勉強会・セミナー
本研究課題では有限時間特異性に関連する様々な話題を聴講、共有、発展させるための勉強会やセミナーを不定期に開催します。
特に時間を制限せず、本研究課題に関連する話題についてとことん議論を尽くす勉強会を
「有限時間特異性」勉強会
と銘打ち、参加者全員が双方向的に見識を共有できる場として展開します。
(セミナー形式の講演会は現在検討中)
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(セミナー形式の講演会は現在検討中)
開催予定・実施済みの勉強会やセミナーのスケジュールです。
「有限時間特異性」勉強会 第12回
2025年 3月26日 (水) 午後 13:00 - 15:00 (延長の可能性あり)
オンライン形式(Zoom)
講演題目: Tippingの数理
講演者: 松江 要(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 教授 / カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 兼務)
(管理人のため敬称略)
概要:
生態系、脳神経科学などにおいて、外部環境の小さな変化によって、ある時刻において力学系の安定状態から(非)可逆的かつ急激な変化をもたらす現象の事例がいくつか見出され、特に生態系においては地球温暖化の余波など、無視できない深刻な問題の鍵となる因子として提唱されています。
このような現象は大きく分けて
(i) 外部環境変化を時間に依存しないパラメータとみなして、そのパラメータによる分岐現象が背後にあり、環境の時間変化を考慮し、有限時刻にその分岐パラメータ値に達した時に起こるもの、
(ii) 上記のパラメータの意味では分岐が一切起こらないにも関わらず、「パラメータ変化の度合い」の閾値が存在して、パラメータの時間変化に伴い、閾値を境に急激な変化が起こるもの
があります。前者は bifurcation-induced tipping (B-tipping), 後者は rate-induced tipping (R-tipping)、総称して「Tipping」として典型的に知られている現象です。
特にR-tippingは真に非自励的な機構によるもので、非自励系における有限時間特異性 / 不安定化としてさまざまな考察があります。
近年、分岐理論や幾何学的特異摂動論、コンパクト化など、標準的な力学系理論の組み合わせを基盤としてR-tippingの数学的議論が少しずつ体系化されてきており、背後にあるメカニズムがいくつか解明されつつあります。
本講演では、これらの理論を提唱しているSebastian Wieczorek氏(Univ. College Cork, Ireland)らの結果のレビューを通して、tippingに親しみ、様々なアイデアや展開の共有を図ります。
参考文献:
[1] S. Wieczorek, C. Xie and P. Ashwin, “Rate-induced tipping: thresholds, edge states and connecting orbits”, Nonlinearity, 36(2023), 3238-3293
[2] E. O’Sullivan, K. Mulchrone and S. Wieczorek, “Rate-induced tipping to metastable Zombie fires”, Proc. Royal Soc. A, https://doi.org/10.1098/rspa.2022.0647 (2023)
[3] P.D.L. Ritchie, H. Alkhayuon, P.M. Cox and S. Wieczorek, “Rate-induced tipping in natural and human systems”, Earth Syst. Dynam., 14(2023), 669–683
[4] C.R. Hasan, R.M. Carthaigh, and S. Wieczorek, “Rate-Induced Tipping in Heterogeneous Reaction-Diffusion Systems: An Invariant Manifold Framework and Geographically Shifting Ecosystems”, SIAM J. Appl. Dyn. Sys., 22(2023), 2991-3024
[5] P. Ashwin, S. Wieczorek, R. Vitolo and P. Cox, “Tipping points in open systems: bifurcation, noise-induced and rate-dependent examples in the climate system”, Phil. Trans. Royal Soc. A, https://doi.org/10.1098/rsta.2011.0306 (2012)
[6] 松江 要, “破局のひきがね”, 大阪府立大手前高等学校マスツアー@九大IMI, 2024年12月26日
[7] S. Wieczorek, C. Xie and C.K.R.T. Jones, "Compactification for asymptotically autonomous dynamical systems: theory, applications and invariant manifolds", Nonlinearity, 34(2021), 2970-3000
「有限時間特異性」勉強会 第11回
2025年 2月20日 (木) 午後 15:30 - 17:30 (延長の可能性あり)
オンライン形式(Zoom)
講演題目: 有限時間特異性と無限遠ダイナミクス:ここまでのサマリー 2
講演者: 松江 要(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 教授 / カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 兼務)
(管理人のため敬称略)
概要: 常微分方程式の初期値問題の解が爆発解を持つか、持つならば「いつ、どこで、どのように」爆発するかを包括的に記述する理論の構築を目指して、講演者はじめ研究チームは様々な考察を行ってきました。
本講演では、主に講演者が考察してきた「無限遠ダイナミクス」に基づく常微分方程式の有限時間特異性にまつわる話(と他の研究者による考察)のサマリー:12月に行ったものの続きとして、
・タイプ-II 爆発など、ベクトル場の情報から直ちに決まらない特異性の記述
・タイプ-I 爆発解の漸近展開
のお話をします。いずれも「無限遠ダイナミクス」を通した解釈により、様々な側面を提示することを試みます。
トピックと参考文献:
・様々な特異性(タイプ-II 爆発など)
K. Matsue,
Journal of Differential Equations, 267(2019), 7313-7368.
