写真提供:福岡市

ごあいさつ

大会実行委員長 藤吉晴美(九州産業大学)

   このたび,日本臨床動作学会第32回学術大会と,第44回学会主催研修会を福岡市にて開催することとなりました。

   臨床動作法が生まれて60年。ひとでいえば還暦という節目にあたる年で,生まれた年の干支に戻ることから生まれ直しの年ともいわれます。生まれ直しといってももちろんゼロにリセットしてのスタートというわけではなく,そのひとが重ねた60年の人生体験を基盤に,新たな一歩を踏み出すことを指していることでしょう。そう考えてみると本年の大会は,臨床動作法の創始者である成瀬悟策先生が先頭に立ちながら,研究者をオーガナイズされつつ理論体系を構築していかれた60年の成果を十分に踏まえ,さらに新しい展開を図るための具体的なヒントが得られるような場になることを期待したいと思います。2024年度の大会テーマ「臨床動作法,60年の歴史の先へ」には,このような願いをこめています。

   また,学術大会と研修会が同じ会場に参集する形態で開催されるのも,2019年の明治学院大学での大会以来ですので5年ぶりとなります。この間の学術大会と研修会の大半はWEBで開催され,多くの利便性と可能性を実感することができました。学術大会については,移動の困難性が低減され,それぞれの生活空間から講演やシンポジウムで多彩な方々のお話を拝聴し,ディスカッションすることを容易にしました。研修会では,双方向の実技実習について様々な工夫を付け加えながら進展させ,中でもWEB実習を通して,援助者の声掛けを精選していくことの重要性が明確になりました。

   ただWEB開催で超え難かった壁もあります。学術大会では事例研究の守秘の壁。研修会では援助者の手が動作者に添えられない壁。本学会のWEB開催の限界を示唆するものではありました。

   そこで今回の学術大会では,理論・調査・実験研究に加え,是非,事例研究にも積極的にご参加の上,活発なディスカッションを展開していただきたいと思います。研修会では,WEB開催で新たに得た知識やスキルを活かしながら,同じ空間に援助者と動作者がいることの意義と手を添える援助の有効性を実感していただければ幸いです。

   そして本大会の最終日には,日本リハビリテイション心理学会との共催で,成瀬悟策先生生誕100年メモリアルシンポジウムを行います。臨床動作法が60年の歴史の先へどう発展していくのか,皆様と共に多様な方向性と新たな視点を描き出していける3日間になることを願っています。多くの方のご参加を心よりお待ちしております。