culture list

日本原生生物学会より分譲しているミクロ生物の一部をご紹介します。

オオアメーバ (Amoeba proteus

大型のアメーバで、アメーバ運動の観察に適しています。培養にはエサが必要です。テトラヒメナやクロロゴニウムが一般的によく使われますが、バクテリアも捕食します。大量に増やす必要がない場合には、シャーレに米か麦粒を一緒に入れておけば、自然に増えたバクテリアを食べてアメーバも増殖します。比較的頻繁に水を換える必要があります。

アメーバは15mlのチューブに入れてお送りします。1本分をすべて9cmのシャーレ(できればガラス製)に入れ、5分くらい放置してください。アメーバがシャーレの底に張り付きますから、ゆっくりシャーレを傾けて、培養液をすべて捨ててください。アメーバはシャーレの底に張り付いているはずです。そこに新しい培養液を入れてください。シャーレの底が撥水性の場合は培養液と共にアメーバがはがれることが多いです。その場合は培養液の半分くらいを捨て、新しい培養液を入れて5分放置…を3回くらい繰り返してください。アメーバは遮光して20℃に置いてください。

500倍濃縮のアメーバ用培養液は、本サイトから購入できます(15 mLが100円)。市販の純水(精製水)で希釈してご使用ください。500倍濃縮培養液は、1Lの水に、KCl 4 g、MgSO4・7H2O 4 g、CaCl2 4 g を溶かしたものです。

株名:なし

採集地:国内

ボルボックス(Volvox carteri

培養法について



モジホコリ(Physarum polycephalum

真正粘菌 Physarum polycephalumです。網目状に広がりながらエサを求めて動き回るアメーバ状の生き物です。細胞体には細胞壁のなく粘液質に覆われた細胞質の塊です。ゲル状の細胞質の管の中をゾルが流れています。その流速は最高1 mm/秒に達する高速流動です。細胞体が大きく、流動も活発なので顕微鏡観察が容易です。南方熊楠による収集・分類、大阪大学の神谷宣郎博士による原形質流動の研究、名古屋大学の秦野節司博士による非筋細胞からの初めてのミオシン精製、など日本が誇る研究がこの生き物でなされました。また、最近では「迷路を解く」ことでも有名になりました。エサは市販のオートミールで細胞体はいくらでも大きくなります(1個体は1細胞です。ただし、多核細胞です)。乾燥状態(スクレロチウム)の状態で長期保存でき、水分を与えると1日で元に戻りますので、非常に便利な材料です。

株名:なし

採集地:不明

ミドリマヨレラ(アメーバ類)(Mayorella viridis

細胞内に共生クロレラを持つアメーバ類です。 マヨレラの大きさは、50-100 μmほどで、オオアメーバ(Amoeba proteus)より一回り小さいが、色がきれいで観察しやすいアメーバである。マヨレラは、共生クロレラの光合成により栄養を供給されるので、光さえ当てておけば長期間放置でき、長期間の維持が比較的簡単であるため、アメーバを用いた実習に適している生き物です。

株名:Ns1

採集地:栃木県那須高原

ブレファリズマ (Blepharisma japonicum)

ピンク色の色素顆粒を体表の内側に多数持っているために、きれいなピンク色を示す繊毛虫です。大型(300 µm)で動きが緩慢なので、観察がしやすい。収縮胞や繊毛運動を観察するのによい材料である。大核も大きくてわかりやすい。

株名:なし

採集地:国内

ゾウリムシ(Paramecium caudatum

日本では、もっとも一般的な原生動物である。

ゾウリムシは、その名前はよく知られているが、その実体はあまり知られていない。ゾウリムシと言うが、草履の形はしておらず、円筒形の細胞に細胞口のくぼみを持った形をする。草履の形をしているのは、むしろミドリゾウリムシである。英語ではslipper animalculeとも呼ばれる。