Y. Ichida, K. Matsue and T. Okuda-Sakamoto,
JSIAM Letters, 12(2020), 65-68.
・漸近展開と無限遠ダイナミクスの対応
T. Asai, H. Kodani, K. Matsue, H. Ochiai and T. Sasaki,
arXiv:2211.06865, to appear in Nonlinearity
H. Kodani, K. Matsue, H. Ochiai and A. Takayasu,
arXiv:2211.06868, to appear in Nonlinearity
K. Matsue, in preparation
・基礎:設定の話、爆発解の存在判定(前回喋った話)
K. Matsue,
SIAM Journal on Applied Dynamical Systems, 17(2018), 2249-2288
K. Matsue,
SIAM Journal on Applied Dynamical Systems, 24(2025), 415-456, arXiv:2307.09201
「有限時間特異性」勉強会 第10回
2024年 12月12日 (木) 午後 15:00 - 17:00 (延長の可能性あり)
オンライン形式(Zoom)
講演題目: 有限時間特異性と無限遠ダイナミクス:ここまでのサマリー
講演者: 松江 要(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 教授 / カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 兼務)
(管理人のため敬称略)
概要: 常微分方程式の初期値問題の解が爆発解を持つか、持つならば「いつ、どこで、どのように」爆発するかを包括的に記述する理論の構築を目指して、講演者はじめ研究チームは様々な考察を行ってきました。
本講演では、主に講演者が考察してきた「無限遠ダイナミクス」に基づく常微分方程式の有限時間特異性にまつわる話(と他の研究者による考察)のサマリーを行います。
何ができて、何ができていないのかを整理するきっかけとなればと思います。
トピックと参考文献:
・基礎:設定の話、爆発解の存在判定
K. Matsue,
SIAM Journal on Applied Dynamical Systems, 17(2018), 2249-2288
K. Matsue,
arXiv:2307.09201, to appear in SIAM Journal on Applied Dynamical Systems (2024)
・様々な特異性
K. Matsue,
Journal of Differential Equations, 267(2019), 7313-7368.
Y. Ichida, K. Matsue and T. Okuda-Sakamoto,
JSIAM Letters, 12(2020), 65-68.
・計算機援用証明(少しだけ)
J.-P. Lessard, K. Matsue and A. Takayasu,
Journal of Nonlinear Science, 33(2023), article 46
K. Matsue and A. Takayasu,
Journal of Computational and Applied Mathematics, 374(2020), 112607
K. Matsue and A. Takayasu,
Numerische Mathematik, 145(2020), 605-654
・漸近展開と無限遠ダイナミクスの対応
T. Asai, H. Kodani, K. Matsue, H. Ochiai and T. Sasaki,
arXiv:2211.06865
H. Kodani, K. Matsue, H. Ochiai and A. Takayasu,
arXiv:2211.06868
K. Matsue, in preparation
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「有限時間特異性」勉強会 第9回
2023年 11月29日 (水) 午後 16:00 - 18:00 (延長の可能性あり)
オンライン形式(Zoom)
講演題目: 曲線短縮問題に現れる準線形放物型方程式の解の爆発について
講演者: 穴田 浩一 氏(早稲田大学 高等学院)
概要: 曲線短縮問題,特に,自己交差する点を持つ狭義凸の閉曲線が「曲率の冪乗」を速度として内向き法線方向に収縮する問題では,有限時刻で曲率の最大値が爆発する現象がみられることがある.この現象を解析するために,「曲率の冪乗」(=収縮速度)がみたす準線形放物型方程式を与え,その解の爆発レートを考察する手法が用いられている.ここに現れる方程式の解の爆発レートは,収縮速度「曲率の冪乗」の冪にあたる指数によって「爆発する全ての解がタイプI爆発」の場合と「タイプII爆発する解が存在」の場合があることが知られており,本講演では,主に「タイプII爆発する解が存在」の場合の指数に関して,これまでに得られている結果などについて紹介したい.
