COVID-19と人権」フォーラム


不可視の人権侵害を可視化する

Collaboration for Visualising the Invisible Decay of Human Rights

COVID-HR Project)

このフォーラムについて

フォーラム開始にあたって

国際人権法学会理事長 江島晶子

国際人権法学会では、このたび、COVID-19のパンデミック下において出現している人権問題に取り組むために、理事会に諮り、「COVID-19と人権」フォーラム(以下、フォーラム)運営委員会を設立しました。定期的にフォーラムを開催し、会員の皆様と議論しながら諸問題に取り組んでいくことを企図しています。同時に、企画主任、編集主任、国際交流主任と連携しながら、研究大会、学会誌「国際人権」、国際交流へ還元させて、学会活動のより一層の活性化をはかります。

今回、国際機関やNGOがいちはやく、人権侵害の懸念とガイドラインを提示したのには、国際人権法の存在意義が感じられました。しかし、これまで見えなくさせられてきた問題がいかにあるか(COVID-19ゆえに問題が生じたというよりは、すでに問題は存在していて、感染拡大の中で露呈・拡大)、他方、このCOVID-19への対処の中で見えなくさせられる危険がいかにあるかを痛感させられる状況です(「不可視の人権侵害を可視化する」には二重の意味があります)。現下の問題を複眼的に捕捉して、様々な対応を多元的に、持続的に検討することが不可欠となります。そこで、会員の皆様の積極的なコミットメントを頂戴できれば幸いです。なかでも、研究や活動のキャリアを築こうとされている若手の方々に、フォーラムを活用していただけるとありがたいです。

最後に、皆様のご健康を心からお祈り申し上げます。

ユニット1:可視化されていない人権侵害の可視化(2021年3月26日開催)

ユニット2:グローバル・ヘルス(2021年9月19日開催)

ユニット3:日本社会(2021年6月16日開催)

ユニット4:自国優先主義と国際協調主義(2021年8月26日開催)

ユニット5:次世代・将来世代の人権(2021年8月23日開催)

今後の開催について

国際人権法学会の会員メーリングリストにてご案内いたします。

フォーラムニューズレター・バックナンバー

第1号(2021年3月)

号(2021年6月)

号(2021年7月)

号(2021年月)

号(2021年月)

過去のフォーラム

第1回(第6回)フォーラム(2021年2月6日開催)

第1回フォーラム案内

ニューズレターフォーラム開催特別号No.1

このたび、「COVID-19と人権」フォーラム運営委員会(以下、委員会)による第1回「COVID-19と人権」フォーラム(通算第6回)が以下の要領で開催されることになりましたのでお知らせいたします。この委員会は、COVID-19の世界的感染拡大の下で起きている人権問題について学会として取り組んでいくために、昨年11月の理事会で承認されました。委員会のメンバーは、以下の通りです:秋山肇、伊藤和子、江島晶子、北村聡子、斎藤民徒(HP主任)、坂元茂樹、杉木明子、建石真公子、谷口洋幸、中西優美子、根岸陽太、棟居徳子、山元一(50音順、敬称略)。また、企画主任、編集主任、国際交流主任とも連携しつつ、学会活動を「点から線、そして面へ」と充実させることを狙っています。

現在、次々と課題が登場し、山積している現状において、国際人権法の真価が問われています。学会としてどんな取り組みができるのか真摯に考え、機動的に実現していきたいと思っております。学期末試験・入試業務等でお忙しい時期だとは思いますが、会員の皆様におかれましては奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。とりわけ、昨年の研究大会では開催できなかった懇親会の代わりとして、第1回フォーラムの後半ではZoomのブレイクアウトルーム機能を用いたグループによるディスカッションの機会を設けました。この1年の間に会員の皆様が考えたことや経験されたことなどをぜひフォーラムにお持ちよりいただき、双方向型の学会活動を実現させることを願っております。とりわけ、若手研究者の方には、ぜひこの機会を積極的に活用していただければ幸いです。

運営委員会としては、今後、国際人権法学会ならではのテーマやアプローチを模索しながら、フォーラムを継続的に開催する予定にしております。フォーラムでとりあげるべきトピック等についてもご意見がございましたら、ぜひ学会事務局までお寄せください。

