過去のセミナー情報

第11回複雑系知能セミナー

開催日時:2023年 1/19(木) 16:30 - 18:00

対面形式で開催します.

場所: 公立はこだて未来大学 本棟5階 594教室

講演者: 小川知之  氏(明治大学総合数理学部

講演題目:競争拡散系における進行波から見る侵入と共存 

概要: 数理生態学では、多種多様な生物種がいかにして共存しバランスを保った生態系をなしているかという問いに対して多くの研究がある。2つの種によって形成される進行波は競争関係にある種の力関係を記述するが、本研究では進行波による共存の可能性を議論したい。3種競争拡散システムに拡張して、2種の進行波の緩衝地帯が3番目の種の侵入を可能にすることを示す。分岐点周辺の解析により、侵入が既存の2つの種の住み分けにどのように影響するかを明らかにする。また、侵入進行波解の大域分岐構造についても議論する。 

第10回複雑系知能セミナー

開催日時: 2022年11/25(金) 16:30 - 18:00

対面形式で開催します.

場所: 公立はこだて未来大学(研究棟R791)

講演者: 薩摩順吉 氏(東京⼤学名誉教授・武蔵野⼤学名誉教授)

講演題目: ファジーセルオートマトンとその解

概要: 現象解析の方法としては、連続的、離散的、超離散的の3つがありますが、そのうち、超離散的なものの一つであるセルオートマトンを変数の値が特別な場合として含む非線形離散方程式がファジーセルオートマトンです。今回の講演では、なぜファジーセルオートマトンを考えるか、またその解について超離散化、連続化で何が失われ、何が生き残るかについてお話します。

第9回複雑系知能セミナー

日時:2022年11月11日(金)16:45~18:15 (予定)

対面形式で開催をします.

会場:はこだて未来大学 593教室

講演者:中井 拳吾 氏(東京海洋大学 学術研究院・助教)

 講演題目:機械学習による気象現象のデータ駆動型モデルの構築

概要:リザーバーコンピューティングと呼ばれる機械学習が決定論的ダイナミクスの時系列モデリングに有効であることがわかってきた. 我々は流体マクロ変数の時系列データの学習に基づいて時間発展モデルを構築し, 時間発展を予測することに成功している [1,2]. また背後にある理論を明らかにするため, 低次元の決定論的ダイナミクスの時系列を学習し得られた時間発展モデルが, 学習した力学系構造をどの程度再現できるかを明らかにした [3].これらの応用として, 気象学者らとの共同研究でマッデン・ジュリアン振動と呼ばれる気象現象の時系列を予測するデータ駆動型モデルを構築した. マッデン・ジュリアン振動は世界の気象に大きな影響を与えるものであり, 長期的な気象予測をする上で最も重要な指標の一つであると考えられている. 新たに作成したバンドパスフィルタにより観測された気象の時系列データを回帰的構造を持つ時系列にすることや時間遅れ座標系を用いた学習をすることにより, 従来の気象分野で用いられる物理モデルの予測性能を超える 1~2 ヶ月予測可能な機械学習時間発展モデルの構成に成功した [4]. 本講演ではリザーバーコンピューティングの学習方法やよい機械学習モデルを構成するための学習の設定方法を述べ, 気象現象のモデリングを紹介する.

[1] K. Nakai and Y. Saiki, Machine-learning inference of fluid variables from data using reservoir computing, Physical Review E 98, 023111:1-6 (2018).

[2] K. Nakai and Y. Saiki, Machine-learning construction of a model for a macroscopic fluid variable using the delay-coordinate of a scalar observable, Discrete and Continuous Dynamical Systems Series S 14, 3 (2021).

[3] M. Kobayashi, K. Nakai, Y. Saiki, and N. Tsutsumi, Dynamical system analysis of a data-driven model constructed by reservoir computing, Physical Review E 104, 044215:1-7 (2021).

[4] T. Suematsu, K. Nakai, T. Yoneda, D. Takasuka, T. Jinno, H. Miura, and  Y. Sakai, Machine learning prediction of the Madden-Julian Oscillation extends beyond one month (in preparation).

7, 8回複雑系知能セミナー

日時:2022年6月2日(木)14:50~15:35 (予定)

対面形式で開催をします.

会場:はこだて未来大学 583教室

講演者:中尾裕也 氏(東京工業大学)

講演題目: Koopman作用素に基づく力学系の次元縮約と非線形リズム現象への応用    

概要:近年、Koopman作用素に基づく力学系の解析手法が注目されている。Koopman作用素は系の観測量の時間発展を記述するもので、系が非線形でも観測量の時間発展は線形方程式に従う。特に、Koopman固有関数を座標変換に用いることにより、力学系の線形化と次元削減をシステマティックに行うことができる。古典的な非線形振動子の同期現象を解析するための位相縮約法がその典型例であり、Koopman作用素の観点からこれが自然に位相・振幅縮約法に一般化されることを述べ、ネットワーク結合系の集団リズムや反応拡散系の時空間パターンへの応用について簡単に紹介する。    


日時:2022年6月2日(木)15:35~16:20 (予定)

対面形式で開催をします.