本研究は,石渡哲哉氏・牛島健夫氏との共同研究である.
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「有限時間特異性」勉強会 第8回
2023年 7月5日 (水) 午後, 14:00~16:00 (延長の可能性あり)
オンライン形式(Zoom)
講演題目: 二次の非線形性を持つ複素数値発展方程式の大域的なダイナミクスの計算機援用証明と未解決問題
講演者: 高安 亮紀 氏(筑波大学システム情報系 助教)
概要: 本講演では、二次の非線形性を持つ非線形熱方程式(藤田方程式)の時間変数を複素数に拡張し、複素時間領域における解の挙動を明らかにする研究から始まった計算機援用証明のいくつかの研究成果を紹介する。周期境界条件下の藤田方程式の解は有限時間で爆発することがよく知られているが、複素時間領域では解の爆発点が分岐点となる。さらに複素時間領域内の各軌道に対応する藤田方程式や複素Ginzberg-Landau方程式、非線形Schrödinger方程式の大域的なダイナミクスを考え、非自明な平衡解や各平衡解間のコネクティングオービット、周期軌道や爆発解を我々は得ることができた。また、平衡解周りの不安定多様体に沿った軌道上で、非有界な解の存在を示した。これらの結果は無限次元力学系に対する計算機援用証明手法を駆使することで得られる。当日は各計算機援用証明手法の簡単な紹介と、研究成果から得られる未解決問題についても紹介したい。
本研究はJean-Philippe Lessard, Jonathan Jaquette, 岡本久各氏との共同研究である。
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「有限時間特異性」勉強会 第7回
2022年 11月24日 (木) 16:00 - 18:00 (延長の可能性あり)
ハイブリッド形式(現地会場:芝浦工業大学)
講演題目: Recent developments on finite-time extinction of energy solutions
for fast diffusion equations on domains
講演者: 赤木 剛朗 氏(東北大学 大学院理学研究科数学専攻 教授)
概要: Fast diffusion 方程式の特徴の一つはその拡散係数の特異性に由来する解の有限時間消滅にある.
特に特異拡散が領域の境界上で強制的に生じるディリクレ問題では, すべての解が同一のレートで有限時間消滅するという, 古典的な拡散方程式とは著しく異なる様相を呈する. このような特異拡散方程式の解の消滅現象は Berryman と Hollandによってプラズマの特異拡散の文脈で研究され, その後も多くの研究がなされているが, 同じく非線形拡散に分類される多孔質媒体方程式と比べると, まだ分かっていないことも多い. この発表では特に, 有限時間消滅解の漸近形に関する定量的研究に於ける近年の進展について解説したい.
解の漸近形に関する定性的な研究としては, Berryman-Hollandにはじまる解の消滅レートの特定と漸近形への収束性に関するものが挙げられる. 一方, 漸近形への収束レートに関する定量的な研究では決定的な成果がなかったが, 2021 年 (プレプリントは 2019 年ごろ) に発表されたBonforte と Figalli の論文では, 非退化な漸近形への収束レートを線形化解析から予想されうる最適のレートまで改良する試みがなされており, その過程で彼ら自身が開発した非線型エントロピー法をはじめ多くの展開がもたらされる結果となった.
ここでは発表者がそれに触発されてはじめた定量的勾配流不等式に基づくエネルギー法によるアプローチについて主に解説し, 非線型エントロピー法との違いなどについても解説したい.
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「有限時間特異性」勉強会 第6回
2022年 7月28日 (木) 14:00 - 16:00 (延長の可能性あり)
on Zoom
講演題目: 複素数値半線形熱方程式における非同時爆発
講演者: 原田 潤一 氏(秋田大学 教育文化学部 准教授)
概要: 複素数値半線形熱方程式の解の爆発問題について考察する。内容の方向性としては、藤田型方程式に対する結果の連立系への拡張である。本発表では、解析型べき乗非線形項を持つ場合に、同時爆発と非同時爆発の両方の可能性があることを説明する(Blowup profile for a complex valued semilinear heat equation, Junichi Harada, J. Funct. Anal. 270 (2016))。これ以外にも、複素数値熱方程式に関連する幾つかの話題について、発表者が理解している範囲内で紹介したい。
開催予定・実施済みの勉強会やセミナーのスケジュールです。
「有限時間特異性」勉強会 第5回
2022年 3月22日 (火) 14:00 - 16:00 (延長の可能性あり. 開始時刻は14:00で確定しました。)
on Zoom
講演題目: 藤田方程式に対する有限時間爆発とその分類について
講演者: 関 行宏 氏(鳴門教育大学 大学院学校教育研究科 准教授)
概要: 冪乗型の非線形項を持つ半線形熱方程式, いわゆる藤田方程式はこれまで非常に多くの研究がなされ, 様々な臨界指数と興味深い非線形現象が発見されている.
