てんかん発作や顔面神経麻痺などの神経症状や、過剰吠えや攻撃行動などの問題行動は症状を引き起こす原因がどこにあるのかを精査し発見することが治療を行なっていく上で非常に重要です。
動物行動科では犬や猫が引き起こす問題行動の治療を行っています。問題行動には、本能から来る行動を十分に満たす理解や環境がないために生じてしまうもの、疾患や精神的障害が原因で生じてしまうもの、これら大きく2種類が存在します。
当院では問題行動を引き起こす原因を究明する為に、往診による生活環境の観察や問題行動発生時の状態確認を基本として行い、飼い主様と十分に話し合い、人と動物の双方が満足できる環境改善策をご提案させていただきます。また、必要に応じて投薬治療を並行して行います。
問題行動が長引くことで、飼い主様とペットとの関係が破綻し飼育放棄に繋がる場合もあります。問題行動は、早期に行動学的治療を行うことで改善する場合が多いので、気になることがありましたら是非ご相談ください。
【主な神経症状】
・癲癇(てんかん)発作
通常、脳の中では規則正しいリズムで電気が流れています。正常な神経細胞は電気的なショートを起こしている神経回路に対して、それが広がらないように抑えていますが、体調や環境の変化によって電気的なショートが周囲の神経回路に広がってしまうことがあります。この時に「てんかん発作」が発生します。
てんかんという病気の定義の重要なことは「発作」が「繰り返して」起きるということです。
従って1回だけの発作でてんかんを疑うことはできますが、てんかんの診断はできません。
繰り返し起こる発作の間隔は個体によって違いがあり、毎日起こす動物もいれば、1ヶ月に1度という場合もあります。
発作は自然に治まりますが、慢性の脳の病気ということからこの発作の頻度は進行していく可能性があります。
そして、発作が止まらなくなるような状態=てんかん重積(重延)状態になった場合には、生命にかかわる場合もあるので早急な処置を行う必要があります。
・前庭疾患
前庭疾患とは、さまざまな原因によって平衡感覚を失ってしまう病気です。
動物の身体には、平衡感覚を司る三半規管という小さな器官が両側の内耳に存在します。
両側の三半規管が感知した頭の動きや位置が神経を通じて脳幹へ伝えられ、「平衡感覚」が生まれます。
片側の三半規管やその信号を受け取る脳幹が機能しないと、世界がグルグルと回ってしまうような感覚に陥りめまいやひどいふらつきが起こります。
首が片側に傾き、眼を見ると一定のリズムで揺れ、歩こうとするとバランスを崩したり一方向にグルグル回ってしまったりすることが非常に多く見られる症状です。
また、空中に抱え上げられるとパニックになったり暗い場所や寝起きに症状が悪化したりすることが多いのも前庭疾患の特徴です。
両側の平衡感覚が異常を来たすと首の傾きや眼の揺れなどはそれほど認められませんが、特徴的な歩き方や首の動きをする事が多く、脚を上げたりジャンプをしたりする際にバランスを失ってフラつくことが多く見られます。
・認知症
世界や日本の獣医療の進歩により犬猫も高齢社会となり、認知症の犬猫も増えてきています。
認知症には特徴的な徴候があります。具体的なものとしては、 壁や床をぼんやりと見続ける,人や動物に対する認識が変化する,家具の後ろで動けなくなる,壁や家具に向かって歩き続ける,ドアの蝶番側にいる,不適切な排泄の頻度が増加する,落としたフードを探すのが難しい,夜間に頻繁にうろつく,夜鳴きなどです。
これらの症状のうち、一つでも該当することがあれば、認知症を疑い、動物病院で診察を受けるか注意深く観察しましょう。
早期発見・早期治療により改善がみられる場合が多いです。
【主な問題行動】
・過剰吠え
犬の正常な行為である“吠え”が過剰に発生することで人間の生活環境に悪影響が発生している状態です。
行動学的な過剰吠えではなく、実は認知症による“吠え”の場合もありますので、過剰吠えを引き起こす原因を究明することがとても大切です。
生活環境に問題がある場合はそれを改善することですぐに過剰吠えが治まる場合がありますが、学習してしまった吠えの場合は改善までに時間がかかる場合が多いです。
・攻撃行動
犬や猫が飼い主に対して行き過ぎた攻撃行動を行っている状態です。
行動学的な問題ではなくホルモンや関節疾患による問題の場合も多く、総合的な判断が必要となります。
攻撃行動の原因となっている刺激を分析することが治療をするにあったって重要となります。
・分離不安
飼い主に対する依存が激しく、同時に犬が自立できていない場合に発生する問題行動です。
飼い主が不在時に精神的に不安定になることで、家具や家財を破損させたり自傷行為を行ったりします。
飼い主の不在に慣れさせる治療と同時に精神的な自立をさせる治療を行っていきます。
・猫のスプレー排尿
猫が排尿時にトイレではなく壁に向かって尿を吹きかける問題行動です。雌に比べて雄での発生頻度が高い疾患です。
多頭飼育下でのトイレ環境への不満がある場合や、テリトリーを主張したい場合に行うことが多く、生活環境の改善で問題行動が治まる場合が多いです。