で自身に固定値を付与しながら、『灰になるまで』を使ってPCへと回避不可の攻撃を繰り出していこう。PCが逆境に入ったら、『杭打ち機(強化)』を使って攻撃だ。掠めただけで即死のスリルをお見舞いしてやろう。 『猪突猛進(強化)』は本来のパワーから効果の一部が変わっている。2ラウンド目以降も、PCのいないエリアにあえて動いて、その後再びPCのいるエリアに侵入するなどして、自分へのバフを付与し続けていこう。このシナリオのバングはクレバーな男だ。 葬送法師は「基本攻撃」は行わず、隠密エリアから「闇の手」や「影繰り」を使用していこう。エナジーが尽きるまでこれを繰り返せばよい。 「闇の手」や「影繰り」は攻撃パワーではない為、隠密エリアで使用しても、隠密状態が解除されることはないものとして扱う。
【状況6:戦闘終了】「へっ……ケツの青いうり坊どもが……」「だが……そこまでやるならやってみせろ、死ぬんじゃねえぞクソ犬ども! 先に地獄で待ってるぜ!!」 かくしてバングは倒れ、君たちは葬送法師の再度の鹵獲に成功する。 おさえこまれた葬送法師は、しかし不気味に従順だった。この期に及んで、未だ何かの策があるというのか。 君たちは山を駆け、獄門街を目指す。

【エンドチェック】

□成長点ボーナス1点を得た□バングを倒し、葬送法師を再度確保した

【解説】

 PCがバングを殺さず解放しようとするのであれば、状況6のセリフを言い終えた後、葬送法師が落ちていた銃火器を用いて彼を殺害する。そしてその後、葬送法師はいけしゃあしゃあとPCたちへと投降する。すぐそばにいるのに、害することのできない黒幕としてヘイトを稼いでいくと良い(腕の2〜3本は折られてもいいと思う)。 バングのシナリオ上の役割は『ブラックジャケットにもすでにネバーモアの息がかかっていると伝えること』と『ネバーモアの上層部も何か異変が起きていること』を伝える二点にある。彼自身は、グラッジドッグスに対して悪感情を抱いている訳ではない。ただ、彼は所属組織が異なる、任務に忠実な軍人なのだ。

■バトル3エネミー

■バング(ネバーモアの監視役)

【エナジー】ライフ80 サニティ70 クレジット65

【能力値・技能値】

能力値・技能値:101ページ通り移動適性:101ページ通り

【パワー】

■杭打ち機(強化)属性:攻撃・装備 判定:白兵150% タイミング:行動射程:0 目標:1体 代償:ターン10効果:目標は〈運動〉で判定を行う。   この判定に失敗したキャラクターは4d6点のダメージを受ける。──パイルバンカーともいう。
■灰になるまで属性:攻撃・装備 判定:なし タイミング:行動射程:0 目標:1体 代償:ターン10効果:1d6点のダメージおよび「延焼4」を目標に与える。このパワーは逆境に入ったキャラクターを目標にできない。──目の前の敵を燃やし尽くす攻撃。
■ガトリングガン(強化)属性:攻撃・装備 判定:なし タイミング:行動射程:0 目標:1エリア 代償:ターン20効果:目標(自身除く)は〈運動〉-20%で判定を行う。この判定に失敗したキャラクターは1d6+1点のダメージを受ける。──回転する銃身が格好いい。
■猪突猛進(強化)属性:移動・強化 判定:なし タイミング:行動射程:なし 目標:自身 代償:ターン2効果:君は隣接するエリアに移動する。移動先のエリアに君の敵がいた場合、このラウンドの間、君が与えるダメージに+4の修正を得る。──まるでイノシシのように、真っ直ぐ突進をかます。

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■葬送法師(ネバーモアの交渉役)