Sobolev 優臨界においては非線形性の度合いが強まり, 解挙動は複雑である.それにも関わらず, 近年では典型的な個々の解に加えて, 球対称解に対してはかなり一般的な結果が知られている.
本講演では,前半でSobolev 優臨界における球対称解の枠組みで有限時間爆発に関する既存の結果を概観し,爆発解の分類と関連する話題を総合的に紹介する. 後半では講演者のこれまでに得た結果に関して, 接合漸近展開法による構造的な解析を中心に解説する.
時間が許せば, 藤田方程式と球面に値をとる調和写像流方程式に見られる類似性, 及び真に異なる点について述べ, 関連研究を紹介したい.
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「有限時間特異性」勉強会 第4回
2021年 11月11日 (木) 14:00 - 16:00 (延長の可能性あり)
on Zoom
講演題目: 流体方程式に現れる有限時間爆発解
講演者: 坂上 貴之 氏(京都大学 大学院理学研究科 教授)
概要: 三次元Navier-Stokes方程式の解の大域存在は有名な数学的難問であるが,これはこの方程式に特異な解が存在するかという問いでもある.また,こうした流体方程式に現れる特異な解の研究は単に数学的な問題だけでなく,乱流や乱流に至る過程をなどの流体現象を理解する上での重要な情報をもたらしてくれる.本講演では,私がこれまでに行ってき二つのトピックについて,流体運動における特異解について紹介することを目的とする.
一つ目のトピックは,二次元のオイラー方程式を考え,その速度の回転成分として表現される渦度が特異な領域に閉じ込められてできる点渦(局在渦構造のモデル)や渦層(せん断流のモデル)といった渦領域の特異解に関する話題を提供する.点渦方程式には有限時間で一点の衝突する特異解の存在が知られており,この特異解と二次元乱流の満たすべき性質の関係について得た成果について紹介する.渦層の運動を記述するBirkhoff-Rott方程式には有限時間で渦層の曲率が発散する特異解の存在が指摘されており,この特異解がせん断流の複雑化のきっかけを与えていることについて触れる.二つ目のトピックは,三次元のナヴィエストークス方程式の非線型項のバランスをモデル化した1次元偏微分方程式(一般化Constantin-Lax-Majda-DeGregorio方程式)に現れる特異解とその方程式の作る(波動)乱流との関係について紹介する.
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「有限時間特異性」勉強会 第3回
2021年 9月27日 (月) 14:00 - 16:00 (延長の可能性あり)
on Zoom
講演題目: 藤田型方程式の解の爆発時間に対する数値的検証法
講演者: 水口 信 氏(中央大学 理工学部 情報工学科 助教)
概要: 本講演では, Dirichlet境界条件下の藤田型方程式の爆発解を考える. 特に解の爆発時間に着目する. 爆発解に関連する研究は数多く存在する. 例えば, 解析的な手法では, 初期値と爆発解との関係性の研究により解が爆発するための十分条件が与えられている. 場合によってはその条件が成立する仮定の上で爆発時刻の上界評価も与えられている. 数値解析の手法では近似スキームを開発し, そのスキームの収束性を示すことで精度のよい爆発時間の近似法の研究も行われている. これらの研究により爆発解やその時刻の研究もかなり進歩してきた. しかし, その爆発時刻の厳密な値を得る手法は未だ得られていない.
我々はDirichlet境界条件下の藤田型方程式の爆発時間に対する数値的検証法を提案する. すなわち, 計算機を用いて爆発解の存在を厳密に証明し, その爆発時刻の厳密な下界と上界を与えることで爆発時刻の厳密な値の範囲を算出する. 厳密な爆発時間の下界は放物型方程式の解の精度保証付き数値計算法を用いて導出することができる. さらに爆発解の解析的検証法のひとつであるエネルギー汎関数を用いた検証法を応用することにより, 解が爆発するための十分条件が計算機で確認可能な形で得られ, その条件が成立したときに限り爆発時間の上界が与えられる. したがって, 解が爆発する十分条件の成立の可否を計算機で確かめることで解が爆発することを証明でき, そして爆発時間の下界と上界の値を得ることができる. この手法により初期値から解が爆発することを示せない場合でも解の爆発の検証ができ, より精密な爆発時刻の値を算出できるようになる.
