出生前検査と障害者の尊厳、人権学習会
百溪英一(茨城県ダウン症協会事務局長・DSIJ事務局・元国際ダウン症連盟FIDS理事)
はじめに: 私たち茨城県ダウン症協会の有志は昨年の「世界ダウン症の日」のアピール活動として表記の署名キャンペーン「出生前検査を全妊婦に周知する施策は障害者に対する人権侵害ですから即刻中止を!」をchange.orgのシステムを使って開始しました。
(https://chng.it/tJjfZLVWzT @change_jp)。これに対して現在まで621筆の賛同署名がいただけました。本年の「世界ダウン症の日」が3月21日に来るので、厚生労働省への提出を行う前に、署名を頂いた方へのお礼とこの問題の重要さについて皆様にお伝えするためにこの学習会を準備しました。年度末の忙しい時期ですが、一人でも多くの方が関心を持ち、参集していただき、理解をしていただき日本の障害を持つ人の未来に備えて行ければ幸いです。
何故反対するのか: この問題に影響を受ける人は今、世の中に存在するダウン症を持つ人、障害を持つ人、その人達を愛する家族と友人です。日本や世界にはたくさんのダウン症を持つ人が生まれて生活して、様々な活躍もしています。ダウン症は第21番目の染色体が偶然に一本多くなり生まれてきた人たちです。今、産婦人科医会の要望に沿って政府主導で、ダウン症の胎児を見つけ出して中絶させるという施策が進められてきています。この方針が地方自治体に伝えられてそれぞれの地域でダウン症の人々の立つ瀬と人権を侵害する施策が進められます。これはダウン症という属性を持つ人に対する明確な差別であり、命の尊厳と人権を蹂躙する、選別排除です。やってはいけないことだと思います。
1999年の母体血清マーカー検査導入: これが導入された当時、厚労省は3点の問題点を認識していました。
*以下は厚生省児童家庭局長より平成11年7月21日に都道府県知事、政令市市長、特別区区長あての通達より引用。同文は日本医師会会長、日本産科婦人科学会会長、日本母性保護産婦人科医会会長にもあてた通達よりそのまま引用。
1) 母体血清マーカー検査には、十分な説明が行われていない傾向があること
2) 胎児に疾患がある可能性を確率で示すものに過ぎないこと
3) 胎児の疾患の発見を目的としたマススクリーニング検査として行われる懸念があることといった特質と問題があること等から
医師は妊婦に対し本検査の情報を積極的に知らせる必要はなく、本検査を勧めるべきでもないというものである。
1) の「母体血清マーカー検査には、十分な説明が行われていない傾向があること」と書いていますが、「どのようなこと」が十分に説明されていないのかは明記されていません。対象とされる、ダウン症を持つ人がどのような人でどのような可能性のある人であるのかなどは全く伝えられなかったのです。生まれて十分に成長して、本人も家族も幸福だという調査結果が出ていることも被験者には伝えられなかったのです。
2) の「胎児に疾患がある可能性を確率で示すものに過ぎないこと」というのは、検査結果には胎児がダウン症などの障害を持つ子供が生まれる可能性を%で提示するため、次の検査を受けるべきなのかなど妊婦が迷い不安になることが問題だということです。この部分は親の精神状態に関することです。
この通達で問題点として厚労省自らの認識として、1) と2) については妊婦にかかわる問題点で指摘の点自体は優生思想とは直接関係がない技術的な問題と考えられます。
しかし、3)については「マススクリーニング検査」が障害のある胎児の選別排除は優生政策に当たることを認めていたということです。こう書かなければならなかった背景には①多くの患者団体や障害者団体が「障害を持つ人の人権侵害を助長する」と指摘していた事情と、②ダウン症児が生まれる可能性を妊婦に伝えずに、実際に生まれた場合に親が裁判に訴えたという事例がすでに米国であったため、このような訴えから産婦人科医を守るという理由もあったそうです。
今回の施策の問題点: 今回出されている施策は、従来と真逆の「国は医師が妊婦に積極的に知らせるべきだ」という見解で、具体的に「厚労省の新たな情報提供体制案では、①全妊婦を対象に、市区町村の窓口での母子健康手帳の交付や、初回の妊婦健診のタイミングで、②妊娠出産に関する情報の一つとして保健師らが対面で説明。検査の位置付けや、③内容について書いたパンフレットを配布する。」事まで盛り込まれています。