【エナジー】ライフ25 サニティ30 クレジット40

【能力値・技能値】

【肉体】66【精神】60 霊能80%、知覚80%【環境】10 作戦60%、隠密30% 交渉150%

【移動適性】地上、飛行

【パワー】

■影追い属性:強化・移動 判定:なし タイミング:行動射程:なし 目標:自身 代償:ターン2効果:君は隠密状態となる。──男はどろりと溶けるように影へと消えた。
■アウトキャスト〈河原者〉属性:強化 判定:なし タイミング:永続射程:なし 目標:自身 代償:なし効果:君が受けるダメージを1点軽減、君が受けるショックを2点軽減し、さらに君は「不調無効」を得る。──君は追放者だ。社会から、組織から、この国から追放された存在である。
■闇の手属性:妨害 判定:なし タイミング:特殊射程:1 目標:1体 代償:ライフ2効果:目標がダメージ、ショック、スティグマを受けた直後に使用できる。そのダメージ、ショック、スティグマを4点軽減する。──影の中から闇の色をした手が生える。巨人の如き巨大な掌が。
■影繰り属性:妨害 判定:交渉150% タイミング:特殊射程:1 目標:1体 代償:ライフ2効果:目標が「属性:攻撃」のパワーか「基本攻撃」を宣言した時に使用できる。目標は〈意志〉で判定を行う。この判定に失敗した時、そのパワーかアクションの目標は葬送法師が決定する。──声を媒介に術を科す。無自覚のうちに引き金を引き、はたと我に返って気づく……今、自分は何をしていた?

【リーサル:獣たちに銃弾の雨が降る】

登場:PC全員舞台:観音山脈

【状況1】

 バングを下した君たちは、観音山脈を駆ける。 時刻は間もなく夜明けを迎えんとしていた。 間もなくグラッジドッグスの拠点たる倉庫街へと辿り着くと思われた時、葬送法師が弾かれたように空を見た。「……ああ、まずい」 視線の先。観音山脈の頂、尾根の上。 朝日の逆光に照らし出されながら。 一人の鬼が、立っている。「────走れッ!!!」 シルベットの号令が響く!
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■リーサル判定
【判定】鍾馗をやり過ごせ【成功数】全員で挑戦を行い、2回成功する必要がある。【技能】任意の技能-30%
【失敗時】リーサルに失敗した時、判定に参加したPCは4d6点のスティグマを受ける。そのPCは以後、リトライを消費した休息を取ることができない。
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【状況2】 頭を使い。 持てる力で。 精神を奮い立たせながら。 君たちはその鬼の傍を突破していく。 けれど、ああけれど──それでも尚、鬼の手は伸ばされる。 その手が葬送法師を、PCたちを、シルベットを捕まんとしたその時── ──山嶺に一発の銃声が響く。
 朝日の眩しい逆光を背に、誰かが立っていた。 顔は見えない。 けれどどこか、見覚えのある……。 鬼へと銃口を向けながら、その男は、君たちを見て笑ったらしかった。「ほら、頑張れ」「もうちょっとだ」
 シルベットが目を見開く。何かを言おうと口を開く。 しかし彼女はそれ以上何かを告げようとすることはなく、グラッジドッグスの隊長として、君たちへと声を張り上げた。「振り返るな! グラッジドッグス! 走れッ、走れェーッ!!!」

【エンドチェック】

□観音山脈を超えた

【解説】

 最後に助けに来たのはレインドッグだ。彼は以後、鍾馗を相手取り、その場に留まる。 PCの設定によってはレインドッグと面識があるかもしれないし、ないかもしれない。 シルベットは目を見開き、何かを言おうとするが、今はグラッジドッグスの隊長としての役目を優先する。 ドラマチックに演出しながら、最後の決戦へと向かおう。

4.決戦フェイズ

【決戦:ババを引いたのは誰だ】

舞台:獄門街・鉱山地区登場:PC全員、グラッジドッグス、ブラックジャケット

【状況1】

 君たちは無事、グラッジドッグスの縄張りである倉庫街へと戻ってきた。 事情を知らぬ他の隊員たちが、困惑したように声をかけてくる。「どうしたんだ、一体何が?」 しかしそれに応えるよりも早く、事態は目まぐるしく動く。 建物の周囲が俄に騒がしくなり──…「開けろ! ブラックジャケットだ!!」 次の瞬間、扉が蹴り開けられる! その先にいたのは、黒衣を翻す捜査官の姿!!

