特別講演

9月21日 13:10-14:10

プライバシー保護連合学習による組織間ビッグデータ解析とその応用

講師:小澤 誠一(神戸大学 数理・データサイエンスセンター センター長,神戸大学 大学院工学研究科 教授)

概要:ビッグデータ解析のハードルの一つは、組織が保有するデータの多くが個人情報 や営業秘密を含む機微な情報であり、組織を超えての利活用が容易でないことで す。ビジネス戦略上、データを囲い込んでそれを独占することで利益を上げるビ ジネスモデルもあるでしょうが,最近では、他組織とデータを積極的に共有して でも、社会課題の解決を図りたいというケースも増えています。しかし,データ 利活用に対するユーザの理解を得られるのかの判断が難しいこともあり,なかな か踏み切れないのが実情と思われます。本講演では,組織がもつデータを互いに 明かさず,個人情報の漏洩や個人特定につながらないようプライバシーに配慮し たAI技術として、連合学習を取り上げ、この技術がなぜ組織間ビッグデータ解析 の促進につながるかについて、いくつかの例を通してご紹介します。また、連合 学習を導入した銀行5行との不正送金検知実証実験を経験し、感じたAI社会実装 の難しさやこれからの課題について、私見を述べさせて頂きたいと思います。

9月22日 14:40-15:40

量子機械学習入門 ー量子計算シミュレータによる機械学習アルゴリズムの実現

講師:濱上 知樹(横浜国立大学 大学院工学研究院 教授)

概要:この10年間の機械学習技術の目覚ましい進歩は、様々な分野・問題にブレイクス ルーをもたらしました。その背後には、革新的なアルゴリズムの開発に加え、大 規模なデータを収集・蓄積することのできる高速ネットワークの実現と、ハード ウェアの高性能化があります。特に研究的視点に立つと、CPU/GPUの性能向上に 伴い、機械学習の理論を実装・実験・評価するサイクルが速くなり、研究効率が 飛躍的に向上したことに大きな意味があります。一方、これまで機械学習研究を 支えてきた計算機環境に目をむけると、その性能向上は物理的に逓減・限界を迎 えつつあります。今後さらに大規模・高次元のデータを扱う機械学習を実現する ためには、新たな計算機アーキテクチャにおける機械学習の展開が必要になるで しょう。本講演では、その1つの解となりうる量子計算機に焦点をあて、量子計 算機を用いた機械学習ー量子機械学習の方法についてサーベイを交えて紹介しま す。量子計算機の実用化は、まだ先の技術と思われていますが、既に現実的な ロードマップに沿って開発が進められており、将来の実用化に先駆けたシミュ レータ環境も整ってきました。本講演では、機械学習における量子優位性と、シ ミュレータを使った基本的な機械学習アルゴリズムを紹介し、量子機械学習の可 能性について考えていきます。