研究概要

研究の目的

ハイパーデモクラシープラットフォームの実現:ソフトウェアエージェントと人間が一緒に参加するSNS型の合意形成プラットフォーム。ここでは、合意形成の基盤としてのSNSに、人間の代理のエージェントを分散配置し、合意形成プロセスを仲介する(ソーシャルマルチエージェントシステム)。そして、炎上、フェイクニュースなどの課題を解決しながら、より良い合意形成や集団意思決定を支援する。

研究の概要

本研究では、ソフトウェアエージェントと人間が一緒に参加するソーシャルネットワークでの民主主義(ハイパー民主主義)のための合意形成プラットフォームを実現する。AI、スマホ、インターネットなどの急激な発展とCovid-19による急激な環境の変化により、新しい社会システムの実現が一層現実味を帯びている。具体的には、民主主義の基盤としてのソーシャルネットワークの中に、複数のエージェントを常駐させ、人間の代理として働き、意思決定やインタラクションを仲介し、より良い合意形成や集団意思決定を支援する。特に、意見や好みを収集しながら、各参加者の感情にも寄り添った代理行動を行い、人間の主体的かつ納得感のある合意を効率よく得られるように支援する。すなわち、人間の主体感・納得感を醸造する寄り添う合意形成とエージェントの超効率的・超合理的な合意形成とのトレードオフを解決する。SNSでは、炎上、フェイクニュース、集団分極化、ゲリマンダリングなどの社会的諸問題が指摘されているが、エージェントが人間と協調しながら諸問題を解決する。


研究の独創性、新規性・優位性

既存の研究としては、群衆の討論を支援するシステムとしてDeliberatoriumやClimate Colabがある。ただしこれらのシステムでは、AI技術やマルチエージェントが仮定されていない。1990年代に、古典的なAIの研究としてPERSUADERやJUDGEといった人工知能の事例ベース推論を用いた合意形成の支援システムが開発されたが、特定のドメインでの合意形成を支援するものでインターネット上で多人数を対象とした内容ではない。社会学や政治学では、熟議に基づく民主主義を実現する方法としてDeliberative Pollという手法の有効性が認識されている。最近Deliberative Pollでチャットボットによる簡単な司会進行を行なっているが本研究のように議論の意味構造に基づきファシリテートをすることは行なっていない。理論研究としては、Argumentation TheoryやMechanism Designがある。これらは理論に徹しており、その応用が進んでいるとは言い難い。本研究は、実社会を対象として、これらの理論研究を実際に応用し事業化まで目指す点が異なる。


研究終了時の達成目標

ハイパーデモクラシープラットフォームに関する社会実験とその検証を行い国際的アプリケーションとして定着させ、事業化する。


研究の将来展望

(1)CREST研究期間終了後の研究計画

ハイパー民主主義のプラットフォームを、国際的に展開し、信頼できる議論と合意形成の場として、国際的に展開する。日本発の信頼できるソーシャルネットワークかつ合意形成支援システムとして事業化し、広く国際的に展開する。  

(2)科学技術イノベーション(※)創出、 知的財産権の取得・活用、新産業創出・社会貢献

情報や議論の信頼性を担保するためのマルチエージェント 技術や、新しいアイデアや合意案の自動生成機構は知的財産権取得ができ、これに基づくハイパー民主主義プラットフォームにより経済的・社会的・公共的価値の創造と新産業創出が可能となる。