新緑の雨飾山と雨飾山荘温泉
2022年6月3日(金)~5日(日)
参加者9名
【行動記録】
6/3(金) 22:00新宿集合→安曇野IC経由→AM2:30道の駅白根▲
6/4(土)AM4:30道の駅白根→雨飾山キャンプ場登山口5:30→登山開始6:22→ブナ平7:40→荒菅沢8:10→笹平9:30→雨飾山10:10→雨飾山キャンプ場登山口13:50→雨飾山荘16:00
6/5(日)AM8:00雨飾山荘出発→糸魚川IC経由→(北陸-上信越-関越自動車道)武蔵浦和到着14:00
雨飾山-(あまかざりやま)。まず、名前がいいですよね。
普通、「雨降山」とか、、
ひどいときには、「あそこは、いつも雨ですよ山」とか、、雑な名前になりそうですが、
雨飾山-(あまかざりやま)という耽美的な名前が、なんとも旅情を誘います。
日本海にもほど近い、新潟県と長野県にまたがる雨飾山。
戸隠連峰の北の端だから、日本海で温まった水蒸気がまず越えなければならない山が、
この山とするならば、必然的に雨も多くなるのでしょう。
また、その多雨こそが、湿地をつくり、ブナを養い、花を咲かせ、岩を磨き、
豊かな土壌、形容を創ってきたのかとも連想できます。
長野側/新潟側双方の麓温泉もあり、
新緑から、紅葉まで、季節を楽しむ登山者に人気の百名山です。
さらに、雨飾山は、別名「女神に会える山」としても、SNSでも話題になっています。
「えぇー、女神ならここに、いるじゃないのよねぇー。」と
フレスコの女性陣がつっこんで、きそうですが、
それは、ごもっともなんですが。
雨飾山の女神とは、どんな女神なんでしょうか?
この目で見なければ、なんとも言えません。
登山日の前日に開通された舗装道路を経由して、軽快に雨飾山キャンプ場へ到着したのがAM5:30。長野県小谷村側からのピストンでのアプローチだ。
各自で、出発準備。靴紐を締めなおしていると、ニコニコしながら、H木リーダーが近づいてきた。
笑顔が不自然だ。
「K本さん、今回、記録係お願いしてもいいですか?」
「あ、はい。かしこまりました。」
「あのー。最新の登山計画に、私サブリーダーってありましたが、何をするんでしょうか?」
「先頭をお願いします。」ニコッ。それか。
多少は調べてはいたが、先頭となると責任重大だ。
もちろん、F代表や、H木リーダーの信頼は絶大だが、山では一瞬の判断がまさに、命取り。
今回は、事前の調べで新潟側の残雪が深く、縦走をあきらめた経緯がある山行。
10本以上のアイゼンを必要とする残雪期登山だ。気を引き締め直さなければならない。
慌てて、登山口横にある登山MAPを再チェックした。
まずは、荒菅沢、続いて笹平、登頂と往復7時間30分の山行。
登山口と、あるが本格的な登りが始まるまでは、湿地帯を20分ほど歩く。
両脇に水芭蕉が群生している。白く、大きい。山側の小川に自然のイワナが何匹も走る。
明日は、尾瀬の燧ケ岳に挑むフレスコ会員もいる。福島の天気は、どうだろうか?
やはり水芭蕉も咲いているだろうか?とも思う。
さぁ、ここから改めて、登山口。見た感じ、急登である。
F代表からアドバイスをいただいていた。
「最初は、ペースをつかむまで、ゆっくりで。」「まだ、身体が眼を覚ましていないからね。」
確かに、最初にペースを急いで、後半までに体力が削られた経験もある。
ここは、じっくり。赤土と石が混ざった火山系の土壌に木の根が絡んだ、尾根道をゆっくり登る。幸い天気もいい。太陽も出て、雲も高く動いている。自分が確認した事前の予報では曇りだった。息を切らせ、ブナの群生地、ブナ平に着く。大きなブナの隙間から、強い日差しが届く。すこし、なだらかだ。高い背丈からのいくつもの新緑がまぶしい。フレッシュな緑だ。ここから、また山の一年が始まりを告げている。
登りを始めて30分ぐらいだろうか。あと20分後には、ひとつの目安になる「荒菅沢」に至るか?
荒菅沢では、間違いなくアイゼンを必要とする。あと20分後に、休憩か。
その前にだが、積雪が目立つようになってきた。早朝なので、雪は締まっている。ただ、トレースはない。ピンクリボンや、木に記した赤いマル印が、夏の登山道がはっきりした場所では、減ってきているのだろう、広すぎるブナ林では、ルートファインディングが難しい。
GPSも補足する。大まかな登山ルートは外さないが、正しいルートをとらないと危ない箇所もある。ピッケルがないので、滑落しても止まらない。突如、白い積雪に、赤く血のように染み込んだ痕跡がある。なんだ、事件か?熊か?通報したほうがいいのか?
