第11話 過ぎ去った友愛

(初回公開日:2023年12月3日)

グリフィン・トワイライトが、ポートランド邸のそばで倒れています。

だれひとりそのことに気づかぬまま、町に夜がやってきました。

グリフィン(…………。長いな)


身体の自由を失くしてから二時間が過ぎても、恢復のときは訪れません。

グリフィンは月の位置を見て、時間の感覚を保っていました。

ときをもてあますと、人の精神はかえって活発になります。


グリフィンの瞳のうえに、またぞろ追憶の膜がかかってきました。彼の心は目に見えぬ旅に出て、記憶のなかを歩き始めました。


…………。

…………。

???「あんた、家出少年?


グリフィン「…………」

???「あんたの顔色、とっても悪いよ。おおげさじゃなく、十日間モノを食べてないような顔をしてる。ね、ちょっと待っててよ」

グリフィン「…………」

???「はい、これ!


グリフィン「……なんだ」


???「なんだじゃないよ。見りゃわかるでしょ、たいやきだよ!コモレビ山から来た販売カーが、広場に出てたの。このサンマイシューノじゃめずらしいことだし、このお店のはとってもおいしいんだ。【みどりのたいやき屋さん】っていうお店だよ。ほら、ボーっとしないで一匹とって!二匹でもいいよ!」

???「ね、もう一回訊くよ。あんた、家出少年?」


グリフィン「……そうかもしれない。旅をしてる」

???「旅。いいね、すてきだよ。あたしもいつかこの都会(まち)を離れて、どこまでもつづく旅に出るんだ。砂漠のなかのオアシス・スプリングスや、北方に広がるさいはての森にだって行くと思うよ」


グリフィン「…………」


???「ね、いい?あたしがあんたを食べさせたのは【ホドコシ】なんかじゃない。あたしは、憧れたんだよ。路地裏から路地裏へ流れて暮らしてるような、あんたの目つきにさ。あたしもそうやって、野良犬みたいに生きたいんだ」


グリフィン「…………」


???「ふふ。【無口】ってコトバは、あんたみたいなのを表すためにあるんだろうね、いつもは、全然おしゃべりしないってワケじゃないんでしょ?」


グリフィン「……あなたと共通の話題がない。初対面だ。食事には感謝してる」

???「あら、上品なコトバづかい!あんた意外と、いいとこの坊っちゃんなのかもしれないね。……あ、答えなくていいの!センサクする気はないんだよ。あたし自身も、自分のことをアレコレ訊かれるのは好きじゃないしさ」

グリフィン「…………」


???「ねぇ、なんでもいいんだけど、うずくまったまま食べるのやめてよ。あたし、犬にエサやってるみたいじゃない。あんた、名前は?」


グリフィン「……そんなつもりじゃなかった。名前は、グリフィン」


???「あったりまえじゃん!犬になったつもりだったら、びっくりするよ!……でもグリフィンか、神話めいた響きがあるね。大地をとらえるおおきな爪も、風をつかまえる白い翼も、両方持ってる名前だね」

???「ね、グリフィン。あたしたち、あしたも会うだろうね。あんたが当分、この街にいるならの話だけれど。あたしの名前は、イナ・ポートランド。あしたもあさっても、この都会(まち)のどこかでバッタリ会おう!約束なんかはしないでさ!……じゃあね!」


…………。

…………。

グリフィン「…………。嵐のような女だった」


グリフィンは無感動に、下を向いてつぶやきました。



つづきます!

たいやきとたいやきの入れ物のaccは、

新生まるきぶねスローライフ 様

よりお借りしてます。いつもありがとうございます!


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