黒部川下ノ廊下
2023年10月7日(土)~9日(月祝)
参加者6名
【行動記録】
10/6晴れ 1:30道のさかきた 仮眠
10/7晴れ 3:00起床3:30出発→4:20信濃大町駅駐車場→タクシ→5:30扇沢→
6:15関電バス→7:00黒部ダム→10:00黒部別山谷出合→11:50十字峡→
14:20仙人谷ダム→15:30阿曽原温泉小屋 テント泊
10/8曇/雨 3:00起床4:30→欅平駅9:30→10:01欅平駅(黒部峡谷鉄道)→11:20宇奈月駅
→11:41宇奈月温泉駅(富山地方鉄道本線)→12:11電鉄黒部駅(徒歩17分)
→12:36黒部駅(あいの風とやま鉄道線)→13:27糸魚川駅→15:13糸魚川駅
(大糸線)→17:13信濃大町駅→18:50明日香荘(温泉)→20:00道の駅さかきた
10/9雨 5:00起床5:30→武蔵浦和駅8:50
黒部川下ノ廊下とは
「下ノ廊下(しものろうか)」とは,北アルプスにある黒部湖を境にして黒部川の下流にあたるエリアのことで,一般的には黒部ダムから仙人谷ダムまで南北にのびる黒部川沿いのルートを指す。高度感のある非常に狭いルートが続き,岩盤を「コ」の字にくりぬいたような人工的な道がほとんど。実は,戦前から続く電源開発の調査目的で作られたもので,その名残から「旧日電歩道」とも呼ばれている。また,黒部ダムを作る時に国と関西電力の間の取り決めで関西電力が費用を出して整備している。例年9月中旬から10月のみ通行可能となるので,かなり短い期間しか通ることができない。
山の季節は進んでいる
道の駅で仮眠をとり,3:00に起床すると外はかなり寒い。もう夏が終わったことを実感する。道の駅から信濃大町駅に車で移動し,ジャンボタクシーに乗り換え,扇沢を目指す。タクシー内はなぜか冷風がかかっていて,一同さらに凍える。扇沢には5:30到着。チケット売り場には,すでに15人ほどが並んでいた。爺ヶ岳を眺めると,雪がうっすら被っている様子を確認した。山は確実に冬へと向かっている。チケットを購入し,改札口前で改札が開くのを待つ。待っている間にも,観光客や登山者が続々と増え,列を伸ばしていく。隣にいた登山者は剱岳の源次郎尾根に行くそうで,Hリーダーと会話を交わしていた。改札が開き,トロリーバスへと向かう。すると,遠くには雪をまとった立山の山々が見えてきた。雪をまとった山はカッコいい。
登山者でいっぱいの下ノ廊下を歩く
三連休の初日。下ノ廊下を歩きたい登山者は多くいるはずである。我々も,黒部ダム駅でトロリーバスをおり,「登山者出口」と書かれた看板に沿って外へ出る。黒部川を渡る前に衣類調整をしていると,木橋前の小屋に詰めている係の人に「もう46人は入っているね」と人数をカウントしている数字を見せてくれた。(阿曽原温泉のテント場は大丈夫だろうか…)と一瞬不安がよぎる。木橋を渡ると,運よく黒部ダムから放水がされていた。そのため,黒部川の清流は勢いを増し,ゴーゴーと音を立ててる。下ノ廊下は,この黒部川の岩壁をへつるように進んでいく。
まず,内蔵助谷出会までは,ハイキングコースのような道を歩いていく。しかし,道はぬかるみ,岩は朝露で濡れて滑りやすくなっている。この足場が滑りやすい状況が,下ノ廊下ではずっと続いていた。棒ノ木平の少し手前で,Hリーダーから「テント組は先行して,テント場の確保をお願いします」と指示があった。そこで,私とSさんは先行別動隊として,先を急ぐことになった。棒ノ木平の樹林帯を抜けると,徐々に黒部峡谷らしい景色になってくる。そして,岸壁を削り掘った狭い水平歩道が見えてきた。
いよいよ,下ノ廊下を歩く。滑りやすい箇所や足場の悪い危険な箇所は,スリングで作った簡易ハーネスを使って安全に歩いていく。歩道には,番線が張ってあり,とてもよく整備されている。あとは,気を抜かないことだ。なんせ,右側数十センチは垂直に切れ落ちている崖なのだから。
黒部別山谷出会には,丸太で作った高巻き用のはしごがある。このはしごを垂直に登っていくが,なかなかの高度感で緊張する。それにしても,番線や丸太橋,はしご等を整備してくれている人に感謝したい。そのおかげで,このような素晴らしい絶景の中を歩くことができているのだから。「番線が無かったら,我々死んでますね笑」とSさんと冗談を話しながら道を歩く。
