シミュレーションによる地震科学を発展させていくのが僕の一つのテーマです。これを計算断層力学と呼んでみます。実際の世界でもう一回地震を起こすわけにはいきませんが、シミュレーション上では数百、数千、数万回と「本当はあり得た地震のシナリオ」を検討できます。地震発生過程の解明にシミュレーションが役立つゆえんです。とはいえ、限りある計算資源で現実的な問題に挑むには計算の高速化が必要です。
任意断層形状に適用可能な時空間境界積分方程式法(時空間BIEM)の高速アルゴリズムを作りました(Sato & Ando, 2021)。シミュレーション実行に必要な総メモリ量、応力畳み込み一回あたりの計算時間が要素数のおおよそ一乗でスケールします。メモリ使用量に関しては現行最軽量かもしれません。
論文ではアルゴリズム提案ということで単純な2Dでコードを書いています。実用に向けた3Dの実装が今後の課題です。