雪の八ヶ岳阿弥陀北稜
2023年4月8日(土) ~ 9日(日)
参加者6名
◆行動記録
4/8 7:30 新宿西口集合 - (中央道小淵沢IC経由)→10:15 美濃戸口駐車場 - 10:35 出発 → 14:15 行者小屋 (テント設営)
4/9 3:30起床-5:30出発 → 7:00 阿弥陀岳北稜取付き→ 10:15阿弥陀岳山頂→
12:30 行者小屋(テント撤収)→ 15:00 美濃戸口 - (鹿の湯温泉経由)
→ 20:45新宿西口、解散
◆ 山行記録
阿弥陀岳は八ヶ岳連峰の中で赤岳、横岳に次ぐ第三の高峰(2805M)であり、山頂は360度の眺望の良さでも知られる。 その北稜は積雪期の人気のバリエーションルート。二つの岩稜箇所を含み、ロープワークが必要。筆者は、3月に初めての日和田ロープワーク研修に参加し、今回が初めての実践体験となるロープワーク初心者。正直言って、期待より不安が大きい。
初日は曇り。早い春の到来で美濃戸口は全く積雪なし。雪山でのテント泊の為、荷物多く各自歩荷のごとく大きなザックを担いで汗搔きながら歩く。美濃戸登山口から南沢ルートを取る。あたり一帯苔むした箇所を進むと次第に凍結箇所が多くなり、Hリーダーよりアイゼン装着の指示あり。直後から登山道はアイスロード状態が連続した。
予定より早く、14:00過ぎベースキャンプ地たる行者小屋に到着。F代表がテント設営箇所を決め、その後全員でスコップ使い、雪を踏み固めて地ならし、二つのテントを設営。個人装備をテント内に入れたのち、雪を鍋に入れてバーナーで溶かし、お湯を確保しつつ、テント内の温度を上げて、6名全員が一つのテントに集まり、暖かい飲み物でようやく一息つく。その後、飲酒、夕食。その間にF代表よりロープワークの説明あり。翌日の注意点、各種フリクションノット(プルージック、クレムハイスト等)、宙づり状態からの救出方法等。21:00就寝。しかし、寒気が強く、眠りが浅かった。夜から寒気が入り込んで来るという天気予報が的中した。翌朝 3:00起床。再び一つのテントに集まり、朝食。その後、それぞれテント内でハーネス含め衣服を整え登山靴も履いた後、テントの外に出て、アイゼン装着。既に夜は明けている。曇り空だが雲の流れが速い。
5:30 行者小屋出発。雪山登山らしく、道無くトレースも無い樹林帯をずんずんと横切って、尾根道に出る。視界が一気に開けて、鮮やかな雪の八ヶ岳の山並みが目に飛び込む。ここからようやくトレースのある道を進む。空はいつしか雲が殆どなくなり、この日の快晴を確信する。出発から1時間半ほどで第一岩稜に到達したが、F代表の判断によりロープは使わず、全員自力で登攀する。筆者は第一岩稜に到達したことすら認識せず、ひたすら目前の雪の急斜面と格闘しながら登り、後で聞いたら、あれが第一岩稜だったと知った次第。
第二岩稜の取付きは岩がむき出しとなっており、ここから遂にロープワーク開始。入念にロープを準備する。その間、強風に寒気が厳しい。粉雪も舞い、ゴーグルを付けた。遥か眼下に出発地点の行者小屋の屋根が見える。先ず、Hリーダーがリードとしてアイゼンで岩をガリガリとひっかきながら、ひとり登り始める。その姿を横から見ていた筆者には、晴天に遠く硫黄岳あたりの山肌が背景としてよく見えた。テレビや映画で見たアルパインクライミングの世界であった。Hリーダーの支点確保により順次、アッセンダーという滑落を防ぐ安全器具をロープに装着して登る。筆者の番が来て、勢い込んで登り始めるも、ほんの2mほど登ったところで自分のロープスリングがアイゼンに引っ掛かり、出鼻をくじかれた。しかし、その後、徐々に要領をつかみ登って行った。3ピッチ目に岩稜帯を越えて、10m余りのナイフリッジにさしかかる。ここは雪が少なく、脆い岩肌がむき出しになっている箇所が多く、ロープで安全確保されているとはいえ、なかなかスリリングであった。このナイフリッジを通過して、ようやくロープワーク終了。
そのあとは、雪上を10分程登り、遂に登頂。辿り着いた山頂は360度完璧な快晴に、日本の名峰の大パノラマ。近くは赤岳から蓼科山までの八ヶ岳連峰全貌に、南アルプス、中央アルプス、更に北アルプスまで冠雪した山並みが完全無欠とも言える状態で青空に映える。筆舌に尽くし難いとは正にこのこと。勿論、富士山の孤高の雄姿も。
登頂の歓喜もそこそこに、下山に向かう。今度は一般道を通るが、すぐに急斜面にさしかかりチャレンジは続く。前向きには進めないので、雪の斜面に向かい合う形でダガーポジジョンでピッケルを打ち込み、キックステップで降りていく。自分にはほぼ垂直に見えた斜面は一度滑り落ちると、数十メーター一気に落ちてしまう。慎重に一歩一歩下っていく。筆者は慎重になりすぎて「流石に遅いかな」と思ったら、やはりその後のF代表より指摘を受けた。難所を越え、12:30 行者小屋に帰還し、テント撤収。一度外したアイゼンを再度装着して下山再開。昨晩からの寒気に登山道の凍結は前日以上に進んでおり、アイゼンでも滑って転倒しかねず、慎重に進む。最後の1時間あまり、ようやく凍結箇所が消えて、安心して歩けるようになり、15:00 美濃戸口駐車場に到着。
今回、ロープワーク初心者かつバリエーションルート(しかも雪山)を初めて体験する素人同然の筆者を指導して下さったF代表、折々に親切にサポートして頂いたHリーダー他参加者の皆さんに心より感謝します。山頂から見た絶景は、これ以上の景色と生涯出会えるであろうかと思えるほど感動的でした。
記録TT