1. 日時:2021年2月6日(土)18:00-20:00

2. 対象:国際人権法学会会員

3. 形式:Zoom 会議へのアクセス

4. プログラム

(1)開会の挨拶:江島晶子「不可視の人権侵害を可視化するとは」

(2)運営委員会委員からの問題提起:「COVID-19と人権:何が問題か-可視化されていない人権侵害の可視化に向けて」

  ① 根岸陽太「可視化された共同体-共にある生(ライフ・イン・コモン)に向けて」

  ② 北村聡子「パンデミック下において『差別とは何か』を考える」

  ③ 谷口洋幸「LGBTIQの人々/コミュニティへの影響」

  ④ 斎藤民徒「インフォデミック」

  ⑤ 棟居徳子「健康権の再検討・コロナ対策の人権影響評価・「国際保健法」の可能性」

  ⑥ 杉木明子「感染症をめぐるグローバル・ヘルス・ガバナンス-国際政治の力学とグローバル・サウス」

  ⑦ 秋山肇「生命権と「ポスト・アントロポセン」時代の人権」

  ⑧ 山元一「国家主権の再構築と人権論の課題」

  ⑨ 中西優美子「EUにおける次世代のためのコロナ措置」

  ⑩ 伊藤和子「なぜ人権が、コロナからの社会回復の基底にあるべきなのか?」

  ⑪ 坂元茂樹「COVID-19が映す日本の人権状況」

  ⑫ 建石真公子「「不可視の人権問題」の意味するもの-重症者トリアージと人権−」

  ⑬ 江島晶子「誰一人として取り残さないことは可能か-人権指向的統治機構の構築に向けて」

(3) ディスカッション

第2回(通算7回)フォーラム(2021年3月26日開催) ユニット1: 可視化されていない人権侵害の可視化 

ニューズレターフォーラム開催特別号No.

われわれが目の前の事象を人権侵害であると認識するとき、それは特定の人権に関わる概念(レンズ)を通して可視化される。たとえば、差別禁止という概念では捉えきれない事象を拾い上げるために、脆弱性(vulnerability)といった広い射程を持つ概念が次第に受け入れられてきた。しかし、どれだけ精緻な概念を生み出そうとも、それらは世界の一断面をわれわれに映し出すにすぎず、そこからこぼれ落ちる不可視の事象も存在することを忘れてはならない。

COVID-19が明るみに出したのは、まさにこれまで通用してきた概念では十分に可視化されてこなかった諸問題である。たしかに従来から指摘されてきた事象も少なくないが、パンデミックにおける人権問題が以前とは異なる側面を露呈させていることも疑いようがない。実際に、LGBTIQの人々の権利について、既存の脆弱性概念では十分に表しきれない事象に目を向けるために、脆弱性が「増幅されている(amplified)」 ことを直視する必要性が提唱されている。

この動向が示すように、われわれは自身が装着してきたレンズがパンデミックの世界を可視化しうるものであるか、視界から取り残されている事象はないかを反省的に問い直す段階に来たといえよう。そのような問い直しに着手するには、これまで通用してきた概念を可能なかぎりカッコに入れ、目の前に広がる事象それ自体を受け止めねばなるまい。

そこで本ユニットでは、パンデミックのなかで犠牲となっている人々に寄り添う専門家からの報告をもとに、いまだ可視化されていないありのままの人権問題に立ち返ることを目的とする。人々の主観的な生活を経由する道筋は、客観性を目指す社会科学にとって敬遠すべき方途にも思われるかもしれない。しかし、時代の要請に応じて社会科学的な感性を備えた人権概念へと鍛え直すことは、真の意味で実証的な人権研究へとつながるはずである。

1.  日時:2021年3月26日(金)17:00〜19:00

2.  対象:国際人権法学会会員

3.  Zoom 会議へのアクセス

4.  プログラム

(1) 企画趣旨・進行説明:根岸陽太

(2) 個別報告

  ① 非正規滞在外国人(ゲストスピーカー:駒井知会弁護士)

  ② 外国人労働者受入(ゲストスピーカー:指宿昭一弁護士)

  ③ 性風俗産業(ゲストスピーカー:井桁大介弁護士)

  ④ 高齢者などケアが必要な人々(ゲストスピーカー:池原毅和弁護士)

  ⑤ 児童の教育(ゲストスピーカー:平尾潔弁護士)

  ⑥ 文化・芸術・スポーツ/科学(志田陽子会員)

(3) 報告総括:谷口洋幸

(4) ブレイクアウトルームセッション:少人数での意見交換

(5) メインルームセッション:報告へのQ&A、全体での意見交換

第3回(第8回)フォーラム(2021年6月16日開催)

ユニット3:日本社会

コーディネータ― 斎藤民徒(幹事)、江島晶子、坂元茂樹、山元一

第3回フォーラム案内

ニューズレターフォーラム開催特別号No.

