剱岳別山隊の記録

2022年7月29日(土)〜7月31日(日)

参加者13名

【別山尾根隊行動記録】

7月28日(木) 22時新宿集合―北陸道経由―立山インター

7月29日(金) 5:00立山駐車場着、仮眠→7:20ロープウェイ、バス

8:40室堂到着→12:40剱沢キャンプ場到着

7月30日(土) 4:40登山開始→7:30前剱→9:30剱岳→10:00下山開始→10:40前剱→13:05剣山荘→16:25剱沢キャンプ場

7月31日(日) 4:50下山開始→6:05剱御前小屋→8:40室堂

 

この合宿の数日前に大変悲しいニュースが私達に届いた。

自宅で聞くのも衝撃的だが、私は山行帰りの電車の中、

自分も山の格好をしていたし、まだ気持ちも山そのままでその訃報に接した事も影響があったのか。ショックで吐きそうになった。

明け方まで眠れず、翌日も酷い気持ちが変わらなくて代表に相談した。

代表は冷静に状況を分析してくれて、重い重い背中を押してくれた。

一種のトラウマとなって、今行かなければこのまま山に背を向けてしまいそうだ。

仲間と会って、夏の立山を見よう。どうしてもダメならテント場で行ってらっしゃいさせてもらおう。

1日目。天気予報に反して、室堂に到着すると青空が見える。今年は雪渓が例年よりとても多く残っているらしく、青空と山の緑と雪のコントラストが気持ちを洗ってくれる。雷鳥平を通り過ぎ剱沢に向かう急登。北穂高の反省からUL(せめて軽量化)を目指し、泊数も1日増えたのにまあまあいい感じだ。北穂高や白馬の苦しい山行の経験をしているせいか、皆、足取りがスムーズみたい。キラキラと真っ盛りの高山植物も元気をくれているんだろう。

憧れの剱沢キャンプ場が見えてくる別山あたりはお花畑が感動モノで女子はテンション上がりっぱなし。そしてI子さんのハイジの歌が呼び水となり?なんとF代表からヨーデル?が飛び出してアルプスのような景色の中で大盛り上がりしてしまった!

テント場への下りに差し掛かると、、、霧が晴れた剱岳が今までになく大きくその威容を現わす。圧倒的な迫力だ。黒くゴツゴツとした岩肌に私は息を飲み、私以外は大興奮していた。

さて、水場とトイレが近い好立地に(Hリーダーのナイスチョイス👍)、あっという間にテント三張が設営され、剣沢山荘にビールを飲みに行く。明日このすごい山にアタックする人達と思えない豪快な飲みっぷり、小屋前のテラス席でデッカイ剱岳を眺めながら談笑し、夕方まで贅沢な時間を過ごすことができた。

2日目未明に起床、源次郎隊の出発を見送る。19時戻り予定なんて、なんてすごい行程なんだ。男子も女子もすごくカッコいいぞ‼︎平均年齢?そんなの関係ない。

4:40別山隊出発。すぐに雪渓が出てきて慎重に渡る。剣山荘の手前でご来光を見る。オレンジ色の光が、雪渓、お花畑、剱岳の向こうの白馬方面の岩峰に満ちてくる。是非写真も見て欲しい。なんという景色だろうか。

剱岳別山尾根は、手前から、一腹剱、前剱、そして本峰となるが、本峰はガスがかかっていて見えない。しかし前剱で十分な迫力と高さである。あそこが山頂ならいいのに…と弱気な心の声。

さて、剣山荘からいよいよ気を引き締めて一腹剱へ。ここはまだ緑の峰である。高山植物と雪渓に感激とおしゃべりが止まらない。1番2番の鎖も登場するが、声をかけ合って楽しく臨んだ。眼前に迫るゴジラの皮膚みたいな前剱に武者震いする。

鎖も難度が上がり平蔵の鎖は、個人的にはここが核心1/2である。代表の指示でビナ通しで通過した。安心感が体を楽にしてくれる。終わったと思ってホッとして岩をまたぐと長い鎖が垂れて続いている。くぅ〜シビれる鎖場だ!皆で「平蔵め!」「やるな!」と言いながら通過した。開拓してくれたのに平蔵さんごめんなさい。

後方から代表が場所場所で声がけしてくださり、私達は気を抜くことがない。そしてずっとおしゃべりしている(このバランスがよかったのね)。カニのタテバイも無事通過。しかしまだまだ険しい岩峰が続き、ずっと三点支持でよじ登っていく。この様子が、引きで見ると岩にへばりついている例のやつだ。それにしても振り返って見るとすごい道を来ている。岩壁も細い尾根も。

やがて、ようやく。見上げた先に明るさが見えてきた。頂上が近いのだ。

そのとたんこみ上げるものがあった。まぶたが熱くなり堪えきれなかった。

9:30剱岳登頂。祠の前で全員ハイタッチ。歓声が止まらない。写真を撮ったり道のりを振り返ったりお菓子を食べながら盛り上がる。天気がいいので30分休憩だ。

その横で、、、代表はトランシーバーで源次郎隊と交信し始めた。応答はなく休憩の間たびたび交信をかけながら、ずっと源次郎尾根を見ておられた。

30分後下山開始。下りも同じように危険箇所が続くので気持ちを引き締めて行く。カニの横バイは、よく言われる「一歩目の足の置き場」が分かりやすく赤くペイントしてあるし、順番に前の人が見て教えてあげることで難なくとは言わないがクリアできる、フレスコの人なら。

個人的な核心部2/2は鎖のない細いトラバースだ。ここは斜めった岩に体重を預けて進むしかない。もちろん足元は谷底まで岩。あとで源次郎隊員と話したけれど、彼らは雨の中ここを通過したのでハンパなく怖かったと。

一腹剱まで来たあたりで雨がパラつき、剣山荘に入ったところで本降りになった。2時間半弱、雨が上がるまで休憩、源次郎隊とも交信できた。テント場に戻って源次郎隊を気持ちよく迎える準備をする。

18時頃、夕焼けの中、源次郎隊7人の姿が見えた。難しいコンディションの中、ケガもなく皆で下りてきて本当に素晴らしい。靴の中が水浸しだそうだ。過酷さがうかがえる。その夜も昨夜に続き満天の星空の下、眠りについた。

下山して感想を聞かれた時、自分の二本足でテント場に立っていることが信じられないと答えた。記録を書いている翌日の今ようやく実感と充実感を得られている。登山、いいえハイキングを始めて3年目で高所恐怖症、おまけに怖がり。そんな私を剱岳の頂上へ立たせてくれたF代表。重いのに私がガクブルで歩けなくなった時のためにロープを持って上がってくれたGリーダー。(登れなくなったらお尻を引っぱたくためのロープだと軽口で和ませてくれた)。終始笑いながら登れたのは後ろにいる3人の仲間と一緒だったから。

いつも皆んなに高い山に引っ張り上げてもらっています。ありがとうございます!

記録  鈴木