那須朝日岳東南稜登攀

 

実施日:2023年5月26日〜27日

参加者:9名

 

5/26 22:30武蔵浦和駅→所沢IC-東北自動車道-那須インター-道の駅那須1:30

5/27 道の駅那須仮眠▲-5:00起床→峠の茶駐車場6:30→東南稜取付7:30→朝日岳12:00→

     →駐車場13:00→北温泉経由→浦和駅18:30

 

那須朝日岳の東南陵は、バリエーションルートである。

つまり、一般の登山ルートではない。

時には、ロープや下降器具などを要して登攀を駆使しながらも

ルートファインディングしながら頂上に詰める。

 

東南陵へは、登山口からすぐ脇に外れ、沢筋で、軽いやぶ漕ぎしつつ1時間ほどで、

防砂堰の脇の取り付きに到着する。ハネースを装着する。そこから、本格的に登山開始だ。

・火山特有の乾いたザレ場に足を取られながら直登し、

・岩場と脆いガレ場をルーファイしながらも右に進路を取り

・「門」という岩峰にてロープで確保した直登10m(1p)

・すぐに、ギヤップに向け7mの垂直懸垂

・ギャップからのスラブ状の直壁10m(2p)

・さらにもろい、瓦ほどの大さのガレ場を茶臼岳を横目に、稜線通し

・最後のスラブ状の登攀15m(3p)

・たくさんのギャラリーのいる朝日岳に登頂!と、展開がめまぐるしく変わり、また、それぞれ緊張をともない充実した登山をぎゅっと濃縮。4時間で詰め上がる。そう、まるで、アルパインの宝石箱ゃ~。と言いたくなる。

今回は、アルパインとしては少なくない9人でのアタックだ。

バリエーションの岩場では、支点に溜まれる足場も限られている。

9人同時に溜まる場所もない為、まだ、明け始めた朝食の段階で、核心の「門」でのアタックの段取りを総括F代表とH木リーダと話しあった。

最初の「門」の1p目のリードは、私である。

アルパインでのリードクライミングではロープで安全を確保しながら登攀する場合、「リード」と「ビレイ」との役割で最小人数2名で登攀する。

「リード」は後続の為に、ロープを引き上げ、自身は、ハーケンにカラビナなどで自身のロープをフックさせ中間を取りつつ後続の登攀の起点となる支点構築を目指し、「ビレイヤー」は、リードが滑落した場合、0地点から流れるロープを止め、リードのグランドフォールを防ぐため、サポートする。

マルチピッチでは、ときに、Aさんが「リード」→「ビレイ」。Bさんが、「ビレイ」→「リード」と、役割を変えながら、

壁面に支点を構築し、ビレーヤーを引き上げロープや道具を駆使しながら頂上を目指す。

「門」では、<1p目>、<垂直懸垂>、<2p目>それぞれ3本のロープを駆使し、

リードとビレイは、役割を変え、タイパ良く9人が段取り良く進んでゆくわけである。

私においては、登山を始めて1年と半分過ぎたところで、初のリードである。

朝日岳も初めてであり、少し緊張もするところだ。

「K本さん、初リードなので、記録をお願いします。(笑)」とH木リーダーが問答無用で、

登山口へ向かう朝の車中で、ニコニコと笑った。「・・・はい。分かりました。」と私。

「初リードなので、記録をお願いします。(笑)」と2回目。ニコニコ。な?なにが、うれしいのだろう?

うふふ、リード期待してますよ~。記録も、楽しみにしてますよ~。ということか?

「落ちたら、記録書けないので、その時は宜しくデス。。」と応える。

朝日岳東南陵は、フレスコでは何度か山行が組まれているが、いずれも霧がかるか、

那須特有の突風にあったりとしていたようだが、今回は天気に恵まれた。

西に目をやると百名山の茶臼岳が青空に火山特有の黒茶系の山肌を顕わにしている。

かすかに、風に運ばれ硫黄の臭いがする。

足を取られながら、もろい岩肌を落石に注意しながら進む。

けっこうな急登にルンゼ状な為、落石は後続の頭上に大きな石を落とす事になる。

漬物石ぐらいの石が、平気でぐらっと動く。そっと押すように、手をささえて登攀していく。

緊張しながらも、9人が、大きな落石もさせず、ずんずん高度を稼いでいく。

普段の鍛錬の賜物か、「門」という岩峰が正面に遠く見えてきた。異質な存在感がある。

この「門」は、横からみると「M」という形になる。モンの「M」か?「M」の真ん中の谷の部分を垂直懸垂で降りる訳だが、稜線上で正面から見上げても、なんと「M」という形だ。

