2025年4月例会報告
2025年4月例会報告
令和7年4月25日 18時30分~ 本田公民館
参加者10名
東京の川と水利用
2冊組のレポート。資料1では貝塚爽平さんの「東京付近の地形区分図」やもっと新しい遠藤邦彦。・杉中祐介さんの「武蔵野台地の新たな地形区分図」が示され、西側の台地から東側の低地までの概要が示された。多摩川水系と荒川水系では川の様子も違い、子どもたちに川について尋ねても居住地によってかわるようです。低地では潮の影響もあり、そこに住む子どもの中には、川の水が海からくると考える子もいるようです。ここでは川の学習も難しく、実践記録も乏しいとのことでした。
資料2は、大半が武蔵野台地と多摩川・玉川上水についての内容でした。玉川上水の取水口近くには、有名な遺跡である“まいまいず井戸”があります。東京都教育委員会が作成した案内板には、鎌倉時代に作られたと書かれているそうです。しかし、本当は新田開発期(江戸時代中期?)という報告でした。段丘崖下には湧水があり(拝島高校に勤務する私のとってはおなじみの地形です)、人々はまずそこに住みだした。その後に段丘上に井戸を掘ったとのことでした。その後8頁にわたり、取水口から江戸の町までの詳しい説明がありました。多摩川は礫の川で多くの礫が上流から運ばれ、堆積した礫を取り除きながら取水口を守ってきた。現在では重機を使うようですが昔は人力であったので、取水口の維持は多くの労働者に支えられていたのでしょう。
最後に低地を流れる荒川水系と水害についての話がありました。都心部への水害を軽減するために荒川放水路が作られた。石川さんから調水池について質問がありましたが、大正7年から昭和29年までの間に上流部の改修で作られている、との記述があり確認されました
『理科教室3月号』を読んで
全体にわたる、詳しい報告でした。
状態変化についての実践報告(中1)では、融解と溶解の概念が分離されていないことが想像されます。この件に関しては数年前の都立高校入試において、出題者が融解を溶解と誤用した問題があり、中央沿線理科サークルでも話題になったことがあります。
特集は“放射線・原子力教育の再構築を”というテーマで、多くのレポートがありました。
小林昭三さんのレポートの中には高速増殖炉もんじゅについての記述があり、若いレポーター(生まれていないかな)には新鮮だったようです。しかし逆に考えてみると、もんじゅの事故について、授業でちゃんと取り上げてこなかった私たちは反省しなければいけないと感じました。
半減期の授業、前にもレポートがあったと思います。半減期が短い131Iの方が長い137Csより安全なような勘違いをしそうです(私はマスコミがそのように誘導したと感じています)。レポーターもそのような印象を持っていたとのことでした。しかし131Iは放射能が高いせいで早く崩壊してしまうわけだから、そうでないことを実感できそうな実践でした。
この授業にために作ったサイコロ状の立方体ですが、お楽しみ広場で売れるかどうかちょっと話題になりましたが、1クラス分800個で販売になり難しそうです。
2025年2月例会報告
2025年2月例会報告
日 時:2月28日(金)18:30より
場 所:国分寺市本多公民館
■ 都立高校入試の理科の問題の検討
恒例の都立高校入試の理科の問題についての検討を行いました。以前のような明らかな間違いや紛らわしい問題はありませんでした。」しかし、相変わらず文章をたくさん読まなければならない問題がなくならないのは残念です。
■「モデル実験ビデオ:地震動・断層・風波(風浪)と津波」
『理科教室』12月号の特集が地学関連だったこともあって、レポーターに地震と波のモデルを実際に見せていただきました。
1つ目は地震動のモデルです。チョークを岩盤に見立て、そこにグルーガンでバネを固定し、その先端に目印をつけて万力で両側から力を加える実験のビデオでした。チョークが割れた瞬間にバネにつけた目印が揺れ、チョークの割れ方が逆断層のように見えました。
2つ目は小麦粉とココアの粉を層状にして圧縮すると断層ができる様子を見ることができました。
3つ目は波のモデル2つです。1つは風波でした。水を満たした容器の表面にドライヤーで風を当てると表面に波が立ちます。しかし、水の中に入れた藻の模型はほとんど動きません。しかし、容器の底に敷いてある板を勢いよく上げると藻の模型も大きく揺れ、風波との違いがわかりました。
■『理科教室』2月号を読んで
2月号の特集は「参加還元反応をどう扱うか」でした。肆谷さんはご自分が実践されていた実験を紹介してくれながら感想を話されました。
2025年1月例会報告
2025年1月例会報告
日 時:1月24日(金)18:30より
場 所:国分寺市本多公民館
参加者10名
■「物質量の導入の授業」
「モルの概念はわかりにくいので「粒」を意識させたい」との趣旨説明の後、具体的な話に入りました。
途中で視聴したビデオは、米1合の粒の数を数え、それと同数のポップコーンを見せてみる、というものでした。このビデオは昨年の春休みに2日間に分けで撮影したものです。
検討してほしいこととして、「動画や教具は適切か」「授業の時間配当が適切か」「説明についてアドバイスが欲しい」などの発言があり、授業の視聴に移りました。
プリントを黒板にプロジェクターで映して、そこにPC上に直接書き込んでいく方式の授業でした。レポーターはこの方式をやめたいとのことでしたが、手元に残るので生徒からは好評とのことでした。
「米粒とポップコーンをセットにしたい」という説明がうまくいっていない点について、参加者から「ここで示していることが生徒にとって見通しが立っていないのではないか」との発言がありました。また「質量も量っておけばよかった」という発言もありました。
また、6.0×1023の表記について、まずは600000000000000000000000と書いて「大変だよね」と言ってからの方が良いのではないか、とのアドバイスが寄せられました。
生徒たちは認識の到達点がわかっているのだろうか?という疑問に対して、レポーターは
「今までならっていない『モル』という数え方があるんだ」
↓
「原子や分子を数えることは難しいので、米とポップコーンでなぞらえてみるよ」
という流れを考えていたと言います。
物の量を示すときには、日常的に「体積」や「質量」を使いますが、「粒の数」はなかなか使いません。そこで「見た目の大きさが違うが粒の数が同じ」という例を示したかったとのことでした。
参加者からは、個数と質量が比例関係にあることが重要としたうえで、「10000個の米粒を準備したい、おおまかでも良いから10000個集めるにはどうしたら良いか」という課題をやっていた、との経験が述べられました。また、この場では化学変化と絡めない方が良いのではないか、ここではなるべく単純化してみてはどうか、とのアドバイスも寄せられました。
また、米粒だけの方が良いのでは?という意見も出されました。
米粒を核子として捉え、全てのものは米粒でできていて、1kgの米粒の数を調べてみてはどうかという提案でした。やはり質量が大切なので、1kgの米粒の数はいくつか?大雑把で良いから数える方法を考えさせてみてはどうか、との提案でした。1合の米粒を数えるのに2人で90分ほどかかりましたから、1kgの米粒の数を数えるのは大変そうです。
全く別な視点で「合」という単位は生徒たちには難しいのではないか、という意見が出されました。「合」よりも「ダース」を使ってはどうか、という意見も出されましたが、「合」と「ダース」のどちらが身近なのか、意見が分かれるところでした。
また、質量で考えた方が本質的なのではないか、という意見もありました。確かに質量で考えたほうが本質的なのですが、この授業作りを始めたきっかけは、さまざまな物質(水、エタノール、黒鉛、アルミニウム、硫黄など)を試験管に入れて「同じ粒の数でもこんなに体積が違うことを見せる標本があったので、それを粒の形として見える「米」と「ポップコーン」で見せてみようということろから始まったので、体積比べに行ってしまいましたが、気体以外ではやはり質量で比べることが大切だと思います。
アボガドロ数を定着させることに苦労します。原子分子はとても小さいのでまとめて扱うことに意味があり、工夫のしがいもあります。
比例式は飛躍があると思った、という発言がありました。掛け算、割り算、比の計算と次々に違う計算が出てきてわかるかどうか心配ということです。
今後、量的関係に入っていますが、学生実験が後に控えていないと計算だけで終わってしまい、化学が嫌な思い出になってしまうのは嫌ですね。
■『理科教室』12月号を読んで
6ページに及ぶ大作で、特集「大地の変化・小学校からのカリキュラム」の論文を丁寧に読み込んだ資料を使って感想を語られました。その後、いろいろな教具についての話になりました。
坂しらべ機や流水実験など、具体的な教具の話になりました。坂しらべ機は使うパイプはビー玉が入る2cmのものが良いそうです。流水実験は滑り台と連結した砂場で行った。滑り台と砂場の連結部分で扇状地ができる話なども話題にあがりました。また、校内にや市役所に柱状図があるはず、との話になりました。
個人的には、日本列島の立体地形図をビデオを横から写すと分水嶺がわかる話が印象的でした。
例会の最後に、実践記録集についての提案がありました。今年からはネット上からダウンロードする形で供給することが確認されました。
2024年11月例会報告
2024年11月例会報告
日 時:11月22日(金)18:30より 場 所:国分寺市本多公民館
■『理科教室』10月号を読んで
台風5号が岩手を直撃した件など、激増している異常気象についての話を交えながら、特集の内容をまとめて話してくださいました。
天気は風によって決まり、風は温度差によって決まることから考えると、地球の温暖化によって北極の気温が上がってしまうため、偏西風が弱くなってしまうい、異常気象が起こると考えられている、との説明がありました。
北極では光を氷で反射しているが、反射する面積が小さくなると熱が逃げていかないため、北極は他の地域より温暖化の影響を受けやすいと、説明がありました。
偏西風が弱まってしまうと空気がなかなか動かない(滞留してしまう)ため、夏は暑く冬は寒くなってしまうのだそうです。
温度差が小さいとなぜ偏西風が弱くなるのか、という質問がありました。温度差が小さいと南北方向の風が弱くなってしまう(速度が遅くなる)ため、コリオリ力も小さくなってしまう。そのため、日本周辺で東に向かうはずの偏西風があまり曲がらずに北に向かってしまうようになるのだそうで、そう考えると台風5号が太平洋から北上して岩手を直撃したルートは合点がいきます。
また、偏西風が弱くなると季節風の働きのほうが強調され、結果的に偏西風が蛇行してしまうそうで、夏と冬では蛇行のパターンが逆になるのだそうです。
参加者からは
・p29右段下から5行目 主張 推した→押した 自然が複雑に絡み合っているの「海やけ」「磯焼け」では?
・スルメイカの文章とサワラの文章は同じことを言っているが「代わりに」で繋がっているのはおかしいと感じた。
・特集で田中さんや永井さんは普通の授業を紹介しているようで、特集とはちがうかな?という感じを受けた。このくらいがわかっていないと環境問題などについて理解できない、ということなのか?
などの発言がありました。
また、気象は「地学」で学ぶはずなのに、高校では「地学」「地学基礎」がほとんど開港されていません。地学的なことを学ばずに「温暖化」を論じていることになるのはおかしいのではないか?という意見が出されました。地学の巡見に行くと意外に参加者が多いので、「地学」に関する潜在的な学びの欲求は大きいかもしれない、との発言がありました。たしかに、NHKで放送していた「ブラタモリ」では地学的な話も多かったことを思い出します。
最近は新聞やテレビで天気図をあまり見なくなった、との指摘がありました。以前はずいぶん読めていたと思うが、最近は学ばなくなってきているので、読めなくなっていると思う。
阪神淡路大震災のころ高校生の地学の履修率は7%くらいだった。その頃の生徒が今働き盛りになっているということは、「地学」を学んでいない人たちが様々な施策を決めていることになっているのは不安だ、という発言がありました。
■資料の紹介
・科教協50周年記念誌の紹介
20年前なら私もいたはずですが、その存在は知りませんでした。
・前回東京大会のポスターの紹介
子どもたちが楽しそうに授業をしている様子がわかるような写真を載せたいね、という話になりました。
・前々回大会の要項の紹介
20年前の要項です。お楽しみ広場と全大会をタワーホールで行い、その後芝に移るという大変な大会でした。今回はすべて中大附属で行えるのは感謝しかありません。
■研究授業とその後の授業
空気と水の圧縮性の違いについて進めていましたが、そこから空気の重さについての授業になっていきます。研究授業よりもその後の授業を見てほしいとのことで、その後の授業を視聴しました。
中身の見えない箱の中に左右から手を入れて何が入っているのかを当てるテレビのバラエティー番組などでおなじみのゲームがあります。そのゲームで箱の中に「空気」を入れて当てさせたそうです。びっくりしたことにその出題は生徒から出てきたものだそうです。
その問題がきっかけで「空気はものと言えるか?」という議論がはじまり、ビニール袋などに空気を集めてみる授業が始まります。
2時間分の授業を飛ばしながら視聴しました。1時間は班ごとに工夫して行った実験の結果、空気に重さがあるかどうかの発表がメイン、もう1時間はそれをもとにした議論がメインの授業でした。
レポーターは缶を使った実践も読んだそうですが、探究的ではないが練られた授業をやっても良いのではないか、という意見をもらったそうですが、空気の入っていない浮き輪と入っている浮き輪を比べたい、という生徒の発言から始まったので探究型の授業にしてみたそうです。
浮き輪は空気を入れると浮力が関わってしまうのではないか?という疑問があがりました。
2024年10月例会報告
中央線沿線理科サークル 10月例会 報告
2024年10月25日(金) 国分寺 本多公民館
1.力の合成分解の授業実践報告
・秋の研究集会でも同じ報告を行った。いただいた意見はまだ反映していない。
◆ 問題意識
力の合成と分解の学習について、仮説社のDVDを参考に授業を検討した。DVDの中では、ばね2本を用い、異なる角度でY字型になるようにおもりを吊るしたとき、それぞれのばねの伸びが異なるということを演示していた。良い見せ方であると感心した。
教科書では、輪ゴムを2本使って、伸びを比べるような形で演示をしているが、平行四辺形の法則を確かめることをしていない、と感じた。より良い方法を考案したので、報告させていただき、検討してほしい。
◆ 授業の流れや工夫
・力の向きが同方向や逆方向でない場合には、「単純な足し算にならない」ことを示したい。まずは、「単純な足し算になる」場合からスタートした。その後、引き算の場合にうつり、次に「単純な足し算にならない場合」(45°、45°)を行った。単純な足し算にならない場合を実験で確認したのち、力の大きさ(g重)を用いて平行四辺形を描かせ、平行四辺形の法則を説明。最後に平行四辺形の法則を用いて、30°、60°の場合を、力の分解を用いて予想させ、実験で確かめた。
・①~④が1時間目、⑤以降が2時間目である。
・⑤については予想ができないだろうと判断し、すぐに実験にうつった。
・生徒に力の合成、分解をさせる際には、方眼1目盛り当たり10(g重)とした、方眼を使用させた。
◆ 演示実験の方法
ホワイトボードにフックでばねを貼り付け、その下部におもりを吊るす。
おもりを吊るした際のばねの長さをホワイトボードに記録することができる。
力を分解する際には、磁石付きの滑車を2つ、ばねの下部に、目的の角度になるように貼り付けて用いる。
長さを測る際には大型の定規、角度を測る際には、大型の分度器(コピー紙)を用いるが、どちらにも磁石がつけられ、ホワイトボードに貼り付け可能。
◆ 演示実験について、工夫した点
・横ではなく縦にした理由は、横にした場合、ばねが自重によってたわむ分、上下の力の大きさに(理論的には同じであっても)差が出てしまったためである。
・おもりにペットボトル(350mL用)を用いた理由は、洗瓶で水を入れることで少量ずつ質量を変化させることができることや、生徒からの予想をもとに質量を変更することができるためである。
◆ 秋の研究集会でいただいた意見
Q 単位に「g重」を使っている。生徒が重さと質量を混同してしまう要因になってしまうのでは?