昨今のパンデミック下における人権問題の数々は、現代の日本社会が擁する政府統治の質を問い返してやまない。今回は、この課題に、日本社会における「法治」/「法の支配」の過少という切り口から迫る企画とした。

まず、昨今の日本社会における「法治」の過少は、「自粛警察」やSNS上の誹謗中傷に代表されるような、私的領域における「人治」あるいは「私治」の過剰を招いているように見える。そこでは、この社会を根深く蝕んできた差別問題をはじめ、日本社会の病理があらためて露出しているのみならず、それに対して、国際社会の趨勢となりつつある一般的差別禁止法や国内人権機関を設けることなく、啓発中心のソフトなやり方で済ませようとする「日本流」の対処の問題性も照射されざるをえない。

また、「法治」の過少に冒されているのは、直接の行政に限られない。それは、立法の過少にも司法の過少にも具体的に現れ、ひいては日本における権力分立の過少(もしかするとその不在)にも再考を迫っているように思われる。立法では、COVID-19の政令指定による場当たり的対処に始まり、先般のおざなりとさえ言える行政罰追加に至る立法プロセスが実例である。司法では、日本社会における人権侵害をめぐって、ときに司法の独立さえ疑われるなか、日常的に裁判上の救済が不足してきたことは本学会会員に周知の事柄だろう。さらに言えば、日本におけるコロナ禍の幕開けは、唐突な司法機能の停止を伴っていたのである(本企画の北村弁護士報告参照)。

以上の問題意識のもと、本ユニットのフォーラム企画は二部構成とし、第1部ではパンデミック下の日本社会の「法治」の現状について、「実務からの問題提起」を受けて認識を深め、続く第2部では「研究者からの問題提起」を受けて、両者の問題提起を交錯させながら、検討を進める。

第1部は、前回フォーラムの問題意識を引き継いだ現場の実務的報告となる。日本社会を全体としてみれば、法が全面的な機能不全を起こしていないとしても、特定の領域においては法的規律が実質的に空白化し、権力の裁量が猛威を振るい、深刻な人権侵害を生み出す状況が現れてきている。「外国人」がターゲットとされる技能実習生・入管収容・難民認定等が、そのような領域にほかならない。さらに、法の支配の守護者となることが期待される裁判所自体、2020年春の緊急事態宣言発出とともに、裁判期日を次々と取り消し、日本社会において(迅速な)裁判を受ける権利が突如として制約を受ける異常事態も発生している。ここでは、それら現場の実相を明らかにするとともに、人権の法理がどうすれば規律密度の向上を推し進めることができるか、その諸課題を見据えたい。

第2部は、研究的視座から、日本社会において「法治」の過少を克服するための諸課題を検討する。具体的には、「法治」の現場を左右する国家裁量について、国際社会のスタンダードを視野に入れてあらためて問い直す報告、さらに、憲法学ではしばしば「立憲主義」としてフォーミュレイトされてきた「法治」の日本スタイルを自覚的に追求しうるかを論じる報告を受けて、議論を行う。両報告を通じて、「法治」における「法」を明らかにすることが課題となろう。

1. 日時:2021年6月16日(水)17:00-19:00

2. 対象:国際人権法学会会員

3. 形式:Zoomへのアクセス

4. プログラム

(1)開会のあいさつ・企画趣旨  理事長 江島 晶子(明治大学)

(2) 前半報告  司会:浦山 聖子(成城大学)

 第1部 パンデミック下の日本社会の「法治」の現状――実務からの問題提起

   ① パンデミックのなかで、法と権利、行政、外国人の生活(古屋 哲・大谷大学非常勤講師)

   ② COVID-19と司法アクセスの問題について(北村 聡子・弁護士)

(3)中間セッション 

  ROOM Ⅰ  [ディスカッション]

  ROOM Ⅱ  [会員交流]

  ROOM Ⅲ  [若手研究紹介]   進行:佐々木 亮(聖心女子大学)

   「COVID-19と教育を受ける権利―スペインの状況から―」(有江 ディアナ・世界人権問題研究センター研究員)  

(4)後半報告   司会:山元 一(慶応義塾大学)

 第2部 日本社会をめぐる「法治」/「法の支配」――研究者からの問題提起

   ①  日本社会における国家裁量――国際社会からの逸脱(福島 涼史・長崎県立大学准教授)

   ② 「ゆるふわ立憲主義」と「法の支配」(曽我部 真裕・京都大学大学院教授)

(5)総括・全体討論

回(通算9回)フォーラム(2021年23日開催)

ユニット5:次世代・将来世代の人権

コーディネータ― 秋山肇(幹事)

第4回フォーラム案内

ニューズレターフォーラム開催特別号No.

