プログラム

1 日目

8月22日(月)

13:00 ~ 13:50

受付

13:50 ~ 14:00

オープニング

14:00 ~ 15:20

横田達也(名工大)    スライド

テンソル分解のアルゴリズムとその応用

テンソルデータ(多次元配列)をコンピュータを使って複数の小さな階数のテンソル(行列)の掛け算として近似する方法は,テンソル分解と呼ばれ信号処理,画像処理,自然言語処理,推薦システムなどさまざまなデータ分析課題に活用されています。本発表ではCP 分解、Tucker 分解、TT 分解など基本的なテンソル分解モデルとアルゴリズムの解説およびそれらの応用事例について紹介したいと思います。

15:30 ~ 16:50

笹倉直樹 (京都大)     スライド

テンソル・ベクトル系における分離融合相転移

行列模型には Gross-Witten-Wadia 転移など力学変数の分布が位相的に変化する相転移が あり,ゲージ理論や量子重力の物理において重要である.テンソル模型においてもそのような相転移があるかど うかは興味深い問題である.最近,正準テンソル模型の研究においてそのような転移らしいものが数値的に発見 された.しかし,数値計算だけでは相転移などの判断が難しい.本講演では,あるテンソル・ベクトル系をラー ジ N 極限で厳密に扱い,そのような相転移の離散版が存在することを示す.この系が,正準テンソル模型だけでなく,テンソルのランク分解やスピンガラスの物理とも関連することも説明する.

休憩 16:50 ~ 17:10

17:10 ~ 18:30

磯暁 (KEK)      スライド

Complementarity and Propagation of Decoherence in relativistic quantum measurements

Under recent developments in quantum technologies, various possibilities of probing quantum nature of gravity have been discussed. One such proposal is given by Bose et.al. to detect quantum entanglement generation of two macroscopic objects through gravitational interactions, which reflects superposed states of different spacetimes. In my talk, I will explain how to calculate the entanglement generation and possible decoherence in the process of measurements based on closed-time path formalism of relativistic quantum field theories.

2日目

8月23日(火)

10:00 ~ 11:20

西垣真祐(島根大)   スライド

順序つき固有値(と L 関数零点)の連結分布

Haar 測度で分布するランダム行列の固有値は行列式点過程に従う確率変数である.ある区 間が,指定された p 個の点のほかに固有値を含まない確率を Janossy 密度とよぶ.Tracy と Widom は,p=0 の場合(ギャップ確率)が可積分な積分核に対する Schlesinger-like な方程式系の解として定まることを示した.本講演では,一般の p についても積分核の有理型ゲージ変換により Tracy-Widom 法が適用でき,Janossy 密度 が微分方程式系の解として定まることを示す.その具体例として,Hermite 行列の最大と 2 番目の固有値の連結 分布,複素行列の最小と 2 番目の特異値の連結分布を求め,後者を素かつ selfdual な Dirichlet L 関数の最小と 2 番目の零点の連結分布と比較する.また,本手法の非臨界弦理論における ZZ ブレーンの総和への適用を展望する.

11:30 ~ 12:50

小山信也(東洋大)    スライド

深リーマン予想を用いた「素数の偏り」の解明

1853 年にチェビシェフは「4 で割って 3 余る素数」が「4 で割って 1 余る素数」よりも多く存在するように見えると主張した.それらが「同数」であることは「ディリクレ素数定理」(算術級数定理)により知られているにも拘わらず、実際に x 以下の素数の個数を数えると、大多数の x について「3 余る素数」の個数が大きいのである.これは「チェビシェフの偏り」と呼ばれる未解決問題であり、偏りが生じる理由は、リーマン予想の仮定下でも未解明である.このたび、私はリーマン予想をより本質的に書き換えた「深リーマン予 想」を用い、チェビシェフの偏りが「素数全体のバランスをとるための自然な現象」であることを解明した.これは「偏り」「ゆらぎ」といった、数論に限らず物理を含む数理科学の諸分野に遍在する現象を解析的に定式化 し、それらが発生する背景を数学的に解明するための一つの手法となり得るので紹介したい.