会場:はこだて未来大学 583教室

講演者:Jinjie Zhu (朱金杰) 氏(Nanjing University of Science and Technology)

講演題目: Large deviation theory and its application to dynamical systems

概要:Noise is ubiquitous in nature. Counterintuitively, it can induce many intriguing behaviors in dynamical systems. Among them, the exit phenomenon describes the noise-induced escape of the system’s state to the boundary of the basin of attraction (BOA) of the attractor, which is impossible for deterministic systems. The large deviation theory is one of the most powerful tools to quantitatively and qualitatively solve the exit problem. This talk introduces the basic ideas and concepts of the large deviation theory and its application to dynamical systems. In this talk, we will discuss two important quantities in the large deviation theory, namely, the mean first passage time (MFPT) and the most probable escape path (MPEP). The MFPT can be used to explain many well-known phenomena, e.g., stochastic resonance, coherence resonance, etc. Especially in dynamical systems with multiple timescales, the MFPT can reveal the timescale matching mechanisms for noise-induced coherent oscillations. The MPEP gives the fluctuational path with the largest probability where noise will perturb the system’s state from the attractor to the boundary of BOA. We will distinguish the MPEP between systems with and without detailed balance, where time-reversal symmetry will be broken in the latter case. Finally, some interesting examples will be given to show how the large deviation theory and the exit problems can affect our viewpoint on our world.

第6回複雑系知能セミナー

日時:2021年12月3日()16:30~18:00

ハイブリッド形式(対面及びオンライン形式)で開催をします.登録はこちら 

会場:はこだて未来大学 講堂 R791教室(講堂から変更しました.) 及び オンライン

講演者:村川秀樹氏 (龍谷大学理工学部)

講演題目:細胞間接着の数理モデリングとその応用

概要:細胞同士の接着である細胞間接着、細胞が自発的に適切な組織や器官などの構造を作る細胞選別の理解は、生命科学分野における極めて重要な研究課題である。その重要性にも関わらず、それらの数理的な取り扱いはこれまでにほとんどなかった。細胞間接着及び細胞選別現象を数理的に解明することを目指した研究を行っている。講演では、数十万から数百万の細胞数からなる組織レベルの巨視的な現象を記述する細胞集団モデルの提案とその応用について解説する。内容は以下のとおりである。

 ・現象の紹介

 ・数理モデリング

 ・生命科学の現場における問題の解明に向けた応用

 時間が許せば、数十から数百程度の細胞数からなる細胞レベルの微視的現象についての最近の研究についても紹介する。

第5回複雑系知能セミナー

日時:2021年11月19日(金)16:30~18:00(予定)

ハイブリッド形式(対面及びオンライン形式)で開催をします.登録はこちら 

会場:はこだて未来大学 講堂 及び オンライン

講演者:竹之内 高志氏(政策研究大学院大学

講演題目:経験局所化を用いた統計モデル推定

概要:本講演では、離散的な確率的現象を表現するための統計モデルのパラメーターを推定する問題を扱う。

パラメーターの推定に広く使われる方法として最尤推定量(MLE)があるが、離散確率モデルに対して適用する場合には莫大な計算コストが必要となることが多い。本講演では、いくつかの工夫を施すことで、計算コストを削減しつつ効率的にパラメーターを推定することが可能な手法を紹介する。

第4回複雑系知能セミナー

日時:2021年1月14日()16:30~18:00

オンライン開催をします.登録はこちら 

講演者:井元佑介氏 (京都大学)

講演題目:シングルセル遺伝子発現データに基づく遺伝子制御ネットワーク解析

概要:遺伝子発現とは遺伝子がRNAやタンパク質を合成することであり、その発現量によって細胞や細胞の変化(細胞分化)が特徴づけられる。遺伝子は互いに発現量を制御(促進・抑制)することが知られており、その制御構造を有向グラフで表現したものが遺伝子制御ネットワークと呼ばれている。遺伝子制御ネットワークは、ゲノム情報だけでは説明しきれない生物の多様性を表現する要因の1つと考えられている。しかしながら、現在の技術ではその制御構造を直接観測することは困難であるため、様々なゲノムデータから遺伝子制御ネットワークを推定する研究が盛んに行われている。

