凧次郎の記録から:1900 子熊と赤松
凧次郎の記録から:1900 子熊と赤松
2018
素材/技法:布にクレヨン
From the Epigraph by Takojiro., crayon on fabric, 2018
2018年11月1日〜11日、ギャラリー門馬(札幌市)で開催されたグループ展「塔を下から組む−−北海道百年記念塔に関するドローイング展」(佐藤拓実企画)に出品。
手前は「ストーリー・ソード(北方層位)」
【展示コンセプト文】
北海道を記録するとはどういうことか。
「凧次郎の記録から」では、明治期に八雲町落部地区のアイヌ民族のリーダーとして活躍した弁開凧次郎(アイヌ名:イカシパ)がアイヌ語で口述した言葉をカタカナで刻んだ、落部八幡宮に残る石碑の内容(※1)を借用します。弁開は皇太子(後の大正天皇)の成婚の際に小熊2匹を献上したところ、皇太子からは赤松の苗を送られたことが、この碑に記録されています。他、同時代の長万部集落を中心とした道南地域の記録を元に描いたドローイングを展示します。また、アラスカに住むエスキモー伝統の女児用玩具「ストーリー・ナイフ」(※2)から着想を得て制作した「ストーリー・ソード(北方層位)」と、本作に関連する風景の写真を出品します。一目見るだけなら、風景は表面的には変わらず、安定しているようですが、人が入植した後の植生の変化を知った上で見れば、風景は非常に可塑的なかたちとして立ち現れていることに気づきます。物語を知る力・語る力がモニュメントあるいは風景をなぞるとき、内部から新たなかたちにそのものを作り変えていくことができるのではないでしょうか。
※1 石碑のアイヌ語文の内容については佐藤知己氏の「落部八幡宮境内碑のアイヌ語について」(『ピリカ会関係資料の調査研究 北海道立アイヌ民族文化研究センター調査研究報告書1』、2005年、北海道立アイヌ民族文化研究センター)所収の日本語訳を参考にしました。
※2 北方民族博物館(網走市)に「ストーリー・ナイフ」が収蔵されています。
写真撮影 メタ佐藤
photo by Meta-Sato