「紅殻だよ。」
会員の質問にF代表が答えてくれた。
残雪期に、道迷いしやすい場所に散布していてくれる。
卵の殻を、食紅で着色してした赤い粉である。本当は無害の酸化鉄なんだ。雪にも時間がたっても消えない。
まさに、SDGsの言葉がある前に、自然に帰る素材で作っていたんですね。
自然への優しさを感じます。
進行方向にある赤い積雪を辿ることで、無積雪の登山道に導いてくれる。
おぉ、紅殻よ。ありがとう。君についていこう。
また、散布いただいた山岳関係者の方にも感謝します。
荒菅沢に着く前の積雪のトラバースがこの山行の核心だったろう。なんでもない箇所では、あったが、今、考えるとアイゼンを着用して安全を担保したほうが、良かったかも知れない。今回着用せず通過した。
まだ、雪も固く、少しのステップがあるので、問題ないと判断したが、滑落したら軽い怪我では済まない。事前のアイゼンポイントを荒菅沢に決めていた事もあり、かえって臨機応変にできなかったかも知れない。休憩に関しても、時間と、ポイントと疲労具合で相対的に判断したほうが、いいだろう。反省点だ。
荒菅沢に着くとアイゼンを着用した。安心感違う。大きな雪渓である。
カールのようにえぐれた、谷間が雪に覆われ、雨飾山の岩肌が、青い空のコントラストに眩しい。私も含め会員も絶景にカメラに収める。
「雪渓を横切るときには、止まらず。抜けなさい。」
F代表からだ。見ると、自分の傍らには2メートル以上もある大きな岩が散乱している。
雪渓は、雪崩はもちろんだが、このような巨岩も音もなく、滑り落ちる可能性もある。
耳を澄まして、常に上部に目を凝らし、足早に渡りきらなければならいとのこと。
確かに、これだけの高度差の場合、巨岩が落ちてきた場合のスピードは想像を超える早さだと思う。逃げるにも、この斜面。危険だ。落ち着きながらも足早に雪渓を抜ける。
これからの登山道は笹平まで、積雪とミックスだったが、アイゼンを外した。
だが、これも早計だった。登りはいいかも知れないが、下りは危ないかも知れない。
ここも改善点として帰りは、早めにアイゼンを着けよう。
ところで、ここからは、ガレ場でもあるが笹平まで、色鮮やかな、さまざまな高山植物が目に留まる。可憐な花に癒されます。いや、キュンします。
「この紫の花は、何ですか?」
「シラネアオイかな。」
「このピンクひらひらしてるのは?」
「イワカガミかな。」
M浦さんは、登山家で、花図鑑だ。
そして、雨飾山は、花の百名山でもある。
「この黄色いのは?」
「タンポポでは?」
失礼しました。
花に無知すぎる私。
白くてかわいい「ハクサンイチゲ」の群生が咲き乱れる笹平に到着。
ここは、斜度がなく腰高の笹の通路を雨飾の山肌をすこし仰ぎ見て、快適に過ごせます。
あまり、休憩を入れてこなかった私に、女性会員からの圧が。
つとめて明るく、爽やかに。「休憩しましょう!」と。
この気持ちのいい平地に吹き上げてくる風と、目の前の雨飾山が雄大に見えるこの笹平。
一息つき、会話も楽しみ、登攀も入る最後の急登に備える。
さぁ、最後の直登を頂上まで、息を切らせて登りきること30分。途中、振り返ると。
雨飾りの女神が。
先ほどの笹平の登山道を線でつなぐと女神の横顔が現れる。
会員から、ところどころ歓声があがる。
雲の切れ間が出てきた。頂上への期待が高まる。
登頂だ。
雲海から、北アルプスの雄大な山脈が突き出ている。
後立山連峰、五竜岳、鹿島槍か。
さらに、北東に目を転じると日本海が広がる。
雨飾山は"猫の耳"と称される双耳峰で、さきほどは、北峰。南峰へは50mほど。
記念撮影後、南峰に着くと、谷合を挟み焼山が正面に。いずれの頂も、絶景に出会えた。
これも、女神からの祝福か。会員も互いに喜びを分かち合った。
宿泊地の雨飾山荘温泉には、16:00に到着。たたずまいも、歴史を感じながらな、温かみのある造形で、豪雪にも耐える独特の外観。室内は、部屋を横断する大きな梁。
明治末から続く、山奥深い山荘で湯量も贅沢に、登山の疲れを癒します。
そうです。もちろん。源泉掛け流し。
地元の根知産こしひかりの炊き立てごはんに、
日本海の海の幸と、地元山の幸に箸が進む。
山行計画及び、登山口までの通路確認。
新潟側登山ルートのご確認。そして雨飾山荘温泉のご予約。
また、登山へのご指導、F代表、誠にありがとうございました。
翌朝、快晴で帰路に至る。
雨飾山荘温泉から糸魚川ICへ向け、
のどかな里山を姫川沿いに右折し車を走らせる。
振り返ると、"猫の耳"が。
新潟から見た山容こそ、雨飾山の全体が見えるらしい。
遠ざかる雨飾山。新緑の思い出とともに、瑞々しい山の余韻を残し、2台の車が往く。
記録;R.K