下ノ廊下は,全てが絶景だが,その中でも有名な箇所がいくつかある。まずは,白滝峡である。道の岩がせり出していて,少々歩きにくいが,狭い岩壁の間を黒部川が勢いよく流れ,白く泡立つ激流を間近に見ることができる絶景ポイントである。次に,十字峡である。剱沢と棒小屋沢の流れが合流する地点である。ここには,十字峡吊橋がかかっていて,ちょうど吊橋の真ん中から十字峡がよく見える。しかし,吊橋が揺れてゆっくり見ている余裕はあまりなかった。そこから,標高を上げて,岩壁に作られた水平歩道を歩くと,崖の下に半月峡やS字峡が見える。とても絶景だが,高度感があり番線をしっかり手で掴んで景色を楽しむ(?)しばらく歩くと,黒四発電所の送電線口が2つ見えてきた。ということは,そろそろ仙人谷ダムか?と期待に足取りも軽くなる。
仙人谷ダムに向かって下っていく。すると,東谷吊橋が現れる。この吊橋も長い。板とワイヤーだけの吊橋で,かなり揺れる。とにかく,対岸を目指してゆっくり歩いた。そして,仙人谷ダムに到着。ダムの施設内を通るが,硫黄の匂いと熱風を感じる。これが高熱隧道か。Sさんは,吉村昭『高熱隧道』を読んできたらしく,小説の内容を教えてくれた。自分も読んでみたくなり,下山したらAmazonでポチることにした。仙人谷ダムからテント場のある阿曽原温泉小屋までは,あともう少し。だが,ここからの急登がとてもキツい。呼吸を整えながら,ぐいぐいと登っていく。
そして,再び水平歩道に出て,歩くこと1時間。阿曽原温泉小屋に到着した。時間は,14:30頃。Hリーダーの計画通りである。テント場を見ると,まだ張れる場所が残っている。さっそくSさんとテントを張り始める。我々の後に来た登山者が「ここいいですか?」と聞いてくるが「いやもう張りますので…」と場所の取り合いである。なかなか良い場所にテントを2張,設置することができた。これで,Sさんと自分の任務は完了である。そして,1時間後,後続隊が無事に到着し,さっそくビールで乾杯をした。乾杯をして,のんびりした後,テント場から数分下った先にある露天風呂へ向かう。風呂は1つだけで,1時間交代で男女が入れ替わる。露天風呂に脱衣所はなく,あるのは浴槽とスノコのみである。行くと浴槽には,所狭しと男たちが体育座りで入浴している。これは,まだ入れないなということで,浴槽の奥にある高熱隧道(サウナ)へ向かう。中は真っ暗で,あまり様子がわからないが,熱気がこもっていることはわかる。湯気がトンネルの中からもくもくと出ている。HリーダーとSさんは,小説『高熱隧道』の話で盛り上がっていた。その後,浴槽が空き,体を小さくして,温泉に入る。目の前には,黒部の自然,そして温泉。なんと贅沢なひと時だろう。テントに戻り,お湯を沸かして夕食の準備をしていると,僅かに雨が降ってきた。そんな中,夕食の団欒を楽しみ,次の日に向けて早めの就寝についた。
2日目は0.7の水平歩道
3:00に起床し,4:30に阿曽原温泉のテント場を出発した。欅平駅10:01の峡谷鉄道を目指して歩きはじめる。ヤマレコの到着予定時刻を確認すると,おかしなことにその時間を過ぎてしまっている?そこから,Hリーダーの0.7(?)のペースに合わせ,全員が歩く。先行していた他のグループをごぼう抜きである。やがて,狭く高度感のある大太鼓に到着する。これぞ水平歩道というような場所である。今まで歩いてきた道を振り返ると,山の岩壁に見事に水平な歩道が見える。人の力の偉大さを改めて感じる。そして,志合谷トンネル。真っ暗なので,ヘッドランプは必須である。中は水たまりができていて,所々に石や丸太が置いてあるが,靴を濡らさないように歩くのは難しい。トンネルを抜け,再び水平歩道,水平歩道…。先に送電線の鉄塔が見えてきた。歩道の脇には,「水平歩道終・始」の看板が。これで,下ノ廊下,水平歩道も終わりである。そして,一気に欅平駅に向かって下っていき,9:30到着。無事に山行を終えることができたことを,全員で喜んだ。
おまけの鉄道旅
欅平駅から,車を置いてある信濃大町駅までは鉄道を乗り継いでいく。全行程,7時間以上。それぞれの鉄道の感想を簡単に記録しておく。黒部峡谷鉄道:窓なし車両は寒い。富山地方鉄道本線:ワンマン鉄道のため運転席で切符を清算。しかし,電鉄黒部駅は駅員がいるので,駅で切符を渡す。あいの風とやま鉄道線:乗り継ぎに50分あったので,泊駅近くにある喫茶店でドライカレーと大人のオムライスを食べる。時間がギリギリで焦る。大糸線:新潟県から長野県にかけての車窓風景を楽しめる。長野県側から見た,白馬岳は絶景だった。最後に,今回は鉄道を使って信濃大町に戻ってきたが,人数によっては回送サービスを使った方が良いのではという意見もあった。今後,縦走山行をする際に検討してみたい。
記録A・G