昼休み 12:50 ~ 14:00

14:00 ~ 15:20

松浦壮 (慶應大)    スライド

Kazakov-Migdal 模型とグラフゼータ関数

このトークでは、従来は正方格子上に定義されていたゲージ理論であるKazakov-Migdal モ デルを一般の連結グラフ上に一般化し、その分割関数がグラフ上の(行列拡張された)ゼータ関数の行列積分で 表されることを示す。このモデルの分割関数は2つの異なる方法で表現される。この双対性を用いることで、一 部のグラフについては有限 Nでの行列積分が具体的に実行でき、特定のユニタリー行列積分が具体的に評価できることを示す。また、large N 極限ではこの行列模型の分配関数が厳密に評価でき、グラフ上のゼータ関数を用いて書き表せることを示す。

15:30 ~ 16:50

福間将文 (京都大)     スライド

世界体積ハイブリッドモンテカルロ法の格子場理論への適用について


有限密度 QCDなどの数々の重要な系に対し、符号問題は第一原理計算の大きな障壁となっている。「世界体積ハイブリッドモンテカルロ法」(あるいは「世界体積焼き戻しLefschetzシンブル法」)[福間・松本2020] は、従来の「焼き戻しLefschetzシンブル法」[福間・梅田2017]と比べて、符号問題とエルゴード性の問題を引き続き同時解決しながら、計算コストが圧倒的に低いという特長を持つ。本講演では、世界体積ハイブリッドモンテカルロ法の基礎をレビューしたのち、この手法を局所的格子場理論に適用した時の数値計算の結果を、計算コストのスケーリングとともに紹介する。

休憩 16:50 ~ 17:10

17:10 ~ 18:30

菊川芳夫 (東大)     スライド

格子カイラルゲージ理論の構成法

2n+1 次元 Wilsonフェルミオンによって定式化される格子 Domain-wallフェルミオンの カイラルな境界モードは,低エネルギー有効格子理論として,2n 次元Overlapフェルミオンで記述される。 Overlapフェルミオンの格子ディラック演算子は,格子ゲージ対称性のもとで共変的で,”許容条件”のもとで 局所的で,Ginsparg-Wilson関係式を満たす。Ginsparg-Wilson関係式に基づいて定義されるカイラル対称性によって,Diracフェルミオンは,正負カイラリティをもつ Weylフェルミオンの自由度に分解される。このとき,次の二つのアプローチによって,局所および大局的なゲージアノマリーが相殺しているカイラルゲージ理論 の格子定式化が可能になる: (1)カイラル行列式のゲージ不変性および積分可能性を直接,確立する (2) Mirror フェルミオンの自由度に,相互作用によって対称性を破ることなくギャップを与えて,decouple さ せる (1) のアプローチでは,2n+1 次元 Domain-Wall フェルミオンと 2n 次元 Overlap フェルミオンの関係が Dai-Freed 定理に対応し,2n+2 次元 Domain-Wall フェルミオンと 2n+1 次元 Overlap フェルミオンの関係が APS 指数定理に対応することから,積分可能条件は”格子η不変量”の満たすべき条件として再定式化できる。 (2) のアプローチは,相互作用によって自明になるトポロジカル相の境界理論のふるまいと関わってくる。本来 ギャップ化されているべき自明なトポロジカル相の境界で,なぜ,どのように,massless の Weyl フェルミオン が現れうるのかという問題については,Block-spin 変換による Eichten-Preskill 模型の Fixed point 構造の解析 が参考になる。 このトークでは,この二つのアプローチの最近までの研究結果を議論する。

3日目

8月24日(水)

10:00 ~ 10:30

鹿俣尚志(東京理科大)    スライド

有限 Grosse-Wulkenhaar 模型における n 点関数の厳密解

エルミート行列の行列模型であり 3 点相互作用がある Grosse-Wulkenhaar 模型(Kontsevich 模型と呼ぶ場合もある.)に関心がある.この模型は非可換空間であるモヤル空間のスカラーφ 3 理論にある ポテンシャルを入れた場の理論に対応する.先行研究では,Ward-Takahashi 恒等式を使って多点相関関数の Schwinger-Dyson 方程式を導出し,ラージ N,V 極限(非可換空間上の場の量子論では行列サイズを無限にすると同時に強非可換極限を取ることに対応している)のもとで求められた.本研究では,極限操作を行わず,有限Grosse-Wulkenhaar 模型における多点相関関数の厳密解を求めた.任意の多点相関関数は,外場 J が対角行列の場合の多点相関関数を使って計算できるということが知られている.したがって外場 J が対角行列の場合の多点相関関数を厳密に計算した.それはItzykson-Zuber 積分を使って変形した生成汎関数 Z[J] を適用することによって達成された.