【状況2】

 俄に殺気立つグラッジドッグスへ、シルベットの鋭い声が飛ぶ。「武器を下ろせ! 絶対に撃つな!」 その指示に、ブラックジャケット・グラッジドッグスの双方に困惑が生じる。 緊張に満ちた空間の中、君たちは歩み出るシルベットが小さく囁いた声を聞いた。「何かあったら──後は頼むぞ」
 緊張感に満ちた空間の中、シルベットがゆっくりと前へと歩み出る。 彼女は手にした銃を足元へと置き、無抵抗を示すように両手を上げた。 その様を見たフォーカスライトが目を細め、眉間の皺を深めながら問う。「どういうつもりだ?」「取引をしたい。我々はブラックジャケットとの戦闘を望んでいない」 フォーカスライトはしばし思案するように思考を巡らせ──傍のブラックジャケット捜査官たちへ、指示を、出そうとした。 それで全てが丸く収められたなら、どれほどよかったことだろう。
 それが放たれたのはどちらが先であったのか。 分からなかった。 それは『同時だった』のだ。 ブラックジャケットの捜査官が、グラッジドッグスの隊員が、上官の命令を無視して引き金を引いた。 否、それは本当に、ブラックジャケットの捜査官だったのか? グラッジドッグスの隊員だったのか? 分からない。 分かることは。 ──銃声。 フォーカスライトとシルベットの体を、無慈悲な弾丸が貫いたということだけ。
 スニークが絶叫をあげる。グラッジドッグスの隊員たちが殺意に満ちる。 ブラックジャケットか、グラッジドッグスか、悪意の第三者か、はたまたそれら全てか? 極限の均衡状態を破る最悪の声は、かくしてあげられた。「──ぶっ殺せェ!!!!!」

【状況3】

 ここまでなのか? 君たちは互いに潰しあって、最後に笑うのは姿を見せない黒幕なのか? 散っていったパパラギたちの言葉が脳裏を過ぎる。 ──グラッジドッグスを、頼みましたよ。 敵対したバングの遠吠えが、遠く聞こえる。 ──死ぬんじゃねえぞ、クソ犬ども! シルベットの最期の言葉が、君たちの耳をよぎった。 ──後は、頼むぞ。
 まだだ。 まだ、終わらない。 生き残らなければならない。 生き残るために、生かさなければならない。 生き残るのだ。生かすのだ。 そのためには。 そのためには! PC1、PC2、PC3! 君たちの『力』が必要だ!

【戦闘情報】

【エネミー】

・デッドエンド・スニーク・第一話のPC1・PC2・PC3・BJオペレーター×1(戦闘に参加することはなく、パワーの目標になることもないが、フォーカスライト・シルベットをエリア4とエリア1に配置する)

【エリア配置】

 エリア4:スニーク、BJオペレータ×1、(フォーカスライト) エリア3:デッドエンド、第一話のPC1・PC2・PC3 エリア2orエリア1:PC エリア1:(シルベット)

【勝敗条件】

勝利条件:フォーカスライト・シルベット両名の蘇生(※詳細後述) or 二人が死亡する前に敵を全滅する(※詳細後述)敗北条件:PCの全滅

【備考】

・エネミーである第一話のPC1〜3は第一話のステータスをそのまま使用する。逆境に入ることはない。・第三話のPC三人はアクション「生きろ!」が使用可能となる。

■勝利条件について

 フォーカスライトおよびシルベットには【致命ポイント:2点】が付与されている。 この【致命ポイント】は、後述のアクション「生きろ!」以外で回復できない(「生きろ!」はアクションでありパワーではない) この【致命ポイント】は、ラウンド終了時に1点増加する。 【致命ポイント】が5点になったタイミングで、フォーカスライト・シルベットは[死亡]する。 【致命ポイント】が0点になったタイミングで、フォーカスライト・シルベットは蘇生する。以降、ポイントが加算されることはない。

■第一話のPC1~PC3について

 このエネミーは第一話のPC1~PC3と同じステータスを使用する。第一話を終えたタイミングで、GMによるキャラクターシートの回収やデータの保存などをしておくと良いだろう。 このエネミーは、著しい相性の不利などがない限りは、基本的に同じPLのPCを目標とする。 逆境状態に入ることはなく、それぞれのエナジーが0以下になった時点で「戦闘不能」となる。 パワーは基本的にそのPCが所持したパワーの効果をそのまま使用する。カルマを所持してはいないが、BJRにおけるカルマを消費するパワーは基本的に回数に制限があるパワーのため、そのまま使用して構わないものとする。 相性等の問題で、ゲームにならないほどバランスの偏りが著しい場合、GMは好きなように調整を入れて構わない。

■PC追加アクション

■生きろ!属性:アクション(回復) 判定:生存 or 意志 or 科学タイミング:行動 射程:1 目標:1体 代償:ターン10効果:【致命ポイント】を1点回復する。──お前らに死なれちゃ困るんだよ!