血清マーカー検査とNIPTの問題点の比較:
すでに実施されてきている新型出生前診断について、血清マーカー検査に対する問題点を比較すると、
1) 母体血清マーカー検査には、十分な説明が行われていない傾向があること
についてはこれまでの報告を見てもダウン症の命を助けるという意味での妊婦へのカウンセリングがほとんど意味をなしていないことを示しています。検査を受けさせたい医療者や医院の手先のような存在です。
2) 胎児に疾患がある可能性を確率で示すものに過ぎないこと
についても故坂井律子氏(NHK)は診断の確立が99%という報道が実は不正確なもので、遺伝子診断後に羊水検査などの侵襲性の検査を受けて確認しなければならないことを情報とマスコミの理解不足で聞き手に誤った印象を与えたと述べている(医学のあゆみ246(2), 2013)。坂井市は97%という数字自体が捏造だったことも述べています。
「検査が人権侵害を助長する」と指摘していた点は解消されたのか:
3) 胎児の疾患の発見を目的としたマススクリーニング検査として行われる懸念があることといった特質と問題があること等から
については全く論じられていないのです。最も重い命の問題、人間の尊厳に関する論議はほとんどなされておらずに、政府が指示して全妊婦にこの検査について啓発するというのは障害を持つ人をあまりにも軽視した人権蹂躙だということです。この検査により、障害を持つ命が軽んじられ、選別排除の対象になって良いという結論は現行の憲法や政府が掲げている政策とも矛盾するものです。
「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」:厚労省が開催したこの専門委員会」の報告を見ても、この検査と優生政策との関連や憲法など法的に問題があるか、検査の拡大が障害者の存在価値を貶める社会通念を醸成するのではないかなどの論議はなく形骸化したもので、厚労省が「学会指針尊重」と指導を放棄したことは明らかです。
NIPTの拡大実施から波及するリスクと社会問題のヒント:
1. 国が障害者の選別排除(スクリーニング)による優生政策を正当化すると命が軽視される。
2. 障害者に出生前に検査されて殺されても良かった人間だという、レッテルがはられる。
障害を持つ人に対する差別意識の普遍化する。
3. ダウン症を持つ子どもや大人への虐めの正当化・激化する。
4. ダウン症という属性は社会に不要で、価値のない人間なのではないかという風評が広まる恐れがある。
5. 殺されても良いような人への支援体制の後退(医療経済)。
6. 必要な医療や教育、社会福祉の後退。
7. ダウン症以外の障害、老人や病気を持つ人に対する差別の高度化が起こる。
8. 障害を持たない人も含めた基本的人権の崩壊。
9. 弱者を温かく支える社会の崩壊。
「障害を理由に中絶が可能になる」「胎児条項」:
当事者の意見を聞かず、論議をすることなくマススクリーニングを進めることが許されるなら日本産婦人科医会が長年求めてきた「障害を理由に中絶が可能になる胎児条項」が母体保護法に組み込まれる可能性が見えてきている。
ダウン症を持つ人はかわいそうな人なのか?:
2015年に厚労省が行った初の大規模アンケート調査で、ダウン症のある人たちの実情が見えてきた。諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が2016年シンポジウムで「90%以上のダウン症のある人自身が「塩飽實に思っている」ことを発表。
アメリカでなされて論文発表されたダウン症の人の幸福度調査結果では、284人の当事者に聞いた調査でも、99%が「幸せ」、86%が「友達がすぐできる」と回答していた。(Am J Med Genet Part A 2011 https://doi.org/10.1002/ajmg.a.34235)
若者の自殺率を見ると日本が若者にとって不幸な国だということがわかる。
幸福な人生を過ごすことのできるダウン症の人をターゲットにスクリーニングするのは悪
若い世代の「死因トップが自殺」はG7で日本だけ : 未成年自殺率、最悪を更新
歴史にみる障害者差別から学ばない人たち:
歴史上忘れてはいけないナチス・ドイツによる優生政策:T4作戦は、ナチス・ドイツで優生学思想に基づいて行われた安楽死政策である。1939年10月から開始され、1941年8月に中止されたが、安楽死政策自体は継続された。T4作戦などで総計20万人位上の障害を持つ人が殺された。ドイツ全国の精神病院施設から、遺伝性の精神疾患でかつ治癒見込みのない精神障害者のリストアップが行われ、このリストは文面上だけで精神科医らによって「鑑定」された。「安楽死」に該当するとされた者は、各施設から集められ組織の用意した「灰色のバス」などに乗せられた。
抹殺施設へと移送された。ドイツ国内の精神病院のうち、総計で6か所の施設にシャワールームを装ったガス室が付設され、移送された障害者はそこでCOガスにより殺害された。ナチス・ドイツのT4作戦で障害児者の殺滅に関与した医師たちや看護師たちが手をくだしていた。
厚労省の新たな情報提供体制案では、産婦人科医会の提案に沿った施策が提案されており、全妊婦を対象に、市区町村の窓口での母子健康手帳の交付や、初回の妊婦健診のタイミングで、妊娠出産に関する情報の一つとして保健師らが対面で説明させるとしている。
T4計画及びそれから派生したナチス・ドイツによる安楽死・殺人計画の対象は障害者から拡大されていった。
写真:左はハルトハイム安楽死施設、中央は障害児者の殺滅に関与した医師たち
写真右はT4作戦に関与した看護師たち (出典はhttp://www.geocities.jp/torikai007/1939/t4euthanasia.html)
ヒトラーの主治医であったフィリップ・ボウラーを中心とする医師を数多く含むグループにより、すべての医療従事者に、重度の身体的、精神的障害のある新生児、幼児を医療機関に入院させ、致死量の薬剤を投与して秘密裏に殺害せよ、あるいは餓死させよ、と命令を発した「安楽死」計画がすぐに青少年、成人障害者、高齢者にまで拡大され、終了後にも拡大は止まらなかった。
治癒不能な病人、身体障害者(極度の近視を含む)」、「労働能力の欠如」、労働を嫌悪する労働忌避者、ジプシー(シンティ・ロマ人)、精神病質者、8年以上の刑を受けたドイツ人やチェコ人、予防拘禁者、3年以上の刑を受けた劣等人種(ドイツ語版)とされた人々(ジプシー、ロシア人、ウクライナ人、ポーランド人)、犯罪を犯した精神病患者、ソ連領から徴用された「東方労働者」、ソ連軍捕虜、ハンガリーユダヤ人、エホバの証人の信者も対象となった。
*生命軽視の社会的状況ではすべての人の人権も命の尊厳も失われていく世の中になるということです。
「不幸な子供を産まない運動」:
北海道はかつて広報番組で優生思想を啓発、「異常児は一生の悲劇」と断じ、「不幸な子供を産まない運動」などの取り組みを紹介していた(1969年製作『私たちの道政』No.155 )=北海道立文書館所蔵
また、昭和47年頃行なわれた兵庫県の「不幸な子供が生まれない運動」当時の兵庫県の貝原俊民知事は、この構想の目的について次のように語った。
出生前診断憲法で定めている基本的人権を蹂躙:
日本国憲法における基本的人権は大きく分類して5つに分類できる
平等権・・・差別されない権利
自由権・・・自由に生きる権利
社会権・・・人間らしい最低限の生活を国に保障してもらう権利
請求権・・・きちんと基本的人権が守られるように国にお願いする権利
参政権・・・政治に参加する権利
平等権は憲法14条に規定されている
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。」
基本的にはこの条文により、日本はあらゆる差別を禁止しています。ですから、生まれる前に殺されても良いことを示唆する、検査の施策やマスコミ報道はダウン症の人の名誉棄損であり、憲法14条違反もしくはその幇助に当たると考えられます。
障害者権利条約:本条約は,2006年12月、国連総会で、「障害者の権利に関する条約」、いわゆる「障害者権利条約」(略称)が採択されました。障害者権利条約は、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害者の権利の実現のための措置等を規定した、障害者に関する初めての国際条約で、市民的・政治的権利、教育・保健・労働・雇用の権利、社会保障、余暇活動へのアクセスなど、様々な分野における取組を締約国に対して求めています。