10:30 ~ 11:00

奥田太夏(東京理科大) スライド

複素 2 次元局所対称 Kähler 多様体の変数分離変形量子化

本講演の内容は,佐古彰史氏(東京理科大学)との共同研究に基づく.シンプレクティック 多様体に対する変形量子化の構成法はこれまでにいくつかの方法が提唱されており,このうち局所対称 Kähler 多 様体に対する変数分離変形量子化の構成法として佐古-鈴木-梅津および原-佐古による方法が知られている.この方法は変数分離 star 積を決定づけるための漸化式を与え,その解を通して得られた変数分離 star 積から変形量 子化を具体的に構成するものである.一方,この方法を通して star 積が明示的に決定づけられた具体例は任意 の複素 1 次元,C N,CP N および CHN の場 合に限られており,一般次元に対する star 積を露わに求めることは困難を極める.本講演では,上記の方法における漸化式の解として得られる任意の複素 2次元に対する公式 と,それが満たすべき恒等式について紹介する.また,この主結果から C2 および CP2 に対する変数分離変形量子化が実際に与えられることを示す.

11:00 ~ 12:20

西村淳 (KEK)     スライド

改良されたレフシェッツ・シンブル法と量子力学の基礎的諸問題への応用

モンテカルロ計算は、場の理論や超弦理論の非摂動的研究において重要な役割を果たしてきた。一方、被積分関数が正定値でない場合は「符号問題」のため、系のサイズとともに計算コストが指数関数的 に増大することが知られている。この問題を解決する様々な可能性の一つとして、レフシェッツ・シンブル法が近年注目されている。我々はこの方法を大幅に改良することにより、従来の方法ではできなかった領域でも計算を可能にした。これを用いて、量子トンネル効果を、WKB 近似やインスタントン計算などに依らず、実時間経路積分の観点から明らかにできることを示す。また、量子力学における観測問題に対する理解を与える「デコヒーレンス」と呼ばれる現象を、具体的な数値計算によって明らかにする。

昼休み 12:20 ~ 13:50

13:50 ~ 15:10

畠山洸太 (KEK)    スライド

タイプ IIB 行列模型の新たなラージ N 極限における膨張時空の創発

タイプ IIB 行列模型は、超弦理論の非摂動的定式化として1996 年に提唱された。以来、 (3+1) 次元時空の膨張など様々な興味深い結果が得られてきたが、従来のラージ N 極限ではユークリッド型の時空が創発することが明らかになった。そこで我々は、ラージ N極限で係数がゼロとなるようなローレンツ不 変な質量項を導入し、膨張するローレンツ型時空が創発することを確かめる。この模型の数値シミュレーション では符号問題が起こるが、我々は複素ランジュバン法を適用することによりこの問題を克服する。

15:20 ~ 16:40

土屋麻人 (静岡大)    スライド

標的空間エンタングルメントとバブリング幾何

標的空間エンタングルメントと幾何の関係を理解するために,N=4超対称ゲージ理論のカイラルプライマリーセクターを記述する複素行列模型の標的空間エンタングルメントエントロピーを研究する.この複素行列模型の標的空間は2次元平面であり,複素行列の固有値はフェルミオンの位置座標とみなせ,固有値分布はdropletに対応する.カイラルプライマリーセクターはバブリング幾何に対応するが、このdropletはバブリング幾何における解の境界条件を定めるdropletと同一視される.ここでは,行列模型において,AdS_5xS^5,AdS giant graviton, giant gravitonに対応する状態を考え,それぞれについて2次元平面上の領域に対する標的空間エンタングルメントエントロピーを求める.さらに,バブリング幾何において対応する領域の境界の面積を求め、標的空間エンタングルメントエントロピーと定性的に一致することを見る.

休憩 16:40 ~ 16:50

16:50 ~ 18:10

佐古彰史(東京理科大) スライド

量子化の逆問題への圏論的なアプローチ

量子化された空間の古典極限が我々の住むリーマン多様体やそれを底空間にもつ接ベクトル 束などのファイバー束であると予想される.従って量子化された空間の逆問題として古典的なポアソン多様体を 見つける方法は重要である.特に物理理論が代数をなすなら表現として常に行列模型が現れるので,行列模型とその古典極限を特定する問題に着目する.加群の圏の部分圏として,ポアソン代数の量子化の全体のなす圏を構成し,その古典極限について議論する.その古典極限の定義を用いて,行列正則化の逆問題についての圏論的な アプローチを考察する.