高校生が議論するコロナ禍と人権.pdf

国際人権法学会「COVID-19と人権」フォーラムでは、2021年8月23日に、高校生を対象としたディスカッション・セッション「高校生が議論するコロナ禍と人権」を実施します。

この企画は、コロナ禍に関わるさまざまなトピックをめぐって、全国各地の生徒や大学生、大学教員、弁護士と「おしゃべり」し、交流を図りながら、人権について視野を広げ、考えを深めていくことを目的としています。「探究」の題材探しの機会にもなります。特別な知識は必要ありません。「おしゃべり」を通して学びの機会となることを願っています。

高校生の皆さんのご参加をお待ちしております。

1.対象:高校生

2.日時:2021年8月23日(月)17:00-19:00

3.形式:オンライン(Zoomアプリ利用、参加費無料)

 * 2021年8月9日(月)までに事前登録をお願いします。

 * 定員がありますので以下からお早めにご登録ください。

4.お問い合わせ先:ihrla.covid.hs.forum@gmail.com

国際人権法学会とは

1988年に発足した人権について研究する学会です。研究大会、学会誌「国際人権」、ホームページ、国際交流等を通じて、国際法、憲法、国際政治など、多彩な学問分野の協力によって人権の伸張に貢献する研究を行っています。

回(第10回)フォーラム(2021年6日開催)

ユニット自国優先主義と国際協調主義

コーディネーター 中西優美子(幹事)、江島晶子、山元一、杉木明子、根岸陽太

回フォーラム案内

第5回フォーラムチラシ

ニューズレターフォーラム開催特別号No.

【チラシ】ユニット4:自国優先主義と国際協調主義( 国際人権法学会「COVI-19と人権」フォーラム) .pdf

国際人権法学会の「COVID-19と人権」フォーラム(不可視の人権侵害を可視化する)では、さまざまな角度からCOVID-19にかかわる人権問題を取り扱っている。今回は、グローバルな観点からCOVID-19を取り上げることにする。念頭においているのは、自国優先主義と国際協調主義である。コロナ禍で国家のエゴイズム的な自国優先主義的傾向も見受けられた。現在は、ワクチンの配分が問題となっている。ワクチンを自国で開発できている国とそうでない国、また、ワクチンを持つ国と持たざる国により差異がでてきており、ワクチンが外交の手段となったり、その政治的な影響が危惧されたりしている。たとえば、中国が、アフリカ、アジア、ラテンアメリカに「Health Silk Road」と呼ばれる展開を見せており、自国だけではなく他国に対しても人権(健康権)を保障する名目のもとに、人間の生にかかわる政治性(bio-politics)を行使する危険性が存在する。一見、ワクチン外交は、国際協調主義に見えるが、実際のところ、覇権拡大の手段に利用される可能性もある。

このようにCOVID19は、グローバル・ヘルス問題を引き起こしている。以上のような問題意識のもとで、今回のフォーラムでは、国際人権法の枠組を超え、グローバル・ガバナンスの文脈でCOVID-19を検討する機会を設けたいと思う。フォーラムでは、まず、基調講演によって、グローバル・ヘルス問題、特に感染症やワクチン等について、基本的な問題提示をする。それを受けて、個別報告が2つなされる。地域としては、アフリカ(ルワンダ)およびアジア(中国)のコロナ状況やワクチン等にかかわる対外政策について報告がなされる。さらに、これらの3人の報告者を受け、1人のコメンテーターが国際政治における国際人権法の可能性を検討するための問題提起を行う。

1.日時:2021年8月26日(木)14:00-16:00

2.対象:国際人権法学会会員・一般

3.参加方法:オンライン会議(ZOOMへのアクセス)

