日本原価計算研究学会は「原価計算の理論及び実践の研究を促進し、原価計算の進歩と発展に貢献するとともに、会員相互の交流を図ること」(会則第2条)を目的に、1975年12月15日に創立されました。本学会では、創立当初は実務家会員の割合が非常に高く、研究者と実務家が学会活動に参加し協力し合いながら、学会の活性化を図って参りました。
そこで、本学会は創立50周年を迎えるにあたり、50周年記念事業の一環として「産学連携による原価計算リカレント教育」プロジェクトを推進しております。急速に変化するビジネス環境に対応するため、原価計算の理論を発展させ、その成果を実務実践に反映することが求められています。本プロジェクトでは、産学が協力することで新たな原価計算モデルを開発し、実務家と専門家(公認会計士)の原価計算リテラシーを高めるためのリカレント教育の土台構築を目指します。産専学連携によって得られる研究成果をもとに、教材の作成や教科の改訂を進め、企業実務、公認会計士監査実務、大学・大学院教育に貢献することが本プロジェクトの目標です。
本プロジェクトは、挽文子前会長(第13代)もとで2023年度に立ち上がってから、毎年数回の研究会を開催しております。2025年3月にはその成果と今後の展望を日本原価計算研究学会「産学連携コストフォーラム」で発表いたしました。今年度も 2026年3月の産学連携コストフォーラムで本プロジェクトの一つであるFP&Aをテーマとして研究報告が行われる予定です。
本プロジェクトの推進には、皆さまからのご協力ご支援が欠かせません。引き続きのご協力・ご支援を心よりお願い申し上げます。
日本原価計算研究学会会長
50周年記念事業「産専学連携による原価計算リカレント教育」プロジェクト長
澤邉紀生
「我が国の「原価計算基準」の影響力の大きさから、伝統的に原価計算の範囲は原価計算制度と特殊原価調査だと考えられることが多かった。しかし、すでに様々な次元で伝統的な意味での原価計算の枠外の問題が原価計算の問題として扱われるようになってきている。例えば、原価企画は原価計算制度や特殊原価調査の範疇を超えた原価管理の実践として研究が進められており、市場主導型原価計算の典型的な一例として位置付けられている。原価企画以外でも、サービタイゼンションを視野に入れた原価計算やレベニューマネジメントなどもこの文脈で旧来の原価計算概念の拡張を促すような研究が行われてきている。本プロジェクトでは、原価計算の本質を堅持しながら、このような方向でその範囲を拡張することを目指す。
ここで原価計算の本質を暫定的に次のように仮に設定する。
価値創造過程を「価値創造に向けて遂行される活動の連鎖」であるとしたとき、原価計算の本質は「価値創造のために経済的資源等が犠牲になることで価値が生み出されるような一連のプロセスを可視化すること」である。可視化するためには、一連のプロセスを構成している一つひとつのプロセスにおいて創造される便益と紐付けて経済的資源の犠牲を認識・測定することが求められる。原価計算は、このように便益という価値の創造も各プロセスにおいて認識し、それに対応して価値犠牲の認識・測定をすることで価値創造の一連のプロセスを可視化していると我々は理解する。
例えば、サービタイゼションの進展によって従来は工場などで物理的に認識・測定していた価値創造過程の活動単位が不可視となっている。その意味で、今日原価計算によって価値を創造する各プロセスを可視化することで管理対象が明確になる。原価計算の意義や範囲は旧来よりも遥かに大きくなっている。
本プロジェクトはこういった原価計算の本質理解に基づき、原価の概念や範囲、また便益の範囲や測定といった論点についても議論を行い、一定の合意を形成したいと考えている。」
(2024年4月21日研究会資料より)