和名でゾウリムシと名づけられているのは、Paramecium caudatumですが、P. caudatumより一回りサイズが大きいP. multimicronucleatumを分譲させていただくこともあります。P. multimicronucleatumは、P. caudatumと違って、小核を複数持つゾウリムシですが、外見は基本的に同じで、サイズが大きいので観察しやすいゾウリムシです。

株名:なし

採集地:広島市中区

ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria

細胞内に数百の単細胞緑藻類クロレラを共生させているゾウリムシです。他のゾウリムシに比べ小型で、扁平で足形の姿をしています。研究者には「ミドゾウ」という愛称で親しまれており、共生クロレラをもつ原生動物の中で、最も研究が進んでいます。

ミドリゾウリムシとクロレラは、光合成産物のやりとりがあるといった相利共生の関係にある一方で、それぞれ単独で生活する事も可能です。細胞内共生の段階的状態にあると言える存在です。

本コレクションから分譲が可能な株、兵庫県神戸市を産地とするKb-1株です。

ミズヒラタムシ (Euplotes aediculatus

扁平な形をした繊毛虫です。繊毛が束になってできた棘毛を足のように使って、トコトコと水底を歩行します。細胞上部は堅くなっており、甲羅のようです。一見、昆虫のような姿をしていますが、れっきとした単細胞生物です。

この仲間は、大核が紐状で、DNA合成期には複製帯と呼ばれる構造をみることができます。DNA合成期を視覚的に観察できる生物は珍しく、細胞周期の観察に有用です。

原生動物園実験特集記事 (Vol. 1: 39-41)

「繊毛虫ミズヒラタムシ(ユープロテス)の細胞周期 (pdf形式)」

株名:なし

採集地:沖縄県南大東島

スピロストマム(Spirostomum ambiguum

一見すると、線虫のような外見であるが、単細胞の繊毛虫の仲間である。細胞は非常に巨大になるものがあり、数mmに至る場合もある。そうなると、多細胞 動物の線虫より大きくなり、細胞のサイズについて考え直させられる存在である。数mmサイズのスピロストマムは肉眼でも、紐状の形がわかり、水中をゆっく り泳いでる様が見ることができる。

繊毛虫の中でも、ラッパムシなどの異毛類に属し、ラッパムシと同じく、細胞は伸縮性に富む。遊泳はのんびりとしているが、刺激を受けると、細長い細胞体を瞬時に縮ませ、またゆっくりと伸びていく。細胞後端にある四角い構造は、収縮胞である。

有機物に富む池などで大量に発生していることがあり、スピロストマムが過密状態になった池の水を顕微鏡で覗いたりすると、どれだけ慣れていても、ギョっとしてしまうことがある。

株名:なし

採集地:広島県

ペラネマ(Peranema trichophorum

従属栄養性ユーグレナ類。細胞前端に伸ばした鞭毛を水底に付着させながら、数十µm/sの速度で滑走している。この速度は、単細胞生物の滑走運動の中でも最速と言われている。

ユーグレナ運動をすることからもわかるように、ミドリムシに近縁な仲間であるが、葉緑体を持たず、口を持って餌を捕食して生きている。ミドリムシが単細胞緑藻を二次共生させて葉緑体を獲得する前に分岐して今に至った生物としても面白い。

採集地:国内

クロロゴニウム(Chlorogonium capillatum

細胞前端に生えた二本の鞭毛をピロピロと動かして、遊泳する鞭毛緑藻の仲間。モデル生物として知られるクラミドモナスに近縁。

原生動物の餌として優秀で、原生動物業界ではよく用いられている。culture listにある捕食性原生動物(オオアメーバ、ブレファリズマ、ミズヒラタムシ、ミドリアメーバ、ミドリゾウリムシ、ゾウリムシ、ペラネマ、ハリタイヨウチュウ、スピロストマム)は全てクロロゴニウムで培養可能。まさにオールマイティ・フードである。