 * 国際人権法学会会員の方へはフォーラム開催数日前にZOOMのリンクをお知らせします。

 * 国際人権法学会会員でない方は、8月20日23:59までにグーグルフォームで事前に申し込みが必要です。

4.プログラム

(1) 企画趣旨・進行説明(5分):中西優美子(国際人権法学会会員・一橋大学教授)

(2) 基調講演(30分)

    詫摩佳代(東京都立大学教授)

    「新型コロナと国際政治」

5分休憩

(3) 個別報告(15分×2)

    佐々木和之(ルワンダ・プロテスタント人文社会大学准教授)

    「ルワンダの新型コロナ危機対応」

    山﨑周(キャノングローバル戦略研究所研究員)

    「中国の『人類運命共同体』の理念とその国内的文脈:新型コロナウイルスへの対応を事例として」

(4) 国際人権法の観点からのコメント(10分)

    杉木明子(国際人権法学会会員・慶應義塾大学教授)

回(第1回)フォーラム(2021年19日開催)

ユニット4:グローバル・ヘルスーーCOVID-19と生命権・健康権の保護

コーディネーター 建石真公子(幹事)、杉木明子、棟居徳子

回フォーラム案内

フォーラムのテーマ:Covid-19の治療における「重症者トリアージ」と患者の権利―「その時」論と人権論

● Covid-19治療にはなぜ「重症者トリアージ」という懸念と現実が出現したのか

一般的に感染症は、「患者=ベクター(感染を媒介する)」という特徴を持っている。

そのため感染症治療においては、患者本人の治療だけでなく、感染症の広がりを阻止する、という社会防衛の観点からの取り組みも必要となる。この点が一般の治療とは異なる。

したがって感染症治療では、患者の権利として保障されている本人の同意(人格権の保護)に基づく治療という原則が遵守されない場合が生じる。

さらに今回のCovid-19の特徴として、第一に無症状の感染者がいるため患者にピンポイントの対策が難しいこと、第二に、重症者のなかで高齢者の割合が圧倒的に多いこと、第三に、高齢者は要介護や施設入所中など、支援が必要であったり集団で生活していたりするケースが多い、等が上げられる。

これらの特徴は、パンデミックを防ぐ事の難しさ、集中治療室の利用に占める高齢者割合の高さを患者全体の治療との関係でどう判断するか、高齢者施設でのクラスターの発生と病院への搬送の難しさなどの問題を提起する。

こうした状況を背景に、パンデミック時、ICU利用や人工呼吸器が患者数に対して十分かが懸念される。

医療資源が不足した場合には、医療機関間の連携や患者の移送、医療者の移送など考えられるが、一方、患者(間)のトリアージ(選択)が生じる事態が想定される。この場合、治療を受けられない患者は死に至る事が予想されているが、それは治療停止、人工呼吸器の停止や再配分等のケースが考えられるが、それは法的な面からは消極的安楽死と類似の現象であり、すでに法的な基準が存在する。また患者の権利としては、本人の同意が尊重されるべき場面である。

しかし感染症のパンデミック時は、感染源でもある個々の患者の治療には特別の対策が必要となることと、Copvid-19が急速に悪化する傾向があり、医療資源の逼迫が起こりやすい。実際、2020年3月以降、欧米諸国では医療資源の逼迫に直面し、治療を受けることのできる患者(間)のトリアージの基準を示す「ガイドラインや提言」が公表されている。しかし、そもそもトリアージを認めることの是非をはじめ基準の在り様などについて、生命倫理や人権の関連から批判も提起されている。

● 医療資源の逼迫時の「トリアージに関するガイドライン(提言)」

Covid-19パンデミック下において公表されたトリアージに関するガイドラインや提言は、憲法上の平等原則遵守を明記するもの、また国の倫理委員会のこれまでの判断に基づく基準を示すものなど国によって多様である。

日本においては、「COVID-19の感染爆発時における人工呼吸器の配分を判断するプロセスについての提言」(代表:竹下啓・東海大学教授)(3月30日、生命・医療倫理研究会有志)が公表されている。この提言に関しては、生命倫理、哲学や思想等の観点から様々な応答がなされてきている。

国際人権法および国内法による人権保障の観点からは、重症者トリアージという生命に直接に関わる患者(間)の人権の問題について、どのような対応が可能だろうか。

● フォーラムの目的

フォーラムでは、まず、医療逼迫時における感染症対策として、「トリアージ」に関する『提言』を公表された医療倫理研究会の竹下啓氏に、医学の立場から、提言の趣旨や背景、公表後1年半を経過した現在での提言のあり方の変化等について明らかにして頂く。

