日本道徳科教育学研究学会 会長 田沼茂紀(國學院大學名誉教授)
令和6(2024)年5月11日、私どもが主宰・運営する日本道徳科教育学研究学会は全国各地より多くの賛同者を得て新たな学術研究団体として船出することができました。わが国の道徳教育推進の「要」とすべく誕生した道徳科研究に特化し、それを道徳科教育学の視点から道徳科内容構成学と道徳科教育方法学という理論的両軸を土台に学術的融合を図りながら、道徳科における理論と実践の調和的往還実現を本学会創設理念として掲げて参りたいと思います。このような創設理念に共感くださった皆様に心より感謝申し上げます。
さて、私どもの活動はまさにこれからです。今の私たちにあるのは、学術研究フロンティアとしての誇りと未来へ一歩踏み出す勇気のみです。そんなちっょぴり心許なくてかけがえのない心の糧がある限り、私どもは明日へと力強く歩み出すことができると信じています。そして、これから始まる希望の種子の萌芽に向けて果敢に挑んで参ります。ご関係の皆様におかれましてはどうかその実現に向け、引き続きのご支援とご協力を賜りたく宜しくお願い申し上げます。
最後に、私どもの学会創設に向けた不退転の決意を申し述べさせていただきます。既に輝かしい成果と業績を有する道徳教育関連学会が数多ある中で、何故いま新学会の創設なのか。それは、教科となってまだ日の浅い道徳科の指導内容構想理論と実践的方法理論検証という「理論と実践の往還」を道徳科で一刻も早く実現していきたいからに他なりません。江戸末期の儒学者・漢詩人であった広瀬淡窓の「鋭きも鈍きも共に捨て難し、錐と槌とを使い分けなば」という名言ではありませんが、物事を究明する探究活動というのはただ錐のように一点のみに拘って突き進んだとしても上手くいくものではありませんし、だからといってただ焦点も定めないで広く浅く求めようとしても決して上手くいくものではないと思います。ならば日本道徳科教育学研究学会という御旗の下に皆で集い合い、互いの長所を発揮し合い、尊重し合い、協働し合って探究活動を展開することができたら、きっと個人ではなし得なかったことも必ずや実現できるに違いないと考えているような次第です。人と人とが互いの理想を実現するために響同し合い、響創し合うことを目指す本学会が道徳科教育学を通じて未来共同社会実現への一筋の光明となることをお誓いしてご挨拶と致します。