2024年1月月3日開始、同1月8日、同4月7日改定
せのお たかのり
1.はじめに
地球の動きは、地上に固定したレーザーのビーム位置の変化として観測出来ますが、地球の動く速度は光速(30万km/s)の1万分の1程度と遅いので、ビーム位置の変化量はレーザーの光路長の1万分の1程度となり、観測装置の微動を極力抑える事が重要になります。
2.新しい観測装置
そこで、下図の様に前回の実験装置(「地球の動きを見る(その1)」参照)から反射鏡とハーフミラーを取り去り、光路(3.15m)を折り曲げるのを止めて、鏡の振動によるビームスポットの変動をなくし、レーザーポインタ自身の変動を抑える為に、その前後2か所を金具とネジで固定して、スクリーンをレーザーポインタに対向する位置に移動しました。又、ポインタの押し釦でレーザー光をON-OFFすると、圧力の変化でポインタのたわみが僅かに変化し(6μm程度)てこの原理でビームスポットの位置が大きく(0.6mm程度)変動する事が分かったので、押し釦は重石で常にONにしておき、その下を金具で支えてポインタのたわみの変化を抑え、ポインタ後部の電池ケースの蓋を回す事でレーザー光のON-OFFを行う様にした結果、スイッチ操作によるビームスポットの変動は0.1mm以下に抑えられました。
これまでの観測結果から、地球は公転面上を太陽の銀河系内での動きとはほぼ逆方向に動いていると思われたので、ビームの東西方向のずれを見る方が地球の動きをより精度良く見られると思い、観測装置を南北に向けました。
3.観測結果
下の図は、2023年12月29日から30日に掛けてのビームスポットの代表的な写真です。スポットの観測は、12月29日08:00から3時間置きに、10分間隔で1時間撮影を行い、12月30日09:00まで25時間継続しました。ビームスポットが大きいとその中心の割り出し誤差が大きくなるので、減光フィルタでレーザーの光量を可能な限り絞りました。ビーム断面の明るさはほぼGauss分布なのでビームの光量を絞るとスポットの大きさも下図の様に小さくなりました。スポットの中心位置は、PPT上に拡大した画像を貼り付け、スポットの形状に合わせた楕円の対角線の交点とし、同時に撮影した物差しの目盛りに合わせて作った1cm角、1mm角、0.5mm角、0.25mm角の升目で0.1mm精度まで測りました。今回の測定精度は前回より改善され、殆どの時刻、1時間内に動くスポット位置は0.1mm程度でした。各時刻の代表的なスポット位置を下のグラフに1時間置きに示します。
3.観測結果が示す事
このグラフが示すことは、12月29日と30日の朝9時に、ビームスポットは最も西寄りになるので、その時地球は日本の東に向いて動いていると思われ、21時には、最も東に移動するのでその時地球は日本の西に向いて動いていると思われます。
この地球の動きを日本の時刻に合わせて表示すると、下図の様になります。この図は、2023年12月29日(冬至+7日)の地球をその公転面の横少し上から見ており、太陽は右側に7°回転した方向にあり、地軸は左側に23.4°傾いています。図中の斜めに傾いた楕円は、日本の1日の動きを示しています。日本の9時と21時では東西が逆になるので、この東西方向に合わせて引いた地球の公転面内の太い黒の矢印が地球が動いていると思われる方向になります。この方向は、日本の午前3時から15時への方向と同じで、これは太陽と銀河中心を結んだ直線より約45°左周りした方向になります。この動きでは、日本の天頂方向は地球の動きの方向に対して90度に近い大きな角度になっているので、ビームスポットの高さ方向の変化はあまりないはずです。
観測では、20時にスポット位置が一瞬大きく下がりましたが、翌12月30日の19時から21時の間の10分置きの観測ではスポット位置の大きな変化は見られず再現性がありませんでした。気象庁の震源リストを見ると12月29日20:45に観測地の近くで地震が記録されており、この前兆と思われます。
この観測で得られた地球の速度Eは、光速(C=30,0000km/s)と、スポットの東西方向の位置の差の半分(Δ=0.8/2=0.4mm)が地球の速度Eによるビームの変位量になる事と、ビームの光路長(L=3150mm)と、地軸が23.4°傾いている事から、
E=C×Δ/C/cos23.4°=41.5km/s
となります。この動きE=41.5km/sと、太陽の移動速度S=220km/sと地球の公転速度V=30km/sから銀河中心の動きGを求めると、右下に図示した12月29日の地球の位置に書き込んだ値G=約280km/sになります。この図には、これまでに観測した7月26日と8月10日の地球の動きEから推定した銀河の動きGの方向と大きさも併せて示しています。この図は(その1)でも述べた様に、太陽系は銀河中心(いて座)の周りを地球や他の惑星の軌道面と同じ面上を速度S=220km/sで左回りしており、その回転面が銀河系の回転面であると考える事が最も自然との考えに基づています。これまでの実験では外乱が大きかった為、銀河の速度Gには多少のばらつきがありますが、その方向はどれも太陽系の動きSとはほぼ逆方向でした。従って、銀河系中心は銀河系の回転面と同じ面上で北極星の方向にある回転中心の周りを左周りしていると考える事の矛盾は起きていません。