次いで、美馬達哉氏に、医学および医療社会学の観点から、『提言』に関する解釈、そして「医療資源逼迫」という現象に関する対応策を明らかにして頂く。

そして、そのような医学の対応のうえで、国際人権および国内人権から何が可能か、感染症パンデミックにおける患者の権利保障の今後について考える。

1.日時:22021年9月19日(日)17:00-19:00

2.対象:国際人権法学会会員

3.参加方法:オンライン会議(ZOOMへのアクセス)

 * ZOOMのアクセス情報(リンク等)は開催数日前に本学会ML にて配信いたします。

4.プログラム   

総合司会:杉木明子(慶應義塾大学教授)

(1) はじめに――趣旨説明  建石真公子(法政大学)

(2) 「人工呼吸器の配分プロセスの提言」について  竹下啓(東海大学教授)

(3) 「提言」に関してどう考えるか  美馬達哉(立命館大学教授)

(4) コメンテーター

    健康権の観点からー今後に向けて   棟居徳子(早稲田大学)

    生命権の観点から−今後に向けて   建石真公子(法政大学)

(5) 質疑

(6) おわりにー―今後の課題と国際人権法

運営委員について

「COVID-19と人権」運営委員会は、COVID-19の世界的感染拡大の下で起きている人権問題について学会として取り組んでいくために、2020年11月の国際人権権法学会理事会で承認されました。

委員会のメンバーは、以下の通りです:秋山肇、伊藤和子、江島晶子、北村聡子、斎藤民徒(学会HP主任)、坂元茂樹、杉木明子、建石真公子、谷口洋幸、中西優美子、根岸陽太、棟居徳子、山元一(50音順、敬称略)。

企画主任、編集主任、国際交流主任と連携しつつ、学会活動を「点から線、そして面へ」と充実させることを狙っています。

運営委員の紹介とCovid-19関係のReference

PDF版はこちら

秋山 肇

筑波大学人文社会系助教。若手人権問題研究会幹事。専門は、憲法、国際法、平和研究。国籍・無国籍の研究を通して、国家と人間の関係性について研究してきた。COVID-19が顕在化させた社会・法的な問題、特に日本国憲法における国家観と生命権、「ポスト・アントロポセン」時代の人権に関心を持っている。

1 秋山肇「COVID-19対策と日本国憲法:新型インフルエンザ等対策特別措置法に着目して」 [version 1; peer review: 1 approved]『F1000Research』(2021年)10: 230, https://f1000research.com/articles/10-230, DOI: 10.12688/f1000research.50861.1.

2 秋山肇「特別寄稿:フランスとスイスの緊急事態宣言」『リレー連載〈コロナ〉と憲法 COVID-19感染拡大への各国対応と緊急事態宣言から考える』(2020年9月15日)、https://coronatokenpou.hatenablog.com/entry/2020/09/15 .

3 Tsukuba Global Science Week 2020 Session 6-2 "How Can Constitutions Deal with COVID-19?" (29 September 2020) https://youtu.be/GFIfqUPv_eA.

伊藤和子

弁護士 東京弁護士会所属 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長

早稲田大学法学研究科後期博士課程在籍中。ジェンダー法学会副理事長、国際人権法学会会員。研究・専門分野はビジネスと人権、国際人権法、ジェンダー。著書に「人権は国境を越えて」(岩波書店)「ファストファッションはなぜ安い?」(コモンズ)、「人権で世界を変える30の方法」(共著、合同出版)等。

1 ヒューマンライツ・ナウ 国連人権理事会に向けた声明 https://hrn.or.jp/activity/17957/

2 「このままでは多くの人に壊滅的影響」(Yahooニュース 伊藤和子) https://news.yahoo.co.jp/byline/itokazuko/20200406-00171715/

3 ゲーテ・インステイチュート トーク・プログラム Studio202X シリーズ2「民主主義の未来」第1回「自由かそれとも生命の保護か」

4 企業・金融機関・機関投資家に向けコロナと持続可能性課題について講演(2020.6.3 PRI/HRNほか、2020.10.22 GCNJ、2020.12.11 21世紀金融行動原則)

江島晶子

明治大学法学部教授、国際人権法学会理事長。専門は憲法・国際人権法。研究テーマは、多元的・非階層的・循環的人権保障システム(多層的人権システム)の構築で、現在、本システムの実証研究として、COVID-19やAIにフォーカスしている。