5.レイドイベント

【レイドチャレンジ:レイド・ゲーム・ジョーカー】

舞台:獄門街登場:全PC

【状況1】

 フォーカスライトとシルベットの蘇生の結果。あるいは君たちが暴動を鎮圧した結果。 戦いは終わり、双方の間に再び均衡が戻ってくる。 二人を撃った両陣営の捜査官や隊員は、潜入工作をになっていたネバーモアの構成員であることも明らかとなるだろう。 両陣営の『和解』を以て、状況は幕を引く。 それを忌々しげに睨みつける人物がいた──葬送法師だ。「は、は、はははははは!」「……ここまでやられたのは、正直、予想外でしたよ」「悪党どもの分際で、和平を以て事を終えるとは…!」 ギラギラとした、未だ宿る不穏な情念──憎悪の眼差しを以て場を見据える男に、君たちは何を告げるだろうか?

【状況2】

「────まだだ」「まだ、終わらせんぞォ!」 轟音が迸り、凄まじい揺れが大地を襲った。 それは君たちが預かり知らぬことだったが、その日、日本の民らは見た。富士の山が火を吹き、東京をマグニチュード9クラスの直下型地震が襲う。地震は地震を誘発し、中部、近畿、九州、数多の地域で大地震が観測され、活火山という活火山が火を噴いた。 海辺の民は見る。はるか彼方、まるで壁のようにそびえた水の壁が、土地へと迫らんとしていることを。九州・沖縄を中心として、観測されていなかったカテゴリー5を超える猛烈な台風が突如として地域と海を襲った。北海道や東北地方、日本海沿岸地帯では季節外れの吹雪が襲い、それは地震と合わさり数多の雪崩と化していく! だが、それでも──それほどの『予測・観測不能な』『未曾有の大天災』に晒され、おぞましいほどの数の人間が死のうとも、それは、それでも、『まだ小さかった』のだ。その男が目論んだ規模には、決して決して届かなかったのだ! 葬送法師が吠えた。 最早人の言葉を保たぬ、脳裏に直接叩きつけるような呪詛の声。 その次の瞬間、葬送法師の体が爆ぜた! いいや、それは錯覚だ。葬送法師の体が、内側から爆ぜるように膨らんだのだ! 咆哮と共に、その身が巨大化していく。倉庫街を蹴散らし、水晶の塔をも超え、観音山脈の頂よりも遥かに高い凄まじい巨体が、天の頂きに座す太陽を覆い隠す! その様はあまりにも巨大だった。獄門街を一踏みで蹂躙することも不可能ではないだろう圧倒的巨躯。それは遠く離れた東京、九州、果ては北海道に至るまで、天をつき太陽を隠す不気味な人影として目撃されたほど。 太陽が消える。日本全土へと影が落ちる。 それは、最早明瞭な人の形をとどめてはいなかった。どろどろと濁った、名状し難い、確かに不浄であると感じる『何か』が、煮凝りのようにより集まったものだった。その巨体が天を覆い、日の光を食むように遮る。そうして日本へと落ちた影の中にあるものが、瞬く間に腐り果てていくのだ! 木が、土が、建物が、腐り、朽ち、果てていく。悪臭と共に蛆が沸き、百足、蜚蠊、蜘蛛、数多の毒虫たちが湧き上がる。草木は萎び、建物はひび割れ、土は腐り、山が死ぬ。 それはさながら神話に語られる天を支える巨人が如しか、はたまた国引き神話に語られる国津神が一柱か。おぞましき、形を保たぬ不定形のダイダラボッチは、日本の全てを影へと染め上げながら、声にならぬ呪詛の中、ただ憎悪を叫ぶ!
──この国を壊し! この国を祟り!! この国を葬る!──さあ死ねッ! 滅べッ! 潰れて消えろッ! この国に未来などない! 二度と無いのだ!──我こそは葬送法師! この日の本の國に生じた影法師!──この恨み! 晴らさでェェエエエおくべきかァアアアッッッ!!!!!!
 おぞましき『天災』の中で。 それを『天災』ではないと知る者たちがいた。 それは結果として、不浄の煮凝りのような小さな街で、その『天災』へと立ち向かう者へと変わる!
 観音山脈の頂で、鍾馗が刃を振るい、人の世に仇なす魔性を示す。 遥か遠方より、不浄の儀式を破壊していた陰陽師たちは、その源たる怨霊が顕現した様を見、己の為すべき事を悟る。 踏み潰されんとする隊員たちを掬い上げながら、シルベットが吠える。 羊飼いの命令を受け、歴戦の猟犬たちは、武器を、弾薬を、歪み石を、そして何より類稀なる統率力を以て牙を剥く。 意識を取り戻したフォーカスライトは、天を覆うそれを見た。 明らかに人の手には余るそれを見て、しかし、不屈の意志を宿す男は──いつも通りの命令を、首輪付きたちへと告げた。
 君たちは英雄ではない。 正義のためではない。 信念のためでもない。 誰かのためでもない。 他ならぬ、己自身の欲望の為に、手前勝手に振る舞う悪党どもだ!
 目の前にいるそれは何だ? ネバーモアの交渉役? 人の世に仇なす怨霊? 国家転覆を企む犯罪者? いいや! 肩書きなんてどうでもいいね! 確かなことはただ一つ! そこにいるのは『葬送法師』!! お前たちの『敵』だ!!!