◆ 今回の例会で出た意見
・斜めにひっぱっているというより、下に引っ張っている感じがしてしまうのではないか。生徒のノートを見ても、おもりが下向きに引っ張っている様子から考えていることが見られる。
⇒ Y字にして、ばねばかりで引っ張ったらどうだろうか。
・なぜばねばかりではやらなかったのか。
⇒ ばねばかりだと「調整」してしまうイメージがある、と考えた。
・ばねばかりだとうまくいかなった。平行四辺形にならなかった覚えがある。
今回のパターンは、長方形になるパターンしかやっていないので、平行四辺形になるパターンをやったほうが良いと思う。
・逆さのY字型よりも、正立のY字型の場合の方がいいかもしれない。
・定滑車の理解は、どの程度か。
⇒ 向きは変えられるけど、力の大きさは変わらないというところまでは言っている。
いろいろな向きに引っ張って力の大きさが変わらないことを見せている。
・定滑車を間に入れた場合に、伸びが変わることとかはわかるのだろうか。
・こどもたちが理解できれば良いと思うので、うまくいくように調整して1回見せればよいと思っている。
・ばねばかりで引っ張る際に、リングのねじれが気になるので、3つ又のタコ糸をつかった。
・平面上で、引っ張るのは、おもりにしてもいいのではないだろうか。
⇒ それはとてもいいかもしれない。下向きに引っ張っているという間違った捉え方は減りそう。
・大小のばねばかりで示す値に違いがあると考える生徒がいるかもしれない。どちらも同じ値を示す、ということをどこかでやっても良いかもしれない。
・デジタルセンサーだったら、摩擦はないので、それを使った方が良いかもしれない。
⇒ 力センサーでやってみたけど、臨場感がなかったから、結局ばねばかりでやった。斜面上の物体に働く力のときは力センサー(スマートカート)でやったことがある。
・最初は力がかかると変形するようなものを見せたほうが良いのではないか。
2.中学校電磁気学の授業実践(手塚さん)
コイルだけで磁場が発生すると考える生徒を増やしたい。そのような気持ちを持っていた。2023年11月号の生源寺さんの記事を読み、それを授業プランに組み込んでみたので報告する。生源寺さんの提案では、コイルが磁場を作り出し、それによって鉄心が磁化する流れで学習させており、非常に面白いと感じた。生源寺さんの提案では、全部で6時間分で紹介されていたものを私の授業では、4時間分に圧縮して実施した。
◆ 1時間目
・課題:鉄Aを磁石から離すと、鉄Bはどうなるか。
小学校で磁石から離れた鉄も磁石にくっつくことはやっていると思う。離れていても磁力ははたらく、ということが分かればよい課題と認識している。
・実験:ケーブルにつるした2枚の鉄板A,Bの下部から磁石を近づけるとどうなるか。
面白いと思ったのは、生源寺さんも書いているように、鉄板全体がS極になっていると考える生徒がいるだろうこと。そこで、方位磁針を使い、下がS極、上がN極になっていることもちゃんと確かめた。
この現象は、電流計にも使われている。
通常の電流計(可動コイル型)は、交流の場合は整流子を使っているが、可動鉄片形計器は、この実験と同じように、鉄片2枚を使用したような仕組みになっており、交流でも直流と同じように使用できるという特徴がある。
◆ 2時間目
・課題:方位磁針はどちらを向くか。
・実験:棒磁石の周りの磁界を記録する。
透明な板と、マーカーを使って、方位磁針の向きを記録していく方法でおこなった。
◆ 3時間目
・問:エナメル線をそのままつかって、豆電球を光らせることができるか。
エナメル線には被膜がついているということを確認することが目的である。
・説明:エナメル線を鉄のボルトに巻き付けて電流を流す。電磁石になることを確認する。
・質問:次は、ボルトにビニールコードを巻き付けて電流を流す。どうなるか。
エナメル線で電磁石を作った場合と、ビニール線で電磁石を作った場合は、結果が変わると思っている生徒がいる。ビニール線ではできないと考えている生徒が多くいることがわかった。
・課題:鉄心から5cmのところにコイルが巻かれている。コイルに電流を流すと、鉄心は磁石になるか。
DVDケース(50枚入りの円筒状のもの)を使用する。
まず、アルニコ棒磁石2本(4本の方が良い)をDVDケースの外側に取り付け、中心部のボルトにクリップがつくかを調べる。
(課題)DVDケースの外側にエナメル線を200回巻きつけて、電流を流す。中心部のボルトにはクリップがつくだろうか。
◆ 授業を終えて
生源寺さんの報告を読み、以前考えていたよりも生徒たちの電磁石に対する理解は少ないと驚いた。
棒磁石がつくる磁場と、円形電流が作る磁場とが「似ている」という言い方について、最初は気になっていたが、東京書籍の教科書にも同じような表現があり、納得した。今回報告した3時間目の課題をやるかどうかで生徒たちの理解はずいぶん変わってくると感じた。
今回、中学校ではじめての電磁気分野の授業であった。今回報告した授業案は、生徒たちの理解を向上させるのに有効だが、かなり授業時間をとってしまうのが難点だ。
◆ 今回の例会で出た意見
・磁場、磁界という、生徒の言い方の違いがあるが、どのように使い分けているか。
⇒ 自分は「磁場」と言っている。教科書は「磁界」と記載しているから、どちらを使う生徒もいるのだと思う。特に、どちらかに統一とかは考えていない。
・生源寺さんの授業を見に行ったことがある。感慨深いものがある。
・1本電流の周りの磁界はどのように行っているか。
生徒たちに考えを聞くと、何かしら磁場が発生する、というところまではいく。
スパイラル上になっているのではないか、という生徒からの意見も1割くらいは出てくる。
多くの生徒は、電流が流れたときに、「どのような磁石になるのか」という考え方をしてしまう。
回路中のどこかがN極、どこかがS極というように考えてしまう。
・鉄心に電流が流れているという予想を否定する実験として、電流計で測ってしまってはどうだろうか?
⇒ 誰かがやっているということ見たが、あまり効果的ではないと書かれていたので、やらなかった。また、子供たちは「電流のようなもの」が作用して、という言い方をしている。つまり、電流計にはひっかからないと思っているので、電流計で測定しても驚きはないだろうと思う。磁場的なイメージでこの言葉を使っているようだ。
2024年9月例会報告
2024年9月例会報告
日 時:9月20日(金)18:30より 場 所:国分寺市本多公民館
■実践記録集について
担当を移すことを検討中で、今後の記録集の配布方法について意見を交換しました。
今まで通りのブルーレイディスクはダビングなどに手間もかかるし、わざわざディスクを開くだろうか?という疑問もあるが、ギガファイル便などを使うと動画をダウンロードするのは大変そう、との意見があがりました。また、USBメモリーはやや高額になるという問題もあります。
会員用はギガファイル便、販売用はUSBメモリーにしてはどうか?という意見が出されました。
■藍の葉のトントン染め
藍の葉っぱを木綿の布の上に乗せて叩いて染めるサマースクールの報告でした。
途中で石鹸を使うと藍の色が綺麗に発色するが、なぜ石鹸を使うのかがわからなかったとのことです。ネットで調べるとかなりいい加減なことが書いてあるそうです。小学生20人が参加して好評だったそうです。
「汚れを落とすのに役立っているのかも」「塩基によって変化するのか否かを水洗いのみと中性洗剤とで比較してみたらどうか」などの意見が出ました。サークルのあとに実験してみたそうで、通信にはその結果が掲載されています。
■ぼーっと考えたこと
やたら暑かったのでぼーっとしていた、とのことでした。それでも自然科学教育研究所の授業づくり講座に参加したそうです。
気象について考えたこと
2016年と2024年の台風について、2016年の時はグループホームで死亡する被害があったが、今年はその教訓が生かされた様子でした。
モンスーンジャイア(季節風の渦)季節風と太平洋高気圧の縁を吹く風が合流してことで生じる渦とのこと。今年も発生したが、前回はやはり2016年だったとのこと。2016年の様子と似ていたそうです。
広島での中学生動員と原爆についてNHKスペシャル「原爆が奪った“未来“」を視聴、軍によって動員されて8月6日の朝は広島の中心部に約8000人の中学校1年生集まっていたが、その頭上で原爆が爆発し、一月の間に約5300人が亡くなったとのことだった。
■中央沿線理科サークル4月例会 討議資料の補足について
バルトンが撮影した根尾谷の写真(A4判)を見ると、地表に現れた断層崖のすぐ近くの農家が倒壊していない。
■いわて花巻大会に参加して
生物分科会に参加した。初めての試みとして予めオンラインで司会者会議を行なったため、スムーズな運営が期待されたが、遅刻者や機材の不足やエアコンがないなどの問題点があった。東京大会では司会者会議だけでなく分科会もオンラインで参加を可能にする検討をしているので気を付けたいと思いました。
レポートしたことについての反応は?との質問がありましたが、反応はあまりなかったようです。樹林についての実践を生物に位置付けて実践している人がいなかった。
映像を見せるだけで実物を見せないことには反対であるとおっしゃっていましたが、その通りだと思います。そのための段ボール顕微鏡は良いと思っいました。
■夏季研修報告2024
6つの研修会に精力的に参加した報告でした。
その中で、「伊豆大島」のフィールドワークの様子を、パワーポイントを使って報告してくださいました。
三原山が噴火してから徐々に植物が戻ってきているので、さまざまな段階が見られるようです。三原山のパイオニア植物はハチジョウイタドリとのことですが、コケ類や地衣類も同じくらいかもしれない、との発言がありました。
■オオカナダモの原形質流動
ATP(エネルギー)を運動エネルギーとして見せる授業を行なったそうです。化学エネルギーを力学的エネルギーに変化させていることまで理解させることは難しそうです。
■海外学校間交流「台湾」
生徒3名、教員3名の引率、現地で15人の高校生との交流事業に参加した報告でした。
思っていたよりも暑くはなかったそうで、日傘を指している人が少ないのが印象的だったそうです。
スクーターは4人5人乗っても良いのに、信号無視や横断歩道でないところを渡ると映像に撮られていて罰金が課されるそうです。そのギャップはなんなのか?不思議ですね。
ホテルの部屋にはアメニティーが有料のところが多く、スターバックスのカップが紙だったそうで環境への意識の差を感じます。日本ではストローだけが紙だけど・・・日本は見栄えを大切にしすぎでは?との意見がありました。
建物を建てるときに日本ではシートで覆うけど、工事中に本当の植物をハンギングしているのを見たことがある、との発言がありました。こんなところにも見栄えを気にしてしまう日本との差を感じます。
■フォッサマグナミュージアム
石が語る日本列島誕生の記録、いろいろなところから集めた化石がたくさんあったそうです。
メッセンジャーRNAワクチンの開発者のインタビュー記事に感銘を受けた。
■夏休みに学んだこと
岩手大会で以前サークルで検討していただいた、力と加速度に関しての実践報告をしたことをお話ししました。2025年の東京大会に向けて前回大会の総括集がどうしても紙で欲しくなって印刷したところ、大変な量になってしまったが、私には紙のほうが使いやすいことがわかりました。
2024年6月例会報告
6月例会報告
令和6年6月28日(金) 国分寺市本多公民館
1. 『理科教室』6月号を読んで
久しぶりの大作、5ページにわたるレポートでした。
最初の大野さんの論文中にある、板倉さんの授業書「トルクと重心」についての紹介がレポートの中にありました。静力学の授業を組たてるにあたり、板倉さんを手本にして「力の原理」を使って考えさせる実践が広く行われていますが、それに加えて「トルク(力のモーメント)の原理」の重要性について書かれているようです。実際の物体は質点ではありませんので、高等学校あたりでは、本当は扱うべきかもしれません。
「物理量はいつでも単位つきで考えないと、非常に危険である」と高橋金三郎さんの言葉が紹介されています。高橋金三郎さんの研究室出身の参加者から、どんなときでも(算数の場面など)でも単位をつけなければいけない、という補足がありました。
玉井さんの論文については、子どもたちに教え込む授業展開になっている、という指摘です。参加者から字数制限がある論文で授業の様子まで詳しく書くのは難しいのでは、という発言がありました。科教協会員向けに玉井さんが毎週出しているメールニュースには、もっと詳しい授業展開が書かれています。確かに8ページでそこまで書くのは難しそうです。ただ、本来は子どもたちがそれぞれ自分のノートに書くようなものが、教員により板書されているのが、私も気になりました。これを読んだだけだと、教え込むような授業展開に感じます。
子どもが書いたと思われる、まとめの文章がたくさん紹介されていました。( )でくくられた部分は本当に子どもがわかっていたのかとの疑問について、元小学校教員の参加者より、子どもが書いた文章を載せる場合、子どもが書いたとおりにしなければいけない、という指摘がありました(江川多喜雄さんがよく言っていたそうです)。これについては、玉井さんが最初からそう書かれたのか、それとも編集部からの依頼でそうなったのかは、わかりません。
高橋さんの論文。小学校から高等学校にかけて、おもりが教材としてよく使われます。おもりの解釈は、質量,力,エネルギーと多用で、きちんと使い分けないと混乱します。この論文中で、おもりを力として使う場合、「○○g分の力」と教員が意識して言葉を使い続けるのが重要と書かれています。教員自身が概念を分化して言葉に表していうことが大事です。さらに、学習した科学的な言葉は、「○○g分の力」だけでなく、どんどん使わせていかなければならない、と発言がありました。
終わりの方で、レポートp3最初の3行にある抽象化は一般化と同じ意味か?という質問がありましたが。抽象化は一般化と違い、例えば物体を四角形で表すとか力を矢印で表すといったものであるとの回答でした。そして、小学校での力学的内容は梃子だけでは本当に物足りないのか?という質問が最後にありました。私からは梃子実験器はいらないが梃子は必要であるように、小学校で扱うべき内容をもっと検討すべきではないか、と答えさせていただきました。高校教員の参加者からは、振り子と同様に梃子(実験器)も条件操作の教材として扱われているのではないかとの指摘があり、そうであればやる必要はないと、意見が出されました。
2.「教育実習で行った研究授業の検討(高校 生物基礎)」
酵素と酵素の働きについて、学生実験の授業。レポーターから生徒とのやり取りについて話題にして欲しい、との要望を受けて授業の映像を視聴し、検討にはいった。
まず、私より発言させていただいた。生徒に対する発言に繰り返しが多かった。注意事項についても、目的(我々が子どもたちに示す学習課題のようなものか)を伝えるのも繰り返し繰り返し話すと子どもたちは聞かなくなるでしょう。ただこの前に違うクラスの授業があり、目的を板書したら作業の実験になってしまい、言葉でコンタクトしたほうが子どもたちにとって何のためにやるのかが明確になると考えられて、口頭で伝えることにしたそうです。
小学校理科専科教員の参加者の発言。実験をやっている最中に子どもとやり取りするのが大事では?注意事項について繰り返し指示されているが、あまり言い過ぎない方がよい。ご自身も6年生の燃焼の実験の時に火が気になったが、火に注意させるのではなく中身について、実験中に子どもたちやり取りした方がよいと感じた。
このあとは、授業のプランや中身について話題が移った。高校教員の参加者から、この実験ではどちらが触媒なのかがわからない、1時間で行うと実験というより作業になってしまう。実験としてうまくやるにはもう1時間は必要で、前に実験計画を立てさせたらどうか、という提案がありました。今実験で何をさせたいのか、また評価をどのようにするかの検討がもっと必要との意見もありました。
小学校では唾液をやっている、中学校でも繰り返しやっている(温度との関わりが追加される)との指摘が有り、課題を変えてみたらどうか、という話が出ました。小中学校の授業で既に動物は酵素を持っていることはわかっていそうだから、「植物も酵素を持っているだろうか」という課題にして大根だけ学生実験でやる。二酸化マンガンだけでなくレバーも演示で、植物に絞って考えさせるのです。
参加者より石英とどう比較するのかという質問が有り、他の参加者から、何でも反応するものではなく反応しないものもあるとして教科書でも扱われているとの回答がありました。それに関連して高校の化学の教員から、石英ではダメ(反応しない)⇒(放っておいても酸素が出るが)二酸化マンガンだと激しく反応する⇒では二酸化マンガンではなく生物体ではどうか?と展開し、生物体でも同じように反応が促進されることを確認して、生物体の場合は触媒を酵素という、としてはどうか、との意見も出されました。最初に酵素を出すのではなく、先に実験を行ってから酵素を導入するという流れになります。それを受けてレポーターも、目的を上手く立てられれば実験が先でもよいと思われたようです。
最後にレポーター(お疲れ様でした)からレポートをした感想を述べていただきました。どういう授業計画を立てるのか、見えていない視点があった。いろいろなやり方がある。小中学校で学んだことをおぼえていないこともあるので、小中での学習と関連づけてやっていきたい、とのことでした。
今回は小学校現役の方、少し前に中学校の経験がある高校の方、新採2年目の高校の現役の方、学生といった若手豪華キャストの参加により、いつもより深まった議論になったと感じました。
2024年5月例会報告
2024年5月例会報告
日 時:5月24日(金)18:30より
場 所:国分寺市本多公民館
■新たな参加者
今回は3名もの新メンバーの参加がありました。私立小学校で理科専科を担当している方、都立高校2年目の方、6月に教育実習を控えた学生さんの3名です。
今回の例会でも活発に発言されていて、6月例会では学生さんは「研究授業の検討」、理科専科の方には「『理科教室』を読んで」を担当していただくことになりました。
今後も様々な実践が検討できるとよいですね。
■実践記録集の話
はじめに実践記録集BDの編集の話がありました。原稿や映像の締め切りは6月末日です。多くの人が執筆し、充実した記録集にしたいものです。
テキストはPDFに動画はMP4にして送ってください。6月例会に持ってきていただいても結構です。
■活断層と暮らし 補足
前回の「断層と暮らし」の報告に関する補足説明がありました。長い間断層が見えた場所しか知らなかったが、地下の断層は佐渡島くらいまで続いているという話もあるそうです。
図8の中心部の三角形が隆起して、根尾川が東にずれることによって地形に大きな変化が生まれたそうです。80km近くにもわたって断層地形が見られるとのことでした。
写真13は断層を鉛直に掘ったところを横から見た写真(段層観察館で入手した本より)です。断層面にごく近いところでは平らな石が鉛直方向に並んでいることがわかります。これは元々水平方向に並んでいた石が断層が動いたことによって、地中で90度近く回転したことが考えられているそうです。
参加者からは、明治時代まで日本に地震の専門家がいなかったことにびっくりした、との発言がありました。江戸時代にも測量や治水などの技術があったのに地震についての専門家がいなかったことにびっくりした、とのことです。
地震は一定の時間間隔で繰り返しますが、人間の寿命のほうが短いことが多いので、なかなか伝わらないのではないか、各地域にはここまで水が来たなどの石碑が多くあるが、しばらくするとそれが埋まってしまう、などの指摘がありました。記録を残したり、語り継ぐ重要性を感じました。
■コロナ渦中でのリモート授業あれこれ
コロナ禍に動画を撮ってYouTubeにあげた「光の授業」を視聴しました。「アルミホイルと白い紙が暗室の中で見えるか?」という課題です。最初は動画を途中で止めて予想させるなどの工夫をしていたそうです。慣れてきてからは、動画を分割し、予想してから次の動画を見るようにしたそうです。
意見交換ができないことが最大の問題だと感じたそうで、それを少し改善した「三態変化」の分割して作られたビデオを視聴しました。
パルミチン酸と硫黄と金属をガスバーナーで加熱して液体になるかを実験で見せた後「食塩を液体にすることができるか」と問います。
生徒たちはチャットで自分の意見を言い、教員が指名した生徒がマイクをオンにして意見を言う、という方法です。議論することは難しいものの、生徒たちの意見を聞くことができるようになったのは、一方通行よりは良さそうです。
小学校ではお湯でも「◯◯℃の水」という言い方をするが高校ではどうなのか、と質問がありました。レポーターも「◯◯℃の水」と言ったほうがよいと言っていました。
その後、「体積」の授業として「コップを逆さまにして中が濡れるか?」「空気の出口のない三角フラスコの中に水が入るか?」も動画で視聴してから、質問と協議になりました。
Q カメラは何を使ったのか?コンピューターにはどのように取り込んだのか?