我が国は2006年12月13日に国連総会において採択され,2008年5月3日に発効しました。 我が国は2007年9月28日に,高村正彦外務大臣(当時)がこの条約に署名し,2014年1月20日に,批准書を寄託しました。 また,同年2月19日に同条約は我が国について効力を発生しました。
障害者権利条約の主な内容
障害者権利条約では、障害に基づくあらゆる差別を禁止しています。この「差別」とは、障害者であることを理由とする直接的な差別だけでなく、例えば過度の負担ではないにもかかわらず、段差がある場所に仮設式スロープを提供しないなど、障害者の権利の確保のために必要で適当な調整等を行わないという「合理的配慮の否定」も含まれるということが示されています。また、障害者が他の人と平等に、自立した生活を送れるための地域社会への包容について定めています。
“私たちのことを、私たち抜きに決めないで”
条約の起草に関する交渉は、政府のみで行うのが通例ですが、この条約の起草会合では、障害当事者の間で使われているスローガン「“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」にも表れているとおり、障害者団体も同席し、発言する機会が設けられました。日本からも延べ200名ほどの障害者団体の関係者が交渉の行われた国連本部(ニューヨーク)に足を運び、委員会を傍聴しました。
日本の政府代表団には、障害当事者が顧問として参加し、日本は積極的に交渉に関与しました。2002年から8回にわたる起草会合を経て、2006年12月13日、障害者権利条約が国連総会で採択されました。
日本はその翌年、2007年9月28日、同条約に署名しました。2008年5月3日には、同条約は、正式に発効しました。
*それでは日本政府は全妊婦を対象とする出生前診断の実施に当たってスクリーニング淘汰の当事者であるダウン症の人々の了解を取ったのだろうか。
厚労省が公開している「NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会 構成員名簿」(2022年4年2月 25 日)を見てみよう。
以下、委員の肩書: 日本医学会/日本医学会連合副会長、明治大学法学部教授、出産ジャーナリスト、社会福祉法人麦の子会理事長、東京女子医科大学病院遺伝子医療センターゲノム診療科特任教授、東京薬科大学薬学部生命・医療倫理学研究室教授、大阪医科大学小児高次脳機能研究所所長、 明治学院大学副学長・社会学部教授、一般社団法人日本衛生検査所協会理事・顧問、 信州大学医学部保健学科看護学専攻教授、 たまごクラブ編集部編集長、 京都薬科大学薬学部基礎科学系一般教育分野教授、 横浜市病院経営本部長、母と子のまきクリニック院長、東京医科大学茨城医療センター病院長、 北九州市子ども家庭局子育て支援部子育て支援課母子保健係長、 東海大学医学部専門診療学系産婦人科学教授、 日本医師会常任理事、 大阪府立病院機構大阪母子医療センター新生児科主任部長
氏名はhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23930.html
ダウン症の人たちや当事者やダウン症の母親などは入っていません。
国会議員も知らなかった施策、本件は国会の予算委員会や本会議で討議されるべき事項ではありませんか。
本件はマイナーな国家行政施策の問題ではありませんし、法律の立案や改正の問題はありませんそのためか、本学習会に際して関連領域や女性国会議員に伺ったところ、本問題を認識している国会議員はほとんどおりませんでした。この状態ではもちろん国民が知る由もありません。上記の「NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会」の名簿を見ても、この施策により利益を得る立場の人ばかりが目立ちます。障碍者団体の意見というのもどこにも資料化されていません。障がい者サイドの声は巧妙に隠蔽されているということに気付くべきです、
ダウン症の人の人権侵害を助長する施策の予算に国会議員の良識も反映されていません
しかし、このダウン症児者のスクリーニング推進施策には国家予算の支弁が伴っているのではありませんか?