1 Ejima, Akiko : Constitutonal Oversight Mechanism for Government Decision Making in an Era with Covid-19, in Serna de la Garza, José María (ed.), Covid-19 and Constitutional Law/Covid-19 et droit constitutionnel (ebook), https://biblio.juridicas.unam.mx/bjv/detalle-libro/6310-covid-19-and-constitutional-law-covid-19-et-droit-constitutionnel

https://archivos.juridicas.unam.mx/www/bjv/libros/13/6310/16.pdf

2 江島晶子「COVID-19と人権―人権指向的統治機構の可能性―」国際人権(国際人権法学会学会誌)31号(2020年)3-10頁

3 Ejima, Akiko: Japan’s Soft State of Emergency: Social Pressure Instead of Legal Penalty, VerfBlog, 2020/5/13, https://verfassungsblog.de/japans-soft-state-of-emergency-social-pressure-instead-of-legal-penalty/, DOI: 10.17176/20200513-133638-0.

北村聡子

弁護士(東京弁護士会、はなみずき法律事務所所属)

日本弁護士連合会 国際人権問題委員会 委員長

同 人権擁護委員会 ヘイトスピーチに関するプロジェクトチーム 副座長

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例に基づく審査会委員

1 【口頭発表】Satoko Kitamura, “Access to Justice during the COVID-19 Pandemic” LAWASIA Webinar Series, 2 June 2020

2 【口頭発表】北村聡子「COVID-19により生じている人権問題」国際人権法学会COVID-19と人権フォーラム「COVID-19と人権」2020年9月19日

3 【企画】日本弁護士連合会主催「パンデミックと国際人権」連続講座(計5回)

4 【企画】日本弁護士連合会主催 人権イベント・シンポジウム「新型コロナウイルスと人権-差別・偏見のない社会を目指して」(2021年2月15日)

坂元茂樹

神戸大学名誉教授。(一財)国際法学会代表理事、国際人権法学会理事長、日本海洋政策学会会長、(公財)人権教育啓発推進センター理事長、(公財)世界人権問題研究センター所長を歴任。専門は国際法。国連人権理事会諮問委員会委員の折に「ハンセン病者・回復者及びその家族に対する差別撤廃のための原則とガイドライン」の起草にあたった。

1 坂元茂樹「新型コロナウイルスと人権~国際人権法の観点から~」『法律のひろば』2021年2月号4-13頁

杉木明子

慶應義塾大学法学部教授。専門は国際関係論、現代アフリカ政治。現在の主な研究テーマは、民族紛争・内戦・「テロ」と平和構築、アフリカにおける難民・強制移動問題のグローバル・ガバナンス、アフリカにおける海上犯罪・海洋安全保障など。北部ウガンダ農村で生活する「うなづき症候群」患者とその家族のための包括的ケアとライブリーフッド再建に関する学際的調査とステークホルダーに対する支援にも関与している。

1 「セキュリタイゼーション・ジレンマ再考ーCovid-19と共に(聖学院大学 西海洋志会員報告)に対する質問ー理論的・実務的観点から」、2020年11月7日日本平和学会秋季研究大会・平和学の方法と実践分科会(討論者としての問題提起)

2 杉木明子『国際的難民保護と負担分担ー新たな難民政策の可能性を求めて』法律文化社、2018年。

建石真公子

法政大学法学部教授。専門は憲法。研究テーマは、生命や身体、セクシュアリティに関わる人権論。国際人権法による人権保障に関する憲法論。

1 建石真公子「生命に対する介入、その法的課題」2020年4月より隔号で連載中。

2020年5月15日号「感染症医療と人権保障――「個人の尊厳」をどう保護するか」で、感染症。

2 【口頭報告】建石真公子「新型コロナウイルスと立憲主義──生命権・健康権保護と公益」全国憲法研究会 特別研究会 2020年10月18日

谷口洋幸

青山学院大学法学部教授。専門は国際法・ジェンダー法。主にセクシュアリティに関する人権法/政策について比較法・国際法の視点から研究。編著に『LGBTをめぐる法と社会』(法律文化社・2019)、『性的マイノリティ判例解説』(信山社・2011)など。

1 OutRight Action International, 2020, ""Vulnerability Amplified: The Impact of the COVID-19 Pandemic on LGBTIQ People"

https://outrightinternational.org/sites/default/files/COVIDsReportDesign_FINAL_LR_0.pdf