A リモコン付きの家庭用ビデオカメラを使い、Windowsに標準で入っている「フォト」というソフトで編集を行ったそうです。
Q 動画作成にかけた時間は?
A 順調に進むとそれほど時間はかからないが、途中で生徒の声などが入ってしまった場合はちょっとかかる。妨害が入らなければ2時間くらいだそうです。
Q 白い紙とアルミホイルの実験で、見えるということは、出た光が目に入った時に見えるということを学べたのか。
A この後の授業で行う。
Q 小学校や中学校でやったことを高校でやるのか?
A 中学校までに物の本質に迫るような授業をしていないので、高校でもやる必要がある。
意見 幾何光学だけで高校の光学の授業が終わってしまうのは残念
都立学校は学習支援システムとしてMicrosoftのTeamsを使っています。『理科教室』などを読んでいると、生徒たちが書いたことを共有できる機能があるロイロノートが便利そうです。小平市ではロイロノートが使えるようになったそうです。それまではGoogleのClassroomだったそうですが、これはほぼ掲示板機能だったそうです。
リモートだとロイロノートが良いかもしれないが、対面だと途中経過が見えにくかったり、全員にフィードバックするのに全員が揃わないとできないことが難しいことなどの難がありそうです。また、Googleのジャムボードが近いかもしれない、という意見がありました。
また、生徒の立場で見ると実験の失敗も見せて欲しい、という意見もありました。NHKの『大科学実験』などでは、失敗も見せるところが面白かった記憶があります。YouTube配信ではなく、生配信で授業を行う場合は、対面の授業で行うようなライブ感が漂います。
リモートと対面との理解度の差については、比べてないからなんとも言えないものの、リモートだと生徒の様子がわからないので、授業のやりづらさを感じます。
■『理科教室』5月号を読んで
特集を中心によく読み込んで書かれたレポートでした。レポーターの主張はここでは書ききれないので資料を読んでいただきたいと思います。
話題になったのが園部さんの「植物の栽培・観察をする際に大切にしたいこと」でした。自分の目で見たことと、誰かから聞いたかと思われることが混在していたり、「大切にしたいこと」が伝わってこないなどの指摘がありました。また、写真のキャプションについて、書き方が統一されておらず、わかりづらかったとの指摘がありました。
また玉生さんの「恐竜は鳥として生き延びている」に関して、今後はそのような授業を作ることも検討してはどうか、何かできることはないだろうか、と興味を示していました。
また、写真撮影はカラーで行うが、印刷するときはモノクロになることが多い。モノクロにして調整するところまでは執筆者がやって欲しい、との意見が出されました。
さらに、紙面ではモノクロになってしまうのはやむを得ないが、その分カラー写真をネット上で公開してはどうか、という意見には、「なるほど」と思いました。
2024年4月例会報告
2024年4月例会報告
日 時:4月26日(金)18:30より 場 所:国分寺市本多公民館
■輪ゴムの琴の改良
先月紹介してくださった輪ゴムの琴(牛乳パック)の改良版です。『理科教室』にはいちごパックで作ったものが載っていたので、ミニトマトのパックでやってみたそうです。実際にはじいてみると牛乳パックより振動の様子がよくわかりました。
■活断層と暮らし 〜地震や活断層と人々を巡って〜
4種類の資料をもとに説明していただきました。よく見る根尾谷断層の写真)は不鮮明で背景が白く飛んでいるものが多いのですが、レポーターの資料はとても鮮明で、真ん中の道を歩いている人も確認でき、バックも白飛びせずに山などが写っていることがわかります。
「立川断層」や今年の「能登半島地震」を教える手段として「根尾谷断層」が使える、という主張をされていました。また、教員になった数年後に、科教協愛知大会に参加した時に根尾谷断層を見学した時の貴重な写真などを見せていただき、その後質問の時間を取りました。
まずは、能登半島地震で何を教材にすればよいかと考えているか、との質問がありました。地震には津波・液状化・地震本体(活断層のずれ)など様々なことがありますが、その中で地震本体を教材にすべきという考えか、との質問が出されました。
レポーターは、『理科教室』3月号で鈴木邦夫さんが詳しく書いていることを指摘したうえで、どこまで教えるべきかは校種によって違うものの、地震断層を教えることを念頭に置いている、とのことでした。また、新聞を取っている人たちには「新聞の見出しの書き取り(日付と見出しを時系列で書いていく)」だけでもやってみてはどうか、と考えているそうです。
私は鮮明な根尾谷断層の写真に驚いたので、根尾谷断層の写真はどのように手に入れたのかを伺いました。小平市下水道記念館で販売していた写真集(日本下水文化研究会の発行)に掲載されていたものを複写したとのことでした。
今授業で使うのなら、能登半島地震の空撮写真をテレビで見たので、それを使うのが良いのではないか、という意見が出されました。
立川断層については、五日市街道沿いの阿豆佐味天神付近から武蔵砂川駅付近に向けて断層地形を追うことができる、との発言がありました。一度フィールドワークを行ってみたいと思いました。
また、災害が起こった直後は様々な映像が流れますが、1週間くらい経つと報道されなくなる映像があるので、そのようなものを録画できれば良いという発言がありました。
根尾谷断層や能登半島地震を見せて「近くにある立川断層を見に行こう」という授業は、すぐ近所でないとできないかもしれないが、大きな地震の写真などを見た後に地域の地震遺産を見ることはできるかもしれないという発言がありました。
能登半島地震の場合、授業で学んだことを使って説明できたのか(できるのか)どうか、検証する必要があるとの意見が出されました。
■『理科教室』3月号を読んで
主張の最後に書かれている「定比例の法則からアボガドロ定数が見えてきました」は、高校生でも、物が粒でできていることが理解できていない生徒が多いような気がするので、ちょっと無理があるような気がする、とのことでした。小学校や中学校で物を粒としてイメージできるような実践が必要であると感じます。
松井さんの論文のはじめに「中学でモルを導入しよう」と主張されていますが、中学校でモルは難しいと思う、という意見でした。具体的な数値が出てくると指数を扱う必要がでてくる(指数を使わないと膨大な桁数の数字を扱うことになります)ので中学校では難しいとの認識でした。具体的な数を使わなければできるかもしれませんが、数字を使うから便利だし理解できるので、その辺りの塩梅が難しいのではないかということでした。松井さんがどのような実践をされていたのか興味があるところです。
また、37ページの左側の顕微鏡で確認する実験では「検出できないことを確かめる」とありますが、検出できないと生徒たちは「なくなった」と結論してしまうのではないか、との懸念がありそうです。
40ページの左下 化学反応式の読ませ方について、2H2+O2→2H2Oを「2個の水素分子と1個の酸素分子が反応して2個の水分子が生成した」と、分子の個数を意識して読ませるのは良いと思った。中学校ならば、これができればモルの導入はしなくて良いのではないかとの意見がありました。
小松さんの「物質量(mol)の導入」のモルの三角関係は理解できるが、この図は果たして生徒たちに理解できるのか疑問とのことでした。比でやった方が良いのではないか、という意見がありました。
町田の「物質量(mol)の学習は粒のイメージを大切に」で、モル濃度や反応式などの時も粒の数を意識する、というのはわかるので、逆になぜそうなっていないのかが疑問だそうです。
その後、各自感想を述べ合いました。出席者から松井さんはいろんなことを詰め込みすぎなのではないか、小佐野さんの、水に石を入れたときの重さの次に、水に食塩を入れたときの質量について考える問題の意味については、食塩は見えなくなってしまうからやる意味があるとの確認がありました。
その他、算数と理科と棲み分けをしながらできると良いが、算数は少人数になってきているので、一緒にやってくれる人でないと難しい、との意見が出されました。
※2024年6月19日一部訂正
2024年1月例会報告
2024年1月例会報告
日 時:1月20日(金)18:30より 場 所:国分寺市本多公民館
1.「音=振動を意識した学習を!」
音が出ているとき、ものが振動している。その振動がものを伝わる事実を実感できるようにするための授業プランの紹介でした。授業で取り組ませる工作を参加者で楽しみました。
第1時 紙笛 A6版くらいの紙を四つ折りにして、真ん中に親指大の穴をあけて吹くだけの簡単な笛です。人差し指と中指で挟み、1mmくらいの隙間をあけて、口をぴったりつけて強く吹くのがコツです。しばらくしたら、全員音を出せました。
第2時 たてぶえ型紙笛 A6版の紙を鉛筆を使ってクルクル丸めて、セロハンテープで止めて筒を作ります。鉛筆は丸でなく角のほうが丸めやすいです。一端に切り取られない程度にはさみをいれて、イカのひれのようにして穴をふさぐように折り、リードを作ります反対側から息を吸うと、イカのひれが震えて音が出ます。目の前でイカのひれの振動が見えますので、振動が実感できます。筒を切って長さを変えてみたところ、あまり音の高さが変化しません。以前からよく作られていた、プラスチックストローの一端を三角形になるように切ったストロー笛では、普通の気柱共鳴実験のように明らかに高さが変わったのに、この笛はあまり変わりませんでした。イカのひれの固有振動数で決まるのか?よくわかりませんが、吹きながらイカのひれを切って小さくしたら若干音が高くなったのでその可能性はあると思われます。
第3時 牛乳パックを使った輪ゴムの琴 これは出来上がったものを見せていただきました。私がはじいたところ、牛乳パックが共鳴しているようには感じませんでした。輪ゴム(弦)と牛乳パック(共鳴箱)の固有振動数が合っていないように思いました。
第4時 楽器を調べよう 音楽室へ行って、いろいろな楽器の振動を観察する授業。太鼓の前にろうそくを立てて太鼓をたたくと、ろうそくの炎が揺れる実験があります。途中からリモートで参加した参加者に、ハイスピードカメラで撮影した映像を画面共有で送ってもらいました。スピーカーの前に置いたろうそくの炎がスピーカーの振動と同じ周期で振るえ、振動が伝わっていく様子が観察できました。
第5,6,7時 風船電話 糸電話 金属も音を伝える
膨らませた風船2個を糸でつないだ風船電話、紙コッブ2個を糸でつないだ糸電話を作って遊びました。糸をピンと張らなければならないのですが、強く引くと糸が切れてしまします。長い糸を使って、体育館や廊下でやってみるとよさそうです。金属はスプーンを糸で吊り下げて、釘でたたくだけです。糸の先に糸電話の紙コップを付けたら、音がよく聞こえました。
最後に7時間も必要なのか?と質問が出ました。小学生では、これくらいの時間が必要だとの回答でした。
2.『理科教室1月号』を読んで
1月号の特集は「土壌と理科教育」です。最初に、生物サークル実践記録集第2集と3集、昭和44年の東京書籍1年生用の教科書が紹介さました。土壌学習の記録や記載があるそうです。今は実践する人も減り、教科書の扱いも小さくなっていますが、以前はもう少し盛んだったようです。
巻頭口絵は、小学校に作られた屋上農園です。6ページもあります。特集が「土壌」だからでしょうか。出版社が本の泉社だった時より余計な背景がなく、見やすくなりました。ただ、解像度が悪い写真がいくつかあり、残念です。元の写真の解像度の問題かもしれません。
特集の執筆者は5人。いつもは6人だったので、書き手が見つからなかったのかもしれません。また、小学校の論文はありませんでした。
報告の大半は、藤井さんの論文についてでした。詳細は用意された資料を見ていただくことにして、話題になった部分を紹介します。
土は、岩石が風化してできた粘土や砂に生物遺体の分解・変質よって生じた有機物が加わったものです。砂、粘土、有機物の混合比率によって色、性質、生産力が異なります。生産力の説明が直接書かれていないので、後に書かれている小麦の収穫量ではないかと思われるそうです。ただ、論文の中で土によって育つ作物が違うことも書かれており、4節「食糧危機・飢饉と土」では肉の生産についても穀物換算で書かれています。穀物の代表として、小麦を使っているのでしょうか。
4節に、ウクライナの国土の6割が肥沃なチェルノーゼムで、欧州では最も豊かな土があると書かれています。ロシアのウクライナ侵攻が土を狙って行われているかのようにとらえられるような書かれ方がされており、日本の満州侵略についても同じ行動原理と書かれているのは、ちょっと乱暴ではないか、とのことです。確かにそう思いました。
8節「農家・農業・農の価値」では、農業経営について書かれています。巻頭口絵のような屋上菜園(理科の実験に相当)、また高学年の社会科の教育課程で検討する内容とのことです。また、家族農業と小規模農家は同じではない、と書かれています。北米では、3000haを1農家で耕すこともあるそうです。そして小規模農家が世界食糧生産額の約3割を生産しており、面積当たりの食料供給量で大規模農業に勝るそうです。
論文の最後に、「学校で土を教えることを義務にする必要があるとは思いません」と書かれていましたが、レポーターは義務教育で教える必要があるとの意見です。特集のタイトルが「土壌と理科教育」なのだから、もっともです。そう考えると、実践レポート、特に小中学校のものが欲しかったと思います。