【レイドチャレンジ】

 全陣営共通のリソースとして、5点のカルマを場に配置する。このカルマは誰のものでもないものとして扱う。各PCのカルマをこのチャレンジで使用することはできない。 各陣営ごとに、それぞれ1度ずつ定められた判定を行う。技能値・判定値は代表して判定を行うキャラクターのものを使用すること。 判定に失敗した場合、判定を行ったキャラクターの、任意のエナジーが3d6点失われる。その上で再度判定を試みる。 全ての判定に成功した場合、葬送法師の身柄は抑え込まれ、ハッピーエンドとなる。 判定に失敗し続け、どこか一陣営が全滅し、判定を行えなくなった場合、バッドエンドとなる。日本列島は一夜にして、海の底に沈むのだ。
------------------------【判定1】 人の世に仇なす怨霊だ! 迷うな、殺せ! 盤外視座! ……技能:任意の精神技能+10%
【判定2】 死なれる訳にはいかないな! あれは俺たちの獲物!  追い詰めろ! グラッジドッグス! ……技能:任意の環境技能+10%
【判定3】 どいつもこいつも勝手なことを! 最後を決めるのは俺たちだ! 捕まえろ! ブラックジャケット! ……技能:任意の肉体技能+10%------------------------

【解説】

 葬送法師の最期の悪あがき、最後のチャレンジイベントだ。今までの鬱憤を思いっきり晴らそう。 これは変則的に、キャンペーンに登場した全てのPCが登場するイベントとなる。 判定を誰が振るかはPL同士の相談の上で行って構わないが、せっかくの最後だ。極力、PLは誰かが一人一回ずつサイコロを振れるようにすることが望ましいだろう。 演出は自由にして良い。盤外視座の陰陽師たちは遥か遠方から術式を紡ぐのかもしれないし、謎の地下鉄によって獄門街に到着できるかもしれない。グラッジドッグスの兵士たちはありったけの武器弾薬で応戦するのかもしれないし、歪み石を使って何かをするのかもしれない。ブラックジャケットの捜査官たちは……さて、どうしようね? まあ、どうにかしてくれ。 全ての判定が成功すれば、葬送法師は封じられ、これまで通りの人の形を保った状態で獄門街へと落ちてくる。そうなればあとは、どの組織がどう裁くかは、PLとGMが望むようにすればよい。(シナリオ上の描写としては、グラッジドッグスと盤外視座が争っている間にブラックジャケットが捕らえた、という顛末を想定しているが、必ずしもそれに沿う必要はないだろう)
 何人何百人何千人何万人死のうと構わない。 最後に『日本』という国が残っていさえすれば、君たちの勝ちだ。