どこから、見ても「M」にみえる不思議な岩峰だ。上から読んでも、下から読んでも、「山本山」。と思っていたら、「門」の基部に到着。1P目、リードだ。クライミングシューズに履き替えた。2本のロープをタインインループに8ノットで固定する。

登攀すると思ったより岩肌は、つるりとして掴みどころが少ない。半分ぐらい進んだが、何よりハーケンが見当たらない、中間が取れない。「どこか、中間を取らないと、落ちたら死ぬぞ。」とF代表から声がかかる。逆に一度下り、大きなピナクルにテープスリングにてクイックドローをかけた。

だが低い位置でかけても、次の厳しい位置に中間がない。次はどうしようか?そのまま、まっすぐ登る事は可能だが、、と、グッと、そのまま登り切り、やはり上部の小さめのピナクルにテープスリングとクイックドローをかけた。後続はいけるか?と思いつつ1p目を登りきる。

鞍部には、支点構築の候補にハーケンが離れて2か所。それぞれ、なぜか1個ずつだ。本来は2個ほしい。最初は、登りきった、すぐの位置の右のハーケンに支点構築を試みた。

だが、最後にビレイヤーを引き上げるときに壁のような鋭角な岩に干渉して引き上げれない事を想定。途中でやめて、奥まった位置に、ハーケンとピナクルにロープスリングで、流動支点を作った。離れた位置に支点を取ったので可動域がほしいからだ。やはり、こちらのほうが、引き上げが楽だし、後続のセルフビレイの確保も登り切ったすぐの支点のほうが安全を担保しやすいだろう。

ロープが2本だったので、それぞれロープをクローブヒッチで固定した為、時間がかかってしまった。

後続のH木リーダに支点構築をチェックいただき、概ね合格した。

登攀ルートにおいては、やはり正規ルートは右に巻きながら

登るほうが、安全ではなかったのか?との事。いざ、登るとなると急いでしまうものだ。

次はギャップに向けて垂直懸垂。懸垂用の鎖がしっかりと打ち込まれている。

1人目で降りた。今回は短い懸垂で問題ないが、

1人目は、ロープの絡まりをほどきながら、到着地の足場までロープが届くかを確認しながら下降していく。2p目は、H木リーダだ。10Mの直壁をスラブ状の正面でいくのが容易だが、それでは、歯ごたえがない。ということで、手がかりが少ない高度感のある谷筋側のカンテから攻めた。アルパインでは、あえて難しいルートを取ることも醍醐味のひとつだ。私も谷筋を選んで登攀した。足にかかるのは、ほんの少しのクラックだ。クライミングシューズにおいては、少しの段差もキャッチできる。さすがだ。これで、前穂の北尾根のチャレンジにも少し自信が持てる。

1P目のクライミングを終えたフレスコの精鋭も、垂直懸垂を日和田の研修の成果を見せるよう手際良く下降していく。2P目直壁は、個人のスキルに合わせ、スラブ状の正面か、谷筋のカンテかを、それぞれ選択してクライミングを楽しんだ。ところで、この「門」の2pと垂直懸垂の様子を、フレスコHPの山行写真にて、お時間があればご覧いただきたい。ドローンを駆使したように、垂直懸垂を対面から俯瞰で撮影できたり、逆に登攀している最中を等位置で撮影できている。

これは、「M」という形がダイナミックな構図を作っているからだ。

バリエーションらしい、人感のない絶景とクライミングシーンをよく活写していると思う。

この後、瓦のような大きな岩が重なり合う不安定なガレ場を尾根沿いに直登。

最後のスラブ状の登攀15mをG藤さんがリードを務めて無事、朝日岳を登頂。

お互いを称え、朝日岳東南稜登攀を終えた。ご指導いただいたF代表、H木リーダありがとうございました。

天気も良く、那須の登山道は、大勢の人がそれぞれ食事をしたり、

汗拭きつつ登山を楽しんでいる。

我々は、たくさんの登山客にまぎれ、途中の茶臼岳には目もくれず下山する。

すでにヘルメットも、ハネースもリックの中。先ほどまで、果敢にバリエーションに挑み、朝日岳東南稜を制覇した9人とは、誰も知らない。

 

記録:R・.K