ひと通りの報告の後、参加者から「こんなに土の種類があるとは知らなかった」との発言がありました。地理の授業の中でこれを全部覚えなければいけないとしたら、大変です。
内容と関係ないことで、本の泉社の時と比べてすべての画像がクリアになったと話題になりました。確かに前より鮮明な感じです。ただ、不必要に写真が大きいところがあり、余白を埋めるのに大きくしたようだ、と思われました。文字間が不自然に広がっているところもあり、なかなかうまく編集されていないと、指摘されました。
2023年11月例会報告
2023年11月例会報告
日 時:11月24日(金)18:30より 場 所:国分寺市本多公民館
太陽の南中時刻が日によって違う
以前もお話ししていただいたのですが、それまでは南中時刻が変わることなど気にしたことはありませんでした。しかし、地球の公転軌道は楕円ですから、太陽が南中してから次に南中するまでには毎日毎日360°+1°にならないことは当然と言えば当然です。しかし、地球の公転軌道はほぼ円軌道なので、それほど大きな影響はないのだそうです。
さらに違うファクターがあるとのことでレポーターが資料の説明をしてくださいました。私にはちょっとわからなかったのですが、参加者からは前回話があったときのことを受けて、公転面(季節)と赤道面(時刻)がずれていることが問題だったような記憶がある、と発言がありました。楕円軌道由来の変化と、公転面と赤道面のずれ由来の変化で極大値と極小値が2つずつ現れるのではないか、という話になりました。
その他、「日時計は南中時刻を基準にしているはずなので、その補正はどのようにしているのか。」「南中時刻が変わるなんて考えたことがなかった。」「小学校で日時計を作って南中時刻は11時40分くらいだったが、年間を通して南中時刻が変化していることは観測したことがない。」「潮の満ち引きにも関わることだけど、小学生の段階では必要ないのではないか。」「日没や日の出の時刻は実感できるが、南中時刻はなかなか実感できない。」などの意見や疑問の発言がありました。天文台の人に話を聞いてみたいと思いました。
摩擦の授業
「物体に加わる重力の大きさより摩擦力が小さい」ことを学習するための授業を視聴しました。後ろの黒板にスマートフォンを置いて撮影したため、前が見にくかったのが残念でした。
課題を出したあとに4〜5人に分かれて生徒実験を行っていました。生徒実験があるのに教室での授業だったため「実験室でやらなかった理由は?」との質問がありました。これは以前の管理職による授業観察で「生徒との距離が遠い」との指摘があったためとのことでしたが、班分けの手間とか実験の見やすさとかを考えると実験室の方が良いように思う、との発言がありました。
言葉の使い方として、力の大きさをついつい「重い」「軽い」と言ってしまっていましたが、やはり、「大きい」「小さい」とすべきとの指摘がありました。
班ごとに意見を決めさせたあと、各班で実験を行わせていました。実験室での予備実験では接触面積の大小によって摩擦力はほとんど変わらなかったそうですが、教室でやると面積が小さくなると摩擦力も少し小さくなったそうです。摩擦力はさまざまな要素によって決まる力なので、接触面の状態が大きく影響するようです。
また、教員の表情で生徒が正解か不正解かがわかってしまっている様子が見られたので、淡々とやるか、大袈裟にやるなど工夫してはどうか、とのアドバイスがありました。
グループにして授業を進める授業方法についても議論になりました。高校生だと意見が出にくいのでは?という質問に対しては、グループにした方が意見が出やすい、との回答があり、それを支持する発言もありました。一方で、グループ内で意見を決めさせると強い意見の生徒に引っ張られる恐れもあるなどの意見もありました。レポーターは、グループにするかしないかをクラスごとに変えてやってみたそうです。感覚としては、全員に手を上げさせた方が良いような気がする、とのことでした。
次に「重さ」の話になりました。「重さ」には質量・重力の大きさ・ずっしり感の3つの意味があるので、言葉を使わないようにしている、との発言がありました。これは、A君が質量のことを、B君が重力の大きさのことを言っている場合に意見が噛み合わなくなることを避けるためだそうです。
また、重力ではなく垂直抗力を重視するのであれば、垂直抗力を重視するようなシチュエーションを与えた方が良いのではないか?ということで実例が示されました。
レポーターから、実験が必要か否かはどこで判断しているのか?との質問があり、小中高の教員の立場からそれぞれ回答がありました。
「話だけの人もいるかもしれないけど、小学校では全部やっている」
「器具や薬品がないときは省くことがあるけど、中学校も実験が前提」
「高校では言葉を定義するときだけは実験しないけど、あとは実験を伴う授業。食塩の融解のように生徒がやっても100%成功する実験は生徒実験にしている。」などの回答がありました。サークルや研究集会に通っている人の授業は実験が多いかもしれませんが、一般的にどうなのかはちょっとわからないところです。
また、広島の土肥さんが毎年の全国大会の物理分科会やナイターなどで実験紹介をしてくださるのですが、最後に「動画で終わらせたくない」とよく言っている、と紹介がありました。土肥さんは全国大会の分科会やナイターなどで、授業に即した実験を面白く工夫して軽妙に紹介してくださいます。今年の岩手大会や来年の東京大会でもお会いできるのが楽しみです。
『理科教室』11月号を読んで
まず、口絵は埼玉大会の写真が並べられていますが、多くの写真を載せるために1枚1枚が小さくなってしまったことと、背景に色がついていたので見にくかったとの感想がありました。
特集は「特別支援教育と自然科学教育」でした。レポーターは特集論文の感想を1つ1つを丁寧にお話しされていましたが、詳細は資料を読んでいただきたいと思います。
箕輪さんが書かれた「主張:ひとりひとりに向き合った理科授業を」は、一見するとよく言われる「個に応じた学習」と同じイメージを持たれてしまうかもしれませんが、個人の個性と向き合いながらも、つながりを大切にして学んでいくことと、ICTなどを利用して個々で学習する、文科省の言う「個に応じた学習」とは違う物であると思いました。
木本さんの「地球絵巻物づくり」はご本人も難しいと考えていたところを、中国ブロックの研究会で「難しく考えずに実践しては?」と言われてやってみたそうです。このような背中を押される一言をもらえる機会があるのは良いなぁ、と思いました。
その後、岩手大会で頒布する、実践記録集(42集)の作成についての案が示され、了承されました。
2023年10月例会報告
2023年10月例会報告
日 時:10月27日(金)18:30より
場 所:国分寺市本多公民館
残念なことに公民館から借りたポケットWi-fiの不調(月末なので通信容量が限界まで達していたことが返却時にわかりました)でZoomに繋げられませんでした。そのため、スタンバイしていた方がサークルに参加することができず、申し訳ないことをしてしまいました。
■「弾性」の授業
レポーターは以前から積極的に授業を公開されています。今年は6月17日の学校公開に合わせて高2「物理基礎」の「弾性」授業を公開されました。
到達目標は「どんなものも力を受けると変形し、力を取り去ると元の形に戻る性質をもつ。」「どんなものも、これ以上変形すると元の形に戻れなくなる限界の変形量がある。」の2つを設定されていました。レポーターは設定した「弾性」の授業は3時間。1時間目の課題は「糸におもりを吊り下げる。糸は伸びるか?」、2時間目は「アルミニウム棒とガラス棒がある。これらに弾性はあるか?」、3時間目は「実験台に人が乗る。机はへこむか?」でした。
公開当日の授業は2時間目の授業で、撮影したビデオを視聴して、協議を行いました。資料は簡単な指導案と、当日の授業を文字に起こしたもの、当日の生徒のノート(全員分!)ととても丁寧です。ところどころ飛ばしながら授業を視聴した後、感想や意見を求めました。アルミ棒もガラス棒も直径2.5cm、長さ1.5mほどのものを使うので迫力もあります。
まずは何も使わずにアルミ棒を曲げようとするパフォーマンスをした後に、2つの椅子に渡して中央部に力を加えて変形させるのですが、その際「椅子の力を借りて・・・」と言っているのがそれはよくない、との指摘がありました。また、変形したことを見せたあとに「元に戻すよ」ではなく「力をなくすと・・・・」の方が良いだろうと指摘がありました。
一方、叩くと音が出るから振動しているはず、振動しているのだから変形しても元に戻る、などと発言している人がいたのは、すごいと思った、との発言がありました。
また、前の授業で糸を持ち出しているが、糸のほうが弾性がなさそうに思う。糸は弾性体としてはあまりよくないのではないか、との指摘がありました。阿久津さんは、糸はヨレているから、という生徒もいるので今年はテグスでもやったと回答がありました。私は糸のヨレまで考えずに普通のタコ糸で実践していたので、来年度は変えてみようと考えています。
次の時間は「机はへこむか」という課題を出しているが、「弾性はあるか」にしないのはなぜか、との質問がありました。レポーターは、この時間で机に乗ったので「その時にへこまなかったから」と考えたかもしれない、とのことでした。
YPCを中心に、この方法はよくないと言う人がいるが、それについてはどう考えているのか、との質問に対しては、その意見に賛成する人は実践レポートを書いていないので書いて欲しいとの発言がありました。
ドロドロの粘土みたいなものはどうだろう?などについて、少し議論した後、授業の順番についての話になりました。昨年まで「弾性」と「釣り合いの矢印」を一緒にやっていたが、昨年から変えたそうなのです。しかし「弾性をやってから矢印をやったら、矢印が描けなくなった」ので一緒にやった方が良いかもしれないそうです。
2学期に入って矢印を描かせようと思ったら全然描けないので、今は矢印をやりながら弾性もやることに意味があるのではないか、と考えている。作用反作用をはじめの方でやっていたが、来年度は元に戻そうか、と考えている、とのことでした。
また、高校物理では「伸び縮みしない糸」や「変形しない物体」などを設定するが、「すべてのものは弾性を持つ」としてしまってよいのか?という疑問があがりました。レポーターは、剛体や質点はわかる人には良いが、大学で物理を勉強しないような人には難しいし、そのような仮定をするような授業はしたくない、との回答でした。
それに対して、高校生なら仮定を踏まえて授業をした方が良いのではないか、また、誤差の話をしている。という意見も出されました。
それに対してはアナログ測定器なら誤差について考えなくて良いけど、デジタルだと誤差の話をした方が良いと考えるようになってきている、とのことでした。
■水俣病 大阪地裁判決に思う
9月27日に大阪地裁で水俣病と判定する基準についての判決がありました。特別措置法にすら漏れてしまっていた方々にも補償をせよ、という判決でした。
その判決について感想と水俣病の歴史などに関する資料を準備してのお話でした。
当時、水俣湾周辺で発生していた病気の症状に関してチッソ社内外での研究が進んでいたそうです。チッソ社内の研究では、チッソの廃液が原因とわかっていたのに、その実験や廃液の採取自体も突如禁止して、隠蔽を図った歴史があったのだそうです。
もし、このとき研究結果を公表したり、外部の研究機関に廃液を提供していたとしたら、新潟水俣病などを防げたかもしれないと思うと憤りを感じます。
■『理科教室』10月号を読んで
特集は「高校理科の新教科書を分析検討する」でした、なかなか時間が取れずに中途半端な報告になってしまいました。
主張として「自然科学をすべての国民のものにするために、高校理科では4領域を学ばせよう!」を書いています。総論としては賛成ですが、理科の必修を2単位増やすことでどの教科(科目)を減らすかの議論が必要になります。個人的には「総合的な学習の時間」や「探究」に使っている時間を理科に回してほしいと思いました。4科目やっている学校はどのようなカリキュラムを組んでいるのか知りたいと思いました。
2023年9月例会報告
2023年9月例会報告
日 時:9月22日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館+Zoom
〇夏に学んだこと
①仮説実験授業研究会が昭島で行っているサークル例会の様子を報告させていただきました。
この例会では、授業の研究は行われていませんでした。我々の研究サークルとは、ちょっと違う感じでした。そのサークルを主催しているのは元明星大学の小原さんという方です。サークルメンバーのお子さんが通っていた羽村市の小学校に毎年来て、授業を行っていた方だそうです。そのときの授業は「もしも原子が見えたなら」だったそうです。
②埼玉大会の案内(レポートの締切日)などが、『科教協ニュース』に掲載されていなかった。『理科教室』ではなく『科教協ニュース』が機関紙なのだから、こちらに載らないとおかしいと、主張されました。参加者からは『理科教室』も機関紙と返答の中で、いずれにしても科教協委員会と大会運営委員会の取り組みが不充分と意見がありました。
報告者は物理分科会に参加されたそうですが、高等学校や大学からの参加者が多く難しかったそうです。東京と岩手の高等学校からの参加者が、「遠隔でも授業ができる」という話をされていたそうです。私は遠隔ではできないのですが...