6.余韻フェイズ

【余韻について】

 各陣営ごとの余韻フェイズを提示する。もちろんあくまで一例であり、全てこれに添う必要はない。 PCは好きに動き、キャンペーンのまとめを演出すると良い。 道中で倒れたNPCたちに代わってその組織の幹部となるのかもしれないし、これまでと変わらぬ生活を送るかもしれないし、思い切ってその組織を抜けてしまうかもしれない。やり方は自由だ。(死んだと思ったNPCが生きててもいいし、実際に死んでいてもいい)

【SIDE:グラッジドッグス】

【状況】

 葬送法師は倒れ、抵抗する力を失い、ブラックジャケットによって捕らえられた。 グラッジドッグスとブラックジャケットの間の取引も無事締結され、君たちは表向きは、本件には何の関与もしていないということになった。 そして──。 観音山脈の麓に、小さな墓碑が建てられた。そこにかけられたドッグタグに刻まれた名前を、君たちはよく知っている。 彼らは死んだ。けれど、グラッジドッグスは生き残った。「……これから、忙しくなるな」 墓碑に酒を注ぎながら、シルベットが呟く。彼女は君たちへと振り返り、毒気の抜けたような笑みを向けた。「また、アンタ達をこき使うことになりそうだ。頼られてくれるかい。……それとも今度こそ、愛想つかれちまったかね」
 君たちの言葉を受け取り、シルベットは腰をあげる。あとはもう、いつも通りの二代目隊長が戻ってくる。「野郎ども! ……いいや、素敵なお嬢と魅力的な女性陣、そしてその他のろくでなしども! 狩りの時間だ!!」「ブラックジャケットが金を出すとさ。散々舐めた真似をしてくれた、ネバーモアどもを狩り尽くせ!」「グラッジドッグス、出撃だ!」

【SIDE:盤外視座】

【状況】

 葬送法師は倒れ、抵抗する力を失い、ブラックジャケットによって捕らえられた。 つまり、君たちは仕留め損なった。「あーあ。仕方ねぇ、折を見て獄中の奴を仕留めよう」 だが、鍾馗はまだ諦めてはいないようだ。 焼け跡となった荒夜髭神社の能舞台にて、君たちは今再び集う。(「カツコ様を失ったのは痛手だが、お前たちだけでも生き残ってよかったよ、ホント」 or 「カツコ様も落ち着いたらそのうちひょっこり戻ってくるだろう」)
「さて。仕留め損ないはしたが、今回ばかりはよくやった、お前たち。報酬は何がいい? いつもより弾むぜ」
 どこまでも打算的な言葉。それに、火霞羅州と黒不浄がまず声をあげる。「いつも通り、と言いたいとこですがね。虚構操連どもに焼かれた屋敷を再建する必要が。人手を集めるのを手伝っていただいても?」「新しい体……というか! 俺の体いまブラックジャケットに証拠品として押収されてるらしいんですが! どうして!?」 鍾馗はそれぞれの申し出を気安い調子で請け負った。「わーかったわーかった、やるやる。真名鶴、お前はどうする?」「わ、私は………………………………………………いつも通りで、大丈夫、です」「はー、じぇいけーの割に欲が無いねえ。じゃ、金な。お前らは?」 鍾馗の視線が君たちへ向けられる。
 あくまで君たちの繋がりは金。友ではなく、間をとらねばならぬ仲。それが盤外視座だ。 暗闇の闘者、盤外視座に光が射すことはない。それは望んでも手に入らないものである。 だがしかし、その闘いは今宵もまた……。
 さて。此度の戦働きの報酬に、君たちは何を求めよう?