18:20 ~ 19:20

世話人会議

19:30 ~ 21:00


4日目

8月25日

10:00 ~ 10:30

水飼巌(東京理科大)

ケーリーグラフの Ollivier Ricci 曲率について

近年、Yann.Ollivier によって最適輸送理論を用いることで多様体の曲率を計算することが できるようになった。この応用として、グラフ理論においてもあるグラフの Ollivier Ricci 曲率を計算し、さら にグラフの Ricci 曲率の研究成果が最近出ている。今回、二面体群, 一般四元数群、そして巡回群に関するケー リーグラフのOllivier Ricci 曲率を計算し、さらにそれらグラフの Ricci 曲率の研究成果を提示する。

10:30 ~ 11:00

Dennis Obster (京都大)     スライド

An algebraic interpretation for tensor models

The quantisation of gravity is one of the most challenging problems in modern physics. One of the key differentiators between theories is the choice variables that are quantised. In this talk, I will present an interpretational framework for tensor models, where the tensors represent an algebra of functions. By means of the “associative closure’’ it is possible to generate an associative algebra together with a list of eigenvalues of the Laplace-Beltrami operator, together containing the full information of a Riemannian manifold. This method is designed to work for tensor models in the Hamiltonian framework, such as the canonical tensor model.

休憩 11:00 ~ 11:20

11:20 ~ 11:50

菅野聡(筑波大)    スライド

行列正則化の一般化について1

行列正則化は、弦理論や M 理論の行列模型を用いた定式化において重要な役割を果たす。 本発表では、行列正則化の一つの方法である Berezin-Toeplitz 量子化 (BT 量子化) についてレビューを行う。 そして、BT 量子化を一般化することで、ベクトル束の行列正則化が可能であることを議論する。この一般化の 詳細は、足立宏幸氏の講演「行列正則化の一般化について 2」で紹介する。

11:50 ~ 12:20

足立宏幸 (筑波大)    スライド

行列正則化の一般化について2

本発表では、菅野聡氏の講演「行列正則化の一般化について1」で紹介した BT 量子化の一 般化について解説する。我々の提案した BT 量子化の一般化では、任意のベクトル束の切断を行列を用いて表現 することが可能になる。これにより、通常の関数の行列正則化だけでなく、様々な場に対する行列正則化の一般化を統一的に扱うことが出来る。具体例としてモノポール束やテンソル束を考えることで、電荷を持つスカラー 場やテンソル場に対する行列正則化の一般化についての議論を紹介する。

休み 12:20 ~ 13:50

13:50 ~ 15:10

佐藤勇貴 (徳山高専)、伊藤善康 (名古屋大) 

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テンソルネットワーク法に基づく2次元 Lorentz 型 Quantum Regge Calculus の解析

量子重力理論の模型である Lorentz 型の2次元 Quantum Regge Calculus (2d LQRC) に テンソル繰り込み群 (TRG) の方法を適用し、数値計算を行った。2d LQRC は、単体分割された多様体の各辺 の長さを力学変数としている。その力学変数を離散化しテンソルの添字と同定することで、分配関数をテンソルネットワークとして表現することができる。高次 TRG を用いた面積の期待値の計算は、厳密解の値を正確に再現することを確認した。2d LQRC は Euclid 型 QRC の障害であったスパイク配位を持たないが、”pinched geometry”と呼ばれる辺の長さが無限大となる配位が存在する。我々は辺の長さ(の2乗)の期待値を調べることで、単体の数が多い極限では”pinched geometry”が抑制されている可能性を見出した。これは 2d LQRC が単体の数が多い極限で滑らかな時空を生成する可能性を示唆している。またこの結果は TRG が QRC の数値 計算に対して有望なアプローチであることを示唆している。本研究は名古屋大学の伊藤、同志社大学の加堂、徳山高専の佐藤の共同研究である。講演の前半は佐藤が量子重力理論の観点から模型の特徴を説明し、後半は伊藤が TRG の適用と数値計算の結果を解説する。

15:20 ~ 16:40

綿引芳之 (東京工業大)    スライド

Accelerating Expansion of the Universe by the Fractal Structure of Spacetime

We show that the modified Friedmann equation derived from the quantum gravity theory based on W algebra and Jordan algebra explains the accelerating expansion of our universe. This accelerating expansion is caused by the generation of baby universes which is a kind of fractal structure of spacetime. This accelerating expansion solves all cosmological problems related to the accelerating expansion of the universe, such as Hubble constant problem, baryon acoustic oscillation problem, etc.

16:50 ~ 17:00

クロージング

休憩 17:00 ~ 18:00

18:00 ~ 20:00

座談会