③ ChatGPTの勉強をされたそうです。入力データーの量が閾値を超えるとコンピューターが自分で考えるようになるそうです。それがなぜだかは、わからない。これに関連して人間の脳の研究も行われているそうです。
④ 埼玉大会はレポートも出し司会もやらされたが、久々の対面でよかった!分科会のレポーターが6人で参加者もこの6人だったようです。年配の方が多かったようですが、みなPPTでのレポート。紙でないと書きこみながら考えられないので、PPTは補助的に使うべきだと思われたようです。ここ数年国分寺九小でguest teacherとして行っている環境授業の意味について考えてきたが、他者のレポートを聞いて、人間は社会的存在であるが自然界の中で生き続けるヒトという動物であることを思い出されたそうです。
⑤ 埼玉大会では、お楽しみ広場で2歳の子がストロー笛を、笑顔いっぱいで上手に鳴らしていたそうです。滝川さんの講演はサイエンスショーで、酸性化についての実験をいくつか紹介されたようですが、それを紹介するきっかけとなったNHKの番組「海の異変しのびよる酸性化の脅威」の内容をもっと深堀して話してほしかった、とのことでした。
今年は関東大震災100年で、本屋に特設コーナーが設けられたり様々な報道がされたりてきた。朝鮮人虐殺についてのものもいくつかあった。朝鮮人を匿った警察署長もいたことが話題になったが、参加者がその場で検索したところによれば鶴見の警察署であったそうです。
中央線湯ノ花トンネルでの空襲について、8月15日のTBSnews23で新たな証言が報道されたそうです。その方は88歳(当時9歳)だそうで、機銃掃射の体験を話しもらう機会もこれからはほとんどなくなるでしょう。
⑥ 今年は関東大震災100年、NHKがどのように報道してきたか見てきたそうです。ご覧になった番組一覧が配られました。リストの中にひとつだけフジテレビの番組がありましたが、それはご覧になっていないそうです。朝鮮人虐殺に関する内容のようです。参加者の中で視聴した方はいなかったようです。
もうひとつは埼玉大会のレポートについて。高校卒業までに、日本の植生と自然林保全について学んでもらいたいという気持ちから作られた授業プランでした。参加者から、このプランでやってみてくださいと言ってもやる人はいないのではないか?という意見がありました。私も、小平を教材にした部分は地元なので植生のイメージが湧くが、別の地域については難しいと感じました。生物分科会は高等学校からの参加者が多かったようですが、植生図を教えたことがある人はいなかったようで、反応も批判もなく残念だったそうです。
⑦ 前の例会で紹介された味噌からの食塩の分離について、夏休みに実験してみたそうです。コンビニで合わせ味噌を買ってきたが、ダシが入っていて失敗。でもそれを用いて、水に溶かすパターンと一度焼いてから水に溶かすパターンの2つをやった。
焼くパターンでは焼くのに15分かかり、また溶かす(もちろん溶けないものも含まれますが、水にとくという意味)のも大変で、すり鉢で細かくしてからやる必要があるようです。水溶液をろ過したろ液にはいろいろ混じっていて見た感じはコロイドのようでした。一度焼いてから水にといてろ過したろ液もいろいろ混じっているようで、色づいています。ろ液を加熱したら、一応食塩が出てきたようでした。
実験に時間がかかるのと、ろ液にいろいろ混じっていて食塩だけが出てくるわけではないので、すべてを学生実験にはせずに、ろ過から後をやらせるようにしてみようかと思ったそうです。別の参加者から食塩が出てきたと確認できていないと指摘があり、炎色反応でやってみようと思ったが今回はできていない、と返答がありました。それはまた次回、ということで。
⑧ 埼玉大会では、以前例会にも出したモルの授業を報告した。体積、質量、物質量について、物質量として「おむすび」を単位として使ったらどうか、との意見をもらったそうです。おむすび一つに含まれる米粒の数がアヴォガドロ数に対応する数で、これを単位に「1おむすび」とする。それを中心において、1おむすびの質量、1おむすびの体積と対応をつけるとよいとのことでした。
2023年6月例会報告
2023年6月例会報告
日 時:6月30日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館+Zoom
混合物の分離の授業の視聴と検討
当初、1時間で予定していたものを2時間に分けたものでした。高校2年生化学基礎の物質の分離の単元で、味噌から塩を取り出す方法を考える授業でした。塩分濃度を求める目的で醤油を使うことがあるが、焦がすとすぐに食塩が析出してしまい面白くないので味噌にしてみた(前任者の課題を使ってみた)とのことでした。
音声がうまく聞こえないトラブルがあるなど、Zoomで映像を見る難しさを解消できませんでした。
「加熱したら燃える(焦げる)ものと燃えないものがある」「水に溶けるものと溶けない物がある」ことを利用して、物質を分離する方法を考えてほしかったそうなのですが、これがなかなか生徒の口から出てこなかったのが悩みだそうです。参加者からは「手がかり」がないんだろうね、との意見がありました。
1つ目の班は加熱してから溶かす、2つ目の班は水に溶かす、という意見が出てきましたが、いきなり最初の班が求めていた意見を出してしまったため、時間が余ってしまった、と反省点が述べられました。
参加者からは「味噌を作ることに生徒は興味は示さなかったのか?」「次の時間にどうやって食塩であることを確認するのか?」などの意見が出されました。食塩の確認については炎色反応と硝酸銀水溶液を使う方法を考えていたとのことでした。
最も話題になったのは「発酵食品を混合物と考えて良いのか?」との質問についてでした。確かに味噌は混合物なのですが、混合したときから違う物質になっているのは、この単元で扱うには不適切なのではないか?と、気になっているそうです。
「味噌って塩っぱいよね、塩を取り出してみようか?」という発問ではどうだろう、「何が入っているか教えないといけない。」との意見があがりました。
その他「まず、味噌から塩を取り出してみて、後から味噌の作り方を説明しては?」「そもそも味噌は難しいのでは?」「赤ワインを使ってはどうか?」などの意見がありました。
一個ずつ有機物を燃やして全て焦げることを丁寧に確認してはどうか?「有機物は焦げる」「無機物は焦げない」という法則性がわかると、他の授業でも使えるようになるとのアドバイスがありました。夏休みに実際に実験してみるそうです。
『理科教室』を読んで
レポーターは自身の実践で『大科学実験』の簡易版を校庭で行ったそうです。ストロボをたくと一斉に手が上がりますが、音の場合は(当たり前ですが)音源に近い順に手が上がるそうです。しかし、この「当たり前」を「やってみなくちゃわからない」とやってみたのが『大科学実験』であり、レポーターの授業だったわけです。
特別支援校の実践はいろいろな人に読んでほしい、とのことでした。以前も特別支援学校の実践が紹介されたことがありましたが、不自由さを持った生徒が理解できる実践は、不自由さを持たない生徒にも理解できるはずなので、学ぶことが大きいと思います。
参加者から、「1人シャーレ」の最初は東京の吉田さんとの発言がありました。昆虫の嫌いな生徒や教員でも観察できる、と評価されているとのことです。
また、音が小学校でしばらくなかったため、なくなった時にモノコードや音叉を捨てた学校もあるそうです。また、小佐野さんの「ふりこから振動と音へ」を参考文献に挙げている人が多い、との指摘がありました。
科教協では音は指導要領にはなくてもやっている人が多かった。高橋真由美さんや石崎さんがやっているような実践をやっていたそうです。また、ベートーベンがピアノにつなげた木を噛んで音楽を作っていたことなど、耳が聞こえない人は骨伝導で聴くなどの話もできるとの発言がありました。裸のオルゴールを噛んでハンドルを回すと、頭に響くように聴こえることを体験させたり、骨伝導ヘッドホンなどの話もできると思いました。
科教協東京支部春の研究集会の高尾山フィールドワークのビデオ報告
4月9日に開催された東京支部春の研究集会の生物・地学分科会合同の高尾算フィールドワークに参加したレポーターが作ってくださった資料の説明がありました。資料は地形図をはじめとして、植生図や地質図を使い、それらを重ねたり断面図にしたりと工夫を凝らしてありました。
空飛ぶ座布団(=ムササビ)やその食痕も見られたそうです。サークル発足当初に泊りがけで見に行ったことを思い出します。
資料の説明の後、フィールドワークのビデオを視聴しました。
実践記録集の話
実践記録集BRに関する話を話していただきました。夏の埼玉大会までに完成させて頒布します。
2023年4月例会報告
2023年4月例会報告
日 時:4月28日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館+Zoom 参加者 12名
1. 授業開きの授業「質量」
高校2年生の「物理基礎」、授業開き2回セットの2回目の授業。1回目で一応授業の流れは話してあって、実際にやってみる回。到達目標は「どんなものにも重さがある」、学習課題は「水素の入ったボンベから水素を抜くと、ボンベの重さはどうなるか」。記録された授業の映像をまず視聴した。
一通り見終わったあと、検討に入った。この授業について、水素についての授業ではなくて質量についての授業であることを確認された。最後に周期表を使っているけれど原子量には触れないのか、との質問に、どんなものでも重さがあることを示したいので、1番軽い水素にも重さがあることが分かればよい、との回答。今年の新規採用の方からも、なぜヘリウムではなく水素なのか、との質問があったが、やはり水素が1番軽いので水素を使っているとのことでした。授業の展開が違う私はヘリウムを使っているので、その理由を説明させていただいた。ヘリウムの方が重いのでわかりやすいこと、今の生徒にとっては水素より身近な気体であること。レポーターはいきなり水素であるが、私の場合はもっとゆっくりで、ヘリウムに入る前に5回の授業を行っているので、使う教材も変わってくるのだな、と感じました。
元中学校教員の感想(?)は、中学校で何も教わってこなかったのか?。全ての中学校で気体にも重さがあることをやっているのではないか?。参加者からは、教科書にあっても教科書で授業をやっている人(教員)には、教えることができないと、との発言があった。教育実習を控えた学生からは、中学校で気体も物質であると認識できているのだろうか?との疑問も出された。また、前年度中学校で授業をされていた新規採用者から、中学校は受検があるので教科書を全て終わらなければならないから、教科書をなぞったような授業しかできない、との発言があった。そして授業の中で水素爆発した原子力発電所の話が出てくるが、生徒にとっては4歳の時の出来事で知らないだろうし、やはり水素はあまり生徒に馴染みがある物質ではないのでは、との話もあった。
この後、若い参加者から質問が数点。先の学生からは、50回(2単科目だと実際に行える回数はこの程度)分の授業は決まっているのか?教科書の中身的にはどこまでやりたいか?。レポーターの回答は、大体は決まっているが細かくは決めていない。どこまでやりたいかについては全部を扱うのは難しいので、「物理基礎」であれば力学とエネルギーまでと後もう一単元、例えば波や原子核くらいはやりたい。私も振られたので、全員を対象にする授業なので運動方程式まではやりたいと回答させていただいた。もう一人からは、物理で質量はやらなければならないが、気体にも質量があるは無くてもよいのでは?仮説実験授業との違いは?。回答は、物理はものに共通している構造や理を学ぶので、どんなものにも質量と体積があることは必要だと思う。また、授業開きだから少し派手なものを見せられるように、とも考えた。仮説実験授業ではなく到達目標・学習課題方式(レポーターや私その他多くの人が手本にしている故玉田泰太郎さんが行ってきた授業)でやっているのは、ちゃんとノートに理由を書かせる、ちゃんと友達に話すことができる、ちゃんと何がわかったかを自分の言葉で書かせるのがよいと思っているから、とのことでした。
2.『理科教室』を読んで
用意された資料を元にひと通りレポートされたあと、自由に意見交換を行った。元私立高校教員より、巻頭口絵について。遺伝子解析で分かってきたようであるが、こんなに種があることに驚いた。そして生物を調べることで地形の変化が分かるとは面白い。また山本喜一さんの視点「分子の誤用と酸化水銀の熱分解について」について、イオン性物質や金属について、初歩的であっても物質最小単位として「分子」とすることについて反対していることに共感。間違いを教えてはいけない、と主張された。山本さんは教材として酸化水銀を使用するのは、危険性を考えると実践が広がらない、とも書かれている。私も酸化水銀を使った授業をしてきたが、そうかもしれないと感じました。
資料の中にもあったが、全体としての問題がいくつかあったとの指摘があった。ページ数の制限もあるのだろうけれど。写真が小さすぎたり、子どもの様子が分かりにくいなど。写真の順番が違うのでは、といったものもあった。以前からあることですが、紙面の構成がよくない。図や写真が見にくいのは1原稿に対してのページ数が少ないからではないか?数を少し減らして1原稿あたりのページ数を増やすのもよいのでは、と私は思いました。
3.第12回「忘れない3.11展」終わる
小平で行われている「忘れない3.11展」のレポート。震災から12年、12回目になったそうです。2万人くらいの方がなくなった。大きな出来事は歴史的に繰り返して起こる。関西や日本海側では地震がない、などといわれていたが、そんなことはなかった。元中学校教員のレポーターはもう学校で授業はできないので、こんな授業を学校でやってもらいたい、と思うことを、順番を示して来場されたお客さんに配布しているそうです。お客さんと話をしながら、一緒に考えて毎年変えていく。映像も毎年変えていっているそうです。公共の放送番組も、よいものは使っていく。TBC東北放送は展示会場での映写に同意してくださった。NHKは難しいそうです。
先ほどのレポートの中でも発言がありましたが、今の高校生は震災のことは知らないでしょう。また被災者でない多くの人々にとって、12年もたつと記憶が風化しつつあるのかもしれません。忘れずに伝えていくことの重要性を、再確認しました。
2023年3月例会報告
2023年3月例会報告
日 時:3月3日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館+Zoom
クイナの映像
目撃ポイントや撮影ポイントが記された資料を見ながら、撮影したクイナの映像を視聴しました。用水路は地下水なので、年間を通して16℃ と一定の水温を保っているそうです。なかなか発見しにくいが、セキショウに隠れるときに波紋が出るのでそれを目印に見つけるのだそうです。ビデオにも波紋が映っていました。写真③で嘴が赤いことが確認でき、写真④で尾羽が広がっているのはこれから動く兆候なのだそうです。
人の足音でも逃げて隠れてしまうほど用心深い割には、近くを走る中央線の音には慣れている様子でした。池の中にいるヤマトヌマエビを食べているらしい、とのことでした。
鳩より大きくて鶏より小さいくらいの大きさだったそうです。「クイ クイ」と鳴くそうです。すかさず参加者の一人がスマートフォンで検索して再生してくれました。
都立高校の問題
以前に比べれば少しはマシになったのでは?という感想でした。採点のやり直しがあった天文の問題以降少しはマシにはなってけど、まだモヤモヤするような問題が出されていると感じます。詳細は資料をご覧ください。
2の「とける」は「解ける」を使うこともあり、かつて科教協で「溶解」は「とける」、「融解」は「とろける」としてはどうか、という提案もあったが定着はしていない、との指摘がありました。
『理科教室』2023年1月号を読んで
1月号の北林雅洋さんの「大川小学校に学ぶために欠かせない情報」について写真や映像を交えて感想を語ってくれました。レポーターはこの辺りをフィールドワークしているので説得力があります。
北林さんの考え方は、教育委員会側の考えになっている、との感想がありました。
・写真はわかりにくいのでカラーが良かった。地図などと一緒に載せてイメージしやすくしてほしかった。
・最初に現地に行った時(2011年の8月)は三角地帯までしか行けなかったが、12年の正月に行った時は体育館の西側から「たたき」に登ったが、低学年の児童でも登れると感じた。次に行った時はたたきにロープがかけられていた。直接たたきに登ることは大変だが、西側からは登れたのではないか。北林さんが行った時には登れない状況だったのではないか。
などの感想や意見があがりました。
その後2013年5月(?)に撮影したビデオを視聴しました。ひな壇(たたき)に登った時の映像もあったはず、とのことですが、見つからなかったのでもう少し探してみるとのことでした。
視聴後、意見交換を行いました。
・裏山に逃げたら危ない、という認識はあったのか?
