「胎児-妊婦コンプレックス」への
治療介入技術臨床研究開発に係るELSI
ELSI on the clinical research for treating the fetal-maternal complex
研究開発期間: 2022年10月~2026年3月
【プロジェクト概要】
本プロジェクトでは、近年臨床研究開発が進みつつある「胎児(fetus)」に対する治療介入技術に係る倫理的・法的・社会的課題(ethical, legal, and social issues: ELSI)について検討を行っています。Belmont Report(1978, 米国)をはじめとする医学領域で展開してきた従来の被験者保護のための原理的・規制上の倫理的枠組みの中では、「胎児」が研究介入の直接の対象存在となる今日のような状況は想定されていませんでした。そのため、胎児に対する治療介入技術の臨床研究開発であっても、胎児と時に利益相反(conflict of interests)の関係にある母体である「妊婦」のみが「被験者(a research subject)」とされてきました。その結果、現在の倫理的枠組みにおいては,研究介入の直接の目的対象である胎児が「被験者」として正しく保護され得ない状況が生じています。その一方で,胎児を対象とした臨床研究開発の現場では"fetus as a patient"の考えの浸透とともに,知らず知らずに被験者としての「妊婦」の希薄化が同時に進んでおり,妊婦もまた保護されるべき被験者としての正しい位置付けを必ずしも与えられていない、という倫理的に二重の困難な状況が生じています。そこで、本プロジェクトでは、胎児と妊婦を「胎児―妊婦コンプレックス(the fetal-maternal complex)」として捉え直したうえで、新たな被験者保護枠組みの理論的基盤の構築、倫理指針等の策定、立法をも視野に入れながら、検討を進めています。
【NEWS on the Project/PJに関するお知らせ】
第35回日本生命倫理学会年次大会(Dec/9-10)にて、「医学研究の中の胎児-妊婦をめぐるELSI:新しいフレームワークの構築に向けて」と題するシンポジウム(B2-4)を開催します(12月10日・日曜・16:25-17:55、B会場)。座長(松井、山本)、登壇者(三好、伊吹、永水、高井)、指定発言(松原、鈴木)を予定しています。
第46回日本小児遺伝学会(Dec/8-9@沖縄県男女共同参画センター)にて1演題(示演:荒川, 他)を発表予定です。
第45回日本母体胎児医学会(Oct/15@大田区産業プラザ)にて3演題の一般口演(松井、中川、鈴木)を終えました。
京都生命倫理研究会 BRIDGES-BKY Kyoto Conference 2023(Sep/16-17@京都大学)にて中川特任研究員が演題発表しました。(2023/Sep/4)
第45回日本母体胎児医学会学術集会での一般口演(Oct/15, 時間枠 13:10-14:00)に3演題が採択されました(松井/中川/鈴木)。(2023/Aug/29)
第27回世界医事法会議(World Congress for Medical Law: WAML@Lithuania)にて、永水Gリーダーらが演題発表(口演)を行いました。(2023/Sep/4)
第35回日本生命倫理学会年次大会(2023/Dec/9-10@明治学院大学白金台キャンパス)での公募シンポジウム及び一般口演(中川)に採択されました。(2023/Aug/7)
PJホームページを作成(一部)・公開しました。(2023/Jul/19)
第45回日本母体胎児医学会学術集会(2023/Oct/14-15)に演題登録しました。(2023/Jul/18)
第59回日本周産期・新生児学会学術集会(@名古屋)に参加しました。(2023/Jul/9-11)
International Society for Prenatal Diagnosis (ISPD) 2023(@Edinburgh, UK)に参加しました。(2023/Jun/19-21)
AJOBにコメンタリー論文が掲載されました(Published online, 2023/May/02):Takashima K, Ibuki T, Yamamoto K. Is the Mother's Decision to Opt for Artificial Womb Technology ALways "Supererogatory"? AJOB, 2023; 23: 5.
AJOB, 2023;23:5.
【プロジェクト・メンバー】
関連リンク
Research Ethics Japan(研究倫理のためのサイト)
RInCA(「科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題 (ELSI) への包括的実践研究開発プログラム」 )
RInCA Magazine #03 (April 2023)