本研究では、シングルセル遺伝子発現データ(scRNA-seqデータ)から、遺伝子制御ネットワークを推定することを目的とする。シングルセル遺伝子発現データとは、単一細胞のRNA発現情報を網羅的に抽出したデータであり、1回の実験で数百~数千細胞の全遺伝子の発現データを得ることができる。しかしながら、実験技術とコストの問題からシングルセル遺伝子発現データはノイズを含む多サンプル数かつ少タイムポイントのデータとなるため、従来の多タイムポイントを要する数理モデルのパラメータ推定に基づくネットワーク推定手法では良い推定結果を得られない。そこで本研究では、空間分布の統計解析に基づく因果ネットワークの推定手法"LiNGAM(リンガム)"に着目し、LiNGAMの背景数理モデルを遺伝子発現の力学系モデルに拡張することで遺伝子制御ネットワークを推定するGRN-LiNGAMを提案する。本講演ではGRN-LiNGAMの導入と数学的な諸結果について紹介する。さらに、遺伝子制御ネットワーク推定後の生物学へのフィードバックの方法についてもいくらか紹介する。

本講演は平岡裕章氏、斎藤通紀氏、小島洋児氏(京都大学)、清水昌平氏(滋賀大学)、前田高志ニコラス氏(理化学研究所)との共同研究(WPI-ASHBiプロジェクト)に基づく。

第3回複雑系知能セミナー

日時:2020年1126日()16:30~18:00(1時間ほどの予定)

オンライン開催をします.登録はこちら 

講演者:本田直樹氏 (京都大学)

講演題目:多細胞動態を司る支配方程式のデータ駆動的解読

概要:ライブイメージング技術の発展により、今や多細胞組織における各々の細胞の移動や分子活性等を生きたまま可視化できる時代となった。その結果、これまでの想像を超えて動的かつ複雑な生命現象を目の当たりにすることとなっている。これまでの画像解析では、研究者の「気づき」に依存して解析が進められてきた。しかし、生体組織は複数のシグナル分子が関与し、また複数の細胞が相互作用し合う高次元システムであるため、そこから背後に存在する法則を抽出するには、ヒトのパターン認識能力の限界を超えている。また、イメージングによって観測される「細胞集団レベルの現象」は、寄り集まった一つ一つの細胞が相互作用する「細胞レベルの過程」から階層をまたいで創発されたものである。したがって、細胞集団レベルの時空間データから細胞レベルの原因を解読する逆問題のためには、二つの階層をシームレスにつなぐ新しいアプローチが求められる。そこで本発表では、細胞レベルと細胞集団レベルをつなぐ“階層的モデリング”を提案し、それに基づいた“機械学習”によるデータ解析について解説する。具体的には、上皮細胞集団移動におけるERK活性動態をFRETバイオセンサーを用いたライブイメージングによって観察し、それにより得られる高次元の時空間データを階層的モデリングと機械学習による解析を通じて、現象を司る支配方程式をデータ駆動的に読み解く研究を紹介する。

第2回複雑系知能セミナー

日時:2019年12月9日(月)15:00~16:30

場所:公立はこだて未来大学 小講義室584

講演者:安東弘泰氏 (筑波大学)

講演題目:ノイズを加えた距離行列によるプライバシー保護型データ共有の方法論

Privacy Preserving Data Sharing by Integrating Perturbed Distance Matrices

概要:機械学習において多くのデータを集めることは偏りの少ないモデルを作成する上で重要である。一方で、プライバシーや移動コストの観点から同様のデータが分散して異なる機関に保存されている状況が存在している。これらの分散データを元データをやり取りせずに統合することはデータコラボレーションと呼ばれる概念であり、安全な情報共有の一手段と考えられる。本研究では、機関に共通する擬似データを介して機関ごとにデータの距離行列を作成し、元データにおける局所的な近傍情報を元データをやり取りせずに学習する手法を提案する。

特に、各機関の所有するデータ数が少なく、かつバイアスのある場合において有効な手法であることを示す。また、本手法はノイズに対しても頑健であることから元データの匿名性を保持することが可能である。ここでは、テストデータへ適応することで手法の有効性を示す。

第1回複雑系知能セミナー

日時:2019年6月21日(金曜日)18:10~19:10(1時間ほどの予定)

場所:公立はこだて未来大学 小講義室585室

講演者:岩本真裕子氏 (島根大学)

講演題目:頭足類の動的パターン形成メカニズムとその機能の理解に向けて

概要:イカ類などの頭足類は、ボディーパターンを瞬時に変化させることで、求愛行動や対峙行動などのコミュニケーションや周囲の環境に模様を擬態させることで待避行動を行なっていると言われている。イカ類のボディーパターンの形成および変化の時間スケールは、チューリングメカニズムに比べて極めて早く、神経伝達による制御が示唆されるが、イカ類は飼育の困難さから実験が極めて難しく、詳細なメカニズムは未だ知られていない。そこで、イカ類の動的パターンの形成メカニズムを理解するための第1歩としてシンプルな数理モデルを構築し、数値計算により考察した。本講演では、数理モデルのアイディアや数値計算結果を紹介するとともに、そのほかにイカ類のボディパターンによるコミュニケーションに関する実験なども紹介する。