・教頭はそう考えていて外部と連絡をとっていた。避難場所になっていることで安全だと思っていた節もある。大川小学校は標高が低いにも関わらず北上川の氾濫に対する備えが足りなかったのではないか。
・咄嗟の判断は知識がなければできないし、知識があっても難しい判断だと思う。
・個人個人の思いというのが、災害に対して日頃から用心しなければいけないと感じた。
また、岩波書店の「止まった刻 検証・大川小学校」の紹介がありました。
2023年1月例会報告
2023年1月例会報告
日時:1月27日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館+Zoom
1.慣性の授業の検討
発表者は物体が力を受けると等加速度運動することを理解させたあとに、物体には等速度運動する性質があること(慣性の法則)を学ばせたいとの思いで作った授業である。
公開授業で実施した授業のビデオを投影し視聴した。授業で取り扱った課題は、「車輪が1個はずれた力学台車を机の上に置く。一瞬だけ手から力を受けて右向きに動き出した。手から離れた後、力学台車のv-tグラフはどうなるか。」である。v-tグラフは距離センサーを使ってリアルタイムにスクリーンに投影している。負の力を受けているときには右下がりの直線のv-tグラフになるかを理解できるかがポイントである。議論として以下の点が盛り上がった。
手から台車が離れた後に台車に働く力について
手が物体から離れているにも関わらず手からの力を受け続けているとの考えは長い間物理教育全体での課題である。力と運動量は混合しやすい。生徒が書いたv-t(速度と時刻)グラフをみると手から台車が離れたあとも台車が加速しているという誤概念をグラフに書いていたり、手が離れた瞬間からv-tグラフを考えよというが、手が離れた瞬間がv-tグラフのどこであるかの保証ができないとの疑問があるようだった。解決策として、F-t(力と時刻)グラフを考えさせた上で、台車に力センサーを取り付け実験をする。すると、v-tグラフとF-tグラフを同時に示すことができ、台車が力を受けなくなる時刻が明確になり実験結果がより分かりやすくなった。
最後には授業運営について話があがった。話し合いを通じて生徒自身の考え方が徐々に変化している様子がみられたので、とても気持ちがよいと参加者から発言がありその通りである思った。生徒に予想をさせて、考えさせて議論する授業は確実に生徒の思考の変容を生み出すことができる。ぜひ、若い人にこのような授業を参考にしてほしい。一方で、発言が聞こえにくい生徒がいる際に、教師が生徒の考えを復唱してしまうことに対して自分自身の言葉でクラスの仲間に語れなくなってしまうので、やめた方がいいのではという声があった。高校生は発言をさせるだけでも大変であるので、なかなか難しい課題である。
2.理科教室12月号を読んで
理科教育とグラフについての特集であった。グラフを共通言語にするという主張の文章は、各記事との関連が書かれており読みやすかった。無数の点が集まると線になることや、1つの点が2つの量を表しているかをいかにして理解させるかが考えさせられた。参加者からエクセルファイルを作って、点の集合体がグラフになることを数学の教員と連携して実践したいとの発言があった。これを使うと生徒は体感しやすくなりそうであった。科学におけるグラフの重要性を理解するために必読の特集であると感じた。
2023年10月例会報告
2023年10月例会報告
日 時:10月27日(金)18:30より
場 所:国分寺市本多公民館
残念なことに公民館から借りたポケットWi-fiの不調(月末なので通信容量が限界まで達していたことが返却時にわかりました)でZoomに繋げられませんでした。そのため、スタンバイしていた方がサークルに参加することができず、申し訳ないことをしてしまいました。
■「弾性」の授業
レポーターは以前から積極的に授業を公開されています。今年は6月17日の学校公開に合わせて高2「物理基礎」の「弾性」授業を公開されました。
到達目標は「どんなものも力を受けると変形し、力を取り去ると元の形に戻る性質をもつ。」「どんなものも、これ以上変形すると元の形に戻れなくなる限界の変形量がある。」の2つを設定されていました。レポーターは設定した「弾性」の授業は3時間。1時間目の課題は「糸におもりを吊り下げる。糸は伸びるか?」、2時間目は「アルミニウム棒とガラス棒がある。これらに弾性はあるか?」、3時間目は「実験台に人が乗る。机はへこむか?」でした。
公開当日の授業は2時間目の授業で、撮影したビデオを視聴して、協議を行いました。資料は簡単な指導案と、当日の授業を文字に起こしたもの、当日の生徒のノート(全員分!)ととても丁寧です。ところどころ飛ばしながら授業を視聴した後、感想や意見を求めました。アルミ棒もガラス棒も直径2.5cm、長さ1.5mほどのものを使うので迫力もあります。
まずは何も使わずにアルミ棒を曲げようとするパフォーマンスをした後に、2つの椅子に渡して中央部に力を加えて変形させるのですが、その際「椅子の力を借りて・・・」と言っているのがそれはよくない、との指摘がありました。また、変形したことを見せたあとに「元に戻すよ」ではなく「力をなくすと・・・・」の方が良いだろうと指摘がありました。
一方、叩くと音が出るから振動しているはず、振動しているのだから変形しても元に戻る、などと発言している人がいたのは、すごいと思った、との発言がありました。
また、前の授業で糸を持ち出しているが、糸のほうが弾性がなさそうに思う。糸は弾性体としてはあまりよくないのではないか、との指摘がありました。阿久津さんは、糸はヨレているから、という生徒もいるので今年はテグスでもやったと回答がありました。私は糸のヨレまで考えずに普通のタコ糸で実践していたので、来年度は変えてみようと考えています。
次の時間は「机はへこむか」という課題を出しているが、「弾性はあるか」にしないのはなぜか、との質問がありました。レポーターは、この時間で机に乗ったので「その時にへこまなかったから」と考えたかもしれない、とのことでした。
YPCを中心に、この方法はよくないと言う人がいるが、それについてはどう考えているのか、との質問に対しては、その意見に賛成する人は実践レポートを書いていないので書いて欲しいとの発言がありました。
ドロドロの粘土みたいなものはどうだろう?などについて、少し議論した後、授業の順番についての話になりました。昨年まで「弾性」と「釣り合いの矢印」を一緒にやっていたが、昨年から変えたそうなのです。しかし「弾性をやってから矢印をやったら、矢印が描けなくなった」ので一緒にやった方が良いかもしれないそうです。
2学期に入って矢印を描かせようと思ったら全然描けないので、今は矢印をやりながら弾性もやることに意味があるのではないか、と考えている。作用反作用をはじめの方でやっていたが、来年度は元に戻そうか、と考えている、とのことでした。
また、高校物理では「伸び縮みしない糸」や「変形しない物体」などを設定するが、「すべてのものは弾性を持つ」としてしまってよいのか?という疑問があがりました。レポーターは、剛体や質点はわかる人には良いが、大学で物理を勉強しないような人には難しいし、そのような仮定をするような授業はしたくない、との回答でした。
それに対して、高校生なら仮定を踏まえて授業をした方が良いのではないか、また、誤差の話をしている。という意見も出されました。
それに対してはアナログ測定器なら誤差について考えなくて良いけど、デジタルだと誤差の話をした方が良いと考えるようになってきている、とのことでした。
■水俣病 大阪地裁判決に思う
9月27日に大阪地裁で水俣病と判定する基準についての判決がありました。特別措置法にすら漏れてしまっていた方々にも補償をせよ、という判決でした。
その判決について感想と水俣病の歴史などに関する資料を準備してのお話でした。
当時、水俣湾周辺で発生していた病気の症状に関してチッソ社内外での研究が進んでいたそうです。チッソ社内の研究では、チッソの廃液が原因とわかっていたのに、その実験や廃液の採取自体も突如禁止して、隠蔽を図った歴史があったのだそうです。
もし、このとき研究結果を公表したり、外部の研究機関に廃液を提供していたとしたら、新潟水俣病などを防げたかもしれないと思うと憤りを感じます。
■『理科教室』10月号を読んで
特集は「高校理科の新教科書を分析検討する」でした、なかなか時間が取れずに中途半端な報告になってしまいました。
主張として「自然科学をすべての国民のものにするために、高校理科では4領域を学ばせよう!」を書いています。総論としては賛成ですが、理科の必修を2単位増やすことでどの教科(科目)を減らすかの議論が必要になります。個人的には「総合的な学習の時間」や「探究」に使っている時間を理科に回してほしいと思いました。4科目やっている学校はどのようなカリキュラムを組んでいるのか知りたいと思いました。
2022年11月例会報告
2022年11月例会報告
日時:11月25日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館+Zoom
①物質量(mol)の導入
岩手のTさんのテキストが、紹介されました。物質量を為替レートで考えさせるものです。
同じもの(入場料でした)をいろいろな通貨で金額を求めます。サッカー€40なら¥5600、テニス£66なら¥11880など。molは個と同じで換算レートが1mol=6×1023個ですから、例えとしては、ありでしょう。Tさんは円に直す問題でやりましたが、これだと掛け算しか出てきません。レポーターは、ドルでやった方がよいとお考えのようです。国際通貨はドルなのだから、ドルがよいという意見もありました。
レポーターは入場料ではなく、ビッグマックの値段で考えさせたそうです。一番高いのはスイスで、6.5スイスフラン。1スイスフランはおよそ$1だから$6.5.$1=円147だと、¥955.5およそ¥1000です。最安に近い国の中で日本に近いインドネシアでは35000ルピア。$1=15800ルピアで$2.22。$1=¥147だと、¥326です。同じものなのに、国によってずいぶんと値段が違います。この後、換算レートとしてアヴォガドロ数6×1023個/mol、モル体積22.4L/mol、(水素原子の?)モル質量1g/molを導入されたそうです。
私から、ダースではだめか?と質問させていただきました。ダメではないという返答でポッキーでもよいそうです。ポッキーはひと包装に17本入っていて、1ポッキー=17本です。
また、ビックマックはよくないと思いました。それは、同じものなのに値段が違ってはいけないと思ったからです。モル体積とモル質量は為替での換算と違うので、高橋さんのテキストとは違うとも思います。通貨の為替レートは同じものを測る物差しを代えて換算するので、molと個についてはよいと思いますが。
私は、物質量(mol)が難しいのではないと感じています。物質量を個数の単位にした後に、物質の質量や気体の体積についての問題をやらされます。何が難しいか?それは掛け算の意味と割り算の意味が分かっていないためだと思います。物理で速さについて考えるときもハジキを機械的に暗記している子は、よく間違えます。小学校でちゃんと教わっていないのではないでしょうか。
アヴォガドロ数を感覚的にとらえるために、米粒を使うそうです。ひとりが1日に米1万粒食べて地球人口が70億人だと考えると、1molの米粒を食べるのに2千3百万年かかるようです。人類が現れてから数百万年だから、おそらくホモサピエンスが絶滅するくらいまでは充分な量でしょう。きっとこれまでに人類が栽培して収穫した米の総量は、1molよりはるかに少ないでしょうね。以前、九十九里浜の全砂粒の数が1molよりかなり少ないと聞いたことがありましたが、地域性なく考えられるので、米粒の方がよいと思いました。
②『理科教室』11月号を読んで
特集の『自然とつなげる生物教育』に、実践記録がひとつもなかった(詳細な記録はないが太田さんの論文は授業についてでした)、とのこと。特集を企画した編集委員は系統樹まで扱いたいと主張に書かれていたが、それについての実践報告はなかった。
小栗さん、沓掛さん、江口さんの共著論文は、生物多様性についてのものでした。まず47ページの表と本文中の計算結果が違うのではないかという指摘がありました。よく見つけたな~と、驚きました。いつも話題になりますが、『理科教室』は間違いを修正する余裕がない。なかなか難しいですね。中学校で土壌生物の観察はどれくらいやられているか、少し話題になりました。おそらくツルグレン装置については行われていると思われます。レポーターはそこから系統樹にどうつなげるのか、知りたいようでした。
太田さんの、環境問題についての授業のレポート。4時間目にプラスチックごみの海洋汚染について、5時間目にフローチャート作り(生徒が作る)、そして6時間目にレポート作成になるのだがレポートの例が、紙製ストローについてだった。なぜ、プラスチックごみじゃなく紙製ストローなのか?レポートの例はプラスチックごみについてのものにしてほしかった、とのこと。確かに論文の構成を考えると、その方がよいと感じました。
3時間目の教材で、サントリーの宣伝(?)動画が使われています。水の権利関係はどうなっているのか?話題になりました。サントリーのビール工場は、ちゃんと金を払って地下水を買っているのか?使った水を下水に流せば、下水料金は払うでしょう。でも、ビールになっちゃえば、下水に流すことはない。昭島や羽村の上水道は地下水ですが、住民は水道料金を払っています。もし地下水くみ放題だったら、問題ですね。
他、郵便局の木タラヨウは郵便局の人も知らない、掲載ページと違うところに関連動画QRコードがあるのはわかりにくい、などが話題になりました。
③皆既月食中の天王星食
みごとな写真でした。望遠鏡なしで手撮りですが、きちんと天王星の潜入過程が写っていました。OM1というカメラで、デジタルズームを使って35ミリカメラの焦点距離800mm相当だそうです。手振れ補正を入れると、それでもぶれない!なんという技術革新。でも夢がなくなってきたな、と感じました。
2022年9月例会報告
2022年9月例会報告
日時:9月30日(金)18:30より
場所:国分寺市本多公民館+Zoom
参加者:9名
夏休みに学んだこと
全国大会生物分科会資料
岡山大会の対面での実施が中止になりZoomで行われました。生物分科会は2本のレポートしかなかったとのことでした。東京支部でも生物分科会のレポート集めには苦労をしています。
さて、報告は以前サークルで報告していただいた雑木林やナラ枯れ被害についてのものでした。薪が燃料として使われなくなって太い木が増えることで、小平市内の雑木林(以前雑木林だった場所というべきでしょうか?)でナガキクイムシ類の被害が広がっていることについての報告と、落ち葉掻きをしていない場所でクヌギの種子が落ちて発芽する様子を丹念に撮影した映像を視聴しました。
国分寺市環境広場フリートークからの報告
今回は、国分寺市が5年に一度行われるはずの動植物調査に予算が計上されずに調査が実施されなかったとの報告がありました。また、市内の農地が激減したため、さまざまな動植物の生息環境が大きく変化しているとの報告がありました。
フリートーク当日に使われた、生態系に被害を及ぼす恐れがある外来種や絶滅危惧種などの写真がふんだんに使われた資料(カラー)やその報告が書かれたニュースなどが、国分寺市の前回の調査報告書(概要版)とともに配布されました。
チャツボミゴケ公園 他
偶然立ち寄った草津温泉の奥にある「チャツボミゴケ公園」の話でした。強酸性の土壌を好むチャツボミゴケと鉄バクテリアが鉄イオンを利用してエネルギーを得る際、副産物として体内に鉄を蓄積し、死骸が沈殿することで褐鉄鉱の鉱床が現在もできつつある場所なのだそうです。公園は戦中に鉄不足の解消のために開発した跡地で、最盛期には鉄道も敷設され、今も駅の跡が残されています。
その他、西武鉄道が発行している武蔵野台地に関するリーフレットと11月19日(土)に勝手に開催する阿久津さんの公開研究授業の案内が配られました。
南中時刻が変化するはなし
小・中学校では、東経135°にある明石で南中する時刻を日本標準時の正午として決めていると学びます。実際には必ずしも南中時刻は正午ではないのですが、前後15分(合わせて30分!)も変わっているとは知りませんでした。その理由を地球の公転軌道が楕円であることと地軸の傾きを使っての説明がありました。配布されたグラフからは「秋の日は釣瓶落とし」という言葉を見事に裏打ちしていました。
福生市内には精度の良い日時計が2基あることも紹介されました。そのうちの1基は桜の木のすぐそばにあるため、葉が散る冬場しか使えないのだそうです。せっかく良いものなのにもったいないですね。
映画「荒野に希望の灯をともす 医師・中村哲 現地活動35年の軌跡」
全国学力テスト小学校理科の検討 など
アフガニスタンで銃弾に倒れた中村哲さんの現地での活動を追った映画のお話でした。アフガニスタンの干ばつの際に水路を引いた活動は有名ですが、本業である医師としての活動も紹介されていたそうです。ハンセン病による痛みで叫び続けていたハリマという女性に喉に穴をあける手術を施した中心にお話を伺いました。
映画のHP→ http://kouya.ndn-news.co.jp/
学力テストの問題は、相変わらず自然科学の知識を問うというよりも、読解の問題になっているそうです。2月の都立入試の問題も思いやられます。さらに、どうしてもその中に「タブレット端末」や「話し合い」を入れたいようで、ますます意味のない問題になっているようです。
夏の研修会で紹介してもらったこと
夏に参加した研修会で紹介してもらったGeo Gebraというシミュレーションサイトの紹介でした。見せていただいたのは斜面上を運動する物体のシミュレーションでしたが、その他にもいろいろあるようです。
教材集→ https://www.geogebra.org/materials