1)「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」(計7回開催)の開催経費
2) 「NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会」委員19名の謝礼と交通費、資料作成費など
3) 出生前診断を妊婦に周知させるためのチラシ代、パンフレット、ホームページ作成
今回の母子手帳の交付時にチラシを用いて知らせる行為が明記されています。
例えば、今回の新指針は、「実施施設の拡大に加え、35歳以上に限っていた検査を全年齢にみとめ、市町村で母子手帳交付の際に保健婦などがチラシを用いて対面で検査について情報提供する」となっています。
新指針の基本的な考え方として、「2,ノーマライゼーションの理念を踏まえると、出生前検査をマススクリーニングとして一律に実施することや、これを推奨することは、厳に否定されるべきである」としながら、今回の母子手帳の交付時にチラシを用いて知らせる行為はマススクリーニングに大きく近づくことになります。また、日本では遺伝カウンセリング体制が未だ整っていず、その状況での情報提供は、仕方によっては一律検査実施とも取れる行為と考えます。
障害者権利条約の第8条と第17条の真反対の施策は中止すべき
第八条 意識の向上
1 締約国は、次のことのための即時の、効果的なかつ適当な措置をとることを約束する。
(a) 障害者に関する社会全体(各家庭を含む。)の意識を向上させ、並びに障害者の権利及び尊厳に対する尊重を育成すること。
(b) あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行(性及び年齢に基づくものを含む。)と戦うこと。
2 このため、1の措置には、次のことを含む。
(ii) 障害者に対する肯定的認識及び一層の社会の啓発を促進すること。
第十七条 個人をそのままの状態で保護すること
全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する。
内閣府の言う障害を理由とする差別の解消推進が出生前診断?
国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が制定され、平成28年4月1日から施行されました。
産婦人科医会(日本医学会も)と厚生労働省が進める「全妊婦に対する出生前診断の周知」は日本国憲法、そして日本が批准した障害者権利条約や「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)と全く矛盾する違法な施策ですから中止すべきです。
まとめ:
ダウン症を持つ人の基本的人権と生命の尊厳を改めて考えよう
生命を選別することの恐ろしさは、説明するまでもないでしょう。家族愛や隣人愛は生命の尊厳を前提に成り立つものです。生命は人知を超えたものだからこそ、存在そのものに価値があるのです。
新型出生前診断は、生命の尊厳を崩しかねない生命の選別につながる危険性が高い医療技術です。緊急避難的な条件での使用と乱用は異なる。
その利用にあたっては、医学界だけでなく法律家や宗教家などの幅広い見識を踏まえて、診断を受けられる対象条件を限定する必要があります。
生物多様性:
地球上の生命、その中には多様な姿の生物が含まれています。この生きものたちの、命のつながりを、「生物多様性」と呼んでいます。これらの生きものはどれを取ってみても、自分一人、ただ一種だけで生きていくことはできません。多くの生命は他のたくさんの生物と直接かかわり、初めて生きていくことができるのです。
個性を認めあう社会に:人間、誰しも染色体や遺伝子レベルでは、完璧ではなく、何か欠けていることがわかってきている。それこそが、人、それぞれの個性だと考えたほうがいいのではないだろうか。一人ひとりの個性を認め合える社会になることが望まれる。そうでなければ殺伐として出産や子育ても躊躇する恐ろしく悲惨な社会になるでしょう。ダウン症の子どもたちは人社会の大切なことを教えてくれる大切な人です。
欧米の出生前診断や法律はひどい状況ですが、それに対抗する当事者や親の活動が活発です。
ダウン症の子供たちや大人は排除すべきリスクではないと主張するダウン症の本人や検査中絶を強く勧められても出産した母親らが法律の改正を求めて運動しています。