本講演では, 爆発時刻の下界評価で用いる放物型方程式の解の精度保証付き数値計算法の概略と爆発時刻の上界評価導出の詳細を伝える. さらに数値例を通して爆発解の検証の流れとそれにより得られた爆発時間の値の範囲を示す.
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「有限時間特異性」勉強会 第2回
2021年 8月16日 (月) 14:00 - 16:00 (延長の可能性あり)
on Zoom
講演題目: 非線形波動方程式の爆発曲線の微分可能性
講演者: 佐々木 多希子 氏(武蔵野大学 工学部 数理工学科 講師 / 東北大学 大学院理学研究科数学専攻 講師)
概要: 本講演では非線形波動方程式に対する初期値問題の古典解の爆発を考える.波動方程式は,解の有限伝播性から爆発時間は空間変数$x$に依存し,爆発は伝播する.各$x$での古典解の最大存在時間$T(x)$や,$T(x)$が描く曲線を「爆発曲線」とよぶ.
爆発曲線はその微分可能性に焦点を当てた研究がなされてきた.Caffarelli-Friedman(1986)により爆発曲線は導入され,冪乗型の非線形項を持つ波動方程式に対し,初期値が十分滑らかで大きい場合に,爆発曲線付近での解はある意味で常微分方程式の爆発解のような性質を持つことが示された.この性質から爆発曲線は連続微分可能になる.また,Merle-Zaag(2012)により,空間1次元の冪乗型の非線形項を持つ波動方程式に対し,初期値が滑らかでも,符号変化する爆発解を考える場合,爆発曲線は微分不可能な点を含むことが証明された.一方で,Ohta-Takamura(1998)により,ある空間1次元の非線形波動方程式では,1点でしか爆発しない例や,爆発する領域が長方形になる例など,Caffarelli-Friedman(1986)やMerle-Zaag(2012)では示されなかった爆発曲線の例が示された.このように,比較的単純な非線形項を持つ波動方程式でも様々な爆発曲線が存在し,未解決な問題が多い.
本講演では,爆発曲線の先行研究や講演者が得た結果を通して「なぜ爆発曲線が連続微分可能になるのか」「なぜ爆発曲線に微分不可能な点が生じるのか」について,証明のアイデアや,今後の展望を紹介する.
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「有限時間特異性」勉強会 第1回
2021年 6月8日 (火) 17:00 - 19:00 (延長の可能性あり)
on Zoom
※実験的な試みのため、初回は参加者を絞ったクローズドな会とします。
講演題目: 相空間のコンパクト化と力学系理論に基づく退化非線形放物型方程式における進行波解
講演者: 市田 優 氏(明治大学大学院理工学研究科数学専攻D1 / 日本学術振興会特別研究員)
概要: 多くのモデルを由来とする退化非線形放物型方程式$u_{t}=u^{p}(u_{xx}+u)$における進行波解について考える.また,この方程式をある変換を施すことにより得られる $v_{\tau}=v^{p}(v_{xx}+v-v^{-p+1})$という方程式も扱う.本講演では,進行波座標により変換された常微分方程式に対して,ポアンカレ・コンパクト化と呼ばれる手法と時間スケール変換,ベクトル場の特異点膨らまし,そして力学系の古典的な結果を応用することにより,その無限遠方までのダイナミクスを与える.そして,この結果から元の2つの$u$と$v$の方程式における(弱解の意味も含めた)進行波解の存在や形状に関する情報,漸近挙動について報告する.さらに,$p$が奇数の場合では,特異点近傍でのダイナミクスを完全に決定できないという問題に直面するため,その接続軌道と対応する進行波解を分類するという立場をとり,その結果についても紹介する.もし時間が許せば,この手法によるさらなる応用の可能性についても言及したい.本講演の内容は坂元孝志氏(明治大学),松江要氏(九州大学)との共同研究成果を含む.
工事中。随時更新します。
本課題に関連し得る事業者が共有・発展させたいと判断するネタは、随時勉強会などで展開予定です。