Inoue et al (1990)の方法改変。塩化カルシウム法。原理はこのサイトなどを参照(https://pipedo.web.fc2.com/ecoli_competent_inoue.html)
大腸菌を室温でOD600が0.4になるまで培養したのちに、培地をTBに置換。
コンピテントセルは1回分を50ulにしている。
SOB培養液50mlをTB5ml+DMSO350ulで置換。
つまり50ml培養すれば約100回分、100ml培養すれば200回分、150ml培養すれば300回分となる。ただし、OD測定で1回に1ml程度使うのでその分減る。
100~300ml容(培養したい量の2倍容以上が目安)の三角フラスコ2本(1本は予備)、5mlピペットマンのチップをオートクレーブ
大腸菌培養用14ml丸底プラスチックチューブ1本、1.5mlエッペン一瓶も、なければオートクレーブ
SOB培地を調製。以下の培地をオートクレーブ後、Mg液(大腸菌台の棚)をバーナーの火の元で1/100量添加。抗生剤を含まない培地なのでコンタミ注意!
培地(200ml作るときの分量)
バクトトリプトン 4g
イーストエキス 1g
5M NaCl 0.4ml(またはNaCl 0.116g)
3M KCl 0.167ml(またはKCl 0.0373g)
水道水 200ml
※このSOB培地に、以下のグルコース液を1/100量添加すれば、SOC培地になる
グルコース液
グルコース 3.603g
MQ 10ml
オートクレーブ。抗生剤を含まない培地なのでコンタミ注意!
Mg液がなければ調製。大腸菌台のところにあればそれを使う。
MgSO4・7H2O 24.65g
MgCl2・6H2O 20.33g
MQ 100ml
オートクレーブ。抗生剤を含まないのでコンタミ注意!
TBを調製。(200ml作るときの分量)
PIPES 0.6g
CaCl2・2H2O 0.44g(無水の場合は0.297g)(Ca塩の棚にあります)
3M KCl 16.63ml
MQ 180ml
上記を混ぜた後、KOHでpH6.7に調整、その後
MnCl2・4H2O 2.18g(鍵付き棚のその他のところにある) を加え、MQで200mlにメスアップ
0.22umのフィルターをシリンジにつけて、バーナーの火の元でろ過滅菌し、30mlチューブor50mlファルコンに分注。抗生剤を含まない培地とともに用いるのでコンタミ注意!
夕方、SOBを大腸菌用14mlチューブに約2ml分注。増やしたいコンピテントセルから1~2ulとり、大腸菌用チューブ中のSOBに植菌。37℃で一晩震盪培養。
火の元で、SOBを、吸光度のブランク測定用に2ml程度エッペンチューブなどにとっておいたうえで、培養したい液量分、三角フラスコに分注。一晩培養した菌液2mlを三角フラスコ中のSOBに植菌。25℃で震盪培養。
液体窒素をタンクに汲んでおく。
1時間半経過したくらいで学生実験室で吸光度測定。OD600が0.4程度になったら培養を止める。培養時間は2~8時間程度が目安。OD600が0.3くらいからは、対数増殖期で急激に菌が増えるので、油断せずに10~15分おきくらいにチェックする。
培養液を30分~1時間程度、十分に氷冷。このとき、TB液も氷冷。菌を保存するエッペンチューブの瓶を-20℃に冷やしておく。スウィングの遠心機を4℃に冷やしておく。
火の元で、培養液を50mlファルコンに分注。この段階から、できあがったコンピテントセルの分注、凍結までの間、菌体を厳密に氷冷状態に維持。そうしないとコンピテンシーが極端に低下する。
培養液を1500G、4℃で10分スウィングで遠心。
火の元で、上澄みを除去、培養液50mlにつき、氷冷したTBを15ml、(5mlピペットマンなどで)静かに沈殿に吹き付けるように加える。泡を立てないように静かに沈殿をTBに分散させる。塩化カルシウムで細胞膜が弱くなっているので、ボルテックスNG!
再度遠心、上澄み除去。培養液50mlにつき、5ml氷冷TBを加え、沈殿を分散。
火の元で、培養液を氷冷したまま、DMSOをTB5mlにつき350ul(7%)加え、直ちに緩やかに振り混ぜる。DMSOは水分と出会うと発熱するので、DMSOを加えたら菌液をしっかり氷冷。コンピテントセルはこの時点で完成。
氷上に金属エッペン立て用意。火の元で、冷やしたエッペンをエッペン立てに立てる。コンピテントセルをしまう紙のチューブボックスに、あらかじめオークレテープでラベリングしておく(冷えてからだと貼れないので)。発泡スチロールに、チューブボックスを入れ、ボックスの底が浸るくらい液体窒素を入れる。
火の元で、コンピテントセルを50ulずつ、温まらないように注意しながら静かにエッペンに分注(連続分注器を使うとよい)→エッペンの蓋を閉め、ピンセットでもって液体窒素中のチューブボックスにできるだけ早く入れていく(液体窒素を用いる理由は、急速に冷却することで氷結晶が小さくなり、細胞の物理的破壊をある程度避けることができるからである)。素早く行うため、2人以上で行うとよい。
分注が終わったら、チューブボックスを-80℃にしまう。
古いコンピテントセルと、新しいコンピテントセルとで同じプラスミドを形質転換すると、形質転換効率(コンピテンシー)が確認できる。