第19話 ただ、真実への一打

(初回公開日:2021年1月16日)

アーモンド・ポートランドに連れられて、グリフィンはふたたびポートランド邸に足を踏み入れました。

今度は、正式に招待を得た人として。

アーモンド「ふふ。殺風景なものでしょう?数年の間だれも住んでいなくて、最低限の管理だけ町長さんにお願いしていたものですから。……どうぞキッチンへ。お茶を淹れます」

アーモンド「どうぞ。タルトーサ近郊の茶葉と何種類かのハーブをブレンドして、蜂蜜を垂らしています。神経を和らげ、身体をあたためます」

…………。

…………。

アーモンド「町長さんのお宅に、ご用があったんですか」


グリフィン「…………?」


グリフィンは目で問い返しました。

警戒したのではなく、質問の意味がわからなかったのです。


アーモンド「あ、いえ……立ち入ったことでしたら、お答えにならなくても。なぜあなたがうちのそばにいらっしゃったのかと……思いまして。このあたりの地区にいらっしゃる方はたいてい、町長さんのお客さまなので」

グリフィン「…………。いいえ、仕事の帰りだった。この屋敷のよこの道を抜けると、職場から自宅までの近道になる。あなたの家だとは知らなかった」


グリフィン・トワイライトは、嘘がうまい男でした。


彼自身は嘘を好みませんが、必要にせまられて嘘八百を並べたてると本領発揮。ほんもののポーカーフェイスの持ち主でした。


アーモンド「え……」

グリフィン「あなたが毎週末【本屋が併設されたカフェ】にいたことは、おれも知ってる。おれたちは店で、よく会ってた。あなたは【キャラバンの少女】を読んでいた」


このくらいなら、事実を述べても危険はない。そう判断して、彼はまじめに言いました。その言いまわしが【罪つくり】で、少女の胸をときめかせてしまう可能性については、考えが及ばないのです。


アーモンド「お、お茶の味は、おかしくはありませんか」


アーモンドはもう一杯勧めようとして、テーブルの脚につまずきました。


グリフィン「大丈夫か。落ち着け」


アーモンド「はあ」

グリフィン(…………。いまこそムーアにならって、踏みこむときだ)

軽薄な同僚を思いうかべて、グリフィンは口を開きました。


グリフィン「……話題を替えようと思います。おれは、あなたの姉上のことを知りたいと思ってる。イナ・ポートランドのことを」


アーモンド「――――!」

アーモンド・ポートランドの顔色が、一気に白くなりました。

グリフィンがくりだした一打は、脈絡がないといえそうなほど唐突だった。

グリフィン「イナが十七歳でこの家を離れ、放浪の旅に出たことは知ってます。現在は行方不明だということも。……おれの仕事は、彼女のカゲを追うことです。一般的な話をすると【行方不明とされている者でも、家族だけはその足取りを知っている】という真相はありえる。イナ・ポートランドの現在について、あなたはなにか知ってはいないか


グリフィンは嘘がうまい男で、秘密工作員です。


しかし、嘘をつく必要がないと彼自身が思う場面では、ばか正直に【ほんとうのこと】を話します。情報を引きだそうとしてネモフィラに近づいたムーアのように、しかしグリフィンはグリフィンのやりかたで、やってみようと思いました。


この話をするために、彼はアーモンドの招待に応じたのです。


とはいえ、グリフィンの手本となったムーアがもしこの場を目にしたら、ハリセンを握ってグリフィンに突進し、銀色の髪に覆われた形のよい頭をひっぱたいたことでしょう。


【ものごとには、やりかたってモンがあるだろうよ!】

アーモンド「……警察の方だったんですか」


感情のない青白い声で、アーモンド・ポートランドが言いました。


グリフィン「おれが何者なのか、話すことはできない。仕事のうえでの義務がある。だが言えるのは、おれはイナ・ポートランドにも、あなたにも、二番めの姉上ネモフィラにも、害をなすような真似はしないということだ。これは職務上の宣誓ではなく、それをうわまわるおれ自身の意志です」


いまやそれくらいしか、イナ・ポートランドの友情に報いる方法はないのだから。


グリフィン自身の言葉がちからを持ち、誓いの枷となってみずからの首に嵌め落とされる音を、彼はたしかに聞きました。


アーモンド「…………」

アーモンドは、顔をこわばらせたままでした。


このグリフィンという人は、信じるに値するのだろうか。

彼女がそれを考えている間、沈黙がありました。



つづきます!

今回のポーズ


SS11枚目(自販機前のムーア)のポーズ・及び「アーモンドが持っているキャンドル」は

新生まるきぶねスローライフ 様

よりお借りしました。いつもありがとうございます。


Thanks to all MOD/CC creators!

And I love Sims!


(その他のポーズは、自作です……)