シンポジウム「顕微鏡技術の過去・現在・未来」
シンポジウム「顕微鏡技術の過去・現在・未来」
【これまでのおはなし】
『医学生物学における電子顕微鏡技術と「医学生物学電子顕微鏡技術学会」』
堀田 康明(電子顕微鏡技術研究所、朝日大学口腔病理学)
医生物学における電子顕微鏡技術は、装置の進化と試料作製の熟練技術という「両輪」が噛み合うことで目覚ましい発展を遂げ、いまや最先端の生命科学に欠かせぬ基盤となりました。1988年に発足した「医学生物学電子顕微鏡技術学会」は、①電子顕微鏡技術者の活躍、②技術の継承、③実用的な場の提供を掲げ、「夏の学校」や国際交流などを通じて、技師の技術伝承を温かく支える「現場の駆け込み寺」として歩んできました。時代の変化とともに電子顕微鏡技術者・研究者を取り巻く環境も大きく移り変わっておりますが、当学会はこれまでの豊かな歩みを糧に、次世代への確かな技術継承と未来への更なる飛躍を目指しています。半世紀以上にわたり本分野に携わってきた電子顕微鏡専門家の一人として、未来を拓く本学会の持続的な発展を心より願っております。本シンポジウムを通じて、これまでの軌跡を振り返り、共に未来への展望を語り合うことができれば幸いです。
【このごろのおはなし】
『電子顕微鏡が見せる「インターフェース」の医学』
岡田英志(岐阜大学大学院医学系研究科 救急・災害医学分野)
電子顕微鏡は、細胞小器官や超微細構造の発見に大きく貢献し、医学・生物学の発展を支えてきた。一方で現在では、単なる構造観察にとどまらず、細胞同士、あるいは細胞と周囲環境との「インターフェース」を理解するための重要な研究ツールとなっている。本講演では、血管内皮グリコカリックスの研究を例に、電子顕微鏡が病態生理の理解にどのような新たな視点をもたらしたかを紹介し、「構造を見る顕微鏡」から「関係性を見る顕微鏡」へと変化しつつある電子顕微鏡の現在について考えてみたい。
【これからのおはなし】
『生物電子顕微鏡の未来:Cryo-EMからCryo-ETによる生体分子構造解析』
村田和義(自然科学研究機構生命創成探究センター)
2010年代の「Resolution Revolution」により、クライオ電子顕微鏡(Cryo-EM)を用いた生体分子の立体構造解析が原子レベルで可能となり、生物電子顕微鏡(生物電顕)の概念は大きく変貌した。さらに2020年代には、クライオ電子顕微鏡トモグラフィー(Cryo-ET)の進展により、細胞内のタンパク質複合体やそのネットワークを直接構造解析できる時代を迎えつつある。本講演では、生物電顕の「未来」を見据え、これらの最新技術と研究展開を概説する。