もともとは数学のシミュレーターのようで、三角比や極限、微分などをその場で動かしながら見られるのは、黒板にグラフを描くよりも直感に訴えることができそうです。うまく使うと授業の幅が広がりそうです。しかし、物理は実物を見せられことが多いので、可能な範囲で実物を見せたいと思いました。
夏に学んだこと
NHK総合テレビの「海洋酸性化」で巻貝の殻が溶けかかっている様子と、教育テレビのサイエンスゼロで月のクレーターと生物の話が印象的だった、とのお話がありました。
通信を発送してから知ったのですが、この番組はガリレオ工房が実験監修をしていたのだそうです。関連するシンポジウムを滝川さんが下記の様に紹介しています。
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理科カリキュラムを考える会のオンラインシンポジウムのご案内
理科カリキュラムを考える会のオンラインシンポジウムを紹介します。
「海洋酸性化・地球温暖化」北極からの報告
ー いま、子どもたちに何を学校で伝えるべきか ー
2022年11月13日(日)13:00 〜 17:00
https://rikakari20221113.peatix.com
ガリレオ工房が、NHKスペシャル「 海の異変 しのびよる酸性化の脅威 」7月放映の実験監修をしました。番組は、多くの方の知らない内に海洋酸性化が厳しい状況になっていることを紹介。
今、皆さんと現状をしっかり学ぶことが次につながると思い、番組にも出演されていて、北極に毎年調査に行かれている川合美千代氏(東京海洋大学学術研究院 海洋環境科学部門 准教授)に話を伺うことになりました。川合さんを紹介していただいたのは、海洋に詳しい市川洋先生です。
9月に紹介していただいたときには、川合さんは北極で調査中で、北極、温暖化、海洋酸性化と正面から向き合われている方です。
このシンポを企画したのは、番組が伝える問題意識に刺激されたものですが、今僕等がしなければいけないのは、もっとしっかり学ぶこと、多くの方と一緒に学び、つながりながら、それぞれが色々な工夫をすることだと思ってのことです。
滝川 洋二
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カブトムシの飼育など
お子さんたちも大きくなってきたので何かを飼おうと考えて石神井公園でカブトムシをオスメス2匹ずつ捕まえて飼ったそうです。足が太く力強いなど、飼ってみて改めてわかることもあるとのことでした。1日に数個ずつ卵を産み、一部は孵化して9月末で5〜6cmになっているそうです。
また、前の週に行われた研究授業に大学の教員も参加していて、助言が形式を重視したものだったとのことでした。目標が「理解する」ことではなく「見出す」とすると良い、との「助言」があったそうですが、何を以て「見出した」とするのかが話題になりました。
夏の大会とNHK「笑わない数学」
夏の大会にサークルで検討してもらった往復する際の加速度運動の教材についてのレポートを発表した件と、NHKテレビで放送していた「笑わない数学」の紹介をしました。
『理科教室』7月号を読んで
予め送っていただいていた原稿を代読して発表の代わりとしました。その中で触れていた滝川洋二さんが(おそらく)同じ内容で11月20日(日)の科教協関東甲信越ブロック大会(Zoom)で講演します。参加費は無料ですのでぜひご参加ください。サークルからも数名がレポーターとして参加予定です。
期日が近くなりましたら、科教協HPや東京支部HPから申し込みができるようになるはずです。
2022年6月例会報告
2022年6月例会報告
日時:6月24日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館+Zoom
①スマートカートとファンを使った加速度運動の授業
初速度と反対向きに力を受けるときの運動についてのレポートでした。以前はおもりで
力学台車を引いていたのを、スマートカート用のファン(小さな扇風機)を用いてやって
みたそうです。レポートは、実験装置についてのものと授業についてのものと、2つの内容
が混じっていました。
まず質問。「スマートカートが位置や速度をどのようにして測っているのか?」
製造元島津理化のOさんより、車輪の回転を測定しているとの回答でした。中村の機械は
超音波センサーなので、より直接的だと思います。
次に実験装置について。「おもりで引く方が優れているのでは」と意見を出させていた
だきました。レポーターの返答は、「おもりが落下するにつれ、おもりが受ける重力も大
きくなると考える生徒がいる可能性がある」とのこと。他にも、「アトウッドの装置のよ
うになる」との発言がありました。しかし台車と糸の結合部には力センサーが挟まってい
るので、力と加速度の量的な比較もできるので、やはりおもりの方がよいのでは、と感じ
ました。量的な比較については、ファンを使っても、「力センサーをつけてファンを回し
、センサーを手で押さえれば、手から受ける力とファンから受ける力がつりあうから測定
が可能」との説明もありました。
また、「おもりを使った授業を参観したとき、行きと帰りでv-tグラフの傾きが変わった
がファンでも出るのか」、との質問がありましたが、これについては「摩擦力が原因で、
行きは摩擦力が援助するが、帰りは邪魔をするので、ファンでやっても同じ」との説明が
ありました。滑走台で実験できる弱い力の定力装置があるといいのですが。
授業の中身については何点かありました。
「なぜ生徒は落下するほど重力が増えると考えるのか?」との質問がありました。なぜ
かはよく調べる必要があると思いますが、そのような生徒はたくさんいます。レポーター
の回答は「鉛直投げ上げでも速度と力を混同して、上へ行くほど上向きの力が小さくなる(
小さくなるのは速度)と考えてしまうのと同じではないか」とのことでした。生徒はなかな
か、速度、加速度、力を明確に区別することができません。
また複数の方から、言葉がよくないのでは、という指摘がありました。
資料3ページ目の加速度の定義。加速度を1秒間に加わった速度としているが、次元が違
うのです。これは今までもいたるところで指摘されているものですが、力をものに速度を
与える働きととらえると加速度の定義は“瞬間瞬間に生まれて付け加わる速度”になるので
、このような表現になってしまうのでしょう。加速度の表し方を、“1秒間に加わった速度”
にすればよいのではないでしょうか。
資料2ページ目の到達目標。「1秒間に物体に加わる速度を加速度という」では、「物体
」と「速度」と「加速度」が同じものになってしまうのではないか。足し算は同じもの(例
えば年度と粘土をくっつけて重さをはかる)でしかできないから。これについては、「次元
の違いを考えるべきだ」という意見が出されました。言葉は大事だから、検討した方がよ
いと、私も思いました。
②『理科教室』6月号を読んで
特集のレポートが小学校のものばかりだったので、元小学校教員のHさんに報告してい
ただきました。鈴木健夫さんの主張にもあるが、書き手不足である。中学校からのレポー
トを取れなかった。また、小学校学習指導要領から「ものの浮き沈み」がなくなり、現役
で密度学習を行っている人もなかなか見つからなかったようで、書き手は退役教員ばかり
。特集を読んで、現役の方に実践報告をしてもらいたい、と思われたそうです。ただ、中
学校の教科書でも、以前から密度学習が貧弱で不充分であったとの話がありました。
また、いつもながら編集についても話題になりました。佐々木さんの「自然のおたより
」のなかで、子どもの絵がわかりにくいという指摘を受けて、他にも写真が見にくい、誤
字脱字がチェックされていない、生源寺さんのレポートにあった計算が意味不明など。ま
た、写真はモノクロで送るように統一する、編集責任者は全部の原稿に目を通してほしい
、との提案、要望が出されました。編集部も忙しいようなので、書き手が自主的に誰かに
点検を依頼する必要があるかもしれません。
2022年4月例会報告
2022年4月例会報告
日時:4月22日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館+Zoom
対面とZoomを合わせて13名の参加でした。そのうち初参加者が2名でした。一人は大学1年生、もう一人は教材会社の開発を担当されている方です。
考査問題の正答率から見た、概念獲得の難しさ
阿久津さんのテスト問題は授業内容を中心にマークシート方式で作られていました。都立入試で使うシステムを使っているため、問題毎の正答率を簡単に算出できるとのことでした。
阿久津さんによると実際に授業で行ったもの(4・5・10など)については正答率が高く、見ていない問題(9・12など)では低くなる傾向があるとのことでした。つまり、授業で実際に見たものに関しては「頭」でわかっていても、同じ内容(例えば作用反作用)を違う場面で適用した問題を出してみると、正解率が下がるのだそうです。
授業では今日は「慣性」、今日は「作用反作用」、今日は「運動方程式」などと授業を展開していきますが、私たちの身の回りの現象は、それらが単独に表れているわけではありませんから、実際の現象を正しく説明するためには、説明に必要なすべてを習った後でないと難しそうです。以前に学んだことは授業の中で繰り返し復習する必要があるとの意見がありました。
試作実験装置の紹介と検討
今回見せてくれたのは土中の水分量を測定するセンサーでした。今までも有線のものはあったそうなのですが、今回は無線でデーターが取れるようになりました。
実際の水分量を計測しているというよりも、「砂」「ローム」「粘土」と設定を切り替えて、空気との接触面積から計算で水分量を求めているようです。実際に水の入ったコップの中にセンサーを沈めても100%にはなりませんでした。
植物も発芽の実験などにはよいかもしれませんが、小学校での実践には値が張る買い物です。農業高校などならうまい活用方法があるかもしれませんが、専門的になれば水分量だけを測ればよいわけではなくなります。「こんなものを作ったけど、どう使う?」ではなく「こんな実験をやりたいけど、どう作る?」という開発を一緒に進めたいと、発言がありました。
『理科教室』8月号の原稿の検討
本当は3月号の書評の予定だったのですが、急遽8月号の原稿の検討をお願いしました。
8月号にサークルのメンバーで行った防災に関する座談会の様子が掲載されることになり、その編集作業のために書評が書けなかったためです。なかなか読み応えある記事になりましたので、お楽しみに。
『実践記録集』の原稿
連休中に書き進めましょうと、提案がありました。
2022年2月例会報告
2022年2月例会報告
日時:2月25日(金)18:00より(対面とZoom)
国分寺市の本多公民館で対面にて実施されました。また、新型コロナウイルス対策としてZoom(オンライン)でも配信を行い各地から参加者が集いました。対面で7名、Zoomで3名が参加され計10名となりました。対面とZoomのハイブリッドとすることで参加のハードルが下がり様々な意見が交わされるメリットを改めて実感しました。オンラインでもスムーズに資料の共有ができています。一方で、時間外での交流(主に打ち上げ)も気兼ねなくやれるようになりたいというのが皆さんの本音のようでした。
さて、本題です。本日のテーマは盛りだくさんの4つです。以下に紹介します。
日本の活火山 (掃部さん)
日本の活火山年表を作成し、精読し、活火山の特徴を探る授業プランの発表でした。年表を作る作業を通して、火山を身近に感じてもらい記憶に残って欲しいとの思いがあります。年表は、現在から1520年前までの日本の活火山年表を1人1巻作成するものでした。A4用紙20枚を順々に貼り合わせていくと、記録に残っている火山の噴火の歴史が一目瞭然になります。この年表は、『理科年表』から丁寧に記録をエクセルに打ち込み作成したようです。『理科年表』をもっと活用して欲しいとの考えも発表者にはあるようでした。出来上がったものをみせてもらうと、まずその大きさに圧倒されます。また、日本全国で高頻度に噴火などが起きていたことなどが全体を俯瞰してみると理解できる点が素晴らしかったです。年表の1900年代と比較して、1800年代以前は火山の噴火が少ないのはなぜかを班で話合わせ、記録を残しておくことの大切さも伝えたいとのことでした。また、その他に1万年間での噴火の数を計算させる課題も用意されていました。
資料の二つ目として、日本の活火山の分布図の紹介です。こちらも『理科年表』から、作成したようです。日本には、活火山がとても多いことや、線上に連なっている様子がはっきりと捉えられます。日本の大地でどのような変化が起きているかを考えるきっかけになるのではないでしょうか。
参加者からは、このような年表や分布図の作成を通して興味をもってもらったうえで、個々の火山の噴火の様子や災害についてなどにも触れさせたいとの声があがりました。
『理科教室』2月号を読んで (鷹取さん)
2月号の特集記事である「授業の核心を示す到達目標」に関する感想でした。到達目標をいう言葉はよく聞くけれど人によってとらえ方が異なることが多いので正しい理解が必要です。特集記事にあるように、「すべての子どもたちが身につけたい、初歩的であっても基礎的な自然科学の事実・概念・法則」と考えたいところです。教育界では、方向目標というものがあり、「自ら解決する態度を養う」といったものがあるが、これは到達目標の‘できる’や‘分かる’と言ったことが明確になってこそ言えることではないでしょうか。
質疑応答では、到達目標の授業が大切であることは分かるがなかなか授業ではうまくいかない、どうすればよいか。との質問がでました。同僚やサークルで授業について普段から議論できる下地を作るのが何よりも大切であろうとの意見がありました。研究授業などにおいても、生徒が活発に声を出して議論していたなどの、表面的な評価ではなく生徒自身が何を学び取ったかを真摯に評価していく必要があるとの考えを共有しました。到達目標の授業をより深めていくためにも、授業のプランや実践記録を検討できる集まりは貴重であることを再認識しました。
スマートカートのバネの紹介 (増子さん)
スマートカートに作成したバネを取り付け、単振動時の力学的エネルギーのグラフを瞬時に表示できて便利であるとの発表がありました。その中で、通常であれば質量0として無視するばねの運動エネルギーを考えると力学的エネルギーの総量を示すグラフの形がより理論理に近くなるというお話があり興味深かったです。センサーを使った実験は上手に使えば短時間で効率的に物理の本質に気付かせることが出来ます。実践を共有できる場がどんどん増え、多くの先生方に試しに使って欲しいです。最後には島津理化の及川さんから音センサーの紹介がありました。
都立高校の入試問題の検討会
時間が少なくなってきたので短時間で共有しました。例年と比べると奇問は減少しているようです。その中でも、以下の点が懸念事項として浮上しました。
〇物理分野
・作用点が描かれていなかったが、描いた方がよいのではないか。教科書会社によってもばらつきがある。力や速度ベクトル表記の統一が必要である。
・一瞬静止という言葉は使わず「速度がゼロになる」の方がよいのではないか。
・電流の値が5.0 Aとなっているが、学校現場の電流値としては大きすぎるのではないだろうか。実際に、この電流の値で実験をさせてもよいとのメッセージになりかねないのではないだろうか。
〇化学分野
・イオンの問題はイオンを知らなくても解ける日本語の問題ではないか。もう少し科学的な思考力を問う問題にして欲しい。
〇生物分野
・卵細胞と卵の言葉の違いを問う問題であるが、慣例的に植物は卵細胞が使われているだけでどちらでもよいのではないか。
また、ほとんどの問題が記号による4択問題ばかりであるため、もう少し選択肢を増やさなければ入試としての意味が低下しまうのではないだろうか、との意見もでました。
2022年1月例会報告
日時:1月28日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館
1.対話を中心に行う落体運動(中3)の実践記録
玉田泰太郎さん、梶谷真司さん、川勝博さんの授業を基盤とした、対話で行う授業のレポートでした。
生徒の感想を一読すると、肯定的な意見が目立ちます。掃部さんより、感動した、との発言がありました。また、鈴木さんから生徒K(資料5ページ)が書いたものから、この子は物理だけではなく、ほかのもっと大事なことを学んだのではないか、対話形式の授業のせいなのか、とのお話がありました。だだ、手塚さんは全生徒のノートを毎時間は集めていないそうです。玉田さんが毎回の生徒のノートの感想から授業の分析をされていたことについて、やるべきことであるが、忙しくて難しいとのこと。このあたりは、レポートの冒頭に書かれています。このあと、8時間目の授業記録についての議論にうつりました。
手塚さん、かつては生徒がノートに書いているのを見て回って指名する生徒を探していたそうですが、現在は自由発言の形に変えたそうです。生徒が挙手をするまで、粘り強く待つ。これまでの最大の沈黙時間は3分程度で、この授業のときは1分です。中学生は高校生と違い、待てれば発言が出てくるとのこと。1年生であればもっと活発だそうです。発言に責任を持たせるためにも、自由に言わせたほうがよいそうです。教員が指名すると、指名されたから発言するということで、自発的な発言にならないということでしょうか。
実験方法について、町田さんからハイスピードカメラと黒板を使う方法が紹介されました。同時落下実験器で落とす(打ち出す)様子を撮影し、黒板に直接スローモーションで投影して、0.1秒ごとに黒板に書き込みます。その後に照明をつけて黒板を見ると軌跡が残っているというわけです。なかなか面白そうです。
最後に鷹取さんから、このような授業を行うにあたってのハードルとなっていることは何か、との質問がありました。手塚さんから、学校業務の改善が必要との返答。授業を重くみるようにしていかないといけないということです。わたしも、学校で行われている様々な活動の中で最も軽視されているのが授業だと思います。全く授業準備をしない方もいらっしゃいますから。
