第22話 黄昏のファンタジア

(初回公開日:2021年1月31日)

グリフィンは封筒を見つめ「なんらかの理由でひどく滲んでいる、郵便局のスタンプ」を読み解きました。ストレンジャービル中央局。この手紙は、ストレンジャービル郵便局の管轄内で投函されたものだったのです。つまり、この屋敷のすぐ近くで。

アーモンド「あの、なにか……」


グリフィン「あなたも気がついてると思うが、ヒントがある」


目のまえの少女が身をこわばらせるほど鋭い口調で言ったのは、威圧するつもりがあったわけではなく、ただのグリフィンの「悪癖」でした。

グリフィン「この手紙は、ストレンジャービルの町内で差し出されたものだ。先月の二日に、この町の中央郵便局で処理されてる。イナ・ポートランドは先月、この町にいたんだ」


アーモンド「え!?」


少女はあわてて封筒をつかみ、穴が開くほど見つめました。

その表情が驚きから、困惑に変わっていきました。

アーモンド「あの、どこにそんなことが書いて……?」


グリフィン「…………?スタンプの真ん中だ。ストレンジャービル中央局と」


アーモンド「すっかりインクが滲んでいて、全然読めませんけど……」


グリフィン「…………!?


今度は、グリフィンが困惑する番でした。

スタンプをまじまじと見つめる彼のうえを、アーモンドの柔和な声が通りすぎていきます。

アーモンド「この手紙を受け取ったとき、動揺したものですからランプを倒してしまったんです。それで、オイルが封筒にかかってしまって。すぐに拭いて乾かしたから綺麗になったんですけど……この通り、スタンプが滲んでしまって。わたしのあわてぶりのせいで大事なスタンプが読みとれなくなってしまったことを、口惜しく思ったものでした」


何度見直しても、グリフィンの目には【ストレンジャービル中央局】の文字が浮かびあがって見えます。かすれたり滲んだりしているのは、判読にかかわるほどの問題ではないはずです。

グリフィン「ストレンジャービル中央局、という文字のかたちが見えないか」


アーモンド「はい」


グリフィン「あなたには、完全につぶれて見えるのか。判別できないほどに」


アーモンド「はい」


彼女が嘘をつく理由はないはずです。

アーモンドにはほんとうに、スタンプの文字が見えていない。


これはどういうことだ、とグリフィンは考えました。


真っ先に思い浮かんだのは、彼自身の目がまぼろしを見ている可能性でした。それとも、もしかすると彼の身に宿る魔力が、アーモンドの目に映るのとは別のなにかを見せているのでしょうか。

アーモンド「グリフィンさんはきっと、真実が見える目をお持ちなのですね」


アーモンドがそう言って、夢見る少女の顔でほほえみました。

笑ったので、彼女の唇に血色がもどりました。


【この世界が奇怪にゆがんで見える目】の間違いではないかとグリフィンは思いましたが、格別に言いたてることではないので黙っていました。

アーモンド「あぁ、よかった!姉のネモフィラが帰ってまいりました!」


アーモンドが窓を見て、嬉しそうな声をあげました。

アーモンド「どうぞ、階下(した)に!二番めの姉・ネモフィラをご紹介します。グリフィンさんの健康を、姉に診てもらいましょう。……おねえさま、おかえりなさい!」


グリフィン「おれはもう平気だ」


アーモンドは部屋をとびだして、階段を下りていってしまいました。姉の帰宅を喜ぶアーモンドは、ごくありふれた娘らしい輝きを取りもどしていました。


グリフィン(仲のいい姉妹だったんだろう、イナ・ポーランドとも)

翳りのある感慨を抱きながら、彼はおとなしくアーモンドに従い、玄関ホールに下りていきました。


明るい顔をしたアーモンドのよこに、黄金の髪を持つ娘が立っているのが見えました。グリフィンと目が合うと、黄金の髪の娘は膝を折り、古風な礼で出迎えました。

ネモフィラ「ごきげんよう、お客さま。月の明るい夜ですね。わたくしは【世界を産みおとした女神】のしもべのひとり。またの名を、巨人の教えに従う者……ネモフィラ・ポートランドとお呼びくださいませ


それが【ポートランド三姉妹】の次女・ネモフィラとの出会いでした。



つづきます!

今回も、沢山のクリエイター様の作品をお借りしております。


Thanks to all MOD/CC creators!

And I love Sims!


(ポーズは、自作です……)