ミネラルウォーターのVolvicに、市販されているHYPONEXを0.1%加えたものにクロロゴニウムを入れて、光の下においておくと、容易に増やすことができます。

この株は洲崎によってクローン化された培養株で、国立環境研究所NIEC collectionとATCCにも寄託してあります。

株名:CE

他機関の株番号:ATCC50936, NIES-3374

採集地:大阪府

イカダケイソウ(Bacillaria paradoxa

主に海産の群体性の珪藻で、並行する細胞同士がお互いに滑りあうことで、「南京玉すだれ」のようなダイナミックな運動を示します。

(現在は分譲を休止しています)

ハリタイヨウチュウ(Raphidiophrys contractilis)

太陽の形をした原生動物。細胞体から放射状に伸びる軸足は、瞬時に収縮し、餌を捕食したり移動したりするのに用いられる。

細胞の周囲に珪酸質の鱗(scale)をもった太陽虫。現在の分子系統解析の研究は、原生生物の系統関係を明らかにしているが、このRaphidiophrysの仲間は、いまだ、系統の位置がはっきりしない生き物である。タイヨウチュウ(Actinophyris)とは、進化的な起源が異なり、軸足の形成様式も全く異なる。周囲の環境条件にあわせて、軸足の収縮運動が起きる点では同じである。

神戸大学の洲崎研究室では、このハリタイヨウチュウを用いて、水質モニタリング装置を開発している。暮らしに役立つ原生動物である。

この株は洲崎が採集しクローン化した培養株で、国立環境研究所NIES collection にも寄託してあります。

株名:RAC1

他機関の株番号:NIES-2498

採集地:広島市中区縮景園


ミドリヒドラ(Hydra viridissima

ヒドラは、クラゲやイソギンチャク、サンゴなど刺胞動物の仲間です。刺胞動物の多くは、海水に生息する動物ですが、ヒドラは淡水に進出した仲間で、サイズは数mmと、肉眼でぎりぎり見えるくらいの小さな仲間です。

刺激を与えると、上の写真のように瞬時に収縮するので、見てても面白い生き物です。

ミクロ生物館から分譲できる「ミドリヒドラ」は、緑色の姿をしたヒドラで、光合成ができます。その理由は、ミドリアメーバやミドリゾウリムシと同じく、細胞内に緑藻クロレラを共生させているからです。動物として餌も食べますが、植物のように光合成ができる面白い生き物です。

光合成ができるので、光さえ与えておけば、通常のヒドラよりは長生きしますが、あくまで動物ですので、餌が必要です。別に分譲するブラインシュリンプを与えるといいでしょう。最初に購入される際は、合わせて購入することをお勧めします。きちんと飼えば、上の写真のように出芽して増えてくれます。無性生殖の観察にもとてもよい材料です。

ちなみに、下の写真で、身体の両脇についている突起は精巣で、丸いものは卵です。ミドリヒドラは雌雄同体で自家生殖もするので、有性生殖の観察にもうってつけです。

グリーンヒドラの飼い方

●飼育場所:市販のvolvicをたっぷりそそいだシャーレに入れ、光のよく当たる20℃程度のところに置いてあげてください。

●エサやり:エサはブラインシュリンプです。ブラインシュリンプの卵は海水をそそいだシャーレにまくと、1~2日で孵化します。それをプラスチックピペットで吸って、海水を洗うためにvolvicが入ったシャーレに放してください。もう一度volvicをいれたシャーレに移して洗いをした後、ヒドラのシャーレの中に入れてください。実体顕微鏡で見ながらヒドラの口元に直接与えると、捕食の様子を観察できます。

●水かえ:シャーレの水が汚れてきたら水をかえてください。まずヒドラをプラスチックピペット等で取り、volvicを入れたシャーレで二度の洗いを行います。その後volvicの入ったシャーレに移してください。

●その他:光を当てていれば一か月程度エサなしで生きていられますが、2、3日に一度エサやりをすると多く出芽して増えていきます。

株名:Sd1

採集地:沖縄県南大東島