このサイトについて

今日世界的に注目を集め、多様な研究や実践を生み出している「批判的実在論(Critical Realism/CR)」関連の資料を掲載します。(現在作成中)
ご質問等はcriticalrealismjpアットgmail.com までお願いいたします。

 ●サイト管理者

梶原はづき Hazuki Kajiwara 立教大学社会福祉研究所研究員/社会学部兼任講師、日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科非常勤講師、Pet Lovers Meeting(ペットロスの自助グループ)代表、個人サイトFacebook

桂悠介 Yusuke Katsura 日本学術振興会特別研究員(PD)立命館大学 衣笠総合研究機構専門研究員・立命館アジア太平洋大学 非常勤講師、researchmap

梶原はづき 博士(社会学)

人と動物の関係学(Human-Animal Studies)
研究テーマ:災害とコンパニオンアニマル

CRに関心を持ったきっかけ 
 大学卒業後、作家、ジャーナリストとして仕事をしていましたが、東日本大震災を機に立教大学大学院で社会学を学ぶことになりました。好きなタイプの研究は、エスノグラフィーやライフストーリー。特にシカゴ学派のモノグラフのシリーズは、こんな風に描きたい!と思うものが多かったのです。
 しかし、大学院では、質的研究でその人たちの世界を描くだけで社会学は十分なのか、という疑問を持つようになりました。
修士、博士課程を通じ、私は「東日本大震災で被災した飼い主とペットはいかなる経験をしたのか」を調査対象としましが、いざ博士論文を書くとなったとき、どうやって目の前の膨大なデータをまとめていくのかに、思い悩みはじめました。
 100人以上のインタビュー(録音、録音なし含め)、フィールドワークの記録、多くの報道、政府自治体から発表される資料など、あまりに多角的な情報に圧倒される気がしました。
 東日本大震災は、その後の原発事故も含め、単なる自然災害のみではなく、人災、社会システム、社会構造の問題を広く含んだ複合災害です。このような大きな出来事を研究対象とするとき、人々の経験を聞き取り、その経験から構成される世界を描くだけでは、社会学として不十分としか思えませんでした。だからといって、例えば、自然災害、原発事故、放射能汚染、動物たちの処遇、どのレベルに焦点をあてても、何かが欠けてしまいます。
 その頃(2016年末)ダナーマーク他の『社会を説明する』を読んで、「これだ!」と感じました。完全に理解できていたわけではないのですが、人々の経験、その人たちのまわりで起きている出来事、そして、それを生起させる構造、という批判的実在論の世界の見方を知ったことで、認識論的に自分がどこに立っているのかをはっきりと意識し、急に視界が遠くまで開けた気がしました。
 それからバスカーの基本文献はもちろん、当時の自分としては読めるだけCR文献を読み、がむしゃらに書いてみたのが以下の博士論文です。

梶原はづき 2019 『災害とコンパニオンアニマルの社会学: 批判的実在論とHuman-Animal Studiesで読み解く東日本大震災』 第三書館

CRの研究や実践における意義 
1)知識とはなんであるのか、という根本を考えさせてくれる
どの学問領域でも、これを考えずに、論文を書くテクニックだけを身につけるのは無意味だと思います。

2)批判的方法論的多元主義=方法論に囚われない自由さ
研究手法を手順として細かく規定しないので、自分の問いに必要な方法を選び、のびやかに問いを追いかけることができます。

3)世界を見る方法を教えてくれる
私たちを取り囲む出来事やデータや関係をどう捉えるか。CRの実在の3 つのドメイン(領域)を理解すると、研究においてだけでなく、自分自身が生きる世界の見方が変わります。

・実在の3 つのドメイン
経験的ドメインー人々が経験する世界
アクチュアルドメインー現実的事物または出来事の領域
実在的ドメインー出来事を生み出す構造とメカニズム

4)深い構造を推論することができる
目に見えるものや現実にあるもの(つまり経験的ドメインやアクチュアルドメイン)から、それがなぜ起きたのか、直接観察することはできないけれども存在している構造を推論していけるのがCRのダイナミックなところです。

5)解放を目指す理論
CRは、価値中立という、本当は達成できないことをやってるふりはしません。人々(や、私の立場からすると動物も)を苦しめる抑圧的社会構造やシステムを批判的に説明し、社会変革を生み出すことを明確に目的として掲げているのです。

 CRに関心を持つ研究者の世界的ネットワークは、最近になって急速に拡がっています。とにかく、今もっとも面白い展開を見せているメタ理論です。CRは実証主義対構築主義という対立を軽々と超え、今後30年、50年、知の世界を牽引していくと確信しています。


桂悠介 博士(人間科学)

共生社会論、宗教社会学、文化人類学
研究テーマ:イスラームをめぐる共生

CRに関心を持ったきっかけ 
環境問題や国際紛争に関心をもち大学では国際関係を専攻していました。卒業後、一般企業就職、農業従事、西アフリカでの計二年間の滞在などを経て大学院に進学しました。大学院でいろいろな研究に触れる中で、実証主義的なアプローチは、議論としては成立しているように見えても、対象の複雑さが十分に捉えられておらず、表面的な理解にとどまっているのではないかと思えることがしばしばありました。一方で、現象学や解釈主義的な研究に関心を持ちながらも、個々人の認識を超え社会についていかに論じられるのか、という課題があると感じていました。そうした中、これらの疑問や課題に応えてくれそうな批判的実在論に出会い、研究会に参加するようになりました。

CRの研究や実践における意義 
研究のメタ理論、方法論、研究と実践との関係という3点でとても意義があると考えています。
・メタ理論:自分自身の関心に引き付けて言うと、「共生」「宗教」「信念/信仰」「ジェンダー」など、多義的な概念についての議論を改めて整理し、自分の研究を文脈化することが可能となる。
・方法論的な可能性:個々人の語りや経験からどのように社会を捉え、論じるかという点で、ライフストーリー、ライフヒストリー研究に、「自己」をいかに研究の中に位置付けるか、という点で、当事者研究やオートエスノグラフィに対してCRはとても重要な意義を持ち得る。
・実践との関係:研究と社会的実践はどのような関係にあるのか、あるいは、研究自体がどのような社会的実践であり得るのかをCRを通して考えられる。