白馬岳主稜

5月3〜5日

 

4月29日(土)に日帰りで巻機山山行後の中3日空けての春山合宿、体調と体力の心配もさることながら、自分が主稜隊メンバーに入ってしまっている事。白馬岳主稜を調べると雪稜バリエーションルートとしてとても有名で日本を代表するクラシックルートのひとつであるらしい。

まだまだ山を始めたばかりのような自分が行っても大丈夫なのか不安を抱えながら合宿を迎えた。

 

1日目、猿倉登山口から白馬尻小屋テント場まで移動。テント設営後、天ぷらのランチ。

食後の運動を兼ねて、明日の取り付き点を見に行く。明日は絶好の天気で風も無いらしく、トレースもバッチリありそうだと言うことで少し安心する。

そして少しお昼寝をして、夕飯の焼肉を食す。

(食べて寝ての贅沢な1日だ)

明日の為に沢山お肉を食べて力を蓄える。

1日目は早めに就寝し明日は2:30に起き、準備をして4時に出発予定だ。

 

2日目、たっぷり朝食を食べ、温かい飲み物を飲み準備を始めた。アタックザックと共に置いてたはずのアイゼンが見つからず、とても焦った。ピッケルと一緒に外に出しておけば良かったと後悔した。もともと主稜に対して不安の中に迎えた朝だったので、それが拍車をかけて焦りの気持ちのまま出発してしまった。

 

昨日確認していた取り付き点からスタートして、急登を登りひと段落した時、既に太陽の光で雪がキラキラ反射して眩しかったのでサングラスをかけようとして忘れた事に気付いた。

もう戻る事は出来ないので雪目になる事を覚悟する。

交代でかけよう、と花木リーダーがサングラスを貸してくれた。一つ峰を越えるごとにサングラスを返し、角本さんと三浦さんも交代で貸してくれた。

急登が続きふくらはぎが痛くなってきたが、途中からトレースがしっかりある辺りは足が楽になってきて助かった。

花木リーダーと角本さんと三浦さんがロープを交代で持ってくださっていたのだが、自分も主稜隊のメンバーなのだから持つべきだと思いながらいたが誰も回してこなかった。

もっと体力をつけてロープも持たせても平気だと思われるようになりたいと思った。

ナイフリッジが何度か続いたが無風の為、恐怖感はなく、アイゼンが引っかから無いように注意して進めば良かった。両側共に落ちたら危険だが右の方に落ちた方が危ないな、と思いながら進んだ。

所々雪が溶けてしまって露出した岩場の上を進んだり、氷柱が支えの雪の階段を進んだり、その辺りはとりわけ危ない道もなく、良いペースで頂上直下の壁まで来られた。

途中トランシーバーから古澤さんの声が聴こえて、白馬岳の頂上から綾ちゃんとまあちゃんの声が聴こえた時は嬉しかった。

 

YAMAP等の記録で見ていた60度の壁は下から見ると斜度が凄かった。

花木リーダーがロープを持って雪壁の途中に支点を作りに登り、待ってる間の足の置き場も崩れやすい岩の上で耐え続け、ついにアッセンダーで登り始め、ピッケルを深く差し込んでそれを手掛かりにアイゼンのキックステップで登って行く。雪はグズグスだったが、ピッケルが刺さるので何とか登る事ができた。

次は頂上迄の登り30m程をまた花木リーダーが登って支点を作ってくれた。

角本さんの後の順番でアッセンダーで登った。

その最後の登りの斜面の雪は今まで以上にスカスカになっていてピッケルが全く刺さらない。アイゼンも蹴り込んでも下へズルズルと落ちていく。こんな登りは初めてでなかなか進めずにいると花木リーダーが「ロープを持っても大丈夫だから」と声を掛けてくれたので、情けないけれどほぼロープを掴んで頂上迄登ってしまった。

頂上に着いて暫く立ち上がれなかった。

今まで登ってきた道とその向こうに広がる山々を見る事が出来ての感動や、情けない登りをしてしまった自分に対する悔しさや、4人で無事に登頂出来た喜びが混じり合った何とも言えない感情が渦巻いた。

 

次に挑戦する機会があるとしたら、その時までにグズグスの雪だろうと登っていける自信のある自分になっていたい。

 

大雪渓のほぼ半分をシリセードで滑り降り、ガンガン下山していき、大雪渓隊が待つテントへ向かう。古澤さんと綾ちゃんとまぁちゃんと握手を交わし、無事を喜び合う。

主稜隊が戻るまでに、テントを撤収して荷物をまとめてくれていて、さらにお湯を沸かしてくれて温かい飲み物を用意してくれている事に感謝しかない。本当にありがたかった。

皆んなが仲間のために思いやりを持って動けるって素敵だなと思いました。

 

山行を終えて、自分には白馬岳主稜は10年早かったな、という思いがあります。結局全て助けてもらいながらも何とか登頂出来たという貴重な体験が出来て、まだまだ学ぶ事の多さも知る事ができたのは、主稜隊に入れてくださった古澤さんはじめ、一緒に参加してくださった皆様のお陰だと思います。

 

是非また来年もチャレンジしたいと思います。

 

大塚知子