中西優美子

一橋大学大学院法学研究科教授。現在、マックスプランク手続法研究所(ルクセンブルク)に客員研究員として在外研究中。国際人権法学会理事、日本EU学会理事、一橋EU法研究会代表。雑誌『EU法研究』(信山社)の責任編集者。雑誌『自治研究』(第一法規)にて「EUにおける先決裁定手続に関する研究」を隔月連載中。専門分野は、EU法(特に、EU憲法、EU環境法、EU対外関係法)。

1 中西優美子「(巻頭言)コロナ問題にかかわるEU構成国の国境管理と域内市場」『EU法研究』(信山社)8号, 2020年6月, 1-5頁

2 中西優美子「ドイツのコロナウイルス対応とEU : 危機を次世代のためのチャンスに」『月間経団連』 68 (7), 2020年7月, 45-47頁, http://www.keidanren.or.jp/journal/monthly/2020/07/

根岸陽太

西南学院大学准教授。国際法と比較憲法の視野から公法学を総合的に研究する。研究テーマは、人権訴訟論(国内法の条約適合性統制)、人権理論(生政治性、友愛原理)、国際法理論(法源、認識)、憲法理論(憲法制定権力、グローバル立憲主義)など。

1 【口頭報告】根岸陽太「COVID-19と『日本モデル』」国際人権法学会オンライン・フォーラム『COVID-19と人権』2020年9月19日

2 【Country Report】Yota Negishi, ‘Japan’ in Bonavero Institute of Human Rights (University of Oxford), A Human Rights and Rule of Law Assessment of Legislative and Regulatory Responses to the COVID-19 Pandemic across 27 Jurisdictions, Bonavero Report 7/2020

https://www.law.ox.ac.uk/sites/files/oxlaw/bonavero_report_7_2020.pdf

棟居徳子

早稲田大学社会科学総合学術院教授、国際人権法学会理事。専門は社会保障法と国際人権法。主な研究テーマは「健康と人権」で、COVID-19との関係でも、健康権の再検討、コロナ対策の人権影響評価、また国際保健法などの観点から研究に取り組んでいる。

1 棟居徳子(2020)「公衆衛生上の緊急事態における人権保障―新型コロナウイルス対策において求められること―」『週刊社会保障』No.3066、44-49頁.

2 WEBコラム:棟居徳子(2020)「新型コロナウイルス感染症対策における『人権を基盤としたアプローチ』の重要性」、WASEDA ONLINE/読売新聞.

https://yab.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/COVID-19/20201109.php

3 WEBコラム:Tokuko Munesue, Significance of a Human Rights-Based Approach to COVID-19 Response, WASEDA ONLINE, January 20, 2021.(上記2)の英語版)

https://www.waseda.jp/top/en/news/74246

4 【口頭発表】Tokuko Munesue, “Human Rights’ Situation and Challenges in Japan amid the COVID-19 Pandemic”, U.S.-Japan Institute (USJI) Seminar, “The Covid-19 Pandemic: Human Rights and Public Health in Japan and the United States”, September 11, 2020.

5 【口頭発表】棟居徳子「公衆衛生上の緊急事態における人権及びジェンダーの視点の重要性:新型コロナウイルス感染症対策における留意点」、ジェンダー法学会「シンポジウムⅠ 緊急コロナシンポ パンデミック対策とジェンダー・バイアス──新型コロナウイルス感染症への対策が浮かび上がらせたもの」、2020年12月12日.

山元 

慶應義塾大学法務研究科教授,国際人権法学会事務局長。専門は憲法。研究テーマは、フランス憲法,グローバル比較憲法研究,憲法理論。現在,憲法と国際法を架橋するグローバル公法理論の可能性を探究している。

1 山元一「解題」ヤニヴ・ロズナイ〔山元一=横大道聡監訳〕『憲法改正が「違憲」になるとき』(弘文堂,2021年)433頁以下

2 山元一「文化・人権・立憲主義――グローバル化時代における立憲主義構想のために」三浦信孝=鷲巣力編『加藤周一を21世紀に引き継ぐために』(水声社,2020年)155頁以下

3 山元一『グローバル化時代の日本国憲法』(放送大学教育振興会,2018年)

4 山元一「グローバル化世界における公法学の再構築――国際人権法が憲法学に提起する問いかけ」『法律時報』84巻5号〔2012年〕9頁以下

斎藤民徒(学会HP主任)