第12話 それは、あどけない時代

(初回公開日:2020年12月7日)

グリフィンの追憶のなかで日が沈み、日が昇ります。

追憶の世界に、新しい一日がやってきます。

???「グリフィン!

グリフィン「イナ・ポートランド」


イナ「憶えててくれたんだね!あれ、なにしてんの。アルバイト中?」

グリフィン「そこのトイレの清掃。もう終わった」


イナ「旅の途中に、お掃除の仕事?あ、旅費を稼ぐ……ってやつ?」


グリフィン「そうだ。きのうは、たいやきをありがとう。あのときは血のめぐりが悪くて、うまく礼を言えなかった。あなたのおかけで、きょうも生きてる」


イナ「はは!なんだかあんたが言うと、シャレにならない感じがするね?あのとき、あんたはずっと座りこんでたから、ケガをしてたのかなって心配してた」


グリフィン「なんともない。元気だ」


???「グリフィン!!

グリフィン「ロイヤル、どうした」

ロイヤル「ポーラねえさんとシャーロッタが、情報を集めてもどってきた。三ブロック先に、百歳を超えてる魔法使いが住んでるって。なにか知ってるかもしれない」


グリフィン「わかった。給金を受け取ってから、いつもの場所で待つ」

イナ「じゃ、あたしももう行こっかな?またね、グリフィン!

ロイヤル「……だれ。友だちができたの?」


グリフィン「イナ・ポートランド。この都会(まち)の子だ。……いまはまだ」



グリフィンの追憶のなかで日が沈み、日が昇ります。

追憶の世界に、新しい一日がやってきます。

イナ「あたしはきっと、ダンサーになるの。劇場から劇場へと旅をして、どんなお客さまも魅了する、しなやかな翅の蝶になる。しなやかな蝶は十八時から夜明けまで踊り続けて、バラを投げてもらったり、たくさん恋をしたりするんだよ。……聞いてる?グリフィン」


グリフィン「聞いてる」

イナ「ほんとうかなぁ。貝細工を散りばめたお衣裳、孔雀の羽根飾り、サファイア色のドレスや、楽屋に充満するドーランの匂い。あたしは、そういうものが好き。あたしはいつか、そのすべてを身にまとって、オーケストラの演奏で踊るんだよ」

グリフィン「…………」


イナ「ふふ。でもきっと、あんたは観にきてくれないね。あたしが、ほんもののダンサーになったとしても」

グリフィン「……その頃おれは、どこを旅してるかわからない。あなたとおれは、別の世界に生きてると思う」


イナ「はは!さみしいこと言うねぇ。……あ、そろそろ行かなくちゃ。十六時からバレエのお稽古なんだ。またね、グリフィン!」



グリフィンの追憶のなかで日が沈み、日が昇ります。

追憶の世界に、新しい一日がやってきます。

イナ「……それで、だ。どうしてあんた、週に一度は、身動きが取れなくなるくらい、なんにも食べていない日があるワケ?」


グリフィン「…………」


イナ「ね、待って。ちょうどいま、マーケットで買ったリンゴを持ってる。イナ・ポートランドの直送便だよ。……はい、食べて!

グリフィン「…………」

イナ「ねえ、グリフィン。あんたが食事をとらないのは、なにか事情があるんだね?」


グリフィン「……事情というほどじゃない。金が足りないことがある。食糧を買って弟と妹たちに配分すると、それで。おれは元々、量を食べなくても維持できる体質だ」


イナ「だからって限度があるでしょうよ。人形じゃないんだから」

グリフィン「金がない。この数日は、食費の七割を薬代にまわしてた。……妹が、熱を出してる」


イナ「え?」


イナがまじめな顔になり、グリフィンは顔をそむけました。



つづきます!

グリフィンが持っているデッキブラシは

A-luckyday 様より、


グリフィンが持っているリンゴは

新生まるきぶねスローライフ 様より、


イナがダンスをしているポーズは

Katverse 様より、


それぞれお借りしました。

いつもありがとうございます!


Thanks to all MOD/CC creators!

And I love Sims!


(その他のポーズは、自作です……)