コモンズ研究会について

コモンズ(commons)とは

コモンズ(commnons)は、その議論の発展と拡大にともない多様性をもつ用語となっています。

「共有地の悲劇」として知られるG.ハ―ディンの研究は、共同利用される牧草地を事例にして、個々の利用者が自己の利益を最大化する行為が結果として個々の利益を損なうこと、そのため「自由に」利用される共有資源は、経済的利益を最適化できないことを指摘しています(1)。

 しかし、ノーベル経済学賞を受賞したE.オストロムは、実際の共有地において、様々な資源管理制度が形成されており、必ずしも悲劇のみならず、さまざまなドラマがあることを指摘しました(2.3)。

 このようにコモンズは他人の利用と競合し、他人の排除が困難な「コモン・プール・リソース(CPR)」およびその管理を指す用語となっています。

他方で、日本のコモンズ研究は公害、現代の危機である生態系の劣化に対して強い関心と問題意識をもって取り組んできました。そのため生態系サービスといったエコロジカルな視点のなかで発展してきました(4)。地域の社会経済と生態系を調和させるツールとしての地域通貨や、自然アクセス制度の研究など多様なテーマが含まれています。

また入会研究における豊富な蓄積が、「私」でも「公」でもない「共」の役割や、その「私」と「公」との関係性などに注目して、コモンズ研究の中で議論されています(5)。

欧米で発展したCPR管理の議論を英語の'Commons'だとすれば、こちらは資源の経済的利益の最大化に留まらない、思想などを含む、日本独自の意味合いを持つカタカナの「コモンズ」といえるかもしれません。

当研究会では、あえてコモンズ(commons)の意味を厳密に定義せずに、世界的なcommons議論の文脈を踏まえたうえで、豊富な蓄積のある日本独自のコモンズ研究の文脈を反映して自由に議論する研究会となっています。


参考 1 Hardin, G., 1968. The tragedy of commons. Science, 162, 1243–1248. 2 Ostrom, E., 1990, Governing the Commons: The Evolution of Institutions for Collective Action, Cambridge University Press. 3 Ostrom E et al., (ed), 2002,  The Drama of the Commons, The National Academies Press. 4三俣学編『エコロジーとコモンズー環境ガバナンスと地域自立の思想ー』2014年 晃洋書房 5 三俣学編『ローカルコモンズの可能性ー自治と環境の新たな関係ー』 2010年 ミネルヴァ書房  (文責:竹内)   

コモンズ研究会についてー枠組みにとらわれずに「ゆるく」、「たのしく」ー

コモンズ研究会は、多種多様な若手研究者(当時)が自由に意見交換し、発展途上にある自身の研究を磨く場所として2000年に京都で発足しました。その後、国内外におけるコモンズ(Commons)への関心の高まりのなか研究会も発展してまいりました。2018年度には、100名を超える様々な分野の研究者・実務者・市民の方を会員として登録させていただいております。


当研究会の目的は主に次の点です。

①研究報告による知見の共有

②アイデア段階の研究のたたき台としての場(とくに院生)

③参加者同士の交流の場の創造


以上の活動を通じて、各地で歴史的に形成されてきたコモンズ(Commons)の分析と評価という「コモンズを再考する研究」、将来的なコモンズ(Commons)のあり方を事例調査などから議論し検討する「コモンズを創造する研究」を振興することが目的です。

学問に携わっている人だけでなく,広く社会一般に関心を寄せる人たちが集い,互いの知識や時間,空間を共有できる場,すなわち「コモンズ(Commons)」となればと考えています.多くの皆様のご参加をお待ちしています。

(世話人一同より)