【SIDE:ブラックジャケット】

【状況】


 葬送法師は倒れ、抵抗する力を失い、ブラックジャケットによって捕らえられた。 葬送法師の目的は、日本という国を滅ぼすこと。そのために、表向きはネバーモアの交渉役として動きながら、その裏でクーデターを指揮し、京都を始めとした日本の地下に呪術を行使するための場を設けた。【第一話のPC1】を含めた自身と接触した関係者たちを洗脳し、都合よく動かしていたということも、明らかとなるだろう。 それは古く、古く、練り上げられてきた憎悪だった。具体的な計画が動き始めたのは戦後。国を求める超人種たちを国内へと招き入れて火種を培い、超人大国と化したこの国の中で、その亀裂が育つのを待ち続けた。 全てはただ、この日本という国を滅ぼすために。 真実が明らかとなった今、日本は今、上へ下への大騒動。当然、その余波は今回の立役者である君たちブラックジャケットにも及ぶ。 フォーカスライトの傷も癒えぬ内に、G6・グラッジドッグス・ブラックジャケット連名でのネバーモアの強制捜査という新たな大仕事が舞い込んできた。
「今度こそ、直前で誰か死なないよね?」「不穏なことを言う前に手を動かせ。グラッジドッグスに流れ弾で撃たれるぞ」
 そんなスニークとフォーカスライトのブラックジョークが君たちの耳にも届く。 君たちが首輪付きとして、またこき使われる日も近そうだ。 さて、それまで、どう過ごしていよう?

【SIDE:ネバーモア】

【状況】


 葬送法師の望みは日本の滅び。 では何故、長きにわたるその計画が動き出したのが『今』であったのか? それは……。
 超人主自治区のどこか。 ネバーモアの所有する拠点の一つ。
 その男は、トランプを切っていた。 執拗に、執拗に、シャッフルを繰り返す。 対峙する席は空席だ。男はただ、トランプを切り、カードをめくる。それを繰り返すだけ。 男の手元が僅かに乱れる。トランプの中から、カードが一枚、床へと落ちた。 それはジョーカー。
 超人特殊部隊ネバーモア。 そのトップが誰なのかは、未だ公表されていない。 日本政府とのやりとりは、葬送法師なる人物が交渉担当として姿を現すのみ。 だから、その人物が誰なのかを、誰も知らない。
 俄に、部屋の外が騒がしくなる。 怒声、罵声、銃声、足音──。 誰でも無い誰かは、その音を聞きながら、床に落ちたジョーカーを拾い上げる。 それと同時、部屋のドアが蹴り開けられる。「開けろ! ブラックジャケットだ!」
 拾い上げたジョーカーを手に──ネバーモアのトップ、未だ公表されない誰か、生前のヘルムズマンと最後に接触した人物、葬送法師の背を押した者──全てを場外から見届けた道化は、観念したように手を挙げ、肩を竦めて振り返った。 最後の言葉は、もちろん──…。「……ゲーム・オーバー!」

【レイド・ゲーム・ジョーカー/完】

【成長点】

【グラッジドッグスPC成長点】

基本成長点:5点成長点ボーナス:最大4点追加ボーナス:1点―――――――――――――――合計:10点(最大)

【キャンペーン最終リザルト】

ブラックジャケットPC:8点盤外視座PC:8点グラッジドッグスPC:10点―――――――――――――――キャラクター作成時に配布した30点は、このキャンペーンクリア後、任意のキャラクターに対して再配分して構わない。