2.『理科教室』を読んで
特集は「酸・アルカリ」化学基礎に入っている内容ですが、少ない単位数なので途中で終わっているような単元だそうです。
髙田太樹さんの中学校のレポート。本来高等学校で行うイオン化傾向まで学んでいるのがよい。第1時の実験(塩酸に、銅を入れる実験と亜鉛を入れる実験)で理論を学べる。高校では知識と暗記に頼りがちだが、最初に理論を学ぶことが大事だと思われたそうです。
次に、三好敬一さんの看護学校での授業。アレニウスの定義ではなく、ブレンステッド・ローリーの定義で行うことに賛成。アレニウスの定義ではアンモニアで困るだけではなく、電離した物質についても説明できないから。
緩衝液については、化学基礎でもやることがあるが化学(4単位ものの選択科目)でやることが多い単元。ポカリスエットといった身近なもので行うことに感動されたそうです。このあと堀さんと鈴木さんから小学校のことも話してもらいましたが、小学校でもクエン酸や酒石酸といった身近なものから入ってます。馴染みがあるということが、結構大事なのかもしれません。
レポーターの石川さんは、これまであまり実験を行ってこなかったそうで、これを参考に実験をしていきたいと思われたとのことでした。
堀さんと鈴木さんから、吉田学さんのレポートの解説をしていただきました。やはり舐めることから始まること、溶けてはじめて酸としてはたらくことなどです。その中で堀さんから、身近なものとして掃除で使う洗剤も使うとよいとの発言がありました。便器のカビにはアルカリで黄ばみには酸ということでしょう。
特集についての話題で、最後に町田さんから2つの質問。電子のやりとりまで化学基礎で扱うべきか、化学基礎で酸とは何かと聞いたときに生徒はどう答えられればよいか。石川さんの返答は、化学(4単位選択科目)で扱えばよい。ブレンステッド・ローリーの定義でをもちいて、どの物質が酸でどの物質が塩基かを言えればよい、とのことでした。
この後、拙稿「密閉したフラスコ内での木炭の燃焼実験」について話題にしていただきました。手塚さんによると、直径30cmくらいのゴムボールの落下の加速度が8.9m/秒2程度になるのも浮力の影響だそうです。生徒と同じで、見えないものだからつい空気の存在を忘れてましまいますね。ただ帰宅後に考えましたが、紙風船の場合は中の空気が受けている重力と風船(中の空気も含めて)が受ける浮力はつり合っていますから、風船と中の空気が受ける合力は風船だけの分の重力と同じです。仮に風船の質量をm1、中の空気の質量をm2とおくと、落下の加速度の大きさはm1g/(m1+m2)になります。紙風船の質量を測らないとわかりませんが、空気の中の質量と比べたらかなり大きいと思うのですが。ゴムボールの場合、中の気体は圧縮されているからm2が結構大きいかもしれませんが、ゴムボールだけの質量m1と比べるとどんななのでしょう。次回以降の例会で、一度話題にしていただければと思います。
最後に鷹取さんから稲葉敏雄さんの巻頭エッセイについての批判がありました。無農薬農業がよいという意見についての反論。手つかずの自然はなく、人が関わって植生を作ってきた。生物学、化学を否定しているのでは、という主張でした。時計も21時をまわり、町田さんからの「各自もう一度巻頭エッセイを読みましょう」との発言で、例会は終了しました。
2021年11月例会報告
日時:11月26日(金)18:30より 場所:国分寺市本多公民館
回転舞踏会(『理科教室』2021年10月号表紙)を作ってみた 他 ・・・・堀さん
9月例会のときの鈴木さんのリクエストに堀さんが応えてくれました。
1つ作るのにCDなどのディスクが2枚とディスクケース、磁石が6つ必要なので、生徒全員分を準備するのは大変そう、とのことでした。作ってみてはじめてわかったり疑問に思うこともあるそうです。例えば、人形の土台の磁石について、『理科教室』では「ダイソーのクリアカラーマグネットφ20mm」とあるのですが、20mmとは磁石そのものの直径なのか、プラスチック部分を含めた直径なのかがわからなかったそうです。細かいことですが、いくつか種類があった場合は店頭で迷ってしまうこともあるかもしれません。しかし、完成して動かしてみると円盤上で人形がくるくる回って楽しかったです。サークルでの動画をYouTubeにアップロードしてありますのでご覧ください(https://youtu.be/VlpsqYmlnw8)。
先ほど書いたように一人に一つずつは準備できなかったので、磁石2つと神の人形を使った「おどる人形」を作りました。くるくる回るのを見ていると大人でも楽しいので、小学生は夢中になると思いました。
そもそもなぜ回るのか?については田代さんが瓶を2つつなげた模型を使って説明してくださいました。
中学3年間を見通した中1物質学習からのエネルギーの取り扱い・・・・宮田さん
「光合成と呼吸が2年生になったので、エネルギーをイメージした授業にした方がよいのではないか」「呼吸を単なるガス交換ではなく、エネルギーを取り出すことであることを教えるためには、呼吸以前にエネルギーを教えることが必要ではないか」との主張でした。事実、2年生でエネルギーを学ぶ前に1年の教科書にすでにエネルギーという単語が出てくるので、1年生のうちにエネルギーに触れておく必要があります。
秋の研究集会で提案した際には、エネルギーの「ストック」と「フロー」の考え方が必要、との指摘を受けたそうです。「ストック」は「物体が持っている」と表現するようなエネルギー、「フロー」はエネルギーが「他の物体に移動する流れ」と表現するようなエネルギーとのことです。熱の単元では内部エネルギーが「ストック」で熱が「フロー」にあたると考えればよいでしょうか。
中1の熱のところでエネルギーについて学ぶことで、今後のエネルギーにつなげたいとの考えからのプランでした。
鷹取さんから「以前は温度平衡を学んでから熱平衡を学んだが、今はどうか?」との質問がありました。宮田さんからは現状中学校では熱と温度の区別はつけられていない、との回答がありました。
掃部さんからは、温度差の定義をしてから熱の定義をしている、との紹介があり、さらに、エネルギーを扱うなら最初に力学で定義すべき。指導要領の大きな欠陥の一つ、との指摘がありました。
宮田さんから、エネルギーの細かな定義はともかく、エネルギーを一言で表すことができるキーワードはないだろうか、との問題提起がありました。例えば「他の物体を変化させる能力」はどうか、などの意見がありました。
『理科教室』11月号を読んで ・・・・町田
特集は「小・中・高校を見通した生物教育」でした。専門は一応物理なので、読み方が甘いかもしれませんが、詳細は別紙資料をお読みください。
鷹取さんから「タネのつくりと散布様式」(p8~)について、この単元で何を学ばせたいのだろうか、との疑問が出されました。種の外部形態はわかるものの、「つくり(内部形態)」を明らかにするような実践にはなっていないのは残念、とのことでした。鷹取さんは外見だけでなく種の構造を教えたいとの主張でした。また、特集記事で生物サークルのメンバーが多いので、偏りがないようにいろいろな人に書いてほしいとの意見も出されました。
堀さんからは、特集記事に統一感が感じられなかったとの意見が、鈴木さんからは平山さんの記事には小見出しがあると読みやすかった、との意見がありました。
さらに鈴木さんからは、社会科では「なぜ」その教材を選んだのかが大切だが、最近そのような視点が感じられる記事が少ないように思う、また、歴史的なことを知ることは大切なので、松井さんの原稿の続編を期待したい、との感想がありました。
2021年10月例会報告
日時:10月22日(金)18:30より (対面とZoom)
2020年6月例会以来の対面でのサークルでした。残念ながら鷹取さんは風邪気味とのことでZoomでの参加になりました。オンライン会議用のマイクなども準備したのですが、会場の声が聞こえにくかったとのことでした。今後も少しずつ改善を図りながら運営したいと考えています。ただ、残念ながら11月例会はWi-fi環境が整った部屋が取れなかったので、対面のみでの例会となります。
中学校サークルで活動されていた宮田さんが初めて参加してくださいました。今後も参加していただけそうです。
静力学の授業プラン
中央沿線理科サークルには物理で採用された人が多くいます。阿久津さんの調査によると、私を含め、東京物理サークルの「たのしくわかる物理100時間」(あゆみ出版)の影響を受けている教員が多いようです。阿久津さんがレポート作成の際にサークルメンバーに行ったアンケートでもそのような結果が出ていました。
「物理100時間」では、力の原理→重さの意味→弾性→作用反作用→力の合成と分解 と話が進んでいます。阿久津さんの提案は作用反作用の学習を先に行い、それを踏まえて弾性や力の表し方や力の原理を学ぶ、との提案でした。以前は力の原理を学ばないと作用反作用が学習できなかったが、最近の作用反作用の実践方法ならば、力の原理などを学ぶ以前でも可能なのではないか、そうすれば作用反作用も今後の武器として使えるのではないか、との提案でした。
阿久津さんは「物理100時間」や板倉聖宣さんの「仮説実験授業」にあるバネの問題(バネの両側に重りを吊す場合と、一方にだけ吊す場合など)を考えるときに、すでに作用反作用を知っていた方が良いのではないか、という主張でした。
宮田さんからはバネの問題を解決するときに作用反作用が必要なのか?との疑問が出されました。阿久津さんは連結部分で「互いに引き合っている」ことを知っていると良いのではないか、と答えていました。
また、掃部さんからは弾性と抗力の原因とする考え方に疑問が出されましたが、時間の関係でそれぞれの意見を述べて終わりました。
『理科教室』10月号を読んで
巻頭口絵写真の「日本天文遺産」については私も初めて知ることでした(https://www.asj.or.jp/jp/activities/prize/heritage/recipients/)。左記のホームページを見たところ、藤原定家の「明月記」が最初の天文遺産になっていることに驚きました。なかなか良い趣味です。
堀さんは文字が書かれている地の色が宇宙をイメージしたからなのか黒っぽく、文字が読みづらくなっていたことが残念だとおっしゃっていました。
吉澤さんの「手軽に簡単!蝶の翅を拡大!」では「100均マクロ」で鱗粉の観察などについて述べられていましたが、堀さんはフェロモンについての資料(うるま市立海の文化資料館のブログ(2013/11/8 https://umibun.ti-da.net/e5550124.html))も準備してくださいました。
特集は「授業改善のための評価」でした。高校(おそらく中学校でも)評価と言えば、テストの点数や提出物などで生徒をランク付けする道具になっていて、そのランクについて説明ができるように客観的(?)資料を準備しておくことを強いられます。確かに受験に関わってくる数字となれば目くじらを立てたくなるのもわからないではありませんが、今後は評価をしやすいように授業を作らなければならなくなりそうです。まさに本末転倒です。
義務教育で浸透してしまった観点別評価が、新しい指導要領からは高校でも行わなければならなくなりそうです。ルーブリックの作成など、学校現場では今後も混乱が続きそうです。
特集のタイトル通り「授業改善のための評価」でありたいものです。
表紙のCDを使った回転舞踏会は「11月例会までに作ってみる」とのことでした。
訃報
例会前日の10月21日、サークルの立ち上げメンバーの一人である滝藤さんが亡くなられたとの報告がありました。教員を退職して山梨に引っ越されてからはサークルに参加することはなかったので、面識がない方も多くなってきましたが、研究集会などでは受付を手伝ってくださっていました。古くからのメンバーにとっては悲しい報告となりました。
6月例会報告
令和6年6月28日(金) 国分寺市本多公民館
1. 『理科教室』6月号を読んで
久しぶりの大作、5ページにわたるレポートでした。
最初の大野さんの論文中にある、板倉さんの授業書「トルクと重心」についての紹介がレポートの中にありました。静力学の授業を組たてるにあたり、板倉さんを手本にして「力の原理」を使って考えさせる実践が広く行われていますが、それに加えて「トルク(力のモーメント)の原理」の重要性について書かれているようです。実際の物体は質点ではありませんので、高等学校あたりでは、本当は扱うべきかもしれません。
「物理量はいつでも単位つきで考えないと、非常に危険である」と高橋金三郎さんの言葉が紹介されています。高橋金三郎さんの研究室出身の参加者から、どんなときでも(算数の場面など)でも単位をつけなければいけない、という補足がありました。
玉井さんの論文については、子どもたちに教え込む授業展開になっている、という指摘です。参加者から字数制限がある論文で授業の様子まで詳しく書くのは難しいのでは、という発言がありました。科教協会員向けに玉井さんが毎週出しているメールニュースには、もっと詳しい授業展開が書かれています。確かに8ページでそこまで書くのは難しそうです。ただ、本来は子どもたちがそれぞれ自分のノートに書くようなものが、教員により板書されているのが、私も気になりました。これを読んだだけだと、教え込むような授業展開に感じます。
子どもが書いたと思われる、まとめの文章がたくさん紹介されていました。( )でくくられた部分は本当に子どもがわかっていたのかとの疑問について、元小学校教員の参加者より、子どもが書いた文章を載せる場合、子どもが書いたとおりにしなければいけない、という指摘がありました(江川多喜雄さんがよく言っていたそうです)。これについては、玉井さんが最初からそう書かれたのか、それとも編集部からの依頼でそうなったのかは、わかりません。
高橋さんの論文。小学校から高等学校にかけて、おもりが教材としてよく使われます。おもりの解釈は、質量,力,エネルギーと多用で、きちんと使い分けないと混乱します。この論文中で、おもりを力として使う場合、「○○g分の力」と教員が意識して言葉を使い続けるのが重要と書かれています。教員自身が概念を分化して言葉に表していうことが大事です。さらに、学習した科学的な言葉は、「○○g分の力」だけでなく、どんどん使わせていかなければならない、と発言がありました。
終わりの方で、レポートp3最初の3行にある抽象化は一般化と同じ意味か?という質問がありましたが。抽象化は一般化と違い、例えば物体を四角形で表すとか力を矢印で表すといったものであるとの回答でした。そして、小学校での力学的内容は梃子だけでは本当に物足りないのか?という質問が最後にありました。私からは梃子実験器はいらないが梃子は必要であるように、小学校で扱うべき内容をもっと検討すべきではないか、と答えさせていただきました。高校教員の参加者からは、振り子と同様に梃子(実験器)も条件操作の教材として扱われているのではないかとの指摘があり、そうであればやる必要はないと、意見が出されました。
2.「教育実習で行った研究授業の検討(高校 生物基礎)」
酵素と酵素の働きについて、学生実験の授業。レポーターから生徒とのやり取りについて話題にして欲しい、との要望を受けて授業の映像を視聴し、検討にはいった。
まず、私より発言させていただいた。生徒に対する発言に繰り返しが多かった。注意事項についても、目的(我々が子どもたちに示す学習課題のようなものか)を伝えるのも繰り返し繰り返し話すと子どもたちは聞かなくなるでしょう。ただこの前に違うクラスの授業があり、目的を板書したら作業の実験になってしまい、言葉でコンタクトしたほうが子どもたちにとって何のためにやるのかが明確になると考えられて、口頭で伝えることにしたそうです。
小学校理科専科教員の参加者の発言。実験をやっている最中に子どもとやり取りするのが大事では?注意事項について繰り返し指示されているが、あまり言い過ぎない方がよい。ご自身も6年生の燃焼の実験の時に火が気になったが、火に注意させるのではなく中身について、実験中に子どもたちやり取りした方がよいと感じた。
このあとは、授業のプランや中身について話題が移った。高校教員の参加者から、この実験ではどちらが触媒なのかがわからない、1時間で行うと実験というより作業になってしまう。実験としてうまくやるにはもう1時間は必要で、前に実験計画を立てさせたらどうか、という提案がありました。今実験で何をさせたいのか、また評価をどのようにするかの検討がもっと必要との意見もありました。
小学校では唾液をやっている、中学校でも繰り返しやっている(温度との関わりが追加される)との指摘が有り、課題を変えてみたらどうか、という話が出ました。小中学校の授業で既に動物は酵素を持っていることはわかっていそうだから、「植物も酵素を持っているだろうか」という課題にして大根だけ学生実験でやる。二酸化マンガンだけでなくレバーも演示で、植物に絞って考えさせるのです。
参加者より石英とどう比較するのかという質問が有り、他の参加者から、何でも反応するものではなく反応しないものもあるとして教科書でも扱われているとの回答がありました。それに関連して高校の化学の教員から、石英ではダメ(反応しない)⇒(放っておいても酸素が出るが)二酸化マンガンだと激しく反応する⇒では二酸化マンガンではなく生物体ではどうか?と展開し、生物体でも同じように反応が促進されることを確認して、生物体の場合は触媒を酵素という、としてはどうか、との意見も出されました。最初に酵素を出すのではなく、先に実験を行ってから酵素を導入するという流れになります。それを受けてレポーターも、目的を上手く立てられれば実験が先でもよいと思われたようです。
最後にレポーター(お疲れ様でした)からレポートをした感想を述べていただきました。どういう授業計画を立てるのか、見えていない視点があった。いろいろなやり方がある。小中学校で学んだことをおぼえていないこともあるので、小中での学習と関連づけてやっていきたい、とのことでした。
今回は小学校現役の方、少し前に中学校の経験がある高校の方、新採2年目の高校の現役の方、学生といった若手豪華キャストの参加により、いつもより深まった議論になったと感じました。