7.キャンペーン全体解説

【キャンペーンの背景】

 このキャンペーン内には三人の葬送法師が登場する。まず、第一話で登場する影武者の葬送法師。これはG6からの依頼を受けた外部のヒーローだが、後述する三人目の葬送法師の手によって精神を操られている。PC1へと接触し、ブラックジャケット内部への干渉を成功させるに至ったのも、この影武者を介してのことだ。そしてこの影武者は後に葬送法師として殺され、東京・神田川に死体を捨てられ、都内へと穢れを循環させる呪物としての役割を担った。
 二人目の葬送法師は、第二話で登場する神官である。彼自身は清め役の役目を帯びた一族のものである(火霞一族における声聞師のようなものである)。本来ならば正道に則った実力ある陰陽師の一人であったが、日本政府を介して三番目の葬送法師の洗脳下へと置かれることになってしまった。
 三番目の葬送法師は、本来のネバーモアの交渉役たる人物である。いわゆる本物の葬送法師と言って良い。その正体は、天津神に席を追われた国引きの国津神、大和朝廷と対立し土蜘蛛と呼ばれたまつろわぬ民たちの恨み、そして望まぬ役目とともに長らくを穢れに触れ差別され続けてきた、葬送法師としての役目を押し付けられた者たちの怨念が、一個人としての形を成したもの。その在り方は妖怪というよりも、怨霊と呼ぶべきものに近しい。
 その積み重ねられた恨みの目的は、すなわち「日本という国の消滅」。 けれど葬送法師は慎重だった。彼は形を為して即座にことを起こしたのではなく、長らくを下積みへと当てた。彼の望みが最も叶う可能性が高かったのは第二次世界大戦最中、彼は人同士の争いに乗じて人知れず日本への呪いを振りまき、この国が消滅するよう働きかけ続けた。しかしそれは戦中に姿を現し世界へ存在を認識されるに至った超人種という存在、その過程で起きた混乱の中、不完全な形で幕を引く。日本は戦争に敗北こそしたが、国一つが消えるには至らなかったのである。あるいはそこには、人知れず国の崩壊を防いだ、当時は確かに存在していた崇高な精神を持つ英雄(ヒーロー)たちの活躍があったのかもしれないが、それらは全て記録には残されていない話だ。
 そのため、葬送法師はさらに身分を隠し、時を待った。在日米軍との交渉を担い、国防を超人へと委ねさせた。そして「この国本来の民ではない」超人種たちが多く国内へと移住する環境を作り出し、自身は交渉役として彼らと日本政府との橋渡しの役目を担う。
 葬送法師はひたすらに待った。力持つ超人種たちが、英傑ではなく凡夫へと変わり果てていくのを、日本という国が凡夫たる超人へと依存していくのを。 あるいはそれは、いずれはゆっくりと実り、超人大国・日本を少しずつ自然な形で崩壊させていく呪いであったのかもしれない。しかし、そうした葬送法師の思惑を知り、背を押し、決定的な引き金を引かせた存在がいた。それはG6代表ヘルムズマンと接触後、急遽として組織の方針を転換し、クーデターの計画を発案した、ネバーモアのトップを担う『誰か』であったのだ。

【Q&A】

Q.なんでヘルムズマンは死んだのに動いてたの?A.葬送法師③が『影繰り』で操ってたよ。黒不浄の体も同じ方法で操ってたよ。 黒不浄の体を回収して再利用したのは彼の体は穢れの巣窟みたいなものだからだよ。便利に再利用してたよ。 ヘルムズマンの死体と穢れ爆弾黒不浄の体を使って荒夜髭神社や他の神域を徹底的に穢してたよ。
Q.なんで葬送法師①はPC1に自分の死の予言を告げたの?A.葬送法師③に操られていたよ。 あの予言の接触で葬送法師③は葬送法師①を介して第一話のPC1に『影繰り』をかけたよ。
Q.葬送法師②は誰に操られてたの?A.葬送法師③だよ。正確に言えば葬送法師②以外も日本政府側の偉い人たちがいっぱい操られてるよ。交渉役としての立場を使って少しずつ少しずつ手駒を増やしてたよ。 盤外視座や鍾馗が日本政府から襲われたり狙われたりしたのはそのためだよ。京都秘密地下路線は葬送法師③がずーっと昔から計画してたよ。はっきり動き出したのは戦後からだよ。
Q.葬送法師①を殺したのは誰?A.誰でもいいけど、多分葬送法師③だよ。 要らなくなったので、神田川を穢す呪いとして再利用したよ。
Q.レディ・レンズが撃たれたのは何故? 誰が撃ったの?A.グラッジドッグスに調査の手を向けさせて四面楚歌にする為だよ。 レンズを撃ったのはネバーモア派の誰か(バングかもしれないね)だけど葬送法師③の術がかけられてる第一話のPC1には別の人に見えてたよ。
Q.グラッジドッグスの誘拐は計画通りだったの?A.計画通りだったよ。彼らがそういう風に動いてくれることを期待して情報をリークしたりしてたよ。 目的は対鍾馗に関するボディガード兼目眩し。クーデターの手駒になればラッキーぐらいの認識だったよ。
Q.葬送法師の計算外は?A.エゴイストの集団のはずの盤外視座が団結し、傭兵集団のはずのグラッジドッグスが思ってたよりも強くて、さっさと動きを封じるつもりだったブラックジャケットに対してグレート・ワンが21